古田真梨子
業務時間外も“即レスしなきゃ”になりがち エンドレスワークを避けるための4つのコツ
AERA 2022年5月16日号より
通勤や出張の時間がなくなり、家族との時間も持てる。導入時はメリットに感じる声が多かったテレワーク。「自宅=いつでも仕事ができる」ことで、仕事が生活に浸食しエンドレスワークに陥る人も。AERA2022年5月16日号の記事を紹介する。
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エンドレスワークに陥る、もうひとつの大きな要因はメールやメッセンジャー、SNSといったありとあらゆるITツールが、仕事上の連絡手段として定着したことだろう。
「大事なことは電話もしくは、社のアドレスからのメールにしなければ、相手に失礼にあたるという感覚がなくなりつつある。コロナ禍になったこの2年間で一気に加速したと感じています」
と話すのは、広報関連のコンサルタント会社を経営する栗田朋一さん(50)。自身も、仕事にメッセンジャーを多用している。
「アポイント時間の変更や契約内容に関わることなど重要なやりとりもメッセンジャーが基本です。電話が鳴ると本当にびっくりするようになりました」
栗田さんは、大小さまざまな企業の広報担当者の広報スキル向上や、マスコミ人脈の構築をサポートしている。欠かせないのが記者たちとの付き合いだ。以前は、アポや会食を気楽に設けていたが、コロナでできなくなった。だから、記者から連絡が来ると、「会えなくなった分、今を逃してはいけない!」と、深夜であっても瞬間的に反応するようになったという。
「もともと時間や曜日に関係なく、何かあれば対応するという広報気質があることもあり、余計にエンドレスワークになるのでしょうね」(栗田さん)
一方で、自分も相手に無理をさせている、と反省も口にする。
「深夜や休日であっても、メールをしている自分がいる。それはつまり即レスを期待し、場合によっては強制していることになり、良くないなとは思います」
大阪府の自宅で完全テレワーク生活を続ける女性(31)の勤務先の所在地は東京。人材採用に関連するカスタマーサポートが主な業務だ。
「全てがオンラインだからこそ、届くメールの時間帯などから、相手が朝型か夜型か、など生活パターンなどを読んで『今なら仕事の話が進む!』と思えば、どんな時間でも連絡しがちです」
在宅勤務が広がり、家事や育児との両立がしやすくなった面もあるが、定時以降もメールに即レスなど延々と仕事をしてしまう人も少なくない(撮影/写真映像部・馬場岳人)
■自動応答の設定も有効
“働いてますアピール”をするような時代ではなく、互いに配慮しあうことが大切だと思うようになり、最近は「忘れないように」という理由で時間問わずにメールを送ることをやめた。メールやビジネスチャット「Slack(スラック)」の送信予約機能も使っているという。
働き方評論家で千葉商科大准教授の常見陽平さんはこう話す。
「24時間いつでも連絡がつく状態は良くないとは思うが、悩ましいのは、完全に『悪』だとも言い切れないこと。隙間時間で仕事の下準備ができたり、即レスすることで、相手が次の仕事に進むことができたりといったメリットも大きい。だからこそ、個人と管理職によるマネジメントがとても大切になってくる」
常見さんは、「つながらない宣言」を提唱し、私生活の時間を明確に確保するために、普段から自分の予定を周囲に伝えておくことや、「休暇をいただいております」「いま電話に出られません」などといった自動応答の設定が有効だとする。
インターネット環境から意識的に離れる時間をつくることも、休むことにつながる。
「僕は、ニュースやトレンドは新聞や雑誌など紙媒体から得るようにしている。意識的にウェブメディアから離れる習慣をつくっている」(常見さん)
コロナによるテレワークや、SNSの広がりによる常時接続社会がもたらしているエンドレスワーク。常見さんは、
「自分自身や周囲は長時間労働になっていないか、誰かにしわ寄せがいっていないか。思いやりを忘れず、自分の感覚は『普通』なのかを疑い続けることが大切です」
(編集部・古田真梨子)※AERA 2022年5月16日号より抜粋
AERA
2022/05/12 10:00