日本に数多あるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。名店店主といえど、影響を受けた店はあるはず――。湯河原で愚直にラーメンを作り続ける天才、「飯田商店」店主が「並みじゃない」と感服するのはハードロックバンドの元ギタリストが作る繊細な一杯だ。
【写真特集】湯河原で長蛇の列をなす「飯田商店」、旨味が押し寄せる「醤油らぁ麺」
ラーメン業界で最高権威とも言われるランキング本「TRYラーメン大賞」(講談社)で2連覇を果たし、食べログの平均点は3.99点、全国のラーメン店51106軒のうち全国6位、神奈川県1位(2019年1月7日現在)という実績十分のお店「飯田商店」。店主の飯田将太さんはTBS系「情熱大陸」でも特集される大注目のラーメン職人の一人だ。
20代の頃、東京で和食の料理人を目指していたが、実家の水産加工会社に1億円の負債があることが判明。借金を返済するために、地元・湯河原に戻り、叔父の経営するラーメンチェーンのFCオーナーとしてこの世界に飛び込んだ。青天の霹靂だったが、この出来事がなければ飯田商店のラーメンはこの世に生まれなかった。
その後、2010年に湯河原で「飯田商店」を開店。今でこそ知らない者はいない名店中の名店だが、1年間は鳴かず飛ばずの日々が続き、その日のお客が2人だけということもあった。だが、じわじわとネットでの口コミが広がり、ラーメン評論家も来店する人気店となった。
筆者が初めて飯田商店を訪れたのは2014年。口コミや紹介記事などは見ていたものの、場所が湯河原ということもあり、なかなか訪れる機会がなかったのだ。しかし、一度行ったらその人気の秘密がすぐにわかった。
ラーメンの世界には「ラーメンは豚ガラ、鶏ガラ、人柄」という言葉がある。ラーメンが美味しいことは当然大切だが、それと同じぐらい人柄が大切だという言葉である。
どれだけ大行列を作っても、お客さん一人ひとりに笑顔で接客し、子どもには柔らかく茹でた麺を提供する。そんな飯田さんの人柄が自ずとラーメンにも表れ、美味しい一杯がさらに美味しくなる。飯田商店はそういう“心”と“顔”が見えるお店だった。
その後さらに有名になり、数々の賞を受賞。お店がリニューアルし、整理券制を導入するようになっても、お客さんへの姿勢は忘れない。
一度、子どもへの対応について飯田さんと話をしたことがある。
ラーメン店は回転が命ということもあって、子どもに一席取られると売上に影響してしまう。そういうこともあって、「子どもはお断り」というお店も多いのが現実だ。
だが、飯田商店はそうではない。ファミリーも大歓迎。子どもも一人の大切なお客さんとして接客する。そこには飯田さんのポリシーがあった。