“3枠目”は超激戦 北京五輪の女子フィギュア、熾烈な代表争いを勝ち抜くのは?
現在の日本女子フィギュア界で頭一つ抜け出している紀平梨花 (c)朝日新聞社
2022年北京冬季五輪の開幕まで、1年を切った。フィギュアスケートの国別出場枠は、3月22日からスウェーデンで開催予定の世界選手権で大半が決まる。
最大出場枠「3」を獲得するための従来の条件は、前年の世界選手権でその国の代表上位2名の合計順位が「13」以内であること。しかしコロナ禍にある今季、国際スケート連盟は、3月1日で締め切られる各国のエントリー状況により、五輪出場枠の決定方法について再検討する可能性を示唆している。
流動的な状況下、それでも選手は五輪出場枠を獲得するため、世界選手権に向け鍛錬を積んでいるだろう。日本女子代表の紀平梨花・坂本花織・宮原知子は、18年平昌五輪では「2」だった出場枠を「3」に増やすことを目指す。だが出場枠を「3」と仮定した場合でも、代表の座を巡る来季の戦いは熾烈を極めることが予想される。
今季の試合での点数を見ると、まず紀平、次いで坂本は頭抜けている印象だ。全日本選手権(昨年12月)のフリーで4回転サルコウを初めて成功させ、連覇を果たした紀平の合計点は234.24。また、NHK杯(昨年11月)でショート・フリーともにほぼ完璧に滑り切った坂本は合計229.51というスコアで優勝している。現状、紀平を坂本が追うかたちで、この2人が日本のトップを走っていると言っていいだろう。
3人目の代表候補を今季NHK杯以降の試合で合計200点越えを果たした選手としてみると、その数は6名。全日本でショート6位と出遅れながら、フリーで追い上げ総合3位に入った宮原の合計点は、209.75だった。来季も継続するというフリー『トスカ』(ローリー・ニコル振付)は迫力に満ちたプログラムで、2度目の五輪出場を目指す宮原の切り札となる予感が漂う。
NHK杯・フリーで、4分の1回転不足と判定されたもののトリプルアクセルを着氷させた樋口新葉は、合計200.98で銀メダルを獲得している。全日本では7位と予想外の苦闘を強いられたが、樋口の強みは平昌五輪シーズンにあと一歩で出場を逃す悔しさを味わったことかもしれない。平昌五輪の約1カ月後に行われた18年世界選手権で銀メダルを獲得し意地を見せた樋口は、決意をもって来季に向かうはずだ。今季果敢に挑み続けてきたトリプルアクセルが安定すれば、大きな武器になるだろう。
昨季は体調不良で試合に出場できなかった三原舞依は、今季見事な復活劇をみせてくれた。合計203.65というスコアを出した全日本は、ショートで3位につけたもののフリーで順位を落とし、総合5位で終えている。来季、フリー後半まで力強く滑れる体力を取り戻せば、もっと点数を上げることができるはずだ。
若いスケーターも着々と実力をつけている。今季全日本ジュニア選手権を制した16歳・松生理乃は、完成度の高い演技が持ち味だ。NHK杯では、200点目前の合計198.97というスコアで銅メダルを獲得。4位に入った全日本の合計点は204.74で、遂に200点越えを果たした。伸び盛りの松生は地道に努力する選手でもあり、伸びしろは計り知れない。また昨季全日本ジュニア女王の河辺愛菜も、合計201.58で6位に入った今季の全日本で、ショート・フリーともにトリプルアクセルに挑んだ。16歳の河辺は、スピード感あふれるスケーティングでもポテンシャルの高さを感じさせる。
昨季の全日本で3位に入った川畑和愛は、今季はジャンプが安定せず、全日本でも11位と振るわなかった。しかし、今年1月の国民体育大会でようやく本来の力を発揮し、合計202.36で坂本に次ぐ2位に入っている。来季の試合で持ち味の大きなジャンプを決められれば、五輪代表争いにからんでくるかもしれない。
百花繚乱の日本女子、北京への切符を手にするのは誰だろうか。(文・沢田聡子)
●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」
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2021/02/23 17:00