太田裕子
原田泰造が「おっパン」で感じた原作者の深い愛情 「演じさせていただいてるという気持ち」「本当にありがたかった」
「俳優」を語る原田泰造/撮影・写真映像部・松永卓也
放送中の土曜ドラマ「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」(東海テレビ・フジテレビ系/毎週土曜午後11時40分)が好調だ。主演を務める原田泰造は、トリオ「ネプチューン」のひとりとしておなじみだが、俳優としてのキャリアも着実に積んでいる。
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主演ドラマ「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」が、好調だ。家族からも嫌がられる古い価値観を持った堅物の「おっさん」の沖田誠(原田泰造)が、ゲイの青年・五十嵐大地(中島颯太・FANTASTICS)との出会いによって、これまでの「自分の常識」をアップデートしていくホームコメディー。
練馬ジム氏によるLINEマンガの実写化で、原作は国内累計閲覧数7,500万回(2024年2月時点)という話題作だ。幅広い読者から共感を呼び、「おっパン」の略称で親しまれている。
原作者がドラマの現場に「ありがたい」
「練馬ジム先生もドラマを本当に応援してくれていて、第4話では先生自身のX(旧Twitter)で、ご本人が、ドラマを見ながら“ここいいよね”とか語っている音声がアップされていたの。
原作者ご本人がドラマについて語ってくれるなんて、作品に対するものすごい愛情だなと思った!
もちろん、この作品のオファーをいただいたときに原作はすぐに読ませていただきました。
練馬ジム先生の作品に対する愛情を感じて、改めて 演じさせていただいているという気持ちになった。現場にも何回か応援しに来てくださって、本当にありがたかった」
現場には、原作漫画家の練馬ジム氏も何度か来てくれたという。
原作の人気もあり、ドラマの第1話の見逃し配信の再生回数は、東海テレビ制作のドラマ初回放送としては歴代1位を記録した。
時折真剣な眼差しで「俳優」について話す原田泰造/撮影・写真映像部・松永卓也
俳優としての話が聞きたい。そう伝えると、開口一番こう答えた。
「“役者さん”って言われても、おそれおおいやら恥ずかしいやらで仕方なく、“はい、はい”って顔してる(笑)。俳優って言われても、うーんなんかしっくりこないというか……」
俳優としてはNHK大河ドラマの出演歴も、主演作もある。かなり活躍していると思うのだが……。
職業欄に「ネプチューン」!?
「“芸人”って、肩書に書くのもおこがましい感じ。結構、職業欄に書くときって難しい。”ネプチューン”って書ければいいんだけどね! 自分で何をやっているかイマイチわかっていないんだよね」
インタビューを行った1月29日時点で、「おっパン」の撮影は全て終了しているという。撮影中に大変だったことを聞いてみた。
「結構、なかったかな……セリフを覚えるのだけが大変。一番大変」
撮影・写真映像部・松永卓也
謙遜しているのか、はたまた、はぐらかしているのか。撮影当時を回想するように微笑みながらこう答えた。
「セリフは僕に付いてくれている人と、ひたすら掛け合いで覚えていく。セリフを覚えているときは、不思議と睡眠時間が長く取れなくなっちゃう。セリフが頭に入っていると、夜中にトイレで起きちゃう感じに近いかも」
夜中にトイレ!? 強烈なたとえに現場にいたスタッフたちは大爆笑。自身も楽しげに笑い、こう続けた。
「よくわかんないでしょ!? 僕もよくわかんないんだけど(笑)、睡眠中に途中で起きる時間が多くなるの。寝ててもパッと目が覚めちゃう。
逆にドラマの撮影が終わると、だんだん睡眠時間が長くなるの。撮影中は“セリフを忘れてはいけない”って、緊張感があるのかもしれない。うん、たぶん、そうだと思います(笑)」
スタイリスト/上井大輔(demdem inc.)衣裳提供/株式会社エクスプローラーズトーキョー プレスルーム(03-6851-4604)撮影・写真映像部/松永卓也
個別のインタビューに答える機会はほとんどないという。だが、とにかく気さくで、会話のテンポが軽快で、人との距離の縮め方が絶妙だ。
底抜けに明るい印象だが、10代の頃から本人を突き動かしていたものがある。それは、「なんでもいいから、テレビに出たい」。この一心でオーディションに応募したり、自分自身でチャンスを引き寄せたりして、芸人になった。
「昔から本当にテレビに出たかった。そして、いまもこうしてテレビに出られているでしょ!? 本当にずっと楽しいのが続いている感じ。芸人を始めて、売れなくて食べれていないときでも、なんだかんだ楽しかった。苦労だと感じたことが無いと思う。本当にあっという間の芸能生活で、今、ここにいるみたいな感じだから」
松下由樹や富田靖子との共演に感激!
芸人であること、俳優であること以上に、とにかくテレビに出ることが楽しいのだという。
「ドラマでは五十嵐美穂子役の松下由樹さん、僕の妻・沖田美香役の富田靖子さんと共演していますが、松下由樹さんと富田靖子さんは『アイコ十六歳』に出ていたふたりでしょ!
僕は同世代だからそれをリアルタイムで見てきて知っているわけで、そんな人たちと共演できているなんてうれしいよね!
俳優として、お二人はとても柔軟なんだよね。“私が準備してきたのはこれだから、これ以上できません”というのは全くない。頑固じゃない。
“どんな感じでもやってみましょう”という人たちだから、もう~楽しくて! 撮影現場では、もちろん台本に沿って、監督さんと話し合って進めていくんだけど、その“枠”みたいなものの中でもとっても柔軟なの」
その口ぶりからは、ドラマを見ている視聴者サイドのような、ピュアな好奇心と感激が伝わってくる。いまが楽しくてたまらない、という感じだ。共演したい人はたくさんいる。
撮影・写真映像部・松永卓也
「小さいころからテレビっ子だったから、尊敬している俳優さんや共演したい俳優さんはいっぱいいますよ! 西田敏行さんとか武田鉄矢さんとかのドラマをずっと見ていたからね。その人たちにいま会えているのがすごいことだよね! 会えるだけじゃなくて共演できる機会もあるわけでしょ! なんていうのかな……夢の中にいる感じだよ」
テレビを見ていた子どものころ、憧れていた人たちに会えるだけでなく、肩を並べて仕事ができる。「夢の中にいる」と表現した。
素敵な俳優との新たな出会いも
自分以外の俳優の話になると、ひときわ熱っぽく語った。
「“こうやって演技するんだ!”とか、“これ、どうやって撮影したんだろう?”って、普段からドラマや映画を見ちゃう。沖田誠の会社の先輩役の俳優・渡辺哲さんも本当に素晴らしい役者さんでした! かっこよかったですよ! 立ち振る舞いはとても良い勉強をさせていただきました。
とにかく柔軟で、監督さんから指示が出ると“はい”って言って、まず演技してみるの。指示された演技は、渡辺さんの頭の中でその姿をイメージするのは難しいと思っていても、やってみようっていうスタンス。
指示されたことに、“やりますよ!”それが素敵だなと。60代になっても70代になっても自分もこういう気持ちの役者さんになれたらいいなと思いました」
「おっぱん」の沖田家で飼っている犬・カルロスの話も飛び出した。
撮影・写真映像部・松永卓也
「自分で自分のドラマを見ていて、カルロスとの撮影のときの雰囲気とか思い出すんだけど、かわいいよね~」と、突如メロメロに。
「僕が“ボールを捕ってきな”っていっても、捕りに行かないシーンでの、カルロスのあの演技! 見ていて本当にいじらしくなってしまう。“カット”の声がかかるまで、カルロスは僕の言うことを聞かないでツーンとして、じっと我慢しているわけでしょ。
よし、動かなかった! って、カルロスの名演技には、頑張ったな、かわいい~って、お菓子あげたくなるね!」
ドラマはまだまだ山が何個も
ドラマもそろそろ終盤だ。だが、「新キャラがいっぱい出てくる」という。何より、原田演じる“誠”だ。誠はどんな運命をたどるのか。原田本人は、誠に優しいまなざしを送る。
「僕が演じる“誠さん、頑張ってるな!”って、本当に思う。誠さんはまだまだ失敗するし、山が何個もある。もうこれで大丈夫だと思ったところにまた落とし穴がある感じです」
令和の堅物おやじ誠が、引きこもりの息子・翔(城桧吏)が好きそうなかわいいパスケースを見つけ、“翔に買って帰れば喜ぶのでは?”と考えるシーンがあった。しかし、店員に声を掛けられて逃げ出してしまう。
あの瞬間の誠は頑張っていましたね、と語りかけると「あ、第3話だ! まだまだ大変なの」と笑う。
“楽しい”は、人に伝わる。現場を、仕事を、とことん楽しむ原田泰造の情熱が、画面を通じて視聴者にも伝播しているのかもしれない。(AERAdot.編集部・太田裕子)
◎原田泰造(はらだ・たいぞう)1970年3月24日生まれ。「ネプチューン」のメンバーとして活躍する一方、俳優として多数のドラマ・映画・舞台に出演。『編集王』(フジテレビ)でテレビドラマ初主演、2004年『ジャンプ』(竹下昌男監督)で映画初主演。主な出演作にドラマでは、NHK大河ドラマ『篤姫』『龍馬伝』『花燃ゆ』、NHK 連続テレビ小説『ごちそうさん』、NHK特集ドラマ『生理のおじさんとその娘』、『サ道』(テレビ東京)、『祈りのカルテ』(日本テレビ)、『はぐれ刑事三世』(テレビ朝日)、映画では『ミッドナイト・バス』(竹下昌男監督)、『スマホを落としただけなのに』(中田秀夫監督)など。1月スタートの主演ドラマ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』が好調。
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2024/02/19 11:00