2040年に、世界人口は22年の80億人から数えて18年間で11億人増え、91億人になるとみられている。

 この頃に年間の穀物生産量はピークを迎え、以後少しずつ減少していく模様である。その最大の理由は気象学者をして過去の人類史になかった「未知の領域」に入ったといわしめるほど深刻な地球温暖化(国連のグテーレス事務総長は「地球の沸騰化」の時代に入ったと述べ始めた)の進行、新規の耕地開墾の停滞、世界的な都市化による農業従事者の減少、土壌の劣化、化学農薬の効き目の低下などである。高収量新品種の登場なども期待されるが、同時に高い栽培技術も要求されるのが一般的なので、効果は限定的と見られる。

 2050年の穀物生産量は36億6000万トンにやや減少、この傾向は世界人口が104億人のピークを迎えると予測される2087年を経て、2100年に引き継がれていく見通しだ。この年の予測生産量は31億トン、ピークとみられる時を5億8000万トンも下回る見通しなのだ。その理由は後述する。

 人口は減りはじめているとはいえ100億人の大台を優に超える状態ながら、穀物生産量は減少する年が60年間も続く可能性がある。もしこれが事実になれば、人口が減少して穀物の1人当たり分配量が増加に転じるまで、人類は経験したことがない大飢饉の暗くて長い時代を過ごさなければならない。もちろん人類が半世紀以上もの長い間を大飢饉のままやり過ごすとは考えにくく、穀物に代わるさまざまな人工食料などの開発を進めることは想定できる。しかしそれは本書が持つ食の思想とはかけ離れた、人類がまったく別の食生活に移ることを意味することでもある。

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中印が世界の食料消費大国に