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新築に引っ越しても気づけばゴチャゴチャ! 片づけたら家族で過ごす時間が増えた
新築に引っ越しても気づけばゴチャゴチャ! 片づけたら家族で過ごす時間が増えた ソファの真ん中に洗濯物がドンと置かれたリビング/ビフォー    5000件に及ぶ片づけ相談の経験と心理学をもとに作り上げたオリジナルメソッドで、汚部屋に悩む女性たちの「片づけの習慣化」をサポートする西崎彩智(にしざき・さち)さん。募集のたびに満員御礼の講座「家庭力アッププロジェクト®」を主宰する彼女が、片づけられない女性たちのヨモヤマ話や奮闘記を交えながら、リバウンドしない片づけの考え方をお伝えします。 *  *  * case.97 本当に整えたかったのは家族の現状  夫・子ども3人/教員  片づけに悩んでいる人は、もしかするとこう考えているかもしれません。 「新しい家に引っ越せば、きれいな環境で住めるのに……」 「時間があれば、片づけられるのに……」  でも、たくさんの片づけの実例を見てきた経験上、実際に引っ越しをしても、自由な時間ができても、片づけの悩みが解決するケースは多くありません。散らかってしまう“根本的な問題”を、解決できていないからです。 「新築の家に引っ越したのは、3年前。使いやすいように収納を考えて建てたはずなのに、暮らしているうちにモノの量が増えて、気づいたら家の中は散らかっていました」  こう話してくれるのは、夫と3人の娘と暮らしている理江さん。引っ越す前に住んでいた実家のすぐ近くに家を建てたので、必要なモノがあれば少しずつ移動させていました。そのうち、実家にあるモノを新居で買ってしまったり、実家の荷物を早く運ぶように言われてとりあえず持ち込んだりしていると、家の中はいつの間にかゴチャゴチャになっていました。  さらに理江さんは、小さな頃から部屋が散らかっていても「あとで片づけよう」と、後回しにする性格。いざ片づけると決めたら、休みの日などに長時間かけて終わらせていました。  リビングのソファには洗濯物などがいっぱいで、ゆっくり座ることができません。理江さんが仕事から帰ったときに目に飛び込んでくるのは、脱ぎっぱなしの服や食べっぱなしのゴミ。家では家族にイライラをぶつけていました。  片づけた方がいいとはわかっていても、自分たちの生活に合った片づけ方がわからず、片づける習慣もありません。収納に関する本を買ってみましたが、どこから手をつければいいのか途方に暮れてしまいます。 家族が集まれる場所になりました。キッチンカウンターもスッキリ/アフター   「家族とも、『もっときれいなおうちがいいよね』という話はしていました。でも、みんな具体的にはどうしていいかわからなくて、何もできていませんでした」  そこで理江さんが思い出したのが、家庭力アッププロジェクト®です。1年ほど前に“45日間で家を片づけるプロジェクト”の存在を知り、長期休みのタイミングで申し込もうとしていたものの、そのときは参加しませんでした。調べてみると、また長期休みと重なる時期にプロジェクトが始まります。 「1年前に行動できていなかったから、家は散らかったまま……。今、決断しなかったら一生このままかもと思って、『やるしかない!』と参加を決めました」  片づけ始めると、なぜこんなにモノが多いのかがわかってきました。理江さんは「いいな」と思ったら、必要かどうかを考えもせず、すぐに洋服やアクセサリーなどを買っていました。それは娘たちも同じで、コスメや文房具などが家中いたるところに散乱していたのです。 「ヘアアイロンなんて、いくつも出てきました。そんなに必要ないですよね。気に入ったアイテムを色違いでそろえたくなってしまう“収集癖”みたいなのもあって、モノがどんどん増えていきました」  モノが増える原因がわかると、何かを買うときに「本当に必要かな」と一旦考えるように思考がチェンジ。衝動買いや定期購入を見直し、安易にモノを増やすことをやめると、月に数万円セーブすることにもつながりました。  さらに片づけを進める中で発見したことは、モノは使う場所に置くということ。  理江さんは今まで、“子どものモノは子ども部屋に置くべき”というように、モノの置き場所について固定観念にとらわれていました。わざわざ使う場所まで持って行き、その後に戻すのが面倒で使った場所に置きっぱなしになっていることが散らかる一因だったのです。 「娘の行動を観察すると、メイクポーチを持って移動していたんです。洗面所にメイク道具を入れる場所をつくってあげると、出しっぱなしがなくなりました。『使いやすい場所に置けばいいんだ!』っていうのは、当たり前なんですけど、自分にとっては大きな気づきでしたね」  使うモノを使う場所に置くことで、日常の小さなストレスもなくなります。家事を分担している夫に、「洗った食器はここに置いてほしい」と置き場所をシェアすると、意識してやってくれるようになりました。時間の使い方も変わり、隙間時間を活用して片づける習慣が身についたので、わざわざ片づけのためにまとまった時間を確保する必要はありません。 定位置のないモノや飲みっぱなしの食器が放置されたダイニング/ビフォー    片づけが終わる頃には、暮らしやすい環境が整っていました。家の中はスッキリして、きれいになったソファが置かれたリビングには家族が集まります。 「モノが散らかっていたし、私もイライラしていたので、みんな自分の部屋にこもりがちでした。でも、今は自然とリビングで過ごすようになって、会話も増えましたね。片づけ終わってから家族旅行をしたときも、子どもたちがケンカすることもなく、夫婦の会話も多くて……。すごく楽しかったんです! 片づけを通して私が変えたかったのは、当時の家族の状況だったんだなって気づきました」  現状を変えることは、とても大変なことかもしれません。変えるためには、強い気持ちを持って行動することが大切だということを、理江さんは教えてくれました。 「片づけようと決めたとき、また後回しにしていたら、今でも家族はギクシャクしてケンカしていたかも……。私も毎日イライラしていたんでしょうね(笑)。この穏やかな生活がなかったと思うと、あのときの決断は間違ってなかった!」 すぐに片づけてきれいな状態をキープできるようになりました/アフター    こう話す理江さんは、今の生活がとても充実していることが伝わってくる、とても素敵な笑顔です。 「前に進む行動でしか結果は変えられないから、とにかく行動することが大事」という理江さんの姿は、片づけに悩む人の背中を少しだけ押してくれることでしょう。 人生が変わる片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター 商品価格¥1,650 詳細はこちら ※価格などの情報は、原稿執筆時点のものになるため、最新価格や在庫情報等は、Amazonサイト上でご確認ください。
たった三口のビールで「失神」した女性医師 飛行機の「特殊環境」と体への意外な負荷
たった三口のビールで「失神」した女性医師 飛行機の「特殊環境」と体への意外な負荷 山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「飛行機内での体の負荷と変化」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。 *  *  *  夏休みシーズンが近づいてきましたね。旅行の予定を立てている方も多いのではないでしょうか。飛行機に乗って遠出するのはワクワクする一方で、意外なリスクも潜んでいるのをご存知でしょうか。  実は私は、目的地へ向かう飛行機の中で、ほんの三口のビールを飲んだだけで、突然、意識を失ってしまったことがあります。体質的にアルコールに弱いことは自覚していたものの、その日は「少しなら大丈夫」と油断してしまったのです。  普段、私はアルコールをほとんど口にしません。機会飲酒といっても、年に数回、ほんの数口。それ以上飲むと、顔が真っ赤になり、ひどい頭痛に襲われる体質なのです。だから、いつもなら飲み物を聞かれても、迷わず「水で」と答えています。  けれども、その日は違いました。日本からアメリカへの帰路、成田発サンディエゴ行きの国際線に乗り込んでいました。隣席の女性が、グラスに注がれたビールを美味しそうに飲んでいるのを見て、ふと、「私も飲みたい」と思ってしまったのです。たぶん、ここまでの疲労や緊張が、判断力を鈍らせていたのかもしれません。 「少しだけなら……」。そう思って受け取った小さな缶ビール。飲んだのは、わずか三口でした。  それからほどなくして、機内で配られた機内食を半分食べ終え、トイレで歯を磨いていたときのこと。ふと、ふらつきを感じ、「早く座らなきゃ」と通路を戻り始めたその瞬間、視界がくるくると回り出し、すっと意識が遠のいていきました。  気がつくと、機内後方のギャレーの床に倒れていました。倒れ方が幸いし大事には至りませんでしたが、肩や腕を強打し、立ち上がれないほどのめまいと吐き気に襲われました。  何度も飛行機に乗ったことのある私が、機内で突然失神するなど、まったく想定外の事態でした。しかし、後から冷静に振り返ると、その背景には「飛行機」という特殊な環境があると気づきました。  機内は、気圧が地上より低く、標高にしておよそ2000m相当の環境に設定されています。酸素分圧は通常より20%ほど下がり、血中の酸素飽和度も92~93%程度と軽度の低酸素状態になります。つまり、私たちの身体は見た目以上に「がんばっている」状態なのです。  そこにアルコールが加わるとどうなるか。血管拡張、脱水傾向、そして酔いの回りが早くなります。たとえ少量であっても、地上とは比べものにならない影響が出ることがあるのです。 たったビール三口でまさかの失神(写真はイメージ/GettyImages)  最近の研究(Trammer et al., 2024, Thorax)では、飛行機と同程度の低気圧環境下(標高約2400m相当)で飲酒した若年健康者において、睡眠中の血中酸素飽和度(SpO₂)が平均85%台まで低下し、心拍数が上昇、深い睡眠(ノンレム睡眠第3期)やレム睡眠が著しく減少したことが報告されています。  当初は旅の疲れや寝不足のせいかと思っていましたが、私のようにふだんアルコールに弱い体質の人間が、時差や疲労を抱え、酸素濃度の低い機内で飲酒すること自体が、身体にとっては思った以上に大きな負荷だったのです。それが「たった三口」であっても。  旅先では、非日常感やワクワク感から、いつもと違う選択をしてしまいがちです。周囲の雰囲気に流されたり、少しの解放感から普段はしないことをしてしまったり。でも、そんな些細な選択が、自分の体にとっては“引き金”になることがある。自分の体質を十分知っていながら「少しなら大丈夫」と思ってしまったのは、やはり甘かったのだと痛感しました。  この経験を通して、私はその後、飛行機では一切のアルコールを控えています。機内では、水分補給をこまめに行い、体を休めることを最優先する――それが、自分の命を守るために必要な小さな決断だと思っています。  大切な旅を安心して楽しむためにも、自分の体に正直になること。それが何よりの「旅支度」なのかもしれません。 【参考文献】 Trammer et al. (2024). Effects of moderate alcohol consumption and hypobaric hypoxia: implications for passengers’ sleep, oxygen saturation and heart rate on long‑haul flights. Thorax
30代男性「なんて卑怯な国なんだ!」 戦禍のニュースに憤激し…スマホで「ドゥームスクローリング」に沼るワケ
30代男性「なんて卑怯な国なんだ!」 戦禍のニュースに憤激し…スマホで「ドゥームスクローリング」に沼るワケ スマホで知らず知らずのうちに、暗い不穏な情報ばかり追い続けてはいないだろうか(写真はイメージ/gettyiamges)  スマホなどで暗いニュースや情報ばかりを追い続けてしまうことを「ドゥームスクローリング」と呼ぶ。精神面への悪影響が指摘されているが、自宅でもスマホが手放せないような依存度が高い人が、自覚できないまま陥ってしまうケースが目立つという。外出が億劫になりがちな梅雨時や真夏は“危ない”季節。どんな対策が有効なのか。 *   *   * 悲惨なニュースをあさり続けた  さいたま市に住む30代の会社員男性は、2022年の春に3~4カ月ほど、スマホで戦争の悲惨なニュースをあさり続ける日々を送った。  きっかけは、その年の2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻だった。 「よく行く酒場の飲み仲間の男性で、やたらこの問題を語りだした人がいて、周りの客と議論したりしていて。僕は無知なのでまったくついていけず、恥ずかしくもあったのかな。スマホでウクライナ侵攻のニュースやSNSの情報を見るようになったんです」(男性)  独身で、もともと友人は多くはない。コロナ禍で「黙食」しつつスマホを見たり、自宅での巣ごもり生活が続く中で、スマホをだらだらといじり、SNSなどを見る癖がついてしまっていた。陰謀論に興味を持ったこともあった。それが、ロシアのウクライナ侵攻の情報あさりに置き換わった。 ロシアふざけんな、負けちまえ! 「ウクライナの女性が泣いている姿やおびえている子どもを見ているうちに、だんだんと苦しくなって。なんでこんなことが起きているんだと知りたくなって、さまざまな情報に接するようになりました。同時に『ロシアふざけんな、負けちまえ!』と憤りも感じるようになりました」  ウクライナ軍が攻勢とのニュースには心が晴れる思いがした。だから戦況の好転を期待してスマホをチェックするが、ほとんどはウクライナの悲劇的なニュースだ。気付けば通勤中も食事時もベッドでも、ウクライナの悲惨なニュースや情報を見続けるようになっていた。 「ボルシチ」についてのSNSにも怒り  ロシア料理のイメージがあるボルシチは、実はウクライナ発祥だ。そのことについて「ロシアが食文化を盗んだ」などと書かれたSNSを見た時には、怒りがこみ上げたという。 「笑われるでしょうが、なんて卑怯な国なのかと」と振り返る男性。記憶はないが、兄と会った時にもウクライナ侵攻について熱弁したことがあったらしい。  男性が「沼」に沈み切らずに抜け出せたきっかけは後述するが、なぜわざわざ悲惨な情報ばかりにハマってしまう現象が起きるのか。スマホを見続けるにしても、前向きな情報を見た方が楽しいはずだ。 コロナ禍にドゥームスクローリング  日本デジタルデトックス協会の森下彰大理事によると、「ドゥームスクローリング」という言葉は、コロナ禍に、海外のメディアで登場するようになったという。  森下さんは「心理用語で『ネガティビティ・バイアス』と呼ばれますが、人の脳はそもそも、ポジティブな情報よりネガティブな情報に強く反応する性質があります。また、新しい情報をより欲する特性があるのです」と指摘する。  戦争などに関する情報は「ネガティブ」で「新しい」。そんな情報がランダムに、大量に届く。さらにスマホだと、すぐにそれらにアクセスできる。 「依存性が高まる要件を満たしている上に、同じような内容のニュースが表示されやすい。さらに自分と似た意見を持つ人の情報ばかりが集まる『フィルターバブル』という現象が起きます」(森下さん)  結果、どうなるのか。 フェイクニュースを疑えなくなる 「情報をあさり続けることで脳に疲労が蓄積し、情報の選別ができなくなっていきます。明らかなフェイクニュースなのに、疑うことができなくなってしまう恐れがあります」  うつ状態になったり、脳のキャパシティがなくなった結果、考える力が衰えたり物覚えが悪くなったりして、仕事の能率が著しく落ちてしまう。  さらには正義感から「みんなに知ってほしい」との思いにとらわれて、その話ばかりや、はては陰謀論めいた話まで周囲に語ってしまい、対人関係に支障をきたすケースもあるという。個人にとどまる問題ではないのだ。 社会的孤立や孤独  ドゥームスクローリングの背景には、社会的孤立や孤独があるのではないかと森下さんは指摘する。 「他人と気兼ねなく対話をする場が少ないから、ネットの世界にこもる。同じような情報やSNSの意見に囲まれるため、そこが心地良い居場所になってしまうのだと思います」  いまこの時も、日本の先行きを不安視し、あおるようなニュースが少なくない。ウクライナ戦争も終結せず、中東情勢も不安定だ。ガザの悲惨な状況が連日報じられる。トランプ米大統領の施策による「分断」も指摘されている。  ドゥームスクローリングに陥らないためには、どんな対策が有効なのか。  森下さんは、「歴史上、どの時代も不安定で悲劇的な出来事があり、今が特別に激動の時代ではないことを知る必要があります」と指摘する一方で、「人間がネガティビティ・バイアスに抗うことは不可能で、意思が弱いなどと自分や他人を責めることに意味はない」とも言い切る。 こまめにスマホを休んでは  まずは、脳に情報を詰め込み過ぎている状態を脱するため、こまめにスマホを休むことだ。  一人ランチ中や赤信号で立ち止まっている間。家でトイレや布団に入るとき。電車の一部区間だけ、などできることから始めたらいいという。  スマホを使うなら、いつも見ているニュースアプリやSNSを一度変えてみる。できるなら、短期間でいいからアプリを削除してみる。 外での居場所を作る 「外での居場所を作っておくこともとても大切です。できれば年齢や性別、職業がバラバラな人たちと話せる場があると、自分の姿が見えやすくなり、ドゥームスクローリングのような『呪い』はとけやすくなると思います」  前出の男性も、沼から抜け出せたきっかけは、よく行く酒場だったという。「あのおっさんの話、しつこくてうざい」。「どこの学者だよ。どうせ嘘なんだろ」などとウクライナ侵攻を語っていた男性の悪口を、他の客たちがしているのを聞いたからだ。 「もうボロカスに笑われていました。話を嫌々合わせていただけだったんだと。僕が悪く言われているようにも聞こえて、初めて恥ずかしさに似た感情が湧きました」と男性は振り返る。ウクライナについて考えることは大切だと思うからニュースは今でも見るが、あさるほどではなくなり、情報とも距離を作れるようになったという。 情報の偏食がもたらすもの  オンライン上で起きやすい“情報の偏食”。「ストレートニュースだけではなく、多くの取材調査に基づいた記事を配信するスローメディアをはじめ、異なる観点からの意見にも触れることが大切です」と森下さんは語る  スマホの使い過ぎによる問題はドゥームスクローリングだけではない。  脳の情報処理能力が落ちてしまう「スマホ脳疲労」の問題。  昨年、英国のオックスフォード大学出版局は「今年の言葉」に「ブレイン・ロット(脳腐れ」を選んだ。「つまらないオンラインコンテンツの過剰消費により、精神状態や知的水準が低下すること」と定義された。  便利なスマホによる弊害のリスクを、誰もが抱えている。 「一週間だけ、いつも見ているSNSのアプリをアンインストールしてみたらと提案すると、『絶対ムリ!』なんて言い切る方がいますが、やってみたらなんのことはなくて、なくても困らないことに気付くんですよ。ここまで頻繁に情報を追う必要はなかったと、その気づきを得るきっかけが大切だと考えています」(森下さん)  外出が億劫になる梅雨時や猛暑の真夏。ちょっとしたデトックスを習慣づけることから始めてみたい。 (ライター・國府田英之)
進次郎流コメ改革は「表層的」と立憲民主党・小川淳也幹事長 参院選は「古い政治にとどめを刺す」
進次郎流コメ改革は「表層的」と立憲民主党・小川淳也幹事長 参院選は「古い政治にとどめを刺す」 小川淳也・民主党幹事長  衆議院で与党が過半数を割る中で、7月20日に投開票が行われる見込みの参院選は、事実上の政権選択選挙の様相も帯びている。千載一遇のチャンスに野党第1党の立憲民主党は、どう臨むのか。小川淳也幹事長が語った。 *  *  * ――今回の参院選が持つ意味を教えてください。  現在、衆議院ではすでに野党が過半数です。通常、参院選は政権の信任や中間評価の意味合いが強い選挙ですが、今回は事実上の政権選択選挙と位置付けています。私たち立憲民主党にとっては、政権交代を目指す重要な選挙です。 ――今回の参院選で過半数を獲得すれば、政権交代が視野に入ってきます。  2009年の(自公からの)政権交代も、07年の参院選で自民党・公明党が過半数を割ったことが大きな契機。今回はすでに衆議院で野党が過半数を握っているため、この参院選でとどめを刺す――古い政治に終止符を打ちたい。現在、「外堀」は埋まりつつあり、次は「内堀」を埋めて「城」を落とす段階です。 ――改選議席は124。自公は50議席を確保すれば参院全体の過半数を維持できる。一方、野党は焦点である全国32の「1人区」で、候補者の一本化が進んでいません。  1人区での候補者一本化は理想ですが、党利党略を主張すると、どうしても衝突が起きます。ただ古い政治を変えるためには、時には譲り合わなければならない。  ともに旧民主党を源流とする兄弟政党の国民民主党とは反目しているとも言われますが、私たちは対立していません。常に協力を呼びかけていますし、国民民主側からも一定の理解を得ている。ただ、同党は近年さまざまな議論の中心にあり、新たな支持層も形成されています。その中には、かつて安倍政権や日本維新の会に期待していた層も含まれ、やや右寄りの支持層があると見られます。こうした背景から、立憲との歩調合わせに慎重になっている側面があるのでしょう。かつて一緒にやっていたからこそ、いがみ合いには難しさが伴う。現実の兄弟も、そういうもの。基本的には、大きな政党が謙虚に、懐深く構えるべきです。 農政の本質的な課題を解決すべき ――野党共闘には維新の協力も不可欠です。  立憲、国民民主、維新という中道系3党が足並みをそろえれば、1人区で自公勢力と互角以上に戦えるはずです。さらに、接戦区や激戦区では共産党などほかの野党とも選挙区調整を進める必要があります。実際、支持団体の連合からも「一定の選挙区調整は認める」というメッセージを受け取っています。 ――「コメ」問題も参院選の争点になりそうです。農林水産相が小泉進次郎氏に代わってから、随意契約で備蓄米を放出するなどしたことで、自民が勢いづいているという見方もあります。  彼の真価が問われる局面だと思います。一瞬で話題をさらうお父様(小泉純一郎元首相)譲りの劇場型政治には、さすがに才能のある方だと感じます。ただ、かつての「気候変動にセクシーに取り組む」といった発言などで不可解だという印象を持たれた過去もあります。  そもそも国民の税金で調達し保管しているコメを、理屈をつけて安く、あるいは無償で放出することは、政府がその気になればできないことではなく、現に行われています。一方で、コメを作っても赤字という構造や、耕作放棄地、農地の宅地転用、生産者の高齢化と後継者不在など、農政の本質的な課題には手がつけられていない。それを解決せずに、国民の税金を使ってコメを安く放出するのは形を変えた国民負担にすぎず、根本的な解決にはならない。やっていることが表層的だと感じます。 ――立憲民主党は、食料品の消費税率を原則1年間ゼロ%に引き下げ、給付や所得税の控除を行う「給付付き税額控除」に移行する方針です。かつて消費増税を主導した野田佳彦代表や、北欧型の25%消費税を提唱していたご自身の姿勢が揺らいでいると映ることはありませんか。  私は今でも北欧型の社会をひとつの理想と考えています。ただ、その考え方がひとり歩きしてしまったことについては大きな責任を感じており、訂正や修正、そしてお詫びの意を表してきました。代表も「社会保障と税の一体改革」に取り組んだ責任を今も重く受け止めておられます。 基礎年金が3割目減りする未来  それと現在の状況は切り離して考えるべきです。アベノミクスによる円安が進み、依然として食料やエネルギーの多くを輸入に頼っています。その一方で、賃金や年金はなかなか上がらず、非正規雇用が拡大しています。このような中で当面の物価高にどう対応し、生活の安定を取り戻すかが重要な課題です。消費税率にこだわる局面ではないでしょ。 ――就職氷河期世代の中には非正規雇用といった不安定な働き方をしている人も多い。今後、氷河期世代が年齢を重ねていくうえで、対策は考えていますか。  このまま将来にわたって放置すると、基礎年金が3割目減りするんです。少なくとも基礎年金を3割も目減りさせてしまって社会を維持できるのかという課題を含めた社会保障政策が必要です。加えて、比較的単身世帯が多いとも言われているため、支援付き家賃補助をはじめとする住宅政策。さらに、生涯にわたって社会に居場所を持つことが必要だと思うんです。  そういう意味では、横のつながりや、あるいは雇用の場も柔軟で公平、かつ安定的なものにしないといけない。雇用法制という観点からも、アプローチしていかなければなりません。この世代は人数も多く、いわゆる「団塊ジュニア」世代でもありますから、この層への対応ができるかどうかは、今後、社会を維持できるかどうかに大きく関わってくるという認識です。 ――今回の参院選、野党での目標議席は。  改選(124議席の)過半数、願わくは全体(248議席の)過半数。これは達成しなくてはなりません。政権は永続するのがよいのか、定期的に交代すべきなのか……。民主主義をうまく機能させるには、どちらが健全なのか。それが、今もっとも大きく問われているテーマだと思います。その答えを、有権者に出していただく。そういう意味で、今回の都議選・参院選は、歴史的な節目となる選挙になるのではないでしょうか。そして、そうしなければならないと感じています。  (AERA編集部・古寺雄大) 【特集:どうなる?参院選】 ■全選挙区当落予測 【参院選「全選挙区当落予測」つき】東北地方は立憲の圧勝! 東京は「国民」元NHK女性アナウンサーの動向がカギ 【参院選「全選挙区当落予測」つき】京都は舌禍事件あっても「自民・西田氏」が濃厚 和歌山「二階氏の三男」は評価分かれる ■注目候補インタビュー 「主戦場は衆院」発言の音喜多駿氏が参院選出馬 "出戻り”批判も負けたら「切腹」、49歳で総理の夢は「55歳までに下方修正」 蓮舫氏「嘘つきという批判にはごめんなさいと言うしかない」 参院選出馬“世間からの猛批判”に何を思うのか 【参院選・新人候補】元関西テレビアナ・新実彰平氏(維新)が目指す政治家は「橋下徹」と「小川淳也」のハイブリッド 【参院選・新人候補】「一人で戦っていない」 タイガーマスク運動の先駆け・河村正剛さんが保守王国・群馬に殴り込み 【参院選・新人候補】オリラジ中田の弟「中田フィッシュ」が「自民党」から出馬するワケ 「僕を選ばなくていいんですか?」と自信 ■各党の選挙戦略 都議選で大敗の自民党・木原誠二選対委員長 「参院は過半数維持が最低ライン」「消費減税は難しい」 創価学会員の高齢化&都議選も候補者落選…「公明党」は参院選をどう乗り切るのか 三浦信祐選対委員長「与党として生まれ変わる」 進次郎流コメ改革は「表層的」と立憲民主党・小川淳也幹事長 参院選は「古い政治にとどめを刺す」 都議選で全員落選「日本維新の会」の厳しい現実…参院選の目標議席は本当に「6」でいいのか? 岩谷良平幹事長に聞いた
創価学会員の高齢化&都議選も候補者落選…「公明党」は参院選をどう乗り切るのか 三浦信祐選対委員長「与党として生まれ変わる」
創価学会員の高齢化&都議選も候補者落選…「公明党」は参院選をどう乗り切るのか 三浦信祐選対委員長「与党として生まれ変わる」 公明党の三浦信祐選挙対策委員長(撮影/大谷百合絵)    7月3日に公示される夏の参院選に向けて、各党は選挙戦に向けた動きを本格化させている。衆議院では少数与党である自民・公明両党が苦しい政権運営を強いられる中、参院選で自公が過半数を獲得できるかが焦点となる。公明党は先の都議選でも36年ぶりに候補者が落選するなど厳しい選挙が続いており、支持母体である創価学会の集票力にもかげりが見える。参院選はどのような戦略で挑むのか。三浦信祐選挙対策委員長(50)に展望を聞いた。 *  *  * ――今年は都議選と参院選が重なる12年に1度の“ダブル選挙”です。公明党は結党以来、都議選を最重要選挙の一つに掲げて総力を挙げてきましたが、その直後の参院選は例年以上に負担が大きいのでは。  負担の大きさは、わが党に限らず計り知れないものがあり、どの党も相当な力を注いでくるでしょう。われわれとしては、これまでの実績とこれからのビジョンを懸命に訴えること以外、特別な戦略というのはありません。幼児教育・保育の無償化、携帯電話料金の引き下げ、不妊治療の保険適用など、与党として粘り強く取り組んできた成果をアピールします。 ――斉藤鉄夫代表は6月6日、食料品を対象とした消費税の軽減税率の引き下げを参院選の公約に盛り込むことを断念すると発表しました。直近まで減税の必要性を強く訴えていたにもかかわらず、なぜ急にトーンダウンしたのですか。  公約では「減税と給付による生活応援」を柱の一つとして掲げており、減税に後ろ向きになったというのは事実誤認です。所得税のさらなる負担減のほか、自動車ユーザー減税や奨学金減税なども打ち出しています。  軽減税率引き下げについては、物価高対策のための時限的取り組みとして公約に掲げるのではなく、中長期的な福祉政策として重要政策課題に組み込み、議論を重ねるスタンスを鮮明にしました。軽減税率導入を訴え続けて実現にこぎつけたわが党としては、次は恒久的引き下げを検討すべきだと問題提起をしたつもりです。 公明党の三浦信祐選挙対策委員長(撮影/大谷百合絵) 「2万円給付はバラマキだ」の声に思うこと ――軽減税率引き下げを公約から外したことについて、党内からは「自民党に押し切られた」「目玉政策がないと選挙戦で戦いづらい」という不満の声も上がっているようですが。  公明党はこれまで、上層部が決めた方針に全員が従うイメージが持たれていたかもしれません。それにもかかわらず、そのような報道がされているのは、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論をして、さまざまな意見が出る政党にアップデートしたと評価していただいていることの裏返しでしょう。ありがたいですね。  軽減税率に関する方針は、自民党さん云々というより、党内で深い議論を重ねたことで責任ある結論を導き出したということです。代わりの目玉政策としては、公明党が福祉の党である以上、エッセンシャルワーカーの所得向上は譲れないポイントです。また、政策実現に向けた財源を生み出すために、政府系ファンドの創設も掲げています。 ――自民・公明両党は物価高対策として、国民1人あたり2万円の給付を公約に盛り込む方針です。「2万円もらったところで財布のひもは緩くならない」「選挙対策のバラマキだ」といった世論の反発をどう受け止めますか。  われわれは今年度、所得税の非課税枠である“103万円の壁”を“160万円の壁”に引き上げる税制改正法を成立させました。これにより1世帯あたり2万~4万円の減税効果が見込め、生活者の方々からは「この物価高の中で非常に助かる」という声が届いています。数万円の還元でも必要とされている現実があるのです。即効性のある対策として、減税よりも給付のほうが理にかなっていると考えます。 ――2022年の参院選は比例区での得票目標を800万票と掲げていましたが、結果は618万票でした。公明党を支える創価学会の会員減少が、党勢退潮に影響しているのでしょうか。  創価学会が最大の支持母体であることは事実ですが、大衆政党であるわれわれが政治活動において一貫して大切にしてきたのは、すべての国民のみなさんとの対話です。近年の得票減少は、ひとえにわれわれの力不足です。今回は比例区で700万票の獲得を目指します。 公明党の三浦信祐選挙対策委員長(撮影/大谷百合絵) 公明党議員がインフルエンサーと討論 ――とはいえ、「公明党=創価学会の政党」というイメージは根強いと思います。それを払拭(ふっしょく)するための策はありますか。  YouTubeの「公明党のサブチャンネル」は、その役割を担っていると思います。議員がネット上のインフルエンサーと討論するような動画もあり、党の考え方や取り組みを多くの人に知っていただくための努力を重ねています。 ――昨年の衆院選は、自民党の政治とカネの問題を受けて自公が大敗しました。公明党の比例票は596万票で、1996年以降の現行制度では過去最少でしたが、自民党と連立を組んでいるからこその逆風は実感しますか。  衆院選の結果を受け、支持者の皆さんからは厳しい声を含めさまざまなご意見をいただきました。しかし、政治資金改革をリードしていくことこそがわれわれの役割だと考えています。政治資金規正法の改正という一定の成果はあげましたが、第三者機関の設置をはじめ、引き続き再発防止に向けた取り組みを進めなければいけません。  今回の参院選には、与党として生まれ変わる思いで臨みます。自民党さんとは選挙協力について合意を交わしており、政治資金問題に関わった自民党公認候補への推薦要請が来た場合は、その可否について総合的に判断しています。 ――今年1月には斉藤代表が連立解消の可能性をにおわせました。石破政権において、自公のパイプが脆弱(ぜいじゃく)なのではないかという見方もありますが、参院選後の連立のあり方についてどう考えていますか。  少数与党という状況下でも、さまざまな法律や予算を成立させてきたことは、両党の連携がなければ不可能だったでしょう。斉藤代表と石破首相、また私と木原誠二・自民党選対委員長も日ごろからよくコミュニケーションを取っており、何をもって「パイプが弱い」と言われるのか分かりません。  今、アメリカのトランプ大統領との関税交渉をはじめ、国際情勢は戦後最大の転換期を迎えています。国内政治を安定させて責任を持って政策を実行できるのは、これまでさまざまな課題を乗り越えてきた自公連立政権という枠組み以外にない。この考えが、選挙前後で揺らぐことはありません。そのためにも、選対委員長である私の役目としては、目の前の参院選で自公過半数をきちっと取ることに尽きると思います。 (聞き手・構成/AERA編集部・大谷百合絵) 【特集:どうなる?参院選】 ■全選挙区当落予測 【参院選「全選挙区当落予測」つき】東北地方は立憲の圧勝! 東京は「国民」元NHK女性アナウンサーの動向がカギ 【参院選「全選挙区当落予測」つき】京都は舌禍事件あっても「自民・西田氏」が濃厚 和歌山「二階氏の三男」は評価分かれる ■注目候補インタビュー 「主戦場は衆院」発言の音喜多駿氏が参院選出馬 "出戻り”批判も負けたら「切腹」、49歳で総理の夢は「55歳までに下方修正」 蓮舫氏「嘘つきという批判にはごめんなさいと言うしかない」 参院選出馬“世間からの猛批判”に何を思うのか 【参院選・新人候補】元関西テレビアナ・新実彰平氏(維新)が目指す政治家は「橋下徹」と「小川淳也」のハイブリッド 【参院選・新人候補】「一人で戦っていない」 タイガーマスク運動の先駆け・河村正剛さんが保守王国・群馬に殴り込み 【参院選・新人候補】オリラジ中田の弟「中田フィッシュ」が「自民党」から出馬するワケ 「僕を選ばなくていいんですか?」と自信 ■各党の選挙戦略 都議選で大敗の自民党・木原誠二選対委員長 「参院は過半数維持が最低ライン」「消費減税は難しい」 創価学会員の高齢化&都議選も候補者落選…「公明党」は参院選をどう乗り切るのか 三浦信祐選対委員長「与党として生まれ変わる」 進次郎流コメ改革は「表層的」と立憲民主党・小川淳也幹事長 参院選は「古い政治にとどめを刺す」 都議選で全員落選「日本維新の会」の厳しい現実…参院選の目標議席は本当に「6」でいいのか? 岩谷良平幹事長に聞いた
都議選で大敗の自民党・木原誠二選対委員長 「参院は過半数維持が最低ライン」「消費減税は難しい」
都議選で大敗の自民党・木原誠二選対委員長 「参院は過半数維持が最低ライン」「消費減税は難しい」 自民党の木原誠二選対委員長(撮影はいずれも写真映像部・佐藤創紀)  7月20日に投開票が見込まれる参院選に向けて準備が各党で進んでいる。参院選は、一般的に政権与党の「中間テスト」的な意味合いが強いと言われる。だが、衆議院で与党が過半数を割っている現状では、事実上の政権選択選挙となる。敗れると政権崩壊・下野も現実味を帯びる自民党は、参院選をどのように戦うのか。木原誠二・選挙対策委員長に聞いた。 * * * ――衆議院で与党が過半数割れする中で迎える参院選です。位置づけを教えてください。  いま、我々が少数与党として政権を担っているのは、参議院で過半数を持っているからにほかなりません。だから今回の参院選は通常の「中間選挙」ではなくて、まさに政権選択の選挙になる。引き続き自民党・公明党が政権を担うのか、それとも野党のみなさんなのか、それを判断していただく選挙です。 給付は意味のある物価高対策  争点は大きく2つあると考えています。1つは今までの自公政権への評価です。3年前に540兆円だったGDPは610兆円になり、国内への投資も国民への賃金支払額も大きく伸びています。明らかに経済の体質は改善しているし、新たな成長軌道に乗っている。まずはこれを実績として、評価を問いたいと考えています。  もう1つが物価高対策です。経済が上向いているとはいえ、物価高を乗り越えない限り消費は盛り上がらず、これ以上の成長は見込めません。物価高対策をいかに打っていくか、が2つ目の争点ですね。 ――物価高対策を巡っては、立憲民主党は食品の消費税を原則、1年間0%にすることなどを掲げました。ほかの野党各党も消費減税を訴える一方、自民党では給付金の議論が盛んです。  給付や減税だけが物価高対策ではありません。僕はもっとしっかりしたパッケージであるべきだと思っています。我々は既に、先々までの対策をやっています。ガソリンはもう補助を入れてそろそろ160円台にまで下がってきそうですし、電力も7月からやらせていただく。コメは新たに農林水産相になった小泉進次郎さんが随意契約で備蓄米を出すようにし、熱くなりすぎた市場をいま冷やしている最中です。 ――消費税の減税についてはいかがですか。  消費税の減税は難しいですね。国際マーケットが不安定で、減税すれば金利上昇を招くリスクをはらんでいます。物価高対策という意味での即効性もないし、消費税率の変更に伴い会計や税務のシステムを変えるとなると、相当な期間が必要になります。一方で、給付は意味のある物価高対策になると思います。 32ある「1人区」はいずれも重点 ――自民党、あるいは与党としての参院選の目標議席や勝敗ラインをどう見ていますかか。改選となるのは自民52、公明14の計66議席で、50議席を確保すれば与党で参院全体の過半数に達します。  選挙戦に入っていない今の段階で私の立場から言えるのは、とにかくできるだけ多く。つまり全勝が目標ということですね。参院で、過半数を維持するのは最低ライン。今の時点ではできる限り多く勝てるようにやっていきたいです。 ――重点選挙区についてはいかがでしょうか。  32ある「1人区」はいずれも重点になってくるでしょう。ここで勝ち切らないと、全体の勝利が見えてきません。それにあまり言われていませんが、比例。6年前の参院選では我々(自民)は19議席(3年前は18議席)。比例はかなり振れ幅がありますが、19というのは、結構高い目標です。どこまで19に近づけるかも一つの勝負です。 ――改選数「6」に加え、補欠選「1」の東京選挙区はいかがでしょうか。2人目の自民党公認候補として、元NPO代表の渡部カンコロンゴ清花氏が取りざたされましたが、最終的には初代スポーツ庁長官で元水泳選手の鈴木大地氏に決まるなど混乱が見られました。  我々の中で混乱があったわけではありません。最終的な決定をする前の段階で報道が出て、騒ぎになったということです。改めて仕切り直して鈴木大地さんに決まったわけですから。私のような世代にとってはヒーローでもある方です。東京は激戦になりますが、昔のように2人のうち1人は地上戦、もう1人は空中戦にしたり、2人で地域を分けたりすることは考えていません。 ――1人区の勝敗は野党の状況も影響しますが、今のところ野党の足並みがあまりそろっていません。どう見ていますか。  野党のことなのでコメントすることは特にないんですが、私から見てそもそも野党間で政策が一致してないですからね。安全保障政策、財政、教育に対する考え方……。ほとんど一致していないように見えるので、一本化すること自体がどうなのかな、と感じます。 ――参院選で勝利を収めても衆院では過半数割れの状況が続きます。選挙後に立憲民主と大連立したり、ほかの野党と組んだりする可能性はありますか。  まずは自公で参院選に勝たないことには始まらないですから、しっかり勝たせていただけるよう戦います。そのうえで、それでも衆院の構成は変わらないし、通常国会もかなり苦労しましたから、そこをどうしていくかは考えなければならないですね。ただ、参院選の結果を見てからの話です。 暮らしにくさを補うのは? ――日本社会を見渡すと、いわゆるロスジェネ世代、就職氷河期世代を中心に、非正規で働いたり、苦しい生活を強いられたりしている人が大勢います。  私は岸田政権時代に官房副長官を務めてきましたが、岸田政権が一番力を入れたのが人への投資、リスキリングです。技術を身に付けていただいて、それによって少しでも賃金を上げていくことが基本でしょう。  岸田政権で人への投資に力を入れて、賃金は上がってきています。そして、一定の流動性が生まれている。もちろん無理に流動させる必要はありませんが、転職が少し進むようになり、賃金が上がるという意味ではこの2年で明らかに成果が出ていますし、労働生産性も上がってきているので、手応えは感じています。 ――少子化問題、人口減少社会についてはどう捉えていますか。2024年の出生数は約68万6千人と衝撃的な数字でした。  私自身は年間200万人弱が生まれていた世代ですから、60万人台というのは衝撃的です。我々も子育て支援予算の倍増などいろいろなことに取り組んできましたけれど、もう一度、お子様を持つことの価値や楽しみを社会全体で考える時期に来ているかなという気はします。  ただ、人口減は偏在の問題とも関連してきます。東京にだけ人口が集中していることをどう考えるか。人口が減っているのは事実ですが、国の存続にかかわる事態になっているかというと、僕はまだそうではないと思う。 まずは東京一極を是正しながら、地元でも生涯を暮らせるような仕組みにしていくことが重要です。生まれた地で暮らすことに喜びや誇りを感じることは多いので、暮らしにくさは移住といったことではなく、技術で補っていく。自動運転やドローン宅配、リモート手術などが発展していけば、地方でもより暮らしやすくなるはずです。 (聞き手・構成/AERA編集部・川口穣) 【特集:どうなる?参院選】 ■全選挙区当落予測 【参院選「全選挙区当落予測」つき】東北地方は立憲の圧勝! 東京は「国民」元NHK女性アナウンサーの動向がカギ 【参院選「全選挙区当落予測」つき】京都は舌禍事件あっても「自民・西田氏」が濃厚 和歌山「二階氏の三男」は評価分かれる ■注目候補インタビュー 「主戦場は衆院」発言の音喜多駿氏が参院選出馬 "出戻り”批判も負けたら「切腹」、49歳で総理の夢は「55歳までに下方修正」 蓮舫氏「嘘つきという批判にはごめんなさいと言うしかない」 参院選出馬“世間からの猛批判”に何を思うのか 【参院選・新人候補】元関西テレビアナ・新実彰平氏(維新)が目指す政治家は「橋下徹」と「小川淳也」のハイブリッド 【参院選・新人候補】「一人で戦っていない」 タイガーマスク運動の先駆け・河村正剛さんが保守王国・群馬に殴り込み 【参院選・新人候補】オリラジ中田の弟「中田フィッシュ」が「自民党」から出馬するワケ 「僕を選ばなくていいんですか?」と自信 ■各党の選挙戦略 都議選で大敗の自民党・木原誠二選対委員長 「参院は過半数維持が最低ライン」「消費減税は難しい」 創価学会員の高齢化&都議選も候補者落選…「公明党」は参院選をどう乗り切るのか 三浦信祐選対委員長「与党として生まれ変わる」 進次郎流コメ改革は「表層的」と立憲民主党・小川淳也幹事長 参院選は「古い政治にとどめを刺す」 都議選で全員落選「日本維新の会」の厳しい現実…参院選の目標議席は本当に「6」でいいのか? 岩谷良平幹事長に聞いた
佳子さま   地球の裏側でもメイドインジャパン!  「海の宝石」真珠と青の装い 作り手は皇室デザイナーの「教え子」
佳子さま   地球の裏側でもメイドインジャパン! 「海の宝石」真珠と青の装い 作り手は皇室デザイナーの「教え子」   リオデジャネイロ植物園の日本庭園で、説明を聞きながら笑顔を見せる佳子さま=2025年6月13日午前9時54分、ブラジル・リオデジャネイロ  秋篠宮家の佳子さまが訪問先のブラジルでお召しだった装いは、日本とブラジル双方で話題になった。日本工芸会の総裁職を務める佳子さまは、積極的に各地の伝統工芸品のアクセサリーを身につけてきた。そしてブラジル訪問では、高い質と技術で生み出された日本製(メイドインジャパン)の洋服をお召しになる機会も多かった。 *    *    * 「とってもすてきなダンスを見せてもらってありがとうございました」  6月13日、佳子さまはリオデジャネイロで日系社会・在留邦人が主催する歓迎行事に出席した。  サンバを披露した日本語学校の児童たちの前に歩み寄った佳子さまは、しゃがみ込むようにして目線を合わせて、ひとりひとりの手を握りしめると、そう感謝の気持ちを伝えた。  ひとりの女の子が感極まって涙をあふれさせると、そっと肩を抱きしめた。  歓迎会に先立つ午前、佳子さまは、日本人移住の歴史を紹介する「リオデジャネイロ日本人移住資料館」を訪れ、厳しい生活を送った当時の日系人たちが残した資料などを熱心に読み、案内者へ質問をした。  そして臨んだ歓迎行事の会場で佳子さまは、 「先人が歩んだ険しい道のりに想いをはせるとともに、日系の皆さまの歴史を改めて心に刻んでおります」  と、日本にルーツを持つ人びとへ語りかけた。会場のなかには、涙ぐむ人たちもいた。 日系社会・在留邦人が主催する歓迎行事。サンバを披露した少女が感極まって涙すると、佳子さまは優しく少女を抱きしめた=2025年6月13日午後4時24分、ブラジル・リオデジャネイロ  日本工芸会の総裁職を務める佳子さまは、公務では積極的に各地の伝統工芸品のアクセサリーを身につけてきた。  そして日本にルーツを持つ人びとが開いてくれたこの日の歓迎会の場には、メイドインジャパン(日本製)のブルーのセットアップと日本を代表する「海の宝石」である真珠のイヤリングの装いを選ばれたようだ。   リオデジャネイロ植物園の日本庭園でイペーの木を植樹する秋篠宮家の次女佳子さま=2025年6月13日午前9時57分、リオデジャネイロ  夏の広大な大西洋をイメージした青のグラデーションが美しいセットアップは、アパレルブランド「AKIKO OGAWA.(アキコ オガワ)」が、2025年の春夏コレクションとして販売した商品だ。  ふんわりとしたドレープが美しい、「オーシャングラデーションプリントシフォン ブラウス(税込73,700円)と、「オーシャングラデーションプリント スカート(税込99,000円)の品だ。 「佳子さま。うちの品と似たデザインのものをお召しでいらっしゃる…」  同ブランドの広報担当者は、ブラジルを訪問する佳子さまのニュースを目にしても、そんな感想を抱いていた。  しばらくすると、ニュースを目にした客から問い合わせが次々に入り出した。  ここではじめて「おや」と思い、各所に確認したところ、 「(佳子さまに)お買い上げいただいたようです」という確認が取れ、佳子さまがお召しなのは、「アキコ オガワ」のセットアップだと認識したという。 佳子さまがブラジルでお召しだったのは「AKIKO OGAWA.(アキコ オガワ)」のオーシャングラデーションプリントシフォン ブラウス(税込73,700円)。夏の広大な大西洋をイメージしたブルーのグラデーションとシフォン生地の透け感が美しい=「AKIKO OGAWA.」提供  同ブランドの商品は、六本木ヒルズや百貨店のセレクトショップで取り扱われている。同じシリーズの品は、早い時期に完売しているという。 「弊社のブランドは、生地の生産から縫製まですべて日本国内で作られています。英国のキャサリン妃も、公式の場で英国を代表するアレキサンダー・マックイーンなどの服をよくお召しです。佳子さまが弊社も含めて日本製の服を選んでくださっているのも、そうした自国の産業を応援するお気持ちからでは、と感じており、光栄です」  佳子さまは、日系の人びとに対面する日の装いに、この服を選んだ。   佳子さまがブラジルでお召しだったのは「AKIKO OGAWA.(アキコ オガワ)」のオーシャングラデーションプリントスカート(税込99,000円)。夏の広大な大西洋をイメージしたブルーのグラデーション柄を張り感のあるオーガンジーのサーキュラ―スカートに載せた=「AKIKO OGAWA.」提供  デザイナーの小川彰子さんがデザインしたこのセットアップは、福井にある機屋(はたや)で素材となる生地を生産し、奈良県の工場で美しい青のグラデーション柄を生地に転写したものだという。 「美しさのなかの強さ」をコンセプトのひとつに掲げる同ブランドは、芸能人やモデルだけでなく、働く女性にも人気だ。  小川さんは、立体裁断で仕上げるシルエットにこだわりをもち、素材との相性を考えながら丁寧に服を作り上げるデザイナーだ。  たとえば、佳子さまがお召しだったジョーゼットブラウス。  仕事などで忙しい女性たちでも服の手入れをしやすいよう、ポリエステル素材の生地を選んだ。その生地にもさまざまな工夫が詰まっている。  身体に負担のない着心地のよさを実現するためには、日本の機屋の繊細で高い技術が必要だ。 「一般的に使われる生地よりも薄くすることで、素材の軽さと透け感を向上させました。それによりグラデーションもより鮮やかに仕上がっています」(広報担当者)   この日の佳子さまは、日本製の青のセットアップ。大西洋をイメージした青のグラデーションの服に海の宝石である真珠のイヤリングを身に着けて、リオデジャネイロ植物園の日本庭園へ。説明を聞きながら笑顔を見せた=2025年6月13日午前9時54分、ブラジル・リオデジャネイロ  糸ひとつにもこだわりがある。たとえば、スカートのオーガンジー生地に用いている、ポリエステルのたて糸は、繊維を三角の断面に加工することで、自然な光沢感を出した。  よこ糸も化繊だが、綿のような天然素材の風合いがある。  実は、小川さんは、皇室と縁のある人物に洋服作りを学んでいる。  日本で最初のデザイン専門学校として知られる、桑沢デザイン研究所の学生だった小川さんは、オートクチュール科目を専攻。そこで指導していたのが、上皇后美智子さまの専属デザイナーを務めていた植田いつ子さんであったという。  植田いつ子さんからのからの学びは、小川さんにとって、服作りの大切な原点。  佳子さまがブラジルでお召しになったことも、喜んでいたという。   有田焼のイヤリングをつけて日系の人たちと懇談する佳子さま。鹿児島出身の根本一美さんに「西郷どんに似ていると思いませんか」と水を向けられ、思わず笑みがこぼれる=2025年6月14日午後3時8分...    ブラジルの東側に広がる夏の大西洋をモチーフにした佳子さまのセットアップには、日本のデザイナーや職人たちのモノづくりへの情熱が込められている。  このブラジル訪問で、佳子さまは日本製の洋服や着物だけではなく、輪島塗や有田焼のイヤリングも着用されていた。  日本をルーツとする人びとに、佳子さまが届けた「メイドインジャパン」の装い。公務における「佳子さま流」が、その輪郭をはっきりとさせてきたようだ。 (AERA 編集部・永井貴子)
遠足のお弁当作り、冷凍食品が豊富になったのに「ラク」にならないワケ 現役小学校教師が驚いたお弁当の変化とは
遠足のお弁当作り、冷凍食品が豊富になったのに「ラク」にならないワケ 現役小学校教師が驚いたお弁当の変化とは 時代とともに進化している遠足のお弁当(写真:松下先生提供)  遠足で子どもたちが楽しみにしているお弁当タイム。普段の給食は、全員が同じメニューですが、遠足で食べるお弁当は、中身も外側もボリュームも千差万別です。大阪の公立小学校の現役教師・松下隼司先生に、最近の小学生のお弁当事情や変化について、教えてもらいました。 残り物を詰めていた昔のお弁当  大阪の公立小学校で教師をしている松下隼司と申します。今年で教師になって23年目です。中学1年生の息子と、保育園年長の娘の父親でもあります。  私が子どものころや教師になったばかりのころは、遠足のお弁当のおかずは、唐揚げやコロッケなど、昨日の晩御飯のおかずが入っていることがよくありました。翌日の遠足のお弁当を考えて、前日の晩御飯のメニューを唐揚げやコロッケなどの揚げ物にして、お弁当用に多めに作っておくことが多かったと思います。そして、遠足当日の朝に、お弁当箱に詰めていました。前日の晩御飯の残り物の肉じゃがや、おでんが入っていることもありました。  そして、遠足の日に「昨日うちの晩御飯、唐揚げやってん」「うわ~、昨日の晩御飯の残り物が入ってる~!」など、子ども同士の会話がよく聞かれていました。  しかし最近は、とても暑さが増して食べ物が傷みやすくなりました。親御さんも衛生面のことを考慮して、遠足当日の朝は、普段より早く起きて、お弁当を1から作っているかと思います。前日の晩御飯のおかずを多めに作っておき、遠足のお弁当箱入れる光景はあまり見られなくなりました。 冷凍食品の進化にびっくり  遠足のお弁当を作る大変さを知ったのは、自分自身に子どもができ親になったときでした。私自身が親になるまでは、「明日、遠足のお弁当、楽しみやね~」と気軽にクラスの子どもたちに話していました。  遠足が雨で延期になったら、教室でお弁当を食べます。そのときも、親御さんの労力も知らない私は、子どもたちに気軽に、「今日は雨で遠足が延期になって残念やったけど、お弁当の日が増えて良かったね~。そう考えると、ラッキーやね」と楽しく話していました。  自分の子どもの遠足のお弁当は、妻が作ってくれています。  妻も働いていて、平日は忙しいので、遠足のある前の週の土日にお弁当の具材や冷凍食品をスーパーで買います。スーパーに行く前に、子どもに「お弁当に入れてほしいおかずは何?」「このお弁当箱の大きさで足りる?」「おにぎり何個?」「おにぎりの具は?」など、お弁当の中身と量を確認します。そして、子どもの希望のおかずを買っています。  わが家でもたくさん取り入れている冷凍食品。昔に比べて品ぞろえがとても豊富です。温めなくても自然解凍で食べられるようになる冷凍食品もあります。お弁当を作る時間も短くなるし、暑さでお弁当の中身が傷まないので安心です。  私が子どものころも冷凍食品がありましたが、おかずはほとんど手作りでした。冷凍食品が入っていると、「手作りじゃない」「かわいそう」というイメージがありました。  でも今は、冷凍食品に対するそういったマイナスイメージはありません。それほど、おいしい冷凍食品がたくさん開発されているからです。息子は、お弁当のおかずとして大好きなのが焼き鳥ですが、昭和生まれの私にとって焼き鳥が冷凍食品にあること自体に驚きです。  さらに、お弁当箱も保温性の高い物ができました。できるだけあたたかいご飯を食べられるようになっています。私の家庭でも、息子に保温性の高いお弁当箱を購入しました。 保温性の高いお弁当箱も機能的で便利(写真:松下先生提供) 令和のお弁当はキャラ弁が主流⁉  では、おいしくて種類が豊富な冷凍食品がある今の親御さんの遠足のお弁当作りが、昔に比べて楽になったかというと、そうでもありません。  私が小学校教員になった23年前は、キャラ弁はとても珍しくて、キャラ弁の子どもは、まわりの友だちから脚光を浴びていました。でも、今は昔ほどの珍しさはありません。キャラ弁の子どもは多くいるからです。私の子どものお弁当もキャラ弁です……。お弁当の見た目が昔に比べ、どんどん華やかになっています。ここに時間がかかるんです。  松下先生の奥様お手製のキャラ弁(写真:松下先生提供) 松下先生の奥様お手製のキャラ弁(写真:松下先生提供)  娘のお弁当は、ハムやウィンナーをただお弁当箱に入れるのでなく、妻が包丁を巧みに使って花の形にします。玉子焼きは、ハートの形になるように切ります。おかずを入れるカップや、おかずを刺すための串はかわいい柄やキャラクター物を買います。見た目重視、可愛さ重視です。「すみっコぐらし」のかまぼこは、今の小学生に大人気です。 人気キャラのお弁当食材も人気(写真:松下先生提供) 人気キャラのお弁当食材も人気(写真:松下先生提供) 遠足のお弁当に大変革が起きた!  どれだけ手際よく用意しても、お弁当作りに1時間はかかります。つまり、普段より1時間は早く起きないとなりません。雨で遠足が延期になったら、また買い出しに行って、作らなければなりません……。「お弁当、美味しかったー!」という子どもの感想はうれしいものの、「また、お弁当を作らないといけないのか…」という妻の落胆ぶりを見て、お弁当づくりの大変さが分かりました。 遠足の日の朝はお弁当作りで大忙し(写真:松下先生提供) 朝の忙しい時間に手際よくお弁当を作るのは大変!(写真:松下先生提供)  そんなお遠足のお弁当に、大変革が起きました! 保育園に通う娘の遠足でのお弁当が、“外注”になったのです‼ 保育園が事前にお弁当の購入手続きをしてくれて、遠足先にお弁当を運んでもらえるようになりました。  スーパーにお弁当のおかずを買いに行って、朝早く起きて作る必要がなくなったのです‼ 本当にありがたいことです。  このお弁当の外注は親目線でありがたいだけでなく、子ども目線でもありがたいです。お弁当を持ち運ぶことがなくなった分、リュックサックが軽くなるからです。大人にとったらお弁当ぐらいと思われるかもしれませんが、体の小さい子どもにとっては大きなことです。荷物が減った分、子どもの疲労も減るのです。 デザートにも変化が現る…⁉  昔は、遠足のしおりを配ったときに、子どもたちから「バナナはおやつですか?」とお決まりのように質問が出ていました。私が、「バナナは、おやつで……はありません♪」と言うと、「やったー! 先生、ありがとうございます‼」と、歓声があがっていたものです。そして、バナナ丸ごと1本を持ってくる子どもがいました。  でも、今はデザートにバナナ1本を持ってくる子どもは見かけなくなりました。いちごやマスカット、キウイ、リンゴなどを見かけることが多くなりました。凍らせたフルーツゼリーを持って来る子もいます。デザートとおやつとの境目も曖昧になってきています。  ただ、教員生活23年間で、変わらないことがあります。  それは、私の持ち物です。遠足当日、お箸を2~3膳多めに持って行くことと、お茶と水のペットボトルを2~3本持って行くことです。  お箸を持って来るのを忘れた子ども、水筒のお茶を飲み切ってしまって落ち込んだ子どもにあげるためです。  それと、子どもたち全員がお弁当を食べ始めてから、私もお弁当食べるようにしていることです。私のお弁当は、遠足当日に買ったコンビニ弁当です。  お弁当を持って来るのを忘れた子どもに、私のお弁当をあげるためです。もちろん、保護者に電話連絡して、了承をもらってから渡していますよ。 (文/松下隼司) 松下隼司先生 ○松下隼司(まつした・じゅんじ)/1978年生まれ。奈良教育大学卒業。大阪の公立小学校に勤める現役教師。2児の父親。文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞。令和6年版教科書編集委員を務める。著書に絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)、『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、教育書『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、『教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策』(フォーラムA企画)などがある。最新著書に『先生を続けるための『演じる』仕事術』(かもがわ出版)。教師向けの情報サイト「みんなの教育技術」で連載を持つほか、Voicy「しくじり先生の『今日の失敗』」でパーソナリティーを務める。
【獣医師死亡】致死率10~30%マダニ感染症とは? 感染した飼いネコからうつることも《医師が教える予防法と対策》
【獣医師死亡】致死率10~30%マダニ感染症とは? 感染した飼いネコからうつることも《医師が教える予防法と対策》 ※写真はイメージです(gettyimages)    先週、飼いネコの治療にあたっていた三重県内の獣医師が死亡していたことが、報じられました。ネコはマダニが媒介する感染症にかかっていたとされ、獣医師も感染した疑いがあるとのことです。 SFTSとはどんな病気か  今回問題になった感染症は「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」といい、SFTSウイルス(SFTSV)によって引き起こされます。  ウイルス性出血熱の一種で、かかると発熱や消化器症状(食欲不振、嘔吐、下痢など)があり、重症化すると出血傾向を伴うことも。発症した場合の人間の致死率は10〜30%と、とても怖い感染症です。  ウイルスを媒介するのはマダニで、特にフタトゲチマダニ、ヤマトマダニ、タカサゴキララマダニなどが知られています。これらのマダニにかまれることで、ウイルスが人や動物に感染します。  SFTSは中国で発見され、その後韓国や日本、台湾など、東アジア地域で報告が相次ぎました。中国では年間1000人以上、韓国では100〜200人、日本では60〜120人前後の発症が続いています。  日本では2013年に山口県で初めて報告されて以降、主に西日本(山口、広島、愛媛、宮崎、鹿児島など)を中心に広がっています。  SFTSVを媒介するマダニは野生動物に寄生し、自然界の中でウイルスを循環させていると考えられています。  実際、地域によりますが、野生のニホンジカやイノシシでは15〜40%以上のSFTS抗体陽性率(SFTSVに感染したことがあることを意味する)が報告されていますし、タヌキやアナグマ、ハクビシンでも10〜30%程度の抗体陽性率が確認されています。  山登りやハイキングでシカに出くわすことはよくありますし、タヌキは市街地でもしばしば見かけます。つまり、SFTSVは自然界に広く定着しており、我々の身近な場所に潜んでいるというわけです。 ダニだけでなく動物からも感染  怖いのは、感染ルートはダニだけでないという点です。実際、SFTS患者のおよそ半数はダニにかまれておらず、感染した動物との濃厚接触や、糞便からの感染が原因と考えられています。  今回、感染したネコから獣医師が感染して亡くなったとの報道がありましたが、2017年にも感染した野良ネコから獣医師が感染し、死亡するという事例が報告されています。このほか、ペット介護中の飼い主への感染例も確認されています。  動物医療従事者は、つねに感染リスクにさらされています。宮崎県と長崎県の調査では、動物病院スタッフにおけるSFTS抗体陽性率は2〜4%程度で、一般市民の0%に比べて高い結果でした。 ■ペットのダニ対策が重要  人間がSFTSにかからないためには、動物への感染を防ぐことが重要で、外に出る機会のあるイヌやネコには、マダニが寄生しないようダニ予防薬を使うことが大切です。具体的には、首のうしろにたらすタイプのスポットオン製剤などが有効です。  野山や草むらで散歩した後は、毛をかき分けて皮膚をチェックし、マダニがついていないか確認してください。  マダニは、ゴマ粒程度で毛の長さや色によっては見えにくいです。軽く触って、しこりなどがあるかどうかを確かめます。万が一、おかしいと思ったら自分で取らず、かかりつけの獣医師に相談してください。 ■野生動物は触らない  野良ネコや野生動物は感染しているかどうかわかりませんので、素手で直接触れないようにしましょう。特に弱っている動物はウイルスに感染している可能性が高いため、むやみに撫でたり抱いたりしないでください。  最近、SNSなどで弱っている野生動物を介抱したり、自宅で看病して回復させたりするような動画がたくさん配信されています。しかし、このような行為は危険で、よほどの注意が必要です。特にお子さんが触れるようなことはできるだけ避けるようにしましょう。 ■ネコが感染したら?  ネコのSFTSの症状は、発熱や嘔吐、極端な元気のなさなどで、特徴的なものではありません。ただし、重症化すると黄疸(皮膚が黄色くなる)、出血傾向(血便、口や鼻からの出血)が出てきます。もし飼っているネコがこのような症状を見せた場合は、速やかに動物病院に連絡し、症状を伝えたうえで受診してください。  そして、こうした症状の末に亡くなった際にはSFTS感染の可能性を考え、体液などに直接触れないよう、手袋やマスクを着用して慎重に対応しましょう。  感染したネコの約60~70%が死亡するとの報告もあります。大切なペットの死はとても悲しいですが、飼い主まで具合が悪くなってしまっては、ペットも浮かばれません。感染リスクを避けるためにも、適切な防護が必要です。 イヌにも注意が必要  ネコは2017~2024年の間に数十例の自然感染例が確認されています。感染したネコの多くが外飼いのネコで屋外に出る習慣があり、マダニの寄生歴があるそうです。  イヌは、日本国内の調査では抗体陽性率は2〜5%程度。感染しても無症状のことが多いですが、まれに発熱や食欲不振などの症状が表れることもあります。  SFTSに感染しているイヌからネコに感染したケースが報告されています。もし一緒に飼っている場合は、ネコを守るためにもイヌにもダニ予防をしましょう。 ■アウトドアで気をつけるべきこと  これからの季節、アウトドアを楽しむ人も多いでしょう。5月から10月にかけての時期はダニの活動が活発なので、注意して行動しましょう。  ダニにかまれないようにするためには、服装や行動に注意することがとても大切です。  まず、草むらや山の中に入るときは、長袖や長ズボンなど、肌をできるだけ露出しない服を着ましょう。ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れることで、ダニが入り込むのを防げます。  最近はハイキングでも短パンを履く方が増えてきましたが、ダニ予防の観点からは望ましくありません。白や薄い色の服を着ると、服についたダニを見つけやすくなります。 虫よけ剤は「塗るタイプ」を  外出前には、虫よけを使うのも効果的です。  ディートやイカリジンという成分が入ったものを皮膚の露出部に使うことで、ダニが寄りにくくなります。ダニは人の出す二酸化炭素を嗅ぎつけて寄ってきますが、これらの虫よけ剤は、ダニの嗅覚を麻痺させることで効果を発揮すると考えられています。  特にイカリジンは子どもにも使いやすいとされています。濃度と比例して効果の持続時間が長くなりますので、ディートは30%、イカリジンは20%の製品を使うようにしましょう。  スプレータイプは、ほとんど皮膚に付着しないため、液体ポンプやローション、クリームタイプの製品を皮膚に塗布するようにしましょう。ハーブ系や手作りの虫よけ剤は効果が不明ですので、筆者はお勧めしません。  野外では、草の上に直接座ったり、地面に手をついたりすることは避けましょう。  ダニは地面や草にひそんでいますので、レジャーシートなどを使うと安心です。淡色のレジャーシートでは、シートの上をダニが人のほうに寄ってくる様子がよく見えるので、予防しやすいです。  外で活動して帰宅した後は、なるべく早く服を脱いでシャワーを浴びましょう。  ダニは蚊と異なり、露出した皮膚にすぐにかみつくわけではなく、服の下の皮膚を歩き回って、刺しやすいところを探しますので、全身、特にひざの裏やわきの下、股のまわり、髪の生えぎわ、陰部(陰嚢の裏)などをよく見て、ダニがついていないかをチェックしてください。  こうした日ごろの工夫によって、ダニにかまれるリスクを大きく減らすことができます(※外部配信先ではイラストを閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください。 温暖化でマダニの生息地が拡大  地球温暖化は、SFTSVの広がりに影響していると考えられています。  SFTSを媒介するマダニは暖かく湿った環境を好みます。温暖化によって気温が上昇すると、マダニの生息できる範囲が北へと広がるようになります。以前は見られなかった中部地方や関東地方でも、SFTSVを持つマダニが確認されています。  さらに、気温が高いとマダニの活動期間が長くなります。かつては春から秋にかけての季節性のリスクとされていましたが、最近では冬場にも活動するケースが見られ、人や動物がマダニにかまれるリスクが1年中続くようになっています。  野生動物の行動範囲も温暖化によって変化しています。シカやイノシシといった野生動物が人里近くまで出没するようになり、マダニやSFTSVを人間の生活圏へ持ち込むリスクが高まっています。  そして、温暖化によって野外活動や農作業の期間も長くなるため、人間がマダニのいる環境に足を踏み入れる機会が増えています。  これらの要因が重なることで、SFTSを含むダニ媒介性感染症の感染リスクは確実に高まっているのです。 (久住 英二 :立川パークスクリニック院長)      
「まるで狩猟」米不法移民の逮捕目標「1日3千人」の衝撃 隣人や仕事仲間が摘発されデモに動くLA住民たち
「まるで狩猟」米不法移民の逮捕目標「1日3千人」の衝撃 隣人や仕事仲間が摘発されデモに動くLA住民たち 10日、ロサンゼルス市内の連邦ビルの外で、抗議する人たちと対峙するカリフォルニア州兵と警察官(写真:AFP/アフロ)    不法移民大量逮捕に反対するLA住民たちが市警察と衝突した。メキシコ国旗がはためく「移民の街」で何が起きたのか。AERA 2025年6月23日号より。 *  *  * 「父にはICEが家に来ても絶対に玄関の扉を開けないでと言ってる」  そう語るのはフォトジャーナリストのエロイサさん(35)だ。ICEとは米移民税関捜査局のこと。このICEがいま、トランプ政権の命令によりロサンゼルスで不法移民の大量摘発を行っているのだ。白いバンで農場や工場、量販店に現れ拘束し逮捕する。それに抗議するLA住民たちがデモを行い警察と衝突した。  エロイサさんは12歳の時、親に連れられメキシコと米国の国境をブローカーの車の中で花柄の毛布を頭からすっぽり掛けられ、息をするなと言われて入国した。16歳未満で米国に不法入国した若者への救済策としてオバマ政権が2012年に制定したDACA制度によって彼女は合法滞在の資格を得ることができた。だが彼女の父には救済措置がなく、23年間不法滞在中だ。 「不法滞在者は、なぜメキシコに帰って正式なビザを得てから再入国しないのか?」  トランプ支持者たちはそう言う。だが、メキシコで段ボールと木でできた家に家族と住み、食べ物も満足になく空腹だった貧困生活を記憶しているエロイサさんは、その選択肢はないと断言する。もし彼女の父が祖国に帰っても、不法滞在の罰で最低10年は米国に入国できず、その後もビザが取れない可能性が高い。 親と子のサバイバル 「父は幼かった私と弟たちを養うため必死で働き、米国に税金も払ってきた。我が子に人間らしい生活をさせたい一心だった」とエロイサさん。  彼女と同じ境遇の若者たちは米国に約53万人おり、その両親の多くが不法滞在中だ。  ちなみに人口約1千万人のロサンゼルス郡の不法移民の数は約100万人。そのうちヒスパニック系が79%以上だ。 「滞在許可がない移民の大多数は逮捕を恐れて抗議デモや暴動には近づかないし、スピード違反や駐車違反も決してしないよう細心の注意を払っている。茶色い肌をした人間は特に」とエロイサさん。  今回のデモの主な参加者が不法移民ではなく、米国市民だとするなら、なぜここまでの規模になったのか? それを読み解く鍵になるのがICEに課せられた「1日3千人」という逮捕の数値目標だ。 抗議デモに乗じてリトル東京の日系人博物館に描かれた落書きを消すボランティアたち(写真:ロイター/アフロ)   連絡取れずに国外追放 「現政権は、自ら目標に掲げた大量の逮捕者の数を達成するため、ICEにすでに自身の情報を登録していた人たちすら拘束して連れて行く。彼らは本来なら逮捕されないはずなのに。そして家族や弁護士と一度も連絡を取れないまま国外追放されるケースが増えている。今や米国市民でなければ、合法移民であっても逮捕されうると言える」  そう語るのはLA在住の移民弁護士、アンジェラ・スーさんだ。ちなみにバイデン政権時代のICEの逮捕件数は「1日で300人」ほどだった。  毎日3千人がこの国から忽然と消えていく──。それが移民の街LAで集中的に行われているとなれば、逮捕者の家族や友人、隣人、仕事仲間であるLA住民たちが抗議デモに出るのは自然とも言えるだろう。 「自動運転車に火をつけて燃やしたり、店舗で物品を略奪したり、全米日系人博物館の壁に落書きをしたりした人は抗議デモ参加者のごく一部に過ぎない。多くのデモ参加者は平和的。テレビ報道で見るとLA全体が戦争状態のように見えるけど実際は違う。リトル東京は連邦ビルに近いという地理的要因からたまたま被害を受けてしまったけど、日系人の高齢者が多く住む専用住宅は無事だった」  日系市民協会(JACL)のサウスベイ地区会長のケント・カワイさんはそう語る。  ちなみに被害の翌日にはブラシを持ったボランティアたちが日系人博物館に集まり壁の落書きを洗い流した。 イリーガルと呼ばない  日本ではあまり知られていないが、カリフォルニア州では不法移民は「イリーガル・エイリアン」ではなく「ビザの書類がない人」という意味の「アンドキュメンティッド」と呼ばれるのが一般的だ。  そして彼らは農業、建設、飲食、ホテル、介護、ハウスキーピングなどさまざまな業界で働いており、米市民同様にアパートや住宅街に住んでいる。不法移民であってもカリフォルニア州の運転免許を正式に持つこともできる。  賛否両論あれど、彼らは世界有数の規模を誇るカリフォルニア経済を支える労働力の重要な一部であり、コミュニティー構成員なのだ。  例えば筆者が所属していたLAの女子草サッカーチームにも「アンドキュメンティッド」のチームメイトは数人いた。ある時、皆でバーベキューをしていた時に「タマネギ、幼い頃は生のままよくかじってたな。それしか食べ物がなかったから」とストライカーのひとりが語り出した。それを聞いて彼女の生い立ちを初めて皆が知った。このチームには弁護士、獣医師、銀行員、学生、LA市警の刑事、元軍人などさまざまな女性たちがいたが、誰が米国市民で移民かなど誰も気にせず、皆がひたすら週2回、サッカーに興じていた。  試合の時はメンバーの家族も大勢応援に来て、メキシコ国旗を持ってくる人もいた。  つまりLA住民は今回の抗議デモに限らず日常的にメキシコ国旗を見慣れているのだ。昨年のLAドジャースの優勝パレードを見るために集まった観衆を見渡しても、メキシコ国旗がはためき、マリアッチの音楽が流れていた。 「メキシコ国旗を振るなら、とっととメキシコに帰れ」とトランプ支持層が激怒するのを日米両方のSNS上で見たが、LAではメキシコ国旗は個人の好き嫌いは別として、すでに風景の一部なのだ。 忠誠度テストの圧力  トランプ再選に多くのヒスパニック有権者が投票したことに関して、前述のエロイサさんは「『卵の価格を俺が下げてやる』と豪語されて、それを信じた有権者がいるのは仕方ないのかもしれない。誰でも物価高は苦しいから」と語る。それでもトランプ再選のニュースを見た時には「同胞だと思っていた人たちに裏切られた気がした」と言う。  彼女にとって、トランプ政権下のICEの動きは「まるで狩猟のよう。あらゆる動物のハンティングが解禁になったオープンシーズン」という。「それを演出するショーとして海兵隊や州兵をLAに出動させて、支持者を焚きつけるのがトランプのやり方だ」  不法移民の父を持つ彼女は、あらゆるシナリオを想定して警戒心を持ちつつも、フォトジャーナリストとして移民たちの人間としての姿を記録し続けたいと語る。  また移民弁護士の仕事に情熱を注ぐスーさんにとって気がかりなのは、トランプ政権の意向に沿わない判決を出す移民裁判所の判事や職員が解雇されていくことだという。 「現政権への忠誠度テストをパスしなければ雇われず、雇われたとしても判事個人の法的解釈は必要とされず、工場の流れ作業のような判決の出し方が求められているから」  ICE職員募集の広告が求職サイトに頻繁に出る。ICE職員もまた地元LAの住民なのだ。「ギャングやドラッグ関連などの重犯罪者を捕まえて社会を良くするために応募したのに、病院や工場に行ってそこで働く労働者を逮捕して数字を上げろと上司からプレッシャーをかけられる彼らもある意味気の毒なのかもしれない」とスーさんは言う。 (在米ジャーナリスト・長野美穂) ※AERA 2025年6月23日号
「大好きな祖父母を嫌いになりそう…」介護と生活の両立で悩む女性に、鴻上尚史が示した未来のための選択肢
「大好きな祖父母を嫌いになりそう…」介護と生活の両立で悩む女性に、鴻上尚史が示した未来のための選択肢   鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)  祖父母の介護に追われ、心がボロボロだと話す28歳女性。介護の影響から、自分の出世を半ばあきらめかけており、何をやってもうまくいかない状況に陥っているという。そんな女性に、鴻上尚史が示した「未来のための選択肢」とは。 *   *   * 【相談259】 ボロボロな時に心を穏やかにする方法を教えてほしいです。(28歳 女性 疲れた顔してる人)  介護についてです。  私には母方の祖父母と父母の家族がいます。両親は、私を生んだ時にすでに40歳を超えており、当時としては高齢出産と呼ばれる部類に入っていました。そのため、両親は現在70歳を超え、祖父母はともに95歳を超えている、いわゆる「高齢世帯」と呼ばれる一家だと思っています。祖父母は介護が必要なレベルですが、施設に入るのを嫌がり、家でデイケアサービスなどを受けながらなんとか暮らしています。  しかし、買い物や病院への送り迎えなど、人の手を借りるべきところは、高齢の親では肉体労働は無理で、私と夫が手伝っている状況です。多くて週に4回、祖父母宅を行き来するのですが、私も仕事を頑張りたいのです。職場では、いろいろな配慮をいただいていますが、最近着任してきた上司にはまだ理解しきれてもらっていないのか、当たり前に色々なことを求められます。  でも、職場には配慮してもらっているという手前、ものすごく気を使わせているような感覚になり、上司のことを強く言えません。自分の出世も半ばあきらめかけています。そんな暮らしを続けるうちに、大好きだった祖父母にとても嫌気がさしてきています。  嫌気やイライラからか、何をやってもうまくいきません。この悪循環とも呼べるような状況を打破する糸口はありませんでしょうか。糸口でなくとも、職場・介護とうまくいかないことだらけの今のタイミングで、気持ちを穏やかに保つ方法はありませんでしょうか。  ちっぽけな相談で申し訳ないのですが、なにかアドバイスが欲しいです。よろしくお願いします。 本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能!なほがらか人生相談』(朝日新聞出版)   【鴻上さんの答え】  疲れた顔してる人さん。大変ですね。しかし、この名前は困りました。呼びかけるたびに、ますます、「疲れた顔」になるような気がします。略して、「顔人」さんにしますね。  顔人さん。顔人さんの相談は、少しも「ちっぽけな相談」ではないと思いますよ。  相談の一番の目的は、「悪循環とも呼べるような状況を打破する糸口」で、それが無理なら、「気持ちを穏やかに保つ方法」ですよね。  顔人さん。じつは、悪循環を打破する糸口は、とてもはっきりしていると僕には思えます。 「祖父母は介護が必要なレベルですが、施設に入るのを嫌が」っている結果、「買い物や病院への送り迎えなど(中略)おおくて週に4回、祖父母宅を行き来する」ことになっているーーこれが、顔人さんの問題の根本だと僕には感じます。  顔人さん。今、顔人さんは一生懸命我慢して、なんとか祖父母の面倒をみていますよね。  それでも、「大好きだった祖父母にとても嫌気がさして」いる状況になっているんですよね。だから、「嫌気やイライラからか、何をやってもうまくいきません」と感じているんでしょう。  この感覚や苦痛は、これから増えることはあっても、減ることはないと思います。  なぜなら、祖父母はますます年老いて、介護のレベルが上がるからです。  介護施設に行きたくないという祖父母の気持ちを尊重してずっと世話を続け、最終的に残ったのは、祖父母への憎しみだけという可能性が高いのです。  それは、顔人さんにとっても、祖父母にとっても、そして両親にとっても避けたい状態ではないでしょうか。 【こちらも話題】 結婚を経験してから大好きだった仕事への情熱を失ってしまったと話す33歳女性に、鴻上尚史が「大切なことの変化」だと伝えたその真意とは https://dot.asahi.com/articles/-/254415 ※写真はイメージです。本文とは関係ありません(gettyimages)    問題は、そんな顔人さんの気持ちや苦労を、祖父母と両親は、あまり自覚してないんじゃないかと思えることです。  お世話してくれてありがたい、本当によくできた孫だと感謝しているか、孫だから当然と思っているレベルではないでしょうか。  顔人さん。僕は、実家で母親が父親を介護する、まさに老老介護の現状を見て、父親に「介護施設」に入ることを提案しました。  父親は、嫌がりました。デイサービスは受けていて、母親の負担を軽くするために、宿泊サービスを何度か試しましたが、父親は気に入りませんでした。  週に2、3回のデイサービスだけを受けて、ずるずると引き延ばすうちに、母親の疲労はどんどんとたまり、まさに「疲れた顔した人」になっていきました。  僕は、腹を据えて、父親にもう一度話しました。このままでは、母親も倒れてしまう。家を離れるのは淋しくて嫌だろうが、お願いだから、介護施設に移って欲しいと。  父親は、僕の予想に反して、黙ってうなづきました。母親の疲れた姿から、いろいろと感じていたのかもしれません。  顔人さん。顔人さんは、どんなふうに祖父母に接していますか? 「大丈夫」「平気」と、がんばって接していては、祖父母の気持ちは変わりませんし、顔人さんの苦労も想像することはできません。  両親には、「じつは大変なんだ」と伝えていますか? 【こちらも話題】 人の好き嫌いを否定する人が苦手だと話す50歳女性に、鴻上尚史が伝えた「そう言われた時の爽やかな切り返し」とは https://dot.asahi.com/articles/-/252863  顔人さん。まずは両親と真剣に話すことをお勧めします。このままだと、祖父母を間違いなく嫌いになる、それどころか、両親を含めて憎むようになる可能性があると正直に言うのです。  顔人さんの人生はこれから長いのです。今、祖父母の問題で出世をあきらめるというのは、とても残念なことですし、それを祖父母が本当に理解したら、顔人さんが大好きだった祖父母は「そんなつもりじゃない」と言うんじゃないですか? 「顔人の人生とか出世とか関係ない。ただ、私達の世話をしろ」とは言わないんじゃないですか?  今の現状は、祖父母にとっても、不本意なことなんじゃないですか。  顔人さんの祖父母は、宿泊サービスは受けたことはありますか?  デイサービスだけで、宿泊サービスの経験がまったくないと、家を出る抵抗は大きくなるでしょう。  宿泊サービスを経験してもらうことで、介護施設への嫌悪が減る可能性もあります。  介護施設に入っても、関係が切れるわけではもちろんありません。定期的に訪ねて、話しあえば、また以前の良好な関係が復活すると思います。  僕は、定期的に父親を訪ねました。父親の様子や、介護施設の雰囲気、職員さん達の様子から、父親が大切に扱われている様子が感じられて、ホッとしました。  父親がなくなった後、介護施設の職員さん達に、心からお礼を言いました。介護施設で世話をしてもらえたからこそ、僕は東京で仕事を続けられたのです。実家の母親も過労で倒れなくてすんだのです。  介護施設があったからこそ、父親と最後まで友好な関係を続けられたのです。    顔人さん。  どれほどつらいか。どれほど限界か。どれほど苦しいかを正直に、両親に、そして祖父母に話すことをお勧めします。  そして、介護施設に入ってほしいと頼むのです。  そう言うことも、祖父母の反応もつらいことかもしれません。  でも、つらいのは一時的なことです。黙ったまま、我慢し続けてしまうと、苦しみはずっと続くと思います。  お互いの関係をこれ以上悪化させないために、そして、顔人さんの未来のために、話しあうのです。  心より、応援します。 【鴻上さんへの相談、募集中!】あらゆる人間関係、組織のなかで、相談者の身に起きている困ったこと、身動きのとれない境遇、逃げ出したい状況など、すべての悩める事態に鴻上尚史さんが答えます。ぜひ、あなたの悩みをこちらからご投稿ください。(※投稿に当たっては、注意事項を必ずお読みください)
「内閣不信任案」を出さない大義名分を探している立憲・野田代表 それでも「衆院解散」はあると考えられる合理的な理由 古賀茂明
「内閣不信任案」を出さない大義名分を探している立憲・野田代表 それでも「衆院解散」はあると考えられる合理的な理由 古賀茂明 古賀茂明氏    6月11日、国会で党首討論が行われた。  7月の参議院選挙を控え、普通なら、与野党党首が、国民にアピールしようと必死の論戦が行われるところだ。しかし、実際には、なんとも生ぬるい凡戦で終わった。  その最大の原因は何か。  立憲民主党の野田佳彦代表に、本気で政権交代を実現しようという気持ちが全くなかったからだ。  野田代表は、今最も国民が望むことは物価高対策だと指摘し、石破茂首相が、これまでにいくつかの対策に取り組んだことは認めたものの、その先の対策がないとして、石破政権の「無策」を批判した。  また、政治資金改革も選択的夫婦別姓も先送りで、結局何もやっていないという批判も展開した。  つまり、石破政権は国民の期待に全く応えていないという批判だ。  確かに、野田代表の批判には説得力がある。  何もしていないというのは言い過ぎだとしても、立憲の方が、消費税減税、ガソリン税の暫定税率廃止、企業・団体献金禁止、選択的夫婦別姓導入など、大きな課題について具体的提案を出して、真剣に国民の声に応えようとしているのは事実だ。  そのいずれについても、政府は、有効な対案を出さず、野党の提案を批判するだけで終わっている。まるで与野党が逆転したかのようだ。  そんな政権は、どう考えても信任するわけにはいかない。したがって、石破内閣の不信任案を提出し、それを可決させて、内閣総辞職か、国民に信を問う衆議院の解散総選挙の選択を石破首相に迫る。それが野党第1党の立憲に課された責務である  どこにも迷う余地がない。  つまり、「内閣不信任案は出す」、それで決まりのはずだ。  ところが、野田代表は、その考えを一切表明しない。  出すべき不信任案を出すか出さないか決められないのは、実は、出したくないからだと思われても仕方ない。それ以外に理由がないからだ。  もちろん、野田代表も、その批判をよく認識しているようだ。  そこで、不信任案を出さない「大義名分」を必死に探し続けている。  つい最近も、年金改革法案について、自民党が国民の批判を恐れて厚生年金の資金を一部使って国民年金の底上げをする策を法案から削除したのに対して、立憲がそれを法案に入れる修正案を出した。自公がそれをのんだことを受けて立憲は賛成に回り、同法は成立した。  この時、野田代表は、年金という国民にとって最も重要な制度について、政局に利用するのではなく、与野党が真摯に話し合ってより良い政策を実現することができたと胸を張り、石破首相を持ち上げて、不信任案を出さない理由にしたいと考えたのではないか。  しかし、実際には、今回の改正は、単に課題を5年後に先延ばししたに過ぎず、国民はこれを評価しなかった。不信任案を提出しない大義名分作りは空振りに終わったのだ。 石破茂首相との党首討論に臨む立憲民主党の野田代表   野田氏が不信任案提出を嫌がる理由  自民との間で協力して政策を進めた方が政権交代するよりも良いと言えるようなテーマはもう見当たらない。  そこで、野田代表が最後に頼るのがトランプ米大統領だ。6月15日からカナダで行われるG7サミットの際の日米首脳会談で、トランプ大統領に暴れてもらい、日本側が危機に追い込まれるという筋書きが野田代表にとってはもっとも望ましい。  そうなれば、「これは国難だ。国難を乗り切るためには、衆議院を解散して政治空白を作る余裕はない。与野党が協力して対米交渉に臨むしかない」という宣言をする。国民も、「そんなに大変な状況なら」と納得して、不信任案を出さないことを評価してくれるというシナリオに野田代表はすがっているように見える。  こうした展開に持っていくためには、日米交渉の状況の開示が必要だ。  だからこそ、野田代表は、サミット前後に石破首相に野党党首との会談を要求し、石破首相がこれに応じると、「肯定的に評価したい」と述べた。  あとは、帰国した石破首相から、交渉状況の説明を聞き、「国難だ」と言える材料をもらいたいのだろう。できれば、石破首相から、「国難だから与野党協力してこれに当たることを要請する」という言葉を得られれば最高だ。  このコラムの配信直後にも、そうした展開になるかどうかがわかるだろう。  ところで、どうして野田代表は不信任案の提出を嫌がるのだろうか。  いくつかの理由がある。  政権交代こそ政治改革だと偉そうに述べていた割には、野田代表は、政権交代に向けた準備を何もしていなかった。衆議院選挙の準備はできているなどと強気の姿勢を見せる立憲幹部もいるが、それは虚勢だ。22日投開票の東京都議会選挙があり、その直後に参議院選挙がある。それに加えて衆議院選挙となれば、とても準備が間に合わない。候補者を揃えるだけでも困難な状況だ。  また、参議院選挙でさえ、野党間の選挙協力が進んでいないのに、さらに衆議院選挙で選挙協力を進めるのは難しいという事情もある。  本来は、この日のために、野田代表や立憲幹部が、他の野党の首脳たちと頻繁に意思疎通を図り、衆議院選挙への準備をしておくべきだったが、実は、野田代表は何もしていなかったというのが党内の評価だ。その責任を自覚しているのではないか。  さらに、コメ高騰対策で小泉進次郎農林水産相が登場し、日本中で小泉劇場一色となっている。国民の期待も高く、石破政権の支持率も下げ止まりから反転の兆しが見える。この勢いだと、総選挙になった時、下手をすれば自公過半数奪還という最悪の事態さえ懸念される。  以上のような要因により、総選挙で政権交代できなければ、それだけでも野田代表の責任問題になる。ましてや、立憲が伸び悩めば、辞任は確定的だ。 党首討論で見えた「小泉農相」への恐れ  そんなリスクは冒したくない。  また、仮に自公が衆議院でさらに議席を減らしても、国民民主党や日本維新の会が立憲に協力しない可能性がかなり高い。その結果、やはり政権交代ができない可能性がある。  選挙後の連立政権樹立のための準備を全くしていなかったこともまた野田代表の「無策」が原因だから、この場合も辞任ということになりそうだ。  ちなみに、野田代表が小泉農水相を本当に恐れていることを示す場面が、党首討論で垣間見えた。それは、コメ高騰対策については石破政権を全く批判せず、むしろその対策を評価して、争点化を完全に避けたことだ。本来は、昨年秋の石破政権発足以来、まともな対策を取らなかったことが今日の事態を招いたのだから、この点は強く批判すべきだが、それをしなかった。コメの話になると、相手が小泉農水相となり、全く勝ち目がないと考え、ここから逃げたのだ。  ところで、仮に不信任案を出さないと参議院選挙の結果にどう影響を与えるだろうか。  それを左右する要素として、一つ重要なのは、新聞の論調だ。最近の記事では、どう見ても、新聞は、解散総選挙を嫌がっているようにしか見えない。不信任案を出すべきだという論調が全くないのがその証拠だ。  G7でもダントツの物価高騰が国民生活を脅かし、政治資金問題、選択的夫婦別姓などでも先送りしかできない自民党に対して、野党は不信任案を突きつけて信を問えという社説が出ても良さそうなものだが、不信任案提出見送り説を早々に報じたり、日米関税交渉に支障が出る恐れがあるなどという記事を書いたりしている。  政治部記者が、最近の人員・予算削減の中で、参議院選挙の準備を整えたところで、衆議院選挙までやられたら大変だという厭戦気分があるという話もある。また、万一野党圧勝となれば、消費税減税が現実のものとなり、先週配信の本コラムで指摘した、食料品と同じ扱いを受けてきた新聞の特別扱いが今後認められなくなることを恐れているという見方もある。  こうした新聞の論調が世論にどう影響を与えるのかには注意が必要だ。  一方、不信任案を提出しなければ、参議院選の投票率を下げる可能性がある。なぜなら参議院選だけでは、政権交代が起きる可能性が極めて低いからだ。  それは、今回の選挙で政治は変わらないというメッセージになる。変わらないのなら選挙に行っても意味がない。そう考える有権者が増えれば、投票率が下がる。組織票が多い自公などに有利で、立憲には不利だ。そう考えれば、立憲内で不信任案提出派が増えるだろう。 実は自公との大連立を切望?  そして、何よりもネットの反応が大きな影響を与える。  最近支持率に翳りが見えるもののユーチューバーとして発信力を誇る国民民主の玉木雄一郎代表が、どのように立憲批判をするかも注目だ。支持率が落ち目の今、本当は解散はしてほしくないと考えるかもしれないが、そうした本音とは正反対に、立憲が不信任案を出さないことを強く批判する可能性がある。  新聞だけ見ていると、不信任案を出せない可能性もかなりあるように見えるが、私は、それでも、野田代表は、不信任案を出さざるを得なくなると見ている。  不信任案不提出の理屈はわかりにくく、ネット向きではない。出さない場合の批判を恐れる党内の声が、ネット世論を背景に高まる可能性が非常に高い。  消費税減税について、あれだけ反対し続けたのに、最後はあっさりと減税案を出すと決めた野田代表のことだ。今回も批判に怖気付いて不信任案提出に追い込まれるのではないだろうか。  不信任案が出れば解散になる可能性が高い。  その先の展開は読みにくいが、衆議院選で自公が過半数をとればもちろんだが、そうでなくても、政権交代にはならないだろう。維新と国民民主が立憲に協力しないからだ。  その場合、維新や国民民主が自公と連立を組むかというと、自公政権で石破おろしにならなかった場合は、維新との連立の可能性はあるが、国民との連立の可能性は低いのではないか。  なぜなら石破首相は明らかに玉木代表を嫌っているように見えるからだ。政権内部からも、石破首相は、個人的な好き嫌いではなく、ネットでバズれば良いというような玉木代表の政治手法を問題視し、そういう政治家が蔓延れば、民主主義が危機に陥るというかなり真面目な理由で玉木代表を敬遠しているという話が聞こえてきた。  もう一つ、立憲と自公の大連立はあるかという点だが、野田代表は、それを切望しているように見える。なぜなら、自分の力では、野党政権を作ることはできないと知っているからだ。そうであれば、自分が本音でやりたいこと、すなわち消費税増税を核とした税と社会保障の一体改革、さらに自衛隊明記を含む憲法改正とさらなる軍拡を中心とした安保政策を石破首相と二人三脚で実現するのが次善の道だということになる。  ちなみに、野田代表は、そういうことさえ考えていないという解説をする立憲議員が執行部の中にもいる。つまり、何も考えていないというのだ。にわかには信じ難いが、確かに、これまでの彼の「何もしない」という行動(これが行動と言えるのか疑問だが)を見ていると、そうなのかなとも思えてくる。  仮に大連立ということになった場合は、立憲は二つないし三つに分裂するだろう。  それが政界再編につながるのか。  いずれにしても、本当に日本の政治が変わるには、まだまだ時間がかかるということになりそうだ。
窪塚洋介、子育てで大事にした「自分で選んで決めること」 俳優の息子・愛流のために選んだ“家族の形”とは
窪塚洋介、子育てで大事にした「自分で選んで決めること」 俳優の息子・愛流のために選んだ“家族の形”とは (撮影はいずれも写真映像部・佐藤創紀)  フラットで既成概念にとらわれることなく、活動している俳優の窪塚洋介さん(46)。離婚、再婚を経て、現在は2人の子どもを持つ父でもある。窪塚流の子育て術と“ちょっと変わった家族の形”について、話を聞いた。 *  *  * 【続きはこちら】:芸能生活30年の窪塚洋介が振り返る大きな「転機」 起こったこと自体には「良い」も「悪い」もない ――お子さんは2人。俳優として活躍中の長男の愛流さん(21)、長女のあまとさん(7)がいらっしゃいます。子育てで大切にしていることは。  子どもとはいえ、自分のものでもないから、「一人の人間として尊重する」ということを大事にしています。彼らが「自分で選んで決めること」を促すようにしています。 娘はまだ小学生なので、まずは「この世界を楽しむ」ことが大切。そのための“自分の選択”ができるようになってもらおうと考えています。その後で、いろいろなことに感謝する大切さや、人に迷惑をかけられても許すことなどを教えていこうかと。いまは土台を伝えているところです。 失敗しても選択肢はある ――『窪塚洋介の人生攻略本』(サンクチュアリ出版)によると、子どもに不安を植えつけないことを大切にされているとか。  愛流には、「そんなんで大人になったら、ヤバイよ」ということは、きちんと教えてきましたけど、根本的なところで、「命を楽しんでいく」ということにまつわる不安は、なるべく与えないようにしてきました。「失敗しても、そこからの選択肢はある」ということは、体を張って教えてきたところがありますね。僕みたいにマンションから転落しても大丈夫だよ、と(笑)。 ――愛流さんは俳優として活動しています。ご自身と同じ職業に就いたことに対してはどのように感じていますか。  嬉しさ半分、不安半分ですね。今は彼の力を信じるようにしています。そのほうが自分も楽だし、彼も伸び伸びと力を発揮できますしね。   ――同じ職業を選んだことで、「子どもが自分のことを認めてくれた」といった感覚は。  ありますね。彼は、要所、要所で言葉にして伝えてくれる。僕はいま大阪に住んでいるんですが、僕の誕生日のときは、「大阪で仕事があったから」と言って、ふらっとプレゼントを持って家に寄ってくれた。そこに手紙も入っていたんです。手紙には、「自分が窪塚愛流と名乗れることを、心から誇りに思っている」と書かれていて、これ以上の褒め言葉はないなって。 強制的に息子を一人暮らしにした理由 ――そんな好青年に育った愛流さんに、俳優として大切なことを伝えていますか。 「自分自身のあり方が大切だ」ということを教えています。「自分をよく知る」こと。古代ギリシアの格言に、「汝(なんじ)自身を知れ」というのがあります。自分がどういう人間で、どういう性格で、どんなことをする傾向があるのか――。それが分かることで、初めて“自分のニュートラルな状態”を知ることができるんです。すると、役と自身を比べることができて、役作りがしやすくなるんですよね。 ――愛流さんが19歳のときに東京で強制的に一人暮らしをさせたそうですね。    とにかく自立させたかったんですよね。お互いに、親離れ子離れのタイミングだったんじゃないかな。当時の彼は、紹介した自動車教習所に行かなかったりと、いろいろレイジーなところがあったりした。ある日、夜中に叩き起こして、「もう、東京に行け!」と叱ったんです。彼が所属している芸能事務所も、それを望んでくれていたので。一人暮らしをして1年経ったら、彼がいい顔になっていたので、やってよかったです。 ――愛流さんは前妻との間に生まれたお子さんです。前妻も近くに住み、再婚した妻とあまとさんを含めた5人で“新しい家族の形”をつくり、共に過ごすことも多いと聞きました。  愛流が父親か母親のどちらかと一緒にいると、片方に気まずいといった状況は、彼の精神衛生上よくないと思ったんです。僕らが離婚したから、愛流がどっちとも付き合いづらくなってしまうと孤独だろうし、できる限り彼が自然にどこにでもいられる環境をつくりたかった。みんながちょっとずついろいろなことを我慢しながらも、共に過ごす関係を望むことができたから、今はうまくいっています。 ――今の妻が良き理解者だから実現できたところも大きいと感じます。そういった素敵な女性だから、再婚を決めたところもあるのでしょうか。  そうですね。彼女と出会った当時の僕は、収入が不安定だった。でも「俳優だから」「お金があるから」ではなく、魂の部分で惹かれあうことができたので、彼女のことを信用できたところがありました。  僕は離婚や事故などの苦い経験から、自分にとって本当に必要な相手が誰かを分かるようになり、直感も鋭くなったところがある。そういう感覚を大切にして生きていますね。それに彼女は器も大きく、懐も深くなって、何があっても笑って許してくれるところがあるんです。 ――夫婦円満の秘訣は。  子どもと同様、「一人の人として尊重すること」ですよね。結婚したからといって自分の所有物ではないし、相手には相手の好みもある。紙の上で縛られてはいるけど、それよりも「好きで一緒にいたいから」という気持ちのほうを大切にしています。  とはいえ、いい関係でいるために、お互いに努力はしています。僕はできる限り、旅行を含めて、家族との時間をつくるようにしている。彼女のほうは料理の腕がどんどん上がった。 「バーカウンターの法則」というのがあるんですよ。向き合うとお互いの嫌なところが見えてぶつかりやすくなるけど、横に並ぶと融合し、同じ目的に向かっていける。だから、横並びをしたほうがいい。それは夫婦に限らず、仕事相手でも誰とでも大事なことですね。 (聞き手・加藤弓子) くぼづか・ようすけ/俳優、モデル。1979年生まれ。神奈川県出身。1995年に俳優デビュー。テレビドラマ「GTO」(関西テレビ制作、フジテレビ系)などで注目を集める。2001年公開の映画「GO」で日本アカデミー賞の新人俳優賞と、史上最年少で最優秀主演男優賞を受賞。2017年日本公開のマーティン・スコセッシ監督の映画「沈黙 -サイレンス-」でハリウッドデビュー。今年は出演映画「THE KILLER GOLDFISH」「フロントライン」のほか、「次元を超える TRANSCENDING DIMENSIONS」も公開される。主な著書に『窪塚洋介の人生攻略本』がある。      
“米騒動”で見えた人間や組織の「本質」 頑張る農家がきちんと報われる仕組みを整えることこそが重要 田内学
“米騒動”で見えた人間や組織の「本質」 頑張る農家がきちんと報われる仕組みを整えることこそが重要 田内学 AERA 2025年6月16日号より    物価高や為替、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2025年6月16日号より。 *  *  *  5キロ4680円。  6月1日、近くのスーパーに米を買いに行ったが、まだ値段は下がっていなかった。毎日の食卓に欠かせない主食の価格がこれほど高いと、家計への影響は避けられない。  5月に就任した小泉進次郎農林水産大臣が備蓄米を放出して価格を2千円台まで下げようとしているとニュースで知り、なんとか価格が安定してほしいと願っている。  こうした危機の時こそ、人や組織の本性が見えてくる。  備蓄米を「動物のエサ」と揶揄する政治家は、問題解決より相手を貶めることに興味があるのだろう。  小泉大臣の挑戦をただ「実現できない」と批判する経済学者は、自らの知見を問題解決のためよりも批判することに使いたいのだろう。  一方で、問題意識を共有して具体的に動いている人たちもいる。  ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営する会社の吉田直樹社長は、複雑で前時代的なコメの流通システムを改善するために意見書を提出した。  また、LINEヤフーの川邊健太郎会長は備蓄米が転売ヤーの餌食にならないようにヤフオクでの出品を禁止した。非常時にどう行動するかで、その組織や人が本当に何を大切にしているのかがはっきりと見えてくる。 たうち・まなぶ◆1978年生まれ。ゴールドマン・サックス証券を経て社会的金融教育家として講演や執筆活動を行う。著書に『きみのお金は誰のため』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など    さて、今回のコメの高騰だが、長年金融市場で価格変動を見続けてきた経験から言うと、結局のところ、価格は需要と供給のバランスで決まっている。価格が急騰するときは、必ずしも供給が圧倒的に不足しているわけではなく、ほんの少しの需給のずれが大きく影響する。「この先、供給が減りそうだ」といった思惑が広がるだけで、供給側が売り渋るようになり、見かけの上での供給不足に陥ることもある。  逆に「供給過剰だ」と認識されると、買い手が様子見を始めて価格が急落するケースも珍しくない。  主食である米の場合、食糧危機を避けるためにも、常に需要を上回る供給を確保する必要がある。完全に市場任せにすると、農家は常に不利な立場に追い込まれかねないため、農家を支えるための補助金制度を手厚くすることは必要だろう。  吉田社長が指摘したように、5次問屋まで存在する複雑な流通経路にメスを入れることも必要だ。今回の米騒動で大手の米穀卸業者の株価が上がったのを見ると、流通が停滞して困る人が増えるほど卸業者が儲かる仕組みになっているのかと心配になる。もしそうなら、流通業者が正常化に向けて積極的に動くインセンティブが働かなくなってしまう。  また、コロナ禍でのマスク不足のように、生活に欠かせない品物の転売行為には、一定の罰則も与えるべきだ。価格が上がること自体は市場原理として仕方ないとしても、その利益が農家に適正に届かなければ、農家が生産を増やすモチベーションを保てない。  今回の米騒動が流通経路の問題にすぎなかったとしても、長期的に見ると農業人口が減少する中で、頑張る農家がきちんと報われる仕組みを整えることこそが、本当の意味での問題解決につながると思う。 ※AERA 2025年6月16日号  
政界の“最長老”小沢一郎が内閣不信任案を見送るなと「立憲」に苦言 「自民党と裏取引する野党は自滅する」
政界の“最長老”小沢一郎が内閣不信任案を見送るなと「立憲」に苦言 「自民党と裏取引する野党は自滅する」 立憲民主党の小沢一郎衆院議員    6月22日、国会が会期末をむかえる。そんな中、朝日新聞(6月2日付)は「石破茂首相は2日、立憲民主党から内閣不信任決議案が提出された場合、採決を待たずに衆院を解散するとの方向で検討に入った」と報じた。一方、野党第1党の立憲民主党・野田佳彦代表は「内閣不信任決議案の今国会提出を見送る検討に入った」(朝日新聞、6月11日付)とされ、立憲内部からも異論が出ている。この状況を議員生活55年の政界の“最長老”はこの状況をどう見るのか。小沢一郎・立憲民主党衆院議員がAERAの単独インタビューに答え、内閣不信任決議案提出の是非から、コメ価格をめぐる小泉劇場まで政界の現状を縦横に語った。 *  *  * ――現在(取材日の6月上旬)、世間の話題は「コメの価格高騰問題」で一色となっています。石破茂首相は失言した前農水相を更迭し、小泉進次郎氏に交代させた結果、小泉氏が2000円で備蓄米を売り出して評判になっている。内閣支持率も持ち直して、政権浮揚のきっかけになるとも言われていますが、この小泉劇場をどう見ていますか? 小沢:コメ問題については、農業を軽視して生産性の高い産業だけをドンドン支援していけばいいんだという、農業不在、食料政策不在の結果が、今の状況をもたらしたのです。このことをまず理解しないといけません。  だが小泉君は備蓄米を2000円で売って価格を下げるということばかり言っている。そもそも、コメの値段が2000円では、農家が食べていけない。米を作れと言ったって作る人がいなくなる。だからどんどん、農村の人口が減っていく。今のままでコメを安く放出するということは、ますます、農業離れ、農村離れを増やすことになるのです。  それに小泉君は随意契約で安くしたと鬼のクビをとったように言っているが、政府が随意契約なんかしてはいけない。都合のいい業者だけを指名するというのは不正と腐敗の温床になる。小泉君のパフォーマンスをメディアは盛んに取り上げるが、これは国のあり方をゆがめている。国民は次第に冷静になっていくと思います。 小沢氏は「政府が随意契約なんてしてはいけない」と小泉農水相の政策を批判する   農家にきちんと生活補償をする仕組みを ――では、どうしたらいいのか? 小沢:農家にきちんと生活補償をする仕組みを作ったうえで、自由競争に任せればいい。そうしたらそんなにコメの値段も高くならない。私たちは2009年に、(旧民主党政権で)農家の戸別所得補償制度を導入しました。これはコメの生産費が市場価格を下回るようなら、農家の生活を保障するために国がその差額を補填する仕組みです。これで農家が安心してコメを作れるようにしたのに、政権が自民党に復帰したら雲散霧消してしまった。今も、農業生産者の生活を保障する仕組みを作ったうえで、価格は自由な取引に任せるようにすれば、農家も消費者も安心すると思いますよ。 ――物価高騰はコメだけではありません。立憲は消費税の食料品は1年間消費税ゼロと主張しています。 小沢:1年間にわたって(税率を)上げたり下げたりすると、売るほうも買うほうもかえって混乱するし、効果も出てこないので全面的に賛成とは言いがたいが、消費税減税は必要です。私は日常的に必要な食料品や生活関連のものは永続的に消費税ゼロにするのがいいと思う。イギリス方式だね。その代わり、それ以外のものを必要な時に税率をアップして財源に充てる。それが責任ある政治だ。消費税を減税すべきだという点では野党は一致している。だったら、それを実現するために一刻も早く石破政権を倒して、新しい政権を作らなければならない。それが野党の最大の責任なんです。 ――石破政権の支持率も低迷しているが、立憲民主党など野党への期待も高まっていない。それはどうしてでしょうか? 小沢:やっぱり、野党が今、政権を獲れるのに獲ろうとしないのが、国民から不信を買っている一番の理由です。「野党は信頼がおけない」「野党では不安だ」と言われるのは、政権を獲りに行かないから。政権を獲りにいかない野党なんて信用されない。何を言ってもウソっぽいでしょう。 ――内閣不信任案を出すには衆院議員が51人以上必要で、立憲だけが唯一、単独で提出ができます。しかし野田佳彦代表は慎重に判断すると繰り返しています。 小沢:立憲は、石破政権をさんざん批判してきて、内閣不信任案提出に消極的な姿勢だと見られたら、それこそ、国民から不信任を突きつけられます。自民党と裏取引するような政党はいらないと。野党第一党らしく、不信任案を出して野党政権を樹立すると打ち出すべきです。数が足りないときには、通りもしない内閣不信任案をしょっちゅう出しておいて、いざ、不信任が通るとなったら自民党と取引して出さないなんてとんでもない話だ。私は党員の一員として、とうてい容認できない。国民からも見放されますよ。 「政治の空白」なんて起きない ――立憲の党内には、このまま支持率の低い石破政権で参院選を戦ったほうが有利だという見方もあります。また石破首相が解散に踏み切るのではないかと警戒する幹部もいます。 小沢:石破君は人気がないからこのままで参院選を戦った方がいいと言うけれど、不信任を出して解散になれば、衆参ダブル選挙になるわけで、それも石破総理の自民党と戦うことになる。いま解散するなんて言ったら、自民党内でも大変な不協和音が起こるから、ますます野党に有利になります。だから、解散するなら「どうぞいらっしゃい」ということ。衆参ダブル選挙なら、いっぺんで片がつく。何をビクビクしているんだろう。現在の衆院1期生はすぐに2期生になれるし、こんないいことはない。 ――内閣不信任案を出すと政治的空白が生じるという意見もあります。トランプ関税をめぐる日米交渉の足を引っ張るべきではないと野田代表も言っていました。 小沢:すぐにそういうことを言う議員や評論家がいるが、「政治の空白」なんて起きません。予算は通っているし、あとは官僚が執行するだけの話。騒ぎばっかり起こす大臣なんていないほうが、よほどスッキリいく(笑)。トランプ関税への対応と言っても、ドイツやフランスでは、連立政権をつくるのに1カ月も2カ月もかけています。カナダやオーストラリアは最近も選挙をやったじゃないですか。空白もヘチマもないですよ。 ――国民民主の玉木代表も「立憲は不信任案を出すべきだ」と発言しています。しかし立憲のなかには、国民も維新も賛成してくれないのではないか、という不安もある。確かに、野党が結束できるかどうか見通せません。 小沢:国民民主は人気が出たから、立憲の言う通りにはしたくないでしょう。でも、不信任案には反対できない。維新も石破政権には厳しい態度にならざるを得ない。だから立憲が不信任案を出せば、どこも反対できません。国民民主も維新も人気は峠を越したね。峠を越したらあとは下り坂になる可能性もある。 政界を「ガラガラポン」する ――国民も維新もこのところ、政党支持率を落としています。 小沢:それでも、このまま立憲が不信任案も出さないと、国民など他の野党が伸びると思いますよ。ここでミソをつけると、わが党は浮かばれない。みんな身の振り方をどうするか考えなきゃいけなくなる(笑)。野田君もわが党も正念場だ。 ――小沢さんは55年の議員生活で、32年前の細川政権、16年前の民主党政権と、2度の政権交代を実現しました。今年は、それからまた16年です。政界に大きな変化は起きますか? 小沢:16年か、ちょうどいいね(笑)。長期政権が腐敗するのがその頃なんです。与党も野党もダメだけど、いま政権が代われば政治の状況が激変する。内閣不信任案の可決がそのきっかけになるんです。選挙があってもなくても、自民党内の右だ、左だ、表だ、裏だとグジャグジャしているのをふるいにかける。野党も似たようなのをすっきりさせる。いわば政界をガラガラポンして、志のあるものが集まって政権をつくればいい。  とにかく、いまの政権をまず一回倒すことが必要です。だから不信任案を通して、とにかく野党政権をつくる、あるいはそのつくる過程において、新しい日本の政界地図はできる。そのことを国民も期待していると思います。 (聞き手・構成/政治ジャーナリスト・城本勝)
「主戦場は衆院」発言の音喜多駿氏が参院選出馬 "出戻り”批判も負けたら「切腹」、49歳で総理の夢は「55歳までに下方修正」
「主戦場は衆院」発言の音喜多駿氏が参院選出馬 "出戻り”批判も負けたら「切腹」、49歳で総理の夢は「55歳までに下方修正」 インタビューに応じる音喜多駿氏(撮影:大野洋介)  昨年の衆院選で、当時日本維新の会の政調会長だったにもかかわらず落選した音喜多駿氏(41)が、リベンジを果たすべく7月の参院選に挑む。衆院選は参院からの鞍替え出馬だったこともあり、“出戻り”ではないかと批判が渦巻く中、「筋は通っている」と東京選挙区からの立候補を決めた音喜多氏。維新の支持率が低迷する今、厳しい選挙戦をどうやって勝つつもりなのか。本人への直撃インタビューをお届けする。 *  *  * ――参院選出馬を決めたきっかけはなんですか。  昨年の衆院選で落選してからは、生活費を稼ぐためにシンクタンクで働きながら、草の根で政治活動を続けてきました。「社会保険料引き下げを実現する会」という団体を立ち上げて、勉強会を開いたり、街頭でチラシを配ったり。  知り合いの政治家に政策提言もしてきましたが、外野の立場だと情報が入ってこないし、国会の委員会での質問や議員立法の提出もできない。衆院で自民・公明過半数割れという最大のチャンスに、なかなか物事を進められないフラストレーションがありました。  でも参院選への出馬は悩みましたね。維新内部から、「参院から衆院に鞍替え出馬して落選したのに、議席を取り戻しにくるのか」「今の厳しい党勢は前執行部の音喜多に責任がある。ノコノコ戻ってくるのか」というご意見があったことは事実ですし。  私も当時、「主戦場は衆院だ」「総理を目指す」なんて調子のいいことを言っていたわけで、批判されるのは当然です。ただ、支持率が低迷している今の維新から立候補するのは火中の栗を拾うようなもので、この状況なら私の出馬には筋が通るんじゃないか。そう思い、5月に決断しました。 インタビューに応じる音喜多駿氏(撮影:大野洋介) 吉村代表の行動が、出馬へと腹をくくるきっかけに ――維新の吉村洋文代表からは、どのような言葉をかけられましたか。  これは嘘でもなんでもなく、「戻ってきてほしい」と。社会保障制度改革は吉村さんの肝煎り政策で、二人三脚で実現を目指してきたからだと思います。  5月に東京で開催した「社会保険料引き下げを実現する会」のイベントは、当初、吉村さんに登壇してもらうために大阪で行おうと考えていました。でも吉村さんが、「音喜多さんには参院選を東京で戦ってほしい。そのためにプラスになるなら」と、わざわざ東京に来てくれることになったんです。すごく意気に感じて、出馬へと腹をくくるきっかけになりました。  参院選東京選挙区には自民現職の武見敬三前厚生労働相も出馬することになり、社会保障制度改革が象徴的なテーマになるでしょう。そういう意味でも、私が先頭に立って、政策を主張することが望ましいはずです。 ――衆院選では社会保障制度改革を訴えた結果、落選しました。今回の選挙戦略は。  衆院選は各選挙区から1人しか当選しないので、有権者の大多数から支持を得る必要がありました。一方の参院選は、東京選挙区で今回争う議席数が7ですから、8~9%くらいの得票率で当選します。10人に1人に賛同してもらえばよいので、引き続き「高齢者の方には医療費の窓口負担を3割お願いします」と正直に訴えていきます。  選挙では、人口が多く投票率も高い高齢者を敵に回したら勝てないというのがセオリーで、エッジの利いた訴えだとは思います。演説中に白い目で見られることもあります。でも、「立派なこと言ってるな」と応援してくれた70代くらいのおじいちゃんもいます。高齢者の1割くらいは、若い世代のためならと理解してくださるのではないかと思います。 インタビューに応じる音喜多駿氏(撮影:大野洋介) 政治とカネの問題で、自民の補完勢力だと思われた ――選挙戦の手応えはどうですか。  街頭はともかくネット上では潮目が変わりはじめています。  昨年をターニングポイントに、選挙でのネット戦略の重要性が決定的になりました。社会保険料のテーマはXではかなり盛り上がっていて、次にアピールすべきは、もっとボリュームが大きい動画メディアのユーザーです。減税や財務省陰謀論の動画はバズっているので、社会保険料や厚労省の問題も深刻だと伝えていかなければいけません。 ――維新の歩みを振り返って、現在の低支持率を招いた最大の要因は何だと思いますか。  反対の声もある大阪・関西万博の推進や、斎藤元彦兵庫県知事をめぐる一連の問題への対応など、いろいろとありますが、一番は政治とカネの問題ですよ。政治資金規正法の改正案で、維新は最終的に野党と自民の折衷案のような方向に走り、自民の補完勢力だと思われてしまった。  政治改革大綱を取りまとめたのは、政治改革実行本部の事務局長だった私です。馬場伸幸代表や藤田文武幹事長(いずれも当時)は、政策活動費は残すべきだという意見で、私は彼らが決断したことをサポートするのが役割。自分の仕事に後悔はありません。ただ結果論で言えば、政治資金パーティーも企業・団体献金も、なんなら旧文通費も全部禁止にするくらい踏み込むべきだったと思いますね。 今の維新は「小さくまとまろうとしている印象」 ――最近の維新は離党議員が相次ぎ、党内の求心力も低下しているように見えます。  支持率が物足りないからこそ、議員たちの不満が噴出してまとまりを失っているのでしょう。維新のパーパスは、コメ輸入自由化やライドシェアのような、ある種の極論を打ち出して現状に風穴を開けることだったはず。でも今の維新は、選挙で負けるかもしれない政策を訴えることに慎重な意見が増えて、小さくまとまろうとしている印象です。 2017年7月、北区選挙区で当選が確実の見通しとなり、支援者と万歳する都民ファ-スト現職の音喜多駿氏  維新は元々、目的を達成するためなら議員の職を投げ出してもいいという捨て身の集団でした。母体となる大阪維新の会は、大阪市の財政を立て直すため、70歳以上の市民が市営地下鉄やバスに無料で乗れる「敬老パス」を有料化しました。当時は大バッシングを受けましたが、これこそTHE維新スピリットだと思うんです。  次は国政で社会保障制度改革を進めることで、維新再生の狼煙(のろし)をあげたい。そのためには僕が先兵となって今回の厳しい参院選を勝ち抜いて、党の士気を上げなければいけません。そして再び維新の中枢に入って、立て直しに尽力したいと思います。もし負けたら? それはもう切腹ですね(笑)。 音喜多駿氏(撮影:大野洋介) ――夢は総理大臣でした。あきらめていないのでしょうか。  はい。自分が日本のためだと信じる道を進むためには、頂点を目指すべきだと思っているので。ただ、以前は「49歳までに総理になる」って大見得を切っていたんですけど、衆院選に落ちて今41歳なので、55歳までに下方修正します(笑)。  総理になるためには、戦略の練り直しが必要ですね。現時点では、政権交代が起きても維新が主役になれるビジョンは見えません。とはいえ、改革政党である以上、自公と連立を組んで、大臣の椅子を1個もらって……っていう姿は個人的には違うと思います。参院選で結果を出したら、次は衆院選で野党第1党になったうえで、政権交代を目指すのが維新にふさわしいあり方なんじゃないかな。  (聞き手・構成/AERA編集部・大谷百合絵)   【特集:どうなる?参院選】 ■全選挙区当落予測 【参院選「全選挙区当落予測」つき】東北地方は立憲の圧勝! 東京は「国民」元NHK女性アナウンサーの動向がカギ 【参院選「全選挙区当落予測」つき】京都は舌禍事件あっても「自民・西田氏」が濃厚 和歌山「二階氏の三男」は評価分かれる ■注目候補インタビュー 「主戦場は衆院」発言の音喜多駿氏が参院選出馬 "出戻り”批判も負けたら「切腹」、49歳で総理の夢は「55歳までに下方修正」 蓮舫氏「嘘つきという批判にはごめんなさいと言うしかない」 参院選出馬“世間からの猛批判”に何を思うのか 【参院選・新人候補】元関西テレビアナ・新実彰平氏(維新)が目指す政治家は「橋下徹」と「小川淳也」のハイブリッド 【参院選・新人候補】「一人で戦っていない」 タイガーマスク運動の先駆け・河村正剛さんが保守王国・群馬に殴り込み 【参院選・新人候補】オリラジ中田の弟「中田フィッシュ」が「自民党」から出馬するワケ 「僕を選ばなくていいんですか?」と自信 ■各党の選挙戦略 都議選で大敗の自民党・木原誠二選対委員長 「参院は過半数維持が最低ライン」「消費減税は難しい」 創価学会員の高齢化&都議選も候補者落選…「公明党」は参院選をどう乗り切るのか 三浦信祐選対委員長「与党として生まれ変わる」 進次郎流コメ改革は「表層的」と立憲民主党・小川淳也幹事長 参院選は「古い政治にとどめを刺す」 都議選で全員落選「日本維新の会」の厳しい現実…参院選の目標議席は本当に「6」でいいのか? 岩谷良平幹事長に聞いた
夫の連絡ナシ朝帰りで離婚危機の20代女性に、鈴木涼美が投げかけた「子はかすがい」への疑問
夫の連絡ナシ朝帰りで離婚危機の20代女性に、鈴木涼美が投げかけた「子はかすがい」への疑問 鈴木涼美さん  作家・鈴木涼美さんの連載「涼美ネエサンの(特に役に立たない)オンナのお悩み道場」。本日お越しいただいた、悩めるオンナは……。 Q. 【vol.42】夫に愛想を尽かしつつ、離婚に踏み切れないワタシ(20代女性/ハンドルネーム「みもざ」)  夫が先日、特に連絡もなく朝帰りをしてきました。終電までという約束にもかかわらず、連絡もなかったので私から鬼電して、LINEを送っても無視。2時間後くらいに、「あーごめん、先輩とカラオケで盛り上がってるわ」とだけ送られてきました。そのあと、連絡を取ろうとするもまた無視。次に返信があったのは4時30分の「今から帰るわー」です。  夫の朝帰りは3回目で、1回目のときに、終電を逃すとなっても連絡だけはするというルールになり、2回目は守ってくれていました。しかし今回、「そんなの覚えてない。連絡してもしなくても怒るだろ」と言われ、「もちろん心配してるから言ってるんでしょ」とは伝えましたが伝わらず……。  その日は私に予定があり、旦那に息子のお世話を頼んでいた日でした。朝帰りの旦那に頼めるわけもなくリスケ。飲み会の最中、私たち家族のことを一瞬でも思い出さなかったのかと悲しくなり、私が責め立てたところ、死ぬか殺すかの大げんかが始まり、いまだ仲直りできていません。離婚の話まで飛び出す始末です。  もう大切にされてないのも愛されていないのも伝わっています。でも子どものことを考えると離婚に踏み切れず、今回も結局私が謝り、向こうからは「うん」としか返ってきませんでした。まだ怒っているようです。嫌な人との人間関係を続けていくにはどうしたらいいんでしょうか? A. 継続するなら見つけない努力を  長い付き合いの友人たちはもとより、わりと最近仲良くなったママ友とも、話題として盛り上がるのは夫の愚痴というか悪口というか、ひどい夫自慢のような話だなぁと最近実感します。もちろん、ある程度人間関係を円滑にするために自虐の一種として、本来は比較的仲良しの夫の悪口を言う場合もあるでしょうし、周囲が愚痴っているなかで自分だけ惚気るのに気が引けるという人だっているかもしれません。どんなパートナーであれ、生活や子育てをともにするなかで多少のストレスや不満は見つけて話そうと思えば話せるものです。自分がどれだけつらい思いをしているか話して、よく頑張ったね、かわいそうだね、と優しい言葉をかけてもらいたい人だっているでしょう。  一方で、こちらが聞いていてもはらわたが煮えくり返るような男の話もあります。なんでそんな男と一緒に暮らせるのか疑問に思ってしまうくらいひどい話もたくさん聞きます。臨場感のあるおしゃべりが上手な子の場合だと、思わず聞いている側がカフェの花をひっくり返してしまいそうになることもありました。自分勝手な生活態度、不誠実な行動、こちらのことを尊重する気持ちが見受けられない言葉など、ひどい男の話はいつだって深夜まで続きます。先日も、子どもや自分の母親のことをすべて妻にまかせて平気で飲みに行く芸術家肌の夫について、連れていた赤ちゃんそっちのけで三時間近くおしゃべりを聞いてしまいました。 ひどさの質や量より、むしろ重要なのは…  ただ、長年そうやってオンナ同士の毒のあるおしゃべりを続けてきてつくづく実感するのは、他愛もない愚痴とひどい男の被害報告は、第三者が線引きをできるほどはっきりと分かれているわけではない、ということです。私の常識からすれば信じがたい言葉を投げかけられていても、それほどひどい目にあった顔をしていない子もいれば、よくよく聞くとそんなに変なことをしていない男について、とんでもない罵詈雑言で悪口を続けられる子もいます。  結局、どのように聞こえるかというのは多分に、「この先この人とやっていけない」と本人が思っているかどうかなのだと思うのです。そして別れたいと思うか続けたいと思うかは、その男のひどさの質や量とあまり関係していないようです。もちろん、さっさと別れずに人に話している時点で尻込みする気持ちはあるだろうし、別れてまたちょっとくっついてを三回繰り返してようやく別れる人もいれば、本当にいいのかどうか自問して二年ほど費やす人だっているけど、二年経って結局別れると憑き物が落ちたようにすっきりして、その二年をもったいなかったと思うのが常なのかもしれません。  お便りを最初に読んだ時は、きっとこの方の中で、この男はもうないな、と答えは出ているのではないかと思って読み進めていました。悩みを聞いていて、相手の男に一瞬でもいいと思う点が一つもない場合は、大抵そうだというこちらの勝手な経験則で。だとしたら、子どもがいようが情があろうが別れちゃえばいいのに、と言っていたと思います。子がかすがいとなる夫婦の話、子がいるから別れないという夫婦の話はよく聞きますが、子どもは別にかすがいになりたいわけでもないだろうし、自分のために我慢されてもなぁ、と思うかもしれないし。自分勝手で不誠実な男性の携帯電話を鳴らして夜を明かすには人生は短いし、働けて動ける時間は貴重です。 彼について考える時間を減らし、楽しみを見つけて  ただ、お便りの最後には関係を続けるための話である旨が記されているので、ここではそれを言葉通りに受け取って話してみます。嫌な人との関係を続けていくのであれば、とにかく彼について考えている時間を減らし、そのほかに生きがいや喜び、楽しみを見つけるべきだと個人的には思います。彼が時間や約束を重視しないのであれば、それを期待しない。もしある程度経済的に支えてくれるのであれば、そのお金で人を雇うなどして、家事や育児など彼の協力が得られないことで増えている負担を減らし、彼が帰って来なくても成立する生活を築くとか。  何より重要なのは、彼が先輩とカラオケで勝手に楽しんでいる時間、あなたも彼以上の充実した時間を過ごせるかどうかです。彼の帰りを待ち、着てもらえぬセーターを涙こらえて編んでます、というのが好きだというのならそれまでですが、それがストレスなのであれば、彼よりその夜を、その時間を楽しむしかありません。  子どもが小さいから無理、と女のほうだけがあきらめる必要はまったくなく、ベビーシッターでも託児所でも使って遊びに行ってもいいし、子どもと一緒にできることを探してもいいし、家でオンラインで楽しめるものを探してもいい。恋人を作ったっていいと思います。身勝手な男に合わせてあげずに自分の人生を生きられるのであれば、嫌な男でも何かしらの利害の一致がある、と割り切って一緒にいられるかもしれません。まぁ、それくらい意識を外に向けはじめたら、この男やっぱりいらねーなと思う可能性だって高いけど。 連載「涼美ネエサンの(特に役に立たない)オンナのお悩み道場」では、恋愛、夫婦、家族、仕事、友人など、鈴木さんと同世代の30~40代女性を中心に、お悩みを募集しています。ご応募はこちらのフォーム(https://forms.gle/vH3KMGRGBPJb2TE5A)から! ●鈴木さんからのメッセージ 私はずっと地べたにはいつくばって生きている感じなので、こんな風にすれば素敵な人生送れるよ!というアドバイスは何もないですが、ピンチに陥ったり崖っぷちに立ったりすることは多い日々だったので、痛み分けする気分で、気負わずなんでもお便りお待ちしてます。
高齢者がトイレで突然死? "何気ない行動に潜む恐ろしい死因"を法医学者が徹底解説
高齢者がトイレで突然死? "何気ない行動に潜む恐ろしい死因"を法医学者が徹底解説 『こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」 (単行本)』高木 徹也 三笠書房  "ヒートショック"をはじめ、日常の些細な行動が命の危険につながるケースは少なくない。特に高齢者になると軽い衝撃でも身体に大きなダメージが残りやすく、最悪の場合はそのまま命を落としてしまう。 「大切な家族や友人を突然亡くしたくない」「思わぬ落とし穴から自分の身を守りたい」という人にこそ読んでもらいたいのが、今回紹介する書籍『こんなことで、死にたくなかった:法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)だ。 同書の著者である高木徹也氏は、東北医科薬科大学で教授を務める法医学者。これまで5000体以上の遺体を解剖してきた死因解明のプロフェッショナルで、ドラマや映画などで医療監修も多数おこなっている。 彼が"日常に潜む死の危険"としてまず挙げたのは、「熱いお茶を飲んで死ぬ」という信じられないような事例だ。「熱い飲食物は『食道がん』になる危険性を高めるという研究結果が数多く報告されています。日常的に熱い飲食物を摂取していると、食道が刺激を受け、食道粘膜の細胞が変異して、がん化する可能性があるのです」(同書より) 高齢者は温度の高さを感知する神経の働きが鈍くなっているために、高温な飲み物を飲み込むのにそれほど抵抗がない場合が多い。その結果、知らず知らずのうちに食道を刺激し続けてしまうのだという。 また、熱いお茶が引き起こす危険は食道がんだけではない。飲食物とともに細菌が気道へ入り炎症を起こす、"誤嚥性肺炎"にも注意が必要だ。「もともと高い温度の飲料水は、身体にとって『飲みこみやすいもの』と判断されるため、誤嚥しやすいのです。そのうえ歳を重ねると、微細な脳梗塞によって、『むせ』症状が出ることなく、簡単に気道内に流入してしまいます。そのため、熱いお茶ばかりを飲んでいると、誤嚥による気管支炎から肺炎を起こしてしまう可能性があるのです。そして、その肺炎が重篤化すれば、呼吸困難や敗血症に至って死んでしまいます」(同書より) 高木氏いわく、お茶は入れたてではなく、60度ほどに冷ましたものを飲むようにするのがおすすめだという。加えてこまめな歯磨きや入れ歯の手入れ、歯周病治療なども怠らず、口腔内をきれいに保つことも重要だ。 日常に潜む危険は他にもある。例えば高木氏が受ける依頼で、「高齢者の遺体が自宅のトイレから出たところで見つかった」というケースは少なくない。一見すると事件性を疑いたくなるものだが、多くはトイレでの"きばり"が原因で亡くなっているのだ。 高齢者はさまざまな理由から腸の動きが鈍化しやすいので、便が腸内に長く留まり硬くなって排出しづらい傾向にある。さらには便意を感じにくくなったり、排便時に必要な筋肉が弱まり便をうまく押し出せなくなったりすることも。つまり、便秘状態になりやすい。「このような理由から、高齢者はトイレで長い時間『きばる』のです。きばれば血圧は上昇し、脳血流が増加。これにより、動脈硬化の進行によって脳に形成されていた動脈瘤が破裂して、脳血管系疾患を起こすことがあります」(同書より) トイレできばる機会を減らすためにも、普段から便通をよくする食事を心がけることが大切だと高木氏は主張する。慢性的に便通の悪さを感じているなら、早めに医師と相談しておこう。 なお、健康的な生活を送っている高齢者であっても油断は禁物だ。例えば高木氏が担当した案件の中には、ペットに咬まれたことが原因で死亡してしまうケースもあったという。「実際に、飼っていた小型犬に腕を咬まれ、その3日後に死亡した高齢者を解剖する機会がありました。傷口は化膿していて、腕全体が赤く腫れている状態でした。解剖で詳細な検査を行なったところ、本来は無菌なはずの血液から細菌が検出されたことから、死因を『犬咬傷にもとづく敗血症』と判断しました。 警察の調査によると、咬まれた直後は『傷がそれほど深くないから』と消毒を行なわず、また病院にも行かなかったとのこと。飼い犬は室内飼育で、狂犬病の予防接種も受けていましたが、それでも犬の口の中に潜む細菌が感染してしまったのです」(同書より) 飼い犬の他に、飼育していた鳩から感染した「オウム病クラミジア」と呼ばれる細菌が原因で、重度の肺炎と心不全になった高齢者もいる。例え家族として大切に飼育していても、動物の世話にはさまざまな感染リスクがつきものだ。「そもそも、高齢者は免疫機能が低下しています。そのため、病原性の低い微生物でも症状を発生させてしまう『日和見感染』の可能性があり、何事も油断できません」(同書より) 同書を読んでいると、まさに「こんなことで!?」と驚いてしまうほど予想外な理由で人間は命を落としかねないことがわかる。自分、そして周りの人のためにも、日常に潜む危険から身を守るための知識を身につけてみてはいかがだろうか。
「政府やJAに不信感」「日本がなくなるのでは」…令和の米騒動で高まる不安 納得できる「適正価格」は【AERAアンケート結果発表】
「政府やJAに不信感」「日本がなくなるのでは」…令和の米騒動で高まる不安 納得できる「適正価格」は【AERAアンケート結果発表】   写真はイメージ=GettyImages    日本人の「主食」として、これまで毎日なにげなく食べていたお米をめぐる「令和の米騒動」。昨春ごろは5キロ2千円台だった米価は4千円台で高止まりしており、お米の「適正価格」が話題になっています。AERA編集部の実施したアンケートで、「適正価格」として最も多かったのは「2501~3000円」。消費者として安価なお米を求める一方、安定的な生産のために農家の利益を考慮すべきという意見が目立ちました。 *   *   *  今回の読者アンケートのテーマは「お米」。インターネット上で5月28日から6月4日まで実施し、回答者は933人でした。    まず、みなさんのお米を食べる頻度について聞きました。最も多かったのが「1日2回ほど」の44.9%。続いて多かったのが「1日1回ほど」の27.4%、そして「1日3回ほど」の18.9%でした。  高止まりが続いている米価の影響については、お米を食べる頻度が「かなり減った」「やや減った」はあわせて3割ほど。7割が「変わらない」でした。  お米の代わりに食べる機会が増えた食材については、「ない、変わっていない」が43.1%でしたが、最も多かった食材が「パン」(38.6%)。そのほかは「うどん」(33.3%)、「パスタ」(27.7%)、「ラーメン」(24.1%)などと続きました。    食事の際の「かさ増し」などのためのアイデアも、多く寄せられました。 「安くて高たんぱくな”おから料理”を増やして、おかず中心の食事にしている。お米には押し麦を混ぜて、かさ増ししている」(50代、男性) 「うすあげやちくわ、白菜を使っています。お米を食べる量は変わらないが、時々かさ増しに使う事があります」(50代、女性) 「自分は、もやしです。野菜炒め・ラーメン・焼きそば・ナムルにもなるし、安くて美味しいです」(50代、男性) 「何もかもが値上がりしているので、かさを増すというより、食材の単価を落としています。キノコやモヤシなどを多用するなど」(60代、女性)       買うなら「国産の米」  また、お米を選ぶ際に重視していることについても聞きました。  約6割が選び、最も多かったのが「国産の米であること」(59.2%)で、「価格が安い」(40.4%)を上回りました。そのほかは「銘柄」(31.9%)、「好みの味」(15.8%)などでした。  スーパーなどでは、海外産のお米も販売されるようになっていますが、みなさんの評判はどうなのでしょうか。 「外国産の米(タイ米など)に対する抵抗感を持っている人が多い気がします。チャーハンにすれば大丈夫なんていう声もありそうですが、そういう声も美味しくないという前提で言っているのだと思います。  1990年代のタイ産の米の味を私は知りませんが、少なくとも現代のタイのお米は軽くてさっぱりしていて食べやすく、美味しいと思います。日本に輸入される高級米に限った話ではなく、タイで食べた一般的なタイ米も美味しかったです。   おそらく品種改良などが進んで品質が向上したのだと思います。外国産のお米の味を語るのに、30年ぐらい前の時の味のイメージで語るのはナンセンスだと思います。国産=良品、外国産=劣等品というような偏見は持たないでほしいなと思います」(30代、男性)   読者の考える「適正価格」は  5月末から、随意契約で販売された備蓄米の販売が始まりました。一方で、全国のスーパーなどで販売されている通常の銘柄米は、5キロあたり4200円程度で推移しています。  では、備蓄米ではない、通常のお米の価格は、生産者側の得られる利益もふまえると、どれぐらいが「適正価格」なのでしょうか。みなさんの考えを聞きました。        最も多かったのが、5キロあたり「2501~3000円」(29.6%)。しかし、「3001~3500円」は25.6%、「2001~2500円」も23.3%と、大きな差はありませんでした。なお、「3501~4000円」は7.0%、「1001~2000円」は6.9%でした。    昨春は5キロあたり2000円ほどだった米価が2倍に値上がりしていることについて、複数回答でたずねたところ、「生産者・農家のことを考えると、価格が安すぎるのはよくない」という意見は48.2%、「以前は安すぎたが、今は高すぎる」は44.8%でした。  そして、「以前の水準(2000円前後)がいい」は39.2%ありましたが、「生産者・農家よりも、消費者として価格をできるだけ下げてほしい」は11.4%にとどまりました。  また、「米の安定供給のため、これからはもっと米の生産を増やす方向がいい」は53.0%。「人口減もあって米の消費量は減るから、減反政策を維持・または進めるべきだ」は1.9%と少数派でした。 「美味しいお米を食べたいので米の値段が高くても備蓄米は食べたくない、もともと米の値段が安かったのだから米農家さんの事も考えて米の値段を上げても良いと思う」(40代、女性) 「米に代わる小麦を食べすぎての小麦アレルギーも怖いし、もともと子供が便秘がちで、パンよりご飯があっているし好きなので、お米が買えないことの方が困る。今後農家のなり手がいない現状を考えると、もっと農家の収入改善が必要と思う」(50代、女性)   政府やJAに厳しい意見  今回の「令和の米騒動」をめぐって、過去に減反政策を続けてきた日本の農政や、生産・供給を担っているJAに対して厳しい意見が多く寄せられました。いくつか紹介します。     「お米の価格が1年で倍以上になり、食費の割合が多くなり、他に必要なモノを我慢しています。生産者の大変さやコストが上がったのは分かりますが、これほど値上がりするのがなぜか納得がいきません。政府や間に入っているJAや様々な業者に対して、とても不信感を持っています」(50代、女性) 「今までの農政大臣は何をやっていたのでしょうか? 物価高でお米だけが上がっているわけじゃないので、庶民の暮らしは本当に大変です。農家の人の生活もあるので多少の値上げは仕方ないですが、倍になればコメ離れが進んでしまいます。実際うちは、お米は今までの半分でいいやと思うようになりました。そしてこれ以上の高騰が続けば、お米からうどんやパンに切り替える予定です」(50代、女性) 「気軽に買えなくなった。スーパーを何件かまわり、安い米を買っている。都心から離れた田舎に住んでるため、備蓄米は売ってない。農家からどんな工程を経て商品棚に並ぶのか消費者にはわからない。無駄な工程がないか見直しが必要と思う」(50代、女性)    お米を生産している側からもコメントがありました。 「零細な兼業米農家です。儲かるなんて無理です。ほとんど持ち出し、周りは高齢化で不耕作地も増えてます。法人化してそれなりに儲かる農業に変えていかないと、日本の米は輸入に頼る事になりかねません」(50代、男性) 「我が家は2反半の田んぼを、JAを介して個別に契約しておコメを作ってもらっています。農業用水使用負担金、固定資産税、その他諸々の負担金は全部払っていますが、お米、使用料等の払い戻しは一切無しです。これだけお米の価格が上がっても一切無しです。これから高齢に伴い、続けていけない小規模米農家も増えると思いますが、この制度では農家の持ち出しばかりで生活は無理です。JAへは不信感ばかりがつのります。小規模農家は無償でJAへ田んぼの管理をお願いしなければならないでしょうか?  農政として、これから高齢化していく小規模農家の田んぼを維持管理して小規模農家のいろいろな負担を軽減して欲しいです」(70代、女性)     拡大していく不安、不信  これまで当たり前に食べることができていた「主食」のお米が気軽に手に入らなくなったことで、政治やJA、流通業者などへの不信感、そして国全体もふくめた将来への不安感が高まっているように、寄せられたコメントからはうかがえます。 「コメが足りない理由は、ニュースなどで、説明されているが、あまり納得、なるほどと思ったことがない。何か、ほかに理由があるのでは?と勘ぐってしまいます。小泉さんにかわってからすぐに備蓄米が出回るようになったと、ニュースに毎日でています。今までは何をやっていたのですかね、とも思います。古米という表現もよろしくないと思います。農家の方が一所懸命作られたのに。騒動に踊らされている私達。冷静に見て選んで感謝して食べたいと思います」(50代、女性) 「人口が減っている中、稲作をはじめ農業をする人も減っています。食べる人も減っているとは思いますが、やはり生産者の減りが加速しているので、今後食べ物もまた、土地もどうなっていくのか心配です。国が土地を守っていく、農業をこれまで以上にサポートしていかないと、日本という国が無くなるのではないかとすら思ってしまいます」(40代、女性) (AERA編集部)     【こちらも話題】 「がんばれ日産!」「カッコいい車を作って」苦境の日産にエール ハコスカ、ケンメリ…”復活”してほしい名車の第1位は?【AERAアンケート結果発表】 https://dot.asahi.com/articles/-/257772  
「S&P500で配当も欲しい」人のETFベスト10/米国株の東証ETFまとめ!【新NISA応援】
「S&P500で配当も欲しい」人のETFベスト10/米国株の東証ETFまとめ!【新NISA応援】 東京証券取引所 金融リテラシーサポート部 調査役の富田貴之〈とみた・たかゆき〉さん(撮影・戸嶋日菜乃)  長期投資で威力を発揮する「複利効果」。得られた利益を再投資することで元本を増やせば効率的に運用できる。だが、効率はさておき「配当が欲しい」というニーズも根強くある。S&P500への投資で配当をもらうには?【本記事はアエラ増刊「AERA Money 2025夏号」から抜粋しています】 「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」をはじめ、新NISAのつみたて投資枠で選べるインデックス型投資信託はほとんどが分配金を抑制する(出さない)タイプだ。  投資信託の購入者に分配金を払い出さず、ファンドの中で自動的に再投資をしてくれている。  新NISAの非課税投資枠をきっちり使いながら効率運用ができるので、基本は分配金抑制タイプの投資信託を選ぼう。 ETFは分配金が出る  S&P500の組み入れ500銘柄からは、すべてではないが配当が出ている。  米国企業の間では四半期ごとの配当が主流だ。  個別株を保有している場合、配当は直接受け取ることになる。  投資信託の場合は、得られた配当を分配金として購入者(投資家)に支払うケースもあれば、ファンド内で再投資に回すケースもある。その判断は運用側に任されている。  S&P500をはじめとする米国株の投資でも配当が欲しい––––、そんなときは東証に上場しているETF(上場投資信託)を。  「東証」というと日本株のETFしかなさそうだが(実際、日本株ETFのほうが数は多いが)、S&P500に連動するタイプや、米国株の高配当株を組み入れたタイプもある。  主な10本を表にまとめた(次ページ上の表参照)。安いものは数千円から、高くても数万円で買える。信託報酬と呼ばれるコストも高くない。  S&P500のETFで一番人気は純資産総額1168.9億円(2025年2月28日現在)の「iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF」。信託報酬0.066%(年率、税込み、上限。2025年3月26日現在/以下同)と最安で、6000円台から買える。  最低投資金額が一番低いのは「iFree ETF S&P 500(為替ヘッジなし)」信託報酬0.077%。1500円前後から投資OKだ。  ETFの普及に邁進(まいしん)する、東京証券取引所金融リテラシーサポート部調査役の富田貴之さんに取材した。 本記事が丸ごと読める「AERA Money 2025夏号」はこちら! 商品価格¥1,320 詳細はこちら ※価格などの情報は、原稿執筆時点のものになるため、最新価格や在庫情報等は、Amazonサイト上でご確認ください。 「制度上、東証ETFは組み入れ銘柄から得られた配当は分配金としてすべて吐き出す(当該ETFの購入者に支払う)のが原則となっています。 分配金利回りはS&P500に連動するETFで現状1%前後です。新NISAでは成長投資枠で買い付けられます。 特定口座などの課税口座で分配金を受け取ると20.315%の税金が差し引かれますが、新NISAは分配金も非課税です」  とはいえ分配金の分だけ元本は目減りするため(分配落ち)、複利効果という意味では分配金抑制タイプの投資信託に比べて不利だ。  ETFではなく、投資信託の中で分配金が再投資される際、20.315%の税金は引かれない。  ただ、S&P500のように米国株から配当が出た場合、米国分の10%の税金は引かれたうえで再投資に回ることになっている。 「特定口座で買ったETFの場合、自動的に二重課税にならないように調整(米国分の課税は実質的に免除)されます。 新NISAではもともと分配金への課税がないため二重課税の調整はありません」  資産を増やすときに効率性は重視したいが、「他のポイント」に目を向ける投資家もいる。  投資で億超えの財を築き、2020年の秋に47歳で約25年間勤務した会社を早期退職した桶井道(おけいどん)さんは、自称「配当金大好きマン」だ。  2024年の1年間で受け取った分配金と配当金の総額は税込み323万円、手取りは249万円だった。 含み益237万円超  新NISAのつみたて投資枠では「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に毎月10万円ずつ投資している。  ETFでは「iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF」がお気に入り。  2025年3月19日現在のiシェアーズETFの評価額は436万8960円、含み益は237万4560円だという。 「iシェアーズのS&P 500 ETFを選んだのは、投資した当時から信託報酬が他より安く、純資産総額も大きめだったからです。 他のETFもたいていそうですが、二重課税調整制度の対象銘柄で、特定口座を通じて購入すれば確定申告で外国税額控除を行う必要がないのもラクでした。 世界最大の運用会社であるブラックロックが運用しているという信用力、ブランド力、安心感もあります。 本当はつみたて投資枠でもETFを買いたいぐらい(笑)」 この記事の完全版が読めるAERA増刊「AERA Money 2025夏号」が好評発売中です! Amazonや楽天ブックスなどのネット書店では「アエラマネー」で検索して、この表紙を探してみてください!(編集部より)  桶井道さんはなぜETFが好きなのだろう。 「分配金が欲しいからです。老後は個別株の配当金やETFの分配金を生活費にする予定です。 今は分配金を使ってショッピングのようにETFや個別株に再投資をしています。 早期退職していることもあり、分配金の入金の日は給料日のような気持ちになります」  桶井道さんは、勝手に振り込まれるところが好きなのだという。 「分配金や配当金は定期的に、自動的に振り込まれるのでラクです。価格が下がっても、分配金があると心の支えになります。 これまで増やしたお金を老後に使うとき、ちょうど暴落中だと取り崩しにくいと思うんです。 その点、分配金や配当金は自動入金なので」  運用効率だけにフォーカスすれば、ETFよりも投資信託のほうが優れていることは、桶井道さんも承知している。それを前提としたうえで、次のように述べる。 「私は投資を『効率=数字』だけでは捉えていません。つらくない投資、楽しい投資をすることこそ、長く継続していくうえで大切だと思っています。 通常の投資信託を、必要なときに必要なだけ取り崩せる方もいらっしゃると思いますので、そういう方はETFでなくても全然問題ないかと」  分配金をもらうのがうれしい、新しい銘柄を買うのが好き。生粋の「投資好き」であった。 地球儀投資  ちなみに、2025年2月下旬から3月初旬にかけて米国株が大きく下げた局面でも、桶井道さんは資産を増やした。  2月末時点の総資産額1億8451万円、3月19日(取材日)の総資産額1億8788万円。S&P500だけでなく、多国籍の個別株やETFに「地球儀投資」をしているらしい。  新NISAではS&P500とならんで全世界株式も人気だが、彼の言う地球儀投資は「桶井道式オルカン」のようなものだろう。 取材・文/中島晶子(AERA編集部)、大西洋平 富田貴之(とみた・たかゆき)東京証券取引所 金融リテラシーサポート部 調査役。大阪大学経済学部を卒業後、東証へ入社。セミナー講師や「東証マネ部!」運営チームとして情報提供。数字に強い 桶井 道(おけいどん)個人投資家、物書き。投資歴26年。100銘柄以上の個別株、ETFを保有。最新刊は『時をかける貯金ゼロおじさん』(KADOKAWA) 編集/綾小路麗香、伊藤忍 『AERA Money 2025夏号』から抜粋

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