「中年の星」錦鯉M-1優勝で視聴者もらい泣き 「第7世代に負けない輝き」の称賛
優勝トロフィーを手にする錦鯉
心を揺さぶられた視聴者は多いだろう。漫才日本一決定戦「M―1グランプリ2021」決勝が19日に行われ、お笑いコンビ「錦鯉」が第17代王者に輝いた。優勝が発表されると、ボケ担当の長谷川雅紀(50)は「諦めないでやってきてよかった。僕はラストイヤーが56歳だった。その前に今年決めれてよかった」と号泣。ツッコミ担当の渡辺隆(43)も「本当に雅紀さんとコンビ組めて良かったです」声を上ずらせた。2人が抱き合う光景を見て、審査員たちももらい泣き。サンドウィッチマンの富澤たけしが「賞金で歯、入れてください」と目をうるませると、ナイツの塙宣之は「本当、ごめんなさい。モグライダーが残念でなりません」とおどけたが、目元をぬぐった。
「錦鯉の2人が初優勝を飾ったことは他の中堅、ベテラン芸人にも大きな励みになったと思います。長谷川は23歳から芸人になったがなかなか売れず、ピンで活動したこともあった。牛丼チェーン店で週5日深夜勤務を10年間続けるなど、様々なバイトで生活費を稼いできた。長く続く不景気に加えてコロナ禍もあり、他の芸人がどんどん辞めていく中、2人はコツコツ努力を重ねてあきらめなかった。第7世代の台頭でお笑い界も若返りの傾向がありましたが、年齢を重ねたからこそできる芸もあります。錦鯉の漫才は同世代だけでなく、若い世代や子供たちにも人気です。長谷川は愛される天然ボケで渡辺は頭の回転が速い。トークもうまいし、老若男女問わない人気芸人としてこれから仕事のオファーが殺到するでしょう。体調管理だけには気を付けてほしいですね」(スポーツ紙芸能担当記者)
2019年のM-1グランプリで準決勝進出し、昨年は決勝進出して4位に入賞。遅咲きの実力派はテレビなどメディアで露出が急増し、今大会では優勝候補と見られていた。ファーストラウンドは「50代の合コン」で665点獲得し、2位で最終決戦に進出。最終決戦は「街に出た猿との戦い」で爆笑をさらった。オール巨人がオズワルド、上沼恵美子がインディアンスに入れたが、その他の5人が錦鯉に投票。長谷川49歳の昨年に「最年長ファイナリスト」の記録を塗り替えたのに続き、「最年長チャンピオン」の栄冠をつかんだ。
テレビ業界で数年前に一大ブームになっていたのが、「お笑い第7世代」だ。18年M-1王者の霜降り明星を筆頭に、EXIT、宮下草薙、四千頭身、ハナコ、3時のヒロイン、ぼる塾ら若手芸人たちが席巻。テレビ制作スタッフは「霜降り明星、EXITを筆頭に華やかな雰囲気で『主役感』がある。彼らはダウンタウン、とんねるずを見ても萎縮する世代ではない。個性的で洗練されたお笑いの世界を作り上げるので、一時は企画会議で『第7世代は絶対にキャスティングしろ』が合言葉になっていました」と振り返る。
だが、中堅やベテラン芸人も負けていない。この世代の1つ上の「第6世代」に当たる千鳥、オードリー、NON STYLE、ジャルジャルも根強い人気を誇る。
そして、今大会は「中年の星」と形容したくなる錦鯉が初優勝。ネット上では、「おめでとうございます。感動して、こちらまで泣けてきました。世の中の50代に希望を与えてくれたと思います。ほんとに面白かったです」、「数年前から第7世代と呼ばれる若くて勢いがある芸人達が台頭してきた中、その子たちが生まれた頃くらいから何年も何年も諦めずに頑張ってきたおじさん達が報われた瞬間の涙にはもらい泣きしました」など感動の声が。
閉塞感漂う世の中で、過去最多6017組の頂点に立った錦鯉の偉業は今後も語り継がれるだろう。(安西憲春)
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2021/12/20 15:50