一番の転機はテレビ出演だった。
テレビ朝日系「裸の少年」のラーメン特集で「支那そばや」の故・佐野実さんが訪れ、「進化」のラーメンを褒めたのだ。そこから火が点き、「TRYラーメン大賞」新人大賞の塩部門にも入賞するような名店に成長した。
塩ラーメンを作るのはとにかく難しいと言われている。味のはっきりした醤油や味噌と違い、単体だとしょっぱいだけで味を引っ張ることができない。ダシのブレが直接ラーメンに出やすくなるため、先にダシを完成させて、そこに合う塩をブレンドしていく作業の繰り返しだ。どうしても毎日差が出るものをきっちり調整して味を安定させていくのは至難の業だ。
関口さんはとにかく塩を研究した。数々の塩の味を頭に叩き込み、スープに合うものを頭の中で絞っていく。同じ海の塩でも、満月の日と新月の日ではまるで味が違うという。そういった細かな味の違いを徹底的に追求し、ソルトコーディネーターの資格も取った。
麺へのこだわりも半端ではない。「支那そばや」の麺に衝撃を受け、国産小麦を研究するようになり、2015年から自家製麺を使うようになった。「進化」のような繊細なラーメンだと、麺でスープの味も変わるという。それを毎日調整しながら麺を打っている。
ハマったらとことん突き詰める性格。その知識量と熱量には飯田商店の飯田さんも感服する。
「関口さんの技術や知識も尊敬していますし、何より想いが強く伝わります。いつ話しても、ラーメンの話ばかりです。とにかく突き詰め方もすごくて、塩に関しても水に関しても、知識の深さは並みじゃない。自家製麺において、とにかく小麦を考えるところもうちと一緒です。佐野さんが広めたと言っても過言ではない、ラーメン業界においての国産小麦に対しての向き合い方。美味い麺をとことん追求し続けている『進化』の麺は本当に凄いです」
関口さんも飯田さんには尊敬の思いでいっぱいだ。
「食材はもちろん、その食材を作る生産者の想いを伝えようと努力されているのが飯田さんで、素晴らしい職人さんだと思います。自分も小麦を研究しますが、飯田さんの麺は国産小麦の美味しさが存分に味わえる最高で最上級の麺だと思います」
一人ひとりのお客さん、一つひとつの食材に向き合い、シンプルな一杯をとことんまで突き詰める二人。お互いがいるからこそお互いのラーメンがどんどん磨かれていくのだと思う。(ラーメンライター・井手隊長)