このときの穀物の世界生産量は35億7000万トンと見込まれ、中国とインドがその半分近くを食べるという、信じられない事態が起こりうる。

 繰り返しになるがそのときの世界人口は88.5億人、中国とインドを除くと58.5億人、強者の中国とインドという2つの国家の取り分を除く穀物の残りは19億トン。これを残る58.5億人が分け合うとして1人当たり分配量はわずか320キログラム、畜産物の飼料分や加工用途その他の用途分を合わせると、約200キログラム近く不足するであろう。2035年以降、中国とインドが食料を奪い、世界の畜産物生産がこのまま増えていくと、経済力の乏しい国を想像もできない飢餓が襲う可能性がある。

 1人当たりの穀物が500キログラムはないと、世界の飢餓は解消されないことがこれまでの経験が示す基準値である。経済レベルがなお低いインドが取ろうとしている方法は、遺伝子組換え穀物の大幅な植え付けであることが明らかになっている。インドばかりではなく、同じような対策に多くの国が触手を伸ばしている。

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高橋五郎

高橋五郎

高橋五郎(たかはし・ごろう) 1948年新潟県生まれ。農学博士(千葉大学)。愛知大学名誉教授・同大国際中国学研究センターフェロー。中国経済経営学会名誉会員。専門分野は中国・アジアの食料・農業問題、世界の飢餓問題。主な著書に『農民も土も水も悲惨な中国農業』2009年(朝日新書)、『新型世界食料危機の時代』2011年(論創社)、『日中食品汚染』2014年(文春新書)、『デジタル食品の恐怖』2016年(新潮新書)、『中国が世界を牛耳る100の分野』2022年(光文社新書)など。

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