秋田県美郷町が県と協議し、作業小屋に長時間立てこもっていたクマ3頭を駆除したことに対し、県や町に抗議が殺到。そのさなかの10月9日、さらに県内でクマによる人身被害が2件発生した。リスクの大きさがあらためて浮き彫りになった形だが、県や町には10日になっても抗議の電話が続いているという。専門家は「執拗(しつよう)な電話はカスハラであり言葉の暴力です。堂々と切っていいルールを作るべきだ」と指摘している。
県と町が協議して、地元の猟友会がクマ3頭を駆除したのは10月5日のこと。その後、県と町には「責任者の名前を言え!」などと数百件の抗議電話やメールが殺到し、通常業務に支障をきたす事態に追い込まれていた。
そうした対応に追われるさなかの9日午前、今度は秋田市の住宅街で60~80代の男女4人がクマに襲われ、けがをした。午後には、市内の公園でクマの目撃情報を受けて警戒していた猟友会の70代男性が、クマに襲われてけがをした。男性は襲われた際に猟銃を発砲し、親子2頭を駆除した。
これだけの被害が続いていた状況でも、県や美郷町によると、連休明けの10日になっても朝から抗議の電話が続いたという。件数こそ減少傾向にあるが、対応に追われ通常業務に支障をきたしているという。
人の命を第一に守っている
県自然保護課の担当者は、
「全国の中でも、秋田県は人の生活圏とクマの行動圏が近い。さらに、今年は餌が不足していて、人の生活圏に入ってくる危険が大きいのです。秋田県に住む方や同じ東北の方は事情を分かってくださっていますが、県外の、特に西日本など遠い地域から電話してくる方はこうした事情をまったくご存じないようです。人の命を第一に守っているということを理解していただきたいと思っています」
と気丈に話す。
5日の駆除後の状況についてAERA dot.で報じた際も、30分もの長時間にわたって罵声を浴びせるような電話があると紹介した。