
2児の父となった「加藤晴彦」が“失礼な保護者”に怒り心頭 小学校の運動会で体験した「非常識な父親」の振る舞いとは
加藤晴彦さん(撮影/写真映像部・和仁貢介)
4月から放送される日曜劇場「キャスター」(TBS系)で7年ぶりのドラマ出演を果たす加藤晴彦さん(49)。インタビュー【前編】では「キャスター」への出演が決まるまでの経緯や、寝る間もないほど多忙だったという20~30代の芸能生活などについて聞きました。【後編】では、38歳で結婚した際のなれそめや結婚生活について、また、俳優以外でこれから取り組みたい活動についてうかがいました。
※【前編】<「加藤晴彦」が日曜劇場で7年ぶりにドラマ出演 「僕は芸能人ではなく『人間・加藤晴彦』として生きたい」>より続く
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自分がどんどん壊れていってるんじゃないか――ヘリコプターで仕事現場へ移動するなど超多忙な生活を送るなかで、加藤さんはそんな不安を抱くようになり、30代前半から徐々に芸能の仕事をセーブ。心身を整える生活にシフトしていくなか、私生活で大きな変化がおとずれる。
20代でブレイクしていた頃の加藤晴彦さん(事務所提供)
2014年、39歳のときに一般女性と結婚した。
生まれ育った名古屋のことが大好きで、どんなに忙しくても1日でも休みがあればすぐに帰るほど、地元愛は強かった。
「昔から、家庭を持って住むなら絶対に名古屋だ、と思っていました。名古屋といえば赤みそなんですけど、『赤だしのみそ汁が上手に作れる子と結婚したい』なんてことも言っていました」
キューピッドになってくれたのは、名古屋の中京テレビで働く黒宮英作さんだ。
「妻も名古屋の別のテレビ局に勤めていた社員で、黒宮さんが『なんか2人は合うんじゃないかと思った』と言って引き合わせてくれたのがきっかけです。本当に恩人というか、人生を変えてくれた人だと思っています」
結婚から10年がたち、2人の子どもにも恵まれたが、妻との関係は「本当に仲が良いです」という。
「家にいると、ずーーーっと話しています。些細なことを共有しあうのはもちろん、絵にかいたようにボケたり突っ込んだり、冗談を言い合ったりとか、会話を止める方が難しいくらいです。妻は『芸能人のあなたと結婚したわけじゃない』と言ってくれていて、それも合っているんだと思います」と話す。
加藤晴彦さん(撮影/写真映像部・和仁貢介)
2児の父となり「世界が変わった」
子育てに積極的に参加することで、見える世界がガラリと変わった。
「子どもが生まれて物理的に変わったという事ではなくて、視野が広がりました。例えば遊びに行く場所ひとつとっても、子どもにとってどうなのか? 便利さや楽しさだけではない『学びがあるのか?』を考えています。子どもが成長し、進学する上でも考えさせられることも多いです。幸いなことに我が子の幼児期の園生活はとても恵まれていました。しかし、小学校では教育現場の違和感や混乱を目の当たりにしました。そのため、教育にもとても興味が湧いてきました」
教育に関心を持ったことで、必然的に教育現場との接点が増えた。保護者会役員から始まり、現在は、保護者会とは別の学校法人の理事にも就任している。
さらに加藤さんが今参加しているのが、NPO法人の立ち上げだ。教員の働き方改革などで部活動が減少する中、子どもたちにさまざまな競技との出会いと、体を動かす機会を提供するスポーツ組織「AOZORA」の立ち上げに参画している。メンバーは現役の教師や校長・アスリートなどさまざまで、心から子どもたちの未来を考える人たちが集まっている。
「実際に動き始めてみると、場所の確保や人の確保なども含めて、想像を絶するほど大変だと感じています。最初からいきなり完璧を目指すのではなくて、子どもたちに楽しんでもらうところから始めていこうと思っています。」
この活動を通して、加藤さんは子どもたちに「人間として成長してほしい」と願っている。その根底には、一部の大人たちが悪びれもせずに身勝手な振る舞いをすることへの“怒り”がある。
「僕は自分が偉いとは一切思ってないですけど、最近は30代~50代のいい大人でも本当に自分勝手な人が多いなと感じているんです。それぞれの個人や家庭で、その人なりの物差しがあるのは当然です。でも一歩外に出たら、社会の物差しに合わせて行動することも必要です。なのに、最近は自分の物差しを家の外でも振りかざしている人が多い。悪いことをしたらまず謝るべきなのに、相手を責める人もいます。トラブルになると先に騒いだ人が勝ちのようになって、結局、正しい行動をしている人がコトを荒立てないように口をつぐむことも少なくありません。直接話したこともない人を陰で悪く言う保護者などなど、言い出したらキリがありません。見えない所から石を投げるような……そういう非常識や理不尽さが許せないんですよ」
加藤晴彦さん(撮影/写真映像部・和仁貢介)
近所にいた「昭和のオヤジ」みたい
そうした大人たちに怒りを覚えるのは、加藤さん自身が実際に“被害”に遭ったこともあるからだ。
「小学校の運動会での出来事ですが、下駄箱で靴を履いていると突然『あれ! 晴彦君、元気?』と言われて見上げると、立っていたのは全く知らない誰かのお父さんでした。初対面なのにいきなりタメ口で声をかけられ、あとは知らんぷりされて、その場を去っていきました。あまりにクレイジーな行動に一瞬ぽかんとしてしまいましたが、非礼な行いをする人間には、必ずしっぺ返しがくると思っています」
礼儀やあいさつを大事だと強く感じてずっと生きてきた加藤さんだからこそ、今の時代の子どもたちにもそういった社会性をしっかり学んでもらいたいと考えている。
「自分の娘と息子には、『もし怒られるようなことをしたときは、まず自分の側になにかあったんじゃないか考えろ』と徹底して言っています。昔はまず社会や地域のルールがあり、その上で自分や家族の考え方やルールがあったが、今はその線引きがなくなってきてしまっていると感じています」
そして、「あいさつはされるものではなく、するものです!」と語る加藤さん。自身が幼稚園にお迎えに行ったときは、子ども、先生、保護者へ大きな声であいさつをする。あいさつを返してくれた子には「偉いね!」「気持ちがいいね」と褒める一方で、あいさつをしない子どもがいたら、顔を覗き込んでもっと大きな声であいさつをすることにしている。
「僕って近所にいた昭和のオヤジみたいな感じなんです。でも、あいさつから始まるコミュニケーションで地域は作られていて、その地域全体が子どもたちを育てていたと思うんです。今は過保護どころか過干渉な親が多くて、自分の子どもの顔色をうかがっているような状況でしょう。他人の子どもに注意をしてくれる人なんていないんです。そもそも礼儀について注意するのって、そこに愛があるからなんです。だからこの時代でも、ちゃんと愛を持って言えば伝わるんです。今の子どもたちは愛を受けることも知らないし、愛をかける人もいないからおかしくなっちゃうと思うんです。それを少しでも変えていきたいなって思います」
そう語る言葉には、「人間・加藤晴彦」を貫いてきた加藤さんだからこその“熱”がこもっていた。
(藤井みさ)
●加藤晴彦(かとう・はるひこ)
1975年生まれ、愛知県出身。中学2年のときにNHK『中学生日記』で俳優デビュー。高校3年で『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』審査員特別賞を受賞し上京。TBS系『アリよさらば』、朝ドラ『走らんか!』など数々の映画・ドラマ、『アルペン』などのCMにも出演し、『あいのり』『どうぶつ奇想天外!』などバラエティでも活躍。2014年に結婚し、現在は2児の父。