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 秋田県で10月、クマ3頭が駆除されたことに不満を持った人からの抗議の電話が県庁や町役場に殺到し、通常業務ができないほどの事態になった。こうした過剰な抗議に対しては「そんな電話は切っていい」「留守電に切り替えればいい」などの否定的な意見もある。では、抗議を受ける自治体の「中の人」たちはどう感じているのか。本音を聞くと、度を越えたクレームでも簡単には突っぱねられない、難しい事情があるようだ。

【図表】「ストーカー型」五つのカスハラ要素はこちら

 札幌市の「市民の声を聞く課」は、その名の通り市民から様々な要望や意見を受け付ける部署である。有用な意見ももちろんあるが、過剰なクレームや長電話で、業務に支障が出ることも少なくない。

6時間半のクレーム

 「同じ方からの電話で、一度電話を切っては、すぐにかけなおしてくるという断続的な形でしたが、最も長いもので午前10時半から午後4時ごろまで続いたことがありました」

 同課の担当者はそう明かす。6時間半のクレーム電話とは恐れ入るしかない。

「バカやろう!」「てめえ、ふざけんな!」といった暴言は日常茶飯事だ。

 同市の10の区役所にある、市民からの意見を聞く広聴課の職員56人を調査したところ、75%の職員が「カスハラによる強いストレスを感じている」ことが分かったという。

 クマ3頭を駆除した際に抗議の電話が殺到した秋田県と秋田県美郷町だが、県の担当者はAERAdot.の取材に「私たちから電話を切ることはできない」と苦渋の思いを語った。

 ただ、佐竹敬久知事は10月23日の会見で「すぐ切ります。ガチャン」「業務妨害」と怒りをあらわにした。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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「耳から汗が噴き出しそうなほどのクレーム電話」