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    他球団が欲しがる「巨人の中堅2人」 トレードなしで起用も増えず「もったいない」の声も

     現在セ・リーグでBクラスに沈んでいる巨人。新型コロナウイルスの集団感染で多くの選手が離脱して苦しい状況ではあるが、ここからの巻き返しに注目が集まる。そんな中、石川慎吾、重信慎之介と能力的には高く評価されているものの、なかなか出場機会が回ってこない中堅2人が存在する。  選手層の厚いチームという事情もあり、常時出場は難しいかもしれない。加えて、若手への切り替えを図る球団方針もある。出場機会が減ってしまうのは理解できるが、あまりにチャンスが少ない。他球団へ行けばレギュラー争いに加わることのできる実力があると言われているだけに「もったいない」の声も多い。  開幕から調子に乗り切れない巨人はペナント争いで首位から13ゲーム差の5位。先述のようにオールスター前にはコロナ禍の直撃を受け、7月19日からの4日間で首脳陣、選手、スタッフを含め計73人が陽性判定を受けた。  優勝争いは非常に厳しい状況ではあるが、今はチームが若返りの時期でもあり、有望株たちの奮起も期待されている。野手では坂本勇人の後継者と言われる中山礼都、レギュラー定着が期待される増田陸に加え、秋広優人、菊田拡和など有望株は少なくない。一方、投手でも大卒ルーキーの大勢がストッパーとして活躍し、赤星優志、山崎伊織、堀田賢慎など開花の兆しを開幕当初に見せていた将来のエース候補は多い。 「良い素材が多いのは間違いないが中心選手になるには数年かかる。若手の積極起用が苦戦にもつながっている部分もある。編成面も任される原辰徳監督は数年先を考えているのでしょう。オフの積極補強がなかったのを見ても、球団方針として決定事項なのかもしれない」(在京球団編成担当) 「(若手が期待通り成長すれば)将来的に黄金時代が来るかもしれない。しかし巨人は常勝を宿命づけられている球団。ファン、スポンサーなどが(勝てない)現状に対して不満を持っている場合も多い。中堅クラスの実力者をなぜ使わないのかという声も聞こえる。石川、重信はその最たる例です」(大手広告代理店関係者)  数年後を見据えヤングジャイアンツを育成するのはごもっとも。しかし巨人のファン、そしてスポンサーなどは「常に勝利」を求めている。結果を出せる可能性がある実力者を起用すべきとの意見もある。  そして、二軍などで結果を出しながらも「起用されない選手」の筆頭が石川だ。  石川は16年オフのトレードで日本ハムから巨人に移籍。加入1年目となった17年には99試合に出場して、57安打、5本塁打、20打点と存在感を見せたが、それ以降はなかなか出場機会を増やせないでいる。だが、先述のようにファームでは常に結果を残し続けており、一軍で使われないのが不思議な気もするほどだ。 「打撃はレギュラークラス。特に飛距離はトップクラスで逆方向の打球も簡単にスタンドインさせる。東京ドーム外野席上部看板にもバンバン当てています。外野守備も決して悪くなく標準以上でもある。出番は少ないですが確実に仕事をこなせるメンタルの強さもある」(巨人担当記者)  石川は今季もこれまで一軍の出場は13試合と少ないが、打率.353(17打数6安打)とハイアベレージをキープしている。新型コロナウイルスの影響で選手も大量に離脱しており、ここからチームの救世主的な存在となれるのか。  また、石川と同じ外野手の重信も実力がありながら出場機会に恵まれない選手の一人だ。早稲田大時代から安打製造機として知られ、15年のドラフト2位で巨人に入団。即戦力として期待されながらも、なかなかレギュラー奪取には至らず中堅の域に差し掛かっている。 「早稲田の先輩であるヤクルトの青木宣親のような活躍を期待されたが伸び悩んでいる。大学時代の活躍から、将来的にはメジャー挑戦もという声も上がったほどの選手だった。試合に出れば確実に結果を残すが、パフォーマンスが安定しないところもある。チーム編成上の影響もありレギュラー奪取とまではいかない状況が長く続いている」(巨人担当記者)  今のところ巨人ではともに一軍当落線上の選手にはなってしまってはいるが、他球団からの評価も高い。7月31日のトレード期限までに動きはなかったが、「試合に出さないのであれば欲しい」という声も多くあるようだ。 「石川は代打だけでは惜しい。スタメンで4打席立てばシーズン25本塁打は期待できる。重信は実戦タイプで伸び代もまだ感じる。試合に出続け経験を積めば大学時代のような存在感を示すことができる可能性もある」(在京球団編成担当)  これからのチームを担う若い選手を育てなければいけないチーム事情もある。かつての坂本や岡本和真などは若手時代から我慢して使い続けたことで、現在のような確固たる地位を築くことができた。だが、常勝チームがゆえに勝つことも求められる。そうなった場合、やはり石川、重信のような選手も積極的に起用しなければいけないような気もするが……。 「全ては原監督の考え方次第。これだけ苦戦をしても若手中心の起用法に変化はない。今後も同様ならば石川と重信の立ち位置も変わらないので、トレードの可能性も出てくる。2選手との交換でポイントを絞って戦力補強をしつつ若手育成をするのが現実的ではないか」(巨人担当記者)  巨人は今、ピンチを迎えている。球団史上2度目となるシーズン最下位の可能性もでてきた。若手へのシフトも重要だが、目先の1勝も大きな意味を持つ状況になっている。新型コロナウイルスの影響で離脱した選手が多い中で、石川、重信の起用は増えるのか。また、シーズンオフのトレードなど、名門チームでくすぶる中堅2人の今後はどうなっていくのだろうか。

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    トウカイテイオーの血を絶やすな! 産駒と超良血牝馬との孫が来春誕生へ

     希代の人気馬トウカイテイオーの引退から四半世紀あまり。産駒の成績が思わしくなく、その系譜が途絶えそうになった。テイオーの血を絶やすな! ごく普通の会社員がクラウドファンディングで資金を集め、1頭のテイオー産駒が種牡馬となった。それから3年。今春、超のつく良血繁殖牝馬との種付けが行われた。夏を越え胎内で順調に育っている“孫”に、テイオー復権の期待がかかっている。  1991年に、無敗で皐月賞とダービーの2冠に輝いたトウカイテイオー。「皇帝」と称えられたシンボリルドルフ(GI7勝)の産駒という血の輝きもあり、絶大な人気を誇った。故障に泣いたものの、93年の有馬記念で奇跡の優勝を果たし引退。種牡馬としての道を歩みだした。  競馬は血統のスポーツだ。皇帝→帝王の血脈は半永久的に日本競馬界に繋がっていくと思われたが……。海外から優秀な種牡馬が続々と輸入されたことも災いし、事態は思わしくない方向に。  テイオー産駒からは3頭のGI馬が出た。トウカイポイント(2002年マイルチャンピオンシップ)、ヤマニンシュクル(03年阪神ジュベナイルフィリーズ)、ストロングブラッド(05年かしわ記念)。  しかしトウカイポイントは気性の荒さが災いして、GIを勝ったときにはすでに去勢されていた。ストロングブラッドも種牡馬にならず、引退後に去勢され乗馬に。  牝馬のヤマニンシュクルは引退後に11頭の子を産んだが、さしたる活躍馬が出ないまま20年に繁殖牝馬を引退。20年に誕生したヤマニンティンクのデビューを待つという寂しい状況だ。 「08年、09年ごろから、さすがにこれはまずいんじゃないか、途絶えるんじゃないかと感じ始めたんです」  そう語るのは、会社員のHさん。血統に興味を持つHさんはその血脈を絶やしてはいけないと思い、19年に引退したテイオー産駒のクワイトファインを種牡馬とすることを決意する。 「資金を集めるため、だめもとでクラウドファンディングを始めました。テイオー産駒というだけでなく、母系の血統も派手なので、ある程度の話題にはなるかなと」  クワイトファインの母オーロラテルコの父はミスターシービーで、祖母の父はシンザン。たしかに目を引く血統である。  とはいえ、どれだけのお金が集まるか、まったくの疑心暗鬼だった。いくら血統が良くても、クワイトファイン自身はJRAで走ることがかなわず、地方競馬で142戦6勝。普通に考えれば、とても種牡馬になれる成績ではない。 「でも目標額600万円に対して、578人から788万3千円もの額が集まったんです。これだけの支持をいただけるとは思いませんでした」  20年に種付けをし翌年牝馬が誕生したが、生後2カ月で亡くなってしまった。 「1年限り、1頭限りという形でのクラウドファンドでした。2年目3年目は難しいだろうと思っていたんですが、支持してくれる方の熱量に支えられ、今度はコミュニティを立ち上げました。より広く浅く資金を集めようと思ったんです」  その名も「トウカイテイオー後継種牡馬クワイトファイン応援コミュニティ」は、月会費500円と1千円の2コースあり、それぞれに特典をつけた。  折しもアニメ&ゲーム「ウマ娘」の大ヒットのおかげで、現役当時を知らない若い世代でトウカイテイオーの人気が高まったことも幸いした。 「コミュニティの方の過半は、もともとのクラファンとは違う方です。さらにコメントを拝見するとその多くが『ウマ娘』から入りましたという方。その中で、大学生の知り合いに『なんで30年前の古い馬に興味があるの?』と聞いたら『知ったのはゲームからだけど、ゲームよりも実体感があるから。月500円で実際の馬を応援できるのはゲームと違った楽しみがあります』とのことで、ああなるほどな、と」  かくして21年にも種付けが行われ、今年、2頭の牝馬が誕生した。  さらに今春、Hさんを驚かせるオファーが届いた。 「種付けの申し込みがあったんです。どんな牝馬かと血統を見て、これはとんでもないことになりそうだと感じました」  その馬の名はガレットデロワ。自身は1勝も挙げることなく引退したが、父は今をときめく人気種牡馬エピファネイア(GI2勝)で、母ブロードピークの父はディープインパクト。従兄弟には18年のダービー馬・ワグネリアンがいる。  これだけの良血馬が、なぜなんの実績もないクワイトファインと? やはりテイオーの血を残すことにロマンを感じたのか?  オファーを出した生産牧場トラストスリーファームの岡崎貞史代表に尋ねると、一笑に付された。 「ロマンとか夢というものは、ファンが持つものであり、我々が持つものではありません。我々は仕事として馬を生産しているんです」  そのうえで、 「私自身はクワイトファインのことは知りませんでした。馬主さんで血統に非常に詳しい篁真一郎さんに、こういう馬がいると教えていただいたんです。テイオーの子というよりも、クラウドファンディングで種牡馬となったということに興味を持ちました。生産牧場としては、馬が売れるというのが大事です。それだけ熱量のあるファンがいる馬なら、一口馬主を募集するクラブが興味を持つだろうと。また、サンデーサイレンス(注)が入っていない馬との配合は、面白いかもしれないと感じました」  たしかに大いに話題を呼び、一口馬主が募集されたらかなりの人気になるだろう。来春の誕生が楽しみである。  それにしてもHさんの情熱はどこから来ているのか。それを尋ねると、まったく意外な答えが返ってきた。 「私はトウカイテイオーのファンだったわけではないんです。当時応援していたのは、レオダーバン(1991年のダービーでテイオーの2着)。ものすごく強い馬より、2番手3番手を応援していたんです」  ではなぜテイオーの血にこだわるのかを聞くと、 「バイアリータークの血統を……」  と、サラブレッド3大始祖の話を熱く熱く語り始めた。要約しよう。  全てのサラブレッドの血統をたどると、ダーレーアラビアン、ゴドルフィンアラビアン、バイアリータークという3頭にたどりつく。かつてはこの3系統が拮抗していたが、いまや世界中でダーレーアラビアン系の一人勝ち状態になっている。特に凋落が著しいのがバイアリーターク系。日本でいえばシンボリルドルフ・トウカイテイオー父子やメジロマックイーンといった名馬がこの系統だが、産駒が走らないために、もはや絶滅寸前なのだ。 「3大始祖が1代始祖になっている。それに何も抵抗しないで死んで行くことはしたくなかった。100年後の競馬ファンに、こうやって抵抗した人間がいたと示したかったんです」  Hさんは、なんとも壮大なロマンに突き動かされていたのだ。  さてクワイトファインとガレットデロワの子の近況だが、 「9月26日に3度目の受胎確認をしました。順調にきています」(岡崎代表)  トウカイテイオー産駒の子であると同時に、シンザン(1964年)、ミスターシービー(83年)、シンボリルドルフ(84年)、ディープインパクト(2005年)という4頭もの三冠馬の血を引く子である。来春の誕生が待ち遠しい。 (注)サンデーサイレンス=アメリカでGIを6勝。引退後、1991年から日本で種牡馬となる。95年から13年連続でリーディングサイヤー(種牡馬成績1位)。ディープインパクトなど多くの産駒が競走馬としてだけでなく種牡馬としても優秀な成績をおさめているので、サンデーサイレンスの血を引く馬が過剰な状態となっている。 (本誌・菊地武顕) ※週刊朝日オリジナル記事

    週刊朝日

    5時間前

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    【前編】22歳元女性自衛官が実名・顔出しで自衛隊内での「性被害」を告発 テント内で男性隊員に囲まれて受けた屈辱的な行為とは

     元女性自衛官が実名・顔出しで、訓練中に受けた性被害をYouTubeで告白したことが話題を呼んでいる。五ノ井里奈さん(22)は、陸上自衛隊に所属していた2021年の6月~8月、複数の上官から集団でセクハラを受けたという。上長に被害を訴えても取り合ってもらえず、自衛隊内の捜査機関に被害届を出しても、検察からは不起訴とされた。現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。五ノ井さんは、AERA dot.の単独インタビューに応じ、「日常的に起きているセクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、自身の受けた体験を語った。 *  *  * 五ノ井さんが陸上自衛隊に入隊したのは、2020年4月。小学生の頃から女性自衛官に憧れ、20歳のときに自衛隊の門をたたいた。教育期間は順調にこなし、その時までは、思い描いていた自衛官の姿に誇りとやりがいを持っていた。  だが、その後に配属される中隊名が発表されたときから、風向きが変わった。女性の先輩隊員から、こんな忠告を受けたのだ。 「あそこの中隊はセクハラとパワハラがひどいから気をつけろ」  五ノ井さんが配属された東北方面の中隊は、隊員58人の中で女性は5人。1人は育休中だったので、実質的に女性隊員は4人しかいなかった。同部屋の女性隊員からも「セクハラは覚悟して」と言われたので警戒はしていたものの、すぐにそれが現実のものとなった。 「2020年秋ごろ、勤務中に、男性隊員が『柔道しようぜ!』と言いながら技をかけてくるのですが、腰をつかまれて“バック”のような体制にされて腰を振ってくるんです。それを女性隊員が目撃していました。廊下を歩いていると、急に抱きつかれることも日常的にありました」(五ノ井さん)  部屋に戻ると、女性隊員同士でこうした行為を報告しあった。だが女性隊員は圧倒的少数。自分の身を守るだけで精いっぱいの場合もある。  2021年6月24日。山に入って訓練をしていた時、新人の五ノ井さんは夕食や酒のつまみを作る役割を任されていたので、天幕で料理を作っていた。天幕とは2~3人用のテントのことで、山での訓練では寝床として使用されていた。天幕で酒盛りをし、定員より多い男性隊員が入れ代わり立ち代わり入ってきて、多いときには5、6人くらいの隊員がぎゅうぎゅうになって座っていた。料理を作るためにいた五ノ井さんはその輪の中に入れられ、胸をもまれ、キスをされ、男性隊員の陰部を下着越しに触らせられた。  逃げられないと思った五ノ井さんは、別の天幕にいる女性隊員にLINEで「はやく来てください」と助けを求めた。女性隊員からは「オオカミなってる??w」と返事がきた。「オオカミ」とは、男性がお酒を飲んで暴走し、理性をコントロールできない状態のこと。「はい」と返せば、女性隊員は助けに来ないと思い、五ノ井さんは「なってません とりあえず早く来てください」と再度助けを求めた。だが、その女性隊員は「今来たらやばい」という別のLINEも受け取っていたことから、結局、五ノ井さんのいる天幕には来なかった。女性隊員はその直後に退職した。  状況としては“見捨てられた”ようなものだが、五ノ井さんはこの女性隊員の気持ちもわかると話す。 「女性隊員が自分の身を守るためには、来ないのが正解なんです。夜遅い時間に男性隊員のストレス発散に使われて、自分だって危ない目にあう可能性があるんですから、行きたくない気持ちにもなりますよ」(同)  五ノ井さんからLINEを受け取った元女性隊員は当時の状況をこう証言する。 「LINEを受け取った前日に、私も同じ天幕で宴会に参加して、同じようなセクハラを受けていました。その時は、男性隊員から膝に乗って接待しろとか、頬にキスしろと強要されました。ある男性隊員から次の日は『覚悟しとけ』と言われ、もう何をされるかわからないので、五ノ井さんに助けを求められた時に行くことができませんでした。止めに行きたい気持ちはあったのですが、止めに入ったら(次は)自分に来るので、怖くて助けられませんでした」  元女性隊員自身も「ほぼ毎日抱きしめられる」などのセクハラを受けており、五ノ井さんが日常的に被害にあっている場面も目撃していたという。元女性隊員によると、この部隊は2018年から女性隊員が入るようになり、その時から、「セクハラがヤバイ」として悪評が立っていた。セクハラをしているグループの中心は、20代後半の男性隊員数名で、他の隊員は上下関係から、逆らうことができず、ただ見ているだけだったという。  だが、この日のセクハラ事件は、中隊でも問題となった。事件を目撃していた誰かが、中隊長に報告したからだ。すぐに「中隊長に告げ口したのは誰か」と、犯人捜しが始まり、被害者である五ノ井さんが疑われた。加害者からは、「セクハラじゃなくて、コミュニケーションの一部だもんな」と声をかけられた。事情聴取として曹長から呼び出された五ノ井さんは「何もありません。大丈夫です」と報告した。問題が大きくなり、組織に居づらくなるのを避けようとしたからだ。 「自衛隊には厳しい上下関係があって、その場の空気に合わせなければならない。和を乱せば、無視や陰口を言われますから」(同) ■セクハラを超えた性被害を受けて限界に  この日以降、五ノ井さんは気持ちを押し殺しながら日常的なセクハラに耐えてきたが、昨年8月に我慢の限界に達する出来事が起きた。  8月3日から地方で約1カ月間の訓練があった。訓練場所に到着した日の夜、部屋で食事の準備をしていた五ノ井さんは、男性隊員から「料理はいいから接待しろ」と言われ、男性隊員十数人の輪の中に座らされた。宴会だったので、隊員らは酒を飲んでいた。  一曹Eと二曹Yが格闘の話をしていたところに、男性隊員S三曹が部屋に入ってきた。するとEは、Sに「五ノ井に首をキメて倒すのをやってみろ」と命令した。Sは、五ノ井さんの首に両手を当てて、そのままベッドに押し倒すような技をかけた。 「この時、Sさんが暴走し始めたのです。股を無理やりこじ開け、腰を振りながら陰部を押し当ててきました。一人で『あんあん』とあえぎ声みたいな声を出して、それを見ている周りの男性隊員たちは笑っていました。特にEとYはこっちを見ながら確実に笑っていました」(同)  続いて、2人目の男性隊員Kも「首をキメて」押し倒し、Sと同様の動きをした。さらに続いた。3人目男性隊員Rは同様に押し倒した後、五ノ井さんの両手首を押さえつけながら、何度も腰を振ってきた。 「全力で抵抗しようと、手首に力を入れて振りほどこうとしましたが、男性の力にはかないません。諦めて、終わるのを待つしかありませんでした。終わって体を起こすと、周りの男性隊員たちはこっちを見ていました」(同)  コトが終わると、Rからは「五ノ井って案外力が強いな」と言われた。五ノ井さんが抵抗していたことはわかっていたのだ。  一旦話題が収まったにもかかわらず、再び一曹Eが格闘技の話を面白おかしくしはじめて、「あれ、首をキメて倒すのどうやるんだっけ?」と笑いながら言い出した。すると、再びSが、五ノ井さんの首に両手を当てて押し倒し、腰を振ってきた。五ノ井さんの引きつった顔を見たSは「これ誰にも言わないでね」と口止めしてきたという。 「もう限界でした。訓練場所は、すぐに抜け出せる環境ではありませんでしたが、先輩の女性隊員と中隊長Mに相談して、帰りたいとお願いしました」(同)  先輩女性隊員は、最初は味方してくれたが、男性中隊長が「訓練は訓練だ」と言うと、「そうだよ、訓練は訓練だから」と態度を変えた。訓練はあと20日以上続く。これ以上耐えられないと感じた五ノ井さんは、訓練から抜けることを懇願した。だが、セクハラを受けたことが理由では、6月の時のように告げ口したと思われてしまう。母親が倒れたことにして、実家に帰れることになった。  この時、先輩女性隊員からは「一応、嘘ついていることは心の隅にでも置いておいてね」と言われた。エスカレートする性被害から逃れるための苦渋の判断にもかかわらず、被害者である五ノ井さんに非があるような言い方に聞こえた。 ■被害届を出すも不起訴処分  この8月の性被害の後、適応障害と診断され、五ノ井さんは休職することになった。被害については、まず、自衛隊の総務・人事課にあたる「一課」にセクハラ被害を報告した。だが、一課からは「8月のセクハラの件を見たという証言が得られなかった」と回答された。次に、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。 「警務隊の現場検証では、人形を使って再現しました」(同)  検察庁の捜査をへて、22年5月31日付で判決が出た。結果は、不起訴処分。五ノ井さんが不起訴の理由を尋ねると、検察官は「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない」という供述だったと説明された。そして「被疑者を有罪にするにはそれなりの証拠が必要だ」とも言われたという。 「その場で見ていた人がたくさんいたのに、なぜか腰を振ったという証言は出てこない。単に技をキメて押し倒しただけで、どうして笑いが起きるのでしょうか。その続きがなかったら、笑うわけがない」(同)  五ノ井さんは6月7日付で、検察審査会に不服申し立てをしている。  自衛隊内部では、この事件をどう捉えているのか。AERA dot.は五ノ井さんが配属された東北方面の部隊に事実確認すると、広報担当は「現在、部隊で調査中のため回答は差し控える」と答えた。調査結果がいつ出るかは未定だという。また、五ノ井さんが報告を上げた「一課」にも確認をしたが、「その件は一課長が対応したが、いまは不在」とのこと。代わりに対応した指令業務室の担当者は「事実を調査中のため、予断を持って回答することは差し控えたい」と回答した。なお、被疑者の処罰については、「判明した事実に基づき、厳正に対処する」とした。 (AERA dot.編集部 岩下明日香) ※「後編」では、五ノ井さんがセクハラを受けてもすぐに辞めなかった理由、顔と名前を出して告発に踏み切った経緯などを明かす。

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    「あっという間の上映終了」に原作者がモノ申す?映画「はい、泳げません」はなぜヒットしなかったのか

     このたび拙著『はい、泳げません』(新潮文庫)が映画化された。同書は水恐怖症の私が水泳教室に通い、鬼のように厳しいコーチから指導を受け、「なぜ泳がなければいけないのか?」「泳ぐとは何か?」などと疑問を抱きながら、泳ぎを習得していくノンフィクション。全編水中の様子を綴った実録であり、ストーリーとしては「泳げない私が泳げるようになった」という展開しかないのだが、渡辺謙作監督はこれを「記憶と再生の物語」に昇華させたのである。  聞けば、文庫本のあとがき(高橋桂コーチ、同じレッスンを受けた小澤征良さんとの鼎談)にある私の「泳げない人間というのは、愛に対する不安があるんですよ」というたった2行の発言をふくらませたらしい。泳げない人は愛する人が溺れている時に飛び込んで助けに行けない。つまりは人を愛せないのではないかと漠然とした不安を抱えているという発言なのだが、それを水難事故で息子を失ったトラウマに苛まれて記憶喪失に陥った主人公が水泳コーチに導かれて再生するというストーリーにしたそうで、私は監督のチャレンジ精神に心を打たれた。そして長谷川博己さん、綾瀬はるかさんという超豪華な共演。さらに歌唱力抜群のLittle Glee Monster(リトル グリー モンスター)が主題歌「生きなくちゃ」を熱唱し、試写室で鑑賞した私は不覚にも落涙した。  これは間違いなく感動作。大ヒットして原作者の私にも取材が殺到するにちがいない。カンヌ映画祭も夢ではなく、これは忙しくなるぞ、などと身構えていたのだが、全国封切りからわずか数週間で上映は打ち切られていた。特に取材の依頼もなく、気がつくと上映終了。あっという間に終わってしまったのだ。  なんで?  単に観客が不入りだったことが原因のようなのだが、それにしても判断が早すぎやしないだろうか。そういえば当初からSNS上では「観客少な」「2人しかいない」「大コケ」などと書き込まれていた。感想を読んでみると「コメディなのかシリアスドラマなのかよくわからない」「見どころはどこ?」「何が言いたいのかよくわからない」「メッセージを受け取りにくい」「共感できるポイントがない、お客さんもいないし」などと書かれており、もしかするとこれはノンジャンルで反応に困る映画なのかもしれない。  出演した綾瀬はるかさんでさえ「あんまり観たことのない作品で、じわーっと後からあーっと思い出すような映画」(公開直前イベント)と吐露していたくらいで、ストーリーではなく映像体験自体が「記憶と再生の物語」になっており、すぐさまコメントできない。昨今はコメントできないということを自分ではなく映画のせいにする傾向があり、早々に「誰も観ていない、つまらない映画」として片付けられてしまったようなのである。  ちょっと、待ってください。  私はそう訴えたい。原作者として言わせていただくと、この映画は観客にこう問いかけている。  あなたは泳げますか?  タイトルの「はい、泳げません」とはその回答例であって、みなさんはいかがでしょうか、と問うているのではないだろうか。  陸上生活を送る私たちにとって「泳げる」「泳げない」はさしたる問題ではないように思われがちだが、実は皮膚を一枚めくると、私たちの体内には水中での行動様式が潜んでいる。例えば、泳げない人は何かにしがみつく。私などもいきなり深いプールに入ると足が着かなくてパニックに陥り、コースロープなどにしがみつく。藁をもつかむ勢いなのだ。これは深層心理のようなもので、泳げない人はいつも何かにしがみつきたくて堪らないのである。  この映画の主人公、泳げない小鳥遊(たかなし)雄司(長谷川博己)も常に何かにしがみついている。いや、しがみつきたいのだ。バタバタした演技が目立つかもしれないが、これはしがみつきの表現なのである。一方、元妻の美弥子(麻生久美子)は「泳げる人」である。スイスイと猛スピードで泳げるので夫の雄司を見捨てて先に進んでしまう。基本的に泳げない人はしがみつくので離婚しないのだが、しがみつこうとしても美弥子のスピードに追いつけず、ふたりは離婚することになったのである。その点、新しい恋人の水野奈美恵(阿部純子)は「泳がない人」。泳げるか泳げないかは別として泳がない。浮き輪のような人で、それゆえ雄司は安心してしがみつけるというわけだ。  映画の登場人物たちはこうして水中のキャラクターを軸に描かれており、中でも私が刮目(かつもく)したのは薄原静香コーチ(綾瀬はるか)だった。その佇まいは実際に私を指導してくれた高橋桂コーチが憑依(ひょうい)したかのようで、指導法も再現されていた。本人はもちろん泳げる人だが、自分が泳ぐことより「泳げる」を人々に与えることによろこびを感じる。泳ぐコツは「泳ごうとしないこと」。泳ごうとすると体中に力が入って泳げなくなる。大切なのは力を抜いて伸びる。伸びるというより「伸びている」と確認する。それだけで大丈夫。泳ごうとしなければ泳げる。なぜならあなたはもう泳いでいるからです、と高橋桂コーチは私を導いてくれた。  生きようとしなくても生きちゃってるという境地なのだ。  綾瀬はるかさんの顔はまるで溺れる衆生を救う弥勒菩薩のようだった。そして最も印象深いのは夜のプールに仰向けになって浮かぶ姿。うっすらと涙を流しているようで、思わずもらい泣きしそうになる。この涙はアンデルセンの「人魚姫」が最後に流した涙ではないだろうか。海で暮らしていた人魚は陸に上がって初めて涙を流す。その初めての涙がお別れの涙だったという切ない物語。人を解き放すばかりで自分を解き放せない悲しみ。薄原静香コーチは人魚姫のように溺れる雄司を助けたし、陸上を歩くと激しい痛みに襲われる。「水泳はすごいんです」と叫んだ時の透き通る声は、魔法使いに奪われた人魚姫の美声を聞くようで私は打ちふるえた。渡辺謙作監督は意図していないと思うが、彼女の美しさは遙か北欧の海にも通じているようで、それゆえ私はカンヌを確信した次第なのである。 ちなみに映画「はい、泳げません」はミニシアターなどで上映中です。水中に入るつもりでじっくりご鑑賞いただければと切にお願い申し上げます。(ノンフィクション作家 高橋秀実/生活・文化編集部)

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    巨人が「もしFAで2人獲るなら狙うべきは誰?」 投打で“最適”な選手を考察した

     2年ぶりのリーグ優勝はおろか、クライマックスシリーズ進出も逃した巨人。2年連続で勝率も5割(68勝72敗)を下回っており、これは長い球団の歴史の中でも2度目のことである。最終的には続投に落ち着いたものの、先日は原辰徳監督が進退伺を提出していたことも明らかとなった。  低迷するチームの状況から噂されているのが、お家芸とも言えるオフの大型補強だ。2016年オフにはフリーエージェント(以下FA)で山口俊、森福允彦、陽岱鋼と3人の選手を獲得しているが、人的補償のリスクや近年移籍する選手が減っていることを考えると、FAで補強するのは多くても2人というのが妥当なところではないだろうか。現時点でFA権の行使を公表している選手はいないものの、仮に巨人が2人獲得するのであればどの選手を狙うべきなのか、現在のチーム状況から考えてみたいと思う。  将来のことを考えると野手に不安が大きいものの、直近に解決したい課題としてはやはり投手陣となる。チーム防御率はリーグ最下位で、特に気になるのがリリーフ陣だ。デラロサは負傷で離脱することが多く、ビエイラは防御率9点台と外国人2人が機能せず、中川皓太も故障などの影響もあり一軍登板なしに終わった。また、抑えでフル回転した大勢の2年目のジンクスも大きな不安要素である。  先発では阪神の西勇輝の動向が注目を集めているが、右の先発タイプは若手にも多いだけに、やはりリリーフを優先したい。そこで筆頭候補として挙げたいのが同じ阪神の岩崎優だ。今年は開幕直後からケラーに代わって抑えを任されて28セーブをマーク。6敗を喫するなど手痛い負けも少なくはなかったが、防御率は1点台とさすがの数字を残した。昨年の東京五輪では侍ジャパンにも選出されるなど、大舞台での経験も申し分ない。現時点で去就は明確にしておらず、宣言となれば他球団との争奪戦は必至と思われるが、巨人としては真っ先に手を挙げたい選手の1人であることは間違いないだろう。  しかし、そんな岩崎よりもある意味狙い目の選手と言えるのが同じ阪神のサウスポー岩貞祐太だ。プロ入り当初は先発を任され、3年目の2016年には10勝もマークしたが、その後は成績が低迷。一昨年の途中から中継ぎに転向となったものの、昨年は46試合の登板で防御率は4点台と安定感に欠ける内容だった。しかし今年はシーズンを通して安定したピッチングを披露。9月21日の広島戦で6失点(自責点4)を喫して最終的には防御率2点台となったが、それまでは1点台とセットアッパーとして十分な成績を残した。  先発時代と比べて明らかにストレートの勢いはアップしており、今年は自己最速となる154キロもマークしている。年齢的には岩崎と同じで来年32歳となるが、ピッチングの若々しさで言えば今年に関しては岩貞の方があるように見えた。そして何よりもお得なのが獲得した時に人的補償を必要としないCランクの選手ということだ。巨人は過去にも人的補償で移籍した選手が他球団で活躍している例も多いだけに、そういう意味でも権利を行使した場合には是が非でも狙いたい選手と言えるだろう。  一方の野手では森友哉(西武)、浅村栄斗(楽天)、近藤健介(日本ハム)と各ポジションに権利を行使すれば目玉となりそうな選手が控えている。もちろん彼らも欲しい選手ではあるが、それ以上に推したい選手として西川龍馬(広島)の名前を挙げたい。今年はコンディション不良もあって97試合の出場に終わり、規定打席には到達できなかったものの、打率と長打率は過去最高となる数字をマーク。  天才と呼ばれるバットコントロールに加えて、年々長打力も増しており、ホームランの出やすい東京ドームが本拠地となれば20本塁打以上も十分に期待できる。外野の守備も安定しており、年齢的にも来年で28歳とまだまだ若いのは大きな魅力だ。同じく広島から加入した丸佳浩の後釜として最適な人材であり、また慣れている同一リーグでの移籍という点は西川にとってプレーしやすいという面もあるだろう。  冒頭で大型補強が巨人のお家芸と述べたが、近年は他球団との競争に敗れるケースも目立ち、また獲得した選手も森福、陽、野上亮磨、梶谷隆幸、井納翔一など活躍することができていない。それを考えても、誰を狙うかは来年以降の巨人にとって非常に重要なことは間違いない。果たして再び巨人がFA戦線の主役となることができるのか。オフの動きに注目したい。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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    韓国でサントリー角瓶が争奪戦に 700ミリリットルが4千円超! ネットでは「どこで買えますか?」

     コロナ禍が落ち着いた状況にあるいま、韓国で、サントリーウイスキーの角瓶の争奪戦が起きている。筆者も8~9月、ソウルや京畿道(キョンギド)の百貨店や大型スーパーなど10カ所以上を見てまわったが、サントリーの角瓶は購入できなかった。辛うじて見つけた店では、値段がとんでもないことに?  韓国の主婦たちが利用するインターネットコミュニティーに「サントリーのウイスキーはどこに行けば買えますか」というコメントをよく目にする。現在、この問い合わせに答えを書ける韓国人はいない。むしろ「私も知りたい」「買いたいけど、どこに売っているのか分かりません」などのコメントが相次いでいる。  サントリーウイスキーをめぐってなにが起こっているのだろうか。  韓国でのサントリーウイスキー人気を牽引(けんいん)したのはハイボールだった。韓国の若者が日本を旅行中、ハイボールに魅了された。韓国には国産の有名なウイスキーブランドはなく、輸入ウイスキーが主流だ。“サントリーウイスキーホリック”を自称するKさん(30)はこういう。 「欧米のウイスキーは味が濃く、ハイボールに向かない気がする。そこへいくと、日本のウイスキーでつくるハイボールは味が優しく、レモン果汁とも合う」  新型コロナウイルスも後押しした。外食を控え、家でハイボールを作って飲む若者が急増。特に最近、あるバラエティー番組で有名な芸能人が家でハイボールを作って飲んでいることが話題になった。SNS上にはこの芸能人の独特なハイボールのつくり方をまねた写真が多数、アップされた。  韓国で売られているサントリーのウイスキーは、700ミリリットルの角瓶1種類しかない。価格も日本の3倍近い3万9800ウォン(約4094円)で売られていた。しかし店で飲むことを思えば……ということだろうか。  韓国関税庁が今年6月ごろに発表した統計でも日本ウイスキー人気がうかがえる。輸入量は、2018~20年は60~70トン台だったが、21年には142.4トンとほぼ倍増した。  ところが、今年はじめから大型スーパーの「Eマート」や「ロッテマート」からは、サントリーウイスキーの角瓶が消えた。販売台が空っぽの時間が1~2カ月続いたから、一時的な品切れとは考えられない。  スーパーと酒類卸売業の関係者に問い合わせると、「韓国の輸入会社がサントリーに発注した数量よりも供給量が少なく、現在韓国に残っているウイスキーの角瓶が不足している」という回答。  21年9月ごろ、韓国内でのサントリーウイスキー角瓶の年間予想販売量はすでに上まわっていたという。  日本国内でも巣ごもり需要でウイスキーの売り上げが増え、原液の不足によって生産量が減ってきていた。ウイスキーは原液熟成までには相当な時間がかかるため、迅速な供給ができなかったのだ。  サントリーは昨年このような問題を解決するため、韓国に対する角瓶の出荷を制限した。それが品薄現象につながったようだ。  やっとのことで輸入した業者は、より高く売れる居酒屋や日本飲食店に優先的に販売。その結果、スーパーではサントリーウイスキーの争奪戦が展開されることになった。  一部の店舗では値段を釣りあげて販売されている。記者も最近、京畿道付近のリカーストアでサントリーウイスキー角瓶を買いたいというと、「予約が必要で、1本4万6千ウォン(約4730円)」といわれた。なかには自分たちが日本から安く買ってきたウイスキーを売る業者も出てきているという。  地元の男性(36)があきれ顔でこう話す。 「3年前までは日本のビールと自動車、ユニクロの不買運動を行い、『NOJAPAN』を叫んでいのに、そこまでしてハイボールを飲まなければならないのか、と情けなくなる」 (現地ジャーナリスト/ノ・ミンハ)

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    12時間前

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    巨人が“浅野以外”で欲しいのは? ドラフト補強ポイント【中日・広島・巨人】

     プロ野球のドラフト会議まであと約3週間となり、各球団の動向や候補選手についての報道も多くなる時期となってきた。今年は本命らしい本命は不在という印象で、近年多かった事前の1位指名公表も少なくなることが予想されるが、各球団どんな選手を狙うべきなのか。補強ポイントと、その選手がチームにマッチするかという点から探ってみたいと思う。今回は現在セ・リーグでBクラスの巨人、広島、中日の3球団だ。 *  *  * 【中日】  立浪和義新監督が就任し、期待が高かった中日だが最下位が決定的となっており、今年も苦しいシーズンとなった。昨年のドラフトでは長打力不足を解消するためにブライト健太、鵜飼航丞の強打者タイプの大学生外野手2人を指名したが、ともに確実性に大きな課題を残しており、一軍の戦力となるにはまだ時間がかかりそうな印象だ。若手野手では岡林勇希がブレイクし、土田龍空も成長を見せているが、根尾昂が投手に転向となり、石川昂弥も故障続きとなると、やはり今年も野手中心の指名と考えるのが妥当ではないだろうか。  そこで筆頭候補として推したいのが内藤鵬(日本航空石川・三塁手)だ。西武のところでも紹介したが、その長打力は高校生ではナンバーワンであり、今年の候補全体を見ても長距離砲としての素質の高さはトップという印象を受ける。仮に内藤を1位で指名できたとしても、大砲候補はプロで苦しむケースが多いだけに、もう1人くらいは高校生の強打者タイプを狙いたい。  石川、ブライト、鵜飼も右打ちだということを考えると左打者が狙い目になりそうだが、2位で残っていれば狙いたいのが西村瑠伊斗(京都外大西・外野手)だ。体はそれほど大きくないが、ミート力は高校球界でも1、2を争う存在で、技術で遠くに飛ばすことができる。足と肩も高水準で、広い外野を任せられるポテンシャルも備えている。下位で狙えそうな選手では田中多聞(呉港)も面白い。少し確実性には課題が残るが、大型でパワフルなスイングは高校生離れしたものがある。肩の強さがあるのも魅力だ。  投手では高橋宏斗を筆頭に若手に楽しみな選手は多いが、主力はベテランも多いだけにこちらも柱となれる人材は必要だ。2位で西村が残っていなければ、その枠でスケールのある投手に切り替えるのも一つの手だろう。候補としては先発タイプなら青山美夏人(亜細亜大)、リリーフタイプなら橋本達弥(慶応大)が面白い。青山は長身と長いリーチでボールに角度があり、力を入れた時のストレートの勢いは目を見張るものがある。また未完成な部分も目立つが、スケールでは大学生投手でトップクラスだ。橋本は東京六大学を代表する抑え投手。150キロに迫るストレートにフォーク、カットボールと決め球を複数備えている。ともに完全な即戦力という感じではないが、2年目から一軍の戦力になれるだけの潜在能力は十分にありそうだ。 【広島】  5位の広島は森下暢仁、栗林良吏、森浦大輔など即戦力を期待して獲得した投手がしっかり戦力になっている印象が強い。一方で野手は坂倉将吾、小園海斗の成長はあるものの、鈴木誠也の抜けた穴は大きく、昨年社会人の右打者を獲得はしているが、やはり強打者タイプは必要になるだろう。  高校生であれば内藤鵬(日本航空石川・三塁手)ももちろん候補だが、脚力のある選手を重視するチームであることを考えると少しマッチしないようにも感じる。そこで候補として推したいのが森下翔太(中央大・外野手)だ。東海大相模時代から評判の強打者で、1年春には早くも大学日本代表に選ばれている。その後は少し苦しんだ時期が長かったが、今年の春は打率3割をクリアし、課題の確実性も向上してきた。全身を使ったフルスイングで広角に長打を放つことができ、脚力と肩の強さも備えている。また今年は死球による骨折から早期に復帰するなど体の強さを見せているところも広島向きの選手と言えそうだ。  前述した通り、投手陣は確実に補強されてきているが、高校卒の若手となると遠藤淳志と玉村昇吾しか一軍の戦力になっておらず、二軍まで見ても2年目の小林樹斗くらいしか有望株は見当たらない。そうなると高校生のスケールのある投手を狙いたいところだが、候補としては斉藤優汰(苫小牧中央)、門別啓人(東海大札幌)などが挙げられる。斉藤はたくましい体格から投げ込むストレートが武器で、スピードはコンスタントに145キロを超える。まだ粗削りではあるが、今年の高校生投手ではスケールの大きさはナンバーワンと言えるだろう。  門別はオリックスのところでも紹介したが、スピードだけでなく総合力も高いサウスポー。将来の先発候補として期待できるだろう。大学生でも将来性とスケールを重視するなら仲地礼亜(沖縄大)が面白い。高校時代は無名ではあったが、大学で急成長した本格派右腕で、昨年の大学選手権でも好投している。森下に次ぐエース候補として狙いたい存在だ。 【巨人】  4位に沈む巨人は数字的には投手成績が課題のようにも見えるが、今年プロ初勝利をマークした投手が8人出ていることからも分かるように、今後の成長が楽しみな投手は少なくない。一方で野手は坂本勇人、丸佳浩、中田翔など中心選手にはベテランプレイヤーが多く、数年後には大きくメンバーを入れ替える必要があり、若手の有望株は必要不可欠な状況となっている。  そんな中で9月28日には早くも浅野翔吾(高松商・外野手)の1位指名を公言したが、これはチーム状況を考えても非常に理解できる選択と言える。右打ちの外野手で支配下の選手は外国人のウォーカーを含めて2人しかおらず、内野も含めてもパンチ力のある若手は多くない。浅野自身は中距離打者を目指すと話しているが、東京ドームが本拠地であればホームランを量産することも期待できるだろう。  ただ、巨人は抽選に外れ続けており、その時の選択も重要になってくる。過去には野手を外して投手に切り替えたこともあったが、チーム事情を考えるとやはり外しても野手を狙いたい。そこで、指名されず残っていれば推したいのが松尾汐恩(大阪桐蔭・捕手)だ。将来の正捕手候補としても当然魅力的な人材だが、巨人としては坂本の後釜候補として考えたい。地肩の強さとフットワークは抜群で、長打力十分のバッティングも高校生ではトップクラスだ。浅野、松尾ともに指名できないケースでも中日のところでも挙げた西村瑠伊斗(京都外大西・外野手)や、イヒネ・イツア(誉・遊撃手)など高校生のスケール型の選手を狙いたい。  投手は前述したように楽しみな若手が多いが、リリーフの手当てはしておきたい。4位以降で残っていれば検討したいのが小孫竜二(鷺宮製作所)だ。今年で大学卒3年目だが、短いイニングであれば球威で圧倒することができ、課題だった制球力も確実に向上している。リリーフなら早くから戦力となる可能性は高い。大学生であれば才木海翔(大阪経済大)も好調時のストレートは目を見張るものがあるだけに、セットアッパー候補として面白いだろう。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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    【後編】元女性自衛官が「性暴力」を告発した理由 「セクハラを“なかったこと”にするのが許せなかった」

     元女性自衛官の五ノ井里奈さん(22)が、訓練中に受けた性暴力をYouTubeなどで告発して話題となっている。五ノ井さんは、「セクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、AERA dot.の単独インタビューに応じた。「前編」では具体的な性被害の実態を詳述したが、「後編」では五ノ井さんが自衛隊を志した理由、セクハラを受けてもすぐには辞職せず、今回の告発に踏み切った思いなどを聞いた。 ※「前編」より続く。 *  *  * 宮城県東松島市出身の五ノ井里奈さん(22)は、小学4年生の時に東日本大震災に見舞われた。小学校にいる時に被災し、学校の1階部分は津波で浸水した。五ノ井さんたち児童は2階に逃げて無事だったが、避難所生活の後、母親と再開できたのは1週間後。家に戻ると、1階部分は津波に流され、室内で飼っていた愛犬2頭が亡くなっていた。散り散りに避難していた父親と兄2人とも再会し、その後は公民館で避難生活を送った。  この時、災害支援に来てくれたのが女性自衛官だった。 「女性自衛官がお風呂を造ってくれたり、お風呂上がりには腕相撲をしたりして、遊んでくれました。私は小さい頃から柔道のオリンピック選手を目指していたので女性自衛官にそのことを伝えると、『柔道は続けたほうがいいよ。頑張ってね』と応援してくれました。私にとって憧れの存在でした。この時から、いつかは陸上自衛隊に入りたいと夢を抱くようになりました」(五ノ井さん)  11年たったいまでも、女性自衛官と連絡を取り合って、感謝の言葉を伝えているという。  公民館で3カ月過ごした後、五ノ井さん一家はアパートに移った。しかし、小学6年生の時に両親は離婚。がんの治療中だった母親が、3人の子どもを女手ひとつで育てることになった。  五ノ井さんは、中学・高校と柔道で全国大会ベスト16の成績を残し、山口県にある大学に進学する。だが自衛官への夢が捨てきれずに中退。自衛隊体育学校の柔道部に入って、オリンピックを目指すことにした。好きな柔道を続けながら、自衛官アスリートへの道を切り開こうとしたのだ。  2020年4月、晴れて陸上自衛隊に入隊する。だが、「前編」で記したように、配属された東北方面の中隊では日常的にセクハラをされ、ひどい性暴力を受けた。五ノ井さんは次第に追い詰められていく。 「常にセクハラはあったので、受けている方も感覚がまひしてしまうんです。外ではアウトなことも、自衛隊内ではセーフになってしまう雰囲気がありました。男性隊員は、コミュニケーションの一部だと解釈していたようです。その意識を改善させることはほぼ不可能です。結局は、被害を受けた女性隊員がいなくなるしか解決策はないんですよね。私も自分で自分の身を守るためには逃げるしかありませんでした」  五ノ井さんは、2021年8月に複数の男性隊員から受けた性暴力を機に、休職することになった(被害の詳細は「前編」参照)。精神科医からは、適応障害と診断され、3~4カ月分の薬が処方された。 「憧れていた自衛官になるという夢を失い、どん底でした。先の見えない生活に絶望して、好きな柔道もできなくなりました。震災の時に助けてもらった女性自衛官みたいになりたくて入隊したのに、内部ではあんなにひどい実態があるなんて思ってもいませんでした……」  精神的に追い詰められ、何度も自死を考えた。覚悟を決めた今年の3月16日深夜、思いがけないことが起こった。 「ベッドの上に正座して、よしっ、と決断した時に、震度6強のすごく大きな地震がきたんです。その時、思いました。ああ、ここで死んではいけない。地震のせいで、生きられなかった人がいるのに、自分は何をしているんだろうって」  東日本大震災の記憶がよみがえり、五ノ井さんは自死を踏みとどまった。「どうして被害者が泣き寝入りして苦しまなければならないのか。性暴力に負けてはいけない」と組織と闘うことにした。  昨年8月に受けた性暴力について、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。今年5月末に不起訴処分になったが、現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。  この不起訴処分に関して、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」副理事長の伊藤和子弁護士はこう疑問を呈する。 「圧倒的に男性が多い自衛隊のような閉ざされた空間で性暴力が起きると、『見ていない』と口裏を合わせる可能性があります。今回はどうだったのか。加害者が何人もいる場合、供述に矛盾が生じることがあります。一貫して細部まで同じことを言っているのか、そうでないのか。すべて同じであれば、口裏合わせをしている可能性もあるでしょう。丁寧に供述の評価が行われたのか疑問の余地が残ります」  不起訴後、五ノ井さんが検察官にその理由を尋ねると「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない(という供述だった)」と説明されたという。ただ、伊藤弁護士は、首に手をかけて押し倒している時点で暴行罪を問うことができるとも指摘する。 「少なくとも押し倒した所を見ている人がいたわけですから、立件すべきです。なぜ検察は暴行罪で起訴しなかったのかも非常に疑問です」  たとえ刑事事件で起訴されなかったとしても、民事裁判でハラスメントが認定されることもある。伊藤弁護士は「第三者委員会を立ち上げて、構造的な問題を調査する必要がある」と話す。 「男性隊員が女性隊員に対して、首に手をかける技をかけていること自体がハラスメントであるという認識があるのか否か。私的な生活の中で起きた出来事なのか、訓練中の行為なのか。訓練と称したハラスメントではないのかなど、さまざまな疑問が浮かびます。ハラスメント行為があれば処分に値する問題なので、組織としてきちんと調査をするべきです」  最後に、五ノ井さんは実名と顔出しで告発に踏み切った理由をこう話す。 「内部に残る自衛隊員から『なかったことにしようとしている』と聞きました。隠蔽(いんぺい)です。ここでなかったことにしたら、これから被害者がもっと増えてしまう。セクハラをしている人は、今でも普通に隊にいて、また新しい女性隊員が入ってきた時に同じことが起こります。それだけは阻止したい。あとは、謝罪がほしいです。その一心で声をあげようと決意しました」  五ノ井さんの悲痛な思いは、自衛隊員たちに響いているのだろうか。(AERA dot.編集部・岩下明日香)

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    THE ALFEEは名曲「メリーアン」で変貌? 「アルフィーは3人の声があればなんでもいい」

     1983年、「メリーアン」の大ヒットで一躍全国区になった、THE ALFEE(以下、アルフィー)。それまでアコースティックグループとしての印象が強かったが、ハードなバンドサウンドが加わったことでロック色の強いグループに変貌したイメージがあった。74年にシングル「夏しぐれ」でデビューして苦節9年。「メリーアン」発表の少し前、グループにいったい何が起きていたのか? なぜ、ハードなサウンドを取り入れていこうと決めたのか? 10 月 5 日に発売となるDouble A Side Single「星空の Ceremony / Circle of Seasons」を機に、アルフィーの分水嶺を探ってみた。 *  *  * 高見沢俊彦:大学時代、みんなで麻雀で集まるときは、レコードを持ち寄ってかけていたんです。僕はロック系が多くて。それぞれのレコードでお互いに影響しあうっていうのはありましたね。僕らの世代ってみんな同じものを聴いていたのである程度知ってはいるんです。「ユーライア・ヒープ」「ディープ・パープル」とか。 坂崎:(アルフィーの)スタートはアコースティックですけど、それはギター1本でできるからで。 高見沢:アコースティックでやっていた時代が長いんですけど、あるときから、ライブでお客さんが総立ちになってステージの前に出てくるようになったんですよ。アコースティックなんだけど、アップテンポの曲になると総立ちになるので、それに対応する曲を作ってみようかなという発想から、ハードなアルフィーを入れてみようと。 桜井賢:別にここからハードロックを入れていこうとか……。 高見沢:決めてないよな。 坂崎幸之助:いつの間にか、ですね。 桜井:ライブハウスで演奏しているときはドラムを入れたりエレキギターを弾いたりしていたので、サウンドがハードになっていくことに特別な意識はなかったですね。 高見沢:ライブを重ねるごとにサウンドの幅を広げたいというのはありました。ロックの要素を取り入れることで緩急のあるライブができるなと。 桜井:ただひとつ言えることは、だんだんハードになってくる兆候として、相当、(高見沢に)ハードなものを聴かされました。長い時間をかけて。あれは洗脳?(笑) 坂崎:マインドコントロール(笑)。 桜井:けっして無理にではなく、日々(高見沢が)聴かせるんですよ。だんだん知らないうちに踊らされている自分がいて。完全にハマったなと思った頃にはヘビーメタルのような歌を歌わされて(笑)。衣装まで、そっち(ハードロック系)になって。「メリーアン」から「星空のディスタンス」、次の「STARSHIP‐光を求めて‐」あたりまで。全部、高見沢の影響なんですけど。 高見沢:ジューダス・プリーストとか?(笑) 桜井:音楽番組であんな格好をしたのは俺だけですよね。テレビに出てもいろいろ言われましたから。やっと認めてもらえたのは(ヘビーメタルバンドの)「聖飢魔II」が出てきてからですよ。それまでは寂しかったですね。 ――「メリーアン」発売の1年前。1982年のアルフィーは、北海道から福岡まで大規模な全国ツアーを開催。3月30日から4月1日までの3日間は久保講堂(東京)でライブをおこなった。それぞれが好きなことを披露するコーナーが設けられ、初日は高見沢dayだった。 坂崎 「レッド・ツェッペリン」をやりましたね。 高見沢 「天国への階段」「Rockn’ Roll」「Black Dog」「移民の歌」とか。 坂崎 その日のお客さんは若干引いていた(笑)。 高見沢 初めて聴いた音だっただろうからなぁ。 ――ハードなサウンドがアルフィーの音楽の一部であることをファンには提示していた。 坂崎 だから、僕らにとってハードロックに移行することに対しては、そんなにみなさんが思うほどでは……。 高見沢 方向転換ってほどではないですね。 ――アルフィーはこの年の8月、初の野外イベントとなる所沢航空記念公園でライブをおこない5千人の観客を集めた。着実に動員を増やしていたアルフィーの人気は右肩上がりで、あとはシングルヒットが出れば大ブレイク間違いなしという状態だった。勢いは加速する。この年、アルフィーは初の日本武道館公演を行うことを発表した。 坂崎 バンドのサウンドが少しずつハードになってバンド自体のスケールも大きくなってきて、いよいよ日本武道館公演と。83年3月にシングル「暁のパラダイス・ロード」を出して、大ヒットさせて8月に武道館、という予定だったんだけど。大ヒットしなかった(笑) 高見沢 予定通りにはいかないよね。ライブでの勢いはありました。なぜ、観客が熱狂するのかはわからなかったけど。 ──初の日本武道館公演を目前に控えた1983年6月。アルフィーは16枚目となるシングル「メリーアン」をリリースする。「アルバム用に作られた曲」(高見沢)だったが、レコード会社の担当ディレクターがシングルに選んだ。 桜井:ヒットするとは思わなかった。 高見沢:思わない、思わない。思わないよ。 坂崎:6月に発売して「ザ・ベストテン」(TBS系)などに出始めたのが9月の頭ですね。ヒットするまで時間がかかったんです。 桜井 ベストテン番組って、出たくっても出られない。嬉しいことに応援してくれる人がいるから、出ないってわけにもいかないけど、ツアーがあるからスタジオに行けずに、コンサート会場からの中継が多かったんですよね。 坂崎 ベストテンって、トータルの評価ですから。 桜井 売り上げだけじゃなくてね。 坂崎 レコードは売り上げより、リクエストが多かったんですよ(笑)。出てくれっていう。それはやっぱり出ないわけにはいかないし。 桜井:武道館公演が終わったあとにヒットしたから「メリーアン」を知らない人たちが武道館のチケットを持っていて、「メリーアン」で知った人たちはもう武道館に入れなかった。 ──初の武道館公演には、古くからのアルフィーファンも度肝を抜かれたことだろう。ステージにはマーシャルアンプのキャビネットが高く積まれ、グループ初となるプロモーションビデオが来場客に配布された。その大事な一曲となったのが「ジェネレーション・ダイナマイト」である。同年9月発売の7thアルバム「ALFEE’S LAW」のオープニング曲を飾る超絶ヘビーなメタルナンバーだ。 高見沢:この曲をアルバムの1曲目にもってくるかどうかが分岐点ですよね。今までのイメージを払拭するようなものにしようということで。レコード会社と侃侃諤諤ありましたね。 坂崎:アルバムの1曲目はアルバムの色を決定づけますからね。プロモーションビデオもハードロックでした。 桜井:炎が燃え上がる(笑)。 坂崎:僕らは楽しんで面白がってやっていましたよ。これはフォークグループじゃできないでしょう(笑)。 桜井:できないね。 坂崎:だからフォークグループじゃないんです。メロディー、詞、ハーモニーなど、根底にあるものはアコースティックギター一本でもハードロックでも一緒です。 桜井:アコースティックだ、ロックだ、っていうのは日本くらいのものなんですよ。ハードロックバンドでもバラードを歌うし。 坂崎:むしろ向こう(洋楽)のハードロックバンドはアコースティックな曲が多い。 桜井:多いね。 高見沢 そうだよな。「ミスタービッグ」も。 坂崎 「エクストリーム」も。だからそこはあんまり……。 高見沢 そう、関係ない。 坂崎 高見沢が生ギターにエフェクターを繋いでいたら、編曲家の井上鑑さんが「だったらエレキギター弾けばいいじゃん」って。 高見沢 あ、そうですよねって(笑)。 ──ハードロックを取り入れた「メリーアン」にも、間奏は坂崎のアコースティックギターによるソロが入り、それから高見沢の歪んだエレキギターのソロが続く。その理由は。 高見沢:坂崎のギターがアコギだから(笑)。 桜井:3人しかいないんですから! 坂崎:自然に(笑)。 高見沢:あとプログレが好きだから。プログレには必ずアコギが入っていますから。「イエス」とか。そういう部分を残したい。それがアルフィーサウンドのひとつの要なのかもしれない。原点でしょう。 桜井:そうだよね。 高見沢:桜井たちが高校のときに(グループを)作って「サイモン&ガーファンクル」で優勝していますから。そこはね、やっぱり守るわけじゃないけど原点っていうのはよくわかっていますね。アコギの音が好きで優先する。そこがほかのロックバンドと違うのかな。 坂崎:アルフィーはアイドルでもなく歌謡曲でもなくロックでもない。アルフィーって何だ?って、自分たちでもそういう感じですから。(マスコミの)みなさん、困ってらっしゃいますね。「3人組バンド」とか、「3人トリオ」とか(笑)。「ロックバンド」って書かれることもありますけど。 高見沢:アルフィーの魅力は3人が歌える。それによって3声のコーラスができる。これがあれば、フォーク、ポップス、ハードロックでもなんでもいいんです。3人の声があればアルフィーなので。 ──「アルフィーは○○バンドです」とつけるなら? 高見沢:アルフィーはアルフィー。じゃない? ──10月5日、71枚目となるシングル「星空のCeremony/Circle of Seasons」を発売する。 高見沢:ここのところ、バラードやミディアムテンポの曲が多かったので、ちょっとハードなものを出してみようかなと。「星空のディスタンス」のアンサーソングじゃないけど、遠距離恋愛のつらさを、星を使って意図的に入れました。コロナの影響もありますね。会えないっていうことがありますからね、今の時代。 桜井:今回は両A面で。 坂崎:もうA面、B面ってないけど(笑)。 桜井:両方とも自信作です。高見沢節がいっぱい入っていますので、なじみやすいと思います。 坂崎:まだアルフィーに出会っていない方も、ぜひこれを聴いて、ライブに来ていただければと思います。 (取材・構成/谷口由記)※週刊朝日  2022年10月7日号に大幅加筆

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    森三中・大島美幸が語る子育て 「学校に行きたくない」と泣く小1息子・笑福くんにかけた言葉とは

     放送作家の鈴木おさむさんと「交際ゼロ日」で結婚して、はや20年。息子の笑福(えふ)くんも小学生になり、大島美幸さんのママとしての日々も新しいステージに入りました。「子どものころから勉強が大嫌い」だったという大島さんは、勉強が嫌いになりかけているわが子とどう向き合っているのでしょうか。現在発売中の「AERA with Kids 2022年秋号」(朝日新聞出版)から一部抜粋してご紹介します。 *  *  *  息子は4月から小学生になりました。……が、いろいろ苦戦しています。読み書きとか、宿題とか。  でもそれ以前に、息子は入学式に出られなかったんです。家族で新型コロナウイルスに感染してしまって……。ショックでした。「出られない? 入学式に? えええ~!」と茫然とする親のわきで、当の本人は「やったー! お休みだー!」って。その笑顔が、救いと言えば救いでした。  結局初めて登校できたのは、入学式の2週間後。でもその前に宿題が出たんです。授業が始まっているから当然なんですけど、問題はこの時点で息子はまだ読み書きがほとんどできなかったこと。文字に興味を持たない子だったし、私たちも「学校で教わるんだから、まあいいか」と教えていなかったんです。そんな子がいきなり宿題です。  夫婦で話し合いました。「登校したとき、できるだけショックを受けず、学校を怖いと思わないでいてほしい」と。そこでダンナの知り合いの小学校の先生の経験がある方に、登校直前に2日間プチ授業をしてもらったんです。宿題だけでなく、「鉛筆はこう持つよ」「教室では椅子に座っているんだよ」という学校生活の基本も教わり、なんとか無事に学校生活が始まりました。  ■学校イヤだ~と泣く息子に「みんなそう!」と校長先生   5月には「学校に行きたくない」って泣いたことがありました。息子は、学校が嫌いなわけではないんです。でも勉強がイヤ。その気持ち、私はすっごくわかるんですよ。だから「勉強はイヤでも学校は好きだよね。笑福が休んだらみんな心配するだろうなぁ。遊ぶ約束してた友達、ガッカリするよね。とりあえず学校まで行ってみようか」って校門まで連れていったんです。  それでも「学校イヤだ!」とぐずっていたら、どこからともなく校長先生がタタタッと現れて、「みんなそうよ!」って笑福の肩をガッと抱いて「まず保健室に行きましょう」って連れていってくれたんです。さすがです。息子はあとで「校長先生、女の人だけど力は強かった」って妙に感心していました。   学校は嫌がらなくなりましたけれど、勉強には苦手意識があるんです。私と同じ。私も「あ」を10回書くとか本当につまらなくて、ノートをひっくり返して逆から書いたりする子でした。そしたらなんと、同じことを笑福もしていて、「私と一緒だ~」って。  宿題でわからないところは、最初は親が教えていたんです。でもダンナはどんどんあせるし、私は勉強が苦手だから「そんなのわからなくていいよ。別に困らないし」って言ってダンナに叱られる(笑)。家庭教師の先生に相談したら、「笑福くんのように基礎のことがまだできていない場合、それを親が根気強くやっていくのはかなり大変です」と言われました。 ■勉強を好きになるためにプロの力を借りよう   意を決して、夏休みは週に2回、家庭教師の先生にきてもらうことにしました。「小1で家庭教師」っていうとめちゃくちゃ教育熱心に思うかもしれないんですが、うちは少し違うんです。勉強ができる子にしてほしいんじゃなくて、勉強の楽しさを伝えるためにプロの力を借りました。  息子の学校生活は始まったばかりで、これから間口を広げていろんな知識に出合うはずなのに、ひらがなが苦手で、その入り口で勉強を嫌いになっちゃったらかわいそうだなぁって。勉強が嫌いだと、学校でずーっとイヤなことをすることになります。少なくとも私はずっとつらかった。  家庭教師の先生は、やっぱりさすがですね。かるた遊びを取り入れたり、宿題もわかりやすく教えてくれたり、ときには親も参加していっしょに遊びながら勉強したり。息子も文字を読むことが楽しくなったみたいで、この前おそば屋さんで「う、ど、ん」といきなり読んで、今度は下から「ん、ど、う」って(笑)。自分から文字を読む姿を見たのは初めてでした。うれしかった。 (取材・文/神 素子) おおしま・みゆき/1980年生まれ、栃木県出身。98年に黒沢かずこさん、村上知子さんの3人で森三中としてデビュー。2002年に放送作家の鈴木おさむさんと結婚。15年には長男・笑福くんが誕生。レギュラー番組に「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)など。【撮影/戸嶋日菜乃(写真映像部)スタイリスト/マルコマキ <衣装>Vanilla(参考価格)、問い合わせ先 https://vanilla87.fashionstore.jp】 ※全文は発売中の「AERA with Kids 2022年秋号」(朝日新聞出版)でご紹介しています。

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    巨人、ソフトバンクは「主役」じゃない? 今オフ積極補強に動くかもな“意外な2球団”

     クライマックスシリーズ(CS)の開幕を目前に控えているが、来季を見据えた動きは既に水面下で始まっている。FA権を取得している各球団の主力や、米国から国内に復帰する可能性がある選手など、今オフは大物が数多く市場に出回ることが予想される。久しぶりに活気ある熱いストーブリーグになりそうだ。 「近年の広島やヤクルトでは、FA権を持った主力選手が相次いで残留した。どの選手も移籍もあると見られていたので驚きの声も上がった。しかし、これらは特殊な例で人間関係などを含めたプレー環境が(所属していた球団で)飛び抜けて良かったからで、今季は分からない」(スポーツマネージメント会社関係者)  ここ数年は球界全体を見回してもオフに大きな動きはなかった。昨年には広島の大瀬良大地、九里亜蓮という右腕2枚看板が揃って残留。それ以前にも広島はリーグ3連覇時の中心選手だった菊池涼介、田中広輔、松山竜平、会沢翼など、多くの選手がFA権取得後に残留の道を選んだ。  また、2020年オフのヤクルトも「ミスター・トリプルスリー」山田哲人、守護神・石山泰稚が国内FA権を行使せずチームに残留。また、一度はFAを宣言したエース・小川泰弘も交渉の末にチームに残ることを選択した。 「プロ野球選手の寿命は短く、安定したセカンドキャリアを送ることができる選手も少ない。ファンからすると複雑な思いもあるだろうが、ビジネスライクに考えるのは当然の権利。広島やヤクルトの選手たちが特殊だっただけ。(今オフは)FA権を取得した実績のある選手は動く可能性は高く、市場も活発になるはず」(スポーツマネージメント会社関係者)  今年のオフは投打ともにFA権を取得した“目玉”が多い。仮に彼らが権利を行使した場合は、例年通り巨人、ソフトバンク、阪神、楽天といった資金力豊富な球団が存在感を発揮するのは変わらないだろう。だが今年は、これらの球団に加えて、これまではオフを騒がせることが少なかった球団が、話題をさらう可能性があるという。  その一つがオリックスだ。 「オリックスは積極的に動きそう。他球団に比べて資金力も決して劣らない。二軍施設等、ハード面の充実を図ったことで若手育成の土壌ができ始め、2年連続パ・リーグ制覇という結果にもつながった。勝つことでお客さんも入った。今後は選手(=ソフト面)の獲得に投資する次のフェーズに突入するはず」(オリックス担当記者) 「浅村栄斗(楽天)、森友哉(西武)という2人の大阪桐蔭OBがFAの権利を持っている。捕手と二塁手はレギュラーが固定できておらず、補強ポイントに合致するので全力で獲得に動くはず。加えて中日を退団となった平田良介も同校のOB。3人全て獲得できれば話題性を含め最高の補強となる」(在京球団編成担当)  オリックスは2017年からファームの拠点が神戸から舞洲へ移転した。舞洲スタジアムを二軍本拠地とし、周囲には選手寮やサブ球場を30億円かけて建設。充実した野球環境を整えたことで、若い選手たちがしっかりと育っている。主力の多くを生え抜きで固めて戦い、リーグ制覇という結果も残した。今後、黄金期を作るためにも、さらなる戦力補強が欠かせない。  また、オリックス同様に積極補強に動く可能性があるという声があるのがDeNAだ。 「DeNAにも動きがありそう。球団買収から地域密着を徹底し、本拠地・横浜スタジアムを中心とした街づくりに取り組んだ。横浜市民のみでなく神奈川県民が誇れる球団になり、チケットが入手困難な超人気球団になった。今後は勝つことで知名度をさらに上げ、全国、そして世界に誇れる球団を目指す。そうなってくると戦力補強への投資が欠かせない」(DeNA担当記者)  ベイスターズは2011年にDeNAが親会社となってからは、地域密着を前面に打ち出しファンサービスに特化。球場を改修し、観客が楽しめるサービスを徹底して多くのファンを取り込むことに成功したが、次なる目標は勝てるチームを作ることだ。 「今後は野球で結果を出すための投資が必要。左腕王国となった投手陣は充実しつつあり、打線もソト、オースティンの両外国人が機能すれば球界屈指。牧がセカンドの不動のレギュラーとして活躍しているが、ショートはまだ固定できていないため、二遊間強化は課題です。FA権を持つ外崎修汰(西武)、中村奨吾(ロッテ)、高橋周平(中日)などは狙い目。狭いハマスタなら打撃成績のアップも期待できる」(在京球団編成担当)  DeNAはオリックス同様、ファーム施設の整備も行なっている。2019年からは横須賀市が30億円、球団が10億円の計40億円かけて建設した「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」を使用し、そこから多くの選手が一軍へと旅立っている。 「チームが前進し続けるためには勝つことも必要不可欠で、日本ハムが良い例。鎌ヶ谷に若手育成施設を作り、ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンゼルス)など良い選手を育成して結果も出た。サービスも徹底してファンも増えた。しかし良い選手がいなくなり勝てなくなると、お客さんは離れる。時期が来たらチーム強化への投資も必要」(スポーツマネージメント会社関係者)  若手育成を行うための充実した拠点が必要なのは言うまでもない。ファンサービスを充実させ顧客を満足させるのも当然のこと。そして、球団がさらに進化ををするためにも、選手補強への投資も同時に必要となる。オリックスとDeNAは今、まさにその時期に差し掛かっている。両チームが今年のストーブリーグでどういった動きを見せるかに注目して欲しい。

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    乃木坂46で選抜入りゼロも…… 「将来のセンターになれる逸材」と評価急上昇のアイドルは?

     アイドルグループ・乃木坂46は新たな時代を迎えている。今年はグループ結成10周年を迎え、5月14、15日に日産スタジアムで開催された「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」には現メンバーだけでなく、西野七瀬、白石麻衣、生駒里奈ら卒業生たちが登場して公演を盛り上げた。  月日が流れると共に、メンバーが卒業していく。今年に入って1期生の星野みなみ、2期生の北野日奈子、山崎怜奈が卒業。1期生の樋口日奈、和田まあやも8月31日発売の30枚目シングル「好きというのはロックだぜ!」の活動を最後に卒業することが決まっている。  一方で、新しい風も。今年から加入した5期生は井上和、菅原咲月、川崎桜らを筆頭に加入から1年も経たずに人気メンバーとなり、次のシングルで何人が選抜入りするか注目されている。  乃木坂に在籍しているメンバーは現時点で43人。ただ、全員が同じステージで歌えるわけではない。各シングルの表題曲を歌う16~20名の「選抜メンバー」が選ばれる。他のメンバーは「アンダーメンバー」という枠組みの中で活動する。 「人気メンバーが選抜で固定されているので、アンダーから新たに入るのは容易ではありません。乃木坂に在籍して一度も選抜入りできずに卒業するメンバーも少なくない。それほど厳しい世界です。でも選抜メンバーの全員が日の当たる道を歩んできたわけではない。アンダーから大ブレークした代表格がエースの齋藤飛鳥です。グループの初期は白石、西野、生駒ら人気メンバーに隠れる形でアンダーの常連メンバーでしたが、モデルとして活躍してパフォーマンスを磨くことで大輪の花を咲かせた。選抜入りしなくても人気メンバーはいますし、活動の全てではないですが、彼女の歩んだ道のりは後輩に大きな勇気を与えている」(スポーツ紙の芸能担当記者)  ネクストブレークを狙う逸材たちの中で、テレビ関係者から高い評価を得ているのが4期生の林瑠奈だ。  民放のテレビ制作スタッフは「頭の回転が速く、バラエティー能力が高いと現場で評判です。お笑い好きで瞬発力があるだけでなく、場をうまく回すこともできる。共演した芸人やタレントの評判がいい。独特の感性と発言で、乃木坂の中では異質なオーラを身にまとっているのも魅力です」  林は順風満帆な道のりを歩んだわけではない。18年8月に坂道合同オーディションに合格するが、グループには配属されず坂道研修生として活動した後、20年2月に4期生に加入する。同じ4期生の中でも林より早く加入し、圧倒的な人気を誇る賀喜遥香、遠藤さくらに比べて当初は影が薄かったが、アンダーライブやグループ活動で輝きを放つこと存在感が増していく。歌唱力は乃木坂トップクラス。ダンススキルも磨かれ、ライブで見せるパフォーマンスが話題になった。  8月上旬にYouTubeでMVが公開された4期生の楽曲「ジャンピングジョーカーフラッシュ」ではフロントメンバーに抜擢され、大きな武器である歌唱力を発揮。コメント欄には、「林の歌声って世間が気づいたら爆発的に人気出るだろうな。そう思うぐらい魅了される」、「話題の5期生加入。でも、新4期生の覚醒がそれを大きく上回る。林瑠奈、ほんとうに凄すぎる。美しくなりすぎて、一時も目が離せない」など称賛の書き込みが相次いだ。  テレビ東京の帯番組「乃木坂工事中」でも話題に。「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」のパフォーマンスを取り上げた放送回で、MCを務めるバナナマン・設楽統が「林とかいい表情するよね。アイドルがステージで輝いているのを絵に描いたみたいな」と名指しで絶賛していた。  前出のスポーツ紙記者は「林は選抜入りにとどまらず、賀喜や遠藤のように将来はセンターになれる可能性も十分に秘めている。楽曲によって色々な表情を見せて観客の目を引きつける。中心の立ち位置でなくても『主役感』があるんですよね。ファンからの人気が高まっていますし、これからも快進撃が続くと思います」と期待を込める。さらなる活躍が楽しみだ。(梅宮昌宗) ※週刊朝日オンライン記事

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    伝説の名馬”トウカイテイオー”の子どもに乗る 初心者でもジョッキー気分

     トウカイテイオーといえば、1991年に無敗で皐月賞とダービーを制覇した伝説の馬だ。その後は故障に泣いたが、93年の引退レース・有馬記念で奇跡の優勝し、多くのファンが感動の涙を流した。近年はゲーム&アニメの「ウマ娘」の大ヒットで、当時を知らない世代からも注目を集めている。その名馬の産駒に跨れる乗馬クラブが群馬にあるという。しかも未経験者でも乗れるというのだ。競馬好き、ウマ娘好きには、耳寄りな話ではないか。  前橋市からほど近い赤城乗馬クラブを訪れた。  このクラブにはトウカイテイオーの産駒が4頭もおり、会員以外のビジターでも乗れる。とはいえ、あの名馬の子だ。引退後も闘争心に溢れ、未経験者などは振り落とされるのでは? 「いえいえ。4頭とも人に従順で温厚。乗馬に適した性格です」  と語るのは、このクラブの石井計人社長。  ここにいる産駒は、ヤマニンバッスル、ゴールドショット、リラン(競走馬時代の名はダッキ)、トウカイフェスタ。いずれもJRAや地方競馬で走ったうえ、引退後の“第2の馬生”を乗馬として送っているのだ。  乗馬クラブで会員やビジターが乗るだけでなく、馬術大会に出場することもある。9月10日に行われた群馬県馬事公苑乗馬大会には、トウカイフェスタとリランが出場。2種目に出たフェスタは1位と3位と活躍。大会初出場だったリランも2位に入賞した。  記者が取材で訪れた日は、都内から来たという初心者2人が、ヤマニンバッスルとリランで外乗(森の中などを先導馬についてゆっくり進む)をしていた。  帰ってきた2人に、トウカイテイオー産駒に乗った感想を聞いてみたところ、 「えっ、テイオーの子だったんですか? 知りませんでした。リランは草が大好きで、途中で立ち止まっては食べていました。牧場の方に『止めさせないと舐められてしまいますよ』と指導されたので、止めさせるようにしました。こちらの言うことをちゃんと聞いてくれましたし、とても素直な馬でした」  実は赤城乗馬クラブは、トウカイテイオー産駒がいることをアピールしていない。ホームページでも触れていないのだ。ビジターの多くは、まさか自分が乗った馬がテイオーの子であるとも知らずに帰っていく。  石井社長は「僕は競馬の方はそんなに興味がないから。宣伝しようとは思いませんでした」と説明する。  そんな石井社長がテイオー産駒を引き受けるきっかけを作ったのは、「トウカイテイオー産駒の会」の早川代表だ。  91年のダービーでトウカイテイオーの虜となった早川さん。引退の1週間後には、北海道の放牧地に見学に行ったほど。早川さんは、テイオーの父である「皇帝」ことシンボリルドルフが2011年10月に亡くなった時に危機感を覚えた。 「いつかはテイオーも亡くなる日がくる……。なんとも言えない焦燥感に襲われました。そこで産駒を応援することで、テイオーのことをPRしようと思ったんです。決して忘れられないように。有志と『皇帝 帝王 伝説』という文字とテイオーのイラストを入れた横断幕を作って、産駒が走る競馬場のパドックに掲げました。JRA、地方、全ての競馬場を協力して回りました」(早川さん)  テイオーの子も次々に引退していく。早川さんらは、産駒たちに幸せな“第2の馬生”を送ってほしいと願った。特に気になったのは、川崎競馬で走っていたヤマニンバッスル。 「テイオーに顔がよく似ているんです。流星がそっくり。これからもそばにいて欲しいと思い、親しい厩務員さんに間に入ってもらって、厩舎を訪問し想いを伝えました。『そんなに好きで引退後のことを考えてくれているのなら』と、引き取りの話が進んだんです」(早川さん)  13年6月のレースを最後に引退したヤマニンバッスルを引き取り、乗馬のトレーニングを開始。ゴールを目指してひたすら走る競走馬と違い、乗馬では動かないことも要求されるなど、動きがまったく違う。そのため入念なリトレーニングが必要なのだ。引き取って2カ月後にトウカイテイオーが亡くなったこともあり、早川さんはバッスルをテイオーの忘れ形見のように感じたという。  十分にリトレーニングを積み、乗馬として活躍できるようになった17年のこと。 「ちょうど赤城乗馬クラブさんが新しい馬を必要としていると聞きまして、お願いしたんです」(早川さん)  一方、赤城乗馬クラブは、 「うちにとってもありがたかったですよ。バッスルはよく訓練されていましたので」(石井社長)  こうしてトウカイテイオー産駒の会と赤城乗馬クラブの間に縁ができ、翌年にゴールドショットが、20年春にリラン、同年夏にトウカイフェスタがやってきた。  さてテイオー産駒の乗り心地はどうか? 乗馬経験が1度しかない記者が、トウカイフェスタに乗ってみることに。  跨ってみて驚いたのは、フェスタの背の高さ。というのも馬格がとても良いのだ。20年に走った最後のレースでは、馬体重502キログラムという堂々とした体躯(ちなみにトウカイテイオー最後のレースは474キログラム)。また、馬は乗り手の未熟さを感じ取ると、舐めてかかることもあるというが、フェスタはこちらが初心者であることを見抜いただろうに、ちゃんと命じた通りに動くのである。  石井社長が言う。 「テイオー産駒に乗りたいのであれば、乗馬予約の際に伝えて下さい。3日前くらいまでに相談していただければ、よほど込み合っていない限り、4頭のどれかを用意いたします。ゴールドショットはちょっと神経質なところがあるので、中級以上の方が良いと思いますが、他の3頭は初心者でも大丈夫です」  秋の後楽シーズン、天下のトウカイテイオーの産駒に乗るのもお勧めだ。ちょうど30年前の秋、テイオーがジャパンカップで差し切ったシーンを想いつつ。 【赤城乗馬クラブ】 群馬県吉岡町漆原1590の1 電話0279・54・0481 体験乗馬+パカパカ散歩=約40分。平日8800円、土日祝9900円。場内で基本的な馬の動作を練習。 ビジター外乗=約40分。平日9900円、土日祝11000円。森の中や川の中を先導馬についていく。 ※月曜休み  【トウカイテイオーの産駒たち】 ヤマニンバッスル=騙馬。鹿毛。06年生まれ。母ヤマニンドルチェ、母父サンデーサイレンス。29戦4勝。 ゴールドショット=騙馬。栗毛。06年生まれ。母イシノルージュ、母父アフリート。68戦9勝。 リラン(ダッキ)=牝馬。鹿毛。10年生まれ。母キクノジョリー、母父ジョリーズヘイロー。47戦7勝。 トウカイフェスタ=騙馬。鹿毛。10年生まれ。母トウカイデンヒル、母父デインヒル。116戦7勝。 (本誌・菊地武顕) ※週刊朝日オリジナル記事

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    今年も帝京大が盤石? 関西の雄も好調! 全国大学ラグビー選手権へ向け“勢力図”は

     大学ラグビーの各リーグ戦が開幕し、ここまでに序盤戦を終えた。昨年度までの2シーズンは新型コロナウイルスの感染拡大のため、無観客で開催したり大会方式の変更を強いられたりもしたが、今シーズンは関東、関西の最上位3リーグがいずれも全試合有観客で開催されている。ラグビー場にも、ようやく日常が戻ろうとしている。今月末から11月にかけて始まる後半戦で全国大学選手権の出場校やシードにつながる各リーグ戦の順位が決まり、今シーズンの勢力図も見えてくるはずだ。  昨年度の全国大学選手権で4大会ぶりに大学王座に返り咲いた帝京大学が所属する関東大学対抗戦Aグループ(8校)は9月10日に開幕した。前半戦は昨年度の上位校が下位校と対戦しており、昨年度の1~4位の帝京大学、早稲田大学、明治大学、慶應義塾大学はここまでそろって3連勝となっている。  前人未踏の大学選手権9連覇を達成した岩出雅之氏から相馬朋和新監督に指揮官がバトンタッチした帝京大は立教大学に大勝して対抗戦初陣を飾ると、2戦目の青山学院大戦は前半こそ5―0と苦しんだものの、終わってみれば52―0と2試合連続の無失点勝利。続く筑波大学戦は前半リードを許し、後半6分には12―20と差を広げられたが、そこからの5連続トライで終わってみれば45―22と快勝だった。  早大も青学大との初戦は38―8で勝ったものの前半は7―3、筑波大戦は前半に23―0とリードしながら後半は0―17と不安定な試合が続き、3試合目の日本体育大学戦でようやく102―0と快勝した。明大は9月10日の初戦で筑波大を33―22と突き放すと、日体大から74点、立大からは88点を奪ってともに無失点勝利を挙げた。慶大は立大に前半5―7とリードされたが(最終スコアは36―7)、日体大、青学大は危なげなく下している。  対抗戦Aグループは全チーム試合がない週末(BYE)をはさみ、10月16日に再開。11月から後半戦となり、6日の明大―慶大戦(埼玉・熊谷ラグビー場)を皮切りに上位校同士の対戦が始まる。ただし、その前の10月16日にある慶大―筑波大戦(神奈川・小田原市城山陸上競技場)も注目だ。筑波大は3連敗中だが、帝京大を後半序盤までリードしたほか、明大戦でも後半13分に一度は追いつき、早大戦ではトライ数で3―2と上回った。慶大に勝って勢いにのり、残りの試合に全勝すれば4位以上が見えてくる。  11月6日、熊谷の2試合目では帝京大と早大が対戦。20日は帝京大―明大戦、23日は慶大―早大戦がともに東京・秩父宮ラグビー場で開催され、最終節は12月3日に慶大―帝京大戦(秩父宮)、4日に早大―明大戦(東京・国立競技場)が行われる。早明戦が国立競技場で行われるのは、旧国立競技場最後のシーズンで試合後に松任谷由実さんが「ノーサイド」を歌った2013年以来。この時は早大が15―3で明大を下し、観客は4万6961人だった。  今のところ番狂わせがない対抗戦とは対照的に、関東大学リーグ戦1部(8校)では序盤から波乱が起きている。  4連覇中の東海大学が9月11日の初戦で東洋大学に24―27で敗れた。東洋大は昨年度2部で2位となり、入れ替え戦に勝って今シーズンから1部に復帰したばかり。この試合は29シーズンぶりの1部の舞台だった。東洋大は後半36分のトライで27―24と逆転し、終了直前に東海大に連続攻撃で自陣に攻め込まれたが、必死のタックルで相手のミスを誘い、逃げ切った。1部での勝利はさらにさかのぼって30年ぶりだった。  東洋大は2戦目も関東学院大学相手にリードが二転三転する接戦を38―31と制して連勝したが、1週間後の大東文化大学戦ではラスト1プレーで逆転のPGを決められ、26―27で惜敗して3連勝はならず。それでも、昨年度3位の相手に後半15分の時点で0―24と差をつけられながら、そこから4連続トライで一時は試合をひっくり返し、地力のあるところを示した。  昨年度は6勝1分けと負けなしで2位と躍進した日本大学は、ここまで黒星が先行している。初戦の立正大学には勝ったものの、続く法政大学戦と流通経済大学戦は連敗。ともに前半の失点が痛かった。一方、昨年度6位の法大は大東大、日大に連勝スタート。東海大には大敗したが上位をうかがえる位置につけている。  これまでのところ、昨年度は3勝4敗と負け越して5位だった流通経済大学が3連勝で首位。2勝1敗で東海大、東洋大、法大が続いている。リーグ戦もBYEをはさんで、10月15、16日の週末から再開。10月30日から始まる昨年度上位校同士の対戦の前に、16日の東海大と流通経大の対戦(群馬・太田市運動公園陸上競技場)は優勝の行方を大きく左右する一戦になりそうだ。最終日の11月27日には昨年度は引き分けた東海大と日大の対戦(秩父宮)などが行われる。  関西大学Aリーグでは、過去に4度の大学日本一に輝いた同志社大学が9月18日の開幕戦で立命館大学に15―19で敗れた。トップリーグ時代のサントリーサンゴリアスで選手として活躍した宮本啓希新監督の初陣を飾れず、立命大には春季トーナメントに続く連敗。同大は1週間後、後半36分の逆転PGで26―25と関西大学を辛くも下したが、復活への厳しい道のりを感じさせる戦いが続いている。  昨年度は23年ぶりに優勝すると全国大学選手権でも準決勝まで進み、王者となる帝京大を後半終盤までリードする健闘をみせた京都産業大学は、関西学院大学と摂南大をともに大差で下して2連勝。2020年度の全国大学選手権で関西勢として36大会ぶりの優勝を果たした天理大学も関西大学戦と立命大戦に危なげなく勝ち、この2校のみが負けなしとなっている。  関西大学Aリーグは第2節が2週末にまたがる変則日程だった他は11月20日の第7節まで毎週試合を行い、12月3日に最終節がある。京産大と天理大は第6節の11月20日に京都・たけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場)で対戦する。

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    「細田氏のあいさつ、非常にありがたい」と信者 「三権の長」旧統一教会との関係は紙1枚で説明

     世界平和統一家庭連合(旧統一教会)とのかかわりについて指摘を受けてきた細田博之衆院議長が、9月29日に公表した旧統一教会との関係を認める文書。たった「紙1枚」に書かれた内容からは、関係について真摯(しんし)に説明しているとは受け取れない。党内からも批判の声が出るなか、10月3日に「補充説明をする」と発表する事態に追い込まれた。  公表された文書を整理すると、細田氏が教団側とかかわった件は以下のようになる。 【イベント、会合などへの出席】 ▽2018年10月、旧統一教会の政治団体「国際勝共連合」の記念大会に出席 ▽19年6月、旧統一教会の関係団体の出版物で、憲法改正問題に関するインタビュー記事の取材を受けた ▽同年10月は旧統一教会の関連団体の国際会議であいさつ ▽それ以外にも18年、19年の2度、会合に出席 【役職など】 ▽自民党と旧統一教会関連団体との議連「日本・世界平和議員連合懇談会」の名誉会長に21年6月に就任 ▽旧統一教会の創始者、故・文鮮明氏が提唱した、九州と韓国を海底トンネルで結ぶ計画を進める「日韓海底トンネル推進議員連盟」の顧問 【選挙】 ▽地元の関連団体から選挙で支持の意向を示された  こうした事実関係を踏まえた上で、選挙については、 「関係者は、私が知る限りでは普通の市民であり、法令に反する行為を行っているとの認識はない」。  名誉会長に就いている懇談会については、 「その後の活動状況については承知しておらず、実際にも議長就任後は参加していないほか、既に解散したと聞いている」。  トンネル議連については、 「これまで特に活動に参加したことはないほか、現在は顧問を辞任している」  と何かしらの弁明を書き加えている。  少なくともこの文面からは、旧統一教会や関連団体とかかわりを持ったことについて、問題があったとの認識は見られない。  文末に、 「今後、社会的に問題があると指摘される団体等とは関係を持たないよう、適切に対応してまいりたい」  との一文を入れているが、それまでの事実関係を踏まえての思いとは考えにくく、これまでに関係が明らかになった議員らが発言してきた“定型文”を繰り返したに過ぎない。  細田氏については以前から、教団関連団体のイベントに参加していたことが明らかとなり、メディアにも指摘されていた。しかし、自民党が所属国会議員に旧統一教会との関係について行った点検では、議長として自民会派を離脱していることを理由に対象外とされた。実際はあれだけの接点があったにもかかわらず、だんまりを決め込んできたのだ。  そうした姿勢に党内からも、「派閥の会長を務めた細田氏や安倍(晋三)元首相が除外されているのは問題だ」といった意見も出て、対応を求められ、ようやく出したのが紙1枚。書かれた内容からも、細田氏がこの件に真剣に対応しているようには思えない。  たとえば、文面にあった国際会議。「招待があったから挨拶した」と簡素な書き方をしているが、その会議とは、愛知県で開かれた旧統一教会の関連団体「天宙平和連合」(UPF)の会合で、旧統一教会の韓鶴子総裁も韓国から日本に来ていた。  その前であいさつした細田氏は、 「韓鶴子総裁の提唱によって実現した、国際指導者会議の場は大変意義が深い」 「今日の会議の内容を安倍総理(当時)に早速報告したい」  などと手放しで持ち上げていたのだ。  旧統一教会の現役信者によれば、 「韓鶴子総裁がお越しになるので、国会議員のあいさつはとても重視されました。そのなかで、関係が深い細田派(当時)の会長、細田氏への依頼となった。あいさつでは、細田氏は安倍元首相の名前まで出してくれて、旧統一教会としては非常にありがたいものでした。細田氏の参加した会合の翌日には、信者4万人を集める集会が予定されていたので、より効果があったのです」  と話し、こう続ける。 「UPFは関連団体とされていますが、旧統一教会そのものです。21年9月のUPFの会合に、安倍元首相がビデオメッセージで『韓鶴子総裁をはじめ、みなさまに敬意を表します』とあいさつしました。細田氏の会合でのあいさつは、安倍元首相にお願いする際にも効果があったと聞いています」  そして、現役信者は1冊の本を取り出した。 「神様の理想家庭と平和世界のモデル 天宙平和連合創設 世界100カ国巡回講演文」  とあり編集・発行は、教団の前身の「世界基督教統一神霊協会」とある。  UPFはこれまで旧統一教会の「関連団体」とされていたが、この本からは両者はほとんど「一体」であることがうかがえる。  安倍元首相も細田氏も、実質的には旧統一教会が主催の会合でスピーチしていたことになる。  細田議長の「紙1枚」の発表の翌日の9月30日、自民党は、国会議員と旧統一教会との関係について追加調査した結果、12人から追加報告があったことを明らかにした。  これで自民党の国会議員、379人のうち180人が旧統一教会と接点があったことになる。  新たな発表では、旧統一教会主催や関連団体の会合であいさつをしていた木原誠二官房副長官と元デジタル相の平井卓也衆院議員、旧統一教会の韓鶴子総裁を「マザームーン」と繰り返していた山本朋広衆院議員、安倍晋三元首相と近い江島潔参院議員らの名前が挙がった。  そして、かねて指摘されてきた山際大志郎経済再生担当相。これまでに関係団体に金銭を払ったことや、会合に出席していたことを認めているが、新たに「11年にナイジェリアで教団関連団体が開催した国際会議に参加した」などと説明した。  自民党の発表は「紙2枚」。茂木敏充幹事長が、マスコミに対応したのは記者クラブのみ。 「当然、テレビカメラなどの撮影も不可で、茂木幹事長の説明だけ。当初は、茂木幹事長のコメントとして使うこともダメと言われていた。最後はコメントだけはOKになりましたが、旧統一教会の問題を小さくしようとしている感じがします」  とクラブに所属する記者が打ち明ける。  コンプライアンスに詳しい東京地検特捜部元検事の郷原信郎弁護士は、 「コンプライアンスというのは、説明の仕方、対応、記者会見の話し方などで信頼回復という面があります。しかし、今の自民党の旧統一教会への対応はコンプライアンス以前に、まったくお話になっていません」  と指摘する。 「自民党と旧統一教会がどういう関係だったのか、そこをきちんと調査せずにその場限りの対応ばかり。だから、茂木幹事長も記者会見が開けないのだと思いますよ。連日、自民党と旧統一教会の新たな関係が明らかになっているような感があります。原点に戻り、調査からはじめるべきです。細田氏も紙1枚で終わらせようとするなんて、三権の長である議長としてあまりにお粗末です」  細田氏は、紙を公表した後もマスコミの問いかけには十分に応じず、再度、文書で説明をする予定だという。 (AERA dot.編集部・今西憲之)

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    年俸と“釣り合わない”成績 巨大戦力も今は昔、ソフトバンクの「大甘査定問題」

     マジックが点灯しながらも、最終戦に敗れてまさかの2位となったソフトバンク。2017年からは日本シリーズ4連覇を達成しているが、レギュラーシーズンの成績だけを見ると過去5年間でリーグ1位となったのは1回だけであり、常勝軍団、巨大戦力という印象は徐々に薄れている。またシーズン終了を待たずに長年チームを牽引してきた松田宣浩の退団が発表され、エースの千賀滉大も海外FA権を行使してのメジャー移籍が噂されるなど、2010年代に栄華を誇ったチームも過渡期を迎えていることは間違いないだろう。  ここから再びパ・リーグ、球界の盟主へと返り咲くためには様々な課題があるが、一つ気になるのが選手の年俸におけるコストパフォーマンスの悪さだ。5月にプロ野球選手会が発表した年俸調査ではソフトバンクの平均年俸は7002万円で3年連続トップとなっており、最下位である日本ハムの2817万円と比べると実に倍以上の開きとなっている。また、これはあくまでも選手会に加入している日本人選手だけの金額であり、外国人選手まで含めるとこの差はさらに大きくなるだろう。  そして大きな疑問となっているのがその査定の甘さだ。昨年オフに行われた契約更改において、1億円以上の年俸となった選手と昨シーズンの成績を並べてみると、以下のようになっている(金額は推定。年俸が変動しない複数年契約や減俸のない複数年契約の選手は除く)。 千賀滉大:6億円(前年比+2億円)13試合 10勝3敗0セーブ0ホールド 防御率2.66 嘉弥真新也:1億6000万円(前年比+2000万円)58試合 1勝0敗0セーブ19ホールド 防御率4.71 和田毅:1億5000万円(前年比±0円)18試合 5勝6敗0セーブ0ホールド 防御率4.48 武田翔太:1億5000万円(前年比+9000万円)12試合 4勝5敗0セーブ0ホールド 防御率2.68 石川柊太:1億2000万円(前年比+4000万円)28試合 6勝9敗0セーブ0ホールド 防御率3.40 柳田悠岐:6億2000万円(前年比+1000万円)141試合 155安打28本塁打80打点6盗塁 打率.300 中村晃:2億4000万円(前年比±0円)139試合 113安打8本塁打56打点1盗塁 打率.245 甲斐拓也:2億1000万円(前年比+4500万円)143試合 92安打12本塁打44打点6盗塁 打率.227 松田宣浩:1億5000万円(前年比-3億円)115試合 83安打14本塁打47打点5盗塁 打率.234  特に他球団のファンは、これを見て妥当だと感じる人は少ないのではないだろうか。千賀も二桁勝利はマークしているものの、登板数自体は13試合と、1年間の約半分しかローテーションを守っていないことになる。メジャー移籍に対する強い要望を抑え込むには致し方ない部分はあると思われるが、この成績で2億円アップするというのは他の球団では考えられないだろう。さらに驚かされたのが武田だ。防御率こそ2点台ながら、4勝5敗という成績に終わったにもかかわらず、大幅アップとなっている。  これは2022年中に国内FA権を獲得することを見越してのことであり、4年という複数年契約も結んでいるが、成績を考えれば異例のことであることは間違いない。また年俸がダウンしない複数年契約を結んでいる森唯斗(4億6000万円)と今宮健太(2億9000万円)も相当な高給取りとなっている。唯一松田だけが大幅ダウンとなっており、これは年齢を考えてとのこともありそうだが、全体的に見ても、他球団と比べて査定が甘いのではないかという声は出てきてもおかしくないだろう。  ソフトバンクはとにかく使うところにはお金を使うという印象が強く、多くの育成選手を抱えていることも、二軍、三軍の施設を充実させていることも他球団との差別化となっていることは確かだ。育成選手からは千賀、甲斐、石川などが主力となっており、投資に対するリターンももちろん出ている。  その一方で、育成で芽が出なかった選手に対しても、グループ会社への就職を必ず斡旋するなど、選手としての条件は悪くてもチャレンジしやすい環境を整え、一定の成果を出した選手には他球団と比べても好条件を提示するなどしているが、それによって選手にも甘えが出ている部分もあるのではないだろうか。先述した高額年俸の選手たちの今シーズンの成績を見ても、年俸に見合うだけの活躍をした選手は皆無と言ってよいだろう。  もちろんチームを強くするためにはある程度の金額を投資することは必要だが、今のソフトバンクを見ていると無駄に高い年俸を払っているという感は否めない。チームを立て直すためにも、このあたりの査定についても再度見直していく必要はありそうだ。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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    4時間前

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    小島よしおが「ちょっかいを出すのをやめられない」と悩む小2に伝えたい、性格との向き合い方

    「ついつい友だちにちょっかいを出してしまう」というのは小学2年生のなっつさん。数多くの子ども向けライブを開催し、YouTubeチャンネル「おっぱっぴー小学校」も人気の小島よしおさんが子どもの悩みや疑問に答えるAERA dot.の本連載。「性格は骨盤!」という小島さんの、性格との向き合い方とは。 *   *  * 【相談25】わかっていてもついふざけて、友だちにちょっかいを出してしまい、友だちをいやな気持ちにさせてしまいます。先生やお母さんに怒られてしまうばかりで悲しいです。傘でつついたり、友だちの髪の毛を勝手に触ったりしてしまいます。悪いことだとわかっていても、ちょっかいをだす時は忘れていて、ついやってしまいます。どうしたらやったらいけないことを覚えておけますか?(なっつ・小学2年生) 【よしおの答え】 なっつぴーやはすごいなあ! まだ小学2年生なのにもう反省できている。よしおもなっつぴーやと似ていて、友だちの髪の毛を触ったり、雑巾で攻撃したり、人にちょっかいを出すのが好きだった。しかも、6年生くらいまで続いていたし、反省なんてしたこともなかった。きっと友だちはいやがっていただろうけど、悪いなんても思っていなかったんだ。今になって悪いことをしたなあ、と反省しているけど、もう遅いよね(苦笑)。だから、2年生でもう反省できているなっつぴーやは本当にすごいなあ、って思ったよ!  だけど、先生やお母さんに怒られてばかりいるのはやっぱり悲しいよね。これからどうしていけばいいのか、よしおと一緒に考えていこう! ■ひとりになって落ち着いてみる  最初に話したように、よしおもよく人にちょっかいを出していて、なかなかやめられなかった。とくに運動会とか授業参観とか、何か行事があるといつもに増して落ち着いていられなかった。気持ちがフワフワしちゃって、他のクラスに行ったり、誰かについつい話しかけたり。  それは大人になってからも続いたんだ。芸人になって、自分ひとりで芸を披露する単独ライブの時なんか、全然落ち着けなかった。とにかくわーっとなって周りにいる人に余計なことを話したり、テンションが上がってよくわからない行動をしてしまったり……。手伝いに来てくれていた後輩たちからは「相当絡みづらかった」と、あとで言われたよ(苦笑)。  だけどまあ、年齢と共にだんだん落ち着いてきたというか、わーっとなったときに、人に迷惑をかけないで自分で解消する方法を少しずつ見つけられるようになったんだ。たとえば単独ライブのときだったら、ライブ前は人がいるところにいないで、ひとりでネタの練習をした。でもじっとしていられないから、ネタをぶつぶつ呟きながら劇場の周りを歩くようにしたんだ。そうしたら気持ちも落ち着いたし、人にも迷惑をかけないで済むようになったよ。  人がいるとわーってなる性格だってわかったから、人に迷惑をかけないようにひとりになる、っていう方法を見つけられた、ってこと。そう考えると、なっつぴーやは自分のことを「ついちょっかいを出してしまう性格」ってもうすでにわかっているから、対策も考えられるはず。それにまだ小学2年生だから焦らなくて大丈夫。よしおが対策を見つけられたのは大人になってからだからね(笑)!  よしおは小学校のころ野球をやっていたんだけど、野球選手は帽子のつばの裏に、言葉を書いている人が多いって知っている? 「絶対勝つ」とか気合の入る言葉をね。あるプロ野球選手は、「前後裁断」なんていう四文字熟語を書いている人もいた。野球って、「俺の球、打たれちゃうかな」、とか「次のバッターこわいな」ってついつい考えちゃうけど、それを考えてもしょうがないから、「とにかく今に集中!」って意味の言葉を帽子に書いて気合を入れていたみたい。  なっつぴーやも、いつも身に着けているものに「落ち着く!」とか、「いったんストップ!」って書いておくのはどうだろう。リストバンドをつけてその裏に書いておくとか、筆箱のなかに「落ち着く!」って紙を書いて入れておくとか。忘れちゃうのは人間の性質だから、「忘れないようにする」ってことよりも「どうやって思い出せるか」ってことを考えてみるのが大切なんじゃないかな。  それから、「6秒ルール」って知っているかな? 怒ったりしたとき、6秒待つと気持ちが落ち着くっていわれているんだ。「ちょっかい出したい!」って思ったら、自分で「ストップ!」って言って、6秒じっとしてみるのもおすすめだよ。 ■自分の性格を理解してもらう  そもそも性格を直すことって、すごく難しい。年齢とともに落ち着いたり変わったりすることはあるけど、それには時間がとてもかかる。それに、どうしても直らない性格もあるんだ。よしおの落ち着かない性格は時間が解決してくれたけど、いまだに直らないところもあるよ。  たとえば、何回も同じ話をしちゃうこと。結婚したてのころは奥さんによく「え、その話3回目なんだけど!」とか、しょっちゅう怒られていた。だけど、話したことを全部覚えているのは難しくて、直そうと思っても直らなかった。だから奥さんに真剣に話したんだ。「何度も同じ話をしちゃってごめん。忘れっぽい性格なんだ。だから、忘れたことに対して強く言われるといやな気持ちになっちゃう」って。そうしたら、奥さんは「そういう性格なんだ」って受け入れてくれて、同じ話をしても、ソフトな対応をしてくれるようになったよ。  あと、よしおはお酒を飲むとすごーくトイレが近くなるんだけど、トイレにばかり行くものだから、一緒にいた友達に「トイレで携帯電話でもいじってるの?」って怪しまれてしまったことがあってね。だからその時も「お酒を飲むと、やたらトイレに行きたくなっちゃう体質なんだ」ってことを話したよ。先輩との飲み会でも、お酒飲む前に「お酒を飲むと、トイレ近くなるんですよねー」って伝えるようにした。そうしたら相手も理解してくれるし、自分の気持ちも楽になったよ。  先生やお母さんには「わかっているけど、どうしてもちょっかい出すのをやめられないんだ。自分でもどうしたらいいのかわからない」って相談したことはあるかな? 怒られてばかりいると、なかなかそういうことも話しにくくなると思う。だけど、ひとりで抱え込んでいてもなかなか解決しないし、抱えれば抱えるほど自分のなかにつらい気持ちがたまってしまう。  よしおにメールを送ってくれたように、先生やお母さんにも、「どうしてもちょっかいを出してしまうこと、それがなかなかやめられないこと、先生やお母さんに怒られてばかりなのも悲しいこと」を話してみるのはどうだろう? そうしたら、怒るだけじゃなくて、一緒に解決方法を考えてくれたりもするかも。  真剣に相談したらたいていの人は「力になりたいな」って思ってくれるはず。よしおが奥さんに自分の性格について話したように、話してみてほしいな。先生やお母さんが、なっつぴーやの性格を理解して、一緒に解決策を考えてくれますように。 ■人それぞれの骨盤と性格  なっつぴーやから相談をもらって、性格ってなんだろうなあ、って考えてみた。よしおはヨガをやっているんだけど、ヨガのレッスンで自分の骨盤(からだの中心にある骨で、上半身と下半身をつなぐ大事な役割を担っているものだよ)を見る時間があるんだ。骨盤って、みんな同じ形をしていると思う? それがね、形も大きさも、空いている穴の数も、一人ひとり全然違うんだ。  よしおは、性格も骨盤に近いものがあるんじゃないかな、って思ったんだ。生まれつきおとなしい性格だったり、活発な性格だったり……。性格っていうとなかなか目に見えないから「自分だけがこういう性格なのかな……」って不安になることもあるけれど、みんないろんな骨盤を持っているようにいろんな性格を持っているはず。  ヨガでは、それぞれの骨盤に合わせたアプローチをして、最終的にみんな同じポーズができるようにするんだけど、性格にもそれぞれのアプローチ方法があるのかな、って思ったよ。だから、何よりも大事なのは、自分の性格を把握すること。そのうえで、対策を考えていくんだ。なっつぴーやは、もう自分の性格がよくわかっているね。だから、それをどう扱っていくかを考えればいいと思うんだ。  いろんな方法を考えてみたけど、どうだったかな? もうすでに自分の性格をわかっているなっつぴーやなら、これから他の方法を考えることも、先生やお母さんに自分の性格について話すこともできるはず。6年生になっても自分のことがわかっていなかったよしおができたことなんだから! だから、焦らずゆっくり、自分の方法を見つけていってほしいな。  それから、一番大事なこと! 友だちにいやな気持ちをさせてしまったら、心を込めて謝ることは忘れないでね! ……って、僕は思うんだけど、君はどう思うかな? (構成/濱田ももこ) 【質問募集中!】小島よしおさんに答えてほしい悩みや疑問を募集しています。お気軽にお寄せください!https://dot.asahi.com/info/2021100800087.html 

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    尾上松也がブレークしたのはSMAPのおかげ? 「バラエティーには感謝しています」

     2009年に始まった歌舞伎の自主公演「挑む」を、昨年、大好評のうちに完結させた尾上松也さん。歌舞伎のみならず、テレビドラマやバラエティーと多岐にわたって活躍中だが、17年にはディズニーアニメの吹き替え、歌舞伎界初の“プリキュア声優”を務めるなど、じつは声優としても一流だ。「シュレック」などで知られる米アニメーションスタジオ、ドリームワークスの最新作「バッドガイズ」(10月7日公開)では、怪盗チームのリーダー、ミスター・ウルフの声を演じた。その幅広い魅力を支えるものとは? *  *  * ──今回「バッドガイズ」で主役を務めた感想は?  絵を見ているだけでもワクワクするような、エンターテインメント性の高い作品。それを吹き替えさせていただいたわけですから、とにかく楽しかったです。収録もあっという間の時間だった気がしますね。  それと、とても驚いたのは、僕以外の吹き替えメンバーが全員、うまいことうまいこと。例えばチョコレートプラネットの長田庄平さんなんて、声だけ聞いたらぜんぜん違う方になっていましたもん。どこかの人気声優さんが担当したと言われても、誰も疑わないと思いますね。 ──まさに「この声優さん誰?」の筆頭が、松也さんだという声も多くあります。演じる上で俳優と声優は、やはり別のものですか?  ドラマや映画のような芝居をしてしまうと、吹き替えでは浮くなというのは、何度も吹き替えをさせていただいて感じたところです。  ドリームワークスのアニメーション作品には、とくにそれが言えると思います。キャラクターが大きなアクションをしていることも多く、吹き替えがボソボソ言っていると、作品の流れに乗っていけない。  映像か舞台かと言ったら、吹き替えには、舞台に近いような大きな芝居も必要なのではないでしょうか。そんな大きな芝居もできるような表現の幅は、吹き替えをするときに意識していることのひとつです。  何よりアニメの声優をするときに一番の理想としているのは、尾上松也という存在が見えなくなること。例えば今回なら、ウルフの声から僕の影が一切消えているのがいいなと。そんな没入感を感じていただくことが、声優として目指すことのひとつですね。 ──演じた松也さんご自身も、かなり作品に入り込まれたのでしょうか?  とくにアニメの吹き替えでは、声を演じる僕自身にも没入感があって。「バッドガイズ」でも画面の中のウルフが感じていることが、僕にも伝わってくるような感覚がありました。例えば毛が逆立つ感じとか、身震いする感じとかですよね。  さらに吹き替えをしている僕も、その作品世界の住人になって、未知の体験ができたりする。もちろん現場で撮影する役者の仕事にもたくさんの魅力がありますが、吹き替えというのもまた、特別な魅力がある仕事だなと思っています。 ──この作品には、一見ワルながら、愛すべきさまざまなキャラクターが出てきます。ご自身に一番近いキャラクターは?  うーん……やはり僕が演じたウルフですかねえ。まず、これは似ているというより、見習いたいところなのですが、彼はみんなを引っ張っていくリーダーなのに、ものすごく素直でストレート。だからこそ見る人に共感してもらえる。そんなやりがいのある役でした。  実は自分もこう、人を巻き込んで何かをしようっていうところはあるんですよ。野心みたいなものを持って、常に行動しているというか……そういうところはもしかしたらウルフ似かもしれない。ただ僕の場合は、これを「やろうぜ!」って立ち上げたら、あとは「やってくれ」っていうほうで(笑)。持久力ではウルフに及びませんね。  とにかく文字どおり「大人も子どもも楽しめる」作品。お子さんは、ビジュアルと世界観、あとテンポの良さというところでとても楽しいと思いますし、大人は、プラス「それ、わかるよな」とか、少し深い部分でも楽しんでいただけるはずです。 ──一方で、バラエティーでもご活躍ですね。とうとう「松也Pの○○○」(BS松竹東急)という冠番組も始まりました。  よく知ってますね(笑)。いやいや、僕がP(プロデューサー)になって、ただただ好きなことをやるという、ほんとにそれだけの番組なんですけどね(笑)。実際に僕が気になること……例えばキャンドルとか、富士急ハイランドとか、ひとつのテーマを掘り下げるドキュメンタリーバラエティーで、僕が企画を考えて企画会議に参加するなど、本当にゼロから作っています。  まあ、ここ何年かは、舞台やドラマなど、自分が企画したり、制作に入ったりする作品がだんだん増えていって……つまり自分が何をやりたいかっていうことを表現するというか。  これって、ワンランク上の挑戦なので大変ですけど、それだけにやりがいも大きい。ですので、バラエティー番組でも、自分で作っていいという機会をいただけて、タイミング的にもとても感謝しています。まあ、予算がきびしいのが、Pとしての目下の悩みなんですけどね(笑)。 ──そもそもバラエティー番組に進出するようになったきっかけは?  8年ほど前ですかね。当時は若いこともあって歌舞伎でもぜんぜん名前を知られていませんでしたし、お役もあまりいただけていなかったんです。僕の家は、代々続く歌舞伎俳優の家柄ではないですし。  ところが大抜擢で、中村勘九郎さんと中村七之助さんと3人の主演舞台(コクーン歌舞伎「三人吉三」)を上演させていただけることになりまして、その宣伝で3人で「SMAP×SMAP」のビストロSMAPに出演する機会をいただいたんです。すでにおふたりは有名で、そこに僕だけがよくわからない存在として入っている状態(笑)。ここは目立たなくてはと思いまして……。 ──そして自由なぶっ飛びキャラで暴走して、バラエティー界の新星としてブレークなさった、と。  意外だったのですが、SMAPのみなさんも僕をしっかりイジってくださいまして(笑)。バラエティー番組のお話をたくさんいただけるようになったんです。  そこからですよね。みなさんに僕の存在を知っていただくことができ、歌舞伎のほうでも役がつくようになってきました。おそらくバラエティーがなかったら、いまだに歌舞伎俳優としてもだめかもしれない。ですので、バラエティーには感謝しています。 ──最後に、歌舞伎はどんな存在ですか?  どのお仕事も、すべて俳優の仕事として取り組んでいて、分けているつもりはないんです。ただ、やはり歌舞伎に関しては、僕の役者としての基礎をすべて築いてくれた「ふるさと」のような特別な場所ですよね。  どんな活動も、最終的には、歌舞伎でこんなことをやりたいという目標につながっていくのではないかと思います。そもそも松也という名前は歌舞伎の名前なわけですから。はい、歌舞伎ファーストですよね。 (取材・構成/福光恵)※週刊朝日  2022年10月7日号

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    三遊亭円楽師匠 叶わなかった悲願と最期まで貫いた芸人魂

    「笑点」でおなじみ、「腹黒い人」のキャラで笑わせ、政権批判や時事ネタで共感を呼んだ落語家の三遊亭円楽さんが9月30日、肺がんのため死去した。72歳だった。  円楽さんは東京の下町に生まれ、両国や深川の中学・高校に通い、青山学院大学法学部に進んだ。当時の言葉でいえば生粋のシティーボーイだ。大学時代は折しも70年安保、全共闘運動の最盛期。円楽さんはブント(共産主義者同盟)のメンバーとして赤ヘルをかぶって活動していた。  やがて運動に挫折し、もう一つの居場所だった落語研究会に軸足を移していく。在学中に五代目三遊亭円楽の鞄持ちを経て入門。こんな出自と経歴につきまとう恥じらいと衒(てら)いがないまぜになって、自他ともに認める腹黒キャラをつくり上げたのではないだろうか。  旧名の楽太郎は、大師匠六代目三遊亭円生の命名による。1976年7月に二ツ目昇進。ほぼ1年後に「笑点」レギュラーとなり、若さと男前でたちまちスターになった。ただ、78年の落語協会の分裂騒動で三遊亭派は協会を離れ、寄席出演の機会もなくなった。  それやこれやで、皮肉にもタレント活動ばかりで、まともに落語に精進しているのかと批判されることもあった。だが、高座では緻密で自然体と評される語りで「明烏」「芝浜」「禁酒番屋」などを得意とした。円生は噺の内容はもとより、手にする扇子の上げ下げ、高さや角度にまで、うるさかったと伝えられる。その伝統を引き継ぐ円楽さんだからこそ、落語界の統一と、ファン層を広げることを悲願としてきた。東西の大物落語家も登場する一大イベント「博多・天神落語まつり」のプロデュースは、その成果といえよう。  79年に円生が亡くなり、名跡は途絶えたままだ。円楽さんは、円生の名をつなぐことも悲願としていた。このままでは円生の名は忘れ去られてしまう。「一時的でもいいから、自分が継いで、その後をつないでいきたい」と口にしていた。  最後の高座となった8月の国立演芸場では、病を押して、古典「猫の皿」を熱演した。自身も涙、客席も涙。最期まで芸人魂を失わなかった。(由井りょう子)※週刊朝日  2022年10月14・21日合併号

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    治らないがんになった39歳の写真家と話し、鈴木おさむが感じた何げない「がんばって」のきつさ

     放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、何げなく使う「がんばって」について。 *  *  *  日常生活の中で「がんばって!」という言葉をなにげに使っている人は沢山いるだろう。  一日に日本人が送っているLINEの中で「がんばって」という言葉を送ってる数ってすごいんじゃないかと思ったり。  僕自身はある時から「がんばって」と人に言うのが好きではない。「がんばってる人」に「がんばってね」というのが嫌だったから。なるべく使わないようにしているのだが、それでも時折、「がんばってね」と使ってしまったりする。  幡野広志(はたの・ひろし)さんという素敵な写真家がいます。1983年生まれで現在39歳。奥さんと6歳の息子さんがいる。  この方の書かれた「ラブレター」という本がとんでもなく素晴らしく、一人でも多くの方に読んでほしいと思っている。この本の最初のページに出てくる言葉は「僕は現代の医療では治せないがんになった」。多発性骨髄腫という血液のがんになったそうです。  34歳のときに発病し、このとき医師には「平均して3年の余命」と言われたと。そのあとに書いてある「がーん」。この一行で、幡野さんの人柄がわかる。人生との向き合い方がわかる。  発病したのは息子さんがまだ2歳にもなっていないとき。その状況で、治らないと言われる病気になるということは、近い将来に命の限りを迎えると言われたわけです。  この本には、幡野さんの「それから」と「日常」がつづられている。そして、そこに息子さんの写真が掲載されている。  僕の息子と1歳違い。ここに書かれている日常の発見にとてつもなく共感する。微笑ましく、愛おしく、そしてちょっと痛い。だからこそまた愛おしい。  年を重ねて、毎日、元気に生きていられることが当たり前じゃないと、わかっているつもりだが、この本を読むと、日常の当たり前を抱きしめたくなるのだ。  34歳に発病し、現在、39歳。今は痛みなどは落ち着いているそうだが、幡野さんは、確実に近い将来その日は来ると思って生きているのだろう。  先日、bayfmで自分が担当している番組「シン・ラジオ」に、元NHKプロデユーサー・河瀬大作さんからの紹介で、幡野さんに出演していただいた。  その中で、幡野さんと「がんばって」の言葉について話すときがあった。幡野さんは「がんばって」という言葉をどう思っているのか?  やはり、「つらい」と言っていた。病気になってから「がんばって」と言われると、しんどくなると。  がんばってと言われてしんどい人も多いだろうから、なるべく使わないようにしていたけど、幡野さんの言葉を聞くと、やはり「がんばって」という言葉がつらい人は絶対にいるのだ。何げに言っている言葉って怖いのだ。「おはよー」とか「いただきます」みたいな感じで、なんとなく使ってしまうこともある「がんばって」。  この言葉は時に人を傷つけてしまうこともあるのだと改めて学べたし、何げない言葉こそ気をつけなきゃいけないんだなと思う。言葉は武器。人を守ることもできるが傷つけることもある。 ■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店で販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)が発売中。

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    他球団が欲しがる「巨人の中堅2人」 トレードなしで起用も増えず「もったいない」の声も

     現在セ・リーグでBクラスに沈んでいる巨人。新型コロナウイルスの集団感染で多くの選手が離脱して苦しい状況ではあるが、ここからの巻き返しに注目が集まる。そんな中、石川慎吾、重信慎之介と能力的には高く評価されているものの、なかなか出場機会が回ってこない中堅2人が存在する。  選手層の厚いチームという事情もあり、常時出場は難しいかもしれない。加えて、若手への切り替えを図る球団方針もある。出場機会が減ってしまうのは理解できるが、あまりにチャンスが少ない。他球団へ行けばレギュラー争いに加わることのできる実力があると言われているだけに「もったいない」の声も多い。  開幕から調子に乗り切れない巨人はペナント争いで首位から13ゲーム差の5位。先述のようにオールスター前にはコロナ禍の直撃を受け、7月19日からの4日間で首脳陣、選手、スタッフを含め計73人が陽性判定を受けた。  優勝争いは非常に厳しい状況ではあるが、今はチームが若返りの時期でもあり、有望株たちの奮起も期待されている。野手では坂本勇人の後継者と言われる中山礼都、レギュラー定着が期待される増田陸に加え、秋広優人、菊田拡和など有望株は少なくない。一方、投手でも大卒ルーキーの大勢がストッパーとして活躍し、赤星優志、山崎伊織、堀田賢慎など開花の兆しを開幕当初に見せていた将来のエース候補は多い。 「良い素材が多いのは間違いないが中心選手になるには数年かかる。若手の積極起用が苦戦にもつながっている部分もある。編成面も任される原辰徳監督は数年先を考えているのでしょう。オフの積極補強がなかったのを見ても、球団方針として決定事項なのかもしれない」(在京球団編成担当) 「(若手が期待通り成長すれば)将来的に黄金時代が来るかもしれない。しかし巨人は常勝を宿命づけられている球団。ファン、スポンサーなどが(勝てない)現状に対して不満を持っている場合も多い。中堅クラスの実力者をなぜ使わないのかという声も聞こえる。石川、重信はその最たる例です」(大手広告代理店関係者)  数年後を見据えヤングジャイアンツを育成するのはごもっとも。しかし巨人のファン、そしてスポンサーなどは「常に勝利」を求めている。結果を出せる可能性がある実力者を起用すべきとの意見もある。  そして、二軍などで結果を出しながらも「起用されない選手」の筆頭が石川だ。  石川は16年オフのトレードで日本ハムから巨人に移籍。加入1年目となった17年には99試合に出場して、57安打、5本塁打、20打点と存在感を見せたが、それ以降はなかなか出場機会を増やせないでいる。だが、先述のようにファームでは常に結果を残し続けており、一軍で使われないのが不思議な気もするほどだ。 「打撃はレギュラークラス。特に飛距離はトップクラスで逆方向の打球も簡単にスタンドインさせる。東京ドーム外野席上部看板にもバンバン当てています。外野守備も決して悪くなく標準以上でもある。出番は少ないですが確実に仕事をこなせるメンタルの強さもある」(巨人担当記者)  石川は今季もこれまで一軍の出場は13試合と少ないが、打率.353(17打数6安打)とハイアベレージをキープしている。新型コロナウイルスの影響で選手も大量に離脱しており、ここからチームの救世主的な存在となれるのか。  また、石川と同じ外野手の重信も実力がありながら出場機会に恵まれない選手の一人だ。早稲田大時代から安打製造機として知られ、15年のドラフト2位で巨人に入団。即戦力として期待されながらも、なかなかレギュラー奪取には至らず中堅の域に差し掛かっている。 「早稲田の先輩であるヤクルトの青木宣親のような活躍を期待されたが伸び悩んでいる。大学時代の活躍から、将来的にはメジャー挑戦もという声も上がったほどの選手だった。試合に出れば確実に結果を残すが、パフォーマンスが安定しないところもある。チーム編成上の影響もありレギュラー奪取とまではいかない状況が長く続いている」(巨人担当記者)  今のところ巨人ではともに一軍当落線上の選手にはなってしまってはいるが、他球団からの評価も高い。7月31日のトレード期限までに動きはなかったが、「試合に出さないのであれば欲しい」という声も多くあるようだ。 「石川は代打だけでは惜しい。スタメンで4打席立てばシーズン25本塁打は期待できる。重信は実戦タイプで伸び代もまだ感じる。試合に出続け経験を積めば大学時代のような存在感を示すことができる可能性もある」(在京球団編成担当)  これからのチームを担う若い選手を育てなければいけないチーム事情もある。かつての坂本や岡本和真などは若手時代から我慢して使い続けたことで、現在のような確固たる地位を築くことができた。だが、常勝チームがゆえに勝つことも求められる。そうなった場合、やはり石川、重信のような選手も積極的に起用しなければいけないような気もするが……。 「全ては原監督の考え方次第。これだけ苦戦をしても若手中心の起用法に変化はない。今後も同様ならば石川と重信の立ち位置も変わらないので、トレードの可能性も出てくる。2選手との交換でポイントを絞って戦力補強をしつつ若手育成をするのが現実的ではないか」(巨人担当記者)  巨人は今、ピンチを迎えている。球団史上2度目となるシーズン最下位の可能性もでてきた。若手へのシフトも重要だが、目先の1勝も大きな意味を持つ状況になっている。新型コロナウイルスの影響で離脱した選手が多い中で、石川、重信の起用は増えるのか。また、シーズンオフのトレードなど、名門チームでくすぶる中堅2人の今後はどうなっていくのだろうか。

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    「あっという間の上映終了」に原作者がモノ申す?映画「はい、泳げません」はなぜヒットしなかったのか

     このたび拙著『はい、泳げません』(新潮文庫)が映画化された。同書は水恐怖症の私が水泳教室に通い、鬼のように厳しいコーチから指導を受け、「なぜ泳がなければいけないのか?」「泳ぐとは何か?」などと疑問を抱きながら、泳ぎを習得していくノンフィクション。全編水中の様子を綴った実録であり、ストーリーとしては「泳げない私が泳げるようになった」という展開しかないのだが、渡辺謙作監督はこれを「記憶と再生の物語」に昇華させたのである。  聞けば、文庫本のあとがき(高橋桂コーチ、同じレッスンを受けた小澤征良さんとの鼎談)にある私の「泳げない人間というのは、愛に対する不安があるんですよ」というたった2行の発言をふくらませたらしい。泳げない人は愛する人が溺れている時に飛び込んで助けに行けない。つまりは人を愛せないのではないかと漠然とした不安を抱えているという発言なのだが、それを水難事故で息子を失ったトラウマに苛まれて記憶喪失に陥った主人公が水泳コーチに導かれて再生するというストーリーにしたそうで、私は監督のチャレンジ精神に心を打たれた。そして長谷川博己さん、綾瀬はるかさんという超豪華な共演。さらに歌唱力抜群のLittle Glee Monster(リトル グリー モンスター)が主題歌「生きなくちゃ」を熱唱し、試写室で鑑賞した私は不覚にも落涙した。  これは間違いなく感動作。大ヒットして原作者の私にも取材が殺到するにちがいない。カンヌ映画祭も夢ではなく、これは忙しくなるぞ、などと身構えていたのだが、全国封切りからわずか数週間で上映は打ち切られていた。特に取材の依頼もなく、気がつくと上映終了。あっという間に終わってしまったのだ。  なんで?  単に観客が不入りだったことが原因のようなのだが、それにしても判断が早すぎやしないだろうか。そういえば当初からSNS上では「観客少な」「2人しかいない」「大コケ」などと書き込まれていた。感想を読んでみると「コメディなのかシリアスドラマなのかよくわからない」「見どころはどこ?」「何が言いたいのかよくわからない」「メッセージを受け取りにくい」「共感できるポイントがない、お客さんもいないし」などと書かれており、もしかするとこれはノンジャンルで反応に困る映画なのかもしれない。  出演した綾瀬はるかさんでさえ「あんまり観たことのない作品で、じわーっと後からあーっと思い出すような映画」(公開直前イベント)と吐露していたくらいで、ストーリーではなく映像体験自体が「記憶と再生の物語」になっており、すぐさまコメントできない。昨今はコメントできないということを自分ではなく映画のせいにする傾向があり、早々に「誰も観ていない、つまらない映画」として片付けられてしまったようなのである。  ちょっと、待ってください。  私はそう訴えたい。原作者として言わせていただくと、この映画は観客にこう問いかけている。  あなたは泳げますか?  タイトルの「はい、泳げません」とはその回答例であって、みなさんはいかがでしょうか、と問うているのではないだろうか。  陸上生活を送る私たちにとって「泳げる」「泳げない」はさしたる問題ではないように思われがちだが、実は皮膚を一枚めくると、私たちの体内には水中での行動様式が潜んでいる。例えば、泳げない人は何かにしがみつく。私などもいきなり深いプールに入ると足が着かなくてパニックに陥り、コースロープなどにしがみつく。藁をもつかむ勢いなのだ。これは深層心理のようなもので、泳げない人はいつも何かにしがみつきたくて堪らないのである。  この映画の主人公、泳げない小鳥遊(たかなし)雄司(長谷川博己)も常に何かにしがみついている。いや、しがみつきたいのだ。バタバタした演技が目立つかもしれないが、これはしがみつきの表現なのである。一方、元妻の美弥子(麻生久美子)は「泳げる人」である。スイスイと猛スピードで泳げるので夫の雄司を見捨てて先に進んでしまう。基本的に泳げない人はしがみつくので離婚しないのだが、しがみつこうとしても美弥子のスピードに追いつけず、ふたりは離婚することになったのである。その点、新しい恋人の水野奈美恵(阿部純子)は「泳がない人」。泳げるか泳げないかは別として泳がない。浮き輪のような人で、それゆえ雄司は安心してしがみつけるというわけだ。  映画の登場人物たちはこうして水中のキャラクターを軸に描かれており、中でも私が刮目(かつもく)したのは薄原静香コーチ(綾瀬はるか)だった。その佇まいは実際に私を指導してくれた高橋桂コーチが憑依(ひょうい)したかのようで、指導法も再現されていた。本人はもちろん泳げる人だが、自分が泳ぐことより「泳げる」を人々に与えることによろこびを感じる。泳ぐコツは「泳ごうとしないこと」。泳ごうとすると体中に力が入って泳げなくなる。大切なのは力を抜いて伸びる。伸びるというより「伸びている」と確認する。それだけで大丈夫。泳ごうとしなければ泳げる。なぜならあなたはもう泳いでいるからです、と高橋桂コーチは私を導いてくれた。  生きようとしなくても生きちゃってるという境地なのだ。  綾瀬はるかさんの顔はまるで溺れる衆生を救う弥勒菩薩のようだった。そして最も印象深いのは夜のプールに仰向けになって浮かぶ姿。うっすらと涙を流しているようで、思わずもらい泣きしそうになる。この涙はアンデルセンの「人魚姫」が最後に流した涙ではないだろうか。海で暮らしていた人魚は陸に上がって初めて涙を流す。その初めての涙がお別れの涙だったという切ない物語。人を解き放すばかりで自分を解き放せない悲しみ。薄原静香コーチは人魚姫のように溺れる雄司を助けたし、陸上を歩くと激しい痛みに襲われる。「水泳はすごいんです」と叫んだ時の透き通る声は、魔法使いに奪われた人魚姫の美声を聞くようで私は打ちふるえた。渡辺謙作監督は意図していないと思うが、彼女の美しさは遙か北欧の海にも通じているようで、それゆえ私はカンヌを確信した次第なのである。 ちなみに映画「はい、泳げません」はミニシアターなどで上映中です。水中に入るつもりでじっくりご鑑賞いただければと切にお願い申し上げます。(ノンフィクション作家 高橋秀実/生活・文化編集部)

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    巨人が“浅野以外”で欲しいのは? ドラフト補強ポイント【中日・広島・巨人】

     プロ野球のドラフト会議まであと約3週間となり、各球団の動向や候補選手についての報道も多くなる時期となってきた。今年は本命らしい本命は不在という印象で、近年多かった事前の1位指名公表も少なくなることが予想されるが、各球団どんな選手を狙うべきなのか。補強ポイントと、その選手がチームにマッチするかという点から探ってみたいと思う。今回は現在セ・リーグでBクラスの巨人、広島、中日の3球団だ。 *  *  * 【中日】  立浪和義新監督が就任し、期待が高かった中日だが最下位が決定的となっており、今年も苦しいシーズンとなった。昨年のドラフトでは長打力不足を解消するためにブライト健太、鵜飼航丞の強打者タイプの大学生外野手2人を指名したが、ともに確実性に大きな課題を残しており、一軍の戦力となるにはまだ時間がかかりそうな印象だ。若手野手では岡林勇希がブレイクし、土田龍空も成長を見せているが、根尾昂が投手に転向となり、石川昂弥も故障続きとなると、やはり今年も野手中心の指名と考えるのが妥当ではないだろうか。  そこで筆頭候補として推したいのが内藤鵬(日本航空石川・三塁手)だ。西武のところでも紹介したが、その長打力は高校生ではナンバーワンであり、今年の候補全体を見ても長距離砲としての素質の高さはトップという印象を受ける。仮に内藤を1位で指名できたとしても、大砲候補はプロで苦しむケースが多いだけに、もう1人くらいは高校生の強打者タイプを狙いたい。  石川、ブライト、鵜飼も右打ちだということを考えると左打者が狙い目になりそうだが、2位で残っていれば狙いたいのが西村瑠伊斗(京都外大西・外野手)だ。体はそれほど大きくないが、ミート力は高校球界でも1、2を争う存在で、技術で遠くに飛ばすことができる。足と肩も高水準で、広い外野を任せられるポテンシャルも備えている。下位で狙えそうな選手では田中多聞(呉港)も面白い。少し確実性には課題が残るが、大型でパワフルなスイングは高校生離れしたものがある。肩の強さがあるのも魅力だ。  投手では高橋宏斗を筆頭に若手に楽しみな選手は多いが、主力はベテランも多いだけにこちらも柱となれる人材は必要だ。2位で西村が残っていなければ、その枠でスケールのある投手に切り替えるのも一つの手だろう。候補としては先発タイプなら青山美夏人(亜細亜大)、リリーフタイプなら橋本達弥(慶応大)が面白い。青山は長身と長いリーチでボールに角度があり、力を入れた時のストレートの勢いは目を見張るものがある。また未完成な部分も目立つが、スケールでは大学生投手でトップクラスだ。橋本は東京六大学を代表する抑え投手。150キロに迫るストレートにフォーク、カットボールと決め球を複数備えている。ともに完全な即戦力という感じではないが、2年目から一軍の戦力になれるだけの潜在能力は十分にありそうだ。 【広島】  5位の広島は森下暢仁、栗林良吏、森浦大輔など即戦力を期待して獲得した投手がしっかり戦力になっている印象が強い。一方で野手は坂倉将吾、小園海斗の成長はあるものの、鈴木誠也の抜けた穴は大きく、昨年社会人の右打者を獲得はしているが、やはり強打者タイプは必要になるだろう。  高校生であれば内藤鵬(日本航空石川・三塁手)ももちろん候補だが、脚力のある選手を重視するチームであることを考えると少しマッチしないようにも感じる。そこで候補として推したいのが森下翔太(中央大・外野手)だ。東海大相模時代から評判の強打者で、1年春には早くも大学日本代表に選ばれている。その後は少し苦しんだ時期が長かったが、今年の春は打率3割をクリアし、課題の確実性も向上してきた。全身を使ったフルスイングで広角に長打を放つことができ、脚力と肩の強さも備えている。また今年は死球による骨折から早期に復帰するなど体の強さを見せているところも広島向きの選手と言えそうだ。  前述した通り、投手陣は確実に補強されてきているが、高校卒の若手となると遠藤淳志と玉村昇吾しか一軍の戦力になっておらず、二軍まで見ても2年目の小林樹斗くらいしか有望株は見当たらない。そうなると高校生のスケールのある投手を狙いたいところだが、候補としては斉藤優汰(苫小牧中央)、門別啓人(東海大札幌)などが挙げられる。斉藤はたくましい体格から投げ込むストレートが武器で、スピードはコンスタントに145キロを超える。まだ粗削りではあるが、今年の高校生投手ではスケールの大きさはナンバーワンと言えるだろう。  門別はオリックスのところでも紹介したが、スピードだけでなく総合力も高いサウスポー。将来の先発候補として期待できるだろう。大学生でも将来性とスケールを重視するなら仲地礼亜(沖縄大)が面白い。高校時代は無名ではあったが、大学で急成長した本格派右腕で、昨年の大学選手権でも好投している。森下に次ぐエース候補として狙いたい存在だ。 【巨人】  4位に沈む巨人は数字的には投手成績が課題のようにも見えるが、今年プロ初勝利をマークした投手が8人出ていることからも分かるように、今後の成長が楽しみな投手は少なくない。一方で野手は坂本勇人、丸佳浩、中田翔など中心選手にはベテランプレイヤーが多く、数年後には大きくメンバーを入れ替える必要があり、若手の有望株は必要不可欠な状況となっている。  そんな中で9月28日には早くも浅野翔吾(高松商・外野手)の1位指名を公言したが、これはチーム状況を考えても非常に理解できる選択と言える。右打ちの外野手で支配下の選手は外国人のウォーカーを含めて2人しかおらず、内野も含めてもパンチ力のある若手は多くない。浅野自身は中距離打者を目指すと話しているが、東京ドームが本拠地であればホームランを量産することも期待できるだろう。  ただ、巨人は抽選に外れ続けており、その時の選択も重要になってくる。過去には野手を外して投手に切り替えたこともあったが、チーム事情を考えるとやはり外しても野手を狙いたい。そこで、指名されず残っていれば推したいのが松尾汐恩(大阪桐蔭・捕手)だ。将来の正捕手候補としても当然魅力的な人材だが、巨人としては坂本の後釜候補として考えたい。地肩の強さとフットワークは抜群で、長打力十分のバッティングも高校生ではトップクラスだ。浅野、松尾ともに指名できないケースでも中日のところでも挙げた西村瑠伊斗(京都外大西・外野手)や、イヒネ・イツア(誉・遊撃手)など高校生のスケール型の選手を狙いたい。  投手は前述したように楽しみな若手が多いが、リリーフの手当てはしておきたい。4位以降で残っていれば検討したいのが小孫竜二(鷺宮製作所)だ。今年で大学卒3年目だが、短いイニングであれば球威で圧倒することができ、課題だった制球力も確実に向上している。リリーフなら早くから戦力となる可能性は高い。大学生であれば才木海翔(大阪経済大)も好調時のストレートは目を見張るものがあるだけに、セットアッパー候補として面白いだろう。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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    ミッツ・マングローブ「テレビデオのある部屋で中森明菜がつぶやいた」

     ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、中森明菜さんについて。 *  *  *  1982年のデビューから今年で40年の中森明菜さん。2017年の年末にディナーショーを開催して以降、約5年にわたり表立った活動をしていない彼女が、先月30日に突如ツイッターアカウントを開設し、近影と見られる写真とメッセージを投稿し話題になっています。  明菜さん、相変わらずの揺さぶり上手です。いわゆるその辺の「かまってちゃん」とは一線を画す、動物的本能に基づく嗅覚で動いている人なのだと思います。それが吉と出る時とそうでもない時がありますが、ファン心理や世間の耳目をこれほどまでに掻き乱し続けるのは、まさにこの人ならではの才能でしょう。  40年、彼女のファンである私もさすがに此度のツイッター開設には動揺しました。「中森明菜ツイッター開設」という事実に思いを馳せれば馳せるほど、理解と整理に苦しむ自分が制御できず、案の定何も知らずにいたマツコ・デラックスへ電話をし、互いに気が鎮まるまで3時間以上を要した次第です。何もこれで明菜さんが再始動をするとか、バカのひとつ覚えのように繰り返されている「紅白出場」とか、そんなものはむしろどうでも良く、何よりも「中森明菜が2022年の文明の中に生きている」ことが最大の衝撃でした。  以前から、明菜さんは「携帯は持たない」「現金を持ち歩かない」、だけど「いざという時のためにテレホンカードだけは持っている」と公言するぐらい、2000年代以降のデジタル化から取り残された人というのが私の中のイメージです。そしてそれは私にとって「中森明菜の特異性」を実感するための大きな手がかりでもあります。  一年中ブラインドを閉め切った彼女の部屋には、今もファクシミリ付き電話があり、そこからは何年前に受信したものか分からないほど酸化した、おびただしい長さの感熱紙がうねり出ている。リビングの角には90年代前半に購入したテレビデオが置いてあり、たまに点けるも砂嵐しか映らない。なぜなら彼女はテレビ放送が「地デジ化」したことを知らないから。もちろんパソコンもインターネットもない。しかし昔から写真を撮るのが好きな彼女。どこで手に入れたのか、割と新しめのデジカメだけは持っている。さらに何故かレディー・ガガのアルバムが、パイオニア製の大型コンポとエンゼルフィッシュが泳ぐ水槽の間に、きちんとリリース順に並んでいる。ほとんど外出はしない上、出かける際にはサングラスとマスクと帽子で完全防備をするのが40年近く当たり前となっているため、コロナのことなどもちろん知らない。下手すれば平成が終わったことすらまだ知らない可能性も。一方で、無類のきれい好きな彼女は、毎日夜中になるとフローリングの床を埃ひとつなくなるまで拭き、多い時には週に2回ワックスまでかけるため、家では常に素足である。靴下などはこうものなら、滑って転倒し怪我をする。というかすでに過去に何度か怪我をしている……。  このような人が、前触れもなくツイッターを始めたのです。動揺しないはずがありません。そんな仮想現実に頼らなくても、私の妄想の中の中森明菜は、この世の誰よりも生命力の塊だからです。 ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する※週刊朝日  2022年10月7日号

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    巨人が「もしFAで2人獲るなら狙うべきは誰?」 投打で“最適”な選手を考察した

     2年ぶりのリーグ優勝はおろか、クライマックスシリーズ進出も逃した巨人。2年連続で勝率も5割(68勝72敗)を下回っており、これは長い球団の歴史の中でも2度目のことである。最終的には続投に落ち着いたものの、先日は原辰徳監督が進退伺を提出していたことも明らかとなった。  低迷するチームの状況から噂されているのが、お家芸とも言えるオフの大型補強だ。2016年オフにはフリーエージェント(以下FA)で山口俊、森福允彦、陽岱鋼と3人の選手を獲得しているが、人的補償のリスクや近年移籍する選手が減っていることを考えると、FAで補強するのは多くても2人というのが妥当なところではないだろうか。現時点でFA権の行使を公表している選手はいないものの、仮に巨人が2人獲得するのであればどの選手を狙うべきなのか、現在のチーム状況から考えてみたいと思う。  将来のことを考えると野手に不安が大きいものの、直近に解決したい課題としてはやはり投手陣となる。チーム防御率はリーグ最下位で、特に気になるのがリリーフ陣だ。デラロサは負傷で離脱することが多く、ビエイラは防御率9点台と外国人2人が機能せず、中川皓太も故障などの影響もあり一軍登板なしに終わった。また、抑えでフル回転した大勢の2年目のジンクスも大きな不安要素である。  先発では阪神の西勇輝の動向が注目を集めているが、右の先発タイプは若手にも多いだけに、やはりリリーフを優先したい。そこで筆頭候補として挙げたいのが同じ阪神の岩崎優だ。今年は開幕直後からケラーに代わって抑えを任されて28セーブをマーク。6敗を喫するなど手痛い負けも少なくはなかったが、防御率は1点台とさすがの数字を残した。昨年の東京五輪では侍ジャパンにも選出されるなど、大舞台での経験も申し分ない。現時点で去就は明確にしておらず、宣言となれば他球団との争奪戦は必至と思われるが、巨人としては真っ先に手を挙げたい選手の1人であることは間違いないだろう。  しかし、そんな岩崎よりもある意味狙い目の選手と言えるのが同じ阪神のサウスポー岩貞祐太だ。プロ入り当初は先発を任され、3年目の2016年には10勝もマークしたが、その後は成績が低迷。一昨年の途中から中継ぎに転向となったものの、昨年は46試合の登板で防御率は4点台と安定感に欠ける内容だった。しかし今年はシーズンを通して安定したピッチングを披露。9月21日の広島戦で6失点(自責点4)を喫して最終的には防御率2点台となったが、それまでは1点台とセットアッパーとして十分な成績を残した。  先発時代と比べて明らかにストレートの勢いはアップしており、今年は自己最速となる154キロもマークしている。年齢的には岩崎と同じで来年32歳となるが、ピッチングの若々しさで言えば今年に関しては岩貞の方があるように見えた。そして何よりもお得なのが獲得した時に人的補償を必要としないCランクの選手ということだ。巨人は過去にも人的補償で移籍した選手が他球団で活躍している例も多いだけに、そういう意味でも権利を行使した場合には是が非でも狙いたい選手と言えるだろう。  一方の野手では森友哉(西武)、浅村栄斗(楽天)、近藤健介(日本ハム)と各ポジションに権利を行使すれば目玉となりそうな選手が控えている。もちろん彼らも欲しい選手ではあるが、それ以上に推したい選手として西川龍馬(広島)の名前を挙げたい。今年はコンディション不良もあって97試合の出場に終わり、規定打席には到達できなかったものの、打率と長打率は過去最高となる数字をマーク。  天才と呼ばれるバットコントロールに加えて、年々長打力も増しており、ホームランの出やすい東京ドームが本拠地となれば20本塁打以上も十分に期待できる。外野の守備も安定しており、年齢的にも来年で28歳とまだまだ若いのは大きな魅力だ。同じく広島から加入した丸佳浩の後釜として最適な人材であり、また慣れている同一リーグでの移籍という点は西川にとってプレーしやすいという面もあるだろう。  冒頭で大型補強が巨人のお家芸と述べたが、近年は他球団との競争に敗れるケースも目立ち、また獲得した選手も森福、陽、野上亮磨、梶谷隆幸、井納翔一など活躍することができていない。それを考えても、誰を狙うかは来年以降の巨人にとって非常に重要なことは間違いない。果たして再び巨人がFA戦線の主役となることができるのか。オフの動きに注目したい。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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    THE ALFEEは名曲「メリーアン」で変貌? 「アルフィーは3人の声があればなんでもいい」

     1983年、「メリーアン」の大ヒットで一躍全国区になった、THE ALFEE(以下、アルフィー)。それまでアコースティックグループとしての印象が強かったが、ハードなバンドサウンドが加わったことでロック色の強いグループに変貌したイメージがあった。74年にシングル「夏しぐれ」でデビューして苦節9年。「メリーアン」発表の少し前、グループにいったい何が起きていたのか? なぜ、ハードなサウンドを取り入れていこうと決めたのか? 10 月 5 日に発売となるDouble A Side Single「星空の Ceremony / Circle of Seasons」を機に、アルフィーの分水嶺を探ってみた。 *  *  * 高見沢俊彦:大学時代、みんなで麻雀で集まるときは、レコードを持ち寄ってかけていたんです。僕はロック系が多くて。それぞれのレコードでお互いに影響しあうっていうのはありましたね。僕らの世代ってみんな同じものを聴いていたのである程度知ってはいるんです。「ユーライア・ヒープ」「ディープ・パープル」とか。 坂崎:(アルフィーの)スタートはアコースティックですけど、それはギター1本でできるからで。 高見沢:アコースティックでやっていた時代が長いんですけど、あるときから、ライブでお客さんが総立ちになってステージの前に出てくるようになったんですよ。アコースティックなんだけど、アップテンポの曲になると総立ちになるので、それに対応する曲を作ってみようかなという発想から、ハードなアルフィーを入れてみようと。 桜井賢:別にここからハードロックを入れていこうとか……。 高見沢:決めてないよな。 坂崎幸之助:いつの間にか、ですね。 桜井:ライブハウスで演奏しているときはドラムを入れたりエレキギターを弾いたりしていたので、サウンドがハードになっていくことに特別な意識はなかったですね。 高見沢:ライブを重ねるごとにサウンドの幅を広げたいというのはありました。ロックの要素を取り入れることで緩急のあるライブができるなと。 桜井:ただひとつ言えることは、だんだんハードになってくる兆候として、相当、(高見沢に)ハードなものを聴かされました。長い時間をかけて。あれは洗脳?(笑) 坂崎:マインドコントロール(笑)。 桜井:けっして無理にではなく、日々(高見沢が)聴かせるんですよ。だんだん知らないうちに踊らされている自分がいて。完全にハマったなと思った頃にはヘビーメタルのような歌を歌わされて(笑)。衣装まで、そっち(ハードロック系)になって。「メリーアン」から「星空のディスタンス」、次の「STARSHIP‐光を求めて‐」あたりまで。全部、高見沢の影響なんですけど。 高見沢:ジューダス・プリーストとか?(笑) 桜井:音楽番組であんな格好をしたのは俺だけですよね。テレビに出てもいろいろ言われましたから。やっと認めてもらえたのは(ヘビーメタルバンドの)「聖飢魔II」が出てきてからですよ。それまでは寂しかったですね。 ――「メリーアン」発売の1年前。1982年のアルフィーは、北海道から福岡まで大規模な全国ツアーを開催。3月30日から4月1日までの3日間は久保講堂(東京)でライブをおこなった。それぞれが好きなことを披露するコーナーが設けられ、初日は高見沢dayだった。 坂崎 「レッド・ツェッペリン」をやりましたね。 高見沢 「天国への階段」「Rockn’ Roll」「Black Dog」「移民の歌」とか。 坂崎 その日のお客さんは若干引いていた(笑)。 高見沢 初めて聴いた音だっただろうからなぁ。 ――ハードなサウンドがアルフィーの音楽の一部であることをファンには提示していた。 坂崎 だから、僕らにとってハードロックに移行することに対しては、そんなにみなさんが思うほどでは……。 高見沢 方向転換ってほどではないですね。 ――アルフィーはこの年の8月、初の野外イベントとなる所沢航空記念公園でライブをおこない5千人の観客を集めた。着実に動員を増やしていたアルフィーの人気は右肩上がりで、あとはシングルヒットが出れば大ブレイク間違いなしという状態だった。勢いは加速する。この年、アルフィーは初の日本武道館公演を行うことを発表した。 坂崎 バンドのサウンドが少しずつハードになってバンド自体のスケールも大きくなってきて、いよいよ日本武道館公演と。83年3月にシングル「暁のパラダイス・ロード」を出して、大ヒットさせて8月に武道館、という予定だったんだけど。大ヒットしなかった(笑) 高見沢 予定通りにはいかないよね。ライブでの勢いはありました。なぜ、観客が熱狂するのかはわからなかったけど。 ──初の日本武道館公演を目前に控えた1983年6月。アルフィーは16枚目となるシングル「メリーアン」をリリースする。「アルバム用に作られた曲」(高見沢)だったが、レコード会社の担当ディレクターがシングルに選んだ。 桜井:ヒットするとは思わなかった。 高見沢:思わない、思わない。思わないよ。 坂崎:6月に発売して「ザ・ベストテン」(TBS系)などに出始めたのが9月の頭ですね。ヒットするまで時間がかかったんです。 桜井 ベストテン番組って、出たくっても出られない。嬉しいことに応援してくれる人がいるから、出ないってわけにもいかないけど、ツアーがあるからスタジオに行けずに、コンサート会場からの中継が多かったんですよね。 坂崎 ベストテンって、トータルの評価ですから。 桜井 売り上げだけじゃなくてね。 坂崎 レコードは売り上げより、リクエストが多かったんですよ(笑)。出てくれっていう。それはやっぱり出ないわけにはいかないし。 桜井:武道館公演が終わったあとにヒットしたから「メリーアン」を知らない人たちが武道館のチケットを持っていて、「メリーアン」で知った人たちはもう武道館に入れなかった。 ──初の武道館公演には、古くからのアルフィーファンも度肝を抜かれたことだろう。ステージにはマーシャルアンプのキャビネットが高く積まれ、グループ初となるプロモーションビデオが来場客に配布された。その大事な一曲となったのが「ジェネレーション・ダイナマイト」である。同年9月発売の7thアルバム「ALFEE’S LAW」のオープニング曲を飾る超絶ヘビーなメタルナンバーだ。 高見沢:この曲をアルバムの1曲目にもってくるかどうかが分岐点ですよね。今までのイメージを払拭するようなものにしようということで。レコード会社と侃侃諤諤ありましたね。 坂崎:アルバムの1曲目はアルバムの色を決定づけますからね。プロモーションビデオもハードロックでした。 桜井:炎が燃え上がる(笑)。 坂崎:僕らは楽しんで面白がってやっていましたよ。これはフォークグループじゃできないでしょう(笑)。 桜井:できないね。 坂崎:だからフォークグループじゃないんです。メロディー、詞、ハーモニーなど、根底にあるものはアコースティックギター一本でもハードロックでも一緒です。 桜井:アコースティックだ、ロックだ、っていうのは日本くらいのものなんですよ。ハードロックバンドでもバラードを歌うし。 坂崎:むしろ向こう(洋楽)のハードロックバンドはアコースティックな曲が多い。 桜井:多いね。 高見沢 そうだよな。「ミスタービッグ」も。 坂崎 「エクストリーム」も。だからそこはあんまり……。 高見沢 そう、関係ない。 坂崎 高見沢が生ギターにエフェクターを繋いでいたら、編曲家の井上鑑さんが「だったらエレキギター弾けばいいじゃん」って。 高見沢 あ、そうですよねって(笑)。 ──ハードロックを取り入れた「メリーアン」にも、間奏は坂崎のアコースティックギターによるソロが入り、それから高見沢の歪んだエレキギターのソロが続く。その理由は。 高見沢:坂崎のギターがアコギだから(笑)。 桜井:3人しかいないんですから! 坂崎:自然に(笑)。 高見沢:あとプログレが好きだから。プログレには必ずアコギが入っていますから。「イエス」とか。そういう部分を残したい。それがアルフィーサウンドのひとつの要なのかもしれない。原点でしょう。 桜井:そうだよね。 高見沢:桜井たちが高校のときに(グループを)作って「サイモン&ガーファンクル」で優勝していますから。そこはね、やっぱり守るわけじゃないけど原点っていうのはよくわかっていますね。アコギの音が好きで優先する。そこがほかのロックバンドと違うのかな。 坂崎:アルフィーはアイドルでもなく歌謡曲でもなくロックでもない。アルフィーって何だ?って、自分たちでもそういう感じですから。(マスコミの)みなさん、困ってらっしゃいますね。「3人組バンド」とか、「3人トリオ」とか(笑)。「ロックバンド」って書かれることもありますけど。 高見沢:アルフィーの魅力は3人が歌える。それによって3声のコーラスができる。これがあれば、フォーク、ポップス、ハードロックでもなんでもいいんです。3人の声があればアルフィーなので。 ──「アルフィーは○○バンドです」とつけるなら? 高見沢:アルフィーはアルフィー。じゃない? ──10月5日、71枚目となるシングル「星空のCeremony/Circle of Seasons」を発売する。 高見沢:ここのところ、バラードやミディアムテンポの曲が多かったので、ちょっとハードなものを出してみようかなと。「星空のディスタンス」のアンサーソングじゃないけど、遠距離恋愛のつらさを、星を使って意図的に入れました。コロナの影響もありますね。会えないっていうことがありますからね、今の時代。 桜井:今回は両A面で。 坂崎:もうA面、B面ってないけど(笑)。 桜井:両方とも自信作です。高見沢節がいっぱい入っていますので、なじみやすいと思います。 坂崎:まだアルフィーに出会っていない方も、ぜひこれを聴いて、ライブに来ていただければと思います。 (取材・構成/谷口由記)※週刊朝日  2022年10月7日号に大幅加筆

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    【前編】22歳元女性自衛官が実名・顔出しで自衛隊内での「性被害」を告発 テント内で男性隊員に囲まれて受けた屈辱的な行為とは

     元女性自衛官が実名・顔出しで、訓練中に受けた性被害をYouTubeで告白したことが話題を呼んでいる。五ノ井里奈さん(22)は、陸上自衛隊に所属していた2021年の6月~8月、複数の上官から集団でセクハラを受けたという。上長に被害を訴えても取り合ってもらえず、自衛隊内の捜査機関に被害届を出しても、検察からは不起訴とされた。現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。五ノ井さんは、AERA dot.の単独インタビューに応じ、「日常的に起きているセクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、自身の受けた体験を語った。 *  *  * 五ノ井さんが陸上自衛隊に入隊したのは、2020年4月。小学生の頃から女性自衛官に憧れ、20歳のときに自衛隊の門をたたいた。教育期間は順調にこなし、その時までは、思い描いていた自衛官の姿に誇りとやりがいを持っていた。  だが、その後に配属される中隊名が発表されたときから、風向きが変わった。女性の先輩隊員から、こんな忠告を受けたのだ。 「あそこの中隊はセクハラとパワハラがひどいから気をつけろ」  五ノ井さんが配属された東北方面の中隊は、隊員58人の中で女性は5人。1人は育休中だったので、実質的に女性隊員は4人しかいなかった。同部屋の女性隊員からも「セクハラは覚悟して」と言われたので警戒はしていたものの、すぐにそれが現実のものとなった。 「2020年秋ごろ、勤務中に、男性隊員が『柔道しようぜ!』と言いながら技をかけてくるのですが、腰をつかまれて“バック”のような体制にされて腰を振ってくるんです。それを女性隊員が目撃していました。廊下を歩いていると、急に抱きつかれることも日常的にありました」(五ノ井さん)  部屋に戻ると、女性隊員同士でこうした行為を報告しあった。だが女性隊員は圧倒的少数。自分の身を守るだけで精いっぱいの場合もある。  2021年6月24日。山に入って訓練をしていた時、新人の五ノ井さんは夕食や酒のつまみを作る役割を任されていたので、天幕で料理を作っていた。天幕とは2~3人用のテントのことで、山での訓練では寝床として使用されていた。天幕で酒盛りをし、定員より多い男性隊員が入れ代わり立ち代わり入ってきて、多いときには5、6人くらいの隊員がぎゅうぎゅうになって座っていた。料理を作るためにいた五ノ井さんはその輪の中に入れられ、胸をもまれ、キスをされ、男性隊員の陰部を下着越しに触らせられた。  逃げられないと思った五ノ井さんは、別の天幕にいる女性隊員にLINEで「はやく来てください」と助けを求めた。女性隊員からは「オオカミなってる??w」と返事がきた。「オオカミ」とは、男性がお酒を飲んで暴走し、理性をコントロールできない状態のこと。「はい」と返せば、女性隊員は助けに来ないと思い、五ノ井さんは「なってません とりあえず早く来てください」と再度助けを求めた。だが、その女性隊員は「今来たらやばい」という別のLINEも受け取っていたことから、結局、五ノ井さんのいる天幕には来なかった。女性隊員はその直後に退職した。  状況としては“見捨てられた”ようなものだが、五ノ井さんはこの女性隊員の気持ちもわかると話す。 「女性隊員が自分の身を守るためには、来ないのが正解なんです。夜遅い時間に男性隊員のストレス発散に使われて、自分だって危ない目にあう可能性があるんですから、行きたくない気持ちにもなりますよ」(同)  五ノ井さんからLINEを受け取った元女性隊員は当時の状況をこう証言する。 「LINEを受け取った前日に、私も同じ天幕で宴会に参加して、同じようなセクハラを受けていました。その時は、男性隊員から膝に乗って接待しろとか、頬にキスしろと強要されました。ある男性隊員から次の日は『覚悟しとけ』と言われ、もう何をされるかわからないので、五ノ井さんに助けを求められた時に行くことができませんでした。止めに行きたい気持ちはあったのですが、止めに入ったら(次は)自分に来るので、怖くて助けられませんでした」  元女性隊員自身も「ほぼ毎日抱きしめられる」などのセクハラを受けており、五ノ井さんが日常的に被害にあっている場面も目撃していたという。元女性隊員によると、この部隊は2018年から女性隊員が入るようになり、その時から、「セクハラがヤバイ」として悪評が立っていた。セクハラをしているグループの中心は、20代後半の男性隊員数名で、他の隊員は上下関係から、逆らうことができず、ただ見ているだけだったという。  だが、この日のセクハラ事件は、中隊でも問題となった。事件を目撃していた誰かが、中隊長に報告したからだ。すぐに「中隊長に告げ口したのは誰か」と、犯人捜しが始まり、被害者である五ノ井さんが疑われた。加害者からは、「セクハラじゃなくて、コミュニケーションの一部だもんな」と声をかけられた。事情聴取として曹長から呼び出された五ノ井さんは「何もありません。大丈夫です」と報告した。問題が大きくなり、組織に居づらくなるのを避けようとしたからだ。 「自衛隊には厳しい上下関係があって、その場の空気に合わせなければならない。和を乱せば、無視や陰口を言われますから」(同) ■セクハラを超えた性被害を受けて限界に  この日以降、五ノ井さんは気持ちを押し殺しながら日常的なセクハラに耐えてきたが、昨年8月に我慢の限界に達する出来事が起きた。  8月3日から地方で約1カ月間の訓練があった。訓練場所に到着した日の夜、部屋で食事の準備をしていた五ノ井さんは、男性隊員から「料理はいいから接待しろ」と言われ、男性隊員十数人の輪の中に座らされた。宴会だったので、隊員らは酒を飲んでいた。  一曹Eと二曹Yが格闘の話をしていたところに、男性隊員S三曹が部屋に入ってきた。するとEは、Sに「五ノ井に首をキメて倒すのをやってみろ」と命令した。Sは、五ノ井さんの首に両手を当てて、そのままベッドに押し倒すような技をかけた。 「この時、Sさんが暴走し始めたのです。股を無理やりこじ開け、腰を振りながら陰部を押し当ててきました。一人で『あんあん』とあえぎ声みたいな声を出して、それを見ている周りの男性隊員たちは笑っていました。特にEとYはこっちを見ながら確実に笑っていました」(同)  続いて、2人目の男性隊員Kも「首をキメて」押し倒し、Sと同様の動きをした。さらに続いた。3人目男性隊員Rは同様に押し倒した後、五ノ井さんの両手首を押さえつけながら、何度も腰を振ってきた。 「全力で抵抗しようと、手首に力を入れて振りほどこうとしましたが、男性の力にはかないません。諦めて、終わるのを待つしかありませんでした。終わって体を起こすと、周りの男性隊員たちはこっちを見ていました」(同)  コトが終わると、Rからは「五ノ井って案外力が強いな」と言われた。五ノ井さんが抵抗していたことはわかっていたのだ。  一旦話題が収まったにもかかわらず、再び一曹Eが格闘技の話を面白おかしくしはじめて、「あれ、首をキメて倒すのどうやるんだっけ?」と笑いながら言い出した。すると、再びSが、五ノ井さんの首に両手を当てて押し倒し、腰を振ってきた。五ノ井さんの引きつった顔を見たSは「これ誰にも言わないでね」と口止めしてきたという。 「もう限界でした。訓練場所は、すぐに抜け出せる環境ではありませんでしたが、先輩の女性隊員と中隊長Mに相談して、帰りたいとお願いしました」(同)  先輩女性隊員は、最初は味方してくれたが、男性中隊長が「訓練は訓練だ」と言うと、「そうだよ、訓練は訓練だから」と態度を変えた。訓練はあと20日以上続く。これ以上耐えられないと感じた五ノ井さんは、訓練から抜けることを懇願した。だが、セクハラを受けたことが理由では、6月の時のように告げ口したと思われてしまう。母親が倒れたことにして、実家に帰れることになった。  この時、先輩女性隊員からは「一応、嘘ついていることは心の隅にでも置いておいてね」と言われた。エスカレートする性被害から逃れるための苦渋の判断にもかかわらず、被害者である五ノ井さんに非があるような言い方に聞こえた。 ■被害届を出すも不起訴処分  この8月の性被害の後、適応障害と診断され、五ノ井さんは休職することになった。被害については、まず、自衛隊の総務・人事課にあたる「一課」にセクハラ被害を報告した。だが、一課からは「8月のセクハラの件を見たという証言が得られなかった」と回答された。次に、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。 「警務隊の現場検証では、人形を使って再現しました」(同)  検察庁の捜査をへて、22年5月31日付で判決が出た。結果は、不起訴処分。五ノ井さんが不起訴の理由を尋ねると、検察官は「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない」という供述だったと説明された。そして「被疑者を有罪にするにはそれなりの証拠が必要だ」とも言われたという。 「その場で見ていた人がたくさんいたのに、なぜか腰を振ったという証言は出てこない。単に技をキメて押し倒しただけで、どうして笑いが起きるのでしょうか。その続きがなかったら、笑うわけがない」(同)  五ノ井さんは6月7日付で、検察審査会に不服申し立てをしている。  自衛隊内部では、この事件をどう捉えているのか。AERA dot.は五ノ井さんが配属された東北方面の部隊に事実確認すると、広報担当は「現在、部隊で調査中のため回答は差し控える」と答えた。調査結果がいつ出るかは未定だという。また、五ノ井さんが報告を上げた「一課」にも確認をしたが、「その件は一課長が対応したが、いまは不在」とのこと。代わりに対応した指令業務室の担当者は「事実を調査中のため、予断を持って回答することは差し控えたい」と回答した。なお、被疑者の処罰については、「判明した事実に基づき、厳正に対処する」とした。 (AERA dot.編集部 岩下明日香) ※「後編」では、五ノ井さんがセクハラを受けてもすぐに辞めなかった理由、顔と名前を出して告発に踏み切った経緯などを明かす。

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    巨人、ソフトバンクは「主役」じゃない? 今オフ積極補強に動くかもな“意外な2球団”

     クライマックスシリーズ(CS)の開幕を目前に控えているが、来季を見据えた動きは既に水面下で始まっている。FA権を取得している各球団の主力や、米国から国内に復帰する可能性がある選手など、今オフは大物が数多く市場に出回ることが予想される。久しぶりに活気ある熱いストーブリーグになりそうだ。 「近年の広島やヤクルトでは、FA権を持った主力選手が相次いで残留した。どの選手も移籍もあると見られていたので驚きの声も上がった。しかし、これらは特殊な例で人間関係などを含めたプレー環境が(所属していた球団で)飛び抜けて良かったからで、今季は分からない」(スポーツマネージメント会社関係者)  ここ数年は球界全体を見回してもオフに大きな動きはなかった。昨年には広島の大瀬良大地、九里亜蓮という右腕2枚看板が揃って残留。それ以前にも広島はリーグ3連覇時の中心選手だった菊池涼介、田中広輔、松山竜平、会沢翼など、多くの選手がFA権取得後に残留の道を選んだ。  また、2020年オフのヤクルトも「ミスター・トリプルスリー」山田哲人、守護神・石山泰稚が国内FA権を行使せずチームに残留。また、一度はFAを宣言したエース・小川泰弘も交渉の末にチームに残ることを選択した。 「プロ野球選手の寿命は短く、安定したセカンドキャリアを送ることができる選手も少ない。ファンからすると複雑な思いもあるだろうが、ビジネスライクに考えるのは当然の権利。広島やヤクルトの選手たちが特殊だっただけ。(今オフは)FA権を取得した実績のある選手は動く可能性は高く、市場も活発になるはず」(スポーツマネージメント会社関係者)  今年のオフは投打ともにFA権を取得した“目玉”が多い。仮に彼らが権利を行使した場合は、例年通り巨人、ソフトバンク、阪神、楽天といった資金力豊富な球団が存在感を発揮するのは変わらないだろう。だが今年は、これらの球団に加えて、これまではオフを騒がせることが少なかった球団が、話題をさらう可能性があるという。  その一つがオリックスだ。 「オリックスは積極的に動きそう。他球団に比べて資金力も決して劣らない。二軍施設等、ハード面の充実を図ったことで若手育成の土壌ができ始め、2年連続パ・リーグ制覇という結果にもつながった。勝つことでお客さんも入った。今後は選手(=ソフト面)の獲得に投資する次のフェーズに突入するはず」(オリックス担当記者) 「浅村栄斗(楽天)、森友哉(西武)という2人の大阪桐蔭OBがFAの権利を持っている。捕手と二塁手はレギュラーが固定できておらず、補強ポイントに合致するので全力で獲得に動くはず。加えて中日を退団となった平田良介も同校のOB。3人全て獲得できれば話題性を含め最高の補強となる」(在京球団編成担当)  オリックスは2017年からファームの拠点が神戸から舞洲へ移転した。舞洲スタジアムを二軍本拠地とし、周囲には選手寮やサブ球場を30億円かけて建設。充実した野球環境を整えたことで、若い選手たちがしっかりと育っている。主力の多くを生え抜きで固めて戦い、リーグ制覇という結果も残した。今後、黄金期を作るためにも、さらなる戦力補強が欠かせない。  また、オリックス同様に積極補強に動く可能性があるという声があるのがDeNAだ。 「DeNAにも動きがありそう。球団買収から地域密着を徹底し、本拠地・横浜スタジアムを中心とした街づくりに取り組んだ。横浜市民のみでなく神奈川県民が誇れる球団になり、チケットが入手困難な超人気球団になった。今後は勝つことで知名度をさらに上げ、全国、そして世界に誇れる球団を目指す。そうなってくると戦力補強への投資が欠かせない」(DeNA担当記者)  ベイスターズは2011年にDeNAが親会社となってからは、地域密着を前面に打ち出しファンサービスに特化。球場を改修し、観客が楽しめるサービスを徹底して多くのファンを取り込むことに成功したが、次なる目標は勝てるチームを作ることだ。 「今後は野球で結果を出すための投資が必要。左腕王国となった投手陣は充実しつつあり、打線もソト、オースティンの両外国人が機能すれば球界屈指。牧がセカンドの不動のレギュラーとして活躍しているが、ショートはまだ固定できていないため、二遊間強化は課題です。FA権を持つ外崎修汰(西武)、中村奨吾(ロッテ)、高橋周平(中日)などは狙い目。狭いハマスタなら打撃成績のアップも期待できる」(在京球団編成担当)  DeNAはオリックス同様、ファーム施設の整備も行なっている。2019年からは横須賀市が30億円、球団が10億円の計40億円かけて建設した「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」を使用し、そこから多くの選手が一軍へと旅立っている。 「チームが前進し続けるためには勝つことも必要不可欠で、日本ハムが良い例。鎌ヶ谷に若手育成施設を作り、ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンゼルス)など良い選手を育成して結果も出た。サービスも徹底してファンも増えた。しかし良い選手がいなくなり勝てなくなると、お客さんは離れる。時期が来たらチーム強化への投資も必要」(スポーツマネージメント会社関係者)  若手育成を行うための充実した拠点が必要なのは言うまでもない。ファンサービスを充実させ顧客を満足させるのも当然のこと。そして、球団がさらに進化ををするためにも、選手補強への投資も同時に必要となる。オリックスとDeNAは今、まさにその時期に差し掛かっている。両チームが今年のストーブリーグでどういった動きを見せるかに注目して欲しい。

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    男性部下からの“育休”相談に「負担が増える」とモヤモヤする43歳女性 妊娠を諦めた過去のある相談者に鴻上尚史が伝えた「あなたがいちばん納得のできる道」

     男性部下から育休を相談され、「仕事の負担が増える」と思ってしまうと訴える43歳女性。自身の妊活の苦しい過去も思い出し苦しむ相談者に、鴻上尚史が伝えた「相談者がいちばん納得のできる道」とは? 【相談159】男性部下から育休の相談。人員補充はなく、「仕事の負担が増える」とも思ってしまいます(43歳 女性 ひつじ)  鴻上さんはじめまして。私の悩みを聞いてください。  私はグループのリーダーに昇進しました。先日、男性部下の奥様の妊娠が判明し、育休を取得したいとの相談がありました。「おめでとう!」と思う気持ちも、育休を取ってほしいという思いもあります。一方で、育休の期間によっては、人員補充されないため「仕事の負担が増える」とも思ってしまいます。  私は35歳の時に結婚し、年齢的なこともありすぐに妊活しました。体外受精の際には、10日ほど毎日病院に通わなくてはいけない期間があるのですが、仕事が非常に忙しくなった時期があり、その時は治療を中断しました。理由として、忙しいと妊娠しにくいかもしれないと思った事もありますが、忙しい職場に遠慮した部分もありました。その後、数回体外受精をしましたが、妊娠できなかったと分かった時がとても辛く、4年ほどで妊活を終了しました。  中断したのも、妊活を終了したのも、最終的に自分が決断したということは分かっています。しかしながら、「私は仕事で子どもができなかったのに、他人の子どものために仕事の負担が増える」と考えてしまいます。さらには、「子どもがいないから昇進してしまった」とも思ってしまいます(産休や育休を取得していないため)。  このモヤモヤした気持ちをどのように考えればポジティブに思えるでしょうか。よろしくお願いします。 【鴻上さんの答え】 ひつじさん。モヤモヤしますね。それは当然の感情だと思いますよ。それでも、育休を相談されて、「『おめでとう!』と思う気持ち」や、「育休を取ってほしいという思い」を大切にするひつじさんは素敵です。 「忙しい職場に遠慮した部分」もあって、ご自分の妊活を終了したひつじさんですから、単純に「仕事の負担が増える」と反発しても無理はないところなのに、素晴らしいと思います。  それでね、ひつじさん。 「このモヤモヤした気持ちをどのように考えればポジティブに思える」のかという相談ですが、一番、ひつじさんが納得できる方法は、ひつじさんの考え方や受け止め方を変えるのではなく、会社のシステムそのものを変えようと試みることじゃないかと僕は思います。  ひつじさんは、「育休の期間によっては、人員補充されない」と書かれているでしょう。だから、「仕事の負担が増える」と思ってしまうと。それが一番のモヤモヤする原因なわけでしょう。  ですから、「育休の期間にかかわらず、必ず人員補充される体制」を会社に求めることが、昇進したひつじさんが納得できる道じゃないかと僕は思うのです。  ひつじさん。どうですか? 僕の言っていることは、ひつじさんの会社の現状を無視した、理想論でしょうか?  でも、誰かがいつかは「個人が負担を我慢する」という流れを止めないといけないんじゃないかと思います。  今、ひつじさんは、とても重要なタイミングにいると僕は思います。ひつじさんにとっても、会社にとっても、育休を求める男性の部下にとっても、そして、これから産休・育休を取る可能性のあるすべての社員にとっても。  ここでひつじさんが、気の持ちようで我慢したり、必死にポジティブになろうとしても、間違いなく、また同じ問題が起こるでしょう。そして、会社というシステムが問題になることなく、個人が負担を背負って苦しむことになるのです。  ここで、「育休の期間にかかわらず、必ず人員補充される体制」を作ることは、社員にとってはもちろんですが、会社にとっても将来的に間違いなく良いことになると僕は思います。社員のことを考えた手厚い福利厚生は、有能な人材をつなぎ留めたり、獲得したりすることの重要な要素ですからね。  それにね、ひつじさん。  会社と交渉してみて、100%の改善でなくても、いくばくかの前進が見られたら、それはひつじさんのモヤモヤを減らし、ポジティブになれることだと思うのです。  その交渉の中で、会社があまりに頑固なら、ひつじさんがモヤモヤしている「私が昇進したのは、産休や育休を取らなかったからですか?」というぶっちゃけた疑問もぶつけてみてはどうでしょうか? それは、会社が社員に負担を押しつけて、ひつじさん個人が我慢する現状に対しての抗議の石つぶてです。  もし、悲しい予測ですが、どんなに交渉しても会社が1ミリも変わらなかったとしても、ひつじさんの努力は未来につながる、貴重な試みです。後に続く人達がひつじさんの努力を忘れることはないでしょう。  どうですか、ひつじさん。  大変ですが、現状を変えようと試みることが、一番、ひつじさんの心を穏やかにすることなんじゃないかと、僕は思います。  心から応援します。 ■本連載の書籍化第4弾!『鴻上尚史のなにがなんでもほがらか人生相談』が発売中です。書き下ろしの回答2編も掲載!

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    代官山に週3通うオシャレ好きなクロちゃんが真冬でも「短パン」「半袖」を貫く理由

     安田大サーカスのクロちゃんが、気になるトピックについて"真実"のみを語る連載「死ぬ前に話しておきたい恋の話」。今回のテーマは「オシャレ」。ショッピングのために、東京・代官山に週3度も通うほど、ここ最近は「オシャレするのが楽しい」というクロちゃん。しかし、なぜか「長袖」「長ズボン」はほぼ着ないという一風変わったこだわりも持っている。クロちゃんが独特の「オシャレ」感について語った。 *  *  *  ここ1年くらいの間かな。自分の中で、かなり大きな変化があった。実は、最近、オシャレをすることがすごく楽しくなったんだよね。「そんな些細なことかよ」って思われるかもしれないけど、自分の中で、これは、なかなかの変化。まさか、洋服を買ったり、コーディネートしたりすることが、こんなに楽しいなんて、まったく思ってもいなかった。  正直、これまでボクはオシャレをすることに、そこまで強いこだわりがあるわけじゃなかった。基本的にボクはめんどくさがり屋だから、流行に合わせて服や靴などをじっくり選んだり、一軒一軒お店を巡るなんていう行為はあまり好きじゃなかった。ボクは人よりも、少し体が大きいし、今はやりのオシャレなお店に行ったって、ボクに合うサイズの服はどうせ置いてないだろうっていう変な固定概念もあった。だから、ボクが立ち寄るお店といえば「AVIREX 渋谷店」のみだった。AVIREXなら、大きなサイズは置いてあるし、デザインもボク好みだったし、プライベートで渋谷に足を運ぶことも多いから、すごく便利で都合もよかったんだよね。「ここにいけばすべてそろう」、そんな安心感もあった。  長年利用していたお店だったし、この先も、ずっと通うつもりだった。でも、昨年の春に突如閉店してしまったの。これは、想定外だった。閉店を知った瞬間は、「これから、ボクは、どこで服を買えばいいんだろう……」って、ちょっと困惑したからね。これをきっかけに、新たなお店を探すことも考えた。でも、ボクの乏しい知識では、それも、なかなか難しかった。大きいサイズが置いてあるお店ってどこなんだろうって考えても、ホンジャマカの石塚さんがメインキャラクターをつとめている「サカゼン」っていうブランドくらいしか思い浮かばなかった。でも、サカゼンはHIRO君が着ていたから、絶対嫌だったんだよね。HIRO君と服がカブるなんて耐えられないから。  結局、そんな途方に暮れるボクに手を差し伸べてくれたのは、親友のたかみな(高橋みなみ)だった。「クロの服、私がコーディネートしてあげるよ」、そんな一言から、一緒にショッピングにいくことになったんだよね。ほんと、ありがたかった。結果的に、そんなたかみなの優しさが、ボクがオシャレに興味を抱くきっかけになった。  後日、たかみなとたかみなの旦那さん、他にも友達夫妻も加わって、5人で原宿や代官山などのお店を巡った。原宿はアイドルのライブなどでよく行っていたけど、代官山なんてほとんど行ったこともないから、最初は、ほんとうに自分に合う服があるのか、少し不安だった。でも、3XLなどの大きめのサイズも、ちゃんと置いてくれているお店も意外に多くて、これには、すごく驚いた。これまでは「どうせ、置いていない」って勝手に決めつけていたからね。思い込みって怖いなって思ったよ。  adidasにSupreme、Saturdays NYC Tokyo、Maison Kitsuneなど、今までボクの人生にまったく縁のなかったお店に入って、とにかく試着しまくった。  これが、楽しくて、楽しくて、仕方なかった。  試着すると、みんな「かわいいー!」とか「似合ってるじゃん!」とか、すっごく褒めてくれたんだよね。気持ちよかったなー。テンションがあがっちゃって、代官山にある階段などで、撮影会みたいなこともしちゃったし。ボクは、褒められるとのびるタイプだから、いろんなポーズをたくさんとっちゃった。ボクってこんな色が似合うんだとか、こんなふうに上下を合わせるとオシャレに見えるんだとか、新たな発見もできて、すごく勉強になったよ。  オシャレするのって楽しいことなんだって、人生で初めて感じた瞬間だった。一気に、オシャレに対してのイメージが変わったね。これまでは、めんどくさい作業の一つ、くらいに捉えていたから。  それからというもの、ボクは、オシャレにすっかりハマってしまった。今では、多い時で、週3回、代官山に足を運んでいる。一時は、毎週のように同じ店に通って「新しい服、リリースされてないですか?」って聞いたりしていたから、さすがに店員さんから「いやいや、来るサイクル早すぎるんでまだ出てないです(笑)」「昨日も来てましたよね?」って指摘されたこともある(笑)。ボクにとっては、服屋さんに通うことが、完全に楽しい時間のひとつになっちゃったみたい。  ボクの洋服選びのポイントとしては、プライベートだけじゃなく、テレビなどに出演する時の衣装としても使えそうなものを選ぶようにしている。両方使えると便利だしね。「映えやすい」ものを意識して、アニメ「ワンピース」に登場するキャラクター「ドフラミンゴ」みたいなド派手な上着を買ったこともある。これがまたかわいいんだよねー。  以前のボクだったら、代官山なんて絶対足を運ぶことなんてない街だったのに、今では、代官山の空気がおいしく感じるからね。もうボクにとって代官山は、庭みたいなものだよ。それも、これも、全部、たかみなのおかげ。たかみな、ありがとう。また近々、一緒にお店巡りしようね。 ■「長袖」「長ズボン」を着られなくなった  気づいている人がどれだけいるのか分からないけど、ボクのファッションのスタイルは「半袖」と「短パン」が基本。冬でも、変わらず、このスタイルを貫いている。ちなみに、「長袖」と「長ズボン」を着ることはほとんどない。冬は寒いから、Tシャツなどの上にダウンなどを羽織ることはあっても、インナーとして着ることはない。テレビの衣装として用意されていたら、仕事だから、仕方なく着るけどね。  実は、ボク、「長袖」と「長ズボン」が嫌いなんだよね。  理由は、大きなトラウマがあるから。  あまり思い出したくもないんだけど、数年前に、一人の女の子と何度かデートする機会があったんだ。一緒に御飯に行ったりして、関係を深めていくうちに、ボクは、その子のことを本気で好きになっちゃったの。  だから、ボクは、その子に「告白しよう」と決意したんだ。そして、告白する時は「いつもとは違う自分を演出しよう」、そんなプランも考えた。ボクは、当時から「短パン」「半袖」ばかりを着ていたから、少しギャップを出すために、あえて普段あまり着ない「長袖」と「長ズボン」を告白の勝負服に選んだ。モノトーンな色のものを選んで、大人っぽい雰囲気も漂わせた。 「あれ、今日のクロちゃん、いつもと全然違う」って、その子に思ってもらいたかったし、何より、今までの自分を一新させるくらい、一世一代の本気の恋なんだよって伝えたかったからね。  でも、結果は最悪だった。告白する直前に、ボクは突然落とし穴に落とされちゃったんだ。そう、実は、これ全て、「水曜日のダウンタウン」が仕組んだドッキリだったんだよね。結局、その女の子も仕掛け人だったんだ。あれは、ほんとうにショックだった……。  あのデート以来、ボクは、「長袖」と「長ズボン」が着られなくなっちゃった。着ると、あのデートを思い出ちゃって、すごくつらくなる。プライベートでも何度かチャンレンジはしてみたけど、やっぱり精神的に気持ち悪くなってダメなんだよね。月日が経つにつれて、少しずつ、トラウマは小さくなってはいると思うけど、まだまだ時間はかかりそうだね……。  だから、今後も、ボクは、「短パン」「半袖」を軸にオシャレを楽しむつもり。次は、どんなアイテムをゲットしようかな。来週も代官山にいってくるしん!(構成/AERA dot.編集部・岡本直也)

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    17時間前

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    安倍元首相銃撃事件でジャーナリスト・青木理氏が感じた「不気味な兆候」とは

    安倍晋三元首相が選挙演説中に銃撃され、死亡するという前代未聞の事件から一夜が明けた。犯行の動機や背景はいまだ謎に包まれているが、「安倍三代」(朝日新聞出版)の著書があるジャーナリストの青木理氏は今回の事件をどう捉えたのか。緊急インタビューした。 *  *  * まず大前提として、どのような政治信条があろうと、その政治家にいくら批判があろうと、今回のようなテロを断じて容認することはできません。改めて言うまでもないことであり、問題はその先にあります。  そのうえで元首相が凶弾に倒れた衝撃的な事件を考えると、これはやはり不気味な兆候と捉えるべきなのか。だとすれば、なんとしてもそれを押しとどめる必要があります。  昨年亡くなったノンフィクション作家の半藤一利さんと生前対談した際、半藤さんが「社会が戦争に向かう危険な兆候」をいくつか挙げていたのを思い出します。(1)被害者意識と反発が国民に煽られる、(2)言論が不自由になる、(3)教育が国粋主義に変わる、(4)監視体制が強化される、(5)ナショナリズムが強調される、そして(6)テロの実行が始まるーー。  当時は重大テロなど起きていませんでしたが、その他の要素はかなり揃ってしまっているのではありませんか、と尋ねる私に、半藤さんはこう即答しました。「ええ、しかもそのスピードは戦前より速い」と。  私もそうですが、昭和史の探索に生涯を捧げた半藤さんは、皮相なナショナリズムや排外的風潮が強まる昨今のこの国の政治を危ういものと捉え、強く憂いていました。今回はそうした風潮を煽る側だった元首相がテロの凶弾に襲われたわけですが、それはいったいなぜだったのか。現時点では判然とせず、犯行の動機や背景の解明を待つしかありませんが、少なくとも半藤さんのいう「危険な兆候」の最後のピースを埋めてしまうような結果につなげるわけにはいきません。  ですから、今回のテロに政治やメディアは決して萎縮せず、と同時に犯行の動機や背景の解明を急いでそれと向き合い、テロの土壌となった課題や問題点が浮かびあがったなら、その改善に全力で取り組むべきでしょう。  拙著「安倍三代」でも記しましたが、安倍氏は少なくとも政界入りする前の青年時代には、強い政治信条や信念を持っていた形跡はまったくありません。母方の祖父である岸信介氏に強い敬慕の念を抱いているようでしたが、しかし戦前に特高警察に抗った父方の祖父・安倍寛氏のような胆力や反骨心、あるいは戦中に特攻隊を志願しながら生きながらえた父・安倍晋太郎氏のような歴史観もバランス感覚もなく、名門政治一家の跡取りとして生を受けた“おぼっちゃま”にすぎないという印象を持ちました。  これは妻の昭恵さんも言っていましたが、その期待に応えるため、自らが描く偉大な政治家像を「演じていた」側面もあったでしょう。そんな安倍氏は、首相として7年8カ月という歴代最長政権を成し遂げましたが、客観的に見てそれに見合う“レガシー”を遺したとはいえません。だから首相退任後も影響力を保持しようと躍起になり、自らの政権を否定するような動きには公然と横槍を入れたのかもしれません。  その振る舞いは見苦しいものだったと私は思いますが、そうした途次、しかも重要な国政選挙の最中、まさかこのような形で命を奪われるとは、誰一人として想像していなかった。凶行の動機や背景に重大な意味が潜んでいるのか、それとも突発的で政治的背景の薄い単独犯なのかはともかく、首相の座を目前にしながら病に倒れた父・晋太郎氏と同じ67歳で世を去ったことに、奇妙な符合のようなものも感じます。  繰り返しますが、今回のようなテロは決して容認できません。ただ、人の衝撃的な死は、時にすべてを一色に塗りつぶしてしまいかねない力を持ちます。過去は美化され、冷静な批評や批判を許さない風潮にも覆い尽くされてしまう。それもまた極めて危険なことであり、今回の事件をそういう意味での社会の“曲がり角”にしてもならず、安倍氏の政治姿勢や政治手法がもたらした「功罪」の「罪」がなんであったかも、あらためてきちんと見つめ直されなければならないと思います。  また、今後は「テロ対策」などが声高に叫ばれることも予想されますが、それを契機として例えば警察による監視体制ばかり強まれば、それもまた自由な社会を窒息に追い込んでしまいかねません。投票日が目前に迫った参院選を「弔い合戦」のように矮小化することも避けるべきです。元首相の死を悼むことと、政治への評価は分けて考えなければならない。そのためには、まさに言論の砦たるメディアとメディア人の役割が問われています。(構成=AERA dot.編集部・作田裕史)

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    乃木坂46で選抜入りゼロも…… 「将来のセンターになれる逸材」と評価急上昇のアイドルは?

     アイドルグループ・乃木坂46は新たな時代を迎えている。今年はグループ結成10周年を迎え、5月14、15日に日産スタジアムで開催された「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」には現メンバーだけでなく、西野七瀬、白石麻衣、生駒里奈ら卒業生たちが登場して公演を盛り上げた。  月日が流れると共に、メンバーが卒業していく。今年に入って1期生の星野みなみ、2期生の北野日奈子、山崎怜奈が卒業。1期生の樋口日奈、和田まあやも8月31日発売の30枚目シングル「好きというのはロックだぜ!」の活動を最後に卒業することが決まっている。  一方で、新しい風も。今年から加入した5期生は井上和、菅原咲月、川崎桜らを筆頭に加入から1年も経たずに人気メンバーとなり、次のシングルで何人が選抜入りするか注目されている。  乃木坂に在籍しているメンバーは現時点で43人。ただ、全員が同じステージで歌えるわけではない。各シングルの表題曲を歌う16~20名の「選抜メンバー」が選ばれる。他のメンバーは「アンダーメンバー」という枠組みの中で活動する。 「人気メンバーが選抜で固定されているので、アンダーから新たに入るのは容易ではありません。乃木坂に在籍して一度も選抜入りできずに卒業するメンバーも少なくない。それほど厳しい世界です。でも選抜メンバーの全員が日の当たる道を歩んできたわけではない。アンダーから大ブレークした代表格がエースの齋藤飛鳥です。グループの初期は白石、西野、生駒ら人気メンバーに隠れる形でアンダーの常連メンバーでしたが、モデルとして活躍してパフォーマンスを磨くことで大輪の花を咲かせた。選抜入りしなくても人気メンバーはいますし、活動の全てではないですが、彼女の歩んだ道のりは後輩に大きな勇気を与えている」(スポーツ紙の芸能担当記者)  ネクストブレークを狙う逸材たちの中で、テレビ関係者から高い評価を得ているのが4期生の林瑠奈だ。  民放のテレビ制作スタッフは「頭の回転が速く、バラエティー能力が高いと現場で評判です。お笑い好きで瞬発力があるだけでなく、場をうまく回すこともできる。共演した芸人やタレントの評判がいい。独特の感性と発言で、乃木坂の中では異質なオーラを身にまとっているのも魅力です」  林は順風満帆な道のりを歩んだわけではない。18年8月に坂道合同オーディションに合格するが、グループには配属されず坂道研修生として活動した後、20年2月に4期生に加入する。同じ4期生の中でも林より早く加入し、圧倒的な人気を誇る賀喜遥香、遠藤さくらに比べて当初は影が薄かったが、アンダーライブやグループ活動で輝きを放つこと存在感が増していく。歌唱力は乃木坂トップクラス。ダンススキルも磨かれ、ライブで見せるパフォーマンスが話題になった。  8月上旬にYouTubeでMVが公開された4期生の楽曲「ジャンピングジョーカーフラッシュ」ではフロントメンバーに抜擢され、大きな武器である歌唱力を発揮。コメント欄には、「林の歌声って世間が気づいたら爆発的に人気出るだろうな。そう思うぐらい魅了される」、「話題の5期生加入。でも、新4期生の覚醒がそれを大きく上回る。林瑠奈、ほんとうに凄すぎる。美しくなりすぎて、一時も目が離せない」など称賛の書き込みが相次いだ。  テレビ東京の帯番組「乃木坂工事中」でも話題に。「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」のパフォーマンスを取り上げた放送回で、MCを務めるバナナマン・設楽統が「林とかいい表情するよね。アイドルがステージで輝いているのを絵に描いたみたいな」と名指しで絶賛していた。  前出のスポーツ紙記者は「林は選抜入りにとどまらず、賀喜や遠藤のように将来はセンターになれる可能性も十分に秘めている。楽曲によって色々な表情を見せて観客の目を引きつける。中心の立ち位置でなくても『主役感』があるんですよね。ファンからの人気が高まっていますし、これからも快進撃が続くと思います」と期待を込める。さらなる活躍が楽しみだ。(梅宮昌宗) ※週刊朝日オンライン記事

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    三遊亭円楽師匠 叶わなかった悲願と最期まで貫いた芸人魂

    「笑点」でおなじみ、「腹黒い人」のキャラで笑わせ、政権批判や時事ネタで共感を呼んだ落語家の三遊亭円楽さんが9月30日、肺がんのため死去した。72歳だった。  円楽さんは東京の下町に生まれ、両国や深川の中学・高校に通い、青山学院大学法学部に進んだ。当時の言葉でいえば生粋のシティーボーイだ。大学時代は折しも70年安保、全共闘運動の最盛期。円楽さんはブント(共産主義者同盟)のメンバーとして赤ヘルをかぶって活動していた。  やがて運動に挫折し、もう一つの居場所だった落語研究会に軸足を移していく。在学中に五代目三遊亭円楽の鞄持ちを経て入門。こんな出自と経歴につきまとう恥じらいと衒(てら)いがないまぜになって、自他ともに認める腹黒キャラをつくり上げたのではないだろうか。  旧名の楽太郎は、大師匠六代目三遊亭円生の命名による。1976年7月に二ツ目昇進。ほぼ1年後に「笑点」レギュラーとなり、若さと男前でたちまちスターになった。ただ、78年の落語協会の分裂騒動で三遊亭派は協会を離れ、寄席出演の機会もなくなった。  それやこれやで、皮肉にもタレント活動ばかりで、まともに落語に精進しているのかと批判されることもあった。だが、高座では緻密で自然体と評される語りで「明烏」「芝浜」「禁酒番屋」などを得意とした。円生は噺の内容はもとより、手にする扇子の上げ下げ、高さや角度にまで、うるさかったと伝えられる。その伝統を引き継ぐ円楽さんだからこそ、落語界の統一と、ファン層を広げることを悲願としてきた。東西の大物落語家も登場する一大イベント「博多・天神落語まつり」のプロデュースは、その成果といえよう。  79年に円生が亡くなり、名跡は途絶えたままだ。円楽さんは、円生の名をつなぐことも悲願としていた。このままでは円生の名は忘れ去られてしまう。「一時的でもいいから、自分が継いで、その後をつないでいきたい」と口にしていた。  最後の高座となった8月の国立演芸場では、病を押して、古典「猫の皿」を熱演した。自身も涙、客席も涙。最期まで芸人魂を失わなかった。(由井りょう子)※週刊朝日  2022年10月14・21日合併号

    週刊朝日

    21時間前

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    室井佑月「最悪の事態とは?」

     作家・室井佑月氏は、原発の再稼働や新増設を検討する政府に不信感を募らせる。 *  *  *  8月24日に政府は来年夏以降、原発7基の再稼働を追加する方針を明らかにした。原発の新増設についても、検討するといった。  理由は電気代の値上がりだ。石油や天然ガスも値上がりしている。  背景には、ロシアのウクライナ侵攻もあるだろう。日本はエネルギー資源を他国に頼る国だから、モロに打撃を受けてしまう。岸田首相も8月24日、GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議でこう語っていた。 「ロシアによるウクライナ侵略でエネルギーの需給構造に大きな地殻変動が起こっている中、電力需給ひっ迫という足元の危機克服のため、今後、数年間を見据え、あらゆる政策を総動員して不測の事態に備えていく」  と。それが原発再稼働や原発の新増設、という話につながった。  じつはあたし、このことについて長い間、考えていた。きっかけはニュースで知った「原発の新増設」という言葉に驚いたからだった。  福島であんなに悲惨な事故を起こし、結果、原発がクリーンで最も安いエネルギーであるという嘘(うそ)もバレた。なのに、またそこに戻るのか、なにを考えているのか、と驚いたのだ。  しかし、あっという間に、日本は生活の苦しい人が増えた。賃金は上がらず物価は上がる。この国では、明日がわからない人が増えた。  今、日本は地震の活動期。いつ巨大地震が来てもおかしくない。ロシアのことで、戦争も身近に感じる。海岸沿いのたくさんの原発に、ミサイルを落とされる、もしくは落とすと脅されたらどうなるのだ? 日本はさっさと原発依存から脱するべきだ。  でも、こうも考えた。今年の冬、貧しさから極度な節約をし、凍死する人が現れたらどうするのだ、と。  いつ来るか定かではない巨大地震、他国のミサイル。それらはもちろん恐ろしいが、今この国で大変な思いをしている人の方が切実に感じる。  今を乗り越えるため、原発に頼ることも、致し方ないことなのか。  けれど、そう言い切るのはとても難しくって。  これまでも政府はあたしたちにさんざん嘘をついてきたからだ。とくに、既得権益を守るための嘘は激しい。原発はその最たるものだった。  クリーンで安価であるというのも嘘だったし、なにより原発を止めた時に、電気が足りないという嘘をついた過去がある。  たしかに、ニュースを見れば困窮者の話題は尽きず、今年の冬は厳しそうで、それに対処すべきだろう。  が、政府のいっていることが信じられない。これがすんなり日本が最善に向かえない、最悪の事態かもしれない。そうあたしは考えている。 室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中※週刊朝日  2022年10月14・21日合併号

    週刊朝日

    21時間前

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    国葬「反対」各地で最後まで訴えも 渋谷では「抗議も黙祷もなし」若者たちの本音

     賛否の声が渦巻く中、安倍晋三元首相の国葬が終わった。参列者は4千人超だったが、反対の訴えは各地で続いた。当日の「分断の現場」を取材した。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。 *  *  *  国会正門前には、数千人規模の人が集まり、最後まで反対の声をあげた。 「国葬反対」のプラカードを持っていた山本清子(きよこ)さんは、長野県松本市から20人近い仲間と一緒にバスで3時間以上かけて駆けつけた。どうしても、自分の目で見たかったのだという。 「大事な税金を勝手に使って、許せないです。お金は生活に困っている人たちに使ってほしい」  都内で幼児教育に携わっている郡司真子(まさこ)さん(54)は、国葬反対のデモにはじめて参加したという。 「国葬を閣議決定だけで押し切って決めましたが、民主主義がなくなってしまう恐ろしさがあります」  国葬の中止や反対を訴えるデモは全国の各所で行われた。国葬会場に近い九段下交差点では、国葬反対を訴えるグループと日の丸を掲げた賛成派が鉢合わせ、怒号が飛び交い、一帯は一時騒然とした。  賛成と反対──。互いの意見がぶつかっている時、国葬やデモの現場を離れるといつもと変わらない日常があった。  国葬開催の午後2時。東京・渋谷のスクランブル交差点では、黙祷も行われず抗議の声もあがらず、大勢の若者が行き交っていた。  ロリータファッションに身を包んだ女子大学生(20)は、国葬が行われていることは知っているという。  国葬に反対か賛成かを聞くと、「反対ではないので賛成なのかな」と答えた。 「でも、献花に行くほど、安倍さんの死を悼む気持ちはありません」  友だちと待ち合わせをしていた男子大学生(19)は、国葬に関心はあるが、行動には移さないと言う。 「戦後2例目で55年ぶりの国葬だというので、どのような葬儀になるかは気になります。その程度です」  会社員の男性(27)は、国葬には反対だが、賛否は職場でも友人の間でも分かれているので話題にしないようにしていると話した。 「国葬のことを話さなくても困らないのですが、何となくギスギスした世相を感じます」 (編集部・野村昌二)※AERA 2022年10月10-17日合併号

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    【後編】元女性自衛官が「性暴力」を告発した理由 「セクハラを“なかったこと”にするのが許せなかった」

     元女性自衛官の五ノ井里奈さん(22)が、訓練中に受けた性暴力をYouTubeなどで告発して話題となっている。五ノ井さんは、「セクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、AERA dot.の単独インタビューに応じた。「前編」では具体的な性被害の実態を詳述したが、「後編」では五ノ井さんが自衛隊を志した理由、セクハラを受けてもすぐには辞職せず、今回の告発に踏み切った思いなどを聞いた。 ※「前編」より続く。 *  *  * 宮城県東松島市出身の五ノ井里奈さん(22)は、小学4年生の時に東日本大震災に見舞われた。小学校にいる時に被災し、学校の1階部分は津波で浸水した。五ノ井さんたち児童は2階に逃げて無事だったが、避難所生活の後、母親と再開できたのは1週間後。家に戻ると、1階部分は津波に流され、室内で飼っていた愛犬2頭が亡くなっていた。散り散りに避難していた父親と兄2人とも再会し、その後は公民館で避難生活を送った。  この時、災害支援に来てくれたのが女性自衛官だった。 「女性自衛官がお風呂を造ってくれたり、お風呂上がりには腕相撲をしたりして、遊んでくれました。私は小さい頃から柔道のオリンピック選手を目指していたので女性自衛官にそのことを伝えると、『柔道は続けたほうがいいよ。頑張ってね』と応援してくれました。私にとって憧れの存在でした。この時から、いつかは陸上自衛隊に入りたいと夢を抱くようになりました」(五ノ井さん)  11年たったいまでも、女性自衛官と連絡を取り合って、感謝の言葉を伝えているという。  公民館で3カ月過ごした後、五ノ井さん一家はアパートに移った。しかし、小学6年生の時に両親は離婚。がんの治療中だった母親が、3人の子どもを女手ひとつで育てることになった。  五ノ井さんは、中学・高校と柔道で全国大会ベスト16の成績を残し、山口県にある大学に進学する。だが自衛官への夢が捨てきれずに中退。自衛隊体育学校の柔道部に入って、オリンピックを目指すことにした。好きな柔道を続けながら、自衛官アスリートへの道を切り開こうとしたのだ。  2020年4月、晴れて陸上自衛隊に入隊する。だが、「前編」で記したように、配属された東北方面の中隊では日常的にセクハラをされ、ひどい性暴力を受けた。五ノ井さんは次第に追い詰められていく。 「常にセクハラはあったので、受けている方も感覚がまひしてしまうんです。外ではアウトなことも、自衛隊内ではセーフになってしまう雰囲気がありました。男性隊員は、コミュニケーションの一部だと解釈していたようです。その意識を改善させることはほぼ不可能です。結局は、被害を受けた女性隊員がいなくなるしか解決策はないんですよね。私も自分で自分の身を守るためには逃げるしかありませんでした」  五ノ井さんは、2021年8月に複数の男性隊員から受けた性暴力を機に、休職することになった(被害の詳細は「前編」参照)。精神科医からは、適応障害と診断され、3~4カ月分の薬が処方された。 「憧れていた自衛官になるという夢を失い、どん底でした。先の見えない生活に絶望して、好きな柔道もできなくなりました。震災の時に助けてもらった女性自衛官みたいになりたくて入隊したのに、内部ではあんなにひどい実態があるなんて思ってもいませんでした……」  精神的に追い詰められ、何度も自死を考えた。覚悟を決めた今年の3月16日深夜、思いがけないことが起こった。 「ベッドの上に正座して、よしっ、と決断した時に、震度6強のすごく大きな地震がきたんです。その時、思いました。ああ、ここで死んではいけない。地震のせいで、生きられなかった人がいるのに、自分は何をしているんだろうって」  東日本大震災の記憶がよみがえり、五ノ井さんは自死を踏みとどまった。「どうして被害者が泣き寝入りして苦しまなければならないのか。性暴力に負けてはいけない」と組織と闘うことにした。  昨年8月に受けた性暴力について、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。今年5月末に不起訴処分になったが、現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。  この不起訴処分に関して、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」副理事長の伊藤和子弁護士はこう疑問を呈する。 「圧倒的に男性が多い自衛隊のような閉ざされた空間で性暴力が起きると、『見ていない』と口裏を合わせる可能性があります。今回はどうだったのか。加害者が何人もいる場合、供述に矛盾が生じることがあります。一貫して細部まで同じことを言っているのか、そうでないのか。すべて同じであれば、口裏合わせをしている可能性もあるでしょう。丁寧に供述の評価が行われたのか疑問の余地が残ります」  不起訴後、五ノ井さんが検察官にその理由を尋ねると「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない(という供述だった)」と説明されたという。ただ、伊藤弁護士は、首に手をかけて押し倒している時点で暴行罪を問うことができるとも指摘する。 「少なくとも押し倒した所を見ている人がいたわけですから、立件すべきです。なぜ検察は暴行罪で起訴しなかったのかも非常に疑問です」  たとえ刑事事件で起訴されなかったとしても、民事裁判でハラスメントが認定されることもある。伊藤弁護士は「第三者委員会を立ち上げて、構造的な問題を調査する必要がある」と話す。 「男性隊員が女性隊員に対して、首に手をかける技をかけていること自体がハラスメントであるという認識があるのか否か。私的な生活の中で起きた出来事なのか、訓練中の行為なのか。訓練と称したハラスメントではないのかなど、さまざまな疑問が浮かびます。ハラスメント行為があれば処分に値する問題なので、組織としてきちんと調査をするべきです」  最後に、五ノ井さんは実名と顔出しで告発に踏み切った理由をこう話す。 「内部に残る自衛隊員から『なかったことにしようとしている』と聞きました。隠蔽(いんぺい)です。ここでなかったことにしたら、これから被害者がもっと増えてしまう。セクハラをしている人は、今でも普通に隊にいて、また新しい女性隊員が入ってきた時に同じことが起こります。それだけは阻止したい。あとは、謝罪がほしいです。その一心で声をあげようと決意しました」  五ノ井さんの悲痛な思いは、自衛隊員たちに響いているのだろうか。(AERA dot.編集部・岩下明日香)

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    若者は国葬や自民党を本当に支持したのか 参列した20代記者が抱いた違和感

     誰のためだったのか──。9月27日に開かれた安倍晋三元首相の国葬。本誌記者(28)も式場に入り、4時間にわたる儀式を見届けた。国葬を支持する意見が多かった同世代の若者たちの目には、どう映ったのだろうか。 *  *  * 「これが果たして『国』の儀式なのか……」  日本武道館の2階席に設けられた記者席からは、やや遠いが真正面に安倍氏の祭壇が見えた。参列者が着席し終えると、厳粛な雰囲気が高まった。だが、そんな印象を一本の動画が吹き飛ばした。 「はい、いいですか?」  そう話すのはピアノの前に座る安倍氏だ。おもむろに弾き始めた曲は「花は咲く」。安倍氏の奏でるピアノの音をBGMに、第1次政権からの“功績”が紹介された。  安倍氏のおちゃめな姿も挟まれる。リーマン・ショックについて触れた演説で「もし、リーマンブラザーズがリーマンブラザーズ&シスターズだったら破綻(はたん)しなかったと思います」。直後、笑う聴衆の映像が続く。  極めつきは、そのオチだ。曲終わりに間違って鍵盤を押してしまい音が出てしまう、恥ずかしそうにほほ笑む安倍氏が「もう一回いきます?」と言って動画は終わる。  テレビの中継やニュースでご覧になった人も多いだろう。「モリ・カケ・桜問題」など負の側面に触れることなどないとはわかっていたが、仲間内でやるべきものを、国を挙げてやっているという感じを強く受けた。  ほかにも、献花中にポップな曲が演奏されるなど、荘厳さをイメージさせる「国葬」という言葉と、目の前で繰り広げられる式とのギャップに、違和感だけが胸に残った。  ネットニュースでは菅義偉前首相の弔辞が話題になり、コメント欄には賛美する声があふれた。その場面だけを見ると、さも素晴らしい式典だったかのように見える。私より若い人たちには、どう映ったのだろうか。  若者と政治の関係に詳しい高千穂大学経営学部の五野井(ごのい)郁夫教授が言う。 「(学生に)『菅さんの弔辞見た?』と質問したら、『見てないです』と言っていました。『国葬は自分にとって外野』と言う学生もいましたね」  もちろん国葬に関心を払い、献花に訪れた若者もいる。朝日新聞の世論調査(9月10、11日)では、18~29歳の回答者の58%が国葬に賛成した。ただ当日の様子を見る限り、実際は大して興味がない……。そんな若者たちも多かったのではないだろうか。  デモクラシー論などを研究する駒澤大学法学部の山崎望教授は、現時点での仮説としながら、次のように分析する。 「生まれたときから競争や自己責任を重視する新自由主義の時代を過ごしてきた若者は、社会よりも個人の目線を重視します。国全体に関わる国葬というイベントにどう応じてよいのかわからなかったのではないでしょうか。もう一つは、安倍政権が長期であったこともあり、ほかの政権と比較してどう位置づけるべきか、難しかったのかもしれません」  記者が成人してから大半の期間は、安倍氏が首相だった。学生時代から安倍氏の“業績”については、冷静に見ていたつもりだ。だが、政治について同級生と話した記憶はあまりない。そうした話題を交わすのは、決まって一回り、二回りも年上の人たちだった。  しかし、記者より若い人たちが安倍氏に“共感”する場面を目の当たりにすることがあった。  それは、安倍氏が襲撃された事件現場でのことだ。記者も事件が起きた直後、奈良に急行した。現場近くに設けられた献花台には、多くの若者たちの姿があった。 「おじいちゃんみたいで親しみがありました」と話す高校1年生や、「功績を残されて、尊敬している」と語る予備校生が目を潤ませて話してくれたことに、「これだけ若い人が熱烈に支持しているなら、自民党が与党なのも当然だ」と妙に納得したのを覚えている。  安倍政権といえばネットでの広報戦略に力を入れていた。安倍氏への共感はそこから生まれたのだろうか。  政治とインターネットの関係に詳しい東京工業大学の西田亮介准教授はこう語る。 「自民党内では、以前から若者や女性から支持を得られていないという認識がありました。その層へリーチするためにネットの活用を進めていきました。ただ正直これがそこまで効果を発揮しているとは思っていません」 ■いずれ薄まる安倍氏への共感  西田氏が続ける。 「野党が弱すぎたことや、安倍政権下で新卒の就職状況が上向いたことなどが自民党の支持率の高さにつながったのでしょう。広報の効果もあるとは思いますが、影響の程度は小さい印象です」  前出の山崎教授は言う。 「自民党を支持しているとは言っても、非常にあいまい。特定の理由があるわけではなく、彼らが強く持つ経済成長願望を実現してくれそうなのが自民党だからに過ぎません。それから、若者が権威に対して従順、というデータもあります。学生と話していると『長年、首相を務めているんだから、その人を批判するのはおかしい』と言うんです。国葬についても、『人が亡くなったんだし、悼むのは当たり前。だから賛成』という感じでした」  多くの若者は安倍氏や自民党を熱狂的に支持しているわけではなさそうだ。安倍氏への共感も、国葬が終わればいずれ薄まっていくだろう。前出の五野井教授が言う。 「ロシアによるウクライナ侵攻などもあり、これからは経済の状況は悪くなっていくでしょう。その際に若者が自民党を支持し続けるかはわかりません。スペインやイタリアを見ると、極右や極左政党が票を伸ばしています。日本も同じ状況になる可能性がある。若者たちの一番の関心は経済ですから、彼らが『この党は私たちに何かしてくれる』と信じるに足り、政権運営能力がありそうな政党が出てきたとき、彼らはそちらに流れます」  国葬を巡っては「国民を分断した」と分析する意見も多かった。だが、記者が普段つきあっている同世代にとっては、そこまで大きな関心事ではなかったように思う。むしろ賛否を争っている人々の姿のほうが、奇異に映ったのではないか。……いや、そもそも映ってすらいないのかもしれない。(本誌・唐澤俊介)※週刊朝日  2022年10月14・21日合併号

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    17時間前

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    Aぇ! group 「初心LOVE」の決め台詞は「なぁ、今もやで」!? 関西色全開の初アリーナ公演【超詳細レポ】

     9月28・29日、関西ジャニーズJr.・Aぇ! groupのアリーナ公演「西からAぇ!風吹いてます! ~おてんと様も見てくれてますねん LIVE2022~」が行われた。ユニット単独では“初関東&初アリーナ”となる大舞台。歌にダンス、コントにトークと、6人の全身全霊のパフォーマンスが吹かせた“Aぇ!風”。その力強さは、「えぇ風」どころかもはや「暴風」。終始会場を揺さぶり、圧倒した。28日夜公演の様子をお届けする。[以下、ネタバレあり]  セットリスト[※記事末尾に一覧を掲載]からは、彼らの「関西ジャニーズとしての誇り」がひしひしと伝わってくる。ライブの幕開けとともに極彩色の衣装で現れた6人は、「アホ新世界」(関西ジャニーズJr.)、「ええじゃないか」(ジャニーズWEST)、「がむしゃら行進曲」(関ジャニ∞)を披露し、どんちゃん騒ぎな“西からの風”をフルスロットルで吹かせた。お祭りムードで盛り上げながらも、さすがはアイドル。「アホ新世界」のサビ前の歌詞「いつでも帰ってきーや」は、代わりに福本大晴が「チューしよっか!」。はじける笑顔で、ライブ開始早々にファンを悶絶させる。  エネルギッシュな曲が続いたところで、上着を脱ぎはじめるメンバーたち。佐野晶哉が切り出す。「なんと、6人で作詞をして、僕が作曲をさせてもらった、Aぇ! groupの、Aぇ! groupの、Aぇ! groupの! 自己紹介ソングですどうぞー!」この日初めて披露する新曲のタイトルは、「僕らAぇ! groupっていいますねん」。グループ結成時の初舞台名を冠した曲名が、ファン心をくすぐる。佐野→小島健→草間リチャード敬太→正門良規→末澤誠也→福本の順に“らしさ”全開でメンバー紹介していく、その内容は……。[※以下、歌詞の一部を抜粋、()内はメンバーによる合いの手] 佐野:Aぇ! groupの可愛い末っ子です。カラオケ100点、お芝居暴走、甘えるお顔は年上キラーです(自分で言うな、まさや!)。器用貧乏(じゃなくて器用富豪)ドラムで胸を打つ。だけど胸キュンだけは照れるからしません(晶哉の胸キュン見てみたい)。じゃあ俺と、付き合う?[会場、悲鳴](くっさー! まさや!) 小島:俺様がリーダー(黙ってたらかっこいいんだ)。中身知れば~笑劇~だ(癖になって大好きだ)。生まれは北海道、育ちは沖縄県、これ全部嘘~(こじけん!)。舞台の(ビバ!)、本を書いて(ビバ!)、ピアノ弾かずに(ビバ!)、手を上げて(ビバ!)、365個の名言を生み出すぜ~(こじけん! ここらでおひとつお聞かせくださ~い)。割り箸のささくれには、気いつけや。 リチャード:こっからこっちが日本でこっからこっちがアメリカ(そうハーフ)。ぼくリチャード! この感じではんなり京都人やらせてもろてます。英語がしゃべれない(リチャ!)。ダンスがめちゃうまい(リチャ!)。このグルーブは真似できない(リチャ!)。好きな食べ物は千枚漬け、嫌いな食べ物ハンバーガー。フォーゥ!! 正門:(デニムと革ジャン愛してます)お前に、夢中やで。(髪をかきあげてセクシーに投げチュー)ふぅー[投げキス](きゃー!)。リア恋No.1、ギターの早弾きNo.1、あせ門ぽや門みんなの心の実家(まさかど!)。(まさ、かど、よし、のり、よしのり、フィーバー、イェーイ!)。みん、なで、さけ、ぼう、Aぇ! group、フィーバー、イェーイ!) 末澤:声高いー(耳が痛いースタッフさんイヤモニの音量下げてください)。[あまりのハイトーンボイスに、モニターに映る歌詞のフォントがひび割れている]。極小番長ー(サイレンボイス切り開いていく革命起こすぜこいつのPRIDE)。最年長ー(気をつけろ狂犬最年長だけど無邪気なKING俺らのお耳はいつもキーン)。(いじられてー)叫ぶ、嘆く、やってんなー!(せいや!)愛してる[指でハートを描く]。 福本:国公立大卒業したのにクイズ番組で(ギャグギャグギャグギャグ!)。でも根は真面目で誰よりアイドルギャップにやられて(きゅんきゅんきゅんきゅん)。可愛いお顔に(ドキドキドキドキ)。月曜日の(朝の顔)。ギャグ製造機が逆転勝利だ、いったいたいたい俺大晴!(ギャグのテーマは正門良規!)おはよー、ジョリジョリジョリ[ヒゲをこする仕草]、痛ーっ! 手から血ぃでたぁ!(ギャガ―で秀才でも俺らが救済どんな雨の日もこいつがいれば快晴)たいせい!(みんなの心の涙を拭う)ワイパー![※福本の一発芸] 全員:出会っちゃったのが運の尽き、俺らにしか満足できなくない?Welcome to the Aぇ! group time 弾けるぜ!今日が楽しくないわけなくない?笑っちゃえ。ははははははっ! 君がいてくれたら俺らの夢叶っちゃう。イェーイ!  終始、超絶早口&ハイテンションで進行していくハチャメチャソング。今後、ライブで盛り上げくれること間違いなしだ。  続いて始まったのは、メンバー一人ひとりがソロで歌い繋いでいく「個性爆発メドレー」。トップバッターの正門はギターを手に、「DAYBREAK」(男闘呼組)を熱唱。20秒間のイントロは、ギターサウンドが激しく主張する最大の見せ場。スクリーン上に、“自称ジャニーズNo.1ギタリスト”の鮮やかなピックさばきが大写しになる。他メンバーは休むことなく、全力でバックダンサーを務める。  次は末澤の「おおきくな~れ☆ボク!!」(知念侑李)。ピンクのポンポンがついた、真っ白なモコモコ衣装の末澤が現れた瞬間、その愛らしさに観客の頬は一気に緩む。「みんなを見下ろしたい」と歌えばメンバーはみんなしゃがみ、身長が高いツートップの小島と佐野はおんぶや肩車をしてくれる。Aぇ! groupの姫、すっかりご満悦な様子だ。  福本の「仮面舞踏会」(少年隊)では、突然シルエットクイズ2問が出題される。それぞれ「パイナップル」「舞茸」と答える福本だが、正解はどちらも、攻めた髪型にされたリチャード。怒るリチャードに目もくれず、「間違えても気にしない、それが大晴♪」。そしてお決まりの、「ワイパー!」。  佐野の「オレンジ」(SMAP)の演出は、過去に出演したバラエティ番組「生放送で満点出せるか100点カラオケ音楽祭」のオマージュ。スクリーン上の音程バーや、当日の衣装、見守る末澤・福本・正門のお祈りポーズまで、細かすぎる再現ぶりが笑いを誘う。無事100点が出てみなで抱きあうと、佐野は「この100万円でミュージックビデオを作ります!」。  同じくリチャードの「宙船」(TOKIO)も、ネタ演出。スタッフが青い布を揺らす手作り感あふれる海で、必死でオールを漕ぐリチャード。その後船はあっけなく沈没するが、今度は台車に乗り、両手で水を掻きながら花道を爆走する。こぶしの聞いた力強い歌声を響かせ、前へ、前へ、進む。  極めつけは、小島の「愛・革命」(滝沢秀明)。「悲しい夢もsexyも捨てないで そっと青春のsexyにつめて 時々それを開くと sexyな想い出がよみがえるsexy……」。あらゆる言葉をsexyで上書きした、小島らしい替え歌。高貴なビジュアルとテノールの美声が一層シュールさを引き立てる。  完全にお笑いモードのスイッチが入ったところで、コント「Aぇ家族物語」に突入。本場・関西の実力を見せつけた20分間の様子は、こちらで詳細にレポートしている。  MCタイムを経た後半戦も、見せ場や名シーンはてんこもり。ライブ初披露のオリジナル曲「Aっ!!!!!!」では、ピースサインを振り上げ、会場が一つになって踊った。曲前のMCでリチャードが「立ってもらっていいですか?」と呼びかけると、ファンは待ってました!とばかりに瞬時に起立。その様子にリチャード、「立つんめっちゃ速いな(笑)、足腰くそ強い」と、愛をこめたツッコミをおくる。  ジャニーズJr.のライブでは鉄板の嵐の名曲「Happiness」は、櫻井翔に代わり、福本が「上の、上の、上のほうー!」「みなさんも一緒に!」などと一生懸命煽る。加えてメンバー内では、“姫”末澤の奪い合いも勃発。佐野が末澤の頭を胸に引き寄せたかと思えば、リチャードはがっちりと肩を抱きに行く。そこへ福本がやってきて、頬をくっつけながら耳元で歌う。末澤は終始、まんざらでもない笑顔を浮かべていた。 「初心LOVE」では、西畑大吾(なにわ男子)の親友、正門が西畑パートを担当。道枝駿佑(なにわ男子)の決め台詞「ねえ、今もだよ」は、上目遣いの佐野がはにかみながら「なぁ、今もやで」と関西風にお見舞いする。6人それぞれの個性がにじむ“初心LOVEポーズ”も披露したが、そのキメキメぶりは「初心感がない(笑)」とファンの間で話題になっていた。  一転、神山智洋(ジャニーズWEST)が作詞作曲したオリジナル曲「Stray dogs.」では、振り幅の広さを見せつける。火柱が上がるなか激しく歌い、踊り、突如漂うギラついた野性味。佐野は「待ったなし曝け出してやるよ」と歌いながら、黒シャツを大きくはだけさせて胸元を露わに。さっきまでのおふざけモードはどこへやら、セクシーな顔を覗かせた。  フィナーレが近づくと、6人はファンへの感謝と誓いをまっすぐ言葉に乗せ、最後の挨拶をする。※メンバーのコメント詳細はこちら。そして、「約束するよ あの場所に連れてくから~♪」 。横一列のシンプルなフォーメーションで、歌詞を噛みしめるように、「My dreams」(関西ジャニーズJr.)を歌いあげた。純白の衣装に身を包んだ6人は、遠くを見つめたり、観客にほほ笑んだり、それぞれ胸に迫るものがあるような表情をしていた。  待望のファンサービスタイムが訪れたのは、アンコール。メンバーは「田」の字形の花道をくまなく回り、指差ししながら投げキスやエアハグをする。2曲目の「関西アイランド」(関西ジャニーズJr.)では、冒頭、正門が歌詞を間違え、突然「O×△□Yeah Yeah Yeah」と謎の煽りを始めたことで一同大爆笑。さらに、「さ~の~まさやです」の連呼が伝染していくギャグも始まり、いよいよカオスな展開に。ライブ幕開けに負けず劣らずのハッピーオーラで会場を満たした。  すべての曲を歌い終えたあとも、名残惜しくて再び雑談をはじめる6人に、末澤は「もう1回ここでMCしようとすんのやめて?(笑)」。一同は気を取り直し、「おっしゃ!」「行きましょか?」と手をつなぎはじめる。正門は「みなさんは心と心をつなげてください。気持ちをステージまで飛ばしてください」と会場に呼びかける。全力でペンライトを振ってこたえるファンたち。「届いてきた届いてきた!」「すげー」「でもみんなやったらもっと飛ばせるんじゃない?」「来てますよ!」。そのエネルギーを受けてか、福本が突然騒ぎ出す。「あっあっあっあっ! せーの、ワイパー!!」。本日何度目かのワイパー。今回は福本の手の動きにあわせて観客もペンライトを大きく横に振るが、あまりのシンクロぶりに、「めっちゃそろってる!」「すーごい景色」「動きなめらか(笑)」とお腹を抱える6人。小島は思わず、「みんな家でワイパー練習してる!?」と尋ねた。  場の空気が「高まってきた」ところで、いよいよ最後のイベントへ。正門が「みなさんは心の中で僕たちの名前を叫んでください」と呼びかけると、メンバーはマイクを床に置く。そしてつないだ手を上にバンザイしながら、生の声を張り上げる。「俺たちが、Aぇ! groupだー!」  パーンという破裂音とともに銀色の紙吹雪が舞うと、エンディングのBGMが鳴り響く。「幸せな時間をありがとー!」「みんな大好きやぞー!」。最高の笑顔を向けながらメンバーがセット奥へと下がるなか、最後尾の正門は出口のセットに頭をコツン! 観客の目に焼きついた最後の光景は、完璧なオチをつけた正門が少し恥ずかしそうに手を振る姿という、なんともほほえましいステージになった。 ~9月28日夜公演セットリスト~ (1)アホ新世界(関西ジャニーズJr.) (2)ええじゃないか(ジャニーズWEST) (3)がむしゃら行進曲(関ジャニ∞) (4)Firebird(Aぇ! group) (5)僕らAぇ! groupっていいますねん(Aぇ! group) (6)DAYBREAK(男闘呼組) (7)おおきくな~れ☆ボク!!(知念侑李) (8)仮面舞踏会(少年隊) (9)オレンジ(SMAP) (10)宙船(TOKIO) (11)愛・革命(滝沢秀明) (12)サムシング・ニュー(ジャニーズWEST) (13)オモイダマ(関ジャニ∞) (14)Aッ!!!!!! (Aぇ! group) (15)Big Shot!!(ジャニーズWEST) (16)へそ曲がり(関ジャニ∞) (17)SHAKE(SMAP) (18)Happiness(嵐) (19)初心LOVE(なにわ男子) (20)Stray dogs.(Aぇ! group) (21)ズッコケ男道(関ジャニ∞) (22)Oh Yeah!(嵐) (23)PRIDE(Aぇ! group) (24)My dreams(関西ジャニーズJr.) [Encore1]Break Through(Aぇ! group) [Encore2]関西アイランド(関西ジャニーズJr.)  Aぇ! groupが表紙を飾る10月4日発売の「週刊朝日」10月14-21日号には、本レポートがより楽しめる、この公演のライブスナップ23点を掲載。さらに、メンバーがこのライブへの意気込みなどを語ったインタビューや、撮り下ろしグラビアと、充実の特集となっている。 (本誌・大谷百合絵) ※週刊朝日オリジナル記事

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    マドンナの“変わらない”姿に胸がザワつく理由 ずいぶんと遠回りしたフェミニズムを振り返る

    作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、フェミニズムについて。 *   *  *  マドンナのインスタグラムを時々見ては、胸を一人ざわつかせている。  ボディーコンシャスな服で胸を強調し、セックスを直接的に表現する腰つきで踊り、分厚い唇を挑発的にカメラに押しつけ、股を大きく広げ口を半開きにするマドンナ、64歳。1980年代と変わらずに、セックスを過剰に表現しようとするマドンナに対して、「優雅に年を取ってほしかった」「これ以上、見たくない」という冷ややかな声は決して少なくなく、マドンナは醜形恐怖症ではないかと指摘する声も年々大きくなっている。  60代は60代らしく……とは全く思わないが、それでも、世界史上最も売れた女性アーティストですら、女が年を取るのはこれほど難しいのかと、マドンナがインスタグラムに新しい投稿をする度に、穏やかな気持ちではいられない私もいる。  マドンナは何一つ変わっていないというのに、なぜ悲しい気持ちになってしまうのだろう。  80~90年代、マドンナは性産業で働く女性やマイノリティーたちの代弁者のように存在していた。ボンデージを身にまとい、開脚した状態で激しい上下運動を見せる姿からは、セックスを恐れず、性的欲望の対象になることを自ら選択し、それ故に自由であることを世界に発信していた。マドンナほど、セックス=パワーというメッセージを発信した女性アーティストは他にいない。90年代に女性向けバイブを売り始め、セックスにポジティブでありたいと仕事を始めた私だって、確実にマドンナの影響をどこかしら受けているはずだ。  それでも今はどうだろう。マドンナはマドンナであることを貫いているだけだというのに、若い男とのキスや、腰を激しく振るインスタグラムから感じるのは自由やパワーというよりは、自傷行為に見えてしまうのはなぜなのだろう。  イギリス人フェミニスト、シーラ・ジェフリーズ氏による『美とミソジニー』の日本語版(慶應義塾大学出版会)が、今年7月に出版された。西洋基準の「美」が、いかに男性のファンタジーによって創られているのか、いかに女性の人生を厳しく拘束するのかを検証する内容だが、ここにマドンナが世界に与えた影響が厳しく批判されていた。  曰く、マドンナはポルノ的なものをメジャーなエンターテインメントに昇華させ、まるで新しいフェミニズムのように評価されたが、それは正しかったのか? 体を締め付ける服を着て、ピンヒールを履くことは、女性にとってのパワーなのだろうか。化粧や美容整形をした姿に自信をもつことは、女性の解放なのだろうか。ポルノに出演したり、性産業で働いたりすることは、女性の主体的な選択として全肯定すべきなのだろうか。「あなたの選択」とされてきた一つ一つにひそむ罠を、シーラ・ジェフリーズ氏は執拗に解き明かそうとする。なぜなら、もし、マドンナ的な生き方が女性をエンパワーしたというのなら、いまだに女性たちがいばらの道を歩いている説明がつかないからだ。巨大化する性産業、美容産業、ファッション産業によって女性たちは解放されたというより、より食い物にされているのではないか、と。  マドンナ自身は、自身が味わっている年齢差別について機会があるごとに発言している。マドンナのセックスアピールは今やエイジズムとの闘い、ということでは筋は通っているのだろう。それでも、マドンナがマドンナであり続ける限り、それが若さと美への強迫観念に見えてしまうほどに、リアルワールドで女はセックスに疲れているのかもしれない。魅力的であるためにやるべきことがあまりに多く、苦しいのかもしれない。だから、マドンナを直視できなくなっている女たちは少なくないのではないか。  マドンナの登場から40年、女性解放の思想はどこに向かっているのだろう。マドンナの今を見つめながら、「女の時代」と言われた80年代から今まで、フェミニズムはずいぶんと大きな遠回りをしてきたのかもしれない、という気持ちにもなってくる。  ちなみに『美とミソジニー』は韓国では2018年に出版されている。美容整形大国の韓国で、若いフェミニストたちが化粧を拒み、短髪にするムーブメント=脱コルセットを大きく後押ししたといわれている。一方、ジェンダーの固定化・本質化を危惧するシーラ・ジェフリーズ氏に対しては、トランスジェンダー活動家らから「読むことすら差別」「売ることすら差別」という抗議もある。そのような極端な抗議がなぜ引き起こされるのかを自ら考える力も、この本は鍛えてくれるだろう。マドンナ以降のフェミニズムが何と闘い、何に負けてきたのかを探る大切な一冊であることに変わりはない。 「美」は決して無垢な価値観ではない。美にひそむ政治、エロス、欲望を丁寧に解き明かすことがフェミニズムの役割でもある。マドンナのインスタグラムを見ながら、私も自分のフェミニズムを振り返る。自分の加齢について考える。マドンナに影響され、ゴルチエに憧れ、ロングブーツと超ミニスカートで力を感じていた80年代の私を振り返りながら。

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    「株主優待生活」の桐谷広人七段がリーマン・ショックを振り返りたくない理由「本当に死ぬかと思った」

     AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。渡辺明名人、「初代女流名人」の蛸島彰子女流六段、「永世七冠」の羽生善治九段らに続く19人目は、「株主優待生活」の桐谷広人七段です。発売中のAERA 2022年10月10-17日合併号に掲載したインタビューのテーマは「将棋以外の楽しみ」。 *  *  * 「本当に死ぬかと思ったんです。いまでもあまり思い出したくない」  桐谷広人は2008年に起こったリーマン・ショックのときのことを、そう振り返る。桐谷は証券会社から金を借り積極的に勝ちをねらう「信用取引」をおこなっていた。 「リーマンが潰れたときに撤退すればよかった。信用の負けが2千何百万円あったんですけど、全部清算してね」  桐谷は撤退せず、あまり信用もしていなかった経済評論家の言葉にすがりつく。 「『大逆転の好機』って言っててね。つらいときは、占いでもいいことを言ってもらって信じたい。撤退せず、逆に信用で大量に買ったら、そこからまた下がって。2千万ぐらいずつの損失を3日連続で出しました」  株式投資家としての桐谷は、約40年ほどの間に何度も浮き沈みを経験してきた。 「大儲けしたときは『株をやってよかった』。大損したときは『やらなきゃよかった』。数年ごとに、この繰り返しでした」  現在では著名な個人投資家である桐谷が、将棋の引退棋士・桐谷七段だと知る人は、そう多くないかもしれない。 「コンピューター桐谷」  それが現役時代の通称だ。抜群の記憶力で過去の棋譜データを深く分析し、いくつもの優れた定跡書を執筆した。「天才集団」と呼ばれる棋士たちであっても、株でうまくいくとは限らない。14年、桐谷がトークイベントに招かれた際、羽生善治現九段(52)はこんなことを言ったという。 「自分が棋士になった直後にバブルがはじけ、先輩方が大損してるのをいっぱい見てるので、自分は株はやりません」  その「先輩方」の一人に桐谷は含まれている。 (構成/ライター・松本博文)  ※発売中のAERA2022年10月10-17日合併号では、桐谷広人七段が株主優待や配当を中心とするスタイルを確立した理由や、自転車に乗ってブレークしたきっかけについても話しています。

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    【前編】22歳元女性自衛官が実名・顔出しで自衛隊内での「性被害」を告発 テント内で男性隊員に囲まれて受けた屈辱的な行為とは

     元女性自衛官が実名・顔出しで、訓練中に受けた性被害をYouTubeで告白したことが話題を呼んでいる。五ノ井里奈さん(22)は、陸上自衛隊に所属していた2021年の6月~8月、複数の上官から集団でセクハラを受けたという。上長に被害を訴えても取り合ってもらえず、自衛隊内の捜査機関に被害届を出しても、検察からは不起訴とされた。現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。五ノ井さんは、AERA dot.の単独インタビューに応じ、「日常的に起きているセクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、自身の受けた体験を語った。 *  *  * 五ノ井さんが陸上自衛隊に入隊したのは、2020年4月。小学生の頃から女性自衛官に憧れ、20歳のときに自衛隊の門をたたいた。教育期間は順調にこなし、その時までは、思い描いていた自衛官の姿に誇りとやりがいを持っていた。  だが、その後に配属される中隊名が発表されたときから、風向きが変わった。女性の先輩隊員から、こんな忠告を受けたのだ。 「あそこの中隊はセクハラとパワハラがひどいから気をつけろ」  五ノ井さんが配属された東北方面の中隊は、隊員58人の中で女性は5人。1人は育休中だったので、実質的に女性隊員は4人しかいなかった。同部屋の女性隊員からも「セクハラは覚悟して」と言われたので警戒はしていたものの、すぐにそれが現実のものとなった。 「2020年秋ごろ、勤務中に、男性隊員が『柔道しようぜ!』と言いながら技をかけてくるのですが、腰をつかまれて“バック”のような体制にされて腰を振ってくるんです。それを女性隊員が目撃していました。廊下を歩いていると、急に抱きつかれることも日常的にありました」(五ノ井さん)  部屋に戻ると、女性隊員同士でこうした行為を報告しあった。だが女性隊員は圧倒的少数。自分の身を守るだけで精いっぱいの場合もある。  2021年6月24日。山に入って訓練をしていた時、新人の五ノ井さんは夕食や酒のつまみを作る役割を任されていたので、天幕で料理を作っていた。天幕とは2~3人用のテントのことで、山での訓練では寝床として使用されていた。天幕で酒盛りをし、定員より多い男性隊員が入れ代わり立ち代わり入ってきて、多いときには5、6人くらいの隊員がぎゅうぎゅうになって座っていた。料理を作るためにいた五ノ井さんはその輪の中に入れられ、胸をもまれ、キスをされ、男性隊員の陰部を下着越しに触らせられた。  逃げられないと思った五ノ井さんは、別の天幕にいる女性隊員にLINEで「はやく来てください」と助けを求めた。女性隊員からは「オオカミなってる??w」と返事がきた。「オオカミ」とは、男性がお酒を飲んで暴走し、理性をコントロールできない状態のこと。「はい」と返せば、女性隊員は助けに来ないと思い、五ノ井さんは「なってません とりあえず早く来てください」と再度助けを求めた。だが、その女性隊員は「今来たらやばい」という別のLINEも受け取っていたことから、結局、五ノ井さんのいる天幕には来なかった。女性隊員はその直後に退職した。  状況としては“見捨てられた”ようなものだが、五ノ井さんはこの女性隊員の気持ちもわかると話す。 「女性隊員が自分の身を守るためには、来ないのが正解なんです。夜遅い時間に男性隊員のストレス発散に使われて、自分だって危ない目にあう可能性があるんですから、行きたくない気持ちにもなりますよ」(同)  五ノ井さんからLINEを受け取った元女性隊員は当時の状況をこう証言する。 「LINEを受け取った前日に、私も同じ天幕で宴会に参加して、同じようなセクハラを受けていました。その時は、男性隊員から膝に乗って接待しろとか、頬にキスしろと強要されました。ある男性隊員から次の日は『覚悟しとけ』と言われ、もう何をされるかわからないので、五ノ井さんに助けを求められた時に行くことができませんでした。止めに行きたい気持ちはあったのですが、止めに入ったら(次は)自分に来るので、怖くて助けられませんでした」  元女性隊員自身も「ほぼ毎日抱きしめられる」などのセクハラを受けており、五ノ井さんが日常的に被害にあっている場面も目撃していたという。元女性隊員によると、この部隊は2018年から女性隊員が入るようになり、その時から、「セクハラがヤバイ」として悪評が立っていた。セクハラをしているグループの中心は、20代後半の男性隊員数名で、他の隊員は上下関係から、逆らうことができず、ただ見ているだけだったという。  だが、この日のセクハラ事件は、中隊でも問題となった。事件を目撃していた誰かが、中隊長に報告したからだ。すぐに「中隊長に告げ口したのは誰か」と、犯人捜しが始まり、被害者である五ノ井さんが疑われた。加害者からは、「セクハラじゃなくて、コミュニケーションの一部だもんな」と声をかけられた。事情聴取として曹長から呼び出された五ノ井さんは「何もありません。大丈夫です」と報告した。問題が大きくなり、組織に居づらくなるのを避けようとしたからだ。 「自衛隊には厳しい上下関係があって、その場の空気に合わせなければならない。和を乱せば、無視や陰口を言われますから」(同) ■セクハラを超えた性被害を受けて限界に  この日以降、五ノ井さんは気持ちを押し殺しながら日常的なセクハラに耐えてきたが、昨年8月に我慢の限界に達する出来事が起きた。  8月3日から地方で約1カ月間の訓練があった。訓練場所に到着した日の夜、部屋で食事の準備をしていた五ノ井さんは、男性隊員から「料理はいいから接待しろ」と言われ、男性隊員十数人の輪の中に座らされた。宴会だったので、隊員らは酒を飲んでいた。  一曹Eと二曹Yが格闘の話をしていたところに、男性隊員S三曹が部屋に入ってきた。するとEは、Sに「五ノ井に首をキメて倒すのをやってみろ」と命令した。Sは、五ノ井さんの首に両手を当てて、そのままベッドに押し倒すような技をかけた。 「この時、Sさんが暴走し始めたのです。股を無理やりこじ開け、腰を振りながら陰部を押し当ててきました。一人で『あんあん』とあえぎ声みたいな声を出して、それを見ている周りの男性隊員たちは笑っていました。特にEとYはこっちを見ながら確実に笑っていました」(同)  続いて、2人目の男性隊員Kも「首をキメて」押し倒し、Sと同様の動きをした。さらに続いた。3人目男性隊員Rは同様に押し倒した後、五ノ井さんの両手首を押さえつけながら、何度も腰を振ってきた。 「全力で抵抗しようと、手首に力を入れて振りほどこうとしましたが、男性の力にはかないません。諦めて、終わるのを待つしかありませんでした。終わって体を起こすと、周りの男性隊員たちはこっちを見ていました」(同)  コトが終わると、Rからは「五ノ井って案外力が強いな」と言われた。五ノ井さんが抵抗していたことはわかっていたのだ。  一旦話題が収まったにもかかわらず、再び一曹Eが格闘技の話を面白おかしくしはじめて、「あれ、首をキメて倒すのどうやるんだっけ?」と笑いながら言い出した。すると、再びSが、五ノ井さんの首に両手を当てて押し倒し、腰を振ってきた。五ノ井さんの引きつった顔を見たSは「これ誰にも言わないでね」と口止めしてきたという。 「もう限界でした。訓練場所は、すぐに抜け出せる環境ではありませんでしたが、先輩の女性隊員と中隊長Mに相談して、帰りたいとお願いしました」(同)  先輩女性隊員は、最初は味方してくれたが、男性中隊長が「訓練は訓練だ」と言うと、「そうだよ、訓練は訓練だから」と態度を変えた。訓練はあと20日以上続く。これ以上耐えられないと感じた五ノ井さんは、訓練から抜けることを懇願した。だが、セクハラを受けたことが理由では、6月の時のように告げ口したと思われてしまう。母親が倒れたことにして、実家に帰れることになった。  この時、先輩女性隊員からは「一応、嘘ついていることは心の隅にでも置いておいてね」と言われた。エスカレートする性被害から逃れるための苦渋の判断にもかかわらず、被害者である五ノ井さんに非があるような言い方に聞こえた。 ■被害届を出すも不起訴処分  この8月の性被害の後、適応障害と診断され、五ノ井さんは休職することになった。被害については、まず、自衛隊の総務・人事課にあたる「一課」にセクハラ被害を報告した。だが、一課からは「8月のセクハラの件を見たという証言が得られなかった」と回答された。次に、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。 「警務隊の現場検証では、人形を使って再現しました」(同)  検察庁の捜査をへて、22年5月31日付で判決が出た。結果は、不起訴処分。五ノ井さんが不起訴の理由を尋ねると、検察官は「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない」という供述だったと説明された。そして「被疑者を有罪にするにはそれなりの証拠が必要だ」とも言われたという。 「その場で見ていた人がたくさんいたのに、なぜか腰を振ったという証言は出てこない。単に技をキメて押し倒しただけで、どうして笑いが起きるのでしょうか。その続きがなかったら、笑うわけがない」(同)  五ノ井さんは6月7日付で、検察審査会に不服申し立てをしている。  自衛隊内部では、この事件をどう捉えているのか。AERA dot.は五ノ井さんが配属された東北方面の部隊に事実確認すると、広報担当は「現在、部隊で調査中のため回答は差し控える」と答えた。調査結果がいつ出るかは未定だという。また、五ノ井さんが報告を上げた「一課」にも確認をしたが、「その件は一課長が対応したが、いまは不在」とのこと。代わりに対応した指令業務室の担当者は「事実を調査中のため、予断を持って回答することは差し控えたい」と回答した。なお、被疑者の処罰については、「判明した事実に基づき、厳正に対処する」とした。 (AERA dot.編集部 岩下明日香) ※「後編」では、五ノ井さんがセクハラを受けてもすぐに辞めなかった理由、顔と名前を出して告発に踏み切った経緯などを明かす。

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    他球団が欲しがる「巨人の中堅2人」 トレードなしで起用も増えず「もったいない」の声も

     現在セ・リーグでBクラスに沈んでいる巨人。新型コロナウイルスの集団感染で多くの選手が離脱して苦しい状況ではあるが、ここからの巻き返しに注目が集まる。そんな中、石川慎吾、重信慎之介と能力的には高く評価されているものの、なかなか出場機会が回ってこない中堅2人が存在する。  選手層の厚いチームという事情もあり、常時出場は難しいかもしれない。加えて、若手への切り替えを図る球団方針もある。出場機会が減ってしまうのは理解できるが、あまりにチャンスが少ない。他球団へ行けばレギュラー争いに加わることのできる実力があると言われているだけに「もったいない」の声も多い。  開幕から調子に乗り切れない巨人はペナント争いで首位から13ゲーム差の5位。先述のようにオールスター前にはコロナ禍の直撃を受け、7月19日からの4日間で首脳陣、選手、スタッフを含め計73人が陽性判定を受けた。  優勝争いは非常に厳しい状況ではあるが、今はチームが若返りの時期でもあり、有望株たちの奮起も期待されている。野手では坂本勇人の後継者と言われる中山礼都、レギュラー定着が期待される増田陸に加え、秋広優人、菊田拡和など有望株は少なくない。一方、投手でも大卒ルーキーの大勢がストッパーとして活躍し、赤星優志、山崎伊織、堀田賢慎など開花の兆しを開幕当初に見せていた将来のエース候補は多い。 「良い素材が多いのは間違いないが中心選手になるには数年かかる。若手の積極起用が苦戦にもつながっている部分もある。編成面も任される原辰徳監督は数年先を考えているのでしょう。オフの積極補強がなかったのを見ても、球団方針として決定事項なのかもしれない」(在京球団編成担当) 「(若手が期待通り成長すれば)将来的に黄金時代が来るかもしれない。しかし巨人は常勝を宿命づけられている球団。ファン、スポンサーなどが(勝てない)現状に対して不満を持っている場合も多い。中堅クラスの実力者をなぜ使わないのかという声も聞こえる。石川、重信はその最たる例です」(大手広告代理店関係者)  数年後を見据えヤングジャイアンツを育成するのはごもっとも。しかし巨人のファン、そしてスポンサーなどは「常に勝利」を求めている。結果を出せる可能性がある実力者を起用すべきとの意見もある。  そして、二軍などで結果を出しながらも「起用されない選手」の筆頭が石川だ。  石川は16年オフのトレードで日本ハムから巨人に移籍。加入1年目となった17年には99試合に出場して、57安打、5本塁打、20打点と存在感を見せたが、それ以降はなかなか出場機会を増やせないでいる。だが、先述のようにファームでは常に結果を残し続けており、一軍で使われないのが不思議な気もするほどだ。 「打撃はレギュラークラス。特に飛距離はトップクラスで逆方向の打球も簡単にスタンドインさせる。東京ドーム外野席上部看板にもバンバン当てています。外野守備も決して悪くなく標準以上でもある。出番は少ないですが確実に仕事をこなせるメンタルの強さもある」(巨人担当記者)  石川は今季もこれまで一軍の出場は13試合と少ないが、打率.353(17打数6安打)とハイアベレージをキープしている。新型コロナウイルスの影響で選手も大量に離脱しており、ここからチームの救世主的な存在となれるのか。  また、石川と同じ外野手の重信も実力がありながら出場機会に恵まれない選手の一人だ。早稲田大時代から安打製造機として知られ、15年のドラフト2位で巨人に入団。即戦力として期待されながらも、なかなかレギュラー奪取には至らず中堅の域に差し掛かっている。 「早稲田の先輩であるヤクルトの青木宣親のような活躍を期待されたが伸び悩んでいる。大学時代の活躍から、将来的にはメジャー挑戦もという声も上がったほどの選手だった。試合に出れば確実に結果を残すが、パフォーマンスが安定しないところもある。チーム編成上の影響もありレギュラー奪取とまではいかない状況が長く続いている」(巨人担当記者)  今のところ巨人ではともに一軍当落線上の選手にはなってしまってはいるが、他球団からの評価も高い。7月31日のトレード期限までに動きはなかったが、「試合に出さないのであれば欲しい」という声も多くあるようだ。 「石川は代打だけでは惜しい。スタメンで4打席立てばシーズン25本塁打は期待できる。重信は実戦タイプで伸び代もまだ感じる。試合に出続け経験を積めば大学時代のような存在感を示すことができる可能性もある」(在京球団編成担当)  これからのチームを担う若い選手を育てなければいけないチーム事情もある。かつての坂本や岡本和真などは若手時代から我慢して使い続けたことで、現在のような確固たる地位を築くことができた。だが、常勝チームがゆえに勝つことも求められる。そうなった場合、やはり石川、重信のような選手も積極的に起用しなければいけないような気もするが……。 「全ては原監督の考え方次第。これだけ苦戦をしても若手中心の起用法に変化はない。今後も同様ならば石川と重信の立ち位置も変わらないので、トレードの可能性も出てくる。2選手との交換でポイントを絞って戦力補強をしつつ若手育成をするのが現実的ではないか」(巨人担当記者)  巨人は今、ピンチを迎えている。球団史上2度目となるシーズン最下位の可能性もでてきた。若手へのシフトも重要だが、目先の1勝も大きな意味を持つ状況になっている。新型コロナウイルスの影響で離脱した選手が多い中で、石川、重信の起用は増えるのか。また、シーズンオフのトレードなど、名門チームでくすぶる中堅2人の今後はどうなっていくのだろうか。

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    【後編】元女性自衛官が「性暴力」を告発した理由 「セクハラを“なかったこと”にするのが許せなかった」

     元女性自衛官の五ノ井里奈さん(22)が、訓練中に受けた性暴力をYouTubeなどで告発して話題となっている。五ノ井さんは、「セクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、AERA dot.の単独インタビューに応じた。「前編」では具体的な性被害の実態を詳述したが、「後編」では五ノ井さんが自衛隊を志した理由、セクハラを受けてもすぐには辞職せず、今回の告発に踏み切った思いなどを聞いた。 ※「前編」より続く。 *  *  * 宮城県東松島市出身の五ノ井里奈さん(22)は、小学4年生の時に東日本大震災に見舞われた。小学校にいる時に被災し、学校の1階部分は津波で浸水した。五ノ井さんたち児童は2階に逃げて無事だったが、避難所生活の後、母親と再開できたのは1週間後。家に戻ると、1階部分は津波に流され、室内で飼っていた愛犬2頭が亡くなっていた。散り散りに避難していた父親と兄2人とも再会し、その後は公民館で避難生活を送った。  この時、災害支援に来てくれたのが女性自衛官だった。 「女性自衛官がお風呂を造ってくれたり、お風呂上がりには腕相撲をしたりして、遊んでくれました。私は小さい頃から柔道のオリンピック選手を目指していたので女性自衛官にそのことを伝えると、『柔道は続けたほうがいいよ。頑張ってね』と応援してくれました。私にとって憧れの存在でした。この時から、いつかは陸上自衛隊に入りたいと夢を抱くようになりました」(五ノ井さん)  11年たったいまでも、女性自衛官と連絡を取り合って、感謝の言葉を伝えているという。  公民館で3カ月過ごした後、五ノ井さん一家はアパートに移った。しかし、小学6年生の時に両親は離婚。がんの治療中だった母親が、3人の子どもを女手ひとつで育てることになった。  五ノ井さんは、中学・高校と柔道で全国大会ベスト16の成績を残し、山口県にある大学に進学する。だが自衛官への夢が捨てきれずに中退。自衛隊体育学校の柔道部に入って、オリンピックを目指すことにした。好きな柔道を続けながら、自衛官アスリートへの道を切り開こうとしたのだ。  2020年4月、晴れて陸上自衛隊に入隊する。だが、「前編」で記したように、配属された東北方面の中隊では日常的にセクハラをされ、ひどい性暴力を受けた。五ノ井さんは次第に追い詰められていく。 「常にセクハラはあったので、受けている方も感覚がまひしてしまうんです。外ではアウトなことも、自衛隊内ではセーフになってしまう雰囲気がありました。男性隊員は、コミュニケーションの一部だと解釈していたようです。その意識を改善させることはほぼ不可能です。結局は、被害を受けた女性隊員がいなくなるしか解決策はないんですよね。私も自分で自分の身を守るためには逃げるしかありませんでした」  五ノ井さんは、2021年8月に複数の男性隊員から受けた性暴力を機に、休職することになった(被害の詳細は「前編」参照)。精神科医からは、適応障害と診断され、3~4カ月分の薬が処方された。 「憧れていた自衛官になるという夢を失い、どん底でした。先の見えない生活に絶望して、好きな柔道もできなくなりました。震災の時に助けてもらった女性自衛官みたいになりたくて入隊したのに、内部ではあんなにひどい実態があるなんて思ってもいませんでした……」  精神的に追い詰められ、何度も自死を考えた。覚悟を決めた今年の3月16日深夜、思いがけないことが起こった。 「ベッドの上に正座して、よしっ、と決断した時に、震度6強のすごく大きな地震がきたんです。その時、思いました。ああ、ここで死んではいけない。地震のせいで、生きられなかった人がいるのに、自分は何をしているんだろうって」  東日本大震災の記憶がよみがえり、五ノ井さんは自死を踏みとどまった。「どうして被害者が泣き寝入りして苦しまなければならないのか。性暴力に負けてはいけない」と組織と闘うことにした。  昨年8月に受けた性暴力について、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。今年5月末に不起訴処分になったが、現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。  この不起訴処分に関して、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」副理事長の伊藤和子弁護士はこう疑問を呈する。 「圧倒的に男性が多い自衛隊のような閉ざされた空間で性暴力が起きると、『見ていない』と口裏を合わせる可能性があります。今回はどうだったのか。加害者が何人もいる場合、供述に矛盾が生じることがあります。一貫して細部まで同じことを言っているのか、そうでないのか。すべて同じであれば、口裏合わせをしている可能性もあるでしょう。丁寧に供述の評価が行われたのか疑問の余地が残ります」  不起訴後、五ノ井さんが検察官にその理由を尋ねると「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない(という供述だった)」と説明されたという。ただ、伊藤弁護士は、首に手をかけて押し倒している時点で暴行罪を問うことができるとも指摘する。 「少なくとも押し倒した所を見ている人がいたわけですから、立件すべきです。なぜ検察は暴行罪で起訴しなかったのかも非常に疑問です」  たとえ刑事事件で起訴されなかったとしても、民事裁判でハラスメントが認定されることもある。伊藤弁護士は「第三者委員会を立ち上げて、構造的な問題を調査する必要がある」と話す。 「男性隊員が女性隊員に対して、首に手をかける技をかけていること自体がハラスメントであるという認識があるのか否か。私的な生活の中で起きた出来事なのか、訓練中の行為なのか。訓練と称したハラスメントではないのかなど、さまざまな疑問が浮かびます。ハラスメント行為があれば処分に値する問題なので、組織としてきちんと調査をするべきです」  最後に、五ノ井さんは実名と顔出しで告発に踏み切った理由をこう話す。 「内部に残る自衛隊員から『なかったことにしようとしている』と聞きました。隠蔽(いんぺい)です。ここでなかったことにしたら、これから被害者がもっと増えてしまう。セクハラをしている人は、今でも普通に隊にいて、また新しい女性隊員が入ってきた時に同じことが起こります。それだけは阻止したい。あとは、謝罪がほしいです。その一心で声をあげようと決意しました」  五ノ井さんの悲痛な思いは、自衛隊員たちに響いているのだろうか。(AERA dot.編集部・岩下明日香)

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    乃木坂46で選抜入りゼロも…… 「将来のセンターになれる逸材」と評価急上昇のアイドルは?

     アイドルグループ・乃木坂46は新たな時代を迎えている。今年はグループ結成10周年を迎え、5月14、15日に日産スタジアムで開催された「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」には現メンバーだけでなく、西野七瀬、白石麻衣、生駒里奈ら卒業生たちが登場して公演を盛り上げた。  月日が流れると共に、メンバーが卒業していく。今年に入って1期生の星野みなみ、2期生の北野日奈子、山崎怜奈が卒業。1期生の樋口日奈、和田まあやも8月31日発売の30枚目シングル「好きというのはロックだぜ!」の活動を最後に卒業することが決まっている。  一方で、新しい風も。今年から加入した5期生は井上和、菅原咲月、川崎桜らを筆頭に加入から1年も経たずに人気メンバーとなり、次のシングルで何人が選抜入りするか注目されている。  乃木坂に在籍しているメンバーは現時点で43人。ただ、全員が同じステージで歌えるわけではない。各シングルの表題曲を歌う16~20名の「選抜メンバー」が選ばれる。他のメンバーは「アンダーメンバー」という枠組みの中で活動する。 「人気メンバーが選抜で固定されているので、アンダーから新たに入るのは容易ではありません。乃木坂に在籍して一度も選抜入りできずに卒業するメンバーも少なくない。それほど厳しい世界です。でも選抜メンバーの全員が日の当たる道を歩んできたわけではない。アンダーから大ブレークした代表格がエースの齋藤飛鳥です。グループの初期は白石、西野、生駒ら人気メンバーに隠れる形でアンダーの常連メンバーでしたが、モデルとして活躍してパフォーマンスを磨くことで大輪の花を咲かせた。選抜入りしなくても人気メンバーはいますし、活動の全てではないですが、彼女の歩んだ道のりは後輩に大きな勇気を与えている」(スポーツ紙の芸能担当記者)  ネクストブレークを狙う逸材たちの中で、テレビ関係者から高い評価を得ているのが4期生の林瑠奈だ。  民放のテレビ制作スタッフは「頭の回転が速く、バラエティー能力が高いと現場で評判です。お笑い好きで瞬発力があるだけでなく、場をうまく回すこともできる。共演した芸人やタレントの評判がいい。独特の感性と発言で、乃木坂の中では異質なオーラを身にまとっているのも魅力です」  林は順風満帆な道のりを歩んだわけではない。18年8月に坂道合同オーディションに合格するが、グループには配属されず坂道研修生として活動した後、20年2月に4期生に加入する。同じ4期生の中でも林より早く加入し、圧倒的な人気を誇る賀喜遥香、遠藤さくらに比べて当初は影が薄かったが、アンダーライブやグループ活動で輝きを放つこと存在感が増していく。歌唱力は乃木坂トップクラス。ダンススキルも磨かれ、ライブで見せるパフォーマンスが話題になった。  8月上旬にYouTubeでMVが公開された4期生の楽曲「ジャンピングジョーカーフラッシュ」ではフロントメンバーに抜擢され、大きな武器である歌唱力を発揮。コメント欄には、「林の歌声って世間が気づいたら爆発的に人気出るだろうな。そう思うぐらい魅了される」、「話題の5期生加入。でも、新4期生の覚醒がそれを大きく上回る。林瑠奈、ほんとうに凄すぎる。美しくなりすぎて、一時も目が離せない」など称賛の書き込みが相次いだ。  テレビ東京の帯番組「乃木坂工事中」でも話題に。「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」のパフォーマンスを取り上げた放送回で、MCを務めるバナナマン・設楽統が「林とかいい表情するよね。アイドルがステージで輝いているのを絵に描いたみたいな」と名指しで絶賛していた。  前出のスポーツ紙記者は「林は選抜入りにとどまらず、賀喜や遠藤のように将来はセンターになれる可能性も十分に秘めている。楽曲によって色々な表情を見せて観客の目を引きつける。中心の立ち位置でなくても『主役感』があるんですよね。ファンからの人気が高まっていますし、これからも快進撃が続くと思います」と期待を込める。さらなる活躍が楽しみだ。(梅宮昌宗) ※週刊朝日オンライン記事

    週刊朝日

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    巨人が“浅野以外”で欲しいのは? ドラフト補強ポイント【中日・広島・巨人】

     プロ野球のドラフト会議まであと約3週間となり、各球団の動向や候補選手についての報道も多くなる時期となってきた。今年は本命らしい本命は不在という印象で、近年多かった事前の1位指名公表も少なくなることが予想されるが、各球団どんな選手を狙うべきなのか。補強ポイントと、その選手がチームにマッチするかという点から探ってみたいと思う。今回は現在セ・リーグでBクラスの巨人、広島、中日の3球団だ。 *  *  * 【中日】  立浪和義新監督が就任し、期待が高かった中日だが最下位が決定的となっており、今年も苦しいシーズンとなった。昨年のドラフトでは長打力不足を解消するためにブライト健太、鵜飼航丞の強打者タイプの大学生外野手2人を指名したが、ともに確実性に大きな課題を残しており、一軍の戦力となるにはまだ時間がかかりそうな印象だ。若手野手では岡林勇希がブレイクし、土田龍空も成長を見せているが、根尾昂が投手に転向となり、石川昂弥も故障続きとなると、やはり今年も野手中心の指名と考えるのが妥当ではないだろうか。  そこで筆頭候補として推したいのが内藤鵬(日本航空石川・三塁手)だ。西武のところでも紹介したが、その長打力は高校生ではナンバーワンであり、今年の候補全体を見ても長距離砲としての素質の高さはトップという印象を受ける。仮に内藤を1位で指名できたとしても、大砲候補はプロで苦しむケースが多いだけに、もう1人くらいは高校生の強打者タイプを狙いたい。  石川、ブライト、鵜飼も右打ちだということを考えると左打者が狙い目になりそうだが、2位で残っていれば狙いたいのが西村瑠伊斗(京都外大西・外野手)だ。体はそれほど大きくないが、ミート力は高校球界でも1、2を争う存在で、技術で遠くに飛ばすことができる。足と肩も高水準で、広い外野を任せられるポテンシャルも備えている。下位で狙えそうな選手では田中多聞(呉港)も面白い。少し確実性には課題が残るが、大型でパワフルなスイングは高校生離れしたものがある。肩の強さがあるのも魅力だ。  投手では高橋宏斗を筆頭に若手に楽しみな選手は多いが、主力はベテランも多いだけにこちらも柱となれる人材は必要だ。2位で西村が残っていなければ、その枠でスケールのある投手に切り替えるのも一つの手だろう。候補としては先発タイプなら青山美夏人(亜細亜大)、リリーフタイプなら橋本達弥(慶応大)が面白い。青山は長身と長いリーチでボールに角度があり、力を入れた時のストレートの勢いは目を見張るものがある。また未完成な部分も目立つが、スケールでは大学生投手でトップクラスだ。橋本は東京六大学を代表する抑え投手。150キロに迫るストレートにフォーク、カットボールと決め球を複数備えている。ともに完全な即戦力という感じではないが、2年目から一軍の戦力になれるだけの潜在能力は十分にありそうだ。 【広島】  5位の広島は森下暢仁、栗林良吏、森浦大輔など即戦力を期待して獲得した投手がしっかり戦力になっている印象が強い。一方で野手は坂倉将吾、小園海斗の成長はあるものの、鈴木誠也の抜けた穴は大きく、昨年社会人の右打者を獲得はしているが、やはり強打者タイプは必要になるだろう。  高校生であれば内藤鵬(日本航空石川・三塁手)ももちろん候補だが、脚力のある選手を重視するチームであることを考えると少しマッチしないようにも感じる。そこで候補として推したいのが森下翔太(中央大・外野手)だ。東海大相模時代から評判の強打者で、1年春には早くも大学日本代表に選ばれている。その後は少し苦しんだ時期が長かったが、今年の春は打率3割をクリアし、課題の確実性も向上してきた。全身を使ったフルスイングで広角に長打を放つことができ、脚力と肩の強さも備えている。また今年は死球による骨折から早期に復帰するなど体の強さを見せているところも広島向きの選手と言えそうだ。  前述した通り、投手陣は確実に補強されてきているが、高校卒の若手となると遠藤淳志と玉村昇吾しか一軍の戦力になっておらず、二軍まで見ても2年目の小林樹斗くらいしか有望株は見当たらない。そうなると高校生のスケールのある投手を狙いたいところだが、候補としては斉藤優汰(苫小牧中央)、門別啓人(東海大札幌)などが挙げられる。斉藤はたくましい体格から投げ込むストレートが武器で、スピードはコンスタントに145キロを超える。まだ粗削りではあるが、今年の高校生投手ではスケールの大きさはナンバーワンと言えるだろう。  門別はオリックスのところでも紹介したが、スピードだけでなく総合力も高いサウスポー。将来の先発候補として期待できるだろう。大学生でも将来性とスケールを重視するなら仲地礼亜(沖縄大)が面白い。高校時代は無名ではあったが、大学で急成長した本格派右腕で、昨年の大学選手権でも好投している。森下に次ぐエース候補として狙いたい存在だ。 【巨人】  4位に沈む巨人は数字的には投手成績が課題のようにも見えるが、今年プロ初勝利をマークした投手が8人出ていることからも分かるように、今後の成長が楽しみな投手は少なくない。一方で野手は坂本勇人、丸佳浩、中田翔など中心選手にはベテランプレイヤーが多く、数年後には大きくメンバーを入れ替える必要があり、若手の有望株は必要不可欠な状況となっている。  そんな中で9月28日には早くも浅野翔吾(高松商・外野手)の1位指名を公言したが、これはチーム状況を考えても非常に理解できる選択と言える。右打ちの外野手で支配下の選手は外国人のウォーカーを含めて2人しかおらず、内野も含めてもパンチ力のある若手は多くない。浅野自身は中距離打者を目指すと話しているが、東京ドームが本拠地であればホームランを量産することも期待できるだろう。  ただ、巨人は抽選に外れ続けており、その時の選択も重要になってくる。過去には野手を外して投手に切り替えたこともあったが、チーム事情を考えるとやはり外しても野手を狙いたい。そこで、指名されず残っていれば推したいのが松尾汐恩(大阪桐蔭・捕手)だ。将来の正捕手候補としても当然魅力的な人材だが、巨人としては坂本の後釜候補として考えたい。地肩の強さとフットワークは抜群で、長打力十分のバッティングも高校生ではトップクラスだ。浅野、松尾ともに指名できないケースでも中日のところでも挙げた西村瑠伊斗(京都外大西・外野手)や、イヒネ・イツア(誉・遊撃手)など高校生のスケール型の選手を狙いたい。  投手は前述したように楽しみな若手が多いが、リリーフの手当てはしておきたい。4位以降で残っていれば検討したいのが小孫竜二(鷺宮製作所)だ。今年で大学卒3年目だが、短いイニングであれば球威で圧倒することができ、課題だった制球力も確実に向上している。リリーフなら早くから戦力となる可能性は高い。大学生であれば才木海翔(大阪経済大)も好調時のストレートは目を見張るものがあるだけに、セットアッパー候補として面白いだろう。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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    Aぇ! group 30歳JKの長女とアメリカンポリスの結婚の行く末は……!?【コント「Aぇ家族物語」超詳細レポ】

     9月28・29日、関西ジャニーズJr.・Aぇ! groupのアリーナ公演「西からAぇ!風吹いてます! ~おてんと様も見てくれてますねん LIVE2022~」が開催された。そこで披露された約20分にわたる爆笑コントの模様をお届けする[取材は28日夜公演。以下、ネタバレあり]。 「Aぇ家族物語、は~じまるよ~!」の呼びかけとともにスタートしたコントの設定は、「大阪にあるごく普通の家族、小島家の物語」。ジャニーズWESTの「道頓堀一丁目中間んち物語」のオマージュとも受け取れる家族コントに、関西ジャニーズの先輩後輩間で継承される歴史が垣間見える。  最初にステージに現れたのは、母(正門良規)。割烹着&トラ柄のスカートに完璧なおばちゃん口調で、“おかん”になりきる。「あの人ったらどこ行ったのかしらねえ。お父さーん!」と呼ばれて出てきたのは、ハゲ頭のカツラをかぶった父(小島健)。股の前でピースをし、「ちゃー[裏声]」と言う謎の決めポーズで、会場の笑いをかっさらう。 父:これで数々の女を落としてきたんや。お母さんもそうやろう? 母:そう……そうだったわね、お父さんのちゃーにやられてかれこれ数十年。  と、衝撃のカミングアウトをしたおかんは、息子も召喚。「あの子ったら変なとこ行ってないかな。せーちゃーん!」。幼稚園児姿の長男(末澤誠也)が「パパー! ママー!」とかわいらしく駆けてきたかと思うと、「はぁはぁはぁ……ちゃー」と気だるげに股ピース。「やめなさい、せーちゃんまでそんな。ダンディなちゃー、ええのよ」と母にたしなめられたせーちゃんは、「そんなことよりね、犬がおったから拾って帰ってきた」と報告する。「おいでー犬ー」と呼ぶと、犬(の着ぐるみ姿の福本大晴)が「あーんあおーんあんあん!」と四足歩行で登場した。せーちゃんは犬の言葉がわかるらしく、「僕かわいいでしょって言ってた」などと通訳する。  そこに、制服姿の長女(佐野晶哉)も帰宅。「どうも、JKよし子でーーーす!よし子実はJKだったんだー」。Aぇ! group結成以来約3年半、様々なコントで登場してきたよし子。今回はセーラー服の上衣をたくしあげて腹筋を丸出しにした、だいぶトガッた女子高生の設定だ。そんなよし子は、この日、家族に紹介したい人がいるのだとか。「リッチャードさーーーん!!」。バックステージから、警察官の格好をしたリチャードが花道を疾走してくる。 父:なんやねんこいつー? よし子:彼の名前はリチャード3世、よし子の、彼氏です。 全員:えー! リチャード:どうも初めまして、リチャ―ド3世です[ルパン3世のモノマネで]。アメリカンポリスやってます。 父:ちがう3世や、その紹介の仕方。お前ら一体どこで出会ったんや? リチャード:なにわ男子のライブで。  どうやらよし子のほうから、アンコール後に逆ナンパしたらしい。父に結婚を頼み込むよし子と、「わしゃ絶対認めへん」と突っぱねる父。急にピリつきだした雰囲気のなか、リチャードがぶっこむ。「今日は大事な話があって来たんです。最近噂になってる泥棒を知ってますか? その泥棒がここに逃げ込んだ可能性があるんです。しかもその泥棒は変装の達人で、この家族の中に紛れ込んでいる可能性があります」。わかっている泥棒の特徴は、「雨に反応する」こと。すると、あまりにタイミングよく、雨がパラパラ。突然犬が吠え出す。 犬:あん、あん、あんあんあんあん……ワイパー!![※福本の一発ギャグ] 全員:[犬を指差しながら]おったー! 犬:ばれたー! くっそー長年やってたギャグが反応してしまった。俺が最近噂の泥棒やー![犬の着ぐるみを脱ぎ、「泥棒」と書かれた黒のTシャツ姿に] 全員:えー! 泥棒:来いガキ! こいつは人質にもらった[せーちゃんを引き寄せる]。 せーちゃん:パパママー! 父:せーちゃんを返せ! 泥棒:返すわけないやろ人質やねん。  なにやらすごい展開になってきたが、せーちゃんを取り戻すべく、「今世紀最大の対決、小島家VS泥棒さん」が始まる。よし子が作った特設リングに上がったのは、父。「ワイパー!」と叫びビームを放つ。泥棒は「俺の技を真似するとは……」と吹っ飛んだが、すぐに必殺技「ビバ、コビバ[※小島の一発ギャグ]」で反撃してきたため、父、ノックアウト。 「ちょっとお父さんなに負けてんのよ」と、手厳しいよし子。そして父に代わりリングに立つと、「あちょー!」。「ほっほっほっ」という掛け声とともに、ハイキックや跳び蹴りなどアクロバティックなカンフーで泥棒を圧倒する。なお、20秒ほどのカンフーシーンは、実は当初2分間の予定だったそうで、佐野は後のMCで「マジで稽古4時間ぐらいやったからなー」と明かしている。  さて、このままよし子の勝利かと思いきや、泥棒は急に刀を持ち出し、切りかかってくる。絶体絶命のピンチにリチャードが飛び出し、身を挺してよし子をかばう。「オゥマイガーーー!!」。ターミネーター風に海老反りで倒れ込むリチャード。「来世でまた会おう」と言い残し、目を閉じる。よし子、激昂。「よくもあんた、私のリチャードさんのことを! あー、うわー!」。サイレンが鳴り響くと、太い三つ編みがちょんまげのように頭から生えた「スーパーよし子」モードに変身し、再び戦闘開始。ついに泥棒を追いつめ、「リチャードさんの仇!」とトドメを刺そうとした、そのとき。いつの間にか立ち上がっているリチャードが、「待って!!」とよし子を制止する。 リチャード:罪を憎んで人を憎まずです。もう十分でしょう。 よし子:リチャードさん……。 リチャード:人は誰しも、失敗をするものです。 よし子:でもあなた、こんなに切られたのに。泥棒さんのこと、許してあげるの……?  するとリチャード、満面の笑顔を浮かべ、泥棒を刀でプスリ。 泥棒:うわー! リチャード:許しませ~ん。やっていいことと悪いことがありま~す。 よし子:リチャードさん、これにて一件落着ね。お腹もすいたし、ご飯にしましょー! リチャード:行こう行こう![去り際、泥棒に近づき、]痛いやろー? 泥棒:痛い……。 リチャード:塩振ったろか?[目だけが笑っていない笑顔] 泥棒:うぁああああ怖い!! リチャード:行こうかー、ははははっ![せーちゃんを残し、小島家退散] せーちゃん:俺のこと忘れてない!?  次の日。よし子は恥ずかしがるリチャードに膝枕をし、家族の面前で思いっきりイチャついている。父はそんな二人を受け入れられない様子だが、母は「二人の愛の力のおかげで泥棒を退治できたんだから、結婚を認めてあげましょう」と口添えしてくれる。「よし子は平成4年4月5日[※445、つまりよし子]に生まれてきたんや……」と、娘の思い出に浸りはじめる父。ここで、よし子が実は30歳だったという「エグい設定」(佐野)が明るみに出るが、ひとまずそれは置いておいて、一同は父に結婚を頼み込む。 リチャード:お父さん、僕はよし子さんを幸せにすると誓います。だから娘さんを僕にください。 よし子:よし子からもお願いします。 せーちゃん:パパ、お願い。  ぎゅっと横並びで土下座する3人。泥棒も「なんか知らんけど、俺からもお願いします」とちゃっかり乱入し、せーちゃんとよし子の背中に乗って頭を下げる。「じゃあ私も入るわ」と、今度は母がよし子とリチャ―ドに乗っかるも、下から「うぉっ……」という声が漏れる。 よし子:けっこうお母さんがすごいのよ? せーちゃん:あっ、あー!!! 背骨が折れそう。 泥棒:僕、左足浮いてます![※母の体重も支えるよし子の負担を軽くするためだが、その分せーちゃんに重みが加わる]  どうにか5人がピラミッド状に組み上がった“立体的土下座”が完成したところで、ついに「わかった!」と父が折れ、結婚を認めてくれることに。みな大喜びするなか、泥棒がある「お願い」を切り出す。 泥棒:僕を家族に入れてくれませんか? ちゃんと犬もやりますんで。 母:ちゃんと犬もやるって、もう無理やわ。 泥棒:[再び着ぐるみの中に入りながら]こうやってこうやってこうやったら、わんっ、わぉん、くぅーん。 せーちゃん:あーほら、ほんまに家族になりたいって言うてるよ。 犬:わん。 母:いやいやいや、せーちゃん人質に取られてたのよ? あの人に。  すると泥棒、改め犬は、実力行使に。しずしずと母に近づき、セクシーなタンゴのメロディーに乗せて誘惑しはじめる。せーちゃんは通訳で協力。 犬:がるるるる。 せーちゃん:奥さん。 母:なんや、なにこれ? 犬:がるるるぅ。っあーーーん。 せーちゃん:俺のこの筋肉、すごいだろー[吐息]。 母:誰かせーちゃん止めて、この犬も。 せーちゃん:俺のさあ、一番色っぽいとこ見せてあげるわ[犬、キョトンと困惑した表情]。耳のほう見て、もっと近くで見て。 犬:がるるる。 母:どっちの耳やねん。 せーちゃん:左耳見て。きれいなもみあげだろう? 犬:がるるる、っふぉーーー!!! 母:全然かみあってへんから二人とも。 せーちゃん:いいから、奥さん[ピンクのライトのもと、母に顎クイする、犬]。 母:何してんのって気持ち悪いもう。 せーちゃん:落ち着いてー。奥さーん! 母:やめさせなさいせーちゃん、このわんちゃん捨ててきなさい早く。 せーちゃん:あぁ、もう仕方ないなー。チュッ[と投げキスをお見舞いする、犬]。 母:ずっと何してんねん、二人して。もうお父さんもなんか言うてよ! 父:俺ら、えぇ家族やなあ。 母:どこが!?(笑) ~終幕~  日ごろから「家族よりも一緒におる」(末澤)というメンバーたち。はちゃめちゃで息ぴったりな「小島家」の姿は、もしかすると、6人の日常とあまり変わりないのかも……?  面白すぎるコントからクールなライブまで幅広くこなすAぇ! groupが表紙を飾る10月4日発売の「週刊朝日」10月14-21日号には、この「家族物語」の写真3点を含む、23点ものカットで初アリーナ公演の模様を振り返るライブスナップ、撮り下ろしグラビアにインタビューなどが満載。大ボリュームでその魅力を紹介している。 【この日のライブ全体の詳細レポートはこちら】 【この日のライブのMCレポートはこちら】 (本誌・大谷百合絵) ※週刊朝日オリジナル記事

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    羽生結弦のいま 「目の前のことでいっぱいいっぱい。それがまた幸せだなって思えます」

     前へ、高みへ。羽生結弦がやるべきことに全精力を傾ける姿勢は変わらない。プロのフィギュアスケーターとして、ファンと共に幸せをかみしめる舞台への準備に余念がない。AERA 2022年10月10-17日合併号から。 *  *  *  プロ転向を宣言したあと、少しはスケート以外の楽しみを持ち、心身を休める時間ができたのかと思い、尋ねてみた。答えは予想したものではなかった。 「ほっとしたとか、落ち着いたとかは、全然ないです。プロになって1年目ですし、ルーキーみたいな感じで、やれることをしっかりやっていこうっていう意識が強いですね」  この言葉を聞いて、質問した自分の間違いに気づいた。そう。いま話を聞いている相手は羽生結弦だった、と。  挑み続けることに力を注ぎ続けてきた人だ。練習拠点だったカナダ・トロントでは、観光地にも、ダウンタウンにも行かないし、自分自身を「漫画やアニメに出てくる熱血系のアスリート」だと、2014年の夏に話していた。お気に入りの場所を聞かれ、「リンク」と言ったこともあった。何度か食事に誘って断られたスケート仲間が、いつになったら一緒に行けるのかを聞くと、「引退してからかなあ」と答えたという。  今回、話を聞いているときも、自分の生き方についてこう語った。 「スケートをやっていて、何かしら感情を表現して、苦しくて、つらくて。それがないと、やっぱり生きている心地がない」  今は、スケートを磨きながら、プロとして披露するショーの内容について試行錯誤を重ねている様子だ。 「今は、目の前のことでいっぱいいっぱい。一番詰まっていて大変です。練習もしなきゃいけないし、仕事もしなきゃいけない。それがまた幸せって思えます」  いつか彼にも、友人と長く語り合ったり、好きなことを楽しむ時間を設けたりするときがきてほしいと思っていた。だがそれは、まだ先のことなのかもしれない。(朝日新聞スポーツ部・後藤太輔) ※AERA 2022年10月10-17日合併号

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    Aぇ! group 「初心LOVE」の決め台詞は「なぁ、今もやで」!? 関西色全開の初アリーナ公演【超詳細レポ】

     9月28・29日、関西ジャニーズJr.・Aぇ! groupのアリーナ公演「西からAぇ!風吹いてます! ~おてんと様も見てくれてますねん LIVE2022~」が行われた。ユニット単独では“初関東&初アリーナ”となる大舞台。歌にダンス、コントにトークと、6人の全身全霊のパフォーマンスが吹かせた“Aぇ!風”。その力強さは、「えぇ風」どころかもはや「暴風」。終始会場を揺さぶり、圧倒した。28日夜公演の様子をお届けする。[以下、ネタバレあり]  セットリスト[※記事末尾に一覧を掲載]からは、彼らの「関西ジャニーズとしての誇り」がひしひしと伝わってくる。ライブの幕開けとともに極彩色の衣装で現れた6人は、「アホ新世界」(関西ジャニーズJr.)、「ええじゃないか」(ジャニーズWEST)、「がむしゃら行進曲」(関ジャニ∞)を披露し、どんちゃん騒ぎな“西からの風”をフルスロットルで吹かせた。お祭りムードで盛り上げながらも、さすがはアイドル。「アホ新世界」のサビ前の歌詞「いつでも帰ってきーや」は、代わりに福本大晴が「チューしよっか!」。はじける笑顔で、ライブ開始早々にファンを悶絶させる。  エネルギッシュな曲が続いたところで、上着を脱ぎはじめるメンバーたち。佐野晶哉が切り出す。「なんと、6人で作詞をして、僕が作曲をさせてもらった、Aぇ! groupの、Aぇ! groupの、Aぇ! groupの! 自己紹介ソングですどうぞー!」この日初めて披露する新曲のタイトルは、「僕らAぇ! groupっていいますねん」。グループ結成時の初舞台名を冠した曲名が、ファン心をくすぐる。佐野→小島健→草間リチャード敬太→正門良規→末澤誠也→福本の順に“らしさ”全開でメンバー紹介していく、その内容は……。[※以下、歌詞の一部を抜粋、()内はメンバーによる合いの手] 佐野:Aぇ! groupの可愛い末っ子です。カラオケ100点、お芝居暴走、甘えるお顔は年上キラーです(自分で言うな、まさや!)。器用貧乏(じゃなくて器用富豪)ドラムで胸を打つ。だけど胸キュンだけは照れるからしません(晶哉の胸キュン見てみたい)。じゃあ俺と、付き合う?[会場、悲鳴](くっさー! まさや!) 小島:俺様がリーダー(黙ってたらかっこいいんだ)。中身知れば~笑劇~だ(癖になって大好きだ)。生まれは北海道、育ちは沖縄県、これ全部嘘~(こじけん!)。舞台の(ビバ!)、本を書いて(ビバ!)、ピアノ弾かずに(ビバ!)、手を上げて(ビバ!)、365個の名言を生み出すぜ~(こじけん! ここらでおひとつお聞かせくださ~い)。割り箸のささくれには、気いつけや。 リチャード:こっからこっちが日本でこっからこっちがアメリカ(そうハーフ)。ぼくリチャード! この感じではんなり京都人やらせてもろてます。英語がしゃべれない(リチャ!)。ダンスがめちゃうまい(リチャ!)。このグルーブは真似できない(リチャ!)。好きな食べ物は千枚漬け、嫌いな食べ物ハンバーガー。フォーゥ!! 正門:(デニムと革ジャン愛してます)お前に、夢中やで。(髪をかきあげてセクシーに投げチュー)ふぅー[投げキス](きゃー!)。リア恋No.1、ギターの早弾きNo.1、あせ門ぽや門みんなの心の実家(まさかど!)。(まさ、かど、よし、のり、よしのり、フィーバー、イェーイ!)。みん、なで、さけ、ぼう、Aぇ! group、フィーバー、イェーイ!) 末澤:声高いー(耳が痛いースタッフさんイヤモニの音量下げてください)。[あまりのハイトーンボイスに、モニターに映る歌詞のフォントがひび割れている]。極小番長ー(サイレンボイス切り開いていく革命起こすぜこいつのPRIDE)。最年長ー(気をつけろ狂犬最年長だけど無邪気なKING俺らのお耳はいつもキーン)。(いじられてー)叫ぶ、嘆く、やってんなー!(せいや!)愛してる[指でハートを描く]。 福本:国公立大卒業したのにクイズ番組で(ギャグギャグギャグギャグ!)。でも根は真面目で誰よりアイドルギャップにやられて(きゅんきゅんきゅんきゅん)。可愛いお顔に(ドキドキドキドキ)。月曜日の(朝の顔)。ギャグ製造機が逆転勝利だ、いったいたいたい俺大晴!(ギャグのテーマは正門良規!)おはよー、ジョリジョリジョリ[ヒゲをこする仕草]、痛ーっ! 手から血ぃでたぁ!(ギャガ―で秀才でも俺らが救済どんな雨の日もこいつがいれば快晴)たいせい!(みんなの心の涙を拭う)ワイパー![※福本の一発芸] 全員:出会っちゃったのが運の尽き、俺らにしか満足できなくない?Welcome to the Aぇ! group time 弾けるぜ!今日が楽しくないわけなくない?笑っちゃえ。ははははははっ! 君がいてくれたら俺らの夢叶っちゃう。イェーイ!  終始、超絶早口&ハイテンションで進行していくハチャメチャソング。今後、ライブで盛り上げくれること間違いなしだ。  続いて始まったのは、メンバー一人ひとりがソロで歌い繋いでいく「個性爆発メドレー」。トップバッターの正門はギターを手に、「DAYBREAK」(男闘呼組)を熱唱。20秒間のイントロは、ギターサウンドが激しく主張する最大の見せ場。スクリーン上に、“自称ジャニーズNo.1ギタリスト”の鮮やかなピックさばきが大写しになる。他メンバーは休むことなく、全力でバックダンサーを務める。  次は末澤の「おおきくな~れ☆ボク!!」(知念侑李)。ピンクのポンポンがついた、真っ白なモコモコ衣装の末澤が現れた瞬間、その愛らしさに観客の頬は一気に緩む。「みんなを見下ろしたい」と歌えばメンバーはみんなしゃがみ、身長が高いツートップの小島と佐野はおんぶや肩車をしてくれる。Aぇ! groupの姫、すっかりご満悦な様子だ。  福本の「仮面舞踏会」(少年隊)では、突然シルエットクイズ2問が出題される。それぞれ「パイナップル」「舞茸」と答える福本だが、正解はどちらも、攻めた髪型にされたリチャード。怒るリチャードに目もくれず、「間違えても気にしない、それが大晴♪」。そしてお決まりの、「ワイパー!」。  佐野の「オレンジ」(SMAP)の演出は、過去に出演したバラエティ番組「生放送で満点出せるか100点カラオケ音楽祭」のオマージュ。スクリーン上の音程バーや、当日の衣装、見守る末澤・福本・正門のお祈りポーズまで、細かすぎる再現ぶりが笑いを誘う。無事100点が出てみなで抱きあうと、佐野は「この100万円でミュージックビデオを作ります!」。  同じくリチャードの「宙船」(TOKIO)も、ネタ演出。スタッフが青い布を揺らす手作り感あふれる海で、必死でオールを漕ぐリチャード。その後船はあっけなく沈没するが、今度は台車に乗り、両手で水を掻きながら花道を爆走する。こぶしの聞いた力強い歌声を響かせ、前へ、前へ、進む。  極めつけは、小島の「愛・革命」(滝沢秀明)。「悲しい夢もsexyも捨てないで そっと青春のsexyにつめて 時々それを開くと sexyな想い出がよみがえるsexy……」。あらゆる言葉をsexyで上書きした、小島らしい替え歌。高貴なビジュアルとテノールの美声が一層シュールさを引き立てる。  完全にお笑いモードのスイッチが入ったところで、コント「Aぇ家族物語」に突入。本場・関西の実力を見せつけた20分間の様子は、こちらで詳細にレポートしている。  MCタイムを経た後半戦も、見せ場や名シーンはてんこもり。ライブ初披露のオリジナル曲「Aっ!!!!!!」では、ピースサインを振り上げ、会場が一つになって踊った。曲前のMCでリチャードが「立ってもらっていいですか?」と呼びかけると、ファンは待ってました!とばかりに瞬時に起立。その様子にリチャード、「立つんめっちゃ速いな(笑)、足腰くそ強い」と、愛をこめたツッコミをおくる。  ジャニーズJr.のライブでは鉄板の嵐の名曲「Happiness」は、櫻井翔に代わり、福本が「上の、上の、上のほうー!」「みなさんも一緒に!」などと一生懸命煽る。加えてメンバー内では、“姫”末澤の奪い合いも勃発。佐野が末澤の頭を胸に引き寄せたかと思えば、リチャードはがっちりと肩を抱きに行く。そこへ福本がやってきて、頬をくっつけながら耳元で歌う。末澤は終始、まんざらでもない笑顔を浮かべていた。 「初心LOVE」では、西畑大吾(なにわ男子)の親友、正門が西畑パートを担当。道枝駿佑(なにわ男子)の決め台詞「ねえ、今もだよ」は、上目遣いの佐野がはにかみながら「なぁ、今もやで」と関西風にお見舞いする。6人それぞれの個性がにじむ“初心LOVEポーズ”も披露したが、そのキメキメぶりは「初心感がない(笑)」とファンの間で話題になっていた。  一転、神山智洋(ジャニーズWEST)が作詞作曲したオリジナル曲「Stray dogs.」では、振り幅の広さを見せつける。火柱が上がるなか激しく歌い、踊り、突如漂うギラついた野性味。佐野は「待ったなし曝け出してやるよ」と歌いながら、黒シャツを大きくはだけさせて胸元を露わに。さっきまでのおふざけモードはどこへやら、セクシーな顔を覗かせた。  フィナーレが近づくと、6人はファンへの感謝と誓いをまっすぐ言葉に乗せ、最後の挨拶をする。※メンバーのコメント詳細はこちら。そして、「約束するよ あの場所に連れてくから~♪」 。横一列のシンプルなフォーメーションで、歌詞を噛みしめるように、「My dreams」(関西ジャニーズJr.)を歌いあげた。純白の衣装に身を包んだ6人は、遠くを見つめたり、観客にほほ笑んだり、それぞれ胸に迫るものがあるような表情をしていた。  待望のファンサービスタイムが訪れたのは、アンコール。メンバーは「田」の字形の花道をくまなく回り、指差ししながら投げキスやエアハグをする。2曲目の「関西アイランド」(関西ジャニーズJr.)では、冒頭、正門が歌詞を間違え、突然「O×△□Yeah Yeah Yeah」と謎の煽りを始めたことで一同大爆笑。さらに、「さ~の~まさやです」の連呼が伝染していくギャグも始まり、いよいよカオスな展開に。ライブ幕開けに負けず劣らずのハッピーオーラで会場を満たした。  すべての曲を歌い終えたあとも、名残惜しくて再び雑談をはじめる6人に、末澤は「もう1回ここでMCしようとすんのやめて?(笑)」。一同は気を取り直し、「おっしゃ!」「行きましょか?」と手をつなぎはじめる。正門は「みなさんは心と心をつなげてください。気持ちをステージまで飛ばしてください」と会場に呼びかける。全力でペンライトを振ってこたえるファンたち。「届いてきた届いてきた!」「すげー」「でもみんなやったらもっと飛ばせるんじゃない?」「来てますよ!」。そのエネルギーを受けてか、福本が突然騒ぎ出す。「あっあっあっあっ! せーの、ワイパー!!」。本日何度目かのワイパー。今回は福本の手の動きにあわせて観客もペンライトを大きく横に振るが、あまりのシンクロぶりに、「めっちゃそろってる!」「すーごい景色」「動きなめらか(笑)」とお腹を抱える6人。小島は思わず、「みんな家でワイパー練習してる!?」と尋ねた。  場の空気が「高まってきた」ところで、いよいよ最後のイベントへ。正門が「みなさんは心の中で僕たちの名前を叫んでください」と呼びかけると、メンバーはマイクを床に置く。そしてつないだ手を上にバンザイしながら、生の声を張り上げる。「俺たちが、Aぇ! groupだー!」  パーンという破裂音とともに銀色の紙吹雪が舞うと、エンディングのBGMが鳴り響く。「幸せな時間をありがとー!」「みんな大好きやぞー!」。最高の笑顔を向けながらメンバーがセット奥へと下がるなか、最後尾の正門は出口のセットに頭をコツン! 観客の目に焼きついた最後の光景は、完璧なオチをつけた正門が少し恥ずかしそうに手を振る姿という、なんともほほえましいステージになった。 ~9月28日夜公演セットリスト~ (1)アホ新世界(関西ジャニーズJr.) (2)ええじゃないか(ジャニーズWEST) (3)がむしゃら行進曲(関ジャニ∞) (4)Firebird(Aぇ! group) (5)僕らAぇ! groupっていいますねん(Aぇ! group) (6)DAYBREAK(男闘呼組) (7)おおきくな~れ☆ボク!!(知念侑李) (8)仮面舞踏会(少年隊) (9)オレンジ(SMAP) (10)宙船(TOKIO) (11)愛・革命(滝沢秀明) (12)サムシング・ニュー(ジャニーズWEST) (13)オモイダマ(関ジャニ∞) (14)Aッ!!!!!! (Aぇ! group) (15)Big Shot!!(ジャニーズWEST) (16)へそ曲がり(関ジャニ∞) (17)SHAKE(SMAP) (18)Happiness(嵐) (19)初心LOVE(なにわ男子) (20)Stray dogs.(Aぇ! group) (21)ズッコケ男道(関ジャニ∞) (22)Oh Yeah!(嵐) (23)PRIDE(Aぇ! group) (24)My dreams(関西ジャニーズJr.) [Encore1]Break Through(Aぇ! group) [Encore2]関西アイランド(関西ジャニーズJr.)  Aぇ! groupが表紙を飾る10月4日発売の「週刊朝日」10月14-21日号には、本レポートがより楽しめる、この公演のライブスナップ23点を掲載。さらに、メンバーがこのライブへの意気込みなどを語ったインタビューや、撮り下ろしグラビアと、充実の特集となっている。 (本誌・大谷百合絵) ※週刊朝日オリジナル記事

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    「あっという間の上映終了」に原作者がモノ申す?映画「はい、泳げません」はなぜヒットしなかったのか

     このたび拙著『はい、泳げません』(新潮文庫)が映画化された。同書は水恐怖症の私が水泳教室に通い、鬼のように厳しいコーチから指導を受け、「なぜ泳がなければいけないのか?」「泳ぐとは何か?」などと疑問を抱きながら、泳ぎを習得していくノンフィクション。全編水中の様子を綴った実録であり、ストーリーとしては「泳げない私が泳げるようになった」という展開しかないのだが、渡辺謙作監督はこれを「記憶と再生の物語」に昇華させたのである。  聞けば、文庫本のあとがき(高橋桂コーチ、同じレッスンを受けた小澤征良さんとの鼎談)にある私の「泳げない人間というのは、愛に対する不安があるんですよ」というたった2行の発言をふくらませたらしい。泳げない人は愛する人が溺れている時に飛び込んで助けに行けない。つまりは人を愛せないのではないかと漠然とした不安を抱えているという発言なのだが、それを水難事故で息子を失ったトラウマに苛まれて記憶喪失に陥った主人公が水泳コーチに導かれて再生するというストーリーにしたそうで、私は監督のチャレンジ精神に心を打たれた。そして長谷川博己さん、綾瀬はるかさんという超豪華な共演。さらに歌唱力抜群のLittle Glee Monster(リトル グリー モンスター)が主題歌「生きなくちゃ」を熱唱し、試写室で鑑賞した私は不覚にも落涙した。  これは間違いなく感動作。大ヒットして原作者の私にも取材が殺到するにちがいない。カンヌ映画祭も夢ではなく、これは忙しくなるぞ、などと身構えていたのだが、全国封切りからわずか数週間で上映は打ち切られていた。特に取材の依頼もなく、気がつくと上映終了。あっという間に終わってしまったのだ。  なんで?  単に観客が不入りだったことが原因のようなのだが、それにしても判断が早すぎやしないだろうか。そういえば当初からSNS上では「観客少な」「2人しかいない」「大コケ」などと書き込まれていた。感想を読んでみると「コメディなのかシリアスドラマなのかよくわからない」「見どころはどこ?」「何が言いたいのかよくわからない」「メッセージを受け取りにくい」「共感できるポイントがない、お客さんもいないし」などと書かれており、もしかするとこれはノンジャンルで反応に困る映画なのかもしれない。  出演した綾瀬はるかさんでさえ「あんまり観たことのない作品で、じわーっと後からあーっと思い出すような映画」(公開直前イベント)と吐露していたくらいで、ストーリーではなく映像体験自体が「記憶と再生の物語」になっており、すぐさまコメントできない。昨今はコメントできないということを自分ではなく映画のせいにする傾向があり、早々に「誰も観ていない、つまらない映画」として片付けられてしまったようなのである。  ちょっと、待ってください。  私はそう訴えたい。原作者として言わせていただくと、この映画は観客にこう問いかけている。  あなたは泳げますか?  タイトルの「はい、泳げません」とはその回答例であって、みなさんはいかがでしょうか、と問うているのではないだろうか。  陸上生活を送る私たちにとって「泳げる」「泳げない」はさしたる問題ではないように思われがちだが、実は皮膚を一枚めくると、私たちの体内には水中での行動様式が潜んでいる。例えば、泳げない人は何かにしがみつく。私などもいきなり深いプールに入ると足が着かなくてパニックに陥り、コースロープなどにしがみつく。藁をもつかむ勢いなのだ。これは深層心理のようなもので、泳げない人はいつも何かにしがみつきたくて堪らないのである。  この映画の主人公、泳げない小鳥遊(たかなし)雄司(長谷川博己)も常に何かにしがみついている。いや、しがみつきたいのだ。バタバタした演技が目立つかもしれないが、これはしがみつきの表現なのである。一方、元妻の美弥子(麻生久美子)は「泳げる人」である。スイスイと猛スピードで泳げるので夫の雄司を見捨てて先に進んでしまう。基本的に泳げない人はしがみつくので離婚しないのだが、しがみつこうとしても美弥子のスピードに追いつけず、ふたりは離婚することになったのである。その点、新しい恋人の水野奈美恵(阿部純子)は「泳がない人」。泳げるか泳げないかは別として泳がない。浮き輪のような人で、それゆえ雄司は安心してしがみつけるというわけだ。  映画の登場人物たちはこうして水中のキャラクターを軸に描かれており、中でも私が刮目(かつもく)したのは薄原静香コーチ(綾瀬はるか)だった。その佇まいは実際に私を指導してくれた高橋桂コーチが憑依(ひょうい)したかのようで、指導法も再現されていた。本人はもちろん泳げる人だが、自分が泳ぐことより「泳げる」を人々に与えることによろこびを感じる。泳ぐコツは「泳ごうとしないこと」。泳ごうとすると体中に力が入って泳げなくなる。大切なのは力を抜いて伸びる。伸びるというより「伸びている」と確認する。それだけで大丈夫。泳ごうとしなければ泳げる。なぜならあなたはもう泳いでいるからです、と高橋桂コーチは私を導いてくれた。  生きようとしなくても生きちゃってるという境地なのだ。  綾瀬はるかさんの顔はまるで溺れる衆生を救う弥勒菩薩のようだった。そして最も印象深いのは夜のプールに仰向けになって浮かぶ姿。うっすらと涙を流しているようで、思わずもらい泣きしそうになる。この涙はアンデルセンの「人魚姫」が最後に流した涙ではないだろうか。海で暮らしていた人魚は陸に上がって初めて涙を流す。その初めての涙がお別れの涙だったという切ない物語。人を解き放すばかりで自分を解き放せない悲しみ。薄原静香コーチは人魚姫のように溺れる雄司を助けたし、陸上を歩くと激しい痛みに襲われる。「水泳はすごいんです」と叫んだ時の透き通る声は、魔法使いに奪われた人魚姫の美声を聞くようで私は打ちふるえた。渡辺謙作監督は意図していないと思うが、彼女の美しさは遙か北欧の海にも通じているようで、それゆえ私はカンヌを確信した次第なのである。 ちなみに映画「はい、泳げません」はミニシアターなどで上映中です。水中に入るつもりでじっくりご鑑賞いただければと切にお願い申し上げます。(ノンフィクション作家 高橋秀実/生活・文化編集部)

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    「妊活したいけど1回も性交していない……」結婚6年目夫婦の他人に言えない深い悩み

     今や、約5.5組に1組が不妊治療の検査や治療を受けたことがある時代。今年4月から不妊治療が保険の適用対象になったことで、より治療の間口が広がった側面もある。こうした中、不妊は未だ当事者が「身近な人にこそ話しづらい」と悩むテーマだ。  センシティブな内容であるがゆえに、誰にも言えない深い悩みを抱え、孤独の中に佇んでいる人は依然として多い。こうした当事者のさまざまな“孤独”を掘り下げながら、不妊治療の今を探る短期連載「不妊治療の孤独」。第一回前編は、妊活したいけれども「性交ができない」と悩む37歳女性の実態から――。 *  *  * 「妊娠の入り口にも立てていないことを、ずっと誰にも言えませんでした」  東京都在住の会社員、A子さん(37)。3年間の交際期間を経て、3歳年上の夫と結婚したのは6年前、A子さんが31歳、夫が34歳の時のことだ。自他共に認める仲良し夫婦で、互いを信頼し合っている。週末には二人で外食を楽しんだり、一緒にランニングしたり、どこにでもいる幸せそうな夫婦だ。  夫婦はある一点だけ、人に言えない悩みを抱えていた。それは、「性交ができない」という悩みだった。  身体的に何か問題があるわけではない。性欲もあるし、スキンシップも嫌いじゃない。問題は、“挿入”の一点のみ。それ以外、つまり挿入を伴わない性交であれば、何の問題もないのだ。  具体的には、こんな具合だ。A子さんは、挿入に対する恐怖感が強く、いざという時に体がこわばって萎縮してしまう。反射的に足に力が入ったり、股が閉じてしまうこともしばしばで、どうしても力を抜いて臨めない。  夫からどれだけ「大丈夫だよ」「リラックスして」と優しく声をかけられても、「絶対に痛いに違いない」という思い込みはどうしても拭えず、それが原因で、実はこれまで挿入を伴う性交は誰とも経験がない。  A子さんが怖がることで、夫との性交も、自然と途中でやめることになる。何度も挑戦はしてきたが、うまくいかないことが続き、「そのうちできるようになるよ」と辛抱強く待ってくれていた夫も、いつしか「無理にやらないといけないことじゃないから」と、挑戦から遠ざかるようになっていた。  誰に迷惑をかけるわけでもない、あくまで二人の間の問題だ。交際期間を含め、誰にも悩みを打ち明けたことはない。性交ができなくても、互いへの愛情に変化があるわけではなく、穏やかな日常を過ごしていた。  ところが、その誰にも言えない悩みが、A子さんが35歳の誕生日を迎えた頃から深刻味を帯びてきた。夫婦ともに「子どもが欲しい」という気持ちが強まっていたからだ。  街で子どもを見かけたら、「かわいいね」「うちも子どもがいたら楽しいだろうね」「私たちは……」という会話に自然となる。A子さんの後に結婚した友人も含め、同年代はベビーラッシュ。  子を持つ友人とランチをすれば「少しでも早く産んだ方が、子育てがラクだよ」、「35歳を過ぎたら妊娠率が下がるらしいから、早めに妊活を始めた方がいいよ」などと、悪気のないアドバイスが向けられる。「早く孫の顔が見たい」という親や親戚からの無邪気な声もプレッシャーだ。  そんな中、A子さんは「私たちは妊娠するステップの“入り口”にも立てていない」と焦りを募らせるようになった。  私たち夫婦のように「性交できない」という同じような悩みを持って妊活している人がいないのか、ネットで探したこともある。妊活のノウハウとして出てくるのは排卵日近辺に性交する「タイミング法」をはじめとした、性交ができる前提の情報ばかり。 「自分たちの状態がいかにマイノリティなのか、思い知らされたような気がした」  というA 子さんは同時に、年齢とともに卵子の老化が進むことや、タイムリミットという壁が存在することも知り、余計に焦りに火がついた。 「子どもが欲しいなら、性交ができるようにならないといけない」  思いが強まる中で、しばらく遠のいていた挑戦から、再チャレンジの日々が始まった。「何とかできるようになりたい」との一心で挑戦を重ねるも、どうしてもうまくいかない。このままだと時間が経つばかりで、自然に子どもを授かることは難しいままだ。  藁をもすがる思いで門を叩いたのが、不妊治療を行うクリニックだった。不妊治療を専門とするクリニックに、性交を一度もしたことがない夫婦が行くハードルも「相当なものだった」(A子さん)が、ネットの口コミで「些細なことにも耳を傾けてくれる先生」とあったのが背中を押した。  3年間の交際期間、6年間の夫婦生活の中で、一度も性交が実現していないこと。自分たちなりに試行錯誤を続けているが、どうしてもうまくいかないこと。妊娠を希望するようになって、今の状況に強い焦りを感じていること……。相手はいくら医師と言えども、初対面の他人に話すには、とても勇気がいる内容だった。  医師はゆっくりうなずきながら、顔色ひとつ変えずに話を聞いていた。その後、医師から発せられた言葉は意外なものだった。 「珍しいことではありません。今、そういう方がとても多いんですよ」  医師が言うには、同じように性交ができないという悩みを抱えて相談に訪れる夫婦は決して少なくないという。主に女性側の問題である「挿入障害」や、男性側の問題である「勃起障害」や「射精障害」、さらに性的な興奮が起きないなど、いわば性反応がうまく起こらない状態を総称して「性機能障害」と呼ばれることを知った。  A子さんの場合には、典型的な挿入障害にあたり、少しずつ慣らしていくことで改善されるケースも少なくないという。 「ただ年齢を考えると、あまり悠長なことを言っていられないのも事実です。性交渉の代わりになる手段を並行して試すことから始めましょう」  医師から提案されたのが、採取した精液を、針のない注射器=シリンジを使って膣に注入する「シリンジ法」と呼ばれる方法だ。Amazonなどの通販サイトなどでも手軽に入手することができ、ここ数年で妊活に使用するカップルが増えている。  タイミング法と同じく、排卵日近辺に行うことで、性交渉と同程度の確率で妊娠が期待できるという。使用するシリンジを見ると、膣内に入る部分は柔らかなゴム製で、太さは女性の指より細い程度。A子さんも「これなら、私でも大丈夫かもしれない」と思えた。実際、シリンジは問題なく挿入することができたことから、シリンジを用いたタイミング法に挑戦し始めている。A子さんは言う。 「いつまでも挿入ができない私は“異常”なのだと落ち込んでいましたが、先生の言葉で救われた。シリンジ法でネット検索すると、たくさんのカップルが活用している方法のようで、必ずしも性交しなくても妊娠の手段はあることに、まずは一安心。どうかこの方法で妊娠してほしいと願っています」(A子さん)  複数の医師によれば、性機能障害を持つカップルに共通するのは、性交はうまくいかずとも夫婦仲が良いこと。妊娠したいという希望を機に、医療機関を受診するケースが多い。不妊治療の浸透によって、不妊相談が一般的になってきた中で、「性交ができない」という悩みが表面化しやすくなったこともある。不妊外来で患者と向き合う千村友香里医師(さくら・はるねクリニック銀座)も言う。 「今の時代、“性交と妊活は別物”と考えた方がうまくいきやすいかもしれません」  晩婚化や女性の社会進出、共働き、現代の生活習慣、デジタルの普及……「性交ができない」妊活の背景には、さまざまな問題が絡み合っているようだ。こうした中で、「子どもは自然に授かるべきもの」と思い込み過ぎると、時に自分たちを追い詰めてしまうことにもなるかもしれない。  A子さんが受診した医師が「珍しいことではない」と言うように、性交を試みてもできない夫婦は少なくない。後編では、性交をパスして妊活に進む「セックスレス妊活」の葛藤や悩みについて。(松岡かすみ) 後編も読む→【年々増加する「セックスレス妊活」 性外来の医師が指摘する深刻な課題とは】

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    “ラジオ界の宝”ピストン西沢の「GROOVE LINE」、24年半の歴史に幕 「ラジオのために生まれてきた」

     J-WAVEの人気番組「GROOVE LINE」が9月29日に終了する。「自分がやりたいことができる環境をつくってきた」というピストン西沢さんの24年半とは、どんなものだったのか。AERA 2022年10月3日号の記事を紹介する。 *  *  *  あと十数秒で放送が終わる9月1日の夜7時前、ピストン西沢さんが言った。 「そうだ、この番組、今月いっぱいで終了です」  突然の終了宣言にリスナーはざわつき、DREAMS COME TRUEの中村正人さんは「ピストン西沢はラジオ界の宝。」とブログに投稿した。番組にはアーティストからの出演希望が相次いだ。スタジオでは物心ついたときから聴いていたというチャラン・ポ・ランタンが涙し、石井竜也さんが絵を贈るなど、ラスト1カ月はゲスト満載、祭りのような放送が続いている。  一貫してハイテンション、独特のトークとDJミックスで人気を集めるピストンさんは24年半、J-WAVEの夕方の時間を走り続けてきた。同じナビゲーターが続ける番組でさらに長いのは、同局ではクリス・ペプラーさんの「TOKIO HOT100」しかない。聴取率は6月の首都圏ラジオ聴取率調査(ビデオリサーチ)で同時間帯トップだし、スポンサーもついているが、10月からの新番組編成のために終了することになった。 「ラジオの自分は店じまいして、他の自分が今度はメインになるというだけの話です。やりたいことがいろいろありますから」  とピストンさんは語る。 ■ADから始めた努力家  そもそもバイリンガルのナビゲーターが主流のJ-WAVEに、なぜピストンさんが出演することになったのか? 「脳科学者にも言われたんですけど、僕は小さい頃から今まで子どもが興奮しているような状態がずっと続いてるんですよ。うるさい子どもだったと思うし、我慢しないと社会でうまくやっていけないことはわかっていたから、自分の能力でごはんが食べられるところを目指したんです」  選んだのは音楽の道だった。通産省(当時)の官僚だった父親が薦める企業には行かず、ディスコで、今でいうクラブDJをしていた。番組の初代プロデューサーで当時を知る杉山博さんは、 「彼がターンテーブルミックスを始めると客が集まってきてフロアがぎゅうぎゅうになるんです。とんでもなく人気のあるDJでした」  しかし、ピストンさんにはディスコより放送局の水が合っていた。声をかけられてFM横浜の深夜番組で初めてマイクの前に座り、J-WAVEのパーティーでDJをしたときに自らプレゼンして番組制作に携わるようになる。杉山さんは、 「人気DJなのに、一から番組作りを学びたいと言ってADから始めました。努力家で、でも振り切った面白さがあるやつなんで、スタッフの中でも瞬く間に知れ渡り、裏方よりしゃべったほうがいいんじゃないか、となったんです」 ■少しずつ陣地を拡大  1993年頃から番組に出演し、最初はですます調で真面目に話していた。3週目くらいに、留守番電話にリスナーが入れた鼻歌の曲名を当てる企画を始めた。ピストンさんは振り返る。 「それから番組がうまく回り出しました。僕は制作者としての勘が働いたから生き延びた。どうしたら面白くなるか、自分で矯正していったんでしょうね」  そして98年に「GROOVE LINE」がスタートした。ゲストをいじったり、リスナーとの電話を途中でブチッと切ったりと、J-WAVEらしくない、やんちゃな番組は評判になった。とはいえ、最初から好きなように話せたわけではない。局内には歓迎しない人もいた。 「昨日の放送でいいと言ってくれる人が局の中に1人増えたと感じたら、今日はもう少し言ってみようと、少しずつ陣地を拡大していきました。自分がやりたいことができる環境を作ってきたんです」  とピストンさん。傍若無人に聞こえるトークの裏には緻密な思考がある。松尾健司プロデューサーは、 「ただ話しているのではなく、番組が面白いのか、リスナーは喜んでいるのか、スポンサーがどう思っているかまで、360度が見えている。そんな人はそうそういません」  台本には曲名くらいしか書かれていない。あとはピストンさんが臨機応変に言葉を繰り出す。リスナーが飽きたと察すれば、すかさず言葉や行動で刺激する。ピストンさん自身も、 「僕がディレクターとして自分を見たら、これだけラジオに合ってるやつはいないと思いますね。ラジオのために生まれてきたやつだとも言えます」  人気は過熱し、2009年にHMV渋谷での公開生放送が終了するときには、ファンがフロアを埋め尽くした。  番組にはリスナーから日々1千通、2千通に上るメッセージが届く。ピストンさんはそこから世の中の動きやリスナーの思いを敏感に感じ取ってきた。  東京都板橋区でお好み焼き店「みりおんばんぶー」を営む佐々木拓・麻子夫妻は、仕込みをしながら番組を聴いて17年になる。投稿で番組とつながり、東日本大震災、麻子さんの病気、コロナと、危機に瀕するたびにピストンさんに励まされて乗り越えてきた。  番組での紹介でリスナーが来店するようになり、18日には17人が集まってリスナー会議が開催され、「最後まで番組を盛り上げていきましょう!」と乾杯した。参加したラジオネーム「Mr.ハラキリ」さんは多い日には50通ものメッセージを投稿し、10年間で4670回以上、番組で取り上げられた。 ■リスナーに寄り添う  やはりリスナーにはおなじみの「野球道」さんは仕事中にもネタを考え、生活が番組中心に回っているほど。他の番組より採用のハードルが高いだけに読まれたときの喜びは大きい。 「ピストンさんは一瞬のうちに順番を入れ替えたり、セリフ調にしたりして、より面白く味付けして読んでくれる。そのすごさは投稿した本人にしかわからないんですよ」  20代の「右手にコーラ」さんはトラック運転手をしていた5年前に番組を聴き始めた。毎日30通を投稿するが、採用されなくても番組を盛り上げる一助になればいいと言う。 「ピストンさんには恩があるんです。電波越しにDJの面白さを教えてもらって2年前に機材を買って練習を始めました。今はクラブでDJをしています」  ナビゲーターのトーク力は非常時に試される。東日本大震災後の不安な日々の中、いつものピストンさんの声にホッとした人は多かった。リスナーの気持ちに寄り添った情報発信は高く評価され、ギャラクシー賞ラジオ部門DJパーソナリティ賞を受賞している。  コロナで世の中が硬直したときも話題をそらさず、周りに感染した人はいますか、療養中のあなたに電話しますよ、と呼び掛けた。 「僕の中でラジオの重要な部分はやはりコミュニケーションなんです。みんなで同じ気持ちを味わって気が楽になったり、勉強になったり。共有と拡散です」 ■「今、すっごい自由」  今後、やりたいことの一つがSNS、YouTubeでの交流だ。たとえば、悩みや相談事をみんなで考える。生きている上で抱えているものを軽くしたり、やりたいことを我慢しない生き方を探すヒントになればいい。  番組終了後の同時間帯にはタカノシンヤさんと藤原麻里菜さんによる新番組「GRAND MARQUEE」が始まるが、ピストンさんの声は日曜夜7時の「DRIVE TO THE FUTURE」で引き続き聴くことができるし、YouTube配信も始めている。 「長くやっていて一番の大敵は自分に飽きちゃうことなんです。番組終了が決まってから急に楽しくなっちゃった。今まで番組継続に悪影響があるものは自分の中でアウトと縛ってきたけど、もう関係ないもんね。今、すっごい自由ですから」  28日は秀島史香さんと2人で進行する。29日の最終日に何が起きるかはわからない。(ライター・仲宇佐ゆり)※AERA 2022年10月3日号

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    男性部下からの“育休”相談に「負担が増える」とモヤモヤする43歳女性 妊娠を諦めた過去のある相談者に鴻上尚史が伝えた「あなたがいちばん納得のできる道」

     男性部下から育休を相談され、「仕事の負担が増える」と思ってしまうと訴える43歳女性。自身の妊活の苦しい過去も思い出し苦しむ相談者に、鴻上尚史が伝えた「相談者がいちばん納得のできる道」とは? 【相談159】男性部下から育休の相談。人員補充はなく、「仕事の負担が増える」とも思ってしまいます(43歳 女性 ひつじ)  鴻上さんはじめまして。私の悩みを聞いてください。  私はグループのリーダーに昇進しました。先日、男性部下の奥様の妊娠が判明し、育休を取得したいとの相談がありました。「おめでとう!」と思う気持ちも、育休を取ってほしいという思いもあります。一方で、育休の期間によっては、人員補充されないため「仕事の負担が増える」とも思ってしまいます。  私は35歳の時に結婚し、年齢的なこともありすぐに妊活しました。体外受精の際には、10日ほど毎日病院に通わなくてはいけない期間があるのですが、仕事が非常に忙しくなった時期があり、その時は治療を中断しました。理由として、忙しいと妊娠しにくいかもしれないと思った事もありますが、忙しい職場に遠慮した部分もありました。その後、数回体外受精をしましたが、妊娠できなかったと分かった時がとても辛く、4年ほどで妊活を終了しました。  中断したのも、妊活を終了したのも、最終的に自分が決断したということは分かっています。しかしながら、「私は仕事で子どもができなかったのに、他人の子どものために仕事の負担が増える」と考えてしまいます。さらには、「子どもがいないから昇進してしまった」とも思ってしまいます(産休や育休を取得していないため)。  このモヤモヤした気持ちをどのように考えればポジティブに思えるでしょうか。よろしくお願いします。 【鴻上さんの答え】 ひつじさん。モヤモヤしますね。それは当然の感情だと思いますよ。それでも、育休を相談されて、「『おめでとう!』と思う気持ち」や、「育休を取ってほしいという思い」を大切にするひつじさんは素敵です。 「忙しい職場に遠慮した部分」もあって、ご自分の妊活を終了したひつじさんですから、単純に「仕事の負担が増える」と反発しても無理はないところなのに、素晴らしいと思います。  それでね、ひつじさん。 「このモヤモヤした気持ちをどのように考えればポジティブに思える」のかという相談ですが、一番、ひつじさんが納得できる方法は、ひつじさんの考え方や受け止め方を変えるのではなく、会社のシステムそのものを変えようと試みることじゃないかと僕は思います。  ひつじさんは、「育休の期間によっては、人員補充されない」と書かれているでしょう。だから、「仕事の負担が増える」と思ってしまうと。それが一番のモヤモヤする原因なわけでしょう。  ですから、「育休の期間にかかわらず、必ず人員補充される体制」を会社に求めることが、昇進したひつじさんが納得できる道じゃないかと僕は思うのです。  ひつじさん。どうですか? 僕の言っていることは、ひつじさんの会社の現状を無視した、理想論でしょうか?  でも、誰かがいつかは「個人が負担を我慢する」という流れを止めないといけないんじゃないかと思います。  今、ひつじさんは、とても重要なタイミングにいると僕は思います。ひつじさんにとっても、会社にとっても、育休を求める男性の部下にとっても、そして、これから産休・育休を取る可能性のあるすべての社員にとっても。  ここでひつじさんが、気の持ちようで我慢したり、必死にポジティブになろうとしても、間違いなく、また同じ問題が起こるでしょう。そして、会社というシステムが問題になることなく、個人が負担を背負って苦しむことになるのです。  ここで、「育休の期間にかかわらず、必ず人員補充される体制」を作ることは、社員にとってはもちろんですが、会社にとっても将来的に間違いなく良いことになると僕は思います。社員のことを考えた手厚い福利厚生は、有能な人材をつなぎ留めたり、獲得したりすることの重要な要素ですからね。  それにね、ひつじさん。  会社と交渉してみて、100%の改善でなくても、いくばくかの前進が見られたら、それはひつじさんのモヤモヤを減らし、ポジティブになれることだと思うのです。  その交渉の中で、会社があまりに頑固なら、ひつじさんがモヤモヤしている「私が昇進したのは、産休や育休を取らなかったからですか?」というぶっちゃけた疑問もぶつけてみてはどうでしょうか? それは、会社が社員に負担を押しつけて、ひつじさん個人が我慢する現状に対しての抗議の石つぶてです。  もし、悲しい予測ですが、どんなに交渉しても会社が1ミリも変わらなかったとしても、ひつじさんの努力は未来につながる、貴重な試みです。後に続く人達がひつじさんの努力を忘れることはないでしょう。  どうですか、ひつじさん。  大変ですが、現状を変えようと試みることが、一番、ひつじさんの心を穏やかにすることなんじゃないかと、僕は思います。  心から応援します。 ■本連載の書籍化第4弾!『鴻上尚史のなにがなんでもほがらか人生相談』が発売中です。書き下ろしの回答2編も掲載!

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    『鬼滅の刃』竈門炭治郎の日輪刀の知られざる秘密 「刀鍛冶の里」で起こった“ある事件”とは

    【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。 『鬼滅の刃』アニメ新シリーズ「刀鍛冶の里編」の制作が発表されて以降、新情報はまだ解禁されていない(2022年9月30日時点)。このシリーズで新しく参戦する、恋柱・甘露寺蜜璃と霞柱・時透無一郎のティザービュジュアルや新PVの完成度の高さは、ファンの期待を高めている。放映時期、新しい声優メンバー発表が待ち遠しい今だからこそ、「刀鍛冶の里編」の見どころについて、放映前におさらいしておきたい。今回は主人公・竈門炭治郎が刀鍛冶の里で手にする、「新しい日輪刀」の謎について考察する。炭治郎の日輪刀は、刀鍛冶の里で起こる“ある事件”をきっかけに、大きな変化を遂げることになる。 *  *  * ■「英雄」が使う入手困難な「剣」  古今東西、物語のヒーロー(英雄)たちは、異能、優れた身体能力、稀有な道具を使って強大な敵と戦う。英雄と「剣」にまつわる伝承は数多くあり、石に刺さっていたアーサー王の名剣エクスカリバー(「アーサー王物語」)、リンゴの大木に突き立てられていたシグルズの名剣グラム(『ヴォルスンガサガ』)など、その由来は象徴的に語られている。『日本書紀』『古事記』に登場する、八俣大蛇(ヤマタノオロチ)の尾から見つかった草薙剣(くさなぎのつるぎ。※天叢雲剣 あめのむらくものつるぎ)もそれにあたる。  いずれも入手困難であること、他の物体から取り出されること、持ち主が運命的に“選ばれている”ことを想像させる語りであることが特徴だ。 ■『鬼滅の刃』の「日輪刀」の神話性 『鬼滅の刃』において、鬼と戦う鬼殺隊の隊士たちは、「日輪刀」と呼ばれる、太陽のパワーを秘めた刀を使用するが、不死に近い肉体を持つ鬼を倒すためには、この日輪刀が必須となる。 「日輪刀は 別名 色変わりの刀とも言ってなぁ 持ち主によって色が変わるのさぁ」(鋼鐵塚蛍/2巻・第9話「おかえり」)  日輪刀は原材料が「陽光を吸収する鉄」で、それだけでも神話的なエピソードだが、刀の持ち主が「道具」である日輪刀に「色変わり」という影響を与える相互性が興味深い。日輪刀の「色変わり」が、入隊試験を終えた鬼殺の剣士の第一の関門となる。 ■竈門炭治郎の「日輪刀」  炭治郎は水柱・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)の導きによって、元・水柱の鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ)から、剣術と体術の指南を受けた。コミックス1巻・第4話で炭治郎の説明とともに描かれている刀は、おそらく鱗滝から借りたものだ。これには、柱の日輪刀に刻まれている「惡鬼滅殺」(あっきめっさつ)の文字はなく、通常の刀であると思われる。2巻で炭治郎がはじめてもらう日輪刀にも刻まれていない。 「この刀の後から階級制度が始まり 柱だけが悪鬼滅殺の文字を刻むようになったそうだ」(鋼鐵塚蛍/15巻・第129話「痣の者になるためには」) 注※セリフ中では「悪」の表記 注※「この刀」=刀鍛冶の里で手にする新しい炭治郎の刀。300年以上前のもの。  炭治郎は激戦のために、何度か日輪刀を破損・紛失し、そのたびに自分の日輪刀の制作者である、鋼鐵塚蛍(はがねづか・ほたる)から厳しく叱責されている。しかし、炭治郎はもともと「水の呼吸」の使い手である。のちに「ヒノカミ神楽」を使うようになった彼の日輪刀にも、変化が必要だったはずだ。そんな時に、刀鍛冶の里で、炭治郎は「新しい日輪刀」と出会う。 ※以下、放映予定の「刀鍛冶の里編」の内容が含まれます。ネタバレにご注意下さい。 ■刀鍛冶の里での「事件」(1)  遊郭での戦いの際に、日輪刀を刃こぼれさせてしまった炭治郎は、鋼鐵塚から「お前にやる刀はない」と言われてしまう。新しい刀も届けてもらえなかった。炭治郎は鋼鐵塚と直接話をするため、刀鍛冶の里に出向くが、そこでいくつもの事案が重なって、300年以上前に実在したという天才剣士を模した「カラクリ人形」と戦闘訓練を行うことになった。  刀鍛冶の少年・小鉄の助力もあり、炭治郎の能力はさらに覚醒する。とうとう炭治郎が「カラクリ人形」に勝ったその瞬間、その人形の「体内」から、1本の日輪刀があらわれた。神話的物語において、「英雄」の条件のひとつである、「入手困難な剣」を炭治郎が手にした瞬間だった。この「天才剣士のカラクリ人形」に勝つことは、炭治郎にとって通過儀礼としての意味を持つ。さらに、この「剣」の持ち主は、炭治郎の祖先、炭治郎の耳飾りとも関係していた。  一見、唐突とも思える「カラクリ人形」の描写であるが、このカラクリ人形のモデルとなった剣士と竈門家の縁、「強い者」を倒すことで手に入れられる「最強のアイテム」というエピソード、そして、その剣が「体内」から出てくるところに、強い神話性が感じられる仕組みとなっている。これらは鬼滅の作者・吾峠呼世晴氏の周到な「仕掛け」であるといえよう。 ■刀鍛冶の里での「事件」(2)  この「天才剣士の日輪刀」は、そのまま使用できるわけではなかった。長い年月によって、著しく劣化していたからだ。そこで、刀鍛冶の里の「技の継承」が、この古い日輪刀をよみがえらせるために必要となる。上弦の鬼たちが刀鍛冶の里を襲撃してきたことにより、炭治郎たちは刀鍛冶を鬼から守らねばならない。 「天才剣士の日輪刀」を研ぐ鋼鐵塚は、顔を切られても、目をつぶされても刀の研磨をやめなかった。敵である上弦の鬼にすら「私とてこれ程集中したことはない!!芸術家として負けている気がする!!」と言わしめている。そして、小鉄少年も命をかけて日輪刀を守ろうとした。 「時透さん… お 俺のことはいいから…鋼鐵塚さんを…助けて…刀を…守って…」(小鉄/14巻・第118話「無一郎の無」)  刀鍛冶たちの熱い思いと技の継承が、炭治郎の「新しい日輪刀」に命を吹き込む。 ■完成された炭治郎の「日輪刀」  この「新しい日輪刀」は、『鬼滅の刃』のテーマともいえる「継承」を表現し尽くしたモチーフだといえるだろう。 「血の継承」のエピソードとして、竈門家が先祖から受け継いだ縁の深さが語られている。竈門家で相伝された「ヒノカミ神楽」は、数百年の時をへて、天才剣士の技を後世につなぐものだった。  次に「技の継承」であるが、これは刀鍛冶たちの日輪刀製作の様子からうかがい知ることができる。また、冨岡義勇と鱗滝左近次、ともに戦ってきた仲間によって研鑽されていった炭治郎の剣技も、「技の継承」を示している。「選ばれた血」だけが人を強くするのではない、炭治郎の成長には、多くの人たちの「思い」がつながっているのだ。  鬼の攻撃によってひどい傷を負った鋼鐵塚から、研磨が完成した日輪刀を手渡された炭治郎は涙を浮かべた。 「あっ刀… ありがとうございます 煉獄さんの鍔だ!!」(竈門炭治郎/15巻・第129話「痣の者になるためには」)  炭治郎の「新しい日輪刀」は、炎柱・煉獄杏寿郎の鍔がつけられたことで完成する。刀鍛冶の里では、この鍔がある1人の人物の命を救う。誰も死なせはしないと、言った煉獄の願いが、この鍔に込められている。たくさんの人々の心を背負って、炭治郎は戦う。  「刀鍛冶の里編」では、「新しい日輪刀」のエピソードひとつをとっても、これほど重層的な物語が展開される。続報が待ち遠しい。 ◎植朗子(うえ・あきこ)1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。AERAdot.の連載をまとめた「鬼滅夜話」(扶桑社)が好評発売中。

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    Aぇ! group「今が推しどき」「這いつくばってでも前に」 初アリーナでたてたファンとの誓い【メンバー詳細コメント】

     あの悔しさは、たしかに晴らした。  今年7月、関西ジャニーズJr.のAぇ! groupが出演するはずだったライブ「Summer Paradise 2022」がメンバーのコロナ感染で中止になったとき、SNSには人気チケットを手にしていた人々の悲痛な嘆きがあふれた。大切なファンを悲しませてしまったことは、誰よりも6人のメンバーたち自身が心を傷めたにちがいない。すぐに公式ブログ上で発表されたコメントの数々は、「その気持ち俺たちが責任持って請け負います」「もっと大っきくなって東京突撃します」「絶対に6人でまたリベンジするからな」「浮気せずに待ってて」などと精いっぱいファンの心に寄り添っていた。  そして、約束はすぐに果たされた。9月28~29日、単独ライブ「西からAぇ!風吹いてます! ~おてんと様も見てくれてますねん LIVE2022~」を開催。しかも会場のぴあアリーナMMは、7月のライブで予定されていたTOKYO DOME CITY HALLの約4倍のキャパシティを持ち、ユニット単独では記念すべき“初関東&初アリーナ”公演となった。さすが、オリジナル曲「Stray dogs.」で「We’re like a stray dogs」とシャウトしているメンバーたち。ハングリー精神で、見事にピンチをチャンスに変えた。  28日のライブ当日。大舞台に立った6人は、終始、うれしくてたまらないといったキラキラな笑顔を投げかけた。そして、ときに髪を振り乱して全力で踊り、ときにマイクが割れるほど必死に叫び、頻繁に本場・関西仕込みのハイレベルなコントを炸裂させた。観客たちは必死でペンライトを振ってボルテージを上げたり、ほほえみながら見守ったり、まさに“おてんと様”よろしく暖かに6人を包み込んでいた。  関西ジャニーズとしての誇りを胸に、しっかりと爪痕を刻み付けたメンバーたち。フィナーレでは、それぞれ自らの言葉を噛みしめるように、“次の約束”を口にした。 草間リチャード敬太 えー本日は皆さん、ご来場で、ごらい、噛んじゃったー(笑)。ご来場いただきまして、誠にありがとうございました。僕たちAぇ! groupにとって初となる単独アリーナ公演、どうでしたか?[会場拍手] ありがとうございます。もうそれ以上の拍手を僕から送りたいです(笑)[自分でも小さく拍手]。このね、曲もそうですし、コントもそうですし、もうみんなで一体となって手振ってる感じ、ペンライトばーって振ってる感じ。めちゃめちゃ楽しい。めちゃめちゃ綺麗やし。みんなが出し切ってくれるこの、この感じがすごく伝わってきます。それに負けへんように僕もうわーってやってたら、バテそうになりました(笑)。いやでも、ほんまにそこで感じるエネルギーってすごいなって思うので、これからも僕たちにエネルギーを届けてください。僕らからもエネルギーを送ってます。エネルギーを交換しあいましょう。またこういう場を持てるように僕たち頑張っていきますので、ここからも一緒に上を目指して楽しく歩んでいきましょう。 福本大晴 Aぇ!のライブとしては1月に関西Jr.のライブやってからかな? 本当に久しぶりって感じがして、みんなのペンライトが見えた瞬間に「あ、やっと会えた!」っていう気持ちがあって。で、そのペンライトがバーって、声出されへんぶん、めっちゃ楽しそうに振ってくれてんのがさー、もうすっごい楽しくて。で、俺らが楽しなってんのを見て、(みなさんも)楽しなってるでしょ、絶対?(笑) だからこうお互いに支えあって、なんか人間してるなって感じがして、本当に最高です。タイトルにもありますけどね、西からAぇ!風吹いてます。その勢いを、本当にめちゃめちゃ感じています。なにわ(男子)がデビューして、(関ジャニ)∞さんは日産スタジアムでライブをやって、ジャニーズWESTさんは東京ドームでライブをして、で、僕たちは今、アリーナに立っています。でもね、僕、Aぇ! group結成してプロフィールのところの夢に5大ドームツアーするって書いてるんすよ。だからこのアリーナはまだ通過点です。その5大ドームツアー、夢叶えた先にもっとでっかい夢が待っているかもしれません。なのでみなさん、夢を叶えるため、僕たちも支えるんで、お互い支えあっていきましょう。 末澤誠也 みんなに本当に感謝です。忙しいのにさぁ、足を運んでくれてね。やって平日やん。なんで平日にライブすんねんって思ったやろ? ……そりゃしゃーない(笑)。でもさ、もっとたくさんの場所でみんなと楽しい時間空間を作りたいなっていうのは今日改めて感じました。僕、あのー、ほんまにAぇ! group好きなんですよ。信頼もしてるし。だから全然不安がなくて。そう、だからね、みんなも俺らのことほんまに信用してほしいね。信用してくれとるって信じてるけどね。俺たち絶対後悔させへんし、Aぇ! group応援しててよかったなって思ってもらえるように、がむしゃらに全身全霊で、プライドかけてやっていきたいなと思ってます。みなさん、Aぇ! group、今が推しどきです[うんうんとうなずきながら、自信ありげな表情]。Aぇ! groupってさ、アホなことばっかりするやん。でもみんなノリに付きあってくれるやん。自分たちが楽しい面白いと思っていることをみんなも楽しんだり笑ったりしてくれてるっていうのがすごい僕はうれしいし、これからもそういう関係でいられたらなと思っております。みんな頼むよ! これからAぇ! groupまだまだいくからね! ここで終わらんよ! これからもずっとついてきてください。 佐野晶哉 本日は「西からAぇ!風吹いてます!~おてんと様も見てくれてますねんLIVE2022~」にお越し下さいまして、本当にありがとうございます。「吹かせます(※昨年まで放送されていた冠番組タイトルから)」じゃないんですからね、「吹いてる」んですから! 吹かせてくれてるのは紛れもなく、僕たち6人ではなくてこの会場、全国世界にいるAぇ!を好きでいてくれてるみんなのおかげです。今年の夏はほんまにたくさんの経験させてもらえた夏で、(関ジャニ)∞さん(ジャニーズ)WESTさんの背中を間近で見させてもらって。今までももちろんめちゃめちゃでかく見えたけど、初めて(ライブで)バックにつかせてもらったら、もうね、MAXだと思ってた憧れの気持ちがもっともっと好きになって。こんな先輩勝てへん、すごすぎるて、って悔しい気持ちもたくさんあるけど、Aぇ! groupにしか出せへん空気感も絶対あると思うし、もし今なくてもこの6人とこのみんなとやったら絶対見つけていけると思ってるし。今年の夏、スタジアムっていう7万人のとてつもなくでかい野外の景色[※7月、関ジャニ∞が日産スタジアムで行ったライブ『18祭』]も見せてもらって、また夢も広がっているので、これから本気で戦っていくので、僕たちについてきてください。 小島健 みなさん、本日はご来場いただき誠にありがとうございました。もう本当にこのライブ楽しくて。リハやったらただただ走ってるところとかも、みんながおるから俺たちめちゃめちゃ楽しくて。このステージにおるときは、Aぇ! group、無敵になれます。だから今後ね、僕らがこう失敗とかすることもあるやろうし、ちょっと間違えちゃうこともあるやろうし、つまづくこともあってコケちゃうかもしれへんけど、その度に俺たち立ち上がって、それはみんながおるから立ち上がれて、這いつくばってでも立ち上がれんくても、前に進んでいきます。それがAぇ! groupなりの、俺たちなりの王道やと思ってるんで。その道で進んでいくんで、みなさん覚悟決めて俺らについてきてください。これからもよろしくお願いします。 正門良規 改めまして本日はご来場いただき本当にありがとうございました。ちょっと眺めさせてください、この景色を[メンバーカラーの青いペンライトが一斉に振られるのをゆっくり見渡して]。ありがとうございます。いや本当にね、今年はAぇ! groupとしてみなさんに会うことはできないんじゃないかなって考えたこともありました。それがこういう形で実際に顔と顔を見あわせながら、同じ空間で、同じ空気吸って、同じ時間を過ごしてる。これほど尊いことはないなと。みなさんの顔を見てパフォーマンスができる幸せ、ね、声こそ出せなかったり、まだマスクをつけてたりとか、みなさんにご協力していただいている部分もたくさんあるんですけども、みんなでつかみ取った、みんなでここまできたと僕は本当に思っています。小島の名言にもありますが、俺たち全員でAぇ! groupです。みなさまどうぞこれからも末永くもっともっとたくさんの景色を、もっともっとたくさんの思い出を共に作っていきましょう。 雨降って、地固まる。おてんと様がいる限り。 「今が推しどき」なAぇ! groupが表紙を飾る10月4日発売の「週刊朝日」10月14-21日号は、メンバーがこのライブへの意気込みなどを語ったインタビューや、数々の写真で公演の模様を振り返るライブスナップ、そして撮り下ろしグラビアなど、計12ページの大ボリュームでその魅力に迫る。 (本誌・大谷百合絵) ※週刊朝日オリジナル記事

    週刊朝日

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    深澤辰哉「You Tubeはすっぴんで」に込めたまっすぐな思い 「一番近くにいる人」とは

     セカンドアルバム「Snow Labo.S2」で、ダンスナンバー「Movin’ up」を担当したSnow Manの深澤辰哉さん。デビューからいままで変わらない、グループらしさ、自分らしさについて語った。AERA 2022年10月3日号から。 *  *  * ――2ndアルバム「Snow Labo.S2」は、メンバーが一人一ジャンルを担当して選曲を行うところからスタートしたという。ユニークな制作スタイルだ。 深澤辰哉(以下、深澤):Snow Manは「これ」という一つのイメージにとらわれないで、いろいろなジャンルに挑戦していく、という意味で「Labo(研究所)」なんです。1stアルバムではできなかった「こんな曲もやっちゃうの?」というジャンルにもチャレンジしているので、今のぼくらだからこそ広げることができた「表現の幅」を楽しんでもらえると思う。  アルバム全体の候補曲を一から決めるとなると、全員が100曲近い楽曲を聴かなきゃいけない。でも今回は、自分の担当ジャンルの候補十数曲の中から3曲くらいに絞って、メンバーにプレゼンを行って、そこから全員で決める形にしたんです。これなら自分の担当ジャンルにたくさん時間を使えるから、細部にこだわる余裕と責任感が生まれる。俺も「中途半端な楽曲は作れないぞ!」という気持ちになりました。 ――担当したのはグループの真骨頂ともいえる「ダンスナンバー」。「Movin’ up」は、エッジの利いたサウンドに加え、「今」に満足せず、さらなる高みを目指す歌詞が印象的だ。 ■自分たちを鼓舞する 深澤:歌詞も「対自分たち」を意識して作った、自分たちを鼓舞する楽曲です。  曲作りにもけっこう踏み込んで意見を言わせていただいて。もともと間奏がなかった箇所に「どうしてもここに間奏を入れたい」とか、「このフレーズは頭に残るけど、聞き馴染みがありすぎるので、ちょっと変えたい」とか、いろいろお願いしました。個々がそうやって制作した「より良い一曲」が集まって、本当にいいアルバムができたと思う。このアルバムのツアーも始まりますが、「Movin’ up」は激しいダンス曲になると思うので、パフォーマンスにも期待していただきたいですね。 ――「Movin’ up」には「本当の敵は自分自身だろう」という歌詞が出てくる。自身もそう感じる瞬間はあるかと尋ねた。すると、グループの中で率先してボケたり三枚目役を引き受けたりする深澤の、意外な一面が見えた。 ■「今の自分」がらしい 深澤:もともと、めちゃくちゃ人見知りなんです。すぐ「あ、これはダメだな」と、マイナス思考になってしまう。特に「俺のことを知らないだろうな」という人が多いと、前に出ていけない。  これはちょっと前の話ですが、「櫻井・有吉THE夜会」に出演させていただいたとき、そんな人見知りの自分が思いっきり出てしまって、一回もしゃべれなかったことがありました。落ち込みましたね。「夜会」は(Snow Manの冠番組の)「それSnow Manにやらせて下さい」と同じスタッフさんが関わっているので、自分が抱える悩みを打ち明けて話を聞いてもらったりしました。  でも、そのときの大きな後悔と反省があったからこそ、今はだいぶ殻を打ち破って出ていけるようになったと思う。今もネガティブな思いが消えたわけじゃないけど、考え過ぎないことを心がけて、自分からしゃべるようにしたらラクになりました。結局、何事も自分次第なんですよね。自分が変われば周りも変わる。もともとの俺と今の俺は相当違うけど、「今の自分」が、一番「自分らしい自分」だと思います。 ――Snow Manの前身となるグループに加入したのは17歳のころ。これまでさまざまな岐路があった。デビューを目指し、試行錯誤しながら長い道を歩き続けたが、「選んだ道は全部間違ってなかった」と感じる。 深澤:昔はけんかもしていました。でも、グループとしてはずっと仲は良かった。後輩たちがデビューしていく中で、同じような複雑な感情を共有できる人って、Snow Manのメンバー以外いない。そりゃ大切にしたい人たちです。でも、だから、仕事の話ができなかった。仕事の話になると少し変な空気になるし、それも嫌だった。お互い「言わなくてもわかるだろ」という勝手な思い込みもありました。  今思うと、もっと早く話せばよかったのかもしれない。でも、仕事の話ができなかったからこそ、今のSnow Manがあるのかもなぁ、とも思うんです。人生って少しのことで変わっちゃうから。正解は誰にも分からないけど、決断する場面、場面で、きっと正しい方を選んでくることができた気はします。  そもそも、俺はカッコいい路線でいきたかった人間です。滝沢(秀明)くんとA.B.C-Zの河合(郁人)くんに出会って、滝沢くんに「お前はそっちじゃない」と言われて、仕方なく三枚目をやったから今の自分がある。昔から人に恵まれているし、運がいいんです。なんだかわからないけど、いい方向に進めるんです(笑)。 ■満足はしていない ――いざデビューを果たすと、CDはミリオンセールスを連発。破竹の勢いで活躍の場を広げているが、現状の満足度を尋ねると不敵な笑みを浮かべた。 深澤:だって俺、「Movin’ up」を作ったんですよ?(笑)。満足はしてないです。  でも、Snow Manが世間の人に「すごい」と言ってもらえるのは、支えてくれているファンの人たちがすごいからなんです。何かあるとSNSのトレンドに入るし、反響の大きさに俺らが「うそ!?」となるときもよくあります。そこに対しては、本当に感謝してもしきれません。  あと……自分たちのことを言うのはアレだけど、デビューさせていただいて2年半経ちますが、何かを届けるときの熱量の高さは、変わらずキープできていると思います。歌番組に出る前は、今も必ず30分はダンス練習をします。そこは自分が所属しているグループながら、いいなあと思う。そういうのは、きっと見てくれる人に伝わると思う。今まで通り「らしく」努力を続けていけば、もっともっとぼくらを応援してくれる人が増えてくれると思っています。 ――深澤の名を検索すると、上位にサジェストされるのが「リアコ」というワードだ。リアルに恋しているの略語で、「推し」ではなく、リアルな恋愛感情を抱くことを指す。Snow Manの“リアコ枠”として人気を誇っている。 深澤:それ、よく言われるんですけど、自分では全然理由がわからなくて。たぶん、「普通」だからでしょうね(笑)。どこにでもいそうだし、本当にその辺にいますし。昨日も買い物をしていたら、「ファンです」という人と居合わせて、「そうなんだ、何買うの?」とか普通にしゃべりました(笑)。そうやって人と話すのが、息抜きにもなる。こうしてインタビューを受けているときも、番組収録中も、原宿を歩いてるときも、俺は「同じ」なんです。人に信頼してもらうには「作らないこと」って大切だと思うから。  だから俺、YouTubeに出る時はすっぴんで出たいんです。テレビ番組に出演する時はちゃんとメイクしますけど、主にファンの人に届けるコンテンツでは、作りすぎた「アイドル」ではなく、ラフな自分でいたい。作った俺が話す「思い」は届かない気がして。俺はいつまでもファンの「一番近くにいる人」でいたい、と勝手に思っているんです。 ――今年30歳を迎えた。憧れる男性像を尋ねた。 深澤:滝沢くんと河合くん。自分が追いかけた先輩方はやっぱりすごかった。憧れますね。滝沢くんには、「面倒を見た後輩の中で、お前がダントツで手がかかった」と言われますけど、自分としては素直でいい子だったと思うから、ちょっとわからない(笑)。でも、見捨てないで育てていただきました。自分が与えてもらったように、いつか誰かにいい影響を与えたい。そんな人になれたらいいですね。 (ライター・大道絵里子)※AERA 2022年10月3日号

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    サウナブームの意外な“落とし穴” 疲労の専門家は「快感あっても頭と体は疲れるだけ」と指摘

     空前のサウナブーム。「ととのう」快感を求める愛好家が増える一方で、人によっては「疲れた」「翌日がだるい」というマイナスの意見もある。疲労の専門医によると、快感を得られたとしても、実は脳や体にはとても大きな負担がかかっているため、心臓や脳の疾患リスクが増大する危険もあるという。サウナ好きな筆者には耳が痛い話だが、「気持ちいい」だけではないサウナの「リスク」を聞いてみた。 *  *  * 高温のサウナで汗をたっぷりかき、冷たい水風呂へ。ほてりを冷やしてからは外気浴。イスなどに腰かけてぼーっとリラックス。サウナ好きにとって、この「ととのう」状態は、何よりも心地よい時間である。  サウナ大国であるフィンランドの大学などの研究論文によれば、サウナに入る頻度が高い人は、それほど入らない人よりも健康長寿で心臓疾患や認知症のリスクが低くなる、との結果が示唆されたという。気持ち良くて、健康にもプラスに作用するなんて最高ではないか。  だが、疲労の専門家で「東京疲労・睡眠クリニック」院長の梶本修身医師は、この論文に疑問を呈する。 「私もこの論文を読みましたが、『サウナに入る頻度が高いから健康』と解釈できる一方で、『健康な人でないとサウナには頻繁に入れない、だからこの結果が出た』という読み方もできるんです。日本人も体調不良や病気なのにサウナに入る人はそうそういませんよね」  梶本医師はサウナの健康効果について否定的で、むしろ危険だと訴える立場を取る。その理由をこう解説する。 「高温の空間で大量に汗をかくため、脱水症状や熱中症をおこしやすくなります。脳温度が上昇し自律神経がオーバーヒートすると、血圧や心拍、体温などの調節機能が低下し、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが生じます。そんな状態で水風呂に入ることは、心臓発作のリスクをさらに高めることになります」  そして、「サウナは百害あって一利なし……せめて一利ならあるかもしれない、というくらいの認識です」と続ける。  では、その「一利」とは何か。梶本医師は、厳しい寒さの冬が長く家にこもりがちになるフィンランドの特殊な生活環境だからこそ生まれた、サウナの効用に言及する。 「家に閉じこもるようになると、汗を出す汗腺が閉じてしまいます。汗腺には体温を調節する重要な役割があり、これは自律神経の働きによって制御されています。汗をかけない極寒の環境ではサウナという外的刺激によって汗腺を開き、自律神経による体温調節機能を回復させてあげる、というプラスの効果はあるのかもしれません」  日本でもコロナ禍で家から一歩も出ない時間が長く続いたり、寒冷地で冬は家に閉じこもり運動をまったくしない人がいるとすれば、サウナが有効となる可能性はあるという。  ただ、厳寒のフィンランドと日本では気候がまったく違う。日本では、満員電車や重い買い物袋を持って歩くだけでも自然に汗腺が開く。汗が流れ出るほどでなくても、活動中は自律神経が汗腺を開いて体温を調節しているのだという。梶本医師によれば、日本で普通に生活している限り、わざわざ酷暑環境を作って汗腺を開く必要はないということだ。  こうした環境でサウナに入るとどうなるか。 「懸命に頑張っている自律神経にさらに負担をかけるので、疲れてしまうだけです。日々のストレスや仕事で疲れている自律神経からすれば、『ひーひー言うとる時に何してくれんねん!』という状況ですよ」  とはいえ、サウナに入った日はストンと眠れている気がする。安眠効果についてはどうなのだろうか。 「すぐ眠れたという声は聞きますが、それは疲れて『寝落ち』しているだけで、寝つきがいいこととは全く異なります。緊張や覚醒をつかさどっているのも自律神経。自律神経が極度に疲れると覚醒を保てなくなり寝落ちしてしまうのです。さらに睡眠リズムを作るのも自律神経ですから、寝落ちした状態では睡眠の質がとても悪く、変な時間に目が覚めたりして疲れを回復させることはできません」  ネットを見ると、「サウナの翌日がだるい」などの投稿が散見されるが、睡眠の質の悪さが原因なのかもしれない。  ただ、愛好家にとってサウナや水風呂、その後の外気浴が気持ちいいことは事実だ。身体への負担が大きいのに、なぜ気持ちがいいと感じるのか。  梶本医師によると、β-エンドルフィンという物質など、気分の高揚や幸福感を得られる「脳内麻薬」が関係していると考えられる。  マラソンで苦しい状態が続いた後、多幸感や陶酔感を覚える「ランナーズハイ」と呼ばれる現象が起きることはよく知られるが、それと同じ現象がサウナでも起きているというのだ。 「動物は子孫を残すため生きることに忠実ですが、ヒトは脳の前頭葉が発達しているため、自己利益を実現する『欲』を持ちます。欲によって脳の報酬系と呼ばれる回路の働きが活発になり、『もっと、もっと』という精神状態になってしまう。これが災いしているのがサウナやその後の水風呂です。体には良くないことが分かっていたとしても『もっと快楽を』と、のぼせるまで頑張る人が出てしまうのです。ランナーや筋トレ愛好家でも、常に脳内麻薬による快感を求めてトレーニングを休めなくなる方がいます」  自律神経の機能は20歳を「100」とすると、40歳で半減、50歳で3分の1、60歳で4分の1に減るのだという。体の調子を整えてくれる力が、ガクッと衰えていくということだ。  脳内麻薬のおかげで、身体の悲鳴にはなかなか気づくことは難しい。梶本医師も「体に悪いと知っても、やめようとは思う人は少ないと思います」と話し、こうアドバイスする。 「水分をしっかり補給する。絶対にのぼせるまで入らず、サウナを出た後は、ぬるいシャワーで体を冷やす、涼しい部屋で過ごすなど、脳と体を守る基本は大切にしてください。また、年齢により自律神経が衰えるということをしっかり理解して、若い時よりも入る時間を短くすること。高齢になると温度を感じる機能が鈍くなりますので、のぼせに気づきにくくなりますからね」  サウナに入るかは個人の自由だ。ただ、快感を味わうだけではなく、自分へのいたわりも必要であることは心得ておきたい。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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    THE ALFEEは名曲「メリーアン」で変貌? 「アルフィーは3人の声があればなんでもいい」

     1983年、「メリーアン」の大ヒットで一躍全国区になった、THE ALFEE(以下、アルフィー)。それまでアコースティックグループとしての印象が強かったが、ハードなバンドサウンドが加わったことでロック色の強いグループに変貌したイメージがあった。74年にシングル「夏しぐれ」でデビューして苦節9年。「メリーアン」発表の少し前、グループにいったい何が起きていたのか? なぜ、ハードなサウンドを取り入れていこうと決めたのか? 10 月 5 日に発売となるDouble A Side Single「星空の Ceremony / Circle of Seasons」を機に、アルフィーの分水嶺を探ってみた。 *  *  * 高見沢俊彦:大学時代、みんなで麻雀で集まるときは、レコードを持ち寄ってかけていたんです。僕はロック系が多くて。それぞれのレコードでお互いに影響しあうっていうのはありましたね。僕らの世代ってみんな同じものを聴いていたのである程度知ってはいるんです。「ユーライア・ヒープ」「ディープ・パープル」とか。 坂崎:(アルフィーの)スタートはアコースティックですけど、それはギター1本でできるからで。 高見沢:アコースティックでやっていた時代が長いんですけど、あるときから、ライブでお客さんが総立ちになってステージの前に出てくるようになったんですよ。アコースティックなんだけど、アップテンポの曲になると総立ちになるので、それに対応する曲を作ってみようかなという発想から、ハードなアルフィーを入れてみようと。 桜井賢:別にここからハードロックを入れていこうとか……。 高見沢:決めてないよな。 坂崎幸之助:いつの間にか、ですね。 桜井:ライブハウスで演奏しているときはドラムを入れたりエレキギターを弾いたりしていたので、サウンドがハードになっていくことに特別な意識はなかったですね。 高見沢:ライブを重ねるごとにサウンドの幅を広げたいというのはありました。ロックの要素を取り入れることで緩急のあるライブができるなと。 桜井:ただひとつ言えることは、だんだんハードになってくる兆候として、相当、(高見沢に)ハードなものを聴かされました。長い時間をかけて。あれは洗脳?(笑) 坂崎:マインドコントロール(笑)。 桜井:けっして無理にではなく、日々(高見沢が)聴かせるんですよ。だんだん知らないうちに踊らされている自分がいて。完全にハマったなと思った頃にはヘビーメタルのような歌を歌わされて(笑)。衣装まで、そっち(ハードロック系)になって。「メリーアン」から「星空のディスタンス」、次の「STARSHIP‐光を求めて‐」あたりまで。全部、高見沢の影響なんですけど。 高見沢:ジューダス・プリーストとか?(笑) 桜井:音楽番組であんな格好をしたのは俺だけですよね。テレビに出てもいろいろ言われましたから。やっと認めてもらえたのは(ヘビーメタルバンドの)「聖飢魔II」が出てきてからですよ。それまでは寂しかったですね。 ――「メリーアン」発売の1年前。1982年のアルフィーは、北海道から福岡まで大規模な全国ツアーを開催。3月30日から4月1日までの3日間は久保講堂(東京)でライブをおこなった。それぞれが好きなことを披露するコーナーが設けられ、初日は高見沢dayだった。 坂崎 「レッド・ツェッペリン」をやりましたね。 高見沢 「天国への階段」「Rockn’ Roll」「Black Dog」「移民の歌」とか。 坂崎 その日のお客さんは若干引いていた(笑)。 高見沢 初めて聴いた音だっただろうからなぁ。 ――ハードなサウンドがアルフィーの音楽の一部であることをファンには提示していた。 坂崎 だから、僕らにとってハードロックに移行することに対しては、そんなにみなさんが思うほどでは……。 高見沢 方向転換ってほどではないですね。 ――アルフィーはこの年の8月、初の野外イベントとなる所沢航空記念公園でライブをおこない5千人の観客を集めた。着実に動員を増やしていたアルフィーの人気は右肩上がりで、あとはシングルヒットが出れば大ブレイク間違いなしという状態だった。勢いは加速する。この年、アルフィーは初の日本武道館公演を行うことを発表した。 坂崎 バンドのサウンドが少しずつハードになってバンド自体のスケールも大きくなってきて、いよいよ日本武道館公演と。83年3月にシングル「暁のパラダイス・ロード」を出して、大ヒットさせて8月に武道館、という予定だったんだけど。大ヒットしなかった(笑) 高見沢 予定通りにはいかないよね。ライブでの勢いはありました。なぜ、観客が熱狂するのかはわからなかったけど。 ──初の日本武道館公演を目前に控えた1983年6月。アルフィーは16枚目となるシングル「メリーアン」をリリースする。「アルバム用に作られた曲」(高見沢)だったが、レコード会社の担当ディレクターがシングルに選んだ。 桜井:ヒットするとは思わなかった。 高見沢:思わない、思わない。思わないよ。 坂崎:6月に発売して「ザ・ベストテン」(TBS系)などに出始めたのが9月の頭ですね。ヒットするまで時間がかかったんです。 桜井 ベストテン番組って、出たくっても出られない。嬉しいことに応援してくれる人がいるから、出ないってわけにもいかないけど、ツアーがあるからスタジオに行けずに、コンサート会場からの中継が多かったんですよね。 坂崎 ベストテンって、トータルの評価ですから。 桜井 売り上げだけじゃなくてね。 坂崎 レコードは売り上げより、リクエストが多かったんですよ(笑)。出てくれっていう。それはやっぱり出ないわけにはいかないし。 桜井:武道館公演が終わったあとにヒットしたから「メリーアン」を知らない人たちが武道館のチケットを持っていて、「メリーアン」で知った人たちはもう武道館に入れなかった。 ──初の武道館公演には、古くからのアルフィーファンも度肝を抜かれたことだろう。ステージにはマーシャルアンプのキャビネットが高く積まれ、グループ初となるプロモーションビデオが来場客に配布された。その大事な一曲となったのが「ジェネレーション・ダイナマイト」である。同年9月発売の7thアルバム「ALFEE’S LAW」のオープニング曲を飾る超絶ヘビーなメタルナンバーだ。 高見沢:この曲をアルバムの1曲目にもってくるかどうかが分岐点ですよね。今までのイメージを払拭するようなものにしようということで。レコード会社と侃侃諤諤ありましたね。 坂崎:アルバムの1曲目はアルバムの色を決定づけますからね。プロモーションビデオもハードロックでした。 桜井:炎が燃え上がる(笑)。 坂崎:僕らは楽しんで面白がってやっていましたよ。これはフォークグループじゃできないでしょう(笑)。 桜井:できないね。 坂崎:だからフォークグループじゃないんです。メロディー、詞、ハーモニーなど、根底にあるものはアコースティックギター一本でもハードロックでも一緒です。 桜井:アコースティックだ、ロックだ、っていうのは日本くらいのものなんですよ。ハードロックバンドでもバラードを歌うし。 坂崎:むしろ向こう(洋楽)のハードロックバンドはアコースティックな曲が多い。 桜井:多いね。 高見沢 そうだよな。「ミスタービッグ」も。 坂崎 「エクストリーム」も。だからそこはあんまり……。 高見沢 そう、関係ない。 坂崎 高見沢が生ギターにエフェクターを繋いでいたら、編曲家の井上鑑さんが「だったらエレキギター弾けばいいじゃん」って。 高見沢 あ、そうですよねって(笑)。 ──ハードロックを取り入れた「メリーアン」にも、間奏は坂崎のアコースティックギターによるソロが入り、それから高見沢の歪んだエレキギターのソロが続く。その理由は。 高見沢:坂崎のギターがアコギだから(笑)。 桜井:3人しかいないんですから! 坂崎:自然に(笑)。 高見沢:あとプログレが好きだから。プログレには必ずアコギが入っていますから。「イエス」とか。そういう部分を残したい。それがアルフィーサウンドのひとつの要なのかもしれない。原点でしょう。 桜井:そうだよね。 高見沢:桜井たちが高校のときに(グループを)作って「サイモン&ガーファンクル」で優勝していますから。そこはね、やっぱり守るわけじゃないけど原点っていうのはよくわかっていますね。アコギの音が好きで優先する。そこがほかのロックバンドと違うのかな。 坂崎:アルフィーはアイドルでもなく歌謡曲でもなくロックでもない。アルフィーって何だ?って、自分たちでもそういう感じですから。(マスコミの)みなさん、困ってらっしゃいますね。「3人組バンド」とか、「3人トリオ」とか(笑)。「ロックバンド」って書かれることもありますけど。 高見沢:アルフィーの魅力は3人が歌える。それによって3声のコーラスができる。これがあれば、フォーク、ポップス、ハードロックでもなんでもいいんです。3人の声があればアルフィーなので。 ──「アルフィーは○○バンドです」とつけるなら? 高見沢:アルフィーはアルフィー。じゃない? ──10月5日、71枚目となるシングル「星空のCeremony/Circle of Seasons」を発売する。 高見沢:ここのところ、バラードやミディアムテンポの曲が多かったので、ちょっとハードなものを出してみようかなと。「星空のディスタンス」のアンサーソングじゃないけど、遠距離恋愛のつらさを、星を使って意図的に入れました。コロナの影響もありますね。会えないっていうことがありますからね、今の時代。 桜井:今回は両A面で。 坂崎:もうA面、B面ってないけど(笑)。 桜井:両方とも自信作です。高見沢節がいっぱい入っていますので、なじみやすいと思います。 坂崎:まだアルフィーに出会っていない方も、ぜひこれを聴いて、ライブに来ていただければと思います。 (取材・構成/谷口由記)※週刊朝日  2022年10月7日号に大幅加筆

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    「五輪汚職」アスリートはなぜ沈黙? 元ラグビー日本代表が指摘する「当事者意識の欠如」のワケ

     五輪汚職事件が明るみに出る中、選手やスポーツ界は沈黙を貫いている。元ラグビー日本代表で、神戸親和女子大学教授の平尾剛氏は諸問題の原因は選手にもあると言う。「五輪汚職」を特集したAERA 2022年10月3日号の記事を紹介する。 *  *  * ──コロナ禍での開催の是非をめぐって世論が二分する中、無観客で強行開催された東京五輪・パラリンピック。開催前にも、メインスタジアムの国立競技場建設計画が巨額費用の問題視により白紙撤回され、公式エンブレムは盗用疑惑で使用中止に。さらに大会組織委員会の会長だった森喜朗氏が自身の女性蔑視発言の責任をとって辞任するなどさまざまな問題が噴出した。そして開催から1年たったいま、汚職事件が次々と発覚し、五輪への不信感が再び高まっている。  元ラグビー日本代表で神戸親和女子大学教授の平尾剛さん(47)は、五輪をめぐる諸問題の原因は選手にもあると指摘する。 平尾:新型コロナウイルスによる開催延期や森喜朗氏の会長辞任など、昨夏の東京五輪は開催前からさまざまな問題が指摘されていました。あれから1年以上がたち、贈賄問題まで発覚。関係者の逮捕が相次いでいます。 ■見過ごしてきた結果  なぜ、五輪の闇がここまで肥大化してしまったのか。アスリートや指導者など、スポーツ界全体が「おかしさ」を見過ごしてきた結果だと思っています。  僕自身も含めて、内部から適切な批判ができなかったから、どこから手を付けていいかわからないほど問題が大きくなってしまった。ここでしっかり膿(うみ)を出し切らないといけません。 ──不祥事に批判が集まる一方で、当事者であるアスリートの声はほとんど聞こえてこなかった。なぜ、選手は自分の言葉で語らないのか。 平尾:幼い頃から競技に打ち込んできたアスリートたちは、社会から隔絶された存在です。一つのことに打ち込むことが美徳とされ、生活のなかでスポーツが占める割合も圧倒的に多い。当然、周囲も関係者ばかりになり、そこで純粋培養されてしまうんです。  そうして、アスリートの多くは、異論を唱えるよりも、置かれた環境でベストを尽くすという思考に染まる。酷暑であっても最大限の準備をしてパフォーマンスを発揮すべく努力するし、「暑い」と指摘するのは意見ではなく言い訳で、“負け犬の遠吠え”だと考えている。この価値観が発言を思い留まらせていると思います。  思春期になれば、競技だけでいいのかと人生に悩む場面もあります。でも、「体育会」と呼ばれる過度な上下関係のなかでは違和感を言葉にする機会はほとんどありません。「勝ってから考えるべきだ」「ごちゃごちゃ言わずにやれ」という空気があるし、実際にそういったことを言う指導者もいます。  一心不乱に練習することが結果に結びつく側面はもちろんあります。ただこれは、裏を返せば自分で考えることを放棄しているのに等しい。それに、社会で起きている問題を考えるには、その背景や事情、また歴史を知っておく必要があります。でも、多くのアスリートは学業より練習を優先して上り詰めてきた。だから競技以外に自信が持てず、「自分は無知だ」と自己肯定感が低かったりする。 ■旧態依然の男性社会 ──一方、世界のアスリートはどうか。東京五輪では、テニス世界ランキング男子1位(当時)のノバク・ジョコビッチ選手らが酷暑を指摘し、試合時間変更を要求。陸上女子砲丸投げで銀メダルを獲得した米国のレーベン・ソーンダーズ選手は表彰式で「X」のポーズをとり、抑圧された人々への連帯を示した。 平尾:海外を見渡せば、自分の意見を表明するアスリートが多くいることに気がつきます。自分たちが持つ影響力に自覚的で、積極的に発信している。でも、日本ではほとんど見当たりません。社会そのものの同調圧力が強いので、社会的な発言に二の足を踏んでしまうのだと思います。  ですが、日本人選手が誰一人として発言しなかったわけではありません。五輪開催の是非が問われていたときは、陸上の新谷仁美選手や水泳の松本弥生選手がSNSなどを使って複雑な胸の内を明かしました。五輪に対してネガティブな発言をすることで協会から睨(にら)まれるのではないかという不安もあったはずで、とても勇気がいったと思います。元アスリートで当時JOCの理事だった山口香さんも開催ありきではない、大会のあり方の見直しを訴えました。 ──五輪に対して意見した国内のアスリートを見ると、女性が多いことに気づく。一方で、森氏が女性蔑視発言で辞任する前の2021年2月時点で、組織委の理事は35人のうち、女性はわずか7人だった。 平尾:男女という区別をつけるのはよくありませんが、スポーツ界には旧態依然の男性社会がいまだに息づいています。日本ラグビー協会が昨年6月まで協会理事を務めていた谷口真由美さんをけん責処分にしたことが問題になっていますが、ここにも年功序列などの時代遅れと言わざるを得ない価値観があります。  本来チームスポーツでは、試合中に先輩だからと過剰に気を使う人がいるチームは勝てないんです。いざというときには自らの判断でプレーを選択する自立した人間が集まるからこそ、勝利を掴みとれる。ラグビー協会でも、実績のある元選手が理事を務めているのに、組織に入った途端に顔色をうかがうばかりになるのはなぜか、それが不思議で仕方ありません。 ■世間が求めるイメージ ──汚職事件について、選手から声が上がらないことに、平尾さんは憤りを感じているという。 平尾:たとえるなら、自分の家が火事になっていて、かなり燃え広がっているような状態だと思うんです。今の状況がいかに深刻なのか、スポーツ関係者は薄々わかっていると思います。なのに、自分の競技団体への飛び火を恐れているのか、遠くから様子をうかがうだけで何もしない。そのくらいスポーツビジネスの闇は深い。 ──発言しない背景にはスポンサーや世間がアスリートに求めるイメージも影響していると指摘する。 平尾:日本社会には、スポーツ選手に対してある種のさわやかさを求める風潮がありますよね。勝っても驕(おご)らず、負けても潔しとするその態度が美しいし、健気で一生懸命に困難を乗り越える姿に感動する。そこに社会的発言や政治的発言はそぐわない。スポンサーにとっては、さわやかな存在でいてくれたほうが扱いやすいし、お金になる。いわば選手を商品に見立てているわけです。ただ、アスリート自身もそれを自覚したうえで、利用している面もあります。  昨今、アスリートのセカンドキャリア教育が盛んですが、サッカーや野球をはじめトップ選手以外は引退後にどうやって食べていくかは死活問題です。何か発言することでイメージが悪くなり、スポンサーが減ったり、事務所に所属できなくなることは避けたい。ここからスポーツを利用して生きていかねばという考えになり、本質的な問題につい見て見ぬふりをしてしまう。  それに、たとえスポーツ界の構造に違和感を持っても、どう対処していいかわからなければモヤモヤは募るばかりです。だったら違和感を受け入れて生きていくほうが楽だとなってしまうのでしょう。 ■外に目を向けてほしい ──選手たちの「当事者意識の欠如」の先にあるものは何か。 平尾:当事者なのに何も言わないというのは、アスリートやスポーツそのものの価値を下げることと同義です。コロナで社会が大変な状況に陥っていたにもかかわらず、意見すら言えないのはやはりおかしい。当事者意識が欠如したアスリートばかりでは、スポーツ自体が社会から見向きもされなくなる。それを懸念しています。  そうならないためにも、アスリート自身が変わり、また、スポーツ関係者も危機感を持たないといけない。トップを目指す選手が意見できる空気をつくっていかなければなりません。  アスリートには、スポーツの外側に目を向けてほしい。さまざまな職種に就く人や、そもそもスポーツに興味がない人とも接する。僕自身もラグビー以外の世界を見たことで、自分を客観視することができました。チームメートはもちろん大切ですが、競技一本というのは美談でもなんでもないことを伝えたいです。 (構成/編集部・福井しほ) ※AERA 2022年10月3日号

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    “弱点”を補える選手は誰だ? ドラフト補強ポイント【日本ハム・ロッテ・楽天】

     プロ野球のドラフト会議まであと約3週間となり、各球団の動向や候補選手についての報道も多くなる時期となってきた。今年は本命らしい本命は不在という印象で、近年多かった事前の1位指名公表も少なくなることが予想されるが、各球団どんな選手を狙うべきなのか。補強ポイントと、その選手がチームにマッチするかという点から探ってみたいと思う。今回は現在パ・リーグのBクラスに沈んでいる日本ハム、ロッテ、楽天の3球団だ。 *  *  * 【日本ハム】  5位に大差をつけられて最下位に沈んだ日本ハムだが、先発投手は伊藤大海、上沢直之、加藤貴之と安定した3人が揃い、野手も清宮幸太郎、万波中正、今川優馬が二桁ホームランを記録するなど全体的に戦力は底上げされた印象を受ける。その中で補強ポイントを挙げるとすれば、リリーフの強化、将来の正捕手候補、近藤健介の後継者などとなりそうだ。  まず補強ポイント関係なく推したいのが二刀流で注目を集めている矢沢宏太(日本体育大・投手兼外野手)だ。投手としては即戦力としては物足りないものの短いイニングであればストレートとスライダーである程度抑え込める可能性はあり、野手としてはプロでもトップクラスの足と肩を備えている。そして何より投手、野手両面でまだまだ能力の底が見えないというのが大きな魅力だ。ビッグボスからは野手の方が良いという発言もあったが、やはり二刀流に挑戦してもらいたいという声も多い。外野手でメインとして出場し、リリーフでも起用するという新たな形の二刀流も検討してもらいたいところだ。  リリーフは層が薄いだけに比較的早く使える投手を複数狙いたいところだが、2位以降でおすすめしたいのが橋本達弥(慶応大)、小孫竜二(鷺宮製作所)の2人だ。橋本はスピードに加えてカットボール、スプリットという絶対の武器があるのが大きな魅力。小孫は短いイニングでのストレートの勢いはアマチュア全体でも上位で、今年は安定感を増している。2位のウェーバーが早いことから、1位候補にもなっている益田武尚(東京ガス)をリリーフ起用を想定して獲得するというのも面白そうだ。  捕手は年齢構成を考えれば将来性のある高校生を獲得したい。4位以降で狙えそうな選手で面白いのが清水叶人(健大高崎)だ。甲子園の出場こそなかったものの、関東では屈指の打てる捕手として評判で、夏の群馬大会でも打った瞬間に分かる一発を放っている。宇佐見真吾の後継者として期待できる素材だろう。 【ロッテ】  2年連続の2位からAクラス入りが苦しくなっているロッテ。今年の成績を見ると長打力不足が課題だが、ドラフトですぐに解消するのは現実的ではない。また、今年は山口航輝が大きく成長し、二軍でも西川僚祐や山本大斗が結果を残してきているのはプラス材料だ。ポジション的には若手まで見た時に気になるのが二遊間だ。  セカンドは中村奨吾がFA権を取得しており去就が不透明な状況。期待の大きかった平沢大河が伸び悩み、その後も選手を獲得しているが、有力なレギュラー候補は見当たらない。昨年も2位で池田来翔を獲得しているが、できれば将来性のある高校生を狙いたいところだ。一方の投手は佐々木朗希を筆頭に若手に楽しみな選手が多いが、リリーフ陣の高齢化が目立ち、若手は左の本格派も少なく、そのあたりを補強しておきたい。  1位を投手にするか野手にするかで悩むところだが、今年は左投手の有力選手が少ないためまず真っ先に確保しておきたい。最有力候補として推したいのが曽谷龍平(白鴎大)だ。明桜時代は無名だったが大学で大きく成長した大型左腕で、軽く投げているようでも145キロを超えるストレートは勢い十分。課題だった制球力も向上しており、三振を奪う能力も高い。他球団との競合も考えられるが、まず狙いたい選手である。  2位で残っていればぜひ狙いたいのが大型ショートのイヒネ・イツア(誉)だ、攻守とも粗削りだが、運動能力の高さは抜群で、今年の高校生内野手の中でもスケールの大きさはナンバーワンと言える存在である。少し時間はかかるタイプに見えるが、高校2年から3年にかけて急激な成長を見せているところも大きな魅力だ。守備力と早くから戦力になることを重視するのであれば友杉篤輝(天理大)を推したい。小柄だがフットワークの良さは大学球界でも随一で、積極的な走塁と高いミート力も光る。うまくいけば今宮健太(ソフトバンク)のようなショートになれる可能性は十分だ。  リリーフタイプの投手では日本ハムのところでも挙げた橋本達弥(慶応大)、小孫竜二(鷺宮製作所)ももちろん候補だが、手薄な左腕ということで面白いのが林優樹(西濃運輸)だ。高校時代は完全な技巧派だったが、社会人でストレートが見違えるほど力強くなった。高校卒3年目という若さも魅力で、3位以降で残っていればぜひ狙いたい投手である。 【楽天】  ここ数年大型補強を繰り返しながらなかなか優勝に届かない楽天。実績のある選手を多く集めたことでレギュラー陣が高年齢化しているが、特に気になるのが投手陣だ。先発で最も若いのが早川隆久で、それ以外は軒並みベテランと言える年齢となっており、若手の有力候補も多くない。リリーフは抑えの松井裕樹が健在で、他にも若手がそれなりにいるだけに、将来先発の柱になれるような投手を狙いたいところだ。一方の野手も気になるポジションは多いが、特に気になるのがショートだ。小深田大翔と山崎剛は来年揃って28歳となり、その下の世代になると有力なレギュラー候補が見当たらない。最低でも1人はショートの選手を指名しておきたいところだ。  優先順位を考えるとやはり投手ということになる。できれば高校生の大物を狙いたいが、今年は明確なナンバーワンと呼べる高校生投手がいないだけに、筆頭候補はロッテと同じく曽谷龍平(白鴎大)としたい。同じサウスポーでも早川とは少しタイプが違い、まだまだ成長が見込めるというのも大きな魅力だ。曽谷は競合も考えられるだけに次の候補も考えたいが、そうなったら思い切って高校生の門別啓人(東海大札幌)を狙うのも面白いだろう。アベレージは140キロ台前半だが、力を入れると145キロを超え、高校生のサウスポーにしてはコントロールも安定している。甲子園出場経験はないものの、総合的に見て高校生の左腕ではナンバーワンと言える存在だ。  曽谷、門別のどちらかが指名できても、もう1人スケールの大きい投手は確保しておきたい。そこで2位の候補として挙げたいのが安西叶翔(常葉大菊川)だ。サイド気味のスリークォーターから投げ込むストレートはコンスタントに145キロを超え、数字以上の勢いが感じられる。今のチームにいないタイプの投手というのも推したいポイントだ。  3位以降では野手の補強ポイントであるショートのレギュラー候補を狙いたい。ロッテでも挙げたイヒネ・イツア(誉)、友杉篤輝(天理大)以外の候補としては戸井零士(天理)も面白い。180cmの大型ショートで、守備に関してはもう少しスローイングの強さが欲しいが、フットワークとハンドリングは高校生離れしたものがあり、丁寧なプレーが光る。打撃も無駄な動きのないスイングで、パンチ力も十分だ。高校生のショートの候補は少ないだけに、3位あたりで狙っている球団も多いだろう。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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    進化型カプセルホテルは豪華で快適 若い女性客にも人気の理由とは

     狭くて、利用客は男性ばかり。そんな従来のイメージが変わりつつある。本当だろうか。進化型カプセルホテルに記者が泊まってみた。AERA 2022年10月3日号より紹介する。 *  *  *  「出張でもないのに、高級カプセルホテルに泊まる……贅沢!」「カプセルホテルめっちゃおしゃれ! 開放感すごい~!」  ユーチューブやインスタグラムで、こうした女性からの投稿をいくつも目にした。  カプセルホテルと言えば、男性専用で古めかしく、終電を逃したときに泊まるイメージだったのだが。  少し前から気になってはいたが、やはりハードルは高い。でも、記者(女性、30歳)が思い切って、都内のカプセルホテルに泊まって取材してみると、豪華で居心地のいい「進化型カプセルホテル」が、多く誕生していた。  取材で歩き回った夕方、疲れがどっと押し寄せた。もう家に帰るのも無理……。  そんな日に行ったのは、東京メトロ竹橋駅近くの「ナインアワーズ大手町」だ。  外装も内装も白。共用スペースの机や椅子はシンプル。有名デザイナーが手がけた。 ■快適、SNS映えも  カプセルホテルは閉鎖的なイメージが強いが、ここは廊下の壁がガラス張りで、明るいうちは、日光がよく入る。暗くなったら、暖色のライトが窓の外に漏れる。SNS映えする。  男女別の専用エレベーターでフロアも別々。ベッドも厚く、硬めで腰が痛くならなそうだ。慣れない布団だと寝られない記者もぐっすりだった。  寝る前に共用スペースで「残業」した。机、いす、コンセント、Wi-Fiがある。家なら寝てしまうけど、ここなら緊張感を保てる。想像以上に快適だ。ナインアワーズの米本秀高さんは言う。 「ナインアワーズの名前の由来は『1時間のシャワー+7時間の睡眠+1時間の身支度=9時間』です。眠るだけなのに、個室ホテルは割高に感じる。だからといってネットカフェに泊まるのは疲れる。そんな方たちのために必要な『眠り』と『シャワー』に特化したサービスを提供しています」  一部店舗では睡眠解析サービスも。カプセル内の赤外線カメラやマイクが、心拍やいびきを測定、メールで結果を届ける。宿泊料金は時期によるが3千~5千円ほど。この価格、この快適さなら、十分満足と思う人も多いだろう。  読みたかった本を持ち込んで、羽を伸ばしたい……。そんな特別な時間を過ごしたいという需要にも応える。 ■ファーストクラス気分 「地上でファーストクラスを体験!」  こうアピールするのは、「ファーストキャビン」だ。今年2月にリニューアルした市ケ谷店では、ベージュのジャケットを着たスタッフが「いらっしゃいませ」と、柔らかいほほえみで迎えてくれる。  ここのホテルは窮屈さがない。普通はカプセル内では中腰になる。だが、ここでは天井まで自分のスペースだ。カプセル内で立つこともできる。  最もランクの高い「ファーストクラスキャビン」に泊まってみた。  なんとベッド以外のスペースがある。机もあって、普通のホテルの部屋のようだ。アコーディオンカーテンで仕切る。  広い大浴場に、洗濯乾燥機、充実のスキンケアグッズ、数万円する高級ドライヤーも完備。なんと豪華なことか。宿泊料金は4千円から。ビジネスクラスは千円ほど安くなる。  女性客のほうが多いのではないかと思ったが、記者が宿泊した8月の平日は、2対1の割合で男性客が多かった。それでも、女性に好まれそうなサービスを提供する理由について、ファーストキャビンの西島紗織さんはこう答える。 「男性でもハードルを感じる人もいる。男性でも女性でも心地よく感じる清潔な場所は選んでもらえるはず。メインターゲットは30、40代女性です」  全館女性専用のカプセルホテルも出てきた。「秋葉原 BAY HOTEL」だ。  記者が日曜日に泊まったところ、ワンピース姿の20、30代くらいの女性が多い印象だった。支配人の大上香音さんは言う。 「東京ドームなどでコンサートがある週末は、稼働率がかなり上がります。夜行バスの時間に間に合わない、または翌日ゆっくり帰りたい方が使ってくださっています」  ここでは「推(お)し事(ごと)プラン」が人気だという。推し活での疲れを癒やして、というのが狙いで、栄養ドリンクなどのプレゼントを選べる。  アニメやゲームのキャラクターとも時折コラボ。なんとカプセル内に、キャラクターの特大イラストが貼られている。まるでキャラクターと一緒に寝そべっているかのようだ。 ■「推し活」に活路  大上さんは、推し活のエネルギーを感じている。 「キャラクターで飾るのは10室ほどですが、予約枠が瞬時に埋まることもあります。ただ、部屋はランダムなんです。予約したお客様は、どのキャラクターのカプセルに当たるか、実際に来るまでわかりません。推しのキャラクターのカプセルに泊まれるのか、そういう楽しみもあると思います。コラボ期間中にリピーターになってくれる方も多いですね」  カプセルホテルは増えている。厚生労働省の衛生行政報告例によると、カプセルホテルを含む簡易宿所の施設数は、2010年に約2万4千だったが、20年には約3万8千と6割も増えた。鍵となったのは、13年頃から始まったインバウンドの増加だった。  ホテル評論家の瀧澤信秋さんは言う。 「インバウンドは増えたものの、宿泊施設が不足していました。旅館やホテルも増えましたが、一から造るハードは開業までに時間を要します。それに比べて、カプセルホテルは準備期間が短く、数を伸ばしました」  ただ、最近はカプセルホテルの休業や閉鎖も耳にする。 「コロナ禍とインバウンドが減ったことが大きいですが、実は宿泊施設の供給過剰は、コロナ禍前から始まっていました」と瀧澤さん。一般のホテルの開業ラッシュだった18年頃から、稼働率の低下が指摘されるようになったという。 「カプセルホテルも淘汰されています。他社にない魅力を打ち出そうとした。結果、進化を遂げたのです」 (編集部・井上有紀子) ※AERA 2022年10月3日号

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