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    北島三郎門下、演歌界の大物・大江裕の裏の顔?「水ダウ」神回の裏側をチャンス大城が明かす

     今、チャンス大城が熱い!らしい。初の半生記『僕の心臓は右にある』を読んだお笑い芸人のみなみかわが自身のTwitterで<もうめちゃくちゃおもろいです、ほんまに映画化してください>と投稿。さらにナイツの塙亘之も<めちゃくちゃ面白い。腹ちぎれる>と投稿したりと、絶賛の嵐だ。7月31日(日)に芳林堂書店高田馬場店にて行われた、発売記念トーク&サイン会は会場が満員になるほど大盛況! タケトやインタレスティングたけしをゲストに迎えた、爆笑トーク会の模様を、特別に一部公開する。 *  *  *タケト:チャンスさんは意外と現金なので、拍手が多い方がノリノリでお話してくれます(笑)。皆さん、大きな拍手でお迎えくださいね。はい。それでは呼び込みましょう。チャンス大城さんです。どうぞ。 チャンス大城:あ、どうもチャンス大城です。よろしくお願いします。あの、はい。じゃあ、恒例のイリオモテヤマネコの顔をしながら、フクロウの鳴き声をします。続いて、鳩時計の音……。 タケト:こんなに多くのみなさんに来ていただいてありがたいですね。あと、チャンスさんのお客さんは女性の方も多いのでびっくりしました。しかも、赤ちゃん連れのファンの方までいらっしゃいますよ。 チャンス大城:ほんまありがたいですね。 ■演歌歌手の大江裕さんは実際、どんな反応だったか タケト:まずは皆さん、やっぱり「水曜日のダウンタウン」の裏話を聞きたいですよね? 「大江裕なら裏の顔がどんなにヤバくても、さほど違和感なく受け入れちゃう説」(2022年7月13日放映)とか。あの放送、めちゃくちゃ面白かったです。怖さと面白さのはざまにあるような企画でしたね。 チャンス大城:あとで話をして分かったんですけど、大江さんって、ほんまはすごく腰が低い人なんですけどね。この収録のときは、裏でマネージャーにブチ切れたりしてて「ほんま性格悪い奴やな」って思ったの。でもね、ちょっと「もしかしたら悩んでんのかな」とも思ったんですよ。だから、なんとかしてあげられないかな、って思ったのよ。僕の経験上ね。  それでね、すごく広い海に一緒に行ったときに「このすごく広い海に比べればおれらの悩みなんて大したことないな」って言ったの。でも、あんまり大江さんには響いてなかった。それでどうしようかな、と思ったときに、犬の出来立てホヤホヤのうんこがあった。だからね。犬のうんこを踏んで「うんこがついても洗って取ればええねん」って伝えたの。 タケト:実は、めちゃくちゃいい話なんですね。「いくら汚れたって、洗えば綺麗になるからいいんだよ」みたいな。だけど、唐突過ぎて全然わからなかったです。 チャンス大城:大江さんも仕掛け人だったはずなのに、めちゃくちゃ引いていたからね。うんこ踏んだとき。「それ、どういう意味ですか??」って。ちなみに、今日履いているのは、うんこ踏んだ時の靴なんです。 (ファンから拍手) タケト:「うんこ踏んだ時の靴です」って言って、拍手が起こるのも意味わからないですけどね(笑)。今日来てくれているのは、めちゃくちゃいいお客さんですね。 チャンス大城:この靴がうんこ踏んだ時にめちゃくちゃアップになったでしょ。これはアシックスの靴なんですけど、後日アシックスさんからお礼の連絡をいただきましたよ。同級生の友だちがアシックスの社員さんなんですけど、「俺と仲良くしてるから」って理由で本社の人から呼び出しされて、「あそこのアップでかしたぞ。ようやった」って褒められたらしいんです。「今、問い合わせがめっちゃ来てるで!」って。それでお礼の連絡が来たの。  でもその同級生に「いやいや。宣伝になったとは言っても、めっちゃうんこ踏んでんで」って言ったのよ。そしたら「うんこを踏んだとて、ようやったって」。おれはそんな「とて」の使い方をはじめて聞いたけど(笑)。  でもね。あのロケの前日に、たばこの吸い殻を300本拾っていたんです。徳を積む、じゃないですけど。やっぱり神様が俺のそういう姿を見てくれていて、うんこを道端に置いておいてくれたんかもしれないな。放送からちょっと経ってから、千原ジュニアさんからは「お前、噂になってんで。お前、あの日の朝、道端にうんこしたらしいな」って、楽屋で聞いたんですけど(笑)。 タケト:自作自演を疑われているじゃないですか(笑)。でも、あの企画は、普通だったら「大江さんにビビらされる」っていうので終わるはずなのに、チャンスさんの方がビビらせるっていうのがすごいですよね。普通に考えたら、カメラが止まるたびに大江さんの記憶がリセットされて「はじめまして」って毎回挨拶するのは完全におかしいし怖いですよね。おれだったらビビっちゃうと思うんです。そんな状況から、うんこをわざわざ踏んで、相手の心を開かせようなんて絶対思わないです(笑)。 ■明石家さんま師匠のファンに囲まれ「一緒に待ちません?」 チャンス大城:そういえば昨日、新幹線で新大阪に行ったら、一般の方から「はじめまして。大江裕です」って声をかけられました。最近多いんですよ。この間も、新大阪駅で10人くらいの方に囲まれたんですよ。そしたら全員、明石家さんま師匠のファンで。「うわ! チャンスさんや。嬉しい。向上委員会観てます」って声をかけてくださって。それで続けて何を言われんのかと思ったら「あと1時間後にさんまさんが新大阪駅に来るから、一緒に待ちません?」って。「なんで俺も一緒に待たなあかんねん」って(笑)。  でもその後、その人たちが改札のところまで一緒に来て、お見送りしてくれたんです。それで仲良くなって話を聞いていたら、病気療養をされている奥さまがいるという方から、「うちの妻はチャンスさんの防犯ブザーの物まねが本当に好きなので、よかったら動画を撮らせてください」って。そんなこと言われたら「もちろん、全力でやりますわ」ってなりますよね。  で、実際にやったら、警備員の人が飛んできちゃいましたよ。そりゃ、異常を知らせる音の物まねですからね。「なにかありました?」っていう警備員さんの質問に「チャンス大城の口真似です」って言ってくれた方がいたんですけど、警備員をだませてしまうくらいクオリティーが上がっているんか、とちょっと驚いてしまいました。 (取材・構成/書籍編集部・増田侑真)

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    5打席連続本塁打のヤクルト村上宗隆 王貞治や松井秀喜との違いは?

     西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、5打席連続本塁打の偉業を成し遂げたヤクルトの村上宗隆について語る。 *  *  *  ヤクルトの村上宗隆がプロ野球新記録となる5打席連続本塁打を達成した。点差の離れた場面で気軽に勝負してくれる状況でもなかった。まだ22歳。この選手の成長曲線はまだ上向いているようにみえる。  偉業のスタートとなった7月31日の阪神戦では、1本目は0-2の七回に、左横手投げの渡辺の外角スライダーを、左翼席中段へ運んだ。2本目は1-2の九回1死。守護神の左腕・岩崎の初球、内角高め141キロ直球を右翼席へ同点ソロ。そして3本目は同点の延長十一回2死一塁。石井の浮いてきた116キロのカーブを逃さない決勝弾。阪神からすれば、特に十一回の場面は勝負を避けるべきだったとの意見もあるだろう。ただ、失投を逃さない、しかも打ち気にはやることなく、しっかりと変化球に体勢を崩されることなくとらえた村上をほめるしかない。  そして迎えた8月2日の中日戦。初回に柳のカーブを右翼席に運ぶと、三回には柳のチェンジアップに崩されながら左中間席へ。特に5打席連発となった一球は、柳の失投ではない。本人は「体勢を崩されたけれど、左手の感覚も右手のフォロースルーもよかった。もしかしたら入るんじゃないかと」と話したが、体の力がバットに伝わらないほど投手方向に体が出されたらノーチャンス。粘り腰というか、右手でボールを押し込むところまでパワーは残っていた一打だった。  王貞治さんや松井秀喜といった従来のホームランバッターは、どちらかというと「アウトサイドイン」(外から内)にバットを出す。松井はメジャーに行って少し変わったが、外角球なら巻き込むように打って、左打者ならライトスタンドに運ぶ打ち方だった。だが村上は違う。「インサイドアウト」でバットを出し、インパクトの瞬間に球にパワーを伝える。ボールの飛ぶ方向はどこだっていい。左翼方向でも右翼方向でも打球はスタンドに届く。その「強さ」とともに緩急にも崩れない「柔らかさ」もある。  もはやボールの緩急だけでは抑えきれないだろう。変則投手気味であったり、少しでも長くボールを持ったり、クイックを入れたりして投球フォームの緩急も混ぜないといけない。こちらの変化に少しでも崩れてくれることを待つ。それぐらい手がつけられない状況だ。  今はリーグ優勝だけでなく、3位以内はクライマックスシリーズ進出がかかる。セは3位までなら全球団にチャンスがある。9月、秋が深まると村上との勝負を避ける四球は確実に増える。相手は勝つために徹底してくるようになる。村上もそれはわかっているだろう。各打席を見ても、1球で仕留める意識は、甘い球をファウルにした時の悔しがり方でわかる。  バレンティンが60本塁打した時は、8月に18本塁打したという。投手の疲労がピークに達している8月に、いかに失投を逃さず量産できるか。村上にとって、プロ野球の記録を塗り替えるシーズンにする大切な月となる。 東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝※週刊朝日  2022年8月19・26日合併号

    週刊朝日

    11時間前

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    過去10年で「戦力外」→「戦力」になった男たち NPBで“選手再生”が際立つチームは

     7月末でプロ野球のトレード期間は終了。7月に3件のトレードが成立したが、例年に比べると少なく、また昨年オフにFAで移籍した選手も又吉克樹(中日→ソフトバンク)の1人だけと、NPBの移籍市場は静かな動きに終始した印象だ。  そうなると次に各チームが動くのはオフとなるが、FAやトレードでは自由契約となった選手を上手く戦力にするのも補強の一つだ。過去には他球団に拾われて復活したベテランや才能が開花した若手も確かに存在している。そこで今回は過去10年間に、戦力外となりながら他球団で戦力となった選手をピックアップして紹介したいと思う。  まず実績のある投手で復活した例では久保裕也(巨人→DeNA→楽天)の名前が挙がる。2015年オフに巨人を退団し、DeNAに移籍したが、そこでもわずか9試合の登板に終わり、2年連続で自由契約となった。しかし翌年楽天に入団すると、移籍1年目には中継ぎで3勝をマーク。故障により一度育成契約となったものの、翌年5月には支配下として復帰し、そのシーズンから2年間はブルペン陣を支える貴重な存在となった。引退後は楽天で二軍投手コーチを務めているが、卓越した投球術や度重なる故障を乗り越えた経験は若手投手の指導にも生かされるだろう。  そして久保以上に実績のある投手では五十嵐亮太(ソフトバンク→ヤクルト)が挙げられる。ヤクルトでは2004年に最優秀救援投手のタイトルを獲得し、その後メジャーを経てソフトバンクでも長く活躍。しかし2018年に椎間板ヘルニアの影響もあって23試合の登板に終わり、オフには戦力外となったが、そこで手を挙げたのが古巣のヤクルトで、実に10年ぶりの復帰となった。そしてこの年は低迷するチームの中でもブルペン陣の柱として活躍。40歳の大ベテランながら45試合に登板して5勝4ホールド、防御率2.98と見事な復活を果たして見せたのだ。翌年はコンディションが上がらず、引退試合のみでの登板に終わったが、五十嵐の存在があったことが、現在のヤクルト投手陣の底上げに繋がった部分もあったはずだ。  実績のあった野手では森本稀哲(DeNA→西武)、渡辺直人(西武→楽天)、藤田一也(楽天→DeNA)などが挙げられる。森本はFAで日本ハムから横浜(当時)に移籍したものの結果を残せずに2013年オフに戦力外となり退団。翌年は西武でプレーし、外野のスーパーサブとして99試合に出場して37安打を放った。在籍は2年だったものの、明るいキャラクターもあって人望は厚く、引退試合ではチームメイトが必死に繋いで森本に打席を回したシーンを覚えているファンも多いだろう。  渡辺は2017年オフに西武を退団し、古巣である楽天に復帰。復帰1年目には7年ぶりのホームランも放つなど、69試合の出場を果たしている。翌年は大きく成績を落としたが、2020年もコーチ兼任として現役を続行。試合出場は引退試合の1試合に終わったが、コーチとしてもチームを支え、2021年以降は専任コーチとなっている。藤田は昨年オフに現役続行を志願して今年古巣のDeNAに復帰。昨年は一軍出場がなかったが、今年は既に30試合に出場し(8月11日終了時点)、守備力とミート力が健在であることを示している。  一方で実績のない投手が戦力外からの移籍をきっかけに戦力となった例も目立つ。最近では今野龍太(楽天→ヤクルト)、近藤弘樹(楽天→ヤクルト)、田中豊樹(日本ハム→巨人)などの名前が挙がる。中でも圧倒的な存在感を示しているのが今野だ。楽天では6年間の在籍でわずか15試合の登板に終わったものの、ヤクルトでは1年目から20試合に登板して防御率2.84と好成績を収めると、昨年はチーム3位となる64試合に登板するフル回転の活躍で優勝、日本一にも大きく貢献した。今年もここまでいずれもチームトップタイとなる37試合登板、15ホールドとブルペンには欠かせない存在となっている。  近藤はドラフト1位でのプロ入りながらわずか3年で戦力外となり、ヤクルトに育成選手として入団。キャンプ、オープン戦で結果を残して開幕前に支配下登録されると、開幕から14試合連続無失点を記録するなど22試合に登板して11ホールド、防御率0.96と見事な成績を残した。肩の故障で昨年5月から戦列を離れているが、復帰を望むファンの声は多い。  田中も日本ハムではわずか4年の在籍で2019年オフに戦力外となったが、巨人では二軍で結果を残して育成契約から這い上がり、昨年まで2年連続で30試合以上に登板している。昨年オフに右肘を手術した影響で今年は再び育成契約となっているが、過去2年間の実績を考えれば来年以降再び支配下への復帰の可能性も十分にあるだろう。  こうして見てみると投手ではリリーフ、野手では守備力の高い選手が戦力となっているケースが目立つ。また野村克也監督時代から“再生工場”と言われていたヤクルトは現在も上手く戦力外となった選手を引き上げていることがよく分かるだろう。今年オフには現役ドラフトも実施予定だが、どんな形であれ移籍した球団で復活、覚醒する選手が今後も多く出てくることを期待したい。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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    安倍晋三氏は「神輿」に乗った右派のプリンス ジャーナリスト・青木理が迫る実像

     安倍晋三元首相の銃撃事件は多くの人に衝撃を与えた。晋三氏の父方の系譜をたどった『安倍三代』の著者でジャーナリストの青木理さんとともに、「三代目世襲政治家・安倍晋三」の実像に迫った。AERA 2022年8月15-22日合併号の記事から紹介する。 *  *  * ──安倍晋三氏の国葬に反対する意見の一つに、政治家としての評価が定まっていない、との指摘があります。晋三氏をどう評価していますか。  私は政治記者ではありませんから、晋三氏が政界をどう遊泳し、自らの政治姿勢をどう固めたかは知りません。ただ、政界入りするまでを知る何十人もの同級生、友人、恩師、上司、同僚らに会って話を聞くとひどく凡庸で飛び抜けたところのない「いい子」。たまたま名門世襲政治一家に生まれたお坊ちゃまにすぎず、そうでなければ政治家になることもなかったでしょう。実際、小学校から大学、そして“政略入社”した会社員時代を含め、彼が政治家を志すに至ったと捉え得るようなエピソードは皆無でした。『安倍三代』で描いた通り、祖父寛氏や父晋太郎氏にはエピソードが詰まっていましたが、取材を尽くしても晋三氏には一切ない。それどころか政界入りするまでの段階で、右とか左とかの以前の話として、彼の口から政治的な話を聞いた人自体が一人もいないのです。ある意味、ゾッとするほど空っぽでした。 ■右傾化する時代の気配、風をとらえ巧みに乗った ──晋三氏は小中高、大学まで東京の成蹊学園でエスカレーター式に進学。就職も「政略入社」。政治家になった後も、右派政治家や宗教右派の神輿に乗ってきた人という印象があります。  彼自身がどう考えていたかはともかく、右派にとっては恰好(かっこう)の神輿(みこし)だったでしょう。私の取材に応じた妻昭恵氏は、夫が首相に上り詰めたことを「天のはかり」「天命」といった独特の表現で評してましたが、戦後日本の右派政治に大きな足跡を残した岸信介の孫という圧倒的ブランドをまとって名門政治一家に生を受けた彼を、政界内外の右派はプリンスとして育てた。ひょっとすれば彼自身、右傾化する時代の気配を読んでそれをあおり、巧みに乗った面もあったのかもしれません。 ──晋三氏が日本を右傾化させたのか、右傾化した日本社会の神輿に晋三氏が乗ったのか。  双方でしょう。僕の取材体験を重ねあわせれば、2002年に史上初めて行われた日朝首脳会談は、政治家としての彼と戦後日本の大きな転機になりました。故金正日(キムジョンイル)総書記が日本人拉致の事実を認め、謝罪した。このときソウルで取材していた私に先輩記者が漏らした台詞(せりふ)は印象的でした。「中国や朝鮮半島との関係の中で、日本が戦後初めて“被害者”になったな」と。つまり、戦後一貫して加害者として謝罪や反省を求められた日本の立ち位置が変わった。もちろん拉致は断じて許されざる国家犯罪とはいえ、それに手を染めた北朝鮮はいくら罵(ののし)っても構わない対象となり、同時に戦後も一貫して燻(くすぶ)っていた朝鮮半島への差別心なども噴き出した。「いつまで謝罪を求められるんだ」という鬱屈(うっくつ)に歴史修正主義的な風潮までが一挙に噴出するバックラッシュ現象が起きたのです。  その対象は直ちに韓国や在日コリアンにも広がり、マンガ『嫌韓流』の発刊が05年、在特会(在日特権を許さない市民の会)の出現が06年。その契機になった会談と以後のムードに乗って晋三氏が政界の階段を一気に駆け上ったのは象徴的でした。彼が右傾化をあおった面は間違いなくあるけれど、彼自身が時代の風を捉え、それに巧みに乗ったともいえるというゆえんです。 ■戦後の歴代内閣の約束事、片っ端から破壊した ──『安倍三代』を取材、執筆されたのは安保法制の議論がピークのときでしたが、その後、晋三氏に対する評価で変わった部分はありますか。  変わりません。今回のような形で亡くなったのは痛ましくても、それと政治家としての評価は別です。特に僕が問題視しているのは、戦後の歴代政権がかろうじて堅持してきた大切な約束事を片っ端から破壊した点です。  いわゆる安保法制でいえば、公権力の行使者を縛る憲法の解釈を一内閣の閣議決定でひっくり返した。その過程では、内閣法制局長官を自らに都合のいい人物にすげ替えた。政府からの独立性が求められる日銀総裁やNHK会長などもそう。そして国権の最高機関たる国会では百何十回も嘘(うそ)をつき、少数派でも一定の有権者の支持を得て議席を占める野党を「悪夢」などと罵り、権力監視が役割のメディアを露骨に選別し、敵とみなしたメディアには陰に陽に圧力をかける。挙げればキリはありませんが、歴代の政権がかろうじて堅持してきた民主主義の矜持(きょうじ)を次々なぎ倒して平然としていた。その罪はあまりに重い。 ──『安倍三代』でインタビューに応じた、成蹊大学の宇野重昭・元学長が同様の指摘をしていますね。教え子の一人だった晋三氏について「はっきり言って彼は、首相として、ここ2、3年ほどの間に大変なことをしてしまった」と語り、安保法制に関しては「憲法解釈の変更などによって平和国家としての日本のありようを変え、危険な道に引っ張り込んでしまった。国民も、いつかそう感じる時がくるでしょう」と述べています。台湾有事が話題になっていますが、安保法制に基づく「存立危機事態」が適用されるようなことがあれば、そのとき国民は晋三氏の負の遺産を思い知ることになるのでしょうか。  ええ、アベノミクスなる経済政策なども同様でしょう。これは安倍政権だけの責任ではないものの、長期の経済低迷から抜け出せず、産業構造改革もイノベーションも起きないまま、ひたすら金融緩和に突き進んで日銀は国債を膨大に抱え込んだ。各国の中央銀行が利上げに舵(かじ)を切り、円安が急進展しても日銀が動かないのは、もはや手足を縛られて動けないのが実態でしょう。やってる感だけは振りまいて何の成果もなかった対ロ、対北外交などを含め、安倍政権には誰もが認める政治的遺産などないというのが実情です。 (構成/編集部・渡辺豪)※AERA 2022年8月15-22日合併号より抜粋

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    10時間前

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    完全自動で米国ETFの積み立て! 「ほったらかし」で分配金をもらう方法

     いわゆる「FIRE」を目指す人の間で定番化しているのが、米国ETFだ。米国市場に上場しているETF(上場投資信託)のことで、日本の投資信託や東証ETFでは買えないものが目白押し。  ※FIRE…「Financial Independence, Retire Early」の頭文字をとったもので、和訳は「経済的自立と早期退職」  日本の投資信託や東証ETFとの違いを順番に述べよう。まずは、規模が圧倒的に大きい。  投資信託やETFの規模を表すのが「純資産総額」(株でいうところの時価総額)だが、たとえば「SPDR S&P500 ETF トラスト(SPY)」は日本円にして約50兆円。億円ではなく“兆円”だ。こちらは特に規模の大きいETFだが、数十兆円、数兆円規模の米国ETFは決して珍しくない。  日本の投資信託で一番規模が大きいのは、「アライアンス・バーンスタイン米国成長株投信Dコース(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」の1兆8000億円台(2022年8月)。  つみたてNISAのトップは「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」で、1兆3000億円台(同)である。純資産総額1兆円台でも十分すごいが、米国とはケタが違うことをおわかりいただけるだろう。  冒頭で「日本の投資信託や東証ETFでは買えないものが目白押し」と書いたが、その筆頭格として私が挙げたいのは「バンガード米国増配株式ETF(VIG)」だ。  このETFには、米国で10年以上の増配実績(配当を増やし続けている実績)がある、中・大型株が組み入れられている。株主還元に積極的で、高収益な企業を丸ごと買えるETFといえるだろう。  バンガード米国増配株式ETFを長期保有すれば、価格成長と増配の両方が期待できる。日本円にして2万円程度なので、毎月コツコツ買いやすい。  もう一つ、「不動産セレクトセクターSPDRファンド(XLRE)」も紹介しておこう。S&P500に属する、大型リート(不動産投資信託)30銘柄に投資できるETFだ。  米国リートは価格も長期的に成長しており、分配金利回りも優秀。ポートフォリオに「株」ばかりそろえるのではなく、不動産も入れてはどうか? こちらは2022年8月現在、日本円にして5000~6000円で買える。  米国ETFの魅力を駆け足で列挙しよう。 1. ETFは分配金があり、老後に自ら取り崩さなくてもよい=出口戦略に悩む必要がない。 2. 米国株も、米国リートも長期で見ると価格が伸びてきた。 3. ETFを1本持つだけでも分散投資ができる。 4. 米ドルベースの資産を持つことは、インフレヘッジにもなる。 5. ETFでは銘柄分析や、購入後のメンテナンスが不要。 6. 買うだけで売ることは必ずしも考える必要がない、「本当のほったらかし投資」が可能になる。 7. 米国ETFは純資産総額が大きく安心感がある。 8. 米国ETFは日本の投資信託や東証ETFより種類が多い。 9. 米国企業は日本企業に比べて、株主還元意識が強い。株価の成長、自社株買い、増配(配当金を増やす)を3本柱として、株主に報いる。そんな米国企業の株をETFなら手頃にまとめ買いできる。 10. 米国企業は企業統治がしっかりしており、不祥事も日本企業に比べて少ない。  魅力は伝わっただろうか。  米国ETFへの投資には、以前まで面倒な面もあった。米国ETFを毎月買おうと思ったら、自分で定期的に「手動」で注文を入れて「積み立て風」にしなければならなかった。つまり、自動買い付けができなかったのだ。  米国ETFは米ドル建てで取引することになるので、買う前に、円を米ドルに交換しなければならないのも手間だった。この際、主要ネット証券では1ドルあたり原則25銭の為替手数料も発生する。  ネット証券で円貨決済ができるようになり、通貨の違いによる手間は解消されたのだが、自動買い付けについては課題が残ったままだった。  ここ数年で、米国ETFの自動買い付けサービスが出揃ったのは喜ばしい。自動で円を米ドルに交換のうえ(円貨決済を選ぶ)、毎月指定の銘柄を買い付けてくれるようになったのだ。  このサービスを利用したいなら、SBI証券、マネックス証券、楽天証券のネット証券3社がおすすめだ。「毎月○万円」などの定額買い付けのほか、SBI証券や楽天証券では「毎月○口」という口数でも指定できる。円貨決済だけでなく、米ドル決済にも対応している。  そしてSBI証券の「米ドル定期自動入金サービス」が画期的。提携銀行である住信SBIネット銀行の外貨普通預金口座にある米ドルを、毎月自動でSBI証券に手数料無料で入金できるようになった(2022年6月スタート)。  住信SBIネット銀行は、為替手数料が他に比べて激安なことで有名だ。前述の通り、主要ネット証券は1ドルあたり25銭なのだが、住信SBIネット銀行は通常6銭、毎月定額を積み立てる「外貨積立」なら3銭とリーズナブル。※6銭、3銭は米ドルの場合 ◆住信SBIネット銀行の「外貨積立」 ◆住信SBIネット銀行×SBI証券の「米ドル定期自動入金サービス」 ◆SBI証券の「米国株式・ETF定期買付サービス」  これら三つのサービスを使うと、どうなるか? (1)住信SBIネット銀行で「外貨積立」を使うと、円から米ドルに自動積み立て形式で両替できる。 (2)住信SBIネット銀行×SBI証券の「米ドル定期自動入金サービス」を使うと、毎月自動で住信SBIネット銀行からSBI証券に米ドルを入金してくれる。 (3)SBI証券で「米国株式・ETF定期買付サービス」を使うと、毎月自動で米国ETFを買い付けてくれる。  もうお分かりだろう。住信SBIネット銀行に日本円さえ入れておけば、毎月完全自動で、しかも激安の為替手数料で、米国ETFを買えることになる。 (1)~(3)をいったん設定すれば、完全オートだ。   既述の通り米国ETFには分配金があり、出口戦略を考える必要も少ない。老後の取り崩し期に入れば、買い付けをストップして、分配金を生活費にあてればいい。つまり「生涯究極の」ほったらかし投資が可能になるというわけだ。  どの金融商品に投資するにせよ、毎月コツコツと同じような金額を買い付けて、長期で保有するのは初心者でも失敗しにくい投資法。年月と複利を味方につけて、取り組むことをおすすめしたい。  なお、前回記事では、日本株口座で売買が可能な東証ETFについて解説している。あわせて参考に。 ※米国市場に上場しているETFは必ずしも「米国株オンリー」ではなく、シンガポールやインドの株などが組み込まれたETFもあります。そのためネット証券などでは「海外ETF」と表記されている場合が多いのですが、直感的にわかりやすくするため「米国ETF」と表記しました。また、本記事での日本円換算は1ドル=133円で計算しています。 <桶井道さんからお知らせ>  2022年8月12日に桶井道さんの新刊『月20万円の不労所得を手に入れる! おけいどん式ほったらかし米国ETF入門』(宝島社)が発売。ビギナー向け・ETFの指南書です。 文/桶井 道 編集/中島晶子(AERA編集部) ◎桶井 道(おけいどん)関西在住。47歳で資産1億円とともに約25年勤務した会社を退職、アーリーリタイアを達成。国内外の高配当株および増配株、米国ETFを駆使して資産運用を行う個人投資家(投資歴20年以上)。「60歳で株とETFからの配当金(分配金)年間240万円、資産目標2億円」を公言。ブロガーでもある ※AERAオンライン限定記事

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    NHKが中森明菜に出演交渉か どうなる目玉不在の今年の紅白

     2022年も早や5カ月を切ったが、毎年この時期から音楽業界で注目を集めはじめるのが「NHK紅白歌合戦」だ。大晦日に放送されるだけに時期尚早の観もあるが、大手レコード会社のスタッフは、こう明かす。 「近年は今くらいの時期に“夏の紅白”とも呼ばれ、『紅白』の出場歌手や司会の選考とも関連性があるNHKの大型音楽番組『ライブ・エール』が放送されています。今年は8月6日に放送され、宇多田ヒカルさんが約4年ぶりに同局の音楽番組に出演したり、『純烈』が上島竜兵さんの死去で2人態勢となった『ダチョウ倶楽部』とのユニット『純烈&ダチョウ』として登場して話題になりました」  この2組やお笑いコンビ「ウッチャンナンチャン」の内村光良とともに司会を務めた同局の桑子真帆アナウンサーに関しては、早くも「紅白」出場が有力視されているという。  昨年の「紅白」は視聴率で歴代最低を更新する大惨敗を喫し、一部では打ち切り説まで取り沙汰されるなど今年の巻き返しは必至となっている。 「一昨年はコロナ禍による感染対策により初の無観客開催となり、演出面もかなり制限されましたが、2年ぶりに世帯平均視聴率40%を超える健闘を見せました。そうした中、昨年は2年前と同じくコロナ禍による“巣ごもり需要”が期待できることや強力裏番組である日本テレビの『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけない』シリーズの放送休止といった追い風もあり、一昨年以上の視聴率が狙えると期待されていたんです」(前出のレコード会社スタッフ)  ところが、ふたを開けて見れば午後9時からの第2部の平均世帯視聴率は34.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と前年から6.0ポイントも落とし、歴代最低記録を更新してしまったのだ。  さらに、今年の5月にはNHKの職員有志による「前田会長よ、NHKを壊すな」と題したレポートが「文藝春秋」に掲載され、その中にはNHKの前田晃伸会長が「紅白」を打ち切りにする方向で進めているといった内容もあった。当の前田会長本人は同月の定例会見で「紅白」に関する報道を否定したが、「先の参院選でもNHK党が存在感を放つなど、受信料の件もあってNHKや『紅白』に対する視聴者の風当たりは年々厳しさを増している印象です」(同レコード会社スタッフ)  こうした事情もあり、今年の「紅白」は例年以上に“数字”が求められることになりそうだが、現状はお世辞にも芳しい状況ではないようだ。  音楽ライターはこう話す。 「今年も世代を超えて愛されるようないわゆる国民的ヒット曲はまだ出ていませんし、そもそも目立った新曲すらパッと浮かばない。本来であれば、先日に“最後のテレビ出演”が話題を呼んだ吉田拓郎さんや一部女性誌で引退準備が報じられた井上陽水さんといった大物歌手を投入したいところでしょうが、現実は厳しそうです」  そうした中、NHKサイドが今年の「紅白」の目玉として密かにサプライズ出演を期待しているのが歌手の中森明菜だという。  今年デビュー40周年を迎えた中森明菜といえば、7月9日に同局で放送された「中森明菜 スペシャル・ライブ1989 リマスター版」が再放送されて大きな注目を集めたばかり。 「今回放送されたのは明菜さんがデビュー8周年を記念して、デビュー曲『スローモーション』から1989年リリースの『LIAR』までのシングル24曲を歌唱した89年4月のライブの模様を高画質の映像にリマスターしたものです。明菜さんにとってもシングル曲だけを歌った珍しいライブでファンの間では“伝説のコンサート”として今も語り継がれています」(前出の音楽ライター)  今年4月にNHKのBSプレミアム・BS4Kで1度放送されたが、わずか3カ月を経てNHK総合での再放送となった。 「4月の放送後の反響の大きさを受けて今回の再放送が決まったそうで、改めて明菜人気の高さを見せつけられた格好です。そこで浮上しているのが『紅白』への担ぎ出しです。そもそも、明菜さんは14年の『紅白』に米ニューヨークのスタジオからの生中継という形でサプライズ出演しましたが、約4年5カ月ぶりの復活ということもあって当時は大きな反響を呼びました。ここ5年ほど公の場の立っていない明菜さんが再び『紅白』のステージに立つとなれば大きな反響を呼ぶのは間違いないでしょう」(同音楽ライター)  実際、同局の局員からはこんな話も聞こえてくる。 「4月の時もそうでしたが、7月の再放送に関しても放送後にはNHKふれあいセンターなどを通じて視聴者の皆さんから珍しくお褒めの言葉を多数頂いたようで、局内でも話題になっていました。ここ5年ほど目立った活動はしておらず体調の問題もあるんでしょうけど、出来ることならまた『紅白』に出演してほしいですし、番組担当が水面下で出演交渉に入ったといった噂も流れています」  中森明菜への出演交渉について、NHK広報局に事実関係の確認を求めたが、「個別の番組の制作過程についてはお答えしておりません」との回答が返ってきた。  伝説の歌姫が窮地の「紅白」の救世主となるか!?(立花茂)

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    メジャー戦力外の筒香嘉智 現地メディアが「ファンの諸君、朗報だ!」と辛辣報道の理由

    「パイレーツファン諸君、朗報だ!」  8月3日(現地時間:以下同)、ピッツバーグ・パイレーツの筒香嘉智がDFA(事実上の戦力外通告)になった。この報を聞いたパイレーツ専門メディア『バックス・ダグアウト』は、このように喜びを表現した。DFAを受けたのはトレード期間を終えた翌日。パイレーツのデレク・シェルトン監督は「適切なタイミングだったと思う」と、地元紙『ピッツバーグ・ポスト・ガゼット』にコメントしている。  筒香は、今季50試合出場も29安打、19打点、打率.171と低迷。期待された長打はまったく出ず、ホームランはわずか2本だった。打撃や投球、守備などを総合して選手の貢献度を表す指標のfWARは-1.3。同指標を提供するファングラフス社の中でも、これは1355人中1353人目の数字。球団に所属する選手では最下位だ。大谷のfWARは5.8で総合2位なので、逆に筒香が今までMLBにいたことが奇跡だったとも言える。  筒香は今年、パイレーツと400万ドル(約5億3970万円)の単年契約を結んでいた。昨年8月にロサンゼルス・ドジャース傘下から自由契約を経てパイレーツに加入した筒香は、マイナーで磨き直した打撃で、43試合出場で8本塁打、25打点、長打率.535と覚醒。その打力は高く評価され、ロックアウト前の11月29日にパイレーツと再契約。『CBSスポーツ』からは「ヨシを連れ戻したのは賢い考えだ」と称賛され、今季は開幕から4番打者となり、一塁手のレギュラーにも抜擢された。  しかし、筒香は現地からの期待を全て裏切った。シーズンが始まると、筒香の打撃は試合を重ねるに低迷。シーズン序盤から全く打てず、スポーツメディア『DK・ピッツバーグ・スポーツ』(4月28日)からは「ひどいとしか言いようがない」と言われ、パイレーツ専門メディア『ラム・バンター』からは、「若手の出場機会を奪う障害だ」(5月30日)と痛烈な批判を浴びた。  当時、不振の原因として指摘されていたのは、「打球速度と打球角度の低下」と「引っ張る確率の低下」であった。地元紙『ピッツバーグ・ポスト・ガゼット』は、4月19日の記事で次のように述べている。「(筒香は)昨季から平均打球速度が時速4.9マイル(約7.8キロ)遅くなり、打球角度は1.9度も低下している。ボールを引っ張る確率は昨季の35.6%から今季は14.3%にまで減少している」。さらに、「打球方向が変わったのも、スイングの遅れに原因がある」とも指摘された。  しかし、急激な打撃低下は、ケガの影響が原因でもあった。筒香は5月27日、「腰部の筋肉損傷」で負傷者リスト(IL)に入っている。本人によれば、腰の痛みは開幕3試合目からあり、ILに入るまで治療薬を飲みながらプレーしていたとも話している。戦列復帰まで42日も要するほど重傷だったこともあり、序盤の低迷理由を知った現地メディアの中には同情を寄せるものもいた。  しかし、いくらケガの影響があったとしても、復帰後の1カ月で何も改善しなかった筒香を誰も擁護できなくなった。7月の月間成績は、15試合で9安打4打点、0本塁打に19三振。打率/出塁率/長打率は、それぞれ.158/.172/.175。全ての数字で最悪の選手となり、現地での信用は完全に地に落ちた。  そんな筒香だが、DFA後は後どうなるのか。シーズンは終了まで2カ月近くあるが、残念ながらMLBに残るのは難しいだろう。DFAを受けた選手は次の4つの選択肢が与えられる。1つ目はトレード、2つ目はウェーバー公示、3つ目は解雇、あるいは、マイナー降格。しかし、パイレーツは5日、筒香を自由契約にすると発表している。3日のDFA後、パイレーツは筒香をウェーバー公示にかけたが、獲得の意思を示したMLB球団はいなかったようだ。また、筒香はマイナー降格を受け入れなかったようで、退団の道を選んでいる。  ただ、この結果はすでに予見されていた。米移籍情報サイト『MLBトレード・ルーマーズ』の3日掲載の記事には、次のよう書かれている。 「トレード期間が終わった今、パイレーツに残る唯一の選択肢は、アウトライト・ウェーバー(40人枠から外すが、当該選手を支配下としてマイナーに残すこと)か、ウェーバー公示だ。今季年俸400万ドルのうちまだ140万ドル(約1億9000万円)の負担が残っていることを考えると、どちらにしてもウェーバーで引き取り手がいないことは確実だ」  昨年、筒香がドジャースやパイレーツに移籍できたのは、最初に所属していたタンパベイ・レイズが2年1200万ドル(約16億円)の年俸を全て負担したから。あとの2球団は当時の最低保証年俸57万500ドル(約7700万円)のうちシーズンの残り日数で割った分の支払いだけで済んでいた。つまり、去年は格安かつ試す価値もまだあったので、引き取り手も見つかった。  しかし、今回はそうならなかった。パイレーツは資金力がなく、もし移籍先が見つかっても球団に年俸の残り分の負担を求めただろう。『MLBトレード・ルーマーズ』はその問題を指摘し、獲得する球団はいない、と予想していた。  そうでなくても、筒香はこの3年の通算成績は、18本塁打、打率.191、長打率.339で、MLBで通用しないのが明らかになっている。それにケガのリスクも抱えていることも知られてしまった。  しかも、今MLBはトレード期限を終えたばかり。どこも戦力整理はもう済んでいる状態だ。これが秋山翔吾(広島カープ)がシンシナティ・レッズを退団した時(4月5日)のようにシーズンの早い段階であれば、筒香も他球団とマイナー契約を結ぶチャンスがあったかもしれなかったが、今だと望みは薄いだろう。ただ、こうなってしまったのも、筒香がこれまで与えられたチャンスを生かせなかったからだ。  筒香に残された選択肢は現時点ではほとんど残っていない。引き続きアメリカでマイナー契約ができる球団を探すか、あるいは日本球界に復帰か。(なお日本プロ野球の補強期限は7月31日までのため、今季復帰は不可)筒香は8日、アメリカに残って自主トレを続けながらMLB(マイナー)からのオファーを待つと表明しているようだ。しかし、地元紙『ピッツバーグ・ポスト・ガゼット』によれば、筒香がアメリカに残ることはもうないと予想している。同紙は、5日の記事で筒香の今後を次のように予想している。 「ピッツバーグでのヨシ・ツツゴウ時代はどうやら終焉を迎えたようだ。筒香の退団はかなり予想できた。彼は海外(日本)でプレーすることを望んでいるのかもしれない。パイレーツ傘下インディアナポリスには、すでに一塁手で使いたい選手がいる」  同紙によれば、パイレーツ傘下はすでに将来に向けてマイナー選手の育成に舵を切っているため、筒香には居場所がないことを指摘。また、野球専門メディア『コール・トゥー・ザ・ペン』も8月8日の記事で、「ここまでは、日本プロ野球に復帰して現役を続行するだろう。故郷に帰る可能性は高いようだ」と伝えている。現地メディアの見解では、アメリカに残れる可能性がほぼなくなっている筒香。はたして今後どんな決断をするのか。その動向が注目される。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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    他球団が欲しがる「巨人の中堅2人」 トレードなしで起用も増えず「もったいない」の声も

     現在セ・リーグでBクラスに沈んでいる巨人。新型コロナウイルスの集団感染で多くの選手が離脱して苦しい状況ではあるが、ここからの巻き返しに注目が集まる。そんな中、石川慎吾、重信慎之介と能力的には高く評価されているものの、なかなか出場機会が回ってこない中堅2人が存在する。  選手層の厚いチームという事情もあり、常時出場は難しいかもしれない。加えて、若手への切り替えを図る球団方針もある。出場機会が減ってしまうのは理解できるが、あまりにチャンスが少ない。他球団へ行けばレギュラー争いに加わることのできる実力があると言われているだけに「もったいない」の声も多い。  開幕から調子に乗り切れない巨人はペナント争いで首位から13ゲーム差の5位。先述のようにオールスター前にはコロナ禍の直撃を受け、7月19日からの4日間で首脳陣、選手、スタッフを含め計73人が陽性判定を受けた。  優勝争いは非常に厳しい状況ではあるが、今はチームが若返りの時期でもあり、有望株たちの奮起も期待されている。野手では坂本勇人の後継者と言われる中山礼都、レギュラー定着が期待される増田陸に加え、秋広優人、菊田拡和など有望株は少なくない。一方、投手でも大卒ルーキーの大勢がストッパーとして活躍し、赤星優志、山崎伊織、堀田賢慎など開花の兆しを開幕当初に見せていた将来のエース候補は多い。 「良い素材が多いのは間違いないが中心選手になるには数年かかる。若手の積極起用が苦戦にもつながっている部分もある。編成面も任される原辰徳監督は数年先を考えているのでしょう。オフの積極補強がなかったのを見ても、球団方針として決定事項なのかもしれない」(在京球団編成担当) 「(若手が期待通り成長すれば)将来的に黄金時代が来るかもしれない。しかし巨人は常勝を宿命づけられている球団。ファン、スポンサーなどが(勝てない)現状に対して不満を持っている場合も多い。中堅クラスの実力者をなぜ使わないのかという声も聞こえる。石川、重信はその最たる例です」(大手広告代理店関係者)  数年後を見据えヤングジャイアンツを育成するのはごもっとも。しかし巨人のファン、そしてスポンサーなどは「常に勝利」を求めている。結果を出せる可能性がある実力者を起用すべきとの意見もある。  そして、二軍などで結果を出しながらも「起用されない選手」の筆頭が石川だ。  石川は16年オフのトレードで日本ハムから巨人に移籍。加入1年目となった17年には99試合に出場して、57安打、5本塁打、20打点と存在感を見せたが、それ以降はなかなか出場機会を増やせないでいる。だが、先述のようにファームでは常に結果を残し続けており、一軍で使われないのが不思議な気もするほどだ。 「打撃はレギュラークラス。特に飛距離はトップクラスで逆方向の打球も簡単にスタンドインさせる。東京ドーム外野席上部看板にもバンバン当てています。外野守備も決して悪くなく標準以上でもある。出番は少ないですが確実に仕事をこなせるメンタルの強さもある」(巨人担当記者)  石川は今季もこれまで一軍の出場は13試合と少ないが、打率.353(17打数6安打)とハイアベレージをキープしている。新型コロナウイルスの影響で選手も大量に離脱しており、ここからチームの救世主的な存在となれるのか。  また、石川と同じ外野手の重信も実力がありながら出場機会に恵まれない選手の一人だ。早稲田大時代から安打製造機として知られ、15年のドラフト2位で巨人に入団。即戦力として期待されながらも、なかなかレギュラー奪取には至らず中堅の域に差し掛かっている。 「早稲田の先輩であるヤクルトの青木宣親のような活躍を期待されたが伸び悩んでいる。大学時代の活躍から、将来的にはメジャー挑戦もという声も上がったほどの選手だった。試合に出れば確実に結果を残すが、パフォーマンスが安定しないところもある。チーム編成上の影響もありレギュラー奪取とまではいかない状況が長く続いている」(巨人担当記者)  今のところ巨人ではともに一軍当落線上の選手にはなってしまってはいるが、他球団からの評価も高い。7月31日のトレード期限までに動きはなかったが、「試合に出さないのであれば欲しい」という声も多くあるようだ。 「石川は代打だけでは惜しい。スタメンで4打席立てばシーズン25本塁打は期待できる。重信は実戦タイプで伸び代もまだ感じる。試合に出続け経験を積めば大学時代のような存在感を示すことができる可能性もある」(在京球団編成担当)  これからのチームを担う若い選手を育てなければいけないチーム事情もある。かつての坂本や岡本和真などは若手時代から我慢して使い続けたことで、現在のような確固たる地位を築くことができた。だが、常勝チームがゆえに勝つことも求められる。そうなった場合、やはり石川、重信のような選手も積極的に起用しなければいけないような気もするが……。 「全ては原監督の考え方次第。これだけ苦戦をしても若手中心の起用法に変化はない。今後も同様ならば石川と重信の立ち位置も変わらないので、トレードの可能性も出てくる。2選手との交換でポイントを絞って戦力補強をしつつ若手育成をするのが現実的ではないか」(巨人担当記者)  巨人は今、ピンチを迎えている。球団史上2度目となるシーズン最下位の可能性もでてきた。若手へのシフトも重要だが、目先の1勝も大きな意味を持つ状況になっている。新型コロナウイルスの影響で離脱した選手が多い中で、石川、重信の起用は増えるのか。また、シーズンオフのトレードなど、名門チームでくすぶる中堅2人の今後はどうなっていくのだろうか。

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    たとえ家族でも、無理レベルの限界を超えたら開き直って距離をとって しいたけ.さんがアドバイス

     AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。 *  *  * Q:義母からずっと「これからは共働きが当たり前」と言われ、パートしながらお母さん業をしてきました。が、去年疲れ果て退職しました。「専業主婦は悪」と自分の心をムリに洗脳して働いた結果、心が悲鳴をあげたのです。専業主婦はそんなに悪いですか? 稼がない主婦は、罪ですか?教えてください。ちなみに義母は、まさかの専業主婦です。(女性/専業主婦/45歳/おうし座) A:まずは本当にお疲れ様でした。自分の意思で退職をされたということなので、ステップ1を踏み出されている。素晴らしいことだと思います。  人間には「無理レベル」というものがあります。  例えば、どうしても気が合わない人がいて、「腹は立つけど、この人はそういう人だから」と思えるなら、無理レベルは3とか4。でもこの相談は無理レベルが5を超えている気がしました。  僕はいつも思うんですが、人に「こうすべきだ」ということをよくしゃべる人に限って、自説じゃないことのほうが多いです。自分の頭で考えて、自分の経験値で言ってるわけじゃない。自分が言われて嫌だったことを、受け売りで言っているだけの人もいます。これが赤の他人だったら、bot(ボット)つまり自動再生装置として見てスルーするのも一つの手です。ただ、家族だとそれも難しいかもしれません。  無理レベルが5を超えた時は、距離を取ってください。そうじゃないと自分がどうにかなってしまうから。  距離の取り方について説明したいんですが、第一に強い意思が必要になってくると思います。距離を取ることで、相手の攻撃が激しくなることがあります。「上等だよ」と思わないと戦えない。これはもう「戦」の段階に入っています。そして、一線を越えたのであれば開き直って自分の意思を通していいと思います。旅に出るとか、やってみたかったことをやるとか。外に居場所を作っていきましょう。家庭内の問題と戦うためには、外の味方や居場所が絶対に必要になってきます。  姑(しゅうとめ)との諍(いさか)いは、一般的にずっと昔から繰り返されていることかもしれませんが、これからの時代、形を変えてますます増えていくような気がしています。というのは、ある種、年齢が関係なくなってきているから。「おばあさんはおばあさんらしく」みたいなことをしなくなって、自分の要求を、どの年齢でも強く持つ人が増えています。するとどうしても勢いが強いほうに負けてしまう。だからこそ、自分の幸せや生活を守っていくためには、「戦う手はずを整える」ことがときには大切になってきます。  おうし座は、自分からギブアップしない傾向があるというか、悪に対して付き合ってしまうことがあります。早く辞めればいいのに「この会社がどこまで腐っているか見届ける」ために、そこから7年在籍する人とか。悪に付き合わず、「もう無理」をちゃんと言っても大丈夫です。 ◎しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「VOGUE GIRL」での連載「WEEKLY! しいたけ占い」でも人気※AERA 2022年8月15-22日合併号

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    佐藤栞里は令和最強の「MC横」 “地味モデル”が超好感度タレントに変わるまで

     現在、「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)をはじめ多数のレギュラー番組を抱えるモデルでタレントの佐藤栞里(31)。「王様のブランチ」(TBS系)では総合司会を務めているが、「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」(日本テレビ系)ではサブMC、「有吉の壁」(同)でもアシスタントMCを担当。近年、「MC横」というポジションにすっぽり収まった感がある。  もともと、女性ファッション誌の専属モデルとして活躍していた佐藤。2014年に「1億人の大質問」の人気コーナー「朝までハシゴの旅」での体当たりリポートが反響を呼びブレーク。一方、テレビに出始めの頃はネット上で「芸能人にしては華がない」「雰囲気も一般人」という声も散見され、地味なイメージもあった。しかし、現在は「笑顔を見てると幸せになれる」「かわいくて好き」などの声が多く、好感度の高い芸能人に上り詰めた。 「いつの間にか視聴者に愛されるキャラになりましたよね。『有吉の壁』や『王様のブランチ』を見ると、“ただ笑っているだけのポジション”に見えるかもしれませんが、実は共演者からの評価は高いんです。パンサーの向井慧によると、スタッフにウケない時も佐藤はニコニコ見てくれるそうで、『それでどれだけみんなが救われてるか』『“有吉の壁”に出てる芸人、みんな栞里ちゃんのこと好き』とバラエティー番組で絶賛していました。5月にコロナの療養から2週間ぶりに『王様のブランチ』に復帰した際は、オリエンタルラジオの藤森慎吾が『やっぱり栞里ちゃんが戻ってきてくれて、今日は安心感。素晴らしいです、栞里が隣にいる幸せ』と喜んでいました。ニコニコして明るいだけでなく、共演者から好かれているのが視聴者にも伝わってくるのでしょう」(テレビ情報誌の編集者)  民放バラエティー制作スタッフもこう証言する。 「佐藤さんは場の空気を読む力、自分が番組内やシチュエーションごとに何を求められているのかを理解する力に長けています。礼儀正しく、裏表がないのでみんなから愛されています。アンジャッシュ・渡部さんが不倫騒動で出演を見合わせた際、『王様のブランチ』で彼女が号泣したことは記憶に新しいですが、他のタレントなら『ぶりっ子しやがって』となりそうなものが、彼女の場合は『本当にショックを受けているんだな』と同情してもらえる。そういう意味で佐藤は今の芸能界でも稀有な存在です」  一方、昨年、雑誌「FLASH」(2021年11月9日・16日合併号)で、テレビ関係者300人に聞いた「性格がいい女性芸能人」アンケートが掲載されたが、佐藤は2位の綾瀬はるかを抑えて1位を獲得。共演者だけでなく、スタッフ受けも抜群なようだ。 ■両親に愛されて育った  周りの人に好かれるのは、彼女の真面目さもあるだろう。過去のトーク番組では、ノートに自身の反省点を書いたり、撮影の数日前から自らロケハンのため現場を歩いたり、寝る時にはその日に会った人のことを思い出して寝るというエピソードが明かされていた。佐藤の周囲への気配りや真面目さは、両親の影響もありそうだ。女性週刊誌の芸能担当記者は言う。 「いとうあさこが昨年末に佐藤と一緒にライブに行った際、佐藤の父親が車で送りに来たそうで、その時の印象について『お父様もいい人なのよ。優しそうなね。“うちの娘をいつもありがとうございます”みたいな』とラジオで話していました。今でも両親はその時のことを佐藤と話しており『芸能界って、お父さんたち分からないけど、あさこさんみたいな人がいてくれるなら良かった。この世界に入って本当に良かったね。安心した』と言っているそうです。そんなエピソードを聞くと、両親から大切にされて屈託なく育ってきたことがわかります。そこが無理のない自然な愛嬌(あいきょう)につながっているでは」  芸能評論家の三杉武氏は佐藤栞里についてこう述べる。 「過剰に自分をアピールしたり、出しゃばり過ぎることなく、場の状況や空気を読みながらメインMCを上手にサポートしていますよね。所ジョージさんや有吉弘行さんといった長年芸能界の荒波にもまれ、人を見る目にも長けた大物MCからも高い評価を受けているのもうなずけます。バラエティー番組は台本があるとはいえ、場面によって求められることが一変することも多く、瞬時の対応が求められます。佐藤さんは頭の回転も速く、陰で相当努力や準備をしていると思われますが、そうした苦労を感じさせないのもプロ意識の高さを感じます。加えて、好感度の高さや癒やし系の雰囲気で、共演者の毒舌や暴言を“中和”する役割も果たしています。今やバラエティー界では欠かすことのできない存在になりました」  令和最強の「MC横アシスタント」の座はしばらく安泰だろう。(丸山ひろし)

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    “心臓が右にある”チャンス大城が起こした37億分1の奇跡がいい話なのに笑える

     芸歴32年、いま、お茶の間の記憶に残る男として、TV出演急増中の芸人・チャンス大城(本名:大城文章)さん。そんなチャンス大城さんが自らの半生を赤裸々に語り下ろした『僕の心臓は右にある』には、芸人さんはもちろん、超有名タレント、超有名ミュージシャン、プロレスラー、作家、マンガ家さんなど、プロの方々からの絶賛ツイートが続々と上がっています。本書から、プロローグを一部抜粋、編集して紹介します。 *  *  * 僕の一日は、床から始まります。  玄米を炊飯器で炊いて、みそ汁にサバ缶と刻みネギを入れて、オリーブオイルで炒めた野菜を一品、しらすと納豆とバナナ・ヨーグルト。  むちゃくちゃ健康的でしょう。  いろいろあって、お酒をやめて、健康的な生活に切り替えたんです。  これをみんな床の上に並べて、床に座って食べる。武田鉄矢さんのラジオ、「今朝の三枚おろし」を聴きながら食べるんです。  一応、隣の部屋にテーブルはあるんですが、床に座って食べた方が落ちつくんです。「明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー」でさんま師匠からもらったベッドも持っているんですけど、まだ箱から出してません。やっぱり床に布団を敷いて寝た方が落ち着くし、なんかベッドって、洋風っていうか、高級っていうか、偉そうな感じがするやないですか。  なんで、そう思うんかな。 やっぱり僕には、ストリートの血が流れてるんかな。 いや、ストリートなんてかっこつけすぎやな。  ホームレスになったことはないけど、ずっとホームレスすれすれの生活をしてきたから、地べたの方が落ち着くんかな。  きっと僕の体の中に、路上の気分があるんだと思います。路上魂、とでも言うんでしょうか。  いま住んでいるアパートは、2年前に借りたんです。1998年に尼崎から東京に出てきて以来、初めてのエアコンつきの部屋です。家賃は5万円。  でも、もともとついていたエアコンは室外機が故障気味で、2階に住んでるお姉さんから「うるさい」って注意されてしまったんで、生まれて初めて新しいエアコンを買いました。8万円もしました。  エアコンって、びっくりしますよね。  エアコンのない風呂なしアパートの夏は、地獄でした。おととしの夏までは、水で濡らしたタオルをしぼって体を拭いていたんです。でもいまは、エアコンさえかけてれば他には何もいらないと思うほど、天国にいるみたいな気分です。極楽です。  だから、エアコンかけてると欲望がなくなる気もしますよね。  そういえば、前に住んでいた風呂なし共同トイレのアパートに、玉置ピンチ!さんが泊まりにきたことがありました。  玉置ピンチ!さんは、僕と「右心臓800」というコンビを組んでいた先輩芸人さんなんですが、陸上の800メートル走で国体に出たことがあるんで、玉置さんが「800」。僕は先天的に内臓逆位で、心臓も右側にあって、だから「右心臓」。ふたり合わせて、「右心臓800」というわけです。  玉置さんは、チリひとつない部屋に住んでいる、ものすごい潔癖症の人でした。  僕はその風呂なしアパートでも床に布団を敷いて、毛布にくるまって寝ていたんですが、そこに虫がアホほどいたらしいんです。でも、尼崎のドブネズミと言われたほどの僕ですから、虫なんて全然平気でした。  ところが、玉置さんが僕の使っていた毛布にくるまって寝ようとしたら、 「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」  っていきなり変な呼吸を始めたんです。 「玉置さん、玉置さん? 大丈夫ですか?」  潔癖症の玉置さんは、アナフィラキシーショックというのになってしまったんです。あんまり虫が多いから、皮膚がたまげてしまったらしい。  それで救急車を呼んだのですが、僕は玉置さんの苦しそうな呼吸を聞きながら、 「人間って、毛布かぶっただけで呼吸困難になんねんな」  って不思議な感動に包まれていました。  地域によるみたいですが、救急車って料金がかかることがあるんですね。玉置さんは潔癖症なんで、後で救急車代をちゃんと払ってくれました。  さて、僕の心臓は右にあります。本当に右にあるんです。  この心臓のおかげで、僕はずいぶんといろんな目に遭いました。  伊丹の定時制高校に通っていたとき、高校の創立60周年記念行事かなんかで、風船の中に将来の夢を書いた紙を入れて飛ばすというイベントがありました。  同級生たちは、「将来は美容師になりたい」とか「料理人になりたい」とか書いて風船に入れている。僕は夢とかじゃなくて、 「僕は心臓が右にあります。内臓が逆についてます」  と書いて、自宅の電話番号も書いて、風船を飛ばしたのです。 そうしたら、3日後に電話がかかってきました。かけてきたのは、8歳の女の子でした。 「もしもし、風船届いたよ。私も心臓が右なの。よかったら今度の日曜日に会いませんか。御影駅にお昼の12時」「はい。わかりました」  御影は阪急電鉄神戸線の駅です。  約束の日曜日、電車で御影駅に向かいながら、 「こんな遠くまで風船飛んだんや」  って驚きました。御影駅は僕の家がある武庫之荘駅から、五駅も離れているのです。  御影駅について改札を出ると、「ミッキーマウスのTシャツを着た女の子」を探しました。それが約束の目印でした。  駅前を見回すと、ミッキーマウスのTシャツを着た女の子が本当に待っていました。 「お兄ちゃん、私も心臓が右なの。お兄ちゃん、心臓さわらして」「ええよー。ほら、ここや」「あっ、本当だ。右に心臓がある。ドキドキしてる」「そやろ」「お兄ちゃん、私の心臓もさわって」  女の子の胸に手を当てて心臓を探していたら、僕は警察につかまってしまいました。  不安に思ったご両親がついてきていたらしく、交番に通報したんですね。  交番に連れていかれお巡りさんに質問されました。 「ふたりは、なんで会ってんの」「今日、初めて会ったんです」「だから、なんで会ってんのって聞いてるんや」  誘拐犯と間違われたみたいです。 「あのー、実は、僕は心臓が右にあって、そんで高校の60周年記念で風船にそのことを書いた紙を入れて飛ばしたら、偶然に心臓が右にあるこの子がその風船を拾ってくれて……」「なんや、ええ話やないかい」  お巡りさんは感動していました。  女の子のご両親もわかってくれたらしく、 「これも何かのご縁ですね。よかったら家にご飯食べに来てください」  と誘ってくれたのです。  女の子の家で、神戸牛のすき焼きをご馳走になりました。  ちなみに、右に心臓がある僕が飛ばした風船を、右に心臓がある女の子が拾う確率は、37億分の1だそうです。  37億分の1というのは、V6の東京ドーム・コンサートで三宅君が投げたサインボールをキャッチした人が、次の公演でまた三宅君のサインボールをキャッチする確率と同じなんだそうです。  テレビでこの話をしたときに、教えてもらいました。  右に心臓があるって、どんな感じかって?  そやなー。  僕はルックスもよくなくて、「汚い中華料理屋の換気扇」なんて言われたこともあるぐらいだし、アマチュアのホームレスというか、芸人ですって名乗ってはいるけれど、自分になにか強烈な武器があるのかなと思うと、あんまり思いつかなくて、それがすごいコンプレックスなんですね。  そういうパッしない自分にとって、右心臓はフックみたいなもの、名刺みたいなもんかもしれません。  居酒屋で酒飲んでるおっちゃんが、 「チャンス大城ってお笑い芸人いるやんか」「ああ、あの心臓が右にあるやつな」  って、名前の次に思い出してくれるもの。 「中学の時に、サイトウっていたやんか」「ああ、あの牛乳二秒で飲むやつな」  っていうのと同じ。 「猫ひろしっているやんか」「ああ、カンボジア代表でオリンピック出たやつな」  僕の右心臓は、サイトウ君の牛乳、猫ひろしのカンボジア代表みたいなものかもしれません。  僕はずっと、二枚目俳優とか歌舞伎役者はズルイと思っていました。だって、あの人たちは遺伝子とか血筋とか、いくら努力したって僕には越えられないものを持ってるじゃないですか。  でも、最近気づいたんです。 「自分にも、努力せんでも持ってるもんがあったんや」  って。  それが、右心臓です。いくら二枚目俳優や歌舞伎役者さんが努力したって、心臓を右には移動できないですもんね。  名前の次に思い出してもらえるものがなくてコンプレックスに思っている人がおったら、この本を読んでもらって、 「こんなやつが右心臓だけで生きて行けるんやから、自分はこれがあったら生きて行けるんちゃうか」  なんて、感じてもらえたらいいと思うんです。

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    安倍元首相銃撃事件でジャーナリスト・青木理氏が感じた「不気味な兆候」とは

    安倍晋三元首相が選挙演説中に銃撃され、死亡するという前代未聞の事件から一夜が明けた。犯行の動機や背景はいまだ謎に包まれているが、「安倍三代」(朝日新聞出版)の著書があるジャーナリストの青木理氏は今回の事件をどう捉えたのか。緊急インタビューした。 *  *  * まず大前提として、どのような政治信条があろうと、その政治家にいくら批判があろうと、今回のようなテロを断じて容認することはできません。改めて言うまでもないことであり、問題はその先にあります。  そのうえで元首相が凶弾に倒れた衝撃的な事件を考えると、これはやはり不気味な兆候と捉えるべきなのか。だとすれば、なんとしてもそれを押しとどめる必要があります。  昨年亡くなったノンフィクション作家の半藤一利さんと生前対談した際、半藤さんが「社会が戦争に向かう危険な兆候」をいくつか挙げていたのを思い出します。(1)被害者意識と反発が国民に煽られる、(2)言論が不自由になる、(3)教育が国粋主義に変わる、(4)監視体制が強化される、(5)ナショナリズムが強調される、そして(6)テロの実行が始まるーー。  当時は重大テロなど起きていませんでしたが、その他の要素はかなり揃ってしまっているのではありませんか、と尋ねる私に、半藤さんはこう即答しました。「ええ、しかもそのスピードは戦前より速い」と。  私もそうですが、昭和史の探索に生涯を捧げた半藤さんは、皮相なナショナリズムや排外的風潮が強まる昨今のこの国の政治を危ういものと捉え、強く憂いていました。今回はそうした風潮を煽る側だった元首相がテロの凶弾に襲われたわけですが、それはいったいなぜだったのか。現時点では判然とせず、犯行の動機や背景の解明を待つしかありませんが、少なくとも半藤さんのいう「危険な兆候」の最後のピースを埋めてしまうような結果につなげるわけにはいきません。  ですから、今回のテロに政治やメディアは決して萎縮せず、と同時に犯行の動機や背景の解明を急いでそれと向き合い、テロの土壌となった課題や問題点が浮かびあがったなら、その改善に全力で取り組むべきでしょう。  拙著「安倍三代」でも記しましたが、安倍氏は少なくとも政界入りする前の青年時代には、強い政治信条や信念を持っていた形跡はまったくありません。母方の祖父である岸信介氏に強い敬慕の念を抱いているようでしたが、しかし戦前に特高警察に抗った父方の祖父・安倍寛氏のような胆力や反骨心、あるいは戦中に特攻隊を志願しながら生きながらえた父・安倍晋太郎氏のような歴史観もバランス感覚もなく、名門政治一家の跡取りとして生を受けた“おぼっちゃま”にすぎないという印象を持ちました。  これは妻の昭恵さんも言っていましたが、その期待に応えるため、自らが描く偉大な政治家像を「演じていた」側面もあったでしょう。そんな安倍氏は、首相として7年8カ月という歴代最長政権を成し遂げましたが、客観的に見てそれに見合う“レガシー”を遺したとはいえません。だから首相退任後も影響力を保持しようと躍起になり、自らの政権を否定するような動きには公然と横槍を入れたのかもしれません。  その振る舞いは見苦しいものだったと私は思いますが、そうした途次、しかも重要な国政選挙の最中、まさかこのような形で命を奪われるとは、誰一人として想像していなかった。凶行の動機や背景に重大な意味が潜んでいるのか、それとも突発的で政治的背景の薄い単独犯なのかはともかく、首相の座を目前にしながら病に倒れた父・晋太郎氏と同じ67歳で世を去ったことに、奇妙な符合のようなものも感じます。  繰り返しますが、今回のようなテロは決して容認できません。ただ、人の衝撃的な死は、時にすべてを一色に塗りつぶしてしまいかねない力を持ちます。過去は美化され、冷静な批評や批判を許さない風潮にも覆い尽くされてしまう。それもまた極めて危険なことであり、今回の事件をそういう意味での社会の“曲がり角”にしてもならず、安倍氏の政治姿勢や政治手法がもたらした「功罪」の「罪」がなんであったかも、あらためてきちんと見つめ直されなければならないと思います。  また、今後は「テロ対策」などが声高に叫ばれることも予想されますが、それを契機として例えば警察による監視体制ばかり強まれば、それもまた自由な社会を窒息に追い込んでしまいかねません。投票日が目前に迫った参院選を「弔い合戦」のように矮小化することも避けるべきです。元首相の死を悼むことと、政治への評価は分けて考えなければならない。そのためには、まさに言論の砦たるメディアとメディア人の役割が問われています。(構成=AERA dot.編集部・作田裕史)

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    お盆に考えたい不思議な日本人の宗教観 日数、盆踊り、供物の意味とは?

     会社勤めの人たちにとって、カレンダーにはなくともお休みとなるのが「盆休み」ではないだろうか。ほとんどの会社では8月13日~16日、全休にできない企業などは「この付近を交代で」という感じで夏季休暇を取るのだろうと思う。この「盆休み」の風習は、日本独特の文化で、古代から続く祖先の霊を敬ってきた信仰(先祖祭祀)と仏教が習合した結果、誕生したものである。 ○先祖祭祀と仏教が日本で習合  先祖祭祀は、アフリカや南アメリカ、東アジアなどに多く残っているが、日本においての起源は縄文時代にさかのぼれるのだという。一説によれば、日本にキリスト教が広く浸透していかなかった理由のひとつに、この祖霊信仰があるとも言われている。先祖を供養することで一族を守護する神々になるとして崇めてきた人々にとって、一人の神のみが存在する教えは受け入れ難かったのだろう。 ○先祖が餓鬼にならないようにと供物を  仏教が渡来する以前から、日本には夏に祖先の霊を祀る儀式があったと考えられている。これに仏教の「盂蘭盆」という行事が重なり、いつしか「お盆」と呼ばれるものとなった。盂蘭盆については原稿1本分くらいの内容になるので今回は省くが、元々は餓鬼道に落ちた母を救う僧の話に由来したものである。中国でも道教と習合した形で現在に至っている。盂蘭盆は旧暦の7月15日に行われてきた施餓鬼(せがき/食べ物を備えて供養する法会)を指し、この日を中心とした13~16日が盂蘭盆会の期間となった。 ○お盆の中での行事  その後の明治以降の暦の変更から、現在の暦の7月あるいは8月をお盆期間とする地域が分かれた。東京などの都市部では7月に盂蘭盆会を行うお寺が多いが、全国的にはお盆休みと重なる8月が盂蘭盆としている地域の方が多数のようである。お盆が4日あることの意味もあり、まず13日に家に戻ってくる先祖を迎えるための「迎え火」を焚く。14・15日は先祖が滞在しているので、食べ物などのお供えをし、16日は送り火を焚いてあの世に送り出すのである。 ○お盆と踊りはセット  それでも霊は恐いので、お面などをつけ顔を隠したり、剽軽たりしたことが、送り出しの前日夜に行われる「盆踊り」の元となったとも言われている。この盆踊り、今では世界中に移住した日本人たちによって広がった夏の風物詩となっている話は以前の稿でご紹介した通りだ。盆踊りとは流れは違うが、阿波踊りやよさこい、ソーラン祭りなどお盆には全国で踊りまくりの行事が繰り広げられ、この季節の風物詩となっている。 ○お中元の始まりも盂蘭盆  他にも有名なお盆の行事として、毎年8月16日に行われる京都の五山送り火、長崎をはじめとした各地で行われる精霊(灯籠)流し、またお中元の習慣も「盆礼(里帰りなどの際に持ち帰る手土産)」が始まりと考えられている。お盆というのは、何もかもがないまぜとなってしまっているとても日本的な行事ではないだろうか。 ○お盆とお墓参りの関係は  ちなみにお盆にお墓参りをするというのも独特である。と言うのも、仏教における墓参りは、命日やあの世とこの世が一番近くなる日・お彼岸にされるものでありながら、日本ではお盆の行事のひとつともされている点。また、日本においても、お盆の時期の墓参は仏教以外の宗教ではあまり行われない。加えて昨今の猛暑の影響から、お盆のお墓参りは命の危険が伴うようにもなり、一人でのお参りは避けて欲しいとの注意もでる始末で、今ではお盆と墓参りをセットと考える人は少なくなってきているのかもしれない。 ○ご供養が意味する5つのもの  それでも宗派によっては、お寺で灯篭を流すなどの「送り火」行事が行われることもあり、自宅でのお盆行事だけでなくお墓まで出向くこともあるだろう。それでは最後にお供えについて考えてみよう。よく「ご供養」などと呼ばれる供えものは、仏教では「五供」を意味する。香・花・灯燭・浄水・飲食という5つの供え物を指すが、例えば、香=線香、花=切花、灯燭=ローソク・灯籠等、浄水=お水、飲食(おんじき)=食べ物、と考えればよい。これは先祖が餓鬼に落ちず、道に迷わずあの世へ旅立てるように、という気持ちを表している。 ○沖縄とハワイの墓参りは似てる  奄美・沖縄のお盆は今でも旧暦にしたがっていて、今年はほぼ新暦のお盆と重なっているが、年によっては9月にずれ込む年もある。狭い日本でも各地さまざまであるお盆という不思議な行事であるが、沖縄ではお墓参りも一風変わっている。お盆に墓参はせず、独特の供物を持ち寄り、お墓の前で宴を行い食事を皆で楽しむというものなのだ。海外では、墓の前で宴を行う国は多く、まるでピクニックのような形になるハワイの墓参りととても似ている。  近年、墓参の代行業者も増えてきた。不思議の国・ニッポン。アンケートを取ると6割以上が無神論と回答する国でありながら、先祖を敬い、霊や天をどこかで信じている人間の集合体である。お墓を蔑ろにできず、お守りを切り裂けない(捨てられず持て余す)人たちに、今年もまたお盆休みがやってくる。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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    【前編】22歳元女性自衛官が実名・顔出しで自衛隊内での「性被害」を告発 テント内で男性隊員に囲まれて受けた屈辱的な行為とは

     元女性自衛官が実名・顔出しで、訓練中に受けた性被害をYouTubeで告白したことが話題を呼んでいる。五ノ井里奈さん(22)は、陸上自衛隊に所属していた2021年の6月~8月、複数の上官から集団でセクハラを受けたという。上長に被害を訴えても取り合ってもらえず、自衛隊内の捜査機関に被害届を出しても、検察からは不起訴とされた。現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。五ノ井さんは、AERA dot.の単独インタビューに応じ、「日常的に起きているセクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、自身の受けた体験を語った。 *  *  * 五ノ井さんが陸上自衛隊に入隊したのは、2020年4月。小学生の頃から女性自衛官に憧れ、20歳のときに自衛隊の門をたたいた。教育期間は順調にこなし、その時までは、思い描いていた自衛官の姿に誇りとやりがいを持っていた。  だが、その後に配属される中隊名が発表されたときから、風向きが変わった。女性の先輩隊員から、こんな忠告を受けたのだ。 「あそこの中隊はセクハラとパワハラがひどいから気をつけろ」  五ノ井さんが配属された東北方面の中隊は、隊員58人の中で女性は5人。1人は育休中だったので、実質的に女性隊員は4人しかいなかった。同部屋の女性隊員からも「セクハラは覚悟して」と言われたので警戒はしていたものの、すぐにそれが現実のものとなった。 「2020年秋ごろ、勤務中に、男性隊員が『柔道しようぜ!』と言いながら技をかけてくるのですが、腰をつかまれて“バック”のような体制にされて腰を振ってくるんです。それを女性隊員が目撃していました。廊下を歩いていると、急に抱きつかれることも日常的にありました」(五ノ井さん)  部屋に戻ると、女性隊員同士でこうした行為を報告しあった。だが女性隊員は圧倒的少数。自分の身を守るだけで精いっぱいの場合もある。  2021年6月24日。山に入って訓練をしていた時、新人の五ノ井さんは夕食や酒のつまみを作る役割を任されていたので、天幕で料理を作っていた。天幕とは2~3人用のテントのことで、山での訓練では寝床として使用されていた。天幕で酒盛りをし、定員より多い男性隊員が入れ代わり立ち代わり入ってきて、多いときには5、6人くらいの隊員がぎゅうぎゅうになって座っていた。料理を作るためにいた五ノ井さんはその輪の中に入れられ、胸をもまれ、キスをされ、男性隊員の陰部を下着越しに触らせられた。  逃げられないと思った五ノ井さんは、別の天幕にいる女性隊員にLINEで「はやく来てください」と助けを求めた。女性隊員からは「オオカミなってる??w」と返事がきた。「オオカミ」とは、男性がお酒を飲んで暴走し、理性をコントロールできない状態のこと。「はい」と返せば、女性隊員は助けに来ないと思い、五ノ井さんは「なってません とりあえず早く来てください」と再度助けを求めた。だが、その女性隊員は「今来たらやばい」という別のLINEも受け取っていたことから、結局、五ノ井さんのいる天幕には来なかった。女性隊員はその直後に退職した。  状況としては“見捨てられた”ようなものだが、五ノ井さんはこの女性隊員の気持ちもわかると話す。 「女性隊員が自分の身を守るためには、来ないのが正解なんです。夜遅い時間に男性隊員のストレス発散に使われて、自分だって危ない目にあう可能性があるんですから、行きたくない気持ちにもなりますよ」(同)  五ノ井さんからLINEを受け取った元女性隊員は当時の状況をこう証言する。 「LINEを受け取った前日に、私も同じ天幕で宴会に参加して、同じようなセクハラを受けていました。その時は、男性隊員から膝に乗って接待しろとか、頬にキスしろと強要されました。ある男性隊員から次の日は『覚悟しとけ』と言われ、もう何をされるかわからないので、五ノ井さんに助けを求められた時に行くことができませんでした。止めに行きたい気持ちはあったのですが、止めに入ったら(次は)自分に来るので、怖くて助けられませんでした」  元女性隊員自身も「ほぼ毎日抱きしめられる」などのセクハラを受けており、五ノ井さんが日常的に被害にあっている場面も目撃していたという。元女性隊員によると、この部隊は2018年から女性隊員が入るようになり、その時から、「セクハラがヤバイ」として悪評が立っていた。セクハラをしているグループの中心は、20代後半の男性隊員数名で、他の隊員は上下関係から、逆らうことができず、ただ見ているだけだったという。  だが、この日のセクハラ事件は、中隊でも問題となった。事件を目撃していた誰かが、中隊長に報告したからだ。すぐに「中隊長に告げ口したのは誰か」と、犯人捜しが始まり、被害者である五ノ井さんが疑われた。加害者からは、「セクハラじゃなくて、コミュニケーションの一部だもんな」と声をかけられた。事情聴取として曹長から呼び出された五ノ井さんは「何もありません。大丈夫です」と報告した。問題が大きくなり、組織に居づらくなるのを避けようとしたからだ。 「自衛隊には厳しい上下関係があって、その場の空気に合わせなければならない。和を乱せば、無視や陰口を言われますから」(同) ■セクハラを超えた性被害を受けて限界に  この日以降、五ノ井さんは気持ちを押し殺しながら日常的なセクハラに耐えてきたが、昨年8月に我慢の限界に達する出来事が起きた。  8月3日から地方で約1カ月間の訓練があった。訓練場所に到着した日の夜、部屋で食事の準備をしていた五ノ井さんは、男性隊員から「料理はいいから接待しろ」と言われ、男性隊員十数人の輪の中に座らされた。宴会だったので、隊員らは酒を飲んでいた。  一曹Eと二曹Yが格闘の話をしていたところに、男性隊員S三曹が部屋に入ってきた。するとEは、Sに「五ノ井に首をキメて倒すのをやってみろ」と命令した。Sは、五ノ井さんの首に両手を当てて、そのままベッドに押し倒すような技をかけた。 「この時、Sさんが暴走し始めたのです。股を無理やりこじ開け、腰を振りながら陰部を押し当ててきました。一人で『あんあん』とあえぎ声みたいな声を出して、それを見ている周りの男性隊員たちは笑っていました。特にEとYはこっちを見ながら確実に笑っていました」(同)  続いて、2人目の男性隊員Kも「首をキメて」押し倒し、Sと同様の動きをした。さらに続いた。3人目男性隊員Rは同様に押し倒した後、五ノ井さんの両手首を押さえつけながら、何度も腰を振ってきた。 「全力で抵抗しようと、手首に力を入れて振りほどこうとしましたが、男性の力にはかないません。諦めて、終わるのを待つしかありませんでした。終わって体を起こすと、周りの男性隊員たちはこっちを見ていました」(同)  コトが終わると、Rからは「五ノ井って案外力が強いな」と言われた。五ノ井さんが抵抗していたことはわかっていたのだ。  一旦話題が収まったにもかかわらず、再び一曹Eが格闘技の話を面白おかしくしはじめて、「あれ、首をキメて倒すのどうやるんだっけ?」と笑いながら言い出した。すると、再びSが、五ノ井さんの首に両手を当てて押し倒し、腰を振ってきた。五ノ井さんの引きつった顔を見たSは「これ誰にも言わないでね」と口止めしてきたという。 「もう限界でした。訓練場所は、すぐに抜け出せる環境ではありませんでしたが、先輩の女性隊員と中隊長Mに相談して、帰りたいとお願いしました」(同)  先輩女性隊員は、最初は味方してくれたが、男性中隊長が「訓練は訓練だ」と言うと、「そうだよ、訓練は訓練だから」と態度を変えた。訓練はあと20日以上続く。これ以上耐えられないと感じた五ノ井さんは、訓練から抜けることを懇願した。だが、セクハラを受けたことが理由では、6月の時のように告げ口したと思われてしまう。母親が倒れたことにして、実家に帰れることになった。  この時、先輩女性隊員からは「一応、嘘ついていることは心の隅にでも置いておいてね」と言われた。エスカレートする性被害から逃れるための苦渋の判断にもかかわらず、被害者である五ノ井さんに非があるような言い方に聞こえた。 ■被害届を出すも不起訴処分  この8月の性被害の後、適応障害と診断され、五ノ井さんは休職することになった。被害については、まず、自衛隊の総務・人事課にあたる「一課」にセクハラ被害を報告した。だが、一課からは「8月のセクハラの件を見たという証言が得られなかった」と回答された。次に、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。 「警務隊の現場検証では、人形を使って再現しました」(同)  検察庁の捜査をへて、22年5月31日付で判決が出た。結果は、不起訴処分。五ノ井さんが不起訴の理由を尋ねると、検察官は「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない」という供述だったと説明された。そして「被疑者を有罪にするにはそれなりの証拠が必要だ」とも言われたという。 「その場で見ていた人がたくさんいたのに、なぜか腰を振ったという証言は出てこない。単に技をキメて押し倒しただけで、どうして笑いが起きるのでしょうか。その続きがなかったら、笑うわけがない」(同)  五ノ井さんは6月7日付で、検察審査会に不服申し立てをしている。  自衛隊内部では、この事件をどう捉えているのか。AERA dot.は五ノ井さんが配属された東北方面の部隊に事実確認すると、広報担当は「現在、部隊で調査中のため回答は差し控える」と答えた。調査結果がいつ出るかは未定だという。また、五ノ井さんが報告を上げた「一課」にも確認をしたが、「その件は一課長が対応したが、いまは不在」とのこと。代わりに対応した指令業務室の担当者は「事実を調査中のため、予断を持って回答することは差し控えたい」と回答した。なお、被疑者の処罰については、「判明した事実に基づき、厳正に対処する」とした。 (AERA dot.編集部 岩下明日香) ※「後編」では、五ノ井さんがセクハラを受けてもすぐに辞めなかった理由、顔と名前を出して告発に踏み切った経緯などを明かす。

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    「蚊」を見失ったらどこを探せばいい? 専門家たちに聞く撃退法&かゆみ対策

     今年もヤツの季節がやってきた。おなかの卵を育てるため、血を求めて飛び回る。部屋に1匹いるだけでイライラは募るもの。家の中だけでも安全地帯にして、かゆーいストレスから逃れたい。専門家の英知を結集して、対策をまとめました。 *  *  *  ぷーん。自室で原稿を書いていた記者の目の前を一匹の蚊が悠々と横切った。部屋はマンションの10階。一体どこから入り込んだ? 「人間の後についてエレベーターに乗ったり、ビル風に乗って20階くらいまで吹き上がってきたりするんです」  そう解説してくれたのは、殺虫剤「バルサン」を製造販売するレックの技術顧問・津田良夫さん。人についてくるのは仕方ないとして、ちゃんと網戸は閉じているんですけど……。 「網戸に引っかかっても、表面を歩いて抜け穴を探します。5ミリ程度の破れ目や隙間があれば連中は入ってくる。地下の排水設備などで生まれた蚊が、排水管や通気口を通って侵入することもあります」  やはり蚊を絶対に家に入れないのは難しそう。せめて部屋にいる蚊は確実に迎撃したいが、ふらふらと飛ぶ姿を目で追っていると、ふっと消えることがある。これは蚊の飛び方が不規則で、急に予測不能な方向に動くからだという。見失ったらどこを探せばいいのか。 「昼行性のヤブカ類は壁などどこにでも止まりますが、夜行性のイエカ類は暗がりを好みます。テーブルの下や家具の裏などを探すか、部屋の照明を暗くして刺しに来たところをたたくのがよいでしょう」(津田さん)  たたくときのポイントは、止まっているか、止まろうとしている蚊を狙うこと。飛んでいる蚊は周囲を警戒しているので素手で仕留めるのが難しい。津田さんは自宅に捕虫網を置いているそうだ。  ただ、手に頼らずとも撃退できる方法はある。手軽さから人気を集めているのが、ワンプッシュ式の蚊取り剤だ。  フマキラーの開発研究部員、中原良成さんは「ボタンを1回押すだけで霧状の薬剤が部屋中に広がり、速効性があります。床や壁についた薬剤は再浮遊するので、後から入ってきた蚊にも効く。当社製品の場合、4.5~8畳の部屋にワンプッシュすると、効果が24時間続きます」と話す。  大半の蚊取り剤に含まれるのはピレスロイドという成分。虫の体内に入ると神経を異常興奮させ、筋肉の過収縮や呼吸困難を引き起こす。人間の場合は虫よりも神経系が複雑なため、異常興奮が起きる前にピレスロイドが分解されて無害になる。  肌に塗るタイプの虫よけも進化している。2015年に国内で承認されたイカリジンという成分は、皮膚や衣類への刺激が従来の成分(ディート)より弱く、子どもへの使用制限がない。においもないため各社が続々と製品化している。ただ、塗った部分にしか効果を発揮しないのはディートと同じ。蚊は塗り残した場所を狙って刺しに来るので、気をつけよう。  蚊の襲来から逃れるには、発生源もたたいておきたい。まずはボウフラが湧く水たまりをなくすことだ。害虫駆除を請け負うアペックス産業の佐々木健(たけし)・研究室部長に、対策のポイントを聞いた。 「庭に放置したじょうろやプランターの受け皿などは代表的な温床です。家の周りの水たまりを一掃しても蚊が減らない場合、道路の側溝に作られた雨水桝(ます)が原因でしょう。私も、自宅前の雨水桝に殺虫剤を入れたら、蚊が出なくなりました」  しかし、努力もむなしく蚊の餌食になることもある。針を刺した蚊は、皮膚内をまさぐって血管を探す。うまく血が吸えないと、別の箇所に移動して再び刺す。刺すたびに麻酔や血を固まりにくくする作用のある唾液(だえき)を注入し、その唾液成分がかゆみを引き起こす。  動物性皮膚疾患に詳しい九段坂病院の谷口裕子医師によると、かゆみが起きるのは、引っかくことで体内に入った異物を排除しようとする防御システムが作動しているからだという。ただ、かきすぎて皮膚を傷つけると、細胞からかゆみの神経を刺激する物質が出て、ますますかゆくなる。 「皮膚を傷めずにかゆみを抑えるには冷やすのが一番です。ちまたで言われている『爪を押し当てて×印をつける』『セロハンテープを貼る』『なめる』といった方法は、どれも間違い。テープははがすときに角質が取れるし、なめるのは『舌なめずり皮膚炎』という疾患があるように、唾液の消化酵素で肌が荒れてしまいます」(谷口医師)  なお、年をとってから蚊に刺されなくなったと感じる高齢者は、刺されないのではなく、免疫ができたことで「刺されても反応しない」状態になったと考えられる。 「かゆみや腫れといった蚊へのアレルギー反応は、刺された直後の『即時型反応』と、数時間後に始まる『遅延型反応』があります。この2種類の反応の出方は、刺された回数によって変化すると言われています。乳幼児期は遅延型のみ、幼児~青年期は両方、青年~壮年期は即時型のみが起き、老年期になると何の反応も起きないことが多い。繰り返し刺されるうちに体が慣れ、過剰な炎症を止める作用が働くのでしょう」(同)  祖父母が「うちの庭に蚊はいない」と思っていても、遊びに来た孫がボコボコ刺される可能性もあるというわけだ。  彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず。まずは蚊の生態や自分の体を知ることから、戦いは始まる。(本誌・大谷百合絵)※週刊朝日  2022年8月12日号

    週刊朝日

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    横尾忠則の「仕事のストレス」なくす方法 マネしたのは「すぐやる課」

     芸術家として国内外で活躍する横尾忠則さんの連載「シン・老人のナイショ話」。今回は、仕事のストレスについて。 *  *  * 「いつも原稿を早くいただくのですが、締め切り前など、早めにお仕事をされる習慣はいつからされているのですか?」というご質問ですが、ムカシは、締め切りギリギリ、それも締め切りが過ぎて腰を上げていました。矢のような催促が何度もあって初めて、つまりギリギリ追い込まれないとアイデアが出てこないという習慣がいつの頃からかついてしまって、それが実はストレスになっていたのです。  そんな時、松戸市だったか地方の市役所に何でも「すぐやる課」が出来たというニュースを知って、目から鱗、「よっしゃ、これをマネて、ひとつ意識革命を起こそう」、この「何でもすぐやる思想」を実践することにしたのです。まず手始めに、この日、ある女性誌の編集長がエッセイの依頼に来られました。テーマを聞いている内にアイデアが浮かんできたので、編集長が帰られると同時に、1カ月先の締め切りの原稿に着手しました。4枚の原稿だったけれど、40分ほどで書き上がったので、すぐにファクスで送りました。しばらくすると編集長から、「編集部、全員騒然としています」という驚きの電話がありました。こんなに驚いたり喜んだりされるのなら、できるだけ締め切り前に原稿を書いて、仕事を遊びに変えてしまおうと、スタッフにもこの発想を徹底させました。そのために残業することは全くなくなりました。  仕事の依頼というのは、実は受けた瞬間からドスンと身体に来るものです。そして、その瞬間からストレスが始まります。このストレスが生活の円滑さを狂わせることになります。人間は誕生と同時に老化が始まるそうですが、仕事も同じように、依頼と同時にストレスが始まります。医者によると病気の原因の大半がストレスだと言います。とにかく健康で、もし長寿を望むならストレスのない生活をするべきでは。人がストレスを起こすのは仕事を先送りにして、ため込んでしまうからではないか。  仕事に限らず、それ以後、何でも「すぐやる課」の実践によって、僕はいつも一日の時間の進行の遅さに、退屈するくらいです。とにかく、「明日やろう」という引き延ばし作戦はよほど体調の悪い時以外は無視することにしています。このことによって時間の概念が変りました。絵を描くのもやたらと早いので、僕は自分をアスリートと呼んでいます。  そして時間がありあまります。その時間を何かで埋めるというようなことはなるべくしないで、何もしないことをする無為の時間のために活用しています。アトリエのソファで横になったり、バルコニーに出て、アトリエを囲む森の樹木のフィトンチッドを浴びたりして、出来るだけ頭を空っぽにする時間を作ります。その空っぽの時間を閑暇だからといって読書などはしません。読書で人の言葉で頭の中をいっぱいにしてしまうよりも、できるだけ、言葉以外の無心を楽しむことにします。僕の場合、絵は考えから発想するのではなく、考えないことから発想する、コンセプチュアルアートとは全く逆行の態度から作品を作ります。 「何でもすぐやる」ことで、時間を越えて多くのことができるようになりましたが、老齢になったこの頃は、そのあまった時間を埋めつくしてしまうのではなく、そのあまった時間をもっと拡張することのできる無為の状態を「考えないこと」を考えることで「創造」することに切り換えたのです。これは子供の頃の時間の再現のような気がします。子供時代の時間は大人になってからの時間より、うんと充実していました。  子供は何かにつけて、無心になって物事に夢中になって三昧(ざんまい)時間を遊びます。だから、子供時代の時間は長く感じます。子供は三昧という無心時間を遊ぶ術を知っているんでしょうね。この三昧時間が体験できなくなった時から、人は子供時間から大人時間に入って行って、時間を縮小して、忙しい生活に切り換えてしまうように思います。そしてストレスという産物を生んでしまいます。僕が「何でもすぐやる」生活に切り換えてからは作品の点数もうんと増えたし、なんといっても一日の時間がうんと長くなりました。  僕の午前中の仕事は昨日の夕方から、今日の午前中に届いたメールの返事から始まります。返事を書かなきゃと思ってため込むと、こんなことがストレスを作ることになるので、さっさと片づけて、いつも手ぶら状態にします。端(はた)から見るとせっかち人間に見えるかも知れませんが、絵もせっかちです。描き出したら一気に描いてしまうので一日に100号、一点が、昨日など三点描いてしまいました。つまり三日分を一日で片づけてしまったわけで、今日は終日、何もしない無為の一日になります。そんな日は何もしないでうんと身体と脳を休ませるようにしたいと思います。  老齢になると老齢時間に従った方がいいと思います。動きも考えもとろくなります。それがいいのです。未知の新しい境地を楽しむ術を心得ましょう。 横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰※週刊朝日  2022年8月19・26日合併号

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    2時間前

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    「東京駅土産」図鑑 最新スイーツからカレーパンまで選りすぐり!

     新型コロナウイルスとの闘いに明け暮れた2年半。東京駅の売店や商品も大きな変化が起きていた。最新の逸品土産を携え、万全の感染対策のもと、楽しい旅を。※価格は税込み *  *  * ■木の実のクッキー「カカオとピスタチオ」 木の実スイーツ専門店「COCORIS(ココリス)」。店舗はここだけで、土産の定番として不動の人気を誇る。6月登場のドングリをイメージした数量限定商品は、カカオ味とピスタチオ味の2種アソート。10個入り1944円。※1個の大きさは35×25mmほど ・COCORIS(ココリス) グランスタ1F中央通路エリア ■くず餅プリン どう見てもプリンだが、450日間も熟成させた発酵小麦澱粉(くず餅の原材料)や牛乳などを蒸し上げたもの。くず餅職人とパティシエの共同作業で開発された。船橋屋秘伝の黒蜜、きな粉と共に。399円 ・船橋屋こよみ エキュート東京 ■ブラックカレーパン 創業1889年。宮内省御用達として名を馳せた東洋軒。名物のブラックカレーは、松阪牛脂や秘伝のスパイスなどを使い約1カ月かけて作られる。そのカレーをもっちりとした食感で甘みのあるパンに詰めた。410円 ・東洋軒 グランスタB1 スクエアゼロエリア ■タルトレット6 イチゴの酸味とミルクの風味豊かなタルト・フレーズ、濃厚なバターのガレット・ブルトンヌ、木の実にメープルシロップとキャラメルを絡めたクランブルなど、ここでしか買えない品が楽しめる。6個入り2052円 ・ル・ビエ エキュート東京 ■あんバタロール 北海道産の希少なえりも小豆で作ったあんことなめらかなバタークリームを使った「あんバタ」商品の専門店。2020年8月にオープンした。カステラ風の生地で巻いたロールケーキは、ぜひ分厚く切って食べたい。1944円 ・岡田謹製あんバタ屋 東京ギフトパレット(八重洲北口改札外) ■鳴門金時 角 和三盆 徳島県のブランドサツマイモ・鳴門金時をふかし、特製の蜜床につけ込んで乾燥させ、一口サイズ(28×28×20mm)にカット。徳島名産の和三盆のまろやかな甘みが、イモのうまみを引き立たせる。9個入り756円 ・鳴門金時本舗 栗尾商店 グランスタB1丸の内坂エリア※週刊朝日  2022年8月19・26日合併号

    週刊朝日

    1時間前

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    有吉弘行が冠番組全局制覇の偉業を達成へ!「令和のテレビ王」に上り詰めた理由

     有吉弘行が出演するテレビ朝日の深夜番組『有吉クイズ』が、10月からゴールデンタイムに昇格することになった。有吉は各局で冠番組を持っており、その大半が視聴者の多いゴールデンタイム(19~22時)やプライムタイム(19~23時)に放送されている。 『有吉クイズ』がゴールデンに昇格すると、彼はNHKと民放キー局(日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)のすべてでゴールデン・プライムタイムに冠番組を持つことになる。この「全局制覇」はテレビ史上初の快挙となる。  萩本欽一、ビートたけし、明石家さんま、ダウンタウンをはじめとして、これまでのテレビ界には数多くの「天下人」が存在していたが、ゴールデン・プライム全局制覇を成し遂げた人はいない。毒舌キャラで再ブレークを果たし、バラエティの世界で暴れ回っていた有吉が、ここまでの存在になるとはほとんどの人が想像もしていなかったのではないか。  よく知られているように、有吉は猿岩石というコンビとして『進め!電波少年』のユーラシア大陸横断ヒッチハイク企画に挑み、それをきっかけに一度目のブレークを果たした。長い旅から帰国した猿岩石は国民的なスターになり、『猿岩石日記』という旅行記や『白い雲のように』という楽曲が大ヒットを記録した。  しかし、熱狂的なブームは徐々に収まり、有吉は坂道を転げ落ちるように仕事を失っていった。仕事ゼロ、収入ゼロの絶望的な日々が7~8年続き、生活費で貯金はどんどんすり減っていった。家に一日中引きこもっている有吉が唯一やっていたのが、テレビを見ることだった。ぼーっとテレビを眺めながら、延々と悪態をついていた。  そんな有吉は2007年頃に「毒舌キャラ」として再ブレークを果たし、バラエティの世界でじわじわと露出を増やしていった。彼の強みは、場の状況を読み切る的確な判断力である。バラエティに出ているとき、有吉はほかのどのタレントよりも視聴者に近い目線に立っている。 「こういうことが起こったら面白いのに」「こういうことをズバッと言ってくれる人がいればいいのに」といった視聴者の下世話な願望に見事に応えてくれる。彼が人気者になった最大の理由はこの点にある。  有吉にそれができるのは、前述の通り、一度目のブレーク後に仕事がなくて家に引きこもり、ただテレビを見続ける毎日を過ごしたからだろう。日常でさまざまな不満や不安を抱えながら、ぼんやりとテレビを眺めているわがままで移り気な視聴者の心理を、彼は誰よりも知り尽くしている。  有吉は毒舌キャラではあるが、無理に誰かを悪く言おうとしているわけではない。彼は常にテレビを見ている側の目線に立ち、彼らにとって深く刺さる言葉を選んでいるにすぎない。  ただ他人を悪く言ってもそこに笑いは生まれない。批評性のある毒でなければ意味がない。人の心を揺さぶるにはどういう斬り込み方をすればいいのか、ということを的確につかんでいるのだ。  テレビに出ることを生業としているタレントにとって、テレビ番組に出るという体験は、その一回一回が人生が懸かった大勝負である。しかし、一介の視聴者にはそんなことは全く関係がない。テレビを見る人にとって、テレビの中で起こっていることは、自分の部屋のリビングの片隅に置かれているテレビモニターの枠の中だけで完結している、ささいな日常の一部でしかない。  だからこそ、普通の視聴者はテレビを見ていて面白くなければ「面白くない」と言うし、テレビであまり見なくなった人は「消えた」と思うし、消えた人がまた出ていれば「消えたのにまた出ている」と感じる。そこには一切の配慮も気遣いもない。視聴者とは本来、そのぐらい冷淡で残酷なものだ。  有吉が持っているのは、その「普通」の感覚である。日常で楽しいことが何もなく、夢も希望もない日々の中で、表面上はやたらとキラキラしたテレビの世界を恨めしそうに眺めている一般人の目線。それが有吉の目線なのだ。いわば、有吉は自身が芸能界の中にいながら、芸能界を外から、いや、下から見ている。いつでもそのポジションに立てることが彼の強みだ。  テレビタレントとしての有吉のもう1つの特徴は、自分から何かを発信するタイプの芸人ではない、ということだ。  有吉には思想的なバックボーンが何もないし、世の中に伝えたいことがない。そもそも自分から動いたり何かを発したりすることに異常な警戒心を持っている。猿岩石を解散してピン芸人になってからも、ネタを作ったりライブを主催したりするような主体的な活動は一切していない。  萩本、たけし、さんま、ダウンタウンといった過去の「天下人」に比べると、有吉は仕事の中で自分の個性を強く出すタイプではない。しかし、番組ごとに与えられた役目を正確に把握し、その中でよく笑い、楽しげな姿を見せる。その点にかけては天才的である。  有吉はいつでも他人の言動を糸口にして、そこから笑いを生み出していく。いわば、相手の力を利用する合気道のような芸だ。有吉自らが相手に技を仕掛けることはない。  彼が常に意識しているのは、テレビのスタッフが何を求めているのかということだ。それに対応して自分のスタンスを決めて、本番に臨む。前人未到の全局制覇を成し遂げようとしている「令和のテレビ王」有吉は、スタッフと視聴者からのニーズに応える職人気質のテレビ芸人なのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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    6時間前

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    アフリカで待っていた2匹の保護猫  セネガルからモザンビークに引っ越しで“ビビり猫”がキャラ変

     飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回はアフリカのモザンビークで国際協力の仕事をしている優美さん(30歳)のお話。1年前に縁あって現地の野良猫2匹を家に迎えましたが、その行動に一喜一憂。仕事の関係で一時帰国し、アフリカに戻ると猫に大きな変化が……。異国の“可愛いパートナー”について語ってもらいました。 * * *  私は大学生の頃からアフリカで働くことを考えるようになりになり、6年前からアフリカで暮らしています。2021年に、アフリカ4カ国目の赴任先であるセネガルで。雌猫キキと雄猫トトと出会いました。  猫との暮らしは初めてだったので、すべてが新鮮。アフリカに来て以来、ずっと一人暮らしでしたが、今はもう猫たちのいない生活は考えられません(笑)。こちらアフリカでの猫の保護や生活の様子などをお伝えしたくて、海外でもよく読むこのサイトのコーナーに応募しました。どこの国でも、保護される猫たちと幸せな飼い主が増えるといいなと思っています。 ■一時預かりのつもりが気持ちがぐらっ まずはキキとの出会いから。  昨年5月、現地の動物保護団体でボランティアをしていた友人から、「家の前に、毎日餌を食べに来るシャイな成猫がいる」という話を聞きました。彼女の家には、ハンデの子も含め10匹ほどの犬猫がいて増やせない状況で、保護できる人を探していたのです。  セネガルの保護団体は「人なれした野良猫の引き取り手を国内外で探す」という取り組みをしていたので、私は数カ月してなれたら引き取り手を探すという友人の提案にのり、キキを一時的に預かることにしました。仕事の移動も多いし、動物を飼うことはまったく考えていなかったけど、路上で踏ん張るようにたたずんでいたキキを見て、何かしてあげたいと思ったし、コロナで在宅勤務だったので、短期間なら面倒を見られるかな、と思ったのです。  そうしてキキを預かったのですが、キキは究極の「ビビり」で、私のアパートに着くと食器棚の下に入り込みました。夜になると玄関前でずっと鳴いていたので、「路上の方が良かったのかな」と、胸が痛みました。  それでもとにかく距離をとりながら、お互いに観察し合っていました。キキはしばらくすると、食器棚の下からランニングマシンの下に移りました。触ろうとしていなくても、横を通る度に威嚇の「シャーシャー」をします。  そんな状態のキキだったので、私もキキファーストで生活するようになりました。あちこちに餌を数粒置いて、少しでもキキの行動範囲が広くなるようにしたり、物音に驚く状態だったので、大きな音を立てないように気を付けたり、来客の時はキキの隠れ場所に布をかけたり。  そうした日々の中、キキは少しずつ進歩していきました。隠れる時間や逃げる頻度が徐々に減って、ビビりながらも毎日懸命に生きている様子がいとおしくなり、私は預かってから1カ月後に、ボランティアの友人に「このままキキを引き取りたい」と連絡しました。  友人には「ずっと触れなくてもいいの?」と聞かれたのですが、キキを大事に幸せにしたい!と思ったのです。 ■トトを迎えてにぎやか2匹に  トトとは、キキと出会ってから3カ月後の8月に会いました。生後6カ月くらいでした。  場所は引っ越し先のアパートの地下のゴミ捨て場なのですが、キキと正反対で、フレンドリーで究極の甘えん坊な子。茶白柄でキキと見た目が似ていて、(私と会う前の)キキの子猫時代はこんなだったのかなと、感じ入るものがありました。  1週間毎日ゴミ捨て場に通いましたが、母猫の気配はなく、駐車場内の一画にあるゴミ捨て場だったために、車の出入りも多く、保護を考えました。友人にも相談しましたが、保護団体に預かるキャパがないというので、「じゃあ私が」と決めたのです。  自分にとって初の捕獲でしたが、これは慎重にしました。アフリカは日本と違って狂犬病発症国が多いのです。最初に赴任したマダガスカルで猿になめられた人が、狂犬病の注射を3回も打っていたんです。それを見ていたので、トトが驚いて暴れてかまれたりしないように、キャリーケースに餌を入れて捕まえました。扉を閉じた瞬間からトトは驚いてずっと鳴き叫んでいましたが、アパートに連れてきてキャリーの扉を開けた数分後には、私にスリスリ。  獣医さんに来てもらい、すぐに予防注射を打ってもらったのですが、獣医さんにも甘えていました。キキと同じ猫なの?とびっくりしたものです。  キキの名は「魔女の宅急便」の主人公の女の子からもらい、トトは、「Africa」という素敵な曲を歌うロックグループTOTOからもらいました。アフリカに憧れていた頃によく聞いていたんです。キキとトト、あわせて“キキトト”。響きも好きでした。  こうして猫2匹との暮らしが始まりましたが、最初の2週間はキキと離し、トトにはキッチンで過ごしてもらうことにしました。本当に甘えん坊でぎゃーぎゃー私を呼び、足にしがみついてくるので、私はキッチンにヨガマットを敷いて、そこで仕事をしたり、トトと寝たりしました(笑)。  やがて2匹を一緒にしましたが、トトは遊んで欲しくてキキにちょっかいを出し、キキはそんなトトに対して威嚇して仲良くなる気配がありません。ネットで検索すると、「相性が悪い猫同士が暮らすのは不幸だ」なんて記事もあり、やってしまったか!と落ち込むことも……。でもトトがのびのびしてこちらに甘える様子を目にして、キキも徐々にのんびりした様子を見せるようになりました。  このままどんどんキキが慣れるといいな……と思っていたのですが、じつはトトを迎えた1カ月後、仕事の関係で引っ越しが決まりました。 ■悩んだ末の2匹の輸送  次の行き先はモザンビークです。  アフリカの最西端のセネガルと南東にあるモザンビークは、時差が2時間。飛行機でもかなりの時間がかかります。  私はもちろんキキトトとずっと生活を共にするつもりでいたので、よりよい移動方法を考えました。  仕事の手続きで日本に戻る必要があったのですが、その時にキキとトトも連れ帰り、そこからモザンビークに一緒に行くのがいいのか。それともセネガルから直接、2匹をモザンビークに送るのがいいのか。  調べると、トトが日本の受け入れ条件(狂犬病予防接種後6カ月)を満たせなかったし、輸送が一度で済む方が猫に負担がかからないと思い、モザンビークに送ることにしました。モザンビークで動物保護団体紹介のペットシッターさんが見つかったので、その家で預かってもらうことにしたのです。  2匹の出発は11月末に決まりましたが、コロナで減便という状況もあって、エチオピア経由での動物輸送にはなんと30時間以上。キキとトトには申し訳なかったですが、それでも無事にペットシッターさん宅に着いたと聞き、ほっと胸をなでおろしたものです。  私が日本での仕事の手続きを終えて、モザンビークに向かったのは今年1月末。約2カ月、シッターさん宅に預かってもらったのです。  果たして私のことを覚えているでしょうか……。それが次の心配ごとでした。 ■猫同士に変化!キキがキャラ変?  キキとは半年、トトと2カ月しか暮らしていなかったので、「忘れられてもしかたない」と覚悟して、シッターさん宅にキキとトトを迎えにいきました。すると、トトは私を見て近づき、「どこに行ってたんだい」というようにスリスリして離れませんでした。キキの方は、少し離れてこちらをじっと見ていました。  シッターさんから、キキはおびえてシャーシャーいうし、餌をあげる時も近寄ってこないと聞いていたので、「キキはあまり変わってないかな」とその時は思いました。  しかし、2匹を私の新たな家に連れていくと、それまで見たことのない光景を目にしたのです。セネガルの時は、キキはトトに向かって威嚇して常に“ヨガマット1枚分”の距離があったのですが、何と、グルーミング(毛づくろい)し合ったり、一緒に遊んだり、昼寝したり。  さらに驚いたことに、キキをなでられるようになりました。前はちゅーる(アフリカでも売ってます)をあげる時がいちばん私と近い距離でしたが、トトがするように、キキが私に「なでて~」と甘えてくるようになったのです。リラックスして、“へそてん”まで!  キキとトトが仲良くなったのも、キキが甘えて触れるようになったのも、どちらもうれしいこと。環境が目まぐるしく変わる中で2匹は互いに絆を深め、キキのキャラも変化したのでしょうか? そう思うと、会えない間の心配もつらさもすべて溶けていくようでした。 ■これからもよきパートナーとして  8月。モザンビークに来て、はや半年が経ちます。  振り返ると、コロナ禍でアフリカ赴任という日常生活の制限も不安も大きい中、キキトトと暮らすようになって、自分も幸せを感じる時間が増えたなとあらためて感じます。  猫たちにも変化がありましたが、私の生活も大きく変わりました。  外で何があったとしても、家に帰ってキキトトの姿を見て、2匹をなでていると安心して癒やされます。餌が欲しくて、朝「早くちょうだい」と起こしに来るので、以前に比べて、休日でも生活が規則正しくなりました。  トトがいたずらするので(髪ゴムを食べる、服のひもをかむ、置物を棚から落とすなど)気を付けていますが、何でも引き出しの中にしまう癖がつき、家の中の見た目もシンプルできれいになりました。  猫との暮らしは「いいこと尽くし」です(笑)  そういえば、私の好きなTOTOの「Africa」には、<アフリカに降る雨をたたえよう。急げ青年、あそこでお前を待っている……>という歌詞があります。アフリカで私を待っていたのは、可愛い2匹の猫たちでした。  キキトトと楽しそうに暮らしている私を見て、日本の家族もうらやましがり、今ではすっかり2匹のファンになっています。猫に救われたという言葉をよく聞きますが、私の場合も同じです。おっかなびっくりしながら少しずつ成長していくキキと、甘えん坊のままだけどたくましくなってきたトトに救われて、今の元気な自分がいるのだと思います。  イタズラばっかりするトトだけれど、そんなトトのお陰で、キキと私の距離もグッと近づきました。  キキトト、いつも幸せな時間をありがとう! (水野マルコ)  【猫と飼い主さん募集】「猫をたずねて三千里」は猫好きの読者とともに作り上げる連載です。編集部と一緒にあなたの飼い猫のストーリーを紡ぎませんか? 2匹の猫のお母さんでもある、ペット取材歴25年の水野マルコ記者が飼い主さんから話を聞いて、飼い主さんの目線で、猫との出会いから今までの物語をつづります。虹の橋を渡った子のお話も大歓迎です。ぜひ、あなたと猫の物語を教えてください。記事中、飼い主さんの名前は仮名でもOKです。飼い猫の簡単な紹介、お住まいの地域(都道府県)とともにこちらにご連絡ください。nekosanzenri@asahi.com

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    小島よしおが「動画とゲームの時間が守れない」という小1男子に伝えたい、約束を守る方法

    「ママと約束したYouTubeとSwitchをやる時間が守れない」という相談を送ってきてくれたのは小学1年生の男の子。数多くの子ども向けライブを開催し、YouTubeチャンネル「おっぱっぴー小学校」も人気の小島よしおさんが子どもの悩みや疑問に答えるAERA dot.の本連載。小島さんは、「大きな約束を守るためには、小さな約束を守ることが大事だ」といいます。 *   *  * 【相談(21)】どうしても、YouTubeを見るのとSwitchをやるのをやめられません。ママと僕で、一日にやっていい時間を決めて約束しても、ママが見てないとすぐやりたくなって、やってしまいます。ママは怒るから、その時は僕もとても悲しい気持ちになるけど、どうしてもやめられません。約束を守る強い気持ちを持つには、どうしたらいいのでしょうか?(がんばりたいぼく・小学1年生・男子) 【よしおの答え】 すっごくわかるなあ、その気持ち! やめたくてもやっちゃうことってたくさんあるよね。SNSやスマホゲームもそう。よしおも、よしおの周りの友だちも、大人になってからもずーっと悩んでいるよ。「スマホ金庫」っていう、スマートフォンを一定の時間触れないようにする道具も売られているくらい。大人でも「やめないといけないのにやりたくなっちゃう」っていう気持ちをおさえるのは難しいんだ。  君の相談を読んで、「なんて正直なんだ……!」ってよしおは胸を打たれたよ。「ママが見てないとやっちゃう」ってこと、正直に話してくれてありがとう。約束を守る強い気持ちを持ちたい、っていう目標を持っていることも素晴らしいね。大人でも難しいことだから、どうしたら目標が達成できるのか、よしおと一緒に考えてみよう。 ■大人でも、スマホがやめられない  よしおが大人になってからの話なんだけど、スマートフォンを触ることがやめられなかった時期があるんだ。SNSを見たり、ネットサーフィンをし続けたり……。「あ~、俺スマホ依存だな、やめなきゃな」って思っているのに指が動いてしまう。これはいよいよまずいぞ、って思ってどうしようか考えたんだ。  スマホって、目に入ってくると何も考えずに触ってしまうから「スマホを見えない場所に置こう!」って思い立った。それで、家に帰ったらスマホは玄関に置くようにしたんだ。そうすれば次に家を出るときまで目に入ることはないからね。玄関じゃなくても、自分の手の届かない場所に置くだけで見る機会はグッと減ったよ。  Switchなら、ママに君が捜せない場所に置いてもらう、ってこともできるのかな? それが難しければYouTubeやSwitchのない環境に自分が行くということもできるかも。図書館とか公園とかね。「約束を守る強い気持ちを持つ」という目標とは少し違う方法かもしれないけど、「YouTubeやSwitchから少し離れる」っていう一時的な効果は期待できるかもしれないね。  よしおが子どものころも、テレビとゲームがやめられなくて君と同じように時間が決められていたよ。テレビとゲームの時間を合わせて1日30分だったかな。だけど、時間いっぱい使わなければ次の日に持ち越せる、っていうルールがあったんだ。たとえば、今日テレビとゲームの時間が20分だったら30引く20で、次の日の10分持ち越せるんだ。そうすると、次の日は10足す30で40分できるっていうルール。  それを、表を作って書き込んでいた。そうすると、不思議なことに今度は時間をためるのが楽しくなって、全くテレビを見なくなって、ゲームもしなくなったんだ。気づいたら1000分とかたまっていたよ。結局この1000分は使わずに終わったけどね(笑)。この方法が成功した理由は、クリアしたことを目に見える形に残していたからなのかな、って思う。  お兄ちゃんと一緒の表だったんだけど、自分のところにクリアの証拠が残るのがうれしかったんだ。ただひとつ、落とし穴があった。手書きの表だったから、途中で終わっちゃってね……。その途端、ルールは崩壊。またテレビとゲームをやめなきゃいけないのにやっちゃう生活に戻ったよ(苦笑)。  だから、表を作るときは必ず途切れないように要注意! ママと一緒に、途中で切れない表を作ってみるといいかも。それを目に見える場所に貼っておけば、達成感も得られるからおすすめだよ。 ■勉強やお手伝いでYouTubeの時間をゲット  そもそも、どうしてYouTubeやSwitchの時間が決められているのかな? 姿勢や目が悪くなるっていうことを心配しているのかもしれないけど、もしかしたら君のママは勉強やお手伝いの時間が減っちゃうことを心配しているのかも。君も、YouTubeを見ながら「あ~、勉強しないとなあ」って思うことはないかな?  もしそうだとしたら、YouTubeやSwitchの時間じゃなくて、勉強やお手伝いの時間を決めて、それをクリアしたら見てもOKっていうルールにするのはどうかな。「○○しちゃダメ」っていうのは、逆にしたくなっちゃう不思議な言葉かもね。「ぜったいに○○しちゃダメ」っていう、世界で大人気の絵本のシリーズもあるんだよ。浦島太郎も、竜宮城で乙姫から「開けちゃダメ」って言われてもらった玉手箱を開けちゃったでしょ。 「YouTubeは30分しか見ちゃダメ」っていう約束が君には少し窮屈なのかも。ママと相談して、「○○しちゃダメ」っていう言い方を少し変えてみることにチャレンジしてもいいかもしれないね。「勉強した分だけYouTube見てもOK」とかね。そうすれば、YouTubeを見ているときも、「勉強しなきゃ」っていう気持ちがなくなるからいつもより楽しく見られるかもしれないよ。 ■小さな約束をコツコツと  ここまではYouTubeやSwitchを見ない・しない方法や、具体的にやってもいい時間をどう守るのか、ということを考えてきたね。最後に、「約束を守る強い気持ちを持つ」方法を一緒に考えてみよう。  何かに挑戦するとき、いきなりハードルを上げてしまうとなかなかクリアできなくて心が折れてしまう。最初に話したように、君が挑戦しようとしていることは、すっごく難しいことだ。だから、あきらめてしまいやすい。たとえば、「靴を脱いだらそろえる」って言う約束だったらどうだろう。  大きな約束を守るためには、小さな約束を守ることをコツコツ積み上げて練習することが大事だと思うんだ。「またYouTubeみちゃった」「ママに隠れてSwitchやっちゃった」ってことが積み重なると、自分で自分のことがいやにもなっちゃうよね。いま君が守ろうとしている約束は大人でもなかなか守れないものだから、いまはできなくて当たり前だと思うんだ。  だから、まずはママと小さな約束をしてそれを守る練習をしてみるのはどうだろう? 「朝起きたら布団を畳む」「帰ってきたら宿題を机の上に出す」とか。クリアできる約束事のハードルは人それぞれ違うはずだから、あくまで自分が守れそうなものを考えるのがポイントかな。自分だけで考えるのはなかなか難しいと思うから、ママにも手伝ってもらうといいよ。  いま、約束が守れなくてママは怒って君は悲しい気持ちになっているよね。小さな約束事でも、守れたらママと一緒に喜べるはず。それが積み重なれば、約束を守る気持ちも、どんどん強くなっていくかも!  ここまでいろんな方法を提案してみたけど、どうだったかな? 少しでも君の力になれたらうれしいな。ちなみに、君はどんなYouTubeチャンネルを見ているんだろう。動物のことが学べたり、勉強につながったりすることだったら、もしかしたらママは許してくれるかも(笑)。おもしろくてためになるチャンネルがあったらよしおも知りたいから、見つけたらぜひ教えてね!  ……って、僕は思うんだけど、君はどう思うかな? (構成/濱田ももこ) 【質問募集中!】小島よしおさんに答えてほしい悩みや疑問を募集しています。お気軽にお寄せください!https://dot.asahi.com/info/2021100800087.html

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    木下優樹菜さん「脳波でADHDが分かった」発言で物議 医師らは全否定

    <私のADHD、発達障害に関して話したいと思います>  元タレントの木下優樹菜さんが7月25日、自身のYouTubeチャンネルに「ADHDの私から伝えたい事があります【ユキナの告白】」と題した動画を投稿した。  木下さんは動画のなかで<なんで優樹菜はそうだ(ADHD)って分かったかっていうと、ブレインクリニックというクリニックに行ったんですよ。脳の周波を調べに、ちゃんと自分を知ろうと思って>と発言し、自身の脳を表したものだという資料を示してこう続けている。 <普通の34歳の女性はこれ、私はこれ。ぱっと見ですぐわかるでしょ。なんか全然違わない?脳の中が混線、こんがらがっちゃってんの。で、前頭葉ってところが働いてないの。この前の水色。で、急にこの赤くなってるところ(後頭部のやや右)、すっごい発揮しちゃってるんだって。もう先生の書き方もすごいから。思考回路・伝達グルグル・脳疲労。常にずっと何かを考えている状態。>  この動画は大きな反響を呼び、公開から2週間たった8日現在で44万回以上再生されている。著名人がADHDを明かしたことで理解促進につながるという声の一方、過去の騒動を指して「障害を免罪符にするな」との批判もあった。そして同様に注目を集めたのが、「脳の周波を検査した(ことでADHDがわかった)」とする発言だ。  記者自身、木下さんの動画を見て率直に驚いた。  過去にADHDの診断を受けている知人からは、複数回の診察や心理検査を受け、家族への聞き取りまであったと聞いていた。初診から診断まで2カ月ほどかかったという。それが脳波を見ればわかるようになったのだとすれば、医学の大きな進歩だ。   だが、真偽を確かめようと複数の精神科医や脳科学の研究者に話を聞くと、皆一様にそれを否定した――。  ここでまずは、ADHDについて改めておさらいする。精神科専門医で、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介医師はこう解説する。 「ADHDは注意欠如・多動症といい、発達障害の一種です。忘れ物やなくしものをしたり、集中力が続かなかったりする『不注意』が多く、衝動的な行動や落ち着きのなさが特徴です。発達障害は行動や認知の特性によって、ADHDのほか、コミュニケーションが苦手で特定のものごとに強いこだわりがある自閉スペクトラム症(ASD)、『読み』『書き』『計算』など特定の学習ができない学習障害(LD)の3つがあります。いずれも、知能や認知のデコボコが大きい状態です」  木下さんは動画で、「昔から物をよくなくし、なんでも忘れてしまう、スケジュール管理ができない」などと語っている。益田医師によると、実際に診察しない限りADHDかはわからないとしつつ、これらはADHDの典型的な症状だという。  一方、脳波をつかった診断に対してはこう首をひねる。 「発達障害の診断は『DSM-5』というアメリカ精神医学会の基準に当てはまるかどうかで判断します。ADHDの場合、不注意と多動性・衝動性それぞれに9つの症候が示され、そのどちらかで少なくとも6つ以上に当てはまらなければ診断できません。『12歳前までに症状がみられる』などの要件もある。だから本人への問診はもちろん、家族への聞き取りや通信簿など過去の記録を集めることになる。脳波の研究が進んでいるのは事実ですが、あくまで研究段階で、実際の現場で発達障害の診断に脳波検査を用いることはありません」  昭和大学客員教授なども兼務するハートクリニック横浜院院長の柏淳医師も、同様にこう断言する。 「木下さんが受けたとされるのはQEEG(定量的脳波検査)という、通常の脳波を図面上に落として色付けするもので、特別な検査ではありません。また、脳波検査で発達障害の診断ができるということは世界中どこの診断ガイドラインにも書いていません。例えば木下さんは動画で前頭葉の働きが弱いと言っていますが、前頭葉の機能が弱くなる原因はいくらでも考えられます」  ASDと合併する割合が高い、てんかんなどの疾患の有無を探るために脳波検査を用いることはあると言うが、発達障害そのものの診断や評価に脳波を使うことはないという。  なお、動画で木下さんは「正式な診断を受けた」とは明言していない。また、ブレインクリニックもAERAの取材に対し、木下さんの診断結果は「来院の有無を含めて回答できない」としつつ、発達障害について「脳波検査のみで診断したり、『グレーゾーン』などと伝えたりすることはなく、問診・知能検査・生活状況のヒアリングなどを複合的に行っている」としており、木下さんが脳波以外の適切な診断を受けている可能性もある。ただ、木下さんの動画を見た人の多くが「脳波で発達障害が診断できる」と誤認するのも無理からぬことだろう。  また、クリニックのホームページにはQEEGによって「ADHD特性、アスペルガー特性、学習障害特性、不安特性、うつ特性などを診断することが出来ます」と明記されている。  さらに、問題が大きいのは検査後の「治療」だ。木下さんが訪れたというブレインクリニックでは、発達障害の治療としてrTMS治療(経頭蓋磁気刺激)を提唱している。rTMSとは、特殊なコイルを用いて大脳の特定の部位の神経細胞を繰り返し刺激する治療法のことだ。ブレインクリニックのホームページには、こうある。 <当院の特徴は、大規模標準データベースと比較し、客観的データで診断するQEEG検査と最先端の治療であるTMS治療を導入している点です。>  柏医師はこう解説する。 「rTMSは現在、難治性のうつ病でのみ保険適応されている治療法で、発達障害の症状が改善されるというエビデンスはありません。にもかかわらず、高額な自由診療としてこれを勧めるクリニックが存在するんです。私の病院にも、『他院でrTMSを受けたがよくならない』『rTMSをすすめられ、高すぎるから断ったらほかにやることがないと言われた』といった患者さんが来院します」  2020年には、日本精神神経学会がrTMS治療について「発達障害圏の疾患(自閉症、ADHD、アスペルガー障害など)やそれに関連する症状、あるいは不安解消や集中力や記憶力の増進などに対する効果は、海外においても確認されていません」との注意喚起を出している。  発達障害と診断されたり、自身もそうかもしれないと悩んだりする人は少なくない。柏医師はこう続ける。 「日本の健康保険は非常に優れたシステムで、適切だと認められた治療は保険適応されています。脳波を使った検査やrTMSによる発達障害治療は研究こそ進んでいますが、今の段階ではがんの民間療法のようなものと捉えていい。夢物語に踊らされず、適切な診断と治療を受けてほしいと願っています」  なお、ブレインクリニックのAERA編集部に対する回答は次の通り。 ――木下優樹菜さんが貴院にてQEEG検査を受け、ADHDと診断されたのは事実ですか。 <来院の事実の有無にかかわらず、当院としては回答できません。> ――貴院では、QEEG検査のみ、またはQEEG検査の結果を主な理由としてADHDを含む発達障害であるとの診断を行ったり、発達障害の傾向(グレーゾーンなど)であると患者に伝え、治療を促すことはありますか。 <ご指摘のような事実は全くございません。問診(ASRS-v1.1. )、WAIS™-IV知能検査、生活状況のヒアリングなど複合的に行っております。> ――多くの医師が「QEEG検査で発達障害を知ることはできない」と指摘しています。この指摘に対する貴院のご見解をお教えください。 <QEEG検査のみを根拠に診断を行っているという事実はございません。多面的な評価が必要と考えますし、当院は問診(ASRS-v1.1. )、WAIS™-IV知能検査、生活状況のヒアリングなど複合的に行っております。> ――日本精神神経学会では2020年、rTMS治療について注意喚起(本文参照)を行っています。これに対する貴院のご見解をお教えください。 <当院は、注意喚起の対象にはなっておらず、特に見解は御座いません。> ――QEEG検査による発達障害診断やrTMSによる発達障害の治療は、今後の発展が期待される分野です。貴院でのQEEGによる発達障害診断やrTMS治療の蓄積について、論文などとして広く発表するお考えはありますか。 <研究成果の発表にも力を入れております。> (編集部・川口穣) ※AERAオンライン限定記事

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    【前編】22歳元女性自衛官が実名・顔出しで自衛隊内での「性被害」を告発 テント内で男性隊員に囲まれて受けた屈辱的な行為とは

     元女性自衛官が実名・顔出しで、訓練中に受けた性被害をYouTubeで告白したことが話題を呼んでいる。五ノ井里奈さん(22)は、陸上自衛隊に所属していた2021年の6月~8月、複数の上官から集団でセクハラを受けたという。上長に被害を訴えても取り合ってもらえず、自衛隊内の捜査機関に被害届を出しても、検察からは不起訴とされた。現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。五ノ井さんは、AERA dot.の単独インタビューに応じ、「日常的に起きているセクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、自身の受けた体験を語った。 *  *  * 五ノ井さんが陸上自衛隊に入隊したのは、2020年4月。小学生の頃から女性自衛官に憧れ、20歳のときに自衛隊の門をたたいた。教育期間は順調にこなし、その時までは、思い描いていた自衛官の姿に誇りとやりがいを持っていた。  だが、その後に配属される中隊名が発表されたときから、風向きが変わった。女性の先輩隊員から、こんな忠告を受けたのだ。 「あそこの中隊はセクハラとパワハラがひどいから気をつけろ」  五ノ井さんが配属された東北方面の中隊は、隊員58人の中で女性は5人。1人は育休中だったので、実質的に女性隊員は4人しかいなかった。同部屋の女性隊員からも「セクハラは覚悟して」と言われたので警戒はしていたものの、すぐにそれが現実のものとなった。 「2020年秋ごろ、勤務中に、男性隊員が『柔道しようぜ!』と言いながら技をかけてくるのですが、腰をつかまれて“バック”のような体制にされて腰を振ってくるんです。それを女性隊員が目撃していました。廊下を歩いていると、急に抱きつかれることも日常的にありました」(五ノ井さん)  部屋に戻ると、女性隊員同士でこうした行為を報告しあった。だが女性隊員は圧倒的少数。自分の身を守るだけで精いっぱいの場合もある。  2021年6月24日。山に入って訓練をしていた時、新人の五ノ井さんは夕食や酒のつまみを作る役割を任されていたので、天幕で料理を作っていた。天幕とは2~3人用のテントのことで、山での訓練では寝床として使用されていた。天幕で酒盛りをし、定員より多い男性隊員が入れ代わり立ち代わり入ってきて、多いときには5、6人くらいの隊員がぎゅうぎゅうになって座っていた。料理を作るためにいた五ノ井さんはその輪の中に入れられ、胸をもまれ、キスをされ、男性隊員の陰部を下着越しに触らせられた。  逃げられないと思った五ノ井さんは、別の天幕にいる女性隊員にLINEで「はやく来てください」と助けを求めた。女性隊員からは「オオカミなってる??w」と返事がきた。「オオカミ」とは、男性がお酒を飲んで暴走し、理性をコントロールできない状態のこと。「はい」と返せば、女性隊員は助けに来ないと思い、五ノ井さんは「なってません とりあえず早く来てください」と再度助けを求めた。だが、その女性隊員は「今来たらやばい」という別のLINEも受け取っていたことから、結局、五ノ井さんのいる天幕には来なかった。女性隊員はその直後に退職した。  状況としては“見捨てられた”ようなものだが、五ノ井さんはこの女性隊員の気持ちもわかると話す。 「女性隊員が自分の身を守るためには、来ないのが正解なんです。夜遅い時間に男性隊員のストレス発散に使われて、自分だって危ない目にあう可能性があるんですから、行きたくない気持ちにもなりますよ」(同)  五ノ井さんからLINEを受け取った元女性隊員は当時の状況をこう証言する。 「LINEを受け取った前日に、私も同じ天幕で宴会に参加して、同じようなセクハラを受けていました。その時は、男性隊員から膝に乗って接待しろとか、頬にキスしろと強要されました。ある男性隊員から次の日は『覚悟しとけ』と言われ、もう何をされるかわからないので、五ノ井さんに助けを求められた時に行くことができませんでした。止めに行きたい気持ちはあったのですが、止めに入ったら(次は)自分に来るので、怖くて助けられませんでした」  元女性隊員自身も「ほぼ毎日抱きしめられる」などのセクハラを受けており、五ノ井さんが日常的に被害にあっている場面も目撃していたという。元女性隊員によると、この部隊は2018年から女性隊員が入るようになり、その時から、「セクハラがヤバイ」として悪評が立っていた。セクハラをしているグループの中心は、20代後半の男性隊員数名で、他の隊員は上下関係から、逆らうことができず、ただ見ているだけだったという。  だが、この日のセクハラ事件は、中隊でも問題となった。事件を目撃していた誰かが、中隊長に報告したからだ。すぐに「中隊長に告げ口したのは誰か」と、犯人捜しが始まり、被害者である五ノ井さんが疑われた。加害者からは、「セクハラじゃなくて、コミュニケーションの一部だもんな」と声をかけられた。事情聴取として曹長から呼び出された五ノ井さんは「何もありません。大丈夫です」と報告した。問題が大きくなり、組織に居づらくなるのを避けようとしたからだ。 「自衛隊には厳しい上下関係があって、その場の空気に合わせなければならない。和を乱せば、無視や陰口を言われますから」(同) ■セクハラを超えた性被害を受けて限界に  この日以降、五ノ井さんは気持ちを押し殺しながら日常的なセクハラに耐えてきたが、昨年8月に我慢の限界に達する出来事が起きた。  8月3日から地方で約1カ月間の訓練があった。訓練場所に到着した日の夜、部屋で食事の準備をしていた五ノ井さんは、男性隊員から「料理はいいから接待しろ」と言われ、男性隊員十数人の輪の中に座らされた。宴会だったので、隊員らは酒を飲んでいた。  一曹Eと二曹Yが格闘の話をしていたところに、男性隊員S三曹が部屋に入ってきた。するとEは、Sに「五ノ井に首をキメて倒すのをやってみろ」と命令した。Sは、五ノ井さんの首に両手を当てて、そのままベッドに押し倒すような技をかけた。 「この時、Sさんが暴走し始めたのです。股を無理やりこじ開け、腰を振りながら陰部を押し当ててきました。一人で『あんあん』とあえぎ声みたいな声を出して、それを見ている周りの男性隊員たちは笑っていました。特にEとYはこっちを見ながら確実に笑っていました」(同)  続いて、2人目の男性隊員Kも「首をキメて」押し倒し、Sと同様の動きをした。さらに続いた。3人目男性隊員Rは同様に押し倒した後、五ノ井さんの両手首を押さえつけながら、何度も腰を振ってきた。 「全力で抵抗しようと、手首に力を入れて振りほどこうとしましたが、男性の力にはかないません。諦めて、終わるのを待つしかありませんでした。終わって体を起こすと、周りの男性隊員たちはこっちを見ていました」(同)  コトが終わると、Rからは「五ノ井って案外力が強いな」と言われた。五ノ井さんが抵抗していたことはわかっていたのだ。  一旦話題が収まったにもかかわらず、再び一曹Eが格闘技の話を面白おかしくしはじめて、「あれ、首をキメて倒すのどうやるんだっけ?」と笑いながら言い出した。すると、再びSが、五ノ井さんの首に両手を当てて押し倒し、腰を振ってきた。五ノ井さんの引きつった顔を見たSは「これ誰にも言わないでね」と口止めしてきたという。 「もう限界でした。訓練場所は、すぐに抜け出せる環境ではありませんでしたが、先輩の女性隊員と中隊長Mに相談して、帰りたいとお願いしました」(同)  先輩女性隊員は、最初は味方してくれたが、男性中隊長が「訓練は訓練だ」と言うと、「そうだよ、訓練は訓練だから」と態度を変えた。訓練はあと20日以上続く。これ以上耐えられないと感じた五ノ井さんは、訓練から抜けることを懇願した。だが、セクハラを受けたことが理由では、6月の時のように告げ口したと思われてしまう。母親が倒れたことにして、実家に帰れることになった。  この時、先輩女性隊員からは「一応、嘘ついていることは心の隅にでも置いておいてね」と言われた。エスカレートする性被害から逃れるための苦渋の判断にもかかわらず、被害者である五ノ井さんに非があるような言い方に聞こえた。 ■被害届を出すも不起訴処分  この8月の性被害の後、適応障害と診断され、五ノ井さんは休職することになった。被害については、まず、自衛隊の総務・人事課にあたる「一課」にセクハラ被害を報告した。だが、一課からは「8月のセクハラの件を見たという証言が得られなかった」と回答された。次に、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。 「警務隊の現場検証では、人形を使って再現しました」(同)  検察庁の捜査をへて、22年5月31日付で判決が出た。結果は、不起訴処分。五ノ井さんが不起訴の理由を尋ねると、検察官は「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない」という供述だったと説明された。そして「被疑者を有罪にするにはそれなりの証拠が必要だ」とも言われたという。 「その場で見ていた人がたくさんいたのに、なぜか腰を振ったという証言は出てこない。単に技をキメて押し倒しただけで、どうして笑いが起きるのでしょうか。その続きがなかったら、笑うわけがない」(同)  五ノ井さんは6月7日付で、検察審査会に不服申し立てをしている。  自衛隊内部では、この事件をどう捉えているのか。AERA dot.は五ノ井さんが配属された東北方面の部隊に事実確認すると、広報担当は「現在、部隊で調査中のため回答は差し控える」と答えた。調査結果がいつ出るかは未定だという。また、五ノ井さんが報告を上げた「一課」にも確認をしたが、「その件は一課長が対応したが、いまは不在」とのこと。代わりに対応した指令業務室の担当者は「事実を調査中のため、予断を持って回答することは差し控えたい」と回答した。なお、被疑者の処罰については、「判明した事実に基づき、厳正に対処する」とした。 (AERA dot.編集部 岩下明日香) ※「後編」では、五ノ井さんがセクハラを受けてもすぐに辞めなかった理由、顔と名前を出して告発に踏み切った経緯などを明かす。

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    NHKが中森明菜に出演交渉か どうなる目玉不在の今年の紅白

     2022年も早や5カ月を切ったが、毎年この時期から音楽業界で注目を集めはじめるのが「NHK紅白歌合戦」だ。大晦日に放送されるだけに時期尚早の観もあるが、大手レコード会社のスタッフは、こう明かす。 「近年は今くらいの時期に“夏の紅白”とも呼ばれ、『紅白』の出場歌手や司会の選考とも関連性があるNHKの大型音楽番組『ライブ・エール』が放送されています。今年は8月6日に放送され、宇多田ヒカルさんが約4年ぶりに同局の音楽番組に出演したり、『純烈』が上島竜兵さんの死去で2人態勢となった『ダチョウ倶楽部』とのユニット『純烈&ダチョウ』として登場して話題になりました」  この2組やお笑いコンビ「ウッチャンナンチャン」の内村光良とともに司会を務めた同局の桑子真帆アナウンサーに関しては、早くも「紅白」出場が有力視されているという。  昨年の「紅白」は視聴率で歴代最低を更新する大惨敗を喫し、一部では打ち切り説まで取り沙汰されるなど今年の巻き返しは必至となっている。 「一昨年はコロナ禍による感染対策により初の無観客開催となり、演出面もかなり制限されましたが、2年ぶりに世帯平均視聴率40%を超える健闘を見せました。そうした中、昨年は2年前と同じくコロナ禍による“巣ごもり需要”が期待できることや強力裏番組である日本テレビの『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけない』シリーズの放送休止といった追い風もあり、一昨年以上の視聴率が狙えると期待されていたんです」(前出のレコード会社スタッフ)  ところが、ふたを開けて見れば午後9時からの第2部の平均世帯視聴率は34.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と前年から6.0ポイントも落とし、歴代最低記録を更新してしまったのだ。  さらに、今年の5月にはNHKの職員有志による「前田会長よ、NHKを壊すな」と題したレポートが「文藝春秋」に掲載され、その中にはNHKの前田晃伸会長が「紅白」を打ち切りにする方向で進めているといった内容もあった。当の前田会長本人は同月の定例会見で「紅白」に関する報道を否定したが、「先の参院選でもNHK党が存在感を放つなど、受信料の件もあってNHKや『紅白』に対する視聴者の風当たりは年々厳しさを増している印象です」(同レコード会社スタッフ)  こうした事情もあり、今年の「紅白」は例年以上に“数字”が求められることになりそうだが、現状はお世辞にも芳しい状況ではないようだ。  音楽ライターはこう話す。 「今年も世代を超えて愛されるようないわゆる国民的ヒット曲はまだ出ていませんし、そもそも目立った新曲すらパッと浮かばない。本来であれば、先日に“最後のテレビ出演”が話題を呼んだ吉田拓郎さんや一部女性誌で引退準備が報じられた井上陽水さんといった大物歌手を投入したいところでしょうが、現実は厳しそうです」  そうした中、NHKサイドが今年の「紅白」の目玉として密かにサプライズ出演を期待しているのが歌手の中森明菜だという。  今年デビュー40周年を迎えた中森明菜といえば、7月9日に同局で放送された「中森明菜 スペシャル・ライブ1989 リマスター版」が再放送されて大きな注目を集めたばかり。 「今回放送されたのは明菜さんがデビュー8周年を記念して、デビュー曲『スローモーション』から1989年リリースの『LIAR』までのシングル24曲を歌唱した89年4月のライブの模様を高画質の映像にリマスターしたものです。明菜さんにとってもシングル曲だけを歌った珍しいライブでファンの間では“伝説のコンサート”として今も語り継がれています」(前出の音楽ライター)  今年4月にNHKのBSプレミアム・BS4Kで1度放送されたが、わずか3カ月を経てNHK総合での再放送となった。 「4月の放送後の反響の大きさを受けて今回の再放送が決まったそうで、改めて明菜人気の高さを見せつけられた格好です。そこで浮上しているのが『紅白』への担ぎ出しです。そもそも、明菜さんは14年の『紅白』に米ニューヨークのスタジオからの生中継という形でサプライズ出演しましたが、約4年5カ月ぶりの復活ということもあって当時は大きな反響を呼びました。ここ5年ほど公の場の立っていない明菜さんが再び『紅白』のステージに立つとなれば大きな反響を呼ぶのは間違いないでしょう」(同音楽ライター)  実際、同局の局員からはこんな話も聞こえてくる。 「4月の時もそうでしたが、7月の再放送に関しても放送後にはNHKふれあいセンターなどを通じて視聴者の皆さんから珍しくお褒めの言葉を多数頂いたようで、局内でも話題になっていました。ここ5年ほど目立った活動はしておらず体調の問題もあるんでしょうけど、出来ることならまた『紅白』に出演してほしいですし、番組担当が水面下で出演交渉に入ったといった噂も流れています」  中森明菜への出演交渉について、NHK広報局に事実関係の確認を求めたが、「個別の番組の制作過程についてはお答えしておりません」との回答が返ってきた。  伝説の歌姫が窮地の「紅白」の救世主となるか!?(立花茂)

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    メジャー戦力外の筒香嘉智 現地メディアが「ファンの諸君、朗報だ!」と辛辣報道の理由

    「パイレーツファン諸君、朗報だ!」  8月3日(現地時間:以下同)、ピッツバーグ・パイレーツの筒香嘉智がDFA(事実上の戦力外通告)になった。この報を聞いたパイレーツ専門メディア『バックス・ダグアウト』は、このように喜びを表現した。DFAを受けたのはトレード期間を終えた翌日。パイレーツのデレク・シェルトン監督は「適切なタイミングだったと思う」と、地元紙『ピッツバーグ・ポスト・ガゼット』にコメントしている。  筒香は、今季50試合出場も29安打、19打点、打率.171と低迷。期待された長打はまったく出ず、ホームランはわずか2本だった。打撃や投球、守備などを総合して選手の貢献度を表す指標のfWARは-1.3。同指標を提供するファングラフス社の中でも、これは1355人中1353人目の数字。球団に所属する選手では最下位だ。大谷のfWARは5.8で総合2位なので、逆に筒香が今までMLBにいたことが奇跡だったとも言える。  筒香は今年、パイレーツと400万ドル(約5億3970万円)の単年契約を結んでいた。昨年8月にロサンゼルス・ドジャース傘下から自由契約を経てパイレーツに加入した筒香は、マイナーで磨き直した打撃で、43試合出場で8本塁打、25打点、長打率.535と覚醒。その打力は高く評価され、ロックアウト前の11月29日にパイレーツと再契約。『CBSスポーツ』からは「ヨシを連れ戻したのは賢い考えだ」と称賛され、今季は開幕から4番打者となり、一塁手のレギュラーにも抜擢された。  しかし、筒香は現地からの期待を全て裏切った。シーズンが始まると、筒香の打撃は試合を重ねるに低迷。シーズン序盤から全く打てず、スポーツメディア『DK・ピッツバーグ・スポーツ』(4月28日)からは「ひどいとしか言いようがない」と言われ、パイレーツ専門メディア『ラム・バンター』からは、「若手の出場機会を奪う障害だ」(5月30日)と痛烈な批判を浴びた。  当時、不振の原因として指摘されていたのは、「打球速度と打球角度の低下」と「引っ張る確率の低下」であった。地元紙『ピッツバーグ・ポスト・ガゼット』は、4月19日の記事で次のように述べている。「(筒香は)昨季から平均打球速度が時速4.9マイル(約7.8キロ)遅くなり、打球角度は1.9度も低下している。ボールを引っ張る確率は昨季の35.6%から今季は14.3%にまで減少している」。さらに、「打球方向が変わったのも、スイングの遅れに原因がある」とも指摘された。  しかし、急激な打撃低下は、ケガの影響が原因でもあった。筒香は5月27日、「腰部の筋肉損傷」で負傷者リスト(IL)に入っている。本人によれば、腰の痛みは開幕3試合目からあり、ILに入るまで治療薬を飲みながらプレーしていたとも話している。戦列復帰まで42日も要するほど重傷だったこともあり、序盤の低迷理由を知った現地メディアの中には同情を寄せるものもいた。  しかし、いくらケガの影響があったとしても、復帰後の1カ月で何も改善しなかった筒香を誰も擁護できなくなった。7月の月間成績は、15試合で9安打4打点、0本塁打に19三振。打率/出塁率/長打率は、それぞれ.158/.172/.175。全ての数字で最悪の選手となり、現地での信用は完全に地に落ちた。  そんな筒香だが、DFA後は後どうなるのか。シーズンは終了まで2カ月近くあるが、残念ながらMLBに残るのは難しいだろう。DFAを受けた選手は次の4つの選択肢が与えられる。1つ目はトレード、2つ目はウェーバー公示、3つ目は解雇、あるいは、マイナー降格。しかし、パイレーツは5日、筒香を自由契約にすると発表している。3日のDFA後、パイレーツは筒香をウェーバー公示にかけたが、獲得の意思を示したMLB球団はいなかったようだ。また、筒香はマイナー降格を受け入れなかったようで、退団の道を選んでいる。  ただ、この結果はすでに予見されていた。米移籍情報サイト『MLBトレード・ルーマーズ』の3日掲載の記事には、次のよう書かれている。 「トレード期間が終わった今、パイレーツに残る唯一の選択肢は、アウトライト・ウェーバー(40人枠から外すが、当該選手を支配下としてマイナーに残すこと)か、ウェーバー公示だ。今季年俸400万ドルのうちまだ140万ドル(約1億9000万円)の負担が残っていることを考えると、どちらにしてもウェーバーで引き取り手がいないことは確実だ」  昨年、筒香がドジャースやパイレーツに移籍できたのは、最初に所属していたタンパベイ・レイズが2年1200万ドル(約16億円)の年俸を全て負担したから。あとの2球団は当時の最低保証年俸57万500ドル(約7700万円)のうちシーズンの残り日数で割った分の支払いだけで済んでいた。つまり、去年は格安かつ試す価値もまだあったので、引き取り手も見つかった。  しかし、今回はそうならなかった。パイレーツは資金力がなく、もし移籍先が見つかっても球団に年俸の残り分の負担を求めただろう。『MLBトレード・ルーマーズ』はその問題を指摘し、獲得する球団はいない、と予想していた。  そうでなくても、筒香はこの3年の通算成績は、18本塁打、打率.191、長打率.339で、MLBで通用しないのが明らかになっている。それにケガのリスクも抱えていることも知られてしまった。  しかも、今MLBはトレード期限を終えたばかり。どこも戦力整理はもう済んでいる状態だ。これが秋山翔吾(広島カープ)がシンシナティ・レッズを退団した時(4月5日)のようにシーズンの早い段階であれば、筒香も他球団とマイナー契約を結ぶチャンスがあったかもしれなかったが、今だと望みは薄いだろう。ただ、こうなってしまったのも、筒香がこれまで与えられたチャンスを生かせなかったからだ。  筒香に残された選択肢は現時点ではほとんど残っていない。引き続きアメリカでマイナー契約ができる球団を探すか、あるいは日本球界に復帰か。(なお日本プロ野球の補強期限は7月31日までのため、今季復帰は不可)筒香は8日、アメリカに残って自主トレを続けながらMLB(マイナー)からのオファーを待つと表明しているようだ。しかし、地元紙『ピッツバーグ・ポスト・ガゼット』によれば、筒香がアメリカに残ることはもうないと予想している。同紙は、5日の記事で筒香の今後を次のように予想している。 「ピッツバーグでのヨシ・ツツゴウ時代はどうやら終焉を迎えたようだ。筒香の退団はかなり予想できた。彼は海外(日本)でプレーすることを望んでいるのかもしれない。パイレーツ傘下インディアナポリスには、すでに一塁手で使いたい選手がいる」  同紙によれば、パイレーツ傘下はすでに将来に向けてマイナー選手の育成に舵を切っているため、筒香には居場所がないことを指摘。また、野球専門メディア『コール・トゥー・ザ・ペン』も8月8日の記事で、「ここまでは、日本プロ野球に復帰して現役を続行するだろう。故郷に帰る可能性は高いようだ」と伝えている。現地メディアの見解では、アメリカに残れる可能性がほぼなくなっている筒香。はたして今後どんな決断をするのか。その動向が注目される。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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    『鬼滅の刃』14歳の天才剣士・時透無一郎が求めた「幸せ」と「生き急ぐ」理由

    【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。 『鬼滅の刃』アニメ新シリーズ「刀鍛冶の里編」で、主人公の炭治郎とともに戦う鬼殺隊の「柱」は、甘露寺蜜璃と時透無一郎だ。とくに最年少の「柱」である無一郎は、刀鍛冶の里の戦いを通じて、その内面に劇的な変化を見せる。無口でミステリアスな無一郎の秘密が明らかになるシーンは、新シリーズの見どころのひとつだ。無一郎にまつわるエピソードをひもといていくと、浮かび上がるのは「幸せ」と「時間」というキーワードだ。まだ14歳の少年・時透無一郎が壮絶な鬼狩りに身をささげる意味を改めて考察してみる。 *  *  * ■時透無一郎の天与の才  刀鍛冶の里に登場する霞柱・時透無一郎は、なんとまだ14歳という若さだ。彼は11歳の頃に天涯孤独の身となり、その後、剣術未経験から2カ月という異例の早さで鬼殺隊の「柱」にまでのぼりつめた。「剣技の天才」が居並ぶ鬼殺隊の中でも、突出した才の持ち主である。  同じく鬼殺隊の柱である宇髄天元は、鬼から「選ばれた才能」の持ち主だと言われた時に、即座に「俺程度で」と苦笑しながら、真の天才として無一郎の姿を思い浮かべている。また、無一郎は鬼の総領・鬼舞辻無惨に次ぐ、鬼側の実力者と対峙した際に、その上弦の鬼から「実に良き技 流麗で美しい」と称賛されており、彼の実力の凄まじさは今後も物語のいたるところで語られる。 ■生き急ぐ時透無一郎  隊服に包まれた体つきには幼さが残っており、愛らしい顔立ちもまだあどけない。鬼殺隊の象徴である「滅」の文字を背負っていることが痛々しくすらある。しかし、その外見に反して、普段ほとんどしゃべらない無一郎は、口を開いたかと思うと、周囲への配慮に欠けた言葉を口にする。 「君がそうやって くだらないことを ぐだぐだぐだぐだ言ってる間に 何人死ぬと思ってるわけ?」(時透無一郎/12巻・第102話「時透くんコンニチハ」)  無一郎の発言をよく聞いてみると、彼はいつも「時間」を気にしている。「柱の時間と君たちの時間は全く価値が違う」「くだらない話につき合ってる暇ないんだよね」「邪魔になるからさっさと逃げてくれない?」  無一郎の頭の中は訓練と鬼との戦いのことでいっぱいだ。彼が「2カ月」という異常な早さで「柱」になるほどの実力を身につけたのは、彼が単なる天才だからではない。彼は一刻も早く強くならねばならないと、焦りつづけていた。それは一体なぜか。 ■無一郎の「幸せ」とは?  以前、『鬼滅の刃』のコミックス最終巻(23巻)が発売された2020年12月4日に、朝日新聞、読売新聞など全国5紙に鬼滅キャラクターの名言が全面広告として掲載された。その時、無一郎には「僕は幸せになる為に生まれてきたんだ」というコミックス21巻収録の言葉が添えられた。 「刀鍛冶の里編」以降、無一郎の活躍は目覚ましい。しかし、同時に彼の体には無数の傷が刻まれていく。流れるおびただしい血。天才であるがゆえに、無一郎が戦う敵はいずれも強大で、そのぶんダメージも大きい。彼が戦闘で受ける傷は凄惨で、正視できないほどの場面も少なくない。ただ、コミックス最終巻には、無一郎のほほ笑む姿とともにこんな言葉が載せられた。 「幸せは長さではない 見て欲しい 私のこの幸せの深さを」  しかし、これほどの痛みをなぜ14歳の少年が負い、これほどの苦難に立ち向かわなくてはならないのか。時透無一郎は「幸せ」なのか、という疑問が、私たち読者の脳裏をよぎる。 ■無一郎の悲嘆  無一郎が家族を亡くした時、彼は今よりも、もっともっと幼かった。大切な人たちを守る「力」を持っていなかった。彼の焦りはそんな後悔から生まれた。彼が子どもだったことは、彼の罪ではない。それでも、無一郎は体の傷が癒えぬままに何千回、何万回と刀を振るう。「柱」になったとはいえ、彼はまだ14歳で、肉体のピークはまだまだ先だ。それでも無一郎は己の肉体を酷使し続ける。  鬼との戦いは激化の一途をたどり、次々と出現する鬼の実力者「上弦の鬼」との死闘を予感して、無一郎の焦りはより増していく。そんな時、死んだ兄の言葉が無一郎の記憶の中によみがえった。 「どれだけ善良に生きていたって 神様も仏様も 結局守ってはくださらないから」(時透有一郎/14巻・第118話「無一郎の無」) 『鬼滅の刃』には、善良な人々を救う神々は登場しない。奇跡も起こらない。か弱き「ふつうの人間」が大切なものを失い、たくさんの人たちの死と、涙の果てに、強さを希求する。少年剣士・時透無一郎は、救ってくれない神と仏に代わって、その幼い体に傷を受けながら、血を流して戦う。 ■“誰かの”幸せのために  だが、時透無一郎が守りたかった者は、もう彼の元には残されていない。母が死に、父が死に、兄が死んだ。では、無一郎はなんのために戦い続けたのか?  鬼滅の主人公・竈門炭治郎が、無一郎たちを思い浮かべながら、鬼殺隊の隊士のことをこんなふうに語っている場面がある。 「自分ではない誰かの為に命を懸けられる人たちなんだ 自分たちがした苦しい思いや 悲しい思いを 他の人にはして欲しくなかった人たちだから」(竈門炭治郎/23巻・第203話「数多の呼び水」)  家族を失い、記憶の一部を欠損していた無一郎は、「刀鍛冶の里」の戦いを通じて、大切なものを取り戻す。幸せだった過去の思い出と、新しい「仲間」だ。仲間たちと笑顔で語らうことが、無一郎の「幸せの瞬間」になった。 「一人ぼっちになってから つらいことや 苦しいことがたくさんあったけど 仲間ができて僕は楽しかった また笑顔になれた 幸せだと思う瞬間が 数え切れない程あったよ」(時透無一郎/21巻・第179話「兄を想い 弟を想い」) 「刀鍛冶の里編」では、時透無一郎が仲間のために必死になる姿、大切な人を思い出して涙する姿、年相応に笑う少年らしい表情を見ることができる。そして、後の「柱稽古」以降、無一郎は壮絶な戦いへとさらに突き進んでいく。『鬼滅の刃』のラストシーンを迎えるその時まで、時透無一郎の「生きざま」を胸に刻みたい。 ◎植朗子(うえ・あきこ)1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。AERAdot.の連載をまとめた「鬼滅夜話」(扶桑社)が好評発売中。

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    「蚊」を見失ったらどこを探せばいい? 専門家たちに聞く撃退法&かゆみ対策

     今年もヤツの季節がやってきた。おなかの卵を育てるため、血を求めて飛び回る。部屋に1匹いるだけでイライラは募るもの。家の中だけでも安全地帯にして、かゆーいストレスから逃れたい。専門家の英知を結集して、対策をまとめました。 *  *  *  ぷーん。自室で原稿を書いていた記者の目の前を一匹の蚊が悠々と横切った。部屋はマンションの10階。一体どこから入り込んだ? 「人間の後についてエレベーターに乗ったり、ビル風に乗って20階くらいまで吹き上がってきたりするんです」  そう解説してくれたのは、殺虫剤「バルサン」を製造販売するレックの技術顧問・津田良夫さん。人についてくるのは仕方ないとして、ちゃんと網戸は閉じているんですけど……。 「網戸に引っかかっても、表面を歩いて抜け穴を探します。5ミリ程度の破れ目や隙間があれば連中は入ってくる。地下の排水設備などで生まれた蚊が、排水管や通気口を通って侵入することもあります」  やはり蚊を絶対に家に入れないのは難しそう。せめて部屋にいる蚊は確実に迎撃したいが、ふらふらと飛ぶ姿を目で追っていると、ふっと消えることがある。これは蚊の飛び方が不規則で、急に予測不能な方向に動くからだという。見失ったらどこを探せばいいのか。 「昼行性のヤブカ類は壁などどこにでも止まりますが、夜行性のイエカ類は暗がりを好みます。テーブルの下や家具の裏などを探すか、部屋の照明を暗くして刺しに来たところをたたくのがよいでしょう」(津田さん)  たたくときのポイントは、止まっているか、止まろうとしている蚊を狙うこと。飛んでいる蚊は周囲を警戒しているので素手で仕留めるのが難しい。津田さんは自宅に捕虫網を置いているそうだ。  ただ、手に頼らずとも撃退できる方法はある。手軽さから人気を集めているのが、ワンプッシュ式の蚊取り剤だ。  フマキラーの開発研究部員、中原良成さんは「ボタンを1回押すだけで霧状の薬剤が部屋中に広がり、速効性があります。床や壁についた薬剤は再浮遊するので、後から入ってきた蚊にも効く。当社製品の場合、4.5~8畳の部屋にワンプッシュすると、効果が24時間続きます」と話す。  大半の蚊取り剤に含まれるのはピレスロイドという成分。虫の体内に入ると神経を異常興奮させ、筋肉の過収縮や呼吸困難を引き起こす。人間の場合は虫よりも神経系が複雑なため、異常興奮が起きる前にピレスロイドが分解されて無害になる。  肌に塗るタイプの虫よけも進化している。2015年に国内で承認されたイカリジンという成分は、皮膚や衣類への刺激が従来の成分(ディート)より弱く、子どもへの使用制限がない。においもないため各社が続々と製品化している。ただ、塗った部分にしか効果を発揮しないのはディートと同じ。蚊は塗り残した場所を狙って刺しに来るので、気をつけよう。  蚊の襲来から逃れるには、発生源もたたいておきたい。まずはボウフラが湧く水たまりをなくすことだ。害虫駆除を請け負うアペックス産業の佐々木健(たけし)・研究室部長に、対策のポイントを聞いた。 「庭に放置したじょうろやプランターの受け皿などは代表的な温床です。家の周りの水たまりを一掃しても蚊が減らない場合、道路の側溝に作られた雨水桝(ます)が原因でしょう。私も、自宅前の雨水桝に殺虫剤を入れたら、蚊が出なくなりました」  しかし、努力もむなしく蚊の餌食になることもある。針を刺した蚊は、皮膚内をまさぐって血管を探す。うまく血が吸えないと、別の箇所に移動して再び刺す。刺すたびに麻酔や血を固まりにくくする作用のある唾液(だえき)を注入し、その唾液成分がかゆみを引き起こす。  動物性皮膚疾患に詳しい九段坂病院の谷口裕子医師によると、かゆみが起きるのは、引っかくことで体内に入った異物を排除しようとする防御システムが作動しているからだという。ただ、かきすぎて皮膚を傷つけると、細胞からかゆみの神経を刺激する物質が出て、ますますかゆくなる。 「皮膚を傷めずにかゆみを抑えるには冷やすのが一番です。ちまたで言われている『爪を押し当てて×印をつける』『セロハンテープを貼る』『なめる』といった方法は、どれも間違い。テープははがすときに角質が取れるし、なめるのは『舌なめずり皮膚炎』という疾患があるように、唾液の消化酵素で肌が荒れてしまいます」(谷口医師)  なお、年をとってから蚊に刺されなくなったと感じる高齢者は、刺されないのではなく、免疫ができたことで「刺されても反応しない」状態になったと考えられる。 「かゆみや腫れといった蚊へのアレルギー反応は、刺された直後の『即時型反応』と、数時間後に始まる『遅延型反応』があります。この2種類の反応の出方は、刺された回数によって変化すると言われています。乳幼児期は遅延型のみ、幼児~青年期は両方、青年~壮年期は即時型のみが起き、老年期になると何の反応も起きないことが多い。繰り返し刺されるうちに体が慣れ、過剰な炎症を止める作用が働くのでしょう」(同)  祖父母が「うちの庭に蚊はいない」と思っていても、遊びに来た孫がボコボコ刺される可能性もあるというわけだ。  彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず。まずは蚊の生態や自分の体を知ることから、戦いは始まる。(本誌・大谷百合絵)※週刊朝日  2022年8月12日号

    週刊朝日

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    映画「ONE PIECE FILM RED」は大ヒット漫画が新たな挑戦をして起こした奇跡 鈴木おさむ

     放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、公開中の映画「ONE PIECE FILM RED」について。 *  *  *  8月6日から公開が始まった「ONE PIECE FILM RED」。2022年7月で連載開始25周年となる「ONE PIECE」は、今回で長編劇場版通算15作目で、原作者の尾田栄一郎が総合プロデューサーを務める“FILMシリーズ”としては、4作目。自分で言うのもなんですが、2012年公開の「ONE PIECE FILM Z」では私も脚本を担当させていただいてます。その作品は興行収入68億円を超えて、「ONE PIECE」の映画としては1位です。今の所ね。  で、「ONE PIECE FILM RED」を日曜日に見てきました。はっきり言いますね。傑作です!  いや、後半ずっと泣いていたな。もちろん物語にも泣いていたんですが、映画「ONE PIECE」としての挑戦、そしてキャスト&スタッフ、みんなが一丸となり、新しい扉を開けたなと思ったのです。  今回は、世界でもっとも愛される歌手ウタが主人公と言っていいでしょう。そのウタは、赤髪の「シャンクスの娘」であり、ルフィとは昔から知っている仲だった。このウタには大きな秘密があり、物語が大きく動いていく……のですが。  このウタの声を、声優の名塚佳織さんと歌唱部分は「うっせぇわ」などの大ヒットを持つ歌手のAdoが担当しています。  歌唱部分ってどういうこと?と思うかもしれませんが、このウタは歌手なので、映画の中で歌唱シーンがたびたび登場。というか、かなり出てくる。もうメインと言ってもいいかも。  楽曲は全てこの映画の為に作られた曲なんです。  つまりは、この「ONE PIECE FILM RED」は音楽劇なのです。ここにきて、「ONE PIECE」が音楽劇かと!  正直、そこに突入するにはかなりの勇気が必要だったはずなのです。だけどそこに挑み、とんでもない奇跡を起こした。  その大成功の勝因の大きな一つが、Adoです。Adoがウタとして歌うシーンが何度も出てくるのですが、楽曲は映画用に作られた歌です。とてつもなく難しい歌ばかり。それを見事にウタとして歌いこなす。それが圧巻&感動です。  有名なアーティストが歌唱シーンのあるアニメの映画に参加するパターンはありますが、正直、そのシーンを見て歌声を聞くと、その歌手の顔が浮かんできてしまう。  ですが、Adoは顔出ししてないですよね。だから、Adoの歌でも、Adoの顔を思い浮かべず、そこにはめちゃくちゃ歌のうまいウタがいるのです。世界中を熱狂させるという設定も納得の歌。いや、本当にこれを出来るのはAdoしかいないんです。それが奇跡です。  Adoがウタとして歌っている。歌を演じながら歌っている。これ、どうやって歌を収録していったんだろう。映画を見て歌を改めて聞くと、とんでもない力量だと思ってしまう。  ネットでAdoの年齢を見ると、19歳と出てくる。令和の歌姫Adoが、平成に誕生した大ヒット漫画「ONE PIECE」と手を組み、新時代の扉を開けた。  僕は「ありそうでないもの」が世の中に大ヒットするとよく言っていますが、すでに大ヒットしている漫画が、新たな挑戦をすることで、ありそうでなかったものを作り出す。  新たに挑んだ先に起きている奇跡に、色んな涙が出てしまうんだよな。  興行収入も3日で22億円を超えたと聞きました。もうこのまま突っ走って、「FILM Z」の記録を抜いてください。抜くでしょう。気持ちいい。  この「ONE PIECE FILM RED」により、Adoも歌手として、新時代のDIVAとして、さらに駆け上がるでしょう。  ここ数年、「ONE PIECE」見てないんだよな~という方こそ、ぜひ、いきなりこの映画を見てほしい。いい夏過ごせます。 ■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が好評発売中。漫画原作も多数で、ラブホラー漫画「お化けと風鈴」は、毎週金曜更新で自身のインスタグラムで公開、またLINE漫画でも連載中。「インフル怨サー。 ~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」は各種主要電子書店で販売中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)が発売中。原案・脚本を担当した「運命警察」(テレビ東京)がOA中。

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    アルピニスト野口健、橋本龍太郎から「貴様とは絶交だ」と怒鳴られた理由とは

     参議院選挙への出馬が何回も噂された「アルピニスト」野口健。元総理の橋本龍太郎とは、エベレスト登山を契機に育まれた、年齢を超えた不思議な関係だった。橋本から自民党から参議院選挙出馬のチケットを手に入れた野口健。しかし、家族や周囲の反対もあり、最後まで選挙に臨む態勢をつくれなかった。野口健のマネージャーを計10年務めた小林元喜氏の著書『さよなら、野口健』(集英社インターナショナル)から一部抜粋して紹介する。<前編から続く> *  *  *  結局、選挙については態勢がつくれず時間だけがただ過ぎていった。小笠原から戻り、すぐに橋本龍太郎事務所に謝罪に赴いた。野口が出馬辞退を告げると、橋本は「もう貴様とは絶交だ」と怒鳴った。 ■無言の煙草  野口は、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。何かを言いたいのだが、何を言っていいのかわからない。「今までお世話になりました」とだけ告げ、頭を下げた。  橋本は窓の外を見ながら「何もしてない」と言う。 「いや、私のほうで勝手に感謝させていただきます。ありがとうございました」  そう言い残し、野口は事務所を出た。その足で近くの大きめの書店に駆け込んだ。本を読むふりをしながら、野口は最後のシーンを何度も頭の中で再現する。 「終わっちゃったなあ。なんだか最後、悲しかったなあ」と口に出すと涙が出てきた。  それから何日かが過ぎた。橋本から野口宛に葉書が届いた。そこには「最近はどうしてる? 元気かい? たまには顔でも出して」と書いてある。野口はすぐに事務所に向かった。すると橋本が「久しぶりだね。最近は楽しいことあったか?」と、自分のネクタイをくねくねと触りながら聞いてくる。 「久しぶりですね」と答えながら、いや、ついこの前会ったばかりだぞ、と野口は思う。  二人は無言のままだ。橋本の煙草の本数だけが増えていく。野口は「一体これは何の儀式だ」と思いながらも喜びを隠せなかった。  二〇〇四年七月のことだった。日歯連闇献金事件のニュースが流れた。二〇〇一年七月に橋本と青木幹雄、野中広務が日本歯科医師連盟会長、理事と料亭で会食。その際に一億円の小切手を受け取ったが、この献金を収支報告書に記載していなかった、というものであった。報道が連日続き、橋本はマスコミの攻勢にあっていた。  野口の公式サイトには「橋本龍太郎との思い出」というコーナーがあり、二人の写真がたくさん掲載されていた。サイトにあった掲示板には、報道の過熱に比例するように野口と橋本の関係を非難するコメントが相次いだ。  この時、珍しく明け方に野口から携帯に電話があった。時計を見るとまだ四時だ。 「どうしたんですか?」と私が言うと、「起きてましたか。小林先生は朝が早いね~」と、なかなか用件を切り出さない。 「いや、マジで眠いですよ。何があったんですか?」と私。  すると声色が変わり、「あのさ、龍ちゃんとの写真、あれ全部消せる?」と小声で言ってきた。「まあ、できますけど。でも、ほんとにいいんですね?」と言い、私はすぐにパソコンを起ち上げ、関連ファイルをサーバーから削除した。 「はい。もう一回見てみてください。消えてますよ」  そう言うと電話を切り、私はすぐにベッドに戻った。すると五分ほどして再び携帯が鳴る。「どうしたんですか?」と不機嫌な私。 「いや、ほんと申し訳ない。龍ちゃんとの写真、あれやっぱり全部もとに戻して。やっぱよくない。こういうのはよくない。すぐに戻して。すまん」  私は再びパソコンを起ち上げながら、健さんらしいな、と呟いていた。 ■病院でついた嘘  事件の報道は日増しに過熱していた。そんな中、野口は自身が理事長を務めるNPO法人への特別顧問への就任を橋本に打診した。  二〇〇六年の正月、「自分はもう登山は無理だから、これを持っていけ」と橋本は愛用していたピッケルを野口に渡した。橋本が倒れたのはこの約半年後だった。会食中に、旧知の新聞記者から私の携帯に連絡があった。 「ハシリュウが倒れて新宿区の国立国際医療研究センターに入院したみたい。すぐに健ちゃんに教えてあげて」  私たちは会食を終えると、その足で病院を訪れた。夜の病院は非常灯の明かりだけで真っ暗だった。入り口を少し進んだあたりで警備員に制止された。 「橋本龍太郎さんのご親族の方から連絡があり、『来てくれ』と呼ばれまして」  嘘が口をついて出た。そのまま総合受付の前で待った。野口も私も何も話さなかった。しばらくして、警備員に指示され、エレベーターに乗った。橋本の病室は固く閉ざされていた。その前に橋本の長男が一人立っている。野口が駆け寄っていき、私は遠慮してその場に立っていた。緑の非常灯だけの薄暗いリノリウムの廊下に、二人の影が長く伸びている。野口の黒いシルエットが徐々にうなだれていく。うんうん、と野口が何度も頷いている。二人の会話は聞こえない。すぐその先に橋本がいるのに、そこには野口でも入れなかった。  数日後、富士山の清掃活動中に橋本の訃報に接した。清掃中の野口に私がその旨を伝えると不法投棄されたゴミを片付けながら、「そうか」とだけ言った。  橋本が亡くなってしばらくしてのこと。港区にある寿司屋で居合わせた客と口論になった。野口が橋本の話をしていたのを聞いていたその客が「いや、橋本政権の功罪はちゃんと分けて考えなきゃ」と言ってきた。その客と野口のやりとりを聞いていると、議論としては客観的に見ればその客に軍配があがるものだった。野口の主張は、感情的で冷静さを欠いていた。議論としては完全に負けていた。でも、その完全に破綻した野口の、「論」とはとても言えない感情の発露を見ていて、なぜか私は悪い気はしなかった。  橋本は港区の青山霊園に眠っているが、山をこよなく愛したことからエベレストを望むネパールのタンボチェ村にも慰霊碑がある。野口はヒマラヤ登山の際には、出発前に青山霊園を訪れ、ヒマラヤ入り後はタンボチェ村の慰霊碑を必ず訪れている。 <前編から続く> ○小林元喜 こばやし もときライター。1978年、山梨県生まれ。法政大学経済学部卒業。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。法政大学在学中より作家の村上龍のアシスタントとしてリサーチ、ライティングを開始。『共生虫ドットコム』(講談社)、『13歳のハローワーク』(幻冬舎)等の制作に携わる。卒業後は東京都知事(当時)の石原慎太郎公式サイトの制作・運営、登山家の野口健のマネージャー等を務める。現在に至るまで野口健のマネージャーを計10年務めるが、その間、野口健事務所への入社と退職を3度繰り返す中で、様々な職を転々とする。現在は都内にあるベンチャー企業に勤務。

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    他球団が欲しがる「巨人の中堅2人」 トレードなしで起用も増えず「もったいない」の声も

     現在セ・リーグでBクラスに沈んでいる巨人。新型コロナウイルスの集団感染で多くの選手が離脱して苦しい状況ではあるが、ここからの巻き返しに注目が集まる。そんな中、石川慎吾、重信慎之介と能力的には高く評価されているものの、なかなか出場機会が回ってこない中堅2人が存在する。  選手層の厚いチームという事情もあり、常時出場は難しいかもしれない。加えて、若手への切り替えを図る球団方針もある。出場機会が減ってしまうのは理解できるが、あまりにチャンスが少ない。他球団へ行けばレギュラー争いに加わることのできる実力があると言われているだけに「もったいない」の声も多い。  開幕から調子に乗り切れない巨人はペナント争いで首位から13ゲーム差の5位。先述のようにオールスター前にはコロナ禍の直撃を受け、7月19日からの4日間で首脳陣、選手、スタッフを含め計73人が陽性判定を受けた。  優勝争いは非常に厳しい状況ではあるが、今はチームが若返りの時期でもあり、有望株たちの奮起も期待されている。野手では坂本勇人の後継者と言われる中山礼都、レギュラー定着が期待される増田陸に加え、秋広優人、菊田拡和など有望株は少なくない。一方、投手でも大卒ルーキーの大勢がストッパーとして活躍し、赤星優志、山崎伊織、堀田賢慎など開花の兆しを開幕当初に見せていた将来のエース候補は多い。 「良い素材が多いのは間違いないが中心選手になるには数年かかる。若手の積極起用が苦戦にもつながっている部分もある。編成面も任される原辰徳監督は数年先を考えているのでしょう。オフの積極補強がなかったのを見ても、球団方針として決定事項なのかもしれない」(在京球団編成担当) 「(若手が期待通り成長すれば)将来的に黄金時代が来るかもしれない。しかし巨人は常勝を宿命づけられている球団。ファン、スポンサーなどが(勝てない)現状に対して不満を持っている場合も多い。中堅クラスの実力者をなぜ使わないのかという声も聞こえる。石川、重信はその最たる例です」(大手広告代理店関係者)  数年後を見据えヤングジャイアンツを育成するのはごもっとも。しかし巨人のファン、そしてスポンサーなどは「常に勝利」を求めている。結果を出せる可能性がある実力者を起用すべきとの意見もある。  そして、二軍などで結果を出しながらも「起用されない選手」の筆頭が石川だ。  石川は16年オフのトレードで日本ハムから巨人に移籍。加入1年目となった17年には99試合に出場して、57安打、5本塁打、20打点と存在感を見せたが、それ以降はなかなか出場機会を増やせないでいる。だが、先述のようにファームでは常に結果を残し続けており、一軍で使われないのが不思議な気もするほどだ。 「打撃はレギュラークラス。特に飛距離はトップクラスで逆方向の打球も簡単にスタンドインさせる。東京ドーム外野席上部看板にもバンバン当てています。外野守備も決して悪くなく標準以上でもある。出番は少ないですが確実に仕事をこなせるメンタルの強さもある」(巨人担当記者)  石川は今季もこれまで一軍の出場は13試合と少ないが、打率.353(17打数6安打)とハイアベレージをキープしている。新型コロナウイルスの影響で選手も大量に離脱しており、ここからチームの救世主的な存在となれるのか。  また、石川と同じ外野手の重信も実力がありながら出場機会に恵まれない選手の一人だ。早稲田大時代から安打製造機として知られ、15年のドラフト2位で巨人に入団。即戦力として期待されながらも、なかなかレギュラー奪取には至らず中堅の域に差し掛かっている。 「早稲田の先輩であるヤクルトの青木宣親のような活躍を期待されたが伸び悩んでいる。大学時代の活躍から、将来的にはメジャー挑戦もという声も上がったほどの選手だった。試合に出れば確実に結果を残すが、パフォーマンスが安定しないところもある。チーム編成上の影響もありレギュラー奪取とまではいかない状況が長く続いている」(巨人担当記者)  今のところ巨人ではともに一軍当落線上の選手にはなってしまってはいるが、他球団からの評価も高い。7月31日のトレード期限までに動きはなかったが、「試合に出さないのであれば欲しい」という声も多くあるようだ。 「石川は代打だけでは惜しい。スタメンで4打席立てばシーズン25本塁打は期待できる。重信は実戦タイプで伸び代もまだ感じる。試合に出続け経験を積めば大学時代のような存在感を示すことができる可能性もある」(在京球団編成担当)  これからのチームを担う若い選手を育てなければいけないチーム事情もある。かつての坂本や岡本和真などは若手時代から我慢して使い続けたことで、現在のような確固たる地位を築くことができた。だが、常勝チームがゆえに勝つことも求められる。そうなった場合、やはり石川、重信のような選手も積極的に起用しなければいけないような気もするが……。 「全ては原監督の考え方次第。これだけ苦戦をしても若手中心の起用法に変化はない。今後も同様ならば石川と重信の立ち位置も変わらないので、トレードの可能性も出てくる。2選手との交換でポイントを絞って戦力補強をしつつ若手育成をするのが現実的ではないか」(巨人担当記者)  巨人は今、ピンチを迎えている。球団史上2度目となるシーズン最下位の可能性もでてきた。若手へのシフトも重要だが、目先の1勝も大きな意味を持つ状況になっている。新型コロナウイルスの影響で離脱した選手が多い中で、石川、重信の起用は増えるのか。また、シーズンオフのトレードなど、名門チームでくすぶる中堅2人の今後はどうなっていくのだろうか。

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    たとえ家族でも、無理レベルの限界を超えたら開き直って距離をとって しいたけ.さんがアドバイス

     AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。 *  *  * Q:義母からずっと「これからは共働きが当たり前」と言われ、パートしながらお母さん業をしてきました。が、去年疲れ果て退職しました。「専業主婦は悪」と自分の心をムリに洗脳して働いた結果、心が悲鳴をあげたのです。専業主婦はそんなに悪いですか? 稼がない主婦は、罪ですか?教えてください。ちなみに義母は、まさかの専業主婦です。(女性/専業主婦/45歳/おうし座) A:まずは本当にお疲れ様でした。自分の意思で退職をされたということなので、ステップ1を踏み出されている。素晴らしいことだと思います。  人間には「無理レベル」というものがあります。  例えば、どうしても気が合わない人がいて、「腹は立つけど、この人はそういう人だから」と思えるなら、無理レベルは3とか4。でもこの相談は無理レベルが5を超えている気がしました。  僕はいつも思うんですが、人に「こうすべきだ」ということをよくしゃべる人に限って、自説じゃないことのほうが多いです。自分の頭で考えて、自分の経験値で言ってるわけじゃない。自分が言われて嫌だったことを、受け売りで言っているだけの人もいます。これが赤の他人だったら、bot(ボット)つまり自動再生装置として見てスルーするのも一つの手です。ただ、家族だとそれも難しいかもしれません。  無理レベルが5を超えた時は、距離を取ってください。そうじゃないと自分がどうにかなってしまうから。  距離の取り方について説明したいんですが、第一に強い意思が必要になってくると思います。距離を取ることで、相手の攻撃が激しくなることがあります。「上等だよ」と思わないと戦えない。これはもう「戦」の段階に入っています。そして、一線を越えたのであれば開き直って自分の意思を通していいと思います。旅に出るとか、やってみたかったことをやるとか。外に居場所を作っていきましょう。家庭内の問題と戦うためには、外の味方や居場所が絶対に必要になってきます。  姑(しゅうとめ)との諍(いさか)いは、一般的にずっと昔から繰り返されていることかもしれませんが、これからの時代、形を変えてますます増えていくような気がしています。というのは、ある種、年齢が関係なくなってきているから。「おばあさんはおばあさんらしく」みたいなことをしなくなって、自分の要求を、どの年齢でも強く持つ人が増えています。するとどうしても勢いが強いほうに負けてしまう。だからこそ、自分の幸せや生活を守っていくためには、「戦う手はずを整える」ことがときには大切になってきます。  おうし座は、自分からギブアップしない傾向があるというか、悪に対して付き合ってしまうことがあります。早く辞めればいいのに「この会社がどこまで腐っているか見届ける」ために、そこから7年在籍する人とか。悪に付き合わず、「もう無理」をちゃんと言っても大丈夫です。 ◎しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「VOGUE GIRL」での連載「WEEKLY! しいたけ占い」でも人気※AERA 2022年8月15-22日合併号

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    22時間前

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    小島よしおが「動画とゲームの時間が守れない」という小1男子に伝えたい、約束を守る方法

    「ママと約束したYouTubeとSwitchをやる時間が守れない」という相談を送ってきてくれたのは小学1年生の男の子。数多くの子ども向けライブを開催し、YouTubeチャンネル「おっぱっぴー小学校」も人気の小島よしおさんが子どもの悩みや疑問に答えるAERA dot.の本連載。小島さんは、「大きな約束を守るためには、小さな約束を守ることが大事だ」といいます。 *   *  * 【相談(21)】どうしても、YouTubeを見るのとSwitchをやるのをやめられません。ママと僕で、一日にやっていい時間を決めて約束しても、ママが見てないとすぐやりたくなって、やってしまいます。ママは怒るから、その時は僕もとても悲しい気持ちになるけど、どうしてもやめられません。約束を守る強い気持ちを持つには、どうしたらいいのでしょうか?(がんばりたいぼく・小学1年生・男子) 【よしおの答え】 すっごくわかるなあ、その気持ち! やめたくてもやっちゃうことってたくさんあるよね。SNSやスマホゲームもそう。よしおも、よしおの周りの友だちも、大人になってからもずーっと悩んでいるよ。「スマホ金庫」っていう、スマートフォンを一定の時間触れないようにする道具も売られているくらい。大人でも「やめないといけないのにやりたくなっちゃう」っていう気持ちをおさえるのは難しいんだ。  君の相談を読んで、「なんて正直なんだ……!」ってよしおは胸を打たれたよ。「ママが見てないとやっちゃう」ってこと、正直に話してくれてありがとう。約束を守る強い気持ちを持ちたい、っていう目標を持っていることも素晴らしいね。大人でも難しいことだから、どうしたら目標が達成できるのか、よしおと一緒に考えてみよう。 ■大人でも、スマホがやめられない  よしおが大人になってからの話なんだけど、スマートフォンを触ることがやめられなかった時期があるんだ。SNSを見たり、ネットサーフィンをし続けたり……。「あ~、俺スマホ依存だな、やめなきゃな」って思っているのに指が動いてしまう。これはいよいよまずいぞ、って思ってどうしようか考えたんだ。  スマホって、目に入ってくると何も考えずに触ってしまうから「スマホを見えない場所に置こう!」って思い立った。それで、家に帰ったらスマホは玄関に置くようにしたんだ。そうすれば次に家を出るときまで目に入ることはないからね。玄関じゃなくても、自分の手の届かない場所に置くだけで見る機会はグッと減ったよ。  Switchなら、ママに君が捜せない場所に置いてもらう、ってこともできるのかな? それが難しければYouTubeやSwitchのない環境に自分が行くということもできるかも。図書館とか公園とかね。「約束を守る強い気持ちを持つ」という目標とは少し違う方法かもしれないけど、「YouTubeやSwitchから少し離れる」っていう一時的な効果は期待できるかもしれないね。  よしおが子どものころも、テレビとゲームがやめられなくて君と同じように時間が決められていたよ。テレビとゲームの時間を合わせて1日30分だったかな。だけど、時間いっぱい使わなければ次の日に持ち越せる、っていうルールがあったんだ。たとえば、今日テレビとゲームの時間が20分だったら30引く20で、次の日の10分持ち越せるんだ。そうすると、次の日は10足す30で40分できるっていうルール。  それを、表を作って書き込んでいた。そうすると、不思議なことに今度は時間をためるのが楽しくなって、全くテレビを見なくなって、ゲームもしなくなったんだ。気づいたら1000分とかたまっていたよ。結局この1000分は使わずに終わったけどね(笑)。この方法が成功した理由は、クリアしたことを目に見える形に残していたからなのかな、って思う。  お兄ちゃんと一緒の表だったんだけど、自分のところにクリアの証拠が残るのがうれしかったんだ。ただひとつ、落とし穴があった。手書きの表だったから、途中で終わっちゃってね……。その途端、ルールは崩壊。またテレビとゲームをやめなきゃいけないのにやっちゃう生活に戻ったよ(苦笑)。  だから、表を作るときは必ず途切れないように要注意! ママと一緒に、途中で切れない表を作ってみるといいかも。それを目に見える場所に貼っておけば、達成感も得られるからおすすめだよ。 ■勉強やお手伝いでYouTubeの時間をゲット  そもそも、どうしてYouTubeやSwitchの時間が決められているのかな? 姿勢や目が悪くなるっていうことを心配しているのかもしれないけど、もしかしたら君のママは勉強やお手伝いの時間が減っちゃうことを心配しているのかも。君も、YouTubeを見ながら「あ~、勉強しないとなあ」って思うことはないかな?  もしそうだとしたら、YouTubeやSwitchの時間じゃなくて、勉強やお手伝いの時間を決めて、それをクリアしたら見てもOKっていうルールにするのはどうかな。「○○しちゃダメ」っていうのは、逆にしたくなっちゃう不思議な言葉かもね。「ぜったいに○○しちゃダメ」っていう、世界で大人気の絵本のシリーズもあるんだよ。浦島太郎も、竜宮城で乙姫から「開けちゃダメ」って言われてもらった玉手箱を開けちゃったでしょ。 「YouTubeは30分しか見ちゃダメ」っていう約束が君には少し窮屈なのかも。ママと相談して、「○○しちゃダメ」っていう言い方を少し変えてみることにチャレンジしてもいいかもしれないね。「勉強した分だけYouTube見てもOK」とかね。そうすれば、YouTubeを見ているときも、「勉強しなきゃ」っていう気持ちがなくなるからいつもより楽しく見られるかもしれないよ。 ■小さな約束をコツコツと  ここまではYouTubeやSwitchを見ない・しない方法や、具体的にやってもいい時間をどう守るのか、ということを考えてきたね。最後に、「約束を守る強い気持ちを持つ」方法を一緒に考えてみよう。  何かに挑戦するとき、いきなりハードルを上げてしまうとなかなかクリアできなくて心が折れてしまう。最初に話したように、君が挑戦しようとしていることは、すっごく難しいことだ。だから、あきらめてしまいやすい。たとえば、「靴を脱いだらそろえる」って言う約束だったらどうだろう。  大きな約束を守るためには、小さな約束を守ることをコツコツ積み上げて練習することが大事だと思うんだ。「またYouTubeみちゃった」「ママに隠れてSwitchやっちゃった」ってことが積み重なると、自分で自分のことがいやにもなっちゃうよね。いま君が守ろうとしている約束は大人でもなかなか守れないものだから、いまはできなくて当たり前だと思うんだ。  だから、まずはママと小さな約束をしてそれを守る練習をしてみるのはどうだろう? 「朝起きたら布団を畳む」「帰ってきたら宿題を机の上に出す」とか。クリアできる約束事のハードルは人それぞれ違うはずだから、あくまで自分が守れそうなものを考えるのがポイントかな。自分だけで考えるのはなかなか難しいと思うから、ママにも手伝ってもらうといいよ。  いま、約束が守れなくてママは怒って君は悲しい気持ちになっているよね。小さな約束事でも、守れたらママと一緒に喜べるはず。それが積み重なれば、約束を守る気持ちも、どんどん強くなっていくかも!  ここまでいろんな方法を提案してみたけど、どうだったかな? 少しでも君の力になれたらうれしいな。ちなみに、君はどんなYouTubeチャンネルを見ているんだろう。動物のことが学べたり、勉強につながったりすることだったら、もしかしたらママは許してくれるかも(笑)。おもしろくてためになるチャンネルがあったらよしおも知りたいから、見つけたらぜひ教えてね!  ……って、僕は思うんだけど、君はどう思うかな? (構成/濱田ももこ) 【質問募集中!】小島よしおさんに答えてほしい悩みや疑問を募集しています。お気軽にお寄せください!https://dot.asahi.com/info/2021100800087.html

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    13時間前

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    室井佑月「これ以上、裏切るな」

     作家・室井佑月氏は、旧統一教会と自民党との関係について、国として徹底的に調査すべきだと指摘する。 *  *  *  自民党の福田達夫総務会長は記者会見で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党所属議員の関係について聞かれ、 「何が問題なのか、僕はよく分からない」  と答えた。  教団の関連団体が開催したイベントで実行委員長を務めていた自民党の二之湯智・国家公安委員長は、会見でこのことを問われると、 「ちょっと名前を貸して欲しいというので貸した。よく知らない」  と答えた。  茂木敏充幹事長は、教団が「社会的に問題が指摘される団体」とした上で、「自民党として組織的関係がないことをしっかり確認している。党としては一切、関係がない」と答えた。  岸信夫防衛相は、 「付き合いもあるし、選挙の際に手伝ってもらっている」と述べ、 「(選挙の際、手伝ってもらうのは)あくまでもボランティアという形なので、次の選挙でどうなるかはお答えできない」「選挙なので支援者を多く集めることは必要なことだと思う」  木原誠二官房副長官は、公明党の北側一雄中央幹事会会長が、旧統一教会を「反社会的な団体」と指摘したことを受け、「反社会的勢力という言葉をあらかじめ限定的、統一的に定義することは困難であり、答えを差し控えたい」と答えた。  なんだか絶望感が酷(ひど)くなる。政権与党で、教団と関わりを持っている議員が多く、日本のなにかを決める中心にいる人たちがこれか。  全国霊感商法対策弁護士連絡会の発表によると、被害総額は35年間で1237億円。でも、これは洗脳が解け、被害を届けられた人の損害だ。安倍元首相を銃撃した山上の母のように、1億円もの献金をし、破産をしても、まだ年金まで差し出す信者もいる。なので被害額として出された1237億円は氷山の一角、実態は1兆円を超えるのではないか、といっている専門家もいる。  日本史上、最大の消費者被害だ。宗教を隠れ蓑(みの)にした詐欺ということであれば、世界史上最大かもしれない。  日本の政治家が、危ない反社会的な集団と関わりを持ち、イベントにまで出て賛辞を送り、結果、教団の広告塔になることが問題なのだ。 「知らなかった」で済まされる問題ではないし、 「何が問題か分からない」という開き直りが許されるわけもない。  まして、「党として関係がない」などとはいえないはずだ。教会のダミー団体の人を、安倍さん主催の「桜を見る会」に招待していたではないか。  政権与党である自民党こそ、この件を国として徹底的に調査し、膿(うみ)を出し切る姿勢を見せるべきだ。これ以上、国民を裏切るな。 室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中※週刊朝日  2022年8月19・26日合併号

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    安倍元首相銃撃事件でジャーナリスト・青木理氏が感じた「不気味な兆候」とは

    安倍晋三元首相が選挙演説中に銃撃され、死亡するという前代未聞の事件から一夜が明けた。犯行の動機や背景はいまだ謎に包まれているが、「安倍三代」(朝日新聞出版)の著書があるジャーナリストの青木理氏は今回の事件をどう捉えたのか。緊急インタビューした。 *  *  * まず大前提として、どのような政治信条があろうと、その政治家にいくら批判があろうと、今回のようなテロを断じて容認することはできません。改めて言うまでもないことであり、問題はその先にあります。  そのうえで元首相が凶弾に倒れた衝撃的な事件を考えると、これはやはり不気味な兆候と捉えるべきなのか。だとすれば、なんとしてもそれを押しとどめる必要があります。  昨年亡くなったノンフィクション作家の半藤一利さんと生前対談した際、半藤さんが「社会が戦争に向かう危険な兆候」をいくつか挙げていたのを思い出します。(1)被害者意識と反発が国民に煽られる、(2)言論が不自由になる、(3)教育が国粋主義に変わる、(4)監視体制が強化される、(5)ナショナリズムが強調される、そして(6)テロの実行が始まるーー。  当時は重大テロなど起きていませんでしたが、その他の要素はかなり揃ってしまっているのではありませんか、と尋ねる私に、半藤さんはこう即答しました。「ええ、しかもそのスピードは戦前より速い」と。  私もそうですが、昭和史の探索に生涯を捧げた半藤さんは、皮相なナショナリズムや排外的風潮が強まる昨今のこの国の政治を危ういものと捉え、強く憂いていました。今回はそうした風潮を煽る側だった元首相がテロの凶弾に襲われたわけですが、それはいったいなぜだったのか。現時点では判然とせず、犯行の動機や背景の解明を待つしかありませんが、少なくとも半藤さんのいう「危険な兆候」の最後のピースを埋めてしまうような結果につなげるわけにはいきません。  ですから、今回のテロに政治やメディアは決して萎縮せず、と同時に犯行の動機や背景の解明を急いでそれと向き合い、テロの土壌となった課題や問題点が浮かびあがったなら、その改善に全力で取り組むべきでしょう。  拙著「安倍三代」でも記しましたが、安倍氏は少なくとも政界入りする前の青年時代には、強い政治信条や信念を持っていた形跡はまったくありません。母方の祖父である岸信介氏に強い敬慕の念を抱いているようでしたが、しかし戦前に特高警察に抗った父方の祖父・安倍寛氏のような胆力や反骨心、あるいは戦中に特攻隊を志願しながら生きながらえた父・安倍晋太郎氏のような歴史観もバランス感覚もなく、名門政治一家の跡取りとして生を受けた“おぼっちゃま”にすぎないという印象を持ちました。  これは妻の昭恵さんも言っていましたが、その期待に応えるため、自らが描く偉大な政治家像を「演じていた」側面もあったでしょう。そんな安倍氏は、首相として7年8カ月という歴代最長政権を成し遂げましたが、客観的に見てそれに見合う“レガシー”を遺したとはいえません。だから首相退任後も影響力を保持しようと躍起になり、自らの政権を否定するような動きには公然と横槍を入れたのかもしれません。  その振る舞いは見苦しいものだったと私は思いますが、そうした途次、しかも重要な国政選挙の最中、まさかこのような形で命を奪われるとは、誰一人として想像していなかった。凶行の動機や背景に重大な意味が潜んでいるのか、それとも突発的で政治的背景の薄い単独犯なのかはともかく、首相の座を目前にしながら病に倒れた父・晋太郎氏と同じ67歳で世を去ったことに、奇妙な符合のようなものも感じます。  繰り返しますが、今回のようなテロは決して容認できません。ただ、人の衝撃的な死は、時にすべてを一色に塗りつぶしてしまいかねない力を持ちます。過去は美化され、冷静な批評や批判を許さない風潮にも覆い尽くされてしまう。それもまた極めて危険なことであり、今回の事件をそういう意味での社会の“曲がり角”にしてもならず、安倍氏の政治姿勢や政治手法がもたらした「功罪」の「罪」がなんであったかも、あらためてきちんと見つめ直されなければならないと思います。  また、今後は「テロ対策」などが声高に叫ばれることも予想されますが、それを契機として例えば警察による監視体制ばかり強まれば、それもまた自由な社会を窒息に追い込んでしまいかねません。投票日が目前に迫った参院選を「弔い合戦」のように矮小化することも避けるべきです。元首相の死を悼むことと、政治への評価は分けて考えなければならない。そのためには、まさに言論の砦たるメディアとメディア人の役割が問われています。(構成=AERA dot.編集部・作田裕史)

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    【後編】元女性自衛官が「性暴力」を告発した理由 「セクハラを“なかったこと”にするのが許せなかった」

     元女性自衛官の五ノ井里奈さん(22)が、訓練中に受けた性暴力をYouTubeなどで告発して話題となっている。五ノ井さんは、「セクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、AERA dot.の単独インタビューに応じた。「前編」では具体的な性被害の実態を詳述したが、「後編」では五ノ井さんが自衛隊を志した理由、セクハラを受けてもすぐには辞職せず、今回の告発に踏み切った思いなどを聞いた。 ※「前編」より続く。 *  *  * 宮城県東松島市出身の五ノ井里奈さん(22)は、小学4年生の時に東日本大震災に見舞われた。小学校にいる時に被災し、学校の1階部分は津波で浸水した。五ノ井さんたち児童は2階に逃げて無事だったが、避難所生活の後、母親と再開できたのは1週間後。家に戻ると、1階部分は津波に流され、室内で飼っていた愛犬2頭が亡くなっていた。散り散りに避難していた父親と兄2人とも再会し、その後は公民館で避難生活を送った。  この時、災害支援に来てくれたのが女性自衛官だった。 「女性自衛官がお風呂を造ってくれたり、お風呂上がりには腕相撲をしたりして、遊んでくれました。私は小さい頃から柔道のオリンピック選手を目指していたので女性自衛官にそのことを伝えると、『柔道は続けたほうがいいよ。頑張ってね』と応援してくれました。私にとって憧れの存在でした。この時から、いつかは陸上自衛隊に入りたいと夢を抱くようになりました」(五ノ井さん)  11年たったいまでも、女性自衛官と連絡を取り合って、感謝の言葉を伝えているという。  公民館で3カ月過ごした後、五ノ井さん一家はアパートに移った。しかし、小学6年生の時に両親は離婚。がんの治療中だった母親が、3人の子どもを女手ひとつで育てることになった。  五ノ井さんは、中学・高校と柔道で全国大会ベスト16の成績を残し、山口県にある大学に進学する。だが自衛官への夢が捨てきれずに中退。自衛隊体育学校の柔道部に入って、オリンピックを目指すことにした。好きな柔道を続けながら、自衛官アスリートへの道を切り開こうとしたのだ。  2020年4月、晴れて陸上自衛隊に入隊する。だが、「前編」で記したように、配属された東北方面の中隊では日常的にセクハラをされ、ひどい性暴力を受けた。五ノ井さんは次第に追い詰められていく。 「常にセクハラはあったので、受けている方も感覚がまひしてしまうんです。外ではアウトなことも、自衛隊内ではセーフになってしまう雰囲気がありました。男性隊員は、コミュニケーションの一部だと解釈していたようです。その意識を改善させることはほぼ不可能です。結局は、被害を受けた女性隊員がいなくなるしか解決策はないんですよね。私も自分で自分の身を守るためには逃げるしかありませんでした」  五ノ井さんは、2021年8月に複数の男性隊員から受けた性暴力を機に、休職することになった(被害の詳細は「前編」参照)。精神科医からは、適応障害と診断され、3~4カ月分の薬が処方された。 「憧れていた自衛官になるという夢を失い、どん底でした。先の見えない生活に絶望して、好きな柔道もできなくなりました。震災の時に助けてもらった女性自衛官みたいになりたくて入隊したのに、内部ではあんなにひどい実態があるなんて思ってもいませんでした……」  精神的に追い詰められ、何度も自死を考えた。覚悟を決めた今年の3月16日深夜、思いがけないことが起こった。 「ベッドの上に正座して、よしっ、と決断した時に、震度6強のすごく大きな地震がきたんです。その時、思いました。ああ、ここで死んではいけない。地震のせいで、生きられなかった人がいるのに、自分は何をしているんだろうって」  東日本大震災の記憶がよみがえり、五ノ井さんは自死を踏みとどまった。「どうして被害者が泣き寝入りして苦しまなければならないのか。性暴力に負けてはいけない」と組織と闘うことにした。  昨年8月に受けた性暴力について、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。今年5月末に不起訴処分になったが、現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。  この不起訴処分に関して、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」副理事長の伊藤和子弁護士はこう疑問を呈する。 「圧倒的に男性が多い自衛隊のような閉ざされた空間で性暴力が起きると、『見ていない』と口裏を合わせる可能性があります。今回はどうだったのか。加害者が何人もいる場合、供述に矛盾が生じることがあります。一貫して細部まで同じことを言っているのか、そうでないのか。すべて同じであれば、口裏合わせをしている可能性もあるでしょう。丁寧に供述の評価が行われたのか疑問の余地が残ります」  不起訴後、五ノ井さんが検察官にその理由を尋ねると「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない(という供述だった)」と説明されたという。ただ、伊藤弁護士は、首に手をかけて押し倒している時点で暴行罪を問うことができるとも指摘する。 「少なくとも押し倒した所を見ている人がいたわけですから、立件すべきです。なぜ検察は暴行罪で起訴しなかったのかも非常に疑問です」  たとえ刑事事件で起訴されなかったとしても、民事裁判でハラスメントが認定されることもある。伊藤弁護士は「第三者委員会を立ち上げて、構造的な問題を調査する必要がある」と話す。 「男性隊員が女性隊員に対して、首に手をかける技をかけていること自体がハラスメントであるという認識があるのか否か。私的な生活の中で起きた出来事なのか、訓練中の行為なのか。訓練と称したハラスメントではないのかなど、さまざまな疑問が浮かびます。ハラスメント行為があれば処分に値する問題なので、組織としてきちんと調査をするべきです」  最後に、五ノ井さんは実名と顔出しで告発に踏み切った理由をこう話す。 「内部に残る自衛隊員から『なかったことにしようとしている』と聞きました。隠蔽(いんぺい)です。ここでなかったことにしたら、これから被害者がもっと増えてしまう。セクハラをしている人は、今でも普通に隊にいて、また新しい女性隊員が入ってきた時に同じことが起こります。それだけは阻止したい。あとは、謝罪がほしいです。その一心で声をあげようと決意しました」  五ノ井さんの悲痛な思いは、自衛隊員たちに響いているのだろうか。(AERA dot.編集部・岩下明日香)

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    元自衛官・五ノ井里奈さんが議員からのヒアリングで性被害を告白 長妻昭議員「一気に膿を出して真っ当な自衛隊へ」

     立憲民主党は8月10日、自衛隊内で受けた性被害について第三者委員会による公正な調査を求めている元自衛官の五ノ井里奈さん(22)からヒアリングを行い、防衛省人事教育局服務管理官等と非公開の意見交換を実施した。議員からは「軽い懲戒処分でお茶を濁すことはあってはならない」と、防衛省に厳正な対応を求める声が上がった。 ※AERAdot.はその被害について、7月14日に配信した記事<<22歳元女性自衛官が実名・顔出しで自衛隊内での「性被害」を告発 テント内で男性隊員に囲まれて受けた屈辱的な行為とは>>で詳報している。 *  *  * 「複数の男性隊員が見ていて恥ずかしくて、嫌だったので抵抗したのですが、男性隊員の力にはかないませんでした。もう逃げられないと思ったので、諦めて、ただ終わるのを待っていました。その時、横にいた上司2人は(その様子を見て)確実に笑っていました……」  五ノ井さんは、集まった多くの議員やメディアの前で、2021年8月3日の訓練中に受けた性被害の状況を、そう告白した。  今回のヒアリングでは被害後の自衛隊側の対応について話した。まず、被害後、自衛隊の総務・人事課にあたる「一課」に報告。一課長が部隊に対して取り調べをしたところ、「(21年)8月の件については証言が出てこなかった」とされたものの、「今までのセクハラの件については証言があった」と、日常的なセクハラを認めたことを五ノ井さんは明かした。その後、五ノ井さんは、警務隊に強制わいせつ事件として被害届を提出し、9月18日に人形を使った現場検証を行った。  五ノ井さんはこう話す。 「この時、『訓練があるので、すぐには該当の人物には取り調べができない』と警務隊に言われ、(捜査が)1カ月ほど長引いていました。その1カ月だけでも、記憶が段々薄れていくと思いました」  検察庁から結果の知らせが来るのを待っていたが、連絡は来なかった。時間の経過だけでなく、事件として立件されているのか不安が募った五ノ井さんは、22年4月に検察庁に連絡した。 「いつ書類送検されたのかを聞くと、『今年(2022年)に入ってから』と言われました。検察官からは、『五ノ井さんの証言は正しいと思うけど、もし(部隊の)20人が見ていない、やっていないと言ったら、難しくなってくる』とも言われました」(五ノ井さん)  そして5月31日、嫌疑不十分で関係者は不起訴処分になった。五ノ井さんは追加の証拠を伴い、6月7日付で検察審査会に再審査を申し立て、現在その結果を待っている。  ヒアリングのあとの質疑応答では、ハラスメントの相談窓口が自衛隊にあるかを問われた。  五ノ井さんによると、入隊してすぐに受ける前期教育では専門家によるセクハラ・パワハラに関する教育があり、相談窓口もあることを知っていたという。  だが、五ノ井さんは、被害を相談しなかった。 「理由は、(相談しても)動きが遅いから機能しないということを、周囲から聞いていたので、被害にあった時に相談しようとは思いませんでした。自衛隊は上下関係の社会なので、下の階級は順序通りに、一つずつ上の階級に報告しなければなりません。階級を飛び越えて、上に相談すると、後から問い詰められます。結局、部隊の中で、一つ上の階級の人に言ったところで、揉み消されて終わってしまいます」(五ノ井さん)  ヒアリングを行った立憲民主党・長妻昭議員は、7月に2回、防衛省に対して厳正な調査を文書で要請していた。防衛省人事教育局服務管理官からの回答には、「本件につきましては、部隊において揉み消しを行っているなどの疑いも指摘されていることから、客観性・公正性を確保するため、当該部隊ではなく、その上級部隊において調査を行っています」とあった。  この回答について、長妻議員は言う。 「防衛省の文書に『揉み消し』と書いてある。これは非常に深刻だと思います。危惧されるのは、懲戒処分にもいろいろな段階があり、軽い懲戒処分を年明けくらいに出して、それでお茶を濁すこと。これは絶対にあってはならないと思います」  五ノ井さんの告白後、同様に被害にあっている自衛隊員からも声が上がってきていることを受け、長妻議員は「ここで、一気に全部の膿を出し、まっとうな組織に変える思いで取り組んでいきたい」と語気を強めた。弁護士を含めた第三者委員会による調査を行い、自衛隊内に蔓延るハラスメント被害の全容を明らかにしていくべきだと、訴えた。  外交防衛委員会の小西洋之議員は、防衛省に「性暴力委員会」を設置するなど、再発防止策について検討したいと話した。  最後に、五ノ井さんは「自衛隊を批判したいわけではない」として、ヒアリングの場にいた防衛省の担当者にこう投げかけた。 「私は東日本大震災に遭い、陸上自衛隊の方に助けていただいたことを本当に感謝しています。だからこそ、こういう被害を経験して、本当に残念でした。このままでは、また同じ被害者が出ると思います。かつて同じ中隊で働いていた女性隊員が、今でも私と同じように被害にあっているという証言が出ています。第三者委員会による徹底的な調査と、厳正な処分、謝罪を望みます。もっと女性隊員が安心して勤務できる環境を作って欲しいと思います」  第三者委員会による公正な調査を求めるオンライン署名(Change.org)は、67903人(8月10日時点)集まり、賛同の輪が広がっている。署名は8月末まで集め、防衛大臣に提出する予定だ。署名と同時に「自衛隊内におけるハラスメントの経験に関するアンケート」も実施している。9日までの中間結果では、自衛隊に所属した経験がある人がハラスメントを受けた件数は99件だった。そのうち59人は女性で、8割以上がセクハラおよびマタハラを受けたと回答した。  Change.orgによると、ハラスメントの具体例は60人以上から自由記述による回答があった。一部を抜粋する。 「2019年頃、2年間だけ陸上自衛隊でした。入隊してすぐの訓練で日本酒を一気飲みさせられました。『上司からもらったお酒を残すな』と言われました。その時、私は18歳でした」(20代、陸上自衛隊、女性) 「妊娠初期の頃、当直勤務をしていたのですが、上司から『妊娠しても5カ月までは当直についてもらわないとね』と言われました。4日間の当直勤務明けに体調が悪くなりました。その影響でメニエール病を発症し、今でも治療を続けています」(20代、陸上自衛隊、女性) 「防大の指導官に、任官の不安を相談した際に『自衛隊は男ばっかりだから、より取り見取りだぞ。たくさんやって、いい男を見つけて子どもを産めばいいぞ。女は使えないけど、チヤホヤされるからとりあえず任官してみろ』と言われた。また、寝室に侵入され、下着を盗まれた際には、盗まれるような思わせぶりな態度をとるのが悪いと言われた」(20代、防衛大学校、女性) 「2014年頃着隊して、初めての泊りがけの宴会で、男性先輩方が盛り上がり、浴衣を脱がせ合う流れになり、『お前も脱げよ』と腕を引かれて、やり玉にあげられそうになった。私が持参していたカメラで、いつの間にか男性隊員たちがお互いを取り合っていた。データは絶対に見たくなかったので、当時の先任に渡して消去してもらった」(20代、航空自衛隊、女性) 「PKOの参加希望について先輩と話した時、『お前みたい(背が低くて力が無い)のは、性処理要員にしか使えないから無理(笑)』と言われ、フォローのつもりか『PKOに連れて行くのは、間違いがないようにブスしか連れていけない(笑)』などと言われたことがある」(40代、航空自衛隊、女性) 「私は男性ですが、隊内浴場で同性愛者の男性に身体の関係を持ち出されました。他にも、浴場で身体を洗っている時に同じ小隊の男性自衛官に陰部を身体に押し当てられました。その時は、嫌とは言えず、笑って誤魔化しましたが、いま考えるとありえないことだし、自衛隊はチームワークが大切なので、こんなことあってはならないです」(20代、陸上自衛隊、男性) 「後期教育隊で、清掃の時間に班長に清掃終了の確認をお願いしたところ、『指摘事項が見つかったら、1枚ずつ服を脱げ。脱ぐ服が無くなったら、下の毛を班員に抜かせる』と言われました。指摘事項が服の枚数を超えたため、それが実行されました」(20代、陸上自衛隊、男性)  五ノ井さんの勇気ある告発は、多くの被害体験者に声をあげることを促しただけにとどまらない。この先、高い志を持つ有能な隊員や、将来のなり手を守ることに、大きく貢献するはずだ。(AERA dot.編集部・岩下明日香)

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    うるさい「高圧的な相手」を一瞬で黙らせるすごい一言

    「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 本稿では、本書より内容の一部を特別に公開する。 猛烈に怒鳴り始めた相手  あるとき、となりの部門のSと私の部門のMが、オフィスの廊下で激しく言い合っていた。 私はMの上司として、両名とSの上司に対し、会議室で話をはっきりさせましょう、と声をかけた。  みんなで重い足取りで会議室へ入っていったとたん、たがが外れたように、SがMと私に向かって、猛烈な勢いで怒鳴り始めた。  私は上司として仲裁すべき立場だったが、あまりの権幕に度肝を抜かれてしまい、まともにものを考えられなくなってしまった。無意識に自分を守ろうとして、脳内の防衛機制が働いたかのようだった。  目の前で破裂している感情の爆弾から、身を守らないと……。だが、会議室に逃げ隠れできる場所などあるはずもない。  私はただ突っ立って、耳を傾けるしかなかった。Sは相変わらず延々と集中砲火を浴びせ、私に口をはさむ隙も与えなかった。  あまりにも非理性的な振る舞いをこれでもかと見せつけられているうちに、Sには本当に言いたいことなどあるのだろうか、ただ怒りをぶちまけて、ストレスを発散したいだけなんじゃないか、と思えてきた。 冷静な一言で「現状の確認」をする  私はSがマシンガンのごとく怒鳴るのをやめるまで待ち、Sの上司のほうへ顔を向け、落ち着いた口調で言った。 「すみません、それでいま、いったいどういう状況なんでしょう?」  あとから聞いたことだが、まさに私のこの発言によって、その場の空気が一変したらしい。  それまでずっと、Sは人を見下した態度で、私のことを非難し続けていた。  だが私はこのひと言で、穏やかながらきっぱりと、ふたつのことを伝えたのだ。  第一に、この状況について、落ち着いて説明すべきなのはマネージャーであり、みんなで大騒ぎして怒鳴り合ってもしかたないこと。  第二に、感情をぶつけてもかまわないが、最終的には理性的に話し合わなければならないことだ。  実際には、あのときの私はそこまで考えていたわけではない。Sのあまりの権幕に茫然としてしまっていた。  だが私の発言によって、Sの上司は、部下にこれ以上好き勝手に怒鳴らせていては、どうにもならないと気づいたのだ。  こうしてやっと普通のやりとりができるようになると、私にも、ことの次第が理解できた。そして、問題の核心もつかめた。メールの文面の解釈がそれぞれ違っていたことが大本の原因だった。  そこで、私は個別のやりとりで行き違いが生じるのを防ぐために、グループ間でやりとりする方法を体系化するなどの改善策を提案した。  こうしてやっと、事態は無事に収拾した。(中略) 焦らずに、参戦をちょっと遅らせる  相手の怒りに対し、こちらも応酬しなければ、とあせる必要はない。どうあがいても、そういうのは内向型の得意技ではないからだ。  まずは落ち着いて、直接対決を遅らせよう。そして、相手の立場からも問題を考えてみる。たとえば、自分なりに状況を分析してみるのだ。 「彼は私の上司。激怒しているけど、なんでいきなりキレたのか。誰かがへまでもやらかした? 私はべつに、地雷を踏むような真似はしてないよね?」  そうやって、相手の感情や行動の理由をあれこれ想像していると、解決の糸口が見えてくる。  直接対決のタイミングを遅らせるのは、内向型にはかなり役に立つ。  もし相手が一方的に怒鳴り続けていても、無理して反論したり、あわてて説明をしたりする必要はない。相手がついに黙るまで怒鳴らせておけば、こちらは考える時間を稼げるというものだ。  もし早急な対応が必要で、相手から即答を求められたら、できる限り時間稼ぎをしよう。  たとえば、こんなふうに提案する。 「お求めの情報がいま手元にないのですが、すぐに手配します。〇〇部の責任者に関連情報をまとめさせ、20分後にあらためてご連絡します」 (本原稿は、ジル・チャン著『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』からの抜粋です) ジル・チャン(Jill Chang)ミネソタ大学大学院修士課程修了、ハーバード大学、清華大学でリーダーシップ・プログラム修了。ハーバード・シード・フォー・ソーシャル・イノベーション、フェロー。アメリカの非営利団体でフィランソロピー・アドバイザーを務める。過去2年間で行ったスピーチは200回以上に及ぶ。15年以上にわたり、アメリカ州政府やメジャーリーグなど、さまざまな業界で活躍してきた。2018年、ガールズ・イン・テック台湾40アンダー40受賞。本書『「静かな人」の戦略書』は台湾でベストセラー1位となり、20週にわたりトップ10にランクイン、米ベレットコーラー社が28年の歴史で初めて翻訳刊行する作品となり、第23回Foreword INDIES「ブック・オブ・ザ・イヤー」特別賞に選出されるなど話題となっている。現在は母国の台湾・台北市に拠点を置きながら、内向型のキャリア支援やリーダーシップ開発のため国際的に活躍している。Photo: Wang Kai-Yun 神崎朗子翻訳家。上智大学文学部英文学科卒業。訳書に『やり抜く力』『NEW POWER』(ともにダイヤモンド社)、『スタンフォードの自分を変える教室』『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』『フランス人は10着しか服を持たない』『FOOD ANATOMY 食の解剖図鑑』(以上、大和書房)、『食事のせいで、死なないために』[病気別編][食材別編](ともにNHK出版)、『存在しない女たち』(河出書房新社)、『花の子ども』(早川書房)などがある。

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    クロちゃんの望む結婚相手の条件がハードル高すぎた「リビングと寝室に監視カメラが付いてても平気な人」

     安田大サーカスのクロちゃんが、気になるトピックについて"真実"のみを語る連載「死ぬ前に話しておきたい恋の話」。今回のテーマは「独身」。後輩芸人やタレントの結婚のニュースが報道されるたびに、SNSで「ズルいしん!」とつぶやくクロちゃん。「結婚したい」という気持ちは相当強いようだが、ふとした瞬間に「独身」の気楽さに気づかされることもあるという。結婚したい?それとも独身でいたい? クロちゃんの本音とは。 *  *  *  今年でボクは46歳になる。もう独身生活も長いから、「そろそろ結婚したい」とは常日頃から思っている。結婚に対して特別焦りを抱いているってわけではないんだけど、周囲に「クロちゃんはやっぱりモテないんだな」って思われてそうなのはちょっと嫌だね。なるべく早く結婚はしたいけど、実際コロナの影響もあって、新しい出会いもなかなか生まれにくい状況だから、あと3年くらいは厳しいだろうなと覚悟はしている。こればっかりは先が読めないから仕方ないよね。  ただ、最近は、独身生活も気楽でいいなって思うことも正直、増えてきた。  一時期は「結婚したい結婚したい」っていろんなメディアでしつこくいってきたから、矛盾しているような発言なんだけど、独身って、やっぱり自由でいい。  例えば、日常生活でいえば、靴下や洋服を脱ぎっぱなしにしても、ゴミ出しを忘れていても、使った食器類をシンクに何週間も放置していても、誰にも怒られない。  お金だって、全部自分のために使ったっていい。ボクは昔からギャンブルが大好きだけど、結婚したら、奥さんにギャンブルを制限される可能性もある。それは正直困る。ボクとギャンブルはもう20年上の付き合いなんだから、そんなに簡単には生活は変えられない。結婚すると、お金の管理を奥さんにすべて任す人もいるみたいだけど、ボクは絶対嫌だ。だって、それって、ほんとうに信用できるのかな。だって、きちんと管理しているかなんて分からないよね。毎日、チェックするわけにもいかないし。ひょっとしたら、夫にバレないように、ブランドもののバッグやアクセサリーを買い漁っているかもしれない。もし、ボクが奥さんの立場だったら、絶対買い漁るからね(笑)。ボクは、お金の管理はされたくない。  結婚式に関しても、ボクは挙げたいなんてまったく思わないんだ。奥さんのためにやってあげたほうがいいっていう意見は理解できるけど、めちゃくちゃ面倒くさそうでしょ。結婚式に誰を呼ぶか呼ばないか、誰をどんな席順にしようか、そんな細かいこといちいち考えなきゃいけないなんて、想像しただけでもゾッとする。奥さんがボクの代わりに全部細かいことを決めてくれたらいいんだけど、そういうわけにもいかないだろうし。もうボクは、プライベートでも仲の良い、たかみな(高橋みなみ)と菊池(ワンワンニャンニャン)とサンミュージックの大関さんさえ、出席してくれたら別にいいからね。あと、結婚式って、花婿が花嫁より目立っちゃいけないみたいな風潮もあるでしょ。あれも、ボクはあんまり納得ができない。ボクも可愛い服とかけっこう好きだから、華やかな衣装とかたくさん着て、みんなに「可愛い」とか言ってもらいたい。せっかく苦労して、結婚式をあげたって、目立っちゃいけないとかいわれるんだから、結婚式なんかに前向きにはなれないよね。  あと、結婚したら、住む場所も変えなきゃいけない可能性だってある。奥さんがタワマン住みたいとかいい出すかもしれないし。以前、この連載でも伝えたけど、ボクは引っ越しが大嫌い。これもとにかくめんどくさい。引っ越しのために、いろんなものをダンボールにつめて、家具の配置をいちいち考えたりなんて……結婚式と同じで、考えただけで、ゾッとする。マンションやアパートの更新がくるたびに、引っ越しを繰り返す人がいるけど、ボクには理解できない。引っ越しなんかに、ボクは労力を割きたくない。だから、結婚しても、今のボクの部屋にそのまま一緒に住んでくれるとストレスもかからないから、すごく助かる。間取りは2SLDK(屋上付き)で、広さは87平米もあるから、二人で住むには十分だし。リビングと寝室には「水曜日のダウンタウン」(以下・水曜日)が取り付けた「監視カメラ」があるから、24時間365日水曜日のスタッフにつねに監視されているような状態だけど、そんな環境にも柔軟に対応してくれるような子がボクの理想。どこかにいないかな、監視カメラついていても平気な子。 ●結婚は絶対武器になる  ついつい結婚に対して後ろ向きな発言ばかり伝えてしまったけど、ボクは結婚自体が別に嫌なわけじゃないからね。そこは誤解しないでほしい。ただ、ふとした瞬間に、独身の気楽さと結婚のめんどくささを考えてしまうだけ。ボクは、古い考えの人間だから、結婚は「いずれしないといけないもの」って、どこかで思っているんだ。メリット・デメリットはとくに関係なくね。最近は、生涯独身でもいいっていう人がけっこう増えているみたいだけど、それはボクにはあまり賛同はできない。やっぱり、孤独は嫌だし、何よりボクを育ててくれた両親を喜ばせたいって気持ちが強いから。  ただ、ボク自身も年齢を重ねてきて、相手に対して求めるものが増えてきちゃったから、結婚のハードルが上がっているっていう問題はある。一時期は、自分がモテる男っていうのを証明するためだけに、いますぐに結婚したいって焦った時期もあったけど。今では恋人であっても、相手をすぐには信用できないから、やっぱり同棲期間もほしい。最低でも半年。3ヶ月くらいだと相手を騙せる気がするんだ。ボクは、人のことをなかなか信用しないけど、一度、信用したら、もう騙されてもいいやってくらいに腹の内を全て見せるから、できればその領域までの関係性を作ってから、結婚っていう流れだと安心だね。  それに、ボクの仕事柄、結婚って絶対武器になると思うんだよね。例えば、子どもができたりすると、イクメン系の番組に出演できるかもしれないし、もし、奥さんがテレビ出演OKな人なら温泉番組や旅番組とか夫婦でのんびりロケするような番組にも呼ばれる可能性だってある。そう考えると、「テレビ出ても良い」っていう奥さんだと非常にありがたいね。もちろん、全てのオファーに応えてほしいっていってるわけじゃない。ボクが日頃からお世話になっている先輩芸人さんやタレントさんが軸になっている番組とかだけで十分。基本、ボクは仕事のスタイルとして「NGなし」でやっているから、NG項目を作りたくはないんだ。だから、ボクの仕事の幅とかも考えてくれて、できるだけ協力体制でいてくれるような奥さんだと最高かもしれない。  最後に、この連載をみてくれた女の子のために、ボクが昨年、SNSにアップした理想の「結婚相手五箇条」も伝えとくね。 ・車の運転ができる・PCができる・年収600万以上・20~24歳・鬼ギャル  今後は、この五箇条に「テレビに出ても良い」と「監視カメラ付き物件に住める」も追加しようかな。  早く、理想の奥さんに出会いたいしん。 (構成/AERA dot.編集部・岡本直也)

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    アルピニスト野口健と橋本龍太郎との知られざる“友情” 「彼を比例区から出すから」

     参議院選挙への出馬が何回も噂された「アルピニスト」野口健。石原慎太郎、小池百合子ら多くの政治家との親交も知られている。なかでも元首相の橋本龍太郎とは、エベレスト登山を契機に育まれた、年齢を超えた不思議な関係だったという。野口健のマネージャーを計10年務めた小林元喜氏の著書『さよなら、野口健』(集英社インターナショナル)から一部抜粋して紹介する。 *   *   *  野口はターゲットを二〇〇四年の参議院議員選挙に定めた。被選挙権を得る三〇歳になっている年だ。二七歳になる年からエベレストの清掃登山を四年行えばちょうど三〇歳。八代英太がテーマを「福祉」と定めたように、自分のテーマは「環境」とした。その実現のためにお近づきになる必要がある人間がいた。それが橋本龍太郎だった。 ■橋本龍太郎との面会を前に  どういうことか。これはまず第一に雅昭(注・野口健の父、エジプト、イギリス、イエメン各国の大使館に勤務)の影響が大きい。キャリア外交官として国政の舞台裏を知り尽くす雅昭が政治家として特にリスペクトしていたのが、三人の内閣総理大臣経験者、宮澤喜一、中曾根康弘、そして橋本龍太郎だった。  その三人の中の誰だったら接点をつくることができるか。それは登山家でもある橋本龍太郎だった。剣道のイメージが強いが、橋本は登山家でもある。日本山岳ガイド協会の会長を務めたこともあり、エベレスト遠征隊の総隊長としてヒマラヤも訪れている。  岳龍会への入会はその第一歩だった。二五歳になった野口は会員となり、会合のたびに出席する。遠くで本物の橋本龍太郎が話している。まだまだ遠い。ただ、接点ができたことは確かだ。今度は七大陸最高峰登頂に成功した後に出版した自著『落ちこぼれてエベレスト』を贈る。すると、橋本本人から返事がきた。この時から手紙のやりとりが始まる。それを機に橋本事務所に面会を申し込む。だが、事務所側のガードが堅く面会の機会はなかなか訪れない。  だが、こんなことであきらめる野口ではない。野口はエベレスト清掃登山を通じて懇意にしていた元ネパール大使に頼み込み、橋本とのアポイントをとりつける。  チャンスは一回。この一回で橋本の心をわしづかみにしないといけない。相手は元内閣総理大臣だ。間違いなく面会者は「先生、先生」と媚びへつらう人ばかりだろう。だったら自分は逆をいく。そう野口は考えた。  面会が実現するはるか前から、野口にはある策略があった。それは、一九八八年の橋本龍太郎が総隊長を務めたエベレスト登山隊が残してきたゴミを持ち帰り、橋本に突きつける、というものだった。だからといって、食料品や缶詰のゴミでは失礼なことになる。プレゼントにもなり、絵にもなる。そんなゴミがエベレストには散乱していた。それは、使い終わった酸素ボンベだった。  毎日放送の榛葉によると野口は一九九七年の時点で、チベット側に一九八八年の橋本隊のゴミがあることをパサン・シェルパから聞いてすでに知っていた。彼は一九八八年の橋本隊メンバーだったためだ。そして、実際に橋本隊のゴミを一九九七年のエベレスト初挑戦の時に発見している。 ■ゴミを橋本事務所に持参  エベレストの清掃登山は前半の二年間(二〇〇〇年、二〇〇一年)がチベット側、後半の二年間(二〇〇二年、二〇〇三年)がネパール側だ。これにも意味がある。初年度のエベレスト清掃の際にこのボンベを見つける必要があったのだ。そして、本当にそのボンベを見つけ、面会の際に持ち込んだのだ。  当時を知る岡山県総社市の片岡聡一市長が、この時の様子を語る。片岡は大学卒業後に橋本龍太郎事務所に入所。二一年仕えた秘書の職を辞し、二〇〇七年の総社市長選挙で初当選している。 「私自身は橋本先生に秘書として二一年間仕えてきましたが、懐に飛び込めた、と思えたのは一七年目でした。人の心の中に飛び込むというのは、そもそも簡単なことではないですが、橋本先生は特にそのあたりが難しい方だった。  その極めて難しい橋本先生の心の中に飛び込んでいったのが健さんですよ。なにしろ橋本先生が総隊長を務めた登山隊がエベレストに残してきた酸素ボンベを回収し、わざわざ事務所に持ち込んできて『実はあのー、今日は一九八八年の先生の忘れ物を持ってきまして』と言ってくるわけですから。それで先生も『確かにこれは我が隊のゴミです。参りました』となるわけです。おもしろい奴だ、こりゃ参った、と橋本先生も思ったわけですよ。  以後『健さんが来てます』と言うと『おう、入れろ』とフリーパスになるわけです。こんなふうに橋本先生が心を許した人は、他にはジュディ・オングさんくらいしかいない。だから当時の私からしたら、健さんに対してはジェラシーですよ。それと同時に、凄いな、とも感じていたわけですけど」  橋本、野口、酸素ボンベのスリーショットもしっかり写真におさめた野口は、これを機に橋本との付き合いを始める。だが、その後も野口は一切へりくだった付き合い方をしなかった。かといって、ストレートなやりとりをするわけでもない。二人のやりとりはウィットに富んでいて、どこか言葉遊び的であり、会話それ自体を楽しむスタイルだった。そして、野口には時にどこか人をくったようなきわどい球を投げるところがあった。  なにしろ、橋本の女性問題すら本人との会話の際にネタにしてしまう。橋本が総理在任時に中国の女性官僚と男女の関係があったと報じられた。橋本側は、女性は中国大使館に勤務する通訳であり、職務上の接点があったにすぎないと釈明。だが、続報では女性は北京市公安局の情報工作員であり、いわゆる「ハニートラップ」にひっかかったのだと報じられていた。野口はエベレスト清掃登山の活動報告会に顔を出してくれた橋本に対して、そのことをネタにしたのだった。   立食形式の会場で立ち話をしている際に、野口は橋本に当時付き合っていた恋人を紹介した。恋人は中央省庁の役人であり、元総理を目の前にしてカチカチに緊張していた。彼女がお手洗いに行った際に橋本が「まあ、お前、女には気をつけろ」と言ってきた。橋本は上機嫌だった。「はい。気をつけます」と返答する野口に、愛煙する煙草「チェリー」をゆっくり吸い込むとまた「いいか、女には気をつけろ」と繰り返してきた。野口がそのたびに「はい」と答えても、まだ続く。「いいか、とにかく女には気をつけるんだぞ」と。  あまりにしつこいので、野口は何を思ったか「そうですよね~、たとえば中国とか」と返してしまった。その瞬間、橋本は「キサマァー」と激昂した。  野口は「ああ、人間ってこんなに瞬間的に怒ることができるんだ」と驚いた。会場の全員が一斉に振り返った。  野口は「え? あれ? まさか、あの話ってほんとだったんですか。いや~僕はてっきりガセネタかと思って。すみません」と飄々としている。「貴様」「貴様」と橋本は顔を真っ赤にしながらスパスパとチェリーを吸いながらそのまま会場を後にした。  にもかかわらず野口はお手洗いから戻った恋人に「あれ~、怒っちゃったかな~」ととぼけている。事態をつかみかねている恋人に一連のやりとりを伝えると彼女は目を丸くして驚き、「そんなことを仰ったんですか。ありえません。ありえません」と呟いていた。 ■出馬のチケットを手中に  野口は、橋本と正面から真面目に語り合うようなコミュニケーションはほとんどとらなかった。でも二人は不思議と通じ合っていた。自分が政治家を志望していることも、明確に告げたことはなかった。橋本との関係に限らず、これは野口のスタイルなのだが、それとなく相手にほのめかす、だけなのだ。すると不思議なことに言われたほうが勝手に解釈して、野口の望み通りに動いてしまう。そして、現実が野口の思っていたようにかたちづくられてくる。   この時もそうだった。野口が狙いを定めた二〇〇四年の参議院議員選挙。それに間に合うようにしかるべきタイミングで橋本の側から「僕たちの仕事に君も興味があるのかな」と言わせてしまう。黙って頷く野口。そして、ついに橋本龍太郎が受話器を取り上げる。「彼を比例区から出すから」と事務所から自民党本部に指示を出した。時に野口健三〇歳。ついに参議院選出馬のチケットを手中にした。 <後編に続く> ○小林元喜 こばやし もときライター。1978年、山梨県生まれ。法政大学経済学部卒業。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。法政大学在学中より作家の村上龍のアシスタントとしてリサーチ、ライティングを開始。『共生虫ドットコム』(講談社)、『13歳のハローワーク』(幻冬舎)等の制作に携わる。卒業後は東京都知事(当時)の石原慎太郎公式サイトの制作・運営、登山家の野口健のマネージャー等を務める。現在に至るまで野口健のマネージャーを計10年務めるが、その間、野口健事務所への入社と退職を3度繰り返す中で、様々な職を転々とする。現在は都内にあるベンチャー企業に勤務。

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    安倍元首相の国葬をしている場合ではない 祖父・岸信介から継ぐ家業としての政治の膿を出し切るべき

    作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、旧統一教会と政治のつながりについて。 *   *  * 「あの統一教会系合同結婚式に祝電 安倍晋三とのただならぬ関係 次期首相にふさわしいのか!」週刊朝日2006年6月30日号の記事。この3カ月後に首相になる51歳のまだ若い安倍さんの顔写真が、統一教会の合同結婚式の写真(イメージ)と重なって写っている。記事の本文はこんなふうにはじまる。 「会場には8千人余りが詰めかけ、盛大な拍手が鳴り響いた。司会者らしき男性がステージに立ち、誇らしげに名前を読み上げた。『祝電がいっぱい届いておりますが、その中から数個ご紹介を申し上げます。岸信介元総理大臣のお孫さんでいらっしゃり……』と紹介されたのは、ポスト小泉の最有力候補で、いまをときめく安倍晋三内閣官房長官(51)である」  記事は、旧統一教会を母体とした天宙平和連合(UPF)の会合を取材したもので、自民党のなかには選挙で統一教会の支援を受けたり、秘書を派遣されたりしている議員がいることにも触れている。影響力のある政治家が、被害者の多い宗教団体の広告塔の役割を果たすことを疑問視する記事で、当然、統一教会と岸信介氏との関係についても言及されている。 「統一教会」と、新聞雑誌記事データベースを検索すれば、数千もの記事がヒットする。そのほとんどが信者や信者の家族の被害を訴えるものだが、なかには、この週刊朝日の記事のように、自民党議員とのつながりを指摘する記事もいくつも出てくる。1992年には金丸信氏が、文鮮明教主の入国のために法務省に圧力をかけた疑いが報じられ、元信者が自民党議員の選挙応援にかりだされたことを証言している。1986年には、岸信介氏ら、自民党議員が中心となった「国家秘密法」の制定運動に、統一教会が母体の国際勝共連合が莫大な資金援助をしていたことも、大きく報じられていた。  みんな、うすうす気が付いていた。本当はどこかでわかっていた。それでも決定的に追いつめ、膿(うみ)を出し切ることまでできなかった。今、大変な勢いで、旧統一教会と自民党議員らとの長い蜜月が明らかになりつつあるが、本来ならばもっと早く、強く、深く、メディアが追いつめるべきことだったのではないかと悔やまれる。膿を出し切っていれば日本の民主主義がこれほど危うくなることもなかったかもしれず、そもそも安倍さんも死ぬことなどなかっただろう。  安倍さんの死からちょうど1カ月が経った。2年前に静岡・御殿場の虎屋のカフェに行ったことを思い出す。もともとは1969年に岸信介氏の自邸として建築されたものだ。5700平米の敷地に、当時、岸家が暮らしていた屋敷がそのまま残されている。水面がきらめく池、様々な樹木が完璧に配置された美しい庭園の豊かさに圧倒されたものだ。私は友人たちと、「この庭で安倍さんは遊んでたんだね」と話しながら庭を散策していたのだが、一人がボソリと言ったことが忘れられない。 「なんで、あの人たち、こんなにお金を持ってるの?」  なんででしょうね……、なんてことを私たちは日本史をひもときながら勝手なことを言い合って話し合ったものだ。でも、本当になぜ、と今改めて思わずにはいられない。なぜ、安倍さんの家はあれほどの財産を持っているのだろう。政治家というのは、そこまで「もうかる」仕事なのだろうか。そして財産も、人脈も全て、「家業」のように親から子に継いでいくものなのか。  冒頭の週刊朝日の記事で、安倍さんはUPFの会合で「岸信介元総理大臣のお孫さん」と紹介されている。50代にもなって公の場で「誰かの孫」と紹介される人生があるのか、と庶民の私などは違和感しかないが、それでもそういう世界を、安倍さんは生きてこられたのだろう。岸信介の孫として、岸洋子の息子として、安倍晋太郎の息子として、戦前から脈々と継がれてきた家業を背負うことが宿命であるかのように、生きてこられた。岸信介氏らが切望した「国家秘密法」も、安倍さんが総理の時代に「特定秘密保護法」として成立させたが、これも安倍さんにとっては家業としての仕事だったのかもしれない。  安倍さんの死後、母親の洋子氏が後継者について語っていることが報道されている。私の書棚には1992年に洋子氏が書かれた『わたしの安倍晋太郎』という本がある。夫の名前がタイトルにはなっているが、割かれているのはほぼ父、岸信介氏のことであり、岸家、佐藤家、安倍家という長州派閥のファミリーストーリーである。安倍さんが総理になったときに古本屋で買ったものだが、一読した率直な感想は、「洋子さん、毒母?」であった。戦犯の父を持つ娘として戦前と戦後を体験し、総理大臣を目指す夫に“仕え”、その夫が道半ばで急死した無念さがつづられている本から伝わってくるのは、総理の娘が総理の妻になれなかった悔しさであった。男尊女卑の激しいこの国で女は総理大臣にはなれない。なれるのは総理の娘、総理の妻、総理の母である。安倍さんの幼いころの夢は「プロ野球選手」だったというが、はなから「総理大臣になる」道以外は閉ざされた人生だったということが、洋子氏の手記からは伝わってくるのだった。  安倍さんは国会で不誠実な答弁をくり返す横暴な政治家であったが、どこか“お坊ちゃま感”が抜けない人だった。また、一昔前の愛人がいて当たり前、みたいな黒い政治家のイメージはなく、むしろ性的なものに奥手で、セックススキャンダルからは程遠い人という感じでもあった。私の勝手なイメージだが、強い母親に組み敷かれた人の弱さを感じずにはいられなかった。“奔放で自由な妻”を選んだのは、もしかしたら安倍さんの母親への人生最大の反抗だったのではないかと思うほど、安倍さんの“女性観”がよくわからなかった。    安倍さんの人生に母親の影響がどれだけあったかは、わからない。それでも、祖父が日本での普及に力を添えた旧統一教会の被害者に殺された事実は、この国をリアルに生きる人々の声よりも、“ご先祖様”を仰ぎ見るようなファミリービジネスとしての政治に邁進した結果でもある。そういう意味で、安倍さんは、山上容疑者と同じように、“家族の被害者”であったのかもしれないと思う。  公衆の面前でマイクを握ったまま背後から撃たれた安倍さんは、最後、山上容疑者のほうを振り返っている。1発目の煙がまだ立ちこめる数秒の時間のなか、最後に見たものは山上容疑者の姿だっただろうか。財産を奪われ、未来を奪われ、家族を壊された40代の男と、使い切れないほどの財産を先祖から引き継ぎ、未来が約束されてきた60代の男はあの瞬間、個として対峙した。それは2人の人生が同時に終わる瞬間だった。個としての安倍さんを考える時、その人生の歪(いびつ)さと不幸を哀れに思わずにはいられない。だからこそ安倍さんの死を悼むというのならば、やはりその不幸の根源を洗い出し、膿を出し切るべきなのだろう。安倍さんの政治家としての人生と、この国の民主主義の歪(ゆが)みを徹底的に洗い出すべきだ。国葬をしている場合じゃない。

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    京本大我が語ったジャニーズイズムへの葛藤「人を圧倒させられる何かがある」

     自らの才を発揮する、最高のチャンスをつかんだ。滝沢秀明演出のオリジナルミュージカル「流星の音色」で、主演のみならず音楽も担当する京本大我(SixTONES)。突出した歌唱力を誇り、数々のミュージカルに出演してきた集大成となる大舞台を前に、己を鍛え上げた高すぎるプロ意識と、それゆえの葛藤を明かした。 *  *  * ──「流星の音色」の製作が決まった経緯は?  滝沢くんと外部の舞台を観に行った帰り、「舞台やりたくなりますね」みたいな話をしたら、「僕が原案と演出やるよ」って言ってくれて、「やってみたいです」って。僕は「滝沢歌舞伎」ふくめ、ずっと滝沢くんにお世話になってきた人間だから、滝沢くんの演出で舞台に立てるって素敵だし恩返しにもなるかなと思ったんです。  恋愛ものの作品にするうえで、主人公はピュア系か、女をたぶらかす系かの二択でした。義経や光源氏など案を出しあった結果、ピュアでいこうと、七夕がテーマの物語になりました。 ──今作のようなジャニーズ発の舞台と外部の舞台で、違いはある?  全然違いますね。僕あんま嘘つけない人間だから素直に言うと、外部はジャニーズイズムが通用しない。ぶっつけ本番でやる精神だったり、ジャニー(喜多川)さんのぶっ飛んだ発想特有のオリジナリティーだったり。  ジャニーさんって、ここでこの曲来るんかい!みたいな矛盾も、「それでいいんだよ」って気にしない人。昔は疑問を持たずにただがむしゃらにやってたけど、いろんなことを細かく丁寧にやる外部の舞台を知ってからは葛藤がありましたね。「エリザベート」の後に「少年たち」をやったときは、「これはおかしいと思う」って反発したこともあったし。主演の一人だからって僕の作品ではないのに、若かったな。  ただ、今回も滝沢くんに思ったことをぶつけたりしてるんですよ。「ここ、僕的によくわからなくて……」とか。でも滝沢くんは、「大我の気持ちもわかるけど、僕はこういう気持ちでこれを入れてる」っていうのが明確にあるから、ついていこうってなります。  舞台って、こうでなきゃいけないなんてない。最近も「ハリー・ポッター(と呪いの子)」や(生田)斗真くんの「てなもんや三文オペラ」などいろいろ観てますけど、全部それぞれちがうから。5年前だったら、「流星の音色」をいかに本格ミュージカルに昇華するかに執着しただろうけど、今は「流星の音色」の良さを出せるようにっていう考えに変わりました。  外部の舞台で共演した方がジャニーズの舞台を観に来てくださると、みんな「ジャニーズってすごいんだね」って言うんです。だから一つのエンタメの形として、人を圧倒させられる何かがあると思ってます。 ■帰り道に口ずさめるような曲作りを ──舞台の楽曲の書き下ろしは初挑戦でしたが、何か意識したことは?  2、3時間しかない舞台を観た人の心にどこまで残る曲にできるか、ですね。なんとなーく帰り道に鼻歌を口ずさんで、「あ、今観た舞台のテーマ曲だ、いい曲だな」って一瞬でも思い出してもらえるぐらいのものを作ろうって。キャッチーな詞とかメロディーを考えたり、サビで同じフレーズを繰り返したり、いろいろ工夫しました。  ただ、滝沢くんからは「10代の初恋みたいなものを意識して」っていう直しは入りましたね。まだ台本がなかったので僕のなかに違和感はなかったんですけど、作品のゴールが見えている滝沢くんからしたら、ちょっとませた歌詞だったんです。  普段、曲を作るなかで、作詞家なら「好きだよ」じゃない言い方で好きって伝えなきゃみたいな、自分だから書けるものに固執しすぎてて。もちろんその引き出しは持っとくべきだけど、今回の作品のためにはそぎ落とす作業をしました。「色あせないなんちゃら……」っていう詞を「忘れたくない」に変換するみたいな。 ──自分らしい表現とのギャップに悩むことは?  僕、詞を2パターンで悩んだら、両方出しちゃうんです。一つは京本大我色が強い歌詞。もう一つはセリフに沿った無難な歌詞。要は自我があるほうと、作詞家として発注に応えたものっていう。自我のほうはだいたい通んないですね(笑)。「いいと思うけど攻めすぎかも」って。まあ、選ばれたら面白いかなっていうちょっとした望みはあるけど、僕はどっちでもいいんです。選べないから二つ出しているので。 (構成/本誌・大谷百合絵)※週刊朝日  2022年8月12日号

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    【ゲッターズ飯田】8月の開運のつぶやき「変化を恐れない人に運は味方する」金の鳳凰座

     占いは人生の地図のようなもの。芸能界最強の占い師、ゲッターズ飯田さんの「五星三心占い」が、あなたが自分らしく日々を送るためのお手伝いをします。12タイプ別に、毎週月曜日にその日の運勢、毎月5のつく日(毎月5、15、25日)に開運のつぶやきをお届けします。 【タイプチェッカー】あなたはどのタイプ?自分のタイプを調べる 【金の羅針盤座】他人を簡単に嫌わないほうがいい。立場や状況により、嫌われ役をする人もいるから 【銀の羅針盤座】助けられてばかりでは運気の波は小さく、幸運も小さく逃しやすくなってしまう 【金のインディアン座】生きがいや幸せは、些細なことのほうがいい 【銀のインディアン座】人にはときどき不便と不運が必要になる。感謝を忘れてしまうから 【金の鳳凰座】変化を恐れると運も臆病になってしまう。変化を恐れない人に運は味方する 【銀の鳳凰座】無駄が多いほうが、人として大切なことや幸せなことをたくさん得られるもの 【金の時計座】自信がないから、努力する。失敗や挫折を経験するから、自信がもてる 【銀の時計座】自分をつねに上機嫌にしておくことができる人に、幸運がやってくるもの 【金のカメレオン座】未来を変えるということは、過去の考え方を変えることでもある 【銀のカメレオン座】大きな不運を避けるよりも、日々の小さな不運を積み重ねないことが大切 【金のイルカ座】素敵な話をたくさんすると、運気は自然とよくなってくるもの 【銀のイルカ座】最初からできなくていい。チャレンジすることに意味がある ※毎週月曜日に占いが届きます!AERA dot.の公式LINEの友達申請はこちら↓↓↓https://lin.ee/trWiCvV

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    【前編】22歳元女性自衛官が実名・顔出しで自衛隊内での「性被害」を告発 テント内で男性隊員に囲まれて受けた屈辱的な行為とは

     元女性自衛官が実名・顔出しで、訓練中に受けた性被害をYouTubeで告白したことが話題を呼んでいる。五ノ井里奈さん(22)は、陸上自衛隊に所属していた2021年の6月~8月、複数の上官から集団でセクハラを受けたという。上長に被害を訴えても取り合ってもらえず、自衛隊内の捜査機関に被害届を出しても、検察からは不起訴とされた。現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。五ノ井さんは、AERA dot.の単独インタビューに応じ、「日常的に起きているセクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、自身の受けた体験を語った。 *  *  * 五ノ井さんが陸上自衛隊に入隊したのは、2020年4月。小学生の頃から女性自衛官に憧れ、20歳のときに自衛隊の門をたたいた。教育期間は順調にこなし、その時までは、思い描いていた自衛官の姿に誇りとやりがいを持っていた。  だが、その後に配属される中隊名が発表されたときから、風向きが変わった。女性の先輩隊員から、こんな忠告を受けたのだ。 「あそこの中隊はセクハラとパワハラがひどいから気をつけろ」  五ノ井さんが配属された東北方面の中隊は、隊員58人の中で女性は5人。1人は育休中だったので、実質的に女性隊員は4人しかいなかった。同部屋の女性隊員からも「セクハラは覚悟して」と言われたので警戒はしていたものの、すぐにそれが現実のものとなった。 「2020年秋ごろ、勤務中に、男性隊員が『柔道しようぜ!』と言いながら技をかけてくるのですが、腰をつかまれて“バック”のような体制にされて腰を振ってくるんです。それを女性隊員が目撃していました。廊下を歩いていると、急に抱きつかれることも日常的にありました」(五ノ井さん)  部屋に戻ると、女性隊員同士でこうした行為を報告しあった。だが女性隊員は圧倒的少数。自分の身を守るだけで精いっぱいの場合もある。  2021年6月24日。山に入って訓練をしていた時、新人の五ノ井さんは夕食や酒のつまみを作る役割を任されていたので、天幕で料理を作っていた。天幕とは2~3人用のテントのことで、山での訓練では寝床として使用されていた。天幕で酒盛りをし、定員より多い男性隊員が入れ代わり立ち代わり入ってきて、多いときには5、6人くらいの隊員がぎゅうぎゅうになって座っていた。料理を作るためにいた五ノ井さんはその輪の中に入れられ、胸をもまれ、キスをされ、男性隊員の陰部を下着越しに触らせられた。  逃げられないと思った五ノ井さんは、別の天幕にいる女性隊員にLINEで「はやく来てください」と助けを求めた。女性隊員からは「オオカミなってる??w」と返事がきた。「オオカミ」とは、男性がお酒を飲んで暴走し、理性をコントロールできない状態のこと。「はい」と返せば、女性隊員は助けに来ないと思い、五ノ井さんは「なってません とりあえず早く来てください」と再度助けを求めた。だが、その女性隊員は「今来たらやばい」という別のLINEも受け取っていたことから、結局、五ノ井さんのいる天幕には来なかった。女性隊員はその直後に退職した。  状況としては“見捨てられた”ようなものだが、五ノ井さんはこの女性隊員の気持ちもわかると話す。 「女性隊員が自分の身を守るためには、来ないのが正解なんです。夜遅い時間に男性隊員のストレス発散に使われて、自分だって危ない目にあう可能性があるんですから、行きたくない気持ちにもなりますよ」(同)  五ノ井さんからLINEを受け取った元女性隊員は当時の状況をこう証言する。 「LINEを受け取った前日に、私も同じ天幕で宴会に参加して、同じようなセクハラを受けていました。その時は、男性隊員から膝に乗って接待しろとか、頬にキスしろと強要されました。ある男性隊員から次の日は『覚悟しとけ』と言われ、もう何をされるかわからないので、五ノ井さんに助けを求められた時に行くことができませんでした。止めに行きたい気持ちはあったのですが、止めに入ったら(次は)自分に来るので、怖くて助けられませんでした」  元女性隊員自身も「ほぼ毎日抱きしめられる」などのセクハラを受けており、五ノ井さんが日常的に被害にあっている場面も目撃していたという。元女性隊員によると、この部隊は2018年から女性隊員が入るようになり、その時から、「セクハラがヤバイ」として悪評が立っていた。セクハラをしているグループの中心は、20代後半の男性隊員数名で、他の隊員は上下関係から、逆らうことができず、ただ見ているだけだったという。  だが、この日のセクハラ事件は、中隊でも問題となった。事件を目撃していた誰かが、中隊長に報告したからだ。すぐに「中隊長に告げ口したのは誰か」と、犯人捜しが始まり、被害者である五ノ井さんが疑われた。加害者からは、「セクハラじゃなくて、コミュニケーションの一部だもんな」と声をかけられた。事情聴取として曹長から呼び出された五ノ井さんは「何もありません。大丈夫です」と報告した。問題が大きくなり、組織に居づらくなるのを避けようとしたからだ。 「自衛隊には厳しい上下関係があって、その場の空気に合わせなければならない。和を乱せば、無視や陰口を言われますから」(同) ■セクハラを超えた性被害を受けて限界に  この日以降、五ノ井さんは気持ちを押し殺しながら日常的なセクハラに耐えてきたが、昨年8月に我慢の限界に達する出来事が起きた。  8月3日から地方で約1カ月間の訓練があった。訓練場所に到着した日の夜、部屋で食事の準備をしていた五ノ井さんは、男性隊員から「料理はいいから接待しろ」と言われ、男性隊員十数人の輪の中に座らされた。宴会だったので、隊員らは酒を飲んでいた。  一曹Eと二曹Yが格闘の話をしていたところに、男性隊員S三曹が部屋に入ってきた。するとEは、Sに「五ノ井に首をキメて倒すのをやってみろ」と命令した。Sは、五ノ井さんの首に両手を当てて、そのままベッドに押し倒すような技をかけた。 「この時、Sさんが暴走し始めたのです。股を無理やりこじ開け、腰を振りながら陰部を押し当ててきました。一人で『あんあん』とあえぎ声みたいな声を出して、それを見ている周りの男性隊員たちは笑っていました。特にEとYはこっちを見ながら確実に笑っていました」(同)  続いて、2人目の男性隊員Kも「首をキメて」押し倒し、Sと同様の動きをした。さらに続いた。3人目男性隊員Rは同様に押し倒した後、五ノ井さんの両手首を押さえつけながら、何度も腰を振ってきた。 「全力で抵抗しようと、手首に力を入れて振りほどこうとしましたが、男性の力にはかないません。諦めて、終わるのを待つしかありませんでした。終わって体を起こすと、周りの男性隊員たちはこっちを見ていました」(同)  コトが終わると、Rからは「五ノ井って案外力が強いな」と言われた。五ノ井さんが抵抗していたことはわかっていたのだ。  一旦話題が収まったにもかかわらず、再び一曹Eが格闘技の話を面白おかしくしはじめて、「あれ、首をキメて倒すのどうやるんだっけ?」と笑いながら言い出した。すると、再びSが、五ノ井さんの首に両手を当てて押し倒し、腰を振ってきた。五ノ井さんの引きつった顔を見たSは「これ誰にも言わないでね」と口止めしてきたという。 「もう限界でした。訓練場所は、すぐに抜け出せる環境ではありませんでしたが、先輩の女性隊員と中隊長Mに相談して、帰りたいとお願いしました」(同)  先輩女性隊員は、最初は味方してくれたが、男性中隊長が「訓練は訓練だ」と言うと、「そうだよ、訓練は訓練だから」と態度を変えた。訓練はあと20日以上続く。これ以上耐えられないと感じた五ノ井さんは、訓練から抜けることを懇願した。だが、セクハラを受けたことが理由では、6月の時のように告げ口したと思われてしまう。母親が倒れたことにして、実家に帰れることになった。  この時、先輩女性隊員からは「一応、嘘ついていることは心の隅にでも置いておいてね」と言われた。エスカレートする性被害から逃れるための苦渋の判断にもかかわらず、被害者である五ノ井さんに非があるような言い方に聞こえた。 ■被害届を出すも不起訴処分  この8月の性被害の後、適応障害と診断され、五ノ井さんは休職することになった。被害については、まず、自衛隊の総務・人事課にあたる「一課」にセクハラ被害を報告した。だが、一課からは「8月のセクハラの件を見たという証言が得られなかった」と回答された。次に、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。 「警務隊の現場検証では、人形を使って再現しました」(同)  検察庁の捜査をへて、22年5月31日付で判決が出た。結果は、不起訴処分。五ノ井さんが不起訴の理由を尋ねると、検察官は「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない」という供述だったと説明された。そして「被疑者を有罪にするにはそれなりの証拠が必要だ」とも言われたという。 「その場で見ていた人がたくさんいたのに、なぜか腰を振ったという証言は出てこない。単に技をキメて押し倒しただけで、どうして笑いが起きるのでしょうか。その続きがなかったら、笑うわけがない」(同)  五ノ井さんは6月7日付で、検察審査会に不服申し立てをしている。  自衛隊内部では、この事件をどう捉えているのか。AERA dot.は五ノ井さんが配属された東北方面の部隊に事実確認すると、広報担当は「現在、部隊で調査中のため回答は差し控える」と答えた。調査結果がいつ出るかは未定だという。また、五ノ井さんが報告を上げた「一課」にも確認をしたが、「その件は一課長が対応したが、いまは不在」とのこと。代わりに対応した指令業務室の担当者は「事実を調査中のため、予断を持って回答することは差し控えたい」と回答した。なお、被疑者の処罰については、「判明した事実に基づき、厳正に対処する」とした。 (AERA dot.編集部 岩下明日香) ※「後編」では、五ノ井さんがセクハラを受けてもすぐに辞めなかった理由、顔と名前を出して告発に踏み切った経緯などを明かす。

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    黒島結菜が「ちむどんどん」で“嫌われまくる”もNHKが重宝する実力派女優の実像

     現在放送中のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」。黒島結菜(25)演じる、故郷の沖縄料理に夢をかける主人公・比嘉暢子を中心とした4兄妹の物語なのだが、ツイッター上では「#ちむどんどん反省会」というネガティブなハッシュタグが盛り上がり、辛口コメントも少なくない。  特に、目立つのは登場人物に対する拒否反応だろう。物語の前半は、母に借金させて用意したお金をもうけ話にダマされて持ち逃げされるなど、暢子の兄である“ニーニー”こと賢秀のクズっぷりや、そんな兄をただ甘やかす母・優子にモヤモヤする視聴者が多かったようだ。  また、ヒロイン・暢子の言動にも辛口な声が見られる。例えば、5月24日の放送では、不満を募らせた暢子が、勤務先のレストランのオーナーに「自分で料理を作ったこともないくせに偉そうです」と、新人なのに盾突いて料理勝負を持ちかけた。7月27日の放送回では、結婚に反対する婚約者の母親に対し、いつも決まった店で朝食を食べているというのにもかかわらず、毎朝、頼まれてもないお弁当を作って届けるなど、自己中心的な暢子の振る舞いに嫌悪感を示す視聴者は少なくないようだ。  黒島自身に対しても「毎日ちょっとずつ黒島結菜が嫌いになる」「黒島結菜はもともと好きだっただけに残念」など厳しい声が散見。もはや、本人の好感度にも影響が出そうで心配になってくる。 「SNS上では『こんなにヒロインに共感できない朝ドラ初めてかも』との意見もあり、普通は視聴者から応援されるべき朝ドラのヒロインが、共感されないキャラクターになっているところが大きなモヤモヤポイントなのだと思います。一方で彼女の場合、演技が批判されているわけではありません。役柄の人間性が嫌われるのは、ある意味で演技がうまい証拠とも言えるでしょう。実際、黒島は2019年公開の映画『カツベン!』で、第43回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど、演技の評価は高い。また、2017年放送のラブコメドラマ『アシガール』では、戦国時代にタイムスリップした女子高生役で、ピュアでけなげな主人公を好演しています」(テレビ情報誌の編集者)  民放ドラマ制作スタッフも、黒島のキャリアについてこう評する。 「今回の朝ドラと同じく羽原大介氏が脚本を手掛けた『マッサン』や戸田恵梨香さん主演の『スカーレット』といった朝ドラに加え、『花燃ゆ』、『いだてん~東京オリムピック噺~』といった大河ドラマなど、NHKでの確固たる実績があります。朝ドラや大河に関しては老若男女を問わず幅広い視聴者層が楽しむ番組なので、年配層からもウケが良い女優が重宝されているんです。そういう意味では本来、朝ドラヒロインとの相性は非常に良い。今作に関しては役柄に対して視聴者からさまざまな意見が出ているようですが、彼女は健康的で透明感がある一方で、りりしさやひたむきさも感じさせます。今後も業界では重宝されるでしょう」 ■川栄李奈も憧れる存在  そもそも演じるキャラクターと本人の人格は別。朝ドラを見て黒島を嫌いになるのは、お門違いとも言える。  実際、“素”の黒島の性格には、思いやりのある優しい人柄がうかがえる。「SPUR」(集英社、5月16日配信)では、保護施設から引き取った元保護犬2匹を飼っていることを告白。家族のような存在で、朝と夜の散歩は欠かさず、生活も規則正しく変化。「私がいなくなったら生きていけないこの子たちのために自分も健康でいなきゃ」と思うようになったという。また、大学で写真学科に通っていた黒島だが、自身のインスタは風景の写真がほとんどで、女性タレントにありがちな自撮りや持ち物をひけらかすような投稿がないところも好感が持てる。 「同業者からも慕われているようです。例えば、高校の同級生でもある中条あやみとは一緒に沖縄に行ったこともある間柄。その時、外でキャンプのように野宿する予定のはずが、テントが小さすぎて寝られないため、突然、黒島の実家に泊まることになったとか。中条は『(黒島の家族が)温かくて本当に優しかった』とトーク番組で振り返っていました。また、4月に杏のYouTubeチャンネルに出演し、仲良く沖縄料理を作っていたのも印象的です。2~3カ月に一度は会う仲で、撮影が終わったら一緒に旅行やキャンプなどに行きたいと話していました。10歳以上年上の大先輩ともそうした関係を築けるのは、やはり人間的に魅力のある人なのでしょう。さらに川栄李奈も共演した黒島に関して、『こんなに熱量を持って、一つの作品に集中して取り組んでいるのを見て、自分もそういう風になりたいなと思いました』と情報番組で明かしていました」(同)  過去には、黒島と同じように、嫌われる役柄を演じながら人気女優となった例も少なくない。芸能評論家の三杉武氏はこう述べる。 「昔はドラマや映画で演じた役のイメージが強烈すぎるあまり、それがそのまま女優本人のイメージに反映されることが多々ありました。『ポケベルが鳴らなくて』で親友の父親と不倫関係になる役を演じた裕木奈江さんや、『東京ラブストーリー』で最終的に鈴木保奈美さん演じるリカから織田裕二さん扮する完治を略奪するさとみ役を演じた有森也実さんなどが代表的です。放送当時は、その役のイメージによってかなりのバッシングを受けました。もっともそれだけ真に迫った演技をし、作品に貢献したわけですから女優としては誇るべきことです。近年では菜々緒さんや小沢真珠さんのように悪女役がきちんと評価される傾向もあります。黒島さんも同じように、演技力が評価される人気女優になっていくでしょう」  放送終了まであと2カ月。ラストに向けて黒島は暢子をどう演じるのか、目が離せない。(丸山ひろし)

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    旧統一教会「霊感商法」を本格追及した朝日ジャーナル名物記者への非道な抗議と嫌がらせ電話の「中身」

     7月8日に安倍晋三元首相銃撃事件が起こってから1カ月が経った。逮捕された山上徹也容疑者の動機について、犯行直後は「母親が“ある宗教団体”にのめり込んで多額の寄付をしたことで家庭が崩壊。恨みがあったと供述した」などと報じられた。その後、同月11日に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が会見を開くまで宗教の団体名を報じるマスコミはほとんどなかった。なぜ、多くの報道機関は旧統一教会の名前を出すことを躊躇したのか? その理由について、1980年代に「朝日ジャーナル」で霊感商法を鋭く追及した元朝日新聞記者、藤森研さんが実体験をもとに語った。 *   *   *  7月29日、全国霊感商法対策弁護士連絡会は日本外国特派員協会で会見を開いた。代表世話人の山口広弁護士は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題について、メディアをこう批判した。 「私はもう日本のテレビと新聞はレベルダウンが著しいと思っています。なんですか! 『特定の宗教団体』としか言わないじゃないですか。月曜日(7月11日)に、Unification Church(旧統一教会)が記者会見するまで、もうとっくに外国の新聞ではUnification Churchの問題を言ってますよ。あるいはネットにはたくさん流れてますよ。(中略)本当に悲しいですよ」  確かに事件翌日、旧統一教会とのつながりを報じたのはブルームバーグやBBCなどの海外メディアが多かった。日本のメディアでは「現代ビジネス」がいち早く安倍氏と旧統一教会の接点を書いた。しかし、日本の大手マスコミの動きは鈍かった。  これについて藤森研さんは、「非常に歯がゆいというか、違和感を覚えました」と語った。 ■犯罪すれすれの抗議  藤森さんはこの事件が起きた際、安倍元首相の死に対して謹慎が求められたような、内向きの空気をまず全般的にメディアに感じたという。 「一例を挙げれば、ほぼすべてのテレビのコメンテーターは『とても許されないことですが』と、免罪符の言葉を口にしてから、事件についてこわごわと話し始めた。つまり、その背景についてぐいぐいと迫っていく気持ちが萎縮していた。それが特定宗教の団体名を出さないことに直接結びついたかどうかは別にして、一種の萎縮の空気をすべての報道に感じました」  さらに藤森さんは、「これは推測ですが」と、前置きしたうえで、こう語った。 「まだ教団と山上容疑者との関係が確定していないにもかかわらず旧統一教会の名前を出すことで、彼らから抗議されることを恐れたのでしょう」  報道機関が抗議を受けるのは日常茶飯事である。ある意味、抗議慣れしているメディアが、なぜなのか? 「かつて、旧統一教会について批判的な記事を書いて、表立って抗議されたことはたくさんありました。それでも言うことを聞かないと、教団は『裏の手』も大変熱心に使う。旧統一教会がそういう団体であることをメディアによっては認識しているわけです」  旧統一教会が80年代ごろからメディアに対して行ったのは、「抗議」などという生易しいものではなかった。会社への直接抗議にとどまらず、記者本人の家に押しかけたり、家族の生活を脅かしたりするなど、犯罪すれすれの行為を組織的に行ってきた。そんなこともあって各メディアは腰が引けたのではないか、と藤森さんは推測する。 ■記者の家を見張る信者  1980年代、旧統一教会が印鑑や壺(つぼ)などを高額な値段で売りつける「霊感商法」が社会問題となった。そのきっかけとなったのが1986年に「朝日ジャーナル」で藤森さんらが始めた霊感商法追及キャンペーンだった。 「それまでは『開運商法』などと呼ばれていたんです。こんなにひどいことをやっているのに『開運』はないだろう、と。そこで、仲間とも相談して、追及キャンペーンでは『霊感商法』と名づけました」 「朝日ジャーナル」は断続的に旧統一教会を批判する記事を掲載してきた。それに対して旧統一教会は「信者が勝手に行っていることで、教会は関係ない」として編集部に抗議した。しかし、抗議の“効果”がないとわかると、教団は次第に記者本人や家族を標的にするようになった。 「86年12月ごろ、霊感商法追及キャンペーンを始めてすぐのころでした。当時、僕は東京・三鷹の借家に住んでいた。家主の息子が『未明から変なワンボックスカーが向かいに停まっている。中には屈強な若者が何人か乗っていてこちらをずっと見ているよ』って、知らせてくれた。それが嫌がらせ、個人攻撃の始まりでした」  休日、家にいると嫌がらせ電話がかかってきた。 「『この世界で飯を食えなくしてやるからな』とか、いろいろなことを言うわけです。それから、なぜか娘の名前を知っていた。『〇〇ちゃん、元気? ふふふ』。心配になって、下校時に迎えに行った。そんな電話がじゃんじゃん続いた」 ■「サタン」と呼ばれて  のちに脱会信者から話を聞くと、「僕は彼らの中では『サタン』と呼ばれていたようです。そりゃサタンが気を悪くするよと、冗談を言ったものですが」。 「仲間に嫌がらせ電話について相談すると、受話器録音装置を持って、駆けつけてくれた。それで『さあ、証拠をとっているからどんどん言え』って言ったら、無言電話に変わった。それでも1日100本以上かかってくる。仕方ないので、電話機を布団蒸しにした」  こんなこともあった。  最初はワゴン車の中にいた男たち。だが次第に家の入り口をうろつくようになった。 「あまりにもひどいので、こちらも攻勢に出ることにしました。カメラを持って出て行って、証拠を収集するからと言って、バチバチ写した。そうしたら、50メートルくらい離れた公園から見張るようになった」  ある日、その見張りを巻いてそっと横から近づき、腕をつかむと大騒ぎになった。 「男は『藤森さん、何するんだよ! 警察呼ぶぞ』って言うから『いい考えだ、一緒に行こう』と、駅前の交番に向かって歩いていった。途中、『電話させてください』って言うから、公衆電話で立ち止まったら、電話かけるふりして突然100メートル11秒ぐらいの感じで逃げていった」  87年半ばになると新聞やテレビも霊感商法追及キャンペーンを始め、大々的に報じられるようになった。 「このとき報じたメディアも統一教会から抗議を受けているはずです」と、藤森さんは言う。  秋になると、国会でも霊感商法が問題視され、旧統一教会は次第に霊感商法から手を引くようになる。 ■オウム真理教と重なる手口  藤森さんによると、旧統一教会の活動は大きく、三つの時期に分かれると言う。 「60年代、70年代は宗教団体であることを隠して大学生らを勧誘して洗脳し、信者にしていった。これが原理運動で、いわば『人の収奪』です。80年代は霊感商法による『金の収奪』の時期です。それでメディアは大騒ぎをするし、警察も乗り出してきたので、彼らは90年代から『内向』の時期に入るんです。それが今に至るまでずっと続いている」  内向の初期である90年代にはタレントの桜田淳子や山崎浩子らの『合同結婚式』がワイドショーで取り上げられたが、それらは教団を追及、糾弾するという姿勢では報道されなかった、と藤森さんの目には映った。 「内向の時期に入った彼らが何をやったかというと、真面目な善男善女を洗脳して『かたい信者』にしてしまうんです。教団に引っ張り込む騙しの手口はそれほど変わらないんですが、信者として『もう大丈夫だな』と判断したところで、全財産を献財させる」  そのやり口は、かつてオウム真理教が信者に対して行ったことと、ある面ではよく似ていると藤森さんは言い、こう続ける。 「今回の(安倍元首相銃撃)事件でぼくがハッとしたのは、山上容疑者のような『2世』の問題です。それまでまったく気がつかなかった」  霊感商法が下火になったとき、旧統一教会に対する追及を止めたことに対して「あれでよかったのかな、という思いをいま持っていることは事実です」と吐露する。 「原理運動や霊感商法のときは、被害者がやがて加害者になった――そういう構造だったんです。ところが2世は純粋な被害者です。教団に洗脳された親のもとで育った子どもたちがあんな苦労してるなんて、思いもしなかった。この2世の問題を放置してきた社会やメディアも、ある意味、加害者側にいると思います。そのことを今回の事件で一番強く感じています」 ■瞬間風速で終わらせない  最後に、7月11日に旧統一教会が会見を開いて以降、マスコミの報道姿勢についてはどう感じているのか? 「この問題を瞬間風速、一過性で終わらせるのではなくて、きちんと伝えようとする姿勢が伝わってきます。おせじではなくて、本当にそう感じています。特に日本テレビが頑張っている。『情報ライブ ミヤネ屋』とか。それからTBS、テレビ朝日も頑張っている。でも、なんといっても偉いのは、ジャーナリストの鈴木エイトさんです。彼は、このような事態にならない間も1人で取材を続けてきた。その姿を見ていると、ウォッチし続けることはつくづく大切だと改めて思う。敬意を持って彼を迎え入れ、伝えようとする番組の姿勢も立派だと思います」 (AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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    関ジャニ∞「18祭」レポート 25万人超が目撃した「真っ盛りの青春」とは

     関ジャニ∞のデビュー18周年のスタジアムライブ「18祭」が計4日間にわたり開催、計25万4千人を動員した。その模様をレポートする。AERA2022年8月8日号の記事を紹介する。 *  *  *  地上25メートル、メインステージの上空デッキに、巨大な「18」が縫い込まれた、きらめく衣装を着た5人が現れた。 「あっついなぁ。皆さんLet you go……いや、熱中症には気を付けて。天候は晴れ。日産スタジアムにて18祭、いざ開幕!」  丸山隆平が茶目っ気たっぷりに開会宣言を行うと、スタジアムを埋め尽くす7万2千人の“エイター”(関ジャニ∞のファンの呼称)は、歓声の代わりに大きな拍手を送った。  オープニングは「無責任ヒーロー」。メインステージに降り立ち、心から楽しそうにパフォーマンスを届ける5人に、エイターもペンライトを振り、同じ振りを踊って喜びを伝え合う。「がむしゃら行進曲」では「“今日の日”にありがとう」を「エイターにありがとう」と歌うなど、愛を感じる替え歌が随所にちりばめられ、この日を待ちわびたファンの心に寄り添った。  注目は「ジャニーズメドレー」。ピンクの衣装にはじける笑顔と甘い歌声で「なにわ男子」のデビュー曲「初心LOVE」を完コピすると、会場には笑いとどよめきが。「A・RA・SHI」では、「嵐」のデビュー当時のMVが流れる横でスケスケの衣装を着た5人が登場し、村上信五がコテコテの大阪弁で“サクラップ”を披露。関ジャニ∞にしか許され……もとい、できないパフォーマンスで「ええじゃないか」(ジャニーズWEST)まで13曲を紡いだ。  舞台装置もド派手だ。夏のお祭り曲「罪と夏」や「熱闘甲子園」のテーマ曲「オモイダマ」などのパフォーマンス中には、高さ20メートルものウォータースプラッシュが何度も噴き上がり、メンバーも一部のエイターもずぶ濡れになった。水を滴(したた)らせながら、サッと髪を結う安田章大、オールバックにかき上げながら歌い踊る大倉忠義や丸山の姿の、なんとセクシーなこと。 ■最新曲をバンド演奏  中盤のMCタイムでは、村上のドリンクがないハプニングが起きた。「誰が届けに来るか、チャンスやぞ」と、横山裕が関西ジャニーズJr.を煽る。だが、いざ水が届くと横山が強引に奪い、自ら村上に手渡した。村上の「お前かい!」に会場は大爆笑。息の合った掛け合いに、大倉、安田、丸山は「夫婦漫才や!」と笑い合った。  後半戦は、彼らが戦隊ヒーローに扮する「エイトレンジャー」が登場、続いて関ジャニ∞の妹分の「キャンジャニ∞」が応援に駆け付けた。キャンジャニは彼らが女装するアイドル。仲の悪い(設定の)倉子(大倉)と丸子(丸山)が小競り合いを繰り広げ、賑々しくステージを彩った。  いよいよ最後は、関ジャニ∞の代名詞でもあるバンド演奏へ。大倉は時に立ち上がってドラムを叩き、横山はトロッコに足をかけてギターをかき鳴らす。楽しくて仕方ないという表情の安田、無造作に髪を下ろし真剣な表情でベースと向き合う丸山、村上はキーボードを弾きながら片手で客席を煽る。昨年、5人でレコーディングし直した「ここに」から、横山が猛特訓し、ギターとしてレコーディングに初参加した最新曲「喝采」まで8曲を届けると、会場のボルテージは最高潮に達した。 ■これからも走り続ける  1人ずつ感謝も語った。 「振り返れば悔しいこと、つらいこと、腹立つこともたくさんありました。でもこういう景色、メンバーと共に過ごす時間が、それも必要な時間だったと再認識させてくれる。いろんな捉え方はありますが、僕はまだ18年だと思っています」(村上)  丸山は自身のメンバーカラーであるオレンジに染まった会場に声を詰まらせ、涙を堪えた。 「デビュー当時はペンライトの意味とか歓声の意味とか、何もわからず無邪気に楽しんでました。続ければ続けるほど、その重さと後押ししてくれる強さに胸を打たれています」(丸山) 「ここまで連れてきてくれてありがとう! 俺らは人情に恵まれたグループです。みんなの人情のおかげで、どんなことがあっても走ってこられた。だから、真っ暗闇の中に独りぼっちと感じた時も、必ず関ジャニ∞という明かりが灯されてることは忘れないでください」(安田) 「セットリストを見て、18年、いろんなことやってきて、いろんなこと乗り越えてきたなと思いました。ただ、ここからも僕らは走り続けます。どうかついてきてください」(横山) 「あきらめずに走ってきてよかった。この景色を見られる人が世界にどれくらいいるんだろう。僕ら、幸せもんだなって思う半面、この景色じゃないと満足できない体になってしまっている。また皆さんと会える日を楽しみにしています」(大倉)  フィナーレは「青春FIREWORKS」。800発の打ち上げ花火が華やかに締め括った。  関ジャニ∞は4日間の18祭で、グループの歩みを感じる約30曲を計25万4千人に届け、魅了した。だが、18歳といえば青春真っ盛り。横山の言葉通り、青臭く泥臭く、これからも走り続けるのだろう。(ライター・大道絵里子)※AERA 2022年8月8日号

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    木下優樹菜さん「脳波でADHDが分かった」発言で物議 医師らは全否定

    <私のADHD、発達障害に関して話したいと思います>  元タレントの木下優樹菜さんが7月25日、自身のYouTubeチャンネルに「ADHDの私から伝えたい事があります【ユキナの告白】」と題した動画を投稿した。  木下さんは動画のなかで<なんで優樹菜はそうだ(ADHD)って分かったかっていうと、ブレインクリニックというクリニックに行ったんですよ。脳の周波を調べに、ちゃんと自分を知ろうと思って>と発言し、自身の脳を表したものだという資料を示してこう続けている。 <普通の34歳の女性はこれ、私はこれ。ぱっと見ですぐわかるでしょ。なんか全然違わない?脳の中が混線、こんがらがっちゃってんの。で、前頭葉ってところが働いてないの。この前の水色。で、急にこの赤くなってるところ(後頭部のやや右)、すっごい発揮しちゃってるんだって。もう先生の書き方もすごいから。思考回路・伝達グルグル・脳疲労。常にずっと何かを考えている状態。>  この動画は大きな反響を呼び、公開から2週間たった8日現在で44万回以上再生されている。著名人がADHDを明かしたことで理解促進につながるという声の一方、過去の騒動を指して「障害を免罪符にするな」との批判もあった。そして同様に注目を集めたのが、「脳の周波を検査した(ことでADHDがわかった)」とする発言だ。  記者自身、木下さんの動画を見て率直に驚いた。  過去にADHDの診断を受けている知人からは、複数回の診察や心理検査を受け、家族への聞き取りまであったと聞いていた。初診から診断まで2カ月ほどかかったという。それが脳波を見ればわかるようになったのだとすれば、医学の大きな進歩だ。   だが、真偽を確かめようと複数の精神科医や脳科学の研究者に話を聞くと、皆一様にそれを否定した――。  ここでまずは、ADHDについて改めておさらいする。精神科専門医で、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介医師はこう解説する。 「ADHDは注意欠如・多動症といい、発達障害の一種です。忘れ物やなくしものをしたり、集中力が続かなかったりする『不注意』が多く、衝動的な行動や落ち着きのなさが特徴です。発達障害は行動や認知の特性によって、ADHDのほか、コミュニケーションが苦手で特定のものごとに強いこだわりがある自閉スペクトラム症(ASD)、『読み』『書き』『計算』など特定の学習ができない学習障害(LD)の3つがあります。いずれも、知能や認知のデコボコが大きい状態です」  木下さんは動画で、「昔から物をよくなくし、なんでも忘れてしまう、スケジュール管理ができない」などと語っている。益田医師によると、実際に診察しない限りADHDかはわからないとしつつ、これらはADHDの典型的な症状だという。  一方、脳波をつかった診断に対してはこう首をひねる。 「発達障害の診断は『DSM-5』というアメリカ精神医学会の基準に当てはまるかどうかで判断します。ADHDの場合、不注意と多動性・衝動性それぞれに9つの症候が示され、そのどちらかで少なくとも6つ以上に当てはまらなければ診断できません。『12歳前までに症状がみられる』などの要件もある。だから本人への問診はもちろん、家族への聞き取りや通信簿など過去の記録を集めることになる。脳波の研究が進んでいるのは事実ですが、あくまで研究段階で、実際の現場で発達障害の診断に脳波検査を用いることはありません」  昭和大学客員教授なども兼務するハートクリニック横浜院院長の柏淳医師も、同様にこう断言する。 「木下さんが受けたとされるのはQEEG(定量的脳波検査)という、通常の脳波を図面上に落として色付けするもので、特別な検査ではありません。また、脳波検査で発達障害の診断ができるということは世界中どこの診断ガイドラインにも書いていません。例えば木下さんは動画で前頭葉の働きが弱いと言っていますが、前頭葉の機能が弱くなる原因はいくらでも考えられます」  ASDと合併する割合が高い、てんかんなどの疾患の有無を探るために脳波検査を用いることはあると言うが、発達障害そのものの診断や評価に脳波を使うことはないという。  なお、動画で木下さんは「正式な診断を受けた」とは明言していない。また、ブレインクリニックもAERAの取材に対し、木下さんの診断結果は「来院の有無を含めて回答できない」としつつ、発達障害について「脳波検査のみで診断したり、『グレーゾーン』などと伝えたりすることはなく、問診・知能検査・生活状況のヒアリングなどを複合的に行っている」としており、木下さんが脳波以外の適切な診断を受けている可能性もある。ただ、木下さんの動画を見た人の多くが「脳波で発達障害が診断できる」と誤認するのも無理からぬことだろう。  また、クリニックのホームページにはQEEGによって「ADHD特性、アスペルガー特性、学習障害特性、不安特性、うつ特性などを診断することが出来ます」と明記されている。  さらに、問題が大きいのは検査後の「治療」だ。木下さんが訪れたというブレインクリニックでは、発達障害の治療としてrTMS治療(経頭蓋磁気刺激)を提唱している。rTMSとは、特殊なコイルを用いて大脳の特定の部位の神経細胞を繰り返し刺激する治療法のことだ。ブレインクリニックのホームページには、こうある。 <当院の特徴は、大規模標準データベースと比較し、客観的データで診断するQEEG検査と最先端の治療であるTMS治療を導入している点です。>  柏医師はこう解説する。 「rTMSは現在、難治性のうつ病でのみ保険適応されている治療法で、発達障害の症状が改善されるというエビデンスはありません。にもかかわらず、高額な自由診療としてこれを勧めるクリニックが存在するんです。私の病院にも、『他院でrTMSを受けたがよくならない』『rTMSをすすめられ、高すぎるから断ったらほかにやることがないと言われた』といった患者さんが来院します」  2020年には、日本精神神経学会がrTMS治療について「発達障害圏の疾患(自閉症、ADHD、アスペルガー障害など)やそれに関連する症状、あるいは不安解消や集中力や記憶力の増進などに対する効果は、海外においても確認されていません」との注意喚起を出している。  発達障害と診断されたり、自身もそうかもしれないと悩んだりする人は少なくない。柏医師はこう続ける。 「日本の健康保険は非常に優れたシステムで、適切だと認められた治療は保険適応されています。脳波を使った検査やrTMSによる発達障害治療は研究こそ進んでいますが、今の段階ではがんの民間療法のようなものと捉えていい。夢物語に踊らされず、適切な診断と治療を受けてほしいと願っています」  なお、ブレインクリニックのAERA編集部に対する回答は次の通り。 ――木下優樹菜さんが貴院にてQEEG検査を受け、ADHDと診断されたのは事実ですか。 <来院の事実の有無にかかわらず、当院としては回答できません。> ――貴院では、QEEG検査のみ、またはQEEG検査の結果を主な理由としてADHDを含む発達障害であるとの診断を行ったり、発達障害の傾向(グレーゾーンなど)であると患者に伝え、治療を促すことはありますか。 <ご指摘のような事実は全くございません。問診(ASRS-v1.1. )、WAIS™-IV知能検査、生活状況のヒアリングなど複合的に行っております。> ――多くの医師が「QEEG検査で発達障害を知ることはできない」と指摘しています。この指摘に対する貴院のご見解をお教えください。 <QEEG検査のみを根拠に診断を行っているという事実はございません。多面的な評価が必要と考えますし、当院は問診(ASRS-v1.1. )、WAIS™-IV知能検査、生活状況のヒアリングなど複合的に行っております。> ――日本精神神経学会では2020年、rTMS治療について注意喚起(本文参照)を行っています。これに対する貴院のご見解をお教えください。 <当院は、注意喚起の対象にはなっておらず、特に見解は御座いません。> ――QEEG検査による発達障害診断やrTMSによる発達障害の治療は、今後の発展が期待される分野です。貴院でのQEEGによる発達障害診断やrTMS治療の蓄積について、論文などとして広く発表するお考えはありますか。 <研究成果の発表にも力を入れております。> (編集部・川口穣) ※AERAオンライン限定記事

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    「蚊」を見失ったらどこを探せばいい? 専門家たちに聞く撃退法&かゆみ対策

     今年もヤツの季節がやってきた。おなかの卵を育てるため、血を求めて飛び回る。部屋に1匹いるだけでイライラは募るもの。家の中だけでも安全地帯にして、かゆーいストレスから逃れたい。専門家の英知を結集して、対策をまとめました。 *  *  *  ぷーん。自室で原稿を書いていた記者の目の前を一匹の蚊が悠々と横切った。部屋はマンションの10階。一体どこから入り込んだ? 「人間の後についてエレベーターに乗ったり、ビル風に乗って20階くらいまで吹き上がってきたりするんです」  そう解説してくれたのは、殺虫剤「バルサン」を製造販売するレックの技術顧問・津田良夫さん。人についてくるのは仕方ないとして、ちゃんと網戸は閉じているんですけど……。 「網戸に引っかかっても、表面を歩いて抜け穴を探します。5ミリ程度の破れ目や隙間があれば連中は入ってくる。地下の排水設備などで生まれた蚊が、排水管や通気口を通って侵入することもあります」  やはり蚊を絶対に家に入れないのは難しそう。せめて部屋にいる蚊は確実に迎撃したいが、ふらふらと飛ぶ姿を目で追っていると、ふっと消えることがある。これは蚊の飛び方が不規則で、急に予測不能な方向に動くからだという。見失ったらどこを探せばいいのか。 「昼行性のヤブカ類は壁などどこにでも止まりますが、夜行性のイエカ類は暗がりを好みます。テーブルの下や家具の裏などを探すか、部屋の照明を暗くして刺しに来たところをたたくのがよいでしょう」(津田さん)  たたくときのポイントは、止まっているか、止まろうとしている蚊を狙うこと。飛んでいる蚊は周囲を警戒しているので素手で仕留めるのが難しい。津田さんは自宅に捕虫網を置いているそうだ。  ただ、手に頼らずとも撃退できる方法はある。手軽さから人気を集めているのが、ワンプッシュ式の蚊取り剤だ。  フマキラーの開発研究部員、中原良成さんは「ボタンを1回押すだけで霧状の薬剤が部屋中に広がり、速効性があります。床や壁についた薬剤は再浮遊するので、後から入ってきた蚊にも効く。当社製品の場合、4.5~8畳の部屋にワンプッシュすると、効果が24時間続きます」と話す。  大半の蚊取り剤に含まれるのはピレスロイドという成分。虫の体内に入ると神経を異常興奮させ、筋肉の過収縮や呼吸困難を引き起こす。人間の場合は虫よりも神経系が複雑なため、異常興奮が起きる前にピレスロイドが分解されて無害になる。  肌に塗るタイプの虫よけも進化している。2015年に国内で承認されたイカリジンという成分は、皮膚や衣類への刺激が従来の成分(ディート)より弱く、子どもへの使用制限がない。においもないため各社が続々と製品化している。ただ、塗った部分にしか効果を発揮しないのはディートと同じ。蚊は塗り残した場所を狙って刺しに来るので、気をつけよう。  蚊の襲来から逃れるには、発生源もたたいておきたい。まずはボウフラが湧く水たまりをなくすことだ。害虫駆除を請け負うアペックス産業の佐々木健(たけし)・研究室部長に、対策のポイントを聞いた。 「庭に放置したじょうろやプランターの受け皿などは代表的な温床です。家の周りの水たまりを一掃しても蚊が減らない場合、道路の側溝に作られた雨水桝(ます)が原因でしょう。私も、自宅前の雨水桝に殺虫剤を入れたら、蚊が出なくなりました」  しかし、努力もむなしく蚊の餌食になることもある。針を刺した蚊は、皮膚内をまさぐって血管を探す。うまく血が吸えないと、別の箇所に移動して再び刺す。刺すたびに麻酔や血を固まりにくくする作用のある唾液(だえき)を注入し、その唾液成分がかゆみを引き起こす。  動物性皮膚疾患に詳しい九段坂病院の谷口裕子医師によると、かゆみが起きるのは、引っかくことで体内に入った異物を排除しようとする防御システムが作動しているからだという。ただ、かきすぎて皮膚を傷つけると、細胞からかゆみの神経を刺激する物質が出て、ますますかゆくなる。 「皮膚を傷めずにかゆみを抑えるには冷やすのが一番です。ちまたで言われている『爪を押し当てて×印をつける』『セロハンテープを貼る』『なめる』といった方法は、どれも間違い。テープははがすときに角質が取れるし、なめるのは『舌なめずり皮膚炎』という疾患があるように、唾液の消化酵素で肌が荒れてしまいます」(谷口医師)  なお、年をとってから蚊に刺されなくなったと感じる高齢者は、刺されないのではなく、免疫ができたことで「刺されても反応しない」状態になったと考えられる。 「かゆみや腫れといった蚊へのアレルギー反応は、刺された直後の『即時型反応』と、数時間後に始まる『遅延型反応』があります。この2種類の反応の出方は、刺された回数によって変化すると言われています。乳幼児期は遅延型のみ、幼児~青年期は両方、青年~壮年期は即時型のみが起き、老年期になると何の反応も起きないことが多い。繰り返し刺されるうちに体が慣れ、過剰な炎症を止める作用が働くのでしょう」(同)  祖父母が「うちの庭に蚊はいない」と思っていても、遊びに来た孫がボコボコ刺される可能性もあるというわけだ。  彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず。まずは蚊の生態や自分の体を知ることから、戦いは始まる。(本誌・大谷百合絵)※週刊朝日  2022年8月12日号

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    「山上容疑者は家庭がしっかりしていれば」旧統一教会系の自民議連トップ 奥野議員が激白

     旧統一教会と自民党との関係についてさまざまな指摘があるなか、旧統一教会の友好団体と自民党の国会議員らでつくる「日本・世界平和議員連合懇談会(平和議連)」の会長代行、奥野信亮衆院議員は「何が問題なのかわからない」と主張する。本当に問題はないのだろうか? 奥野議員がAERAdot.に詳細を語った。  平和議連は、元閣僚を含む自民党議員が役員を務め、会員数は80人を超える(総会資料から)。今年6月の総会では、平和議連の顧問で、旧統一教会の友好団体である世界平和連合の会長などを務める梶栗正義氏が講演。翌月に控えた参院選についても話し合った。  総会で配られた資料にはアンケート用紙も入っており、質問には「次期参議院選挙の地方区で、世界平和連合の応援を希望する議員がおられればお聞き下さい」と書かれていた(7月29日のAERAdot.で詳報https://dot.asahi.com/dot/2022072900086.html)。  選挙協力などが、結果的に旧統一教会の会員獲得につながりかねないとの批判の声は大きく、岸信夫防衛相など関係した議員からは「関係を見直す必要がある」などと声が出始めている。  それでも奥野議員はなぜ「問題ない」と強調するのだろうか。主な一問一答は下記の通り。 * * * ――この議連はどういう議連なのか?  日本・世界平和議員連合懇談会は、旧統一教会とは無関係です。我々は世界平和連合とお付き合いをしている。なぜ付き合っているかというと、世界の政治社会情勢を教えてくれるから。世界平和連合は、世界を平和にしたい、そのためには家庭が第一といっている。それはその通りだと思う。  付き合い始める前に、文鮮明氏とかかわりがあるのかと尋ねたら、世界平和連合側が「ない」といった。だから、なぜ世界平和連合との関係を問題視しているか、私にはわからない。 ――わからない?  この議連は、議員が集まって、世界平和を追求していくということ。これは間違いのない取り組み。統一教会とは関係はない、と確認した。  世界平和連合を通じて、外国の国会議員との交流もある。世界平和連合から「海外からの議員に会ってくれ」と言われたら会っている。おかしい団体とは思っていない。  世界平和を実現するためには、家庭が第一。そこに共感した。家庭がしっかりすることが、世界平和につながると思っている。山上容疑者は家庭がしっかりとしていれば、こういうことは起こらなかったのではないかと個人的には思う。 ――世間は旧統一教会と関係があると見ているが?  世界平和連合に尋ねたら、「関係がない」と言った。私と話すときは、文鮮明氏の話は一切出てきません。文鮮明氏の統一教会が問題を起こしたことは知っています。それ以来、私も良い感情を持っていません。だから、「かかわりがあるなら世界平和連合とはかかわりをもたない」と言った。 ――具体的な活動は?  世界平和連合と付き合うなかで、世界の政治社会情勢について学ばせてもらえる。アメリカの国会議員やカナダの国会議員など、付き合うチャンスがあるからプラスだと思っている。 ――選挙については?  世界平和連合が選挙応援をしてくれるというから、「この人を応援してくれ」と言ったことがある。「当落線上にいて、票が少し足りないから、応援してくれ」と。参議院議員が多いですね、選挙区が広いので。 ――応援とは具体的に票? それとも運動員?  どういう形かはわからないが、結果として、良い結果をもたらすケースが多い。 ――今回の参院選では、旧統一教会が井上義行氏を応援したと聞いたが?  統一教会じゃなくて、世界平和連合では? ――伊達忠一元参院議員が、北海道テレビの取材で安倍元首相に旧統一教会の票を頼んだと言っている。  そこは認識の違いがある。伊達氏の中では旧統一教会という認識なのかもしれない。世界平和連合が今回は井上氏を応援するという話は、事前に私も聞いていた。前回支援を受けた宮島善文氏は今回、降りると。それを聞いて、私は「大事にすればいいのに」と思った。この件について、安倍元首相からは何も聞いてない。 ――会長代行、事実上のトップですよね?  そう。井上氏の支援は前の会長のときに決まった話だと思う。 ――前の会長は誰?  それは言えない。 ――いま会長がいないのはなぜ?  それは色々あって。私は短期間だけと言われている。3、4カ月で交代すると思う。 ――票を差配しているとなると、自民党と組織的にかかわっているようにも見えるが?  自民党とのかかわりではない。あくまでも議員とのかかわり。私の場合は、うちのおやじからのかかわりで付き合っている。「国際勝共連合」だけど、秘書によると、おやじは支援してもらっていたようだ。世界平和連合から「おやじさんにはずいぶん協力してもらった」と言われことがある。おやじと勝共連合の関係は強かった。関わり始めたいきさつは、それぞれの議員で違うと思う。  議連の相手としては、世界平和連合としてしか付き合っていない。私は文鮮明氏が嫌いだと言っているから。私には、世界平和連合と統一教会の関係はまったく見えない、出てこない。「国際勝共連合」についてはたまに出てくるが。 ――今年6月の総会の案内状には「80人を超える入会」とある。これは自民党だけ?  全員自民党の議員だ。皆、世界平和に焦点を当てて、家庭が第一ということに賛同して参加している。脇のメリットとして、選挙の応援もある。なかには、それが目当ての議員もいるかもしれないが。  私は衆議院の比例だから、個人名を書いてもらうことはない。だから、世界平和連合から一度も応援をしてもらったことはない。 ――今年6月の議連の総会では、奥野議員が「この懇談会に入っていればしっかり(選挙で)応援してくれる」という趣旨の発言をしたと聞いたが。  もし少し票が足りない場合は言ってくれといったかもしれない。選挙の応援の話は普通に話している。世界平和連合は選挙応援で何も言ってこない。「票を持ってこい」とか「小選挙区は自民でいいけど、比例は~」とかはない。  自民党と関係を持つことが、プラスになると思っているのではないか。向こうから政策について強く押し付けてくることはないが、自分たちの考え方はこうだ、というのは言ってくる。それは共感できるところなので、受け入れている。  * * *  最後も奥野議員は、「世界平和連合と統一教会は関係のない団体と認識している。何が問題なのかわからないというのが率直な考えです」と改めて強調し、今後も議連を続けていく考えを示した。 (聞き手・吉崎洋夫)

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    安倍元首相銃撃事件でジャーナリスト・青木理氏が感じた「不気味な兆候」とは

    安倍晋三元首相が選挙演説中に銃撃され、死亡するという前代未聞の事件から一夜が明けた。犯行の動機や背景はいまだ謎に包まれているが、「安倍三代」(朝日新聞出版)の著書があるジャーナリストの青木理氏は今回の事件をどう捉えたのか。緊急インタビューした。 *  *  * まず大前提として、どのような政治信条があろうと、その政治家にいくら批判があろうと、今回のようなテロを断じて容認することはできません。改めて言うまでもないことであり、問題はその先にあります。  そのうえで元首相が凶弾に倒れた衝撃的な事件を考えると、これはやはり不気味な兆候と捉えるべきなのか。だとすれば、なんとしてもそれを押しとどめる必要があります。  昨年亡くなったノンフィクション作家の半藤一利さんと生前対談した際、半藤さんが「社会が戦争に向かう危険な兆候」をいくつか挙げていたのを思い出します。(1)被害者意識と反発が国民に煽られる、(2)言論が不自由になる、(3)教育が国粋主義に変わる、(4)監視体制が強化される、(5)ナショナリズムが強調される、そして(6)テロの実行が始まるーー。  当時は重大テロなど起きていませんでしたが、その他の要素はかなり揃ってしまっているのではありませんか、と尋ねる私に、半藤さんはこう即答しました。「ええ、しかもそのスピードは戦前より速い」と。  私もそうですが、昭和史の探索に生涯を捧げた半藤さんは、皮相なナショナリズムや排外的風潮が強まる昨今のこの国の政治を危ういものと捉え、強く憂いていました。今回はそうした風潮を煽る側だった元首相がテロの凶弾に襲われたわけですが、それはいったいなぜだったのか。現時点では判然とせず、犯行の動機や背景の解明を待つしかありませんが、少なくとも半藤さんのいう「危険な兆候」の最後のピースを埋めてしまうような結果につなげるわけにはいきません。  ですから、今回のテロに政治やメディアは決して萎縮せず、と同時に犯行の動機や背景の解明を急いでそれと向き合い、テロの土壌となった課題や問題点が浮かびあがったなら、その改善に全力で取り組むべきでしょう。  拙著「安倍三代」でも記しましたが、安倍氏は少なくとも政界入りする前の青年時代には、強い政治信条や信念を持っていた形跡はまったくありません。母方の祖父である岸信介氏に強い敬慕の念を抱いているようでしたが、しかし戦前に特高警察に抗った父方の祖父・安倍寛氏のような胆力や反骨心、あるいは戦中に特攻隊を志願しながら生きながらえた父・安倍晋太郎氏のような歴史観もバランス感覚もなく、名門政治一家の跡取りとして生を受けた“おぼっちゃま”にすぎないという印象を持ちました。  これは妻の昭恵さんも言っていましたが、その期待に応えるため、自らが描く偉大な政治家像を「演じていた」側面もあったでしょう。そんな安倍氏は、首相として7年8カ月という歴代最長政権を成し遂げましたが、客観的に見てそれに見合う“レガシー”を遺したとはいえません。だから首相退任後も影響力を保持しようと躍起になり、自らの政権を否定するような動きには公然と横槍を入れたのかもしれません。  その振る舞いは見苦しいものだったと私は思いますが、そうした途次、しかも重要な国政選挙の最中、まさかこのような形で命を奪われるとは、誰一人として想像していなかった。凶行の動機や背景に重大な意味が潜んでいるのか、それとも突発的で政治的背景の薄い単独犯なのかはともかく、首相の座を目前にしながら病に倒れた父・晋太郎氏と同じ67歳で世を去ったことに、奇妙な符合のようなものも感じます。  繰り返しますが、今回のようなテロは決して容認できません。ただ、人の衝撃的な死は、時にすべてを一色に塗りつぶしてしまいかねない力を持ちます。過去は美化され、冷静な批評や批判を許さない風潮にも覆い尽くされてしまう。それもまた極めて危険なことであり、今回の事件をそういう意味での社会の“曲がり角”にしてもならず、安倍氏の政治姿勢や政治手法がもたらした「功罪」の「罪」がなんであったかも、あらためてきちんと見つめ直されなければならないと思います。  また、今後は「テロ対策」などが声高に叫ばれることも予想されますが、それを契機として例えば警察による監視体制ばかり強まれば、それもまた自由な社会を窒息に追い込んでしまいかねません。投票日が目前に迫った参院選を「弔い合戦」のように矮小化することも避けるべきです。元首相の死を悼むことと、政治への評価は分けて考えなければならない。そのためには、まさに言論の砦たるメディアとメディア人の役割が問われています。(構成=AERA dot.編集部・作田裕史)

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    うるさい「高圧的な相手」を一瞬で黙らせるすごい一言

    「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 本稿では、本書より内容の一部を特別に公開する。 猛烈に怒鳴り始めた相手  あるとき、となりの部門のSと私の部門のMが、オフィスの廊下で激しく言い合っていた。 私はMの上司として、両名とSの上司に対し、会議室で話をはっきりさせましょう、と声をかけた。  みんなで重い足取りで会議室へ入っていったとたん、たがが外れたように、SがMと私に向かって、猛烈な勢いで怒鳴り始めた。  私は上司として仲裁すべき立場だったが、あまりの権幕に度肝を抜かれてしまい、まともにものを考えられなくなってしまった。無意識に自分を守ろうとして、脳内の防衛機制が働いたかのようだった。  目の前で破裂している感情の爆弾から、身を守らないと……。だが、会議室に逃げ隠れできる場所などあるはずもない。  私はただ突っ立って、耳を傾けるしかなかった。Sは相変わらず延々と集中砲火を浴びせ、私に口をはさむ隙も与えなかった。  あまりにも非理性的な振る舞いをこれでもかと見せつけられているうちに、Sには本当に言いたいことなどあるのだろうか、ただ怒りをぶちまけて、ストレスを発散したいだけなんじゃないか、と思えてきた。 冷静な一言で「現状の確認」をする  私はSがマシンガンのごとく怒鳴るのをやめるまで待ち、Sの上司のほうへ顔を向け、落ち着いた口調で言った。 「すみません、それでいま、いったいどういう状況なんでしょう?」  あとから聞いたことだが、まさに私のこの発言によって、その場の空気が一変したらしい。  それまでずっと、Sは人を見下した態度で、私のことを非難し続けていた。  だが私はこのひと言で、穏やかながらきっぱりと、ふたつのことを伝えたのだ。  第一に、この状況について、落ち着いて説明すべきなのはマネージャーであり、みんなで大騒ぎして怒鳴り合ってもしかたないこと。  第二に、感情をぶつけてもかまわないが、最終的には理性的に話し合わなければならないことだ。  実際には、あのときの私はそこまで考えていたわけではない。Sのあまりの権幕に茫然としてしまっていた。  だが私の発言によって、Sの上司は、部下にこれ以上好き勝手に怒鳴らせていては、どうにもならないと気づいたのだ。  こうしてやっと普通のやりとりができるようになると、私にも、ことの次第が理解できた。そして、問題の核心もつかめた。メールの文面の解釈がそれぞれ違っていたことが大本の原因だった。  そこで、私は個別のやりとりで行き違いが生じるのを防ぐために、グループ間でやりとりする方法を体系化するなどの改善策を提案した。  こうしてやっと、事態は無事に収拾した。(中略) 焦らずに、参戦をちょっと遅らせる  相手の怒りに対し、こちらも応酬しなければ、とあせる必要はない。どうあがいても、そういうのは内向型の得意技ではないからだ。  まずは落ち着いて、直接対決を遅らせよう。そして、相手の立場からも問題を考えてみる。たとえば、自分なりに状況を分析してみるのだ。 「彼は私の上司。激怒しているけど、なんでいきなりキレたのか。誰かがへまでもやらかした? 私はべつに、地雷を踏むような真似はしてないよね?」  そうやって、相手の感情や行動の理由をあれこれ想像していると、解決の糸口が見えてくる。  直接対決のタイミングを遅らせるのは、内向型にはかなり役に立つ。  もし相手が一方的に怒鳴り続けていても、無理して反論したり、あわてて説明をしたりする必要はない。相手がついに黙るまで怒鳴らせておけば、こちらは考える時間を稼げるというものだ。  もし早急な対応が必要で、相手から即答を求められたら、できる限り時間稼ぎをしよう。  たとえば、こんなふうに提案する。 「お求めの情報がいま手元にないのですが、すぐに手配します。〇〇部の責任者に関連情報をまとめさせ、20分後にあらためてご連絡します」 (本原稿は、ジル・チャン著『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』からの抜粋です) ジル・チャン(Jill Chang)ミネソタ大学大学院修士課程修了、ハーバード大学、清華大学でリーダーシップ・プログラム修了。ハーバード・シード・フォー・ソーシャル・イノベーション、フェロー。アメリカの非営利団体でフィランソロピー・アドバイザーを務める。過去2年間で行ったスピーチは200回以上に及ぶ。15年以上にわたり、アメリカ州政府やメジャーリーグなど、さまざまな業界で活躍してきた。2018年、ガールズ・イン・テック台湾40アンダー40受賞。本書『「静かな人」の戦略書』は台湾でベストセラー1位となり、20週にわたりトップ10にランクイン、米ベレットコーラー社が28年の歴史で初めて翻訳刊行する作品となり、第23回Foreword INDIES「ブック・オブ・ザ・イヤー」特別賞に選出されるなど話題となっている。現在は母国の台湾・台北市に拠点を置きながら、内向型のキャリア支援やリーダーシップ開発のため国際的に活躍している。Photo: Wang Kai-Yun 神崎朗子翻訳家。上智大学文学部英文学科卒業。訳書に『やり抜く力』『NEW POWER』(ともにダイヤモンド社)、『スタンフォードの自分を変える教室』『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』『フランス人は10着しか服を持たない』『FOOD ANATOMY 食の解剖図鑑』(以上、大和書房)、『食事のせいで、死なないために』[病気別編][食材別編](ともにNHK出版)、『存在しない女たち』(河出書房新社)、『花の子ども』(早川書房)などがある。

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    「人生の真実を描いた小説は無傷で書くことはできない」。絶縁していた末期ガンの父を小説に書くか躊躇する33歳女性に、鴻上尚史が伝えたこと

     10年以上前に絶縁した父が末期ガンだと連絡をうけ、動揺する33歳女性。自分の書く小説に父を反映させたいが、過去の辛い記憶が蘇るのではと躊躇する相談者に、鴻上尚史が指摘する、傷つかずに「真実の感情」に迫ることが両立しない理由とは。 【153相談】10年以上前に絶縁した父が末期ガンだと連絡を受けました(33歳 女性 おみお)  鴻上さん、はじめまして。  私はモラハラ、暴言、借金、アルコール中毒などの問題を抱えた父と10年以上前に絶縁し、今まで無関係に過ごしてきました。ですがこの度、末期ガンだという連絡を受け、会いに行くかどうかを悩んでいます。  というのも私は、仕事で文章を書きながら趣味で小説を執筆しておりまして、父が死を目前に何を思っているのかを「取材」し、あわよくば自分の作品に反映させたいのです(散々な目にあってきたのだから、作品のネタにくらいさせてもらわないと割に合わない、という思いもあったり……)。  ですが、かつて父には幾度となく傷つけられ、立ち直るのに時間を要してきました。また同じことになるのでは、という不安もあります。  自分の心を守りつつ、毒親を客観的に「取材する」心得がありましたら、ぜひご教示ください。 【鴻上さんの答え】 おみおさん。大変な目にあいましたね。おみおさんの書く、「散々な目にあってきたのだから、作品のネタにくらいさせてもらわないと割に合わない、という思いもあったり……」という気持ち、分かりますよ。  特に、文章を生業にしていて、なおかつ小説を書くのが趣味な人なら、そう思うのは自然なことだと思います。  でね、おみおさん。おみおさんは、父親を客観的に「取材」して、どんな小説(作品)を書きたいですか?  父親とは関係のない作品に末期ガンで亡くなる人物を登場させるための取材ですか?  それとも、毒親だった父親が最後にどんな言葉を言うかを記録した発言集ですか?  それとも、末期ガンの人の一般的なレポートですか?  それとも最期を迎える毒親に関する軽いエッセー風の読み物ですか?  おみおさんも文章を書いているのなら、分かると思いますが、取材もいろいろあります。  ただ相手の話を黙ってきき、想定外の質問はせず、相手の言葉を録音して終了という取材もあれば、質問を連発し、相手の心の奥深くまで飛び込み、相手と取っ組み合いながら、相手の真実を引き出す取材もあります。  すべては、どんな文章を書くかで決まってくると思います。  もし、おみおさんが、父親と深く関わらず、「軽い読み物」としての作品を書くための「取材」だったら、おみおさんが深く傷つくことを避ける方法はあると思います。  ICレコーダーかスマホを父親の前にポンッと置いて、相手が何を言おうが決めた質問を続けるのです。 「今の気持ちは?」「末期ガンになったことをどう思う?」「娘にインタビューされる気持ちは?」。父親が何を言っても、父親の言葉に関心を持ってはいけません。反論するとか、否定するなんてもってのほかです。ただ、黙々と質問を続けるのです。  それでも難しいようなら、ICレコーダーを置いて、質問の紙を渡し、その場から去る、という方法もあるでしょう。「これに、答えを吹き込んでおいて」と頼むのです。  ただし、こういう「取材」で得られる情報は、残酷なようですが、「読者にとってあまり面白いものではない」ということは、文章を生業にしているおみおさんなら分かると思います。  俳優やタレントさんへのインタビューで、公式コメントだけを並べて終わらせたものがあります。発言をただそのまま書き写した文章です。それは、面白いものではありません。  でもまれに、相手に肉薄し、公式コメントの裏側にある真実の感情を感じるインタビューがあります。こちらの方が圧倒的に面白いのです。  新製品のマニュアルとか料理のレシピ、お店の開店情報なんてのは、相手の懐に飛び込まなくても、一般的な「取材」で書けると思います(もちろん、飛び込むことでもっと面白くなる可能性はありますが)。  おみおさん。もし、おみおさんが、「私が書きたいのは軽い作品ではない。私と父親の人生を正面から描いたものなんだ」と思ったとしたら、「自分の心を守りつつ、毒親を客観的に『取材する』心得」は、残念ながら、ないと思います。 「父が死を目前に何を思っているのか」を知るためには、「相手の懐」に飛び込むしかないでしょう。そうしないと相手も本当のことは話してくれないと思います。  でもそれは、おみおさんが自分の心と向き合うことでもあります。  自分の心に正直だからこそ、自然に質問が浮かびます。父親の言葉に対しての疑問も浮かびます。もっと聞きたいことも浮かびます。でもそれは、間違いなく、おみおさんの苦しかった日々を思い起こさせることになると思います。  本当に残念ですが、人生の真実を描いた小説は無傷で書くことはできないのです。  小説が感動的かどうかと、作者が小説を書くためにどれぐらい傷ついたかは、密接な関係があると僕は思っています。  相手のことを書くことは、じつは自分をさらけ出すことであり、相手を見つめることは自分を見つめることです。  そうしなければ、感動的な小説は書けないと僕は思っているのです。  おみおさん。僕がおみおさんの相談に回答したいと思ったのは、何度も書くようにおみおさんが「仕事で文章を書きながら趣味で小説を執筆」しているからです。  文章を生業としている人なら、自分の書いた小説が一冊の本となり、一定の読者を獲得することを夢見るでしょう。それはしごく当然な希望だと思います。  ただ、読者の反応は、「軽い毒親レポート風小説」よりは「自分にとって父親とはなんだったのか?」に焦点を当てた小説の方が間違いなく大きいだろう、ということを理解してもらえると思います。  誤解しないでくださいね。だから、そういう小説を書けと言っているのではないですよ。  僕は2年前に母親を亡くしました。その前の年に父親を亡くしました。毒親ではありませんでしたが、二人のことを書きたいなと思いながら、なかなか、筆が進みませんでした。衝撃が大きくて、作品として成立させられなかったのです。  ようやく、母親が死んで1年半後に、僕は小説を書き上げることができました。それだけの時間が、僕には絶対に必要だったのです。  おみおさんもやがて、父親のことを正面から書きたいと思う日が来るかもしれません。もちろん、その書き方はいろいろです。私小説風ではなく、まったく違う物語、例えばファンタジーの設定で父親的な登場人物が現れるとか、推理小説の登場人物として描く、なんてこともあるかもしれません。  でも、今はおみおさんと父親の物語として描くのは、とても難しいんじゃないかと僕は思います。父親に対する感情に振り回されている時には、ちゃんとした小説は書けないでしょう。  もちろん、どこにも発表するつもりはない。ただ、父親の最期を他人の目で軽く描写したいんだ、というなら話は別です。  どちらのタイプの小説を選ぶかは、どれぐらいおみおさんが「小説を書くこと」にこだわっているのかで決まると思います。昔風の言い方をしたら、「小説を書くことに命をかけているかどうか」です。  小説に命をかけてないのなら、真正面から父親との関係を描く小説を目指す必要はありません。  それは、どちらが正しいとか間違っているという話ではありません。プロのサッカー選手になろうとする人と、サッカーを純粋に楽しみたいという人の違いです。どちらが正しいなんてないでしょう。  最後に父親に会いに行った方がいいのか、最後まで会わない方がいいのか、それも僕には分かりません。  これもどちらが正しいとか間違っているということではないと思います。  おみおさん。これが僕のアドバイスですが、どうですか? ■本連載の書籍化第3弾!『鴻上尚史のますますほがらか人生相談』が発売中です!

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    クレイジーケンバンド横山剣が語る“ダンディズム” 「年下の言うことは聞いたほうがいい」

    「イイネ!」のキメポーズ、<俺の話を聴け~>の「タイガー&ドラゴン」でおなじみのクレイジーケンバンド、横山剣さん。バンド結成25周年を迎えた剣さんに音楽観、仕事観、人生観など、独特の美学/ダンディズムについて語ってもらった。その根底にあるのは、過去や未来に捉われず、“今いちばん興奮できること”を追い求める姿勢だ。 * * * ■30代後半でクレイジーケンバンドを結成 ――クレイジーケンバンド(以下CKB)の結成は1997年。80年代からダックテイルズ、ZAZOU、CK‘Sなどのバンドで活動していた剣さんは、当時30代後半。「これが最後のバンドだ」という決意はありましたか? じつはCKBは、初めて自分から「バンドやろうぜ」と言い出したバンドなんです。CKB以前にもいくつかバンドをやってたんですけど、終わるたびに「もう懲りごりだ」と思って、本来やりたかった作曲家に戻るということを繰り返してたんですよ。1997年もそういう時期だったんですが、知り合いから、(東京)福生の植木屋さんと静岡のアメ車の会社での営業ライブという仕事の依頼があったので、ミュージシャン仲間のたまり場だった本牧のイタリアンガーデンという店で「美味しい仕事があるんだけど、やらない?」って誘ったんです。そしたらその時の感触がよかったから、「このメンバーでバンドとして続けたいな」と思ったんですね。ちなみに僕がつけたバンド名は「ゲロッパ1600GT」。ギターの小野瀬雅生さんが「パッとしないから、やめません?」って言い出して(笑)、クレイジーケンバンドと命名してくれました。 ――CKBはロックンロール、歌謡、R&Bからアジアの民族音楽まで、結成当初からジャンルレスな音楽性を志向していましたね。 もともと僕自身がそういう音楽の聴き方をしてたんです。1本のカセットテープに、アース・ウィンド&ファイアー、橋幸夫さん、最新のR&B、韓国のポンチャック(大衆音楽)が入ってるという(笑)。ウチの娘は23歳と19歳なんですけど、サブスクのプレイリストで同じような聴き方をしてるんですよね。洋楽も邦楽も関係なく聴いていて、昭和の曲にもけっこう詳しくて。去年出したカバーアルバム『好きなんだよ』で「モンロー・ウォーク」(南佳孝)をカバーしたんですけど、娘も好きだったみたいなんですよ。「パパ、何でその曲知ってるの?」って言われて、「何言ってんの、俺の若い頃のヒット曲だよ!」って(笑)。 ――CKBの音楽の幅広さは、プレイリスト文化の先取りだったのかも。 ――自分の名前を冠したバンドを作ったことで、剣さん自身もやりたいことをやれるようになったのでは? そうですね。ただ、大事なのは自分の名前より、楽曲が有名になることなんです。たまに海外の人から曲の感想が送られてくるんですけど、そうやって曲が独り歩きしてくれるのが幸せなので。バンドをやるうえで、いちばん大切なのは“楽曲様”。僕もそうですけど、メンバー全員が楽曲の下僕だと思ってるし、自分のエゴではなくて、全員が「楽曲を良くするためにどうしたらいいか?」を優先していけば、意見のぶつかり合いも意味があるんですよね。僕自身リーダーとしての器ではないですし、「黙って俺について来い」というタイプでもないので、僕らの教祖は“楽曲様”です(笑)。11人の大所帯なのでたまにはモメることもありますけど、「俺が取っておいたウニをあいつが食べた」みたいなくだらない話ばかりですね、ええ。 ――(笑)。 ■否定にも肯定にも敏感でいたい ――ファンの好みを意識することは? お客さんの意見はいつも賛否両論で、リリースのたびに「最高」と「最悪」が同時に聞こえてくるんですよ。リクエストを取っても票が割れちゃうので、気にしてもキリがないんですよね。ただ、良くない評価を知ることも必要だと思ってるんです。肯定的な意見ばかりでも不安になっちゃうし、いろんなことに敏感でいたいというか。人の意見もそうだし、季節の移り変わり、温度、湿度、匂いを感じることで、それが楽曲に変換されるので。 ――なるほど。ショーアップされたライブもCKBの魅力。「イイネ!」のポーズでテレビ台の上に乗ってグルグル回るなど、お決まりの演出もありますね。 決まったことをやるのが好きなんですよね。「オレたちひょうきん族」よりも「8時だョ!全員集合」のほうが自分好みだったので(笑)、お約束があるからこそ、ハプニングが盛り上がる。ジェームス・ブラウンのマントショー、チャック・ベリーのダック・ウォークもそうですけど、何回も繰り返すことでお客さんの「観たい」という気持ちが高まるし、興奮も増すので。その代わり、セットリストは毎回かなり違いますし、リアレンジすることもあります。「タイガー&ドラゴン」は必ずやりますけどね。以前、カッコつけて「やりたくない」なんて言ったこともあるんですけど、やっぱり大切な1曲なんですよね(笑)。 ――ステージ衣装は基本、全員お揃いのスーツ。ダンディですよね。 Suchmosみたいに普段着でもカッコよければそれがいいんですけど、ウチはそうじゃないので(笑)。メンバーのキャラもデコボコなので、着るものをある程度、統一させたほうが、逆にメンバーの個性が際立つんじゃないかなと。本当の個性ってそういうもんかなとも思います。 ――8月にはニューアルバム『樹影』をリリース。このタイトルは、かつて本牧にあった喫茶店の名前だとか。 ええ。10代の頃なんですけど、東京の堀越高校から定時制の横浜市立港高校のに編入することになって。昼間は働かなくちゃと思ってガソリンスタンドに就職したんですけど、学校がはじまる時間と仕事が終わる時間がぜんぜん合わなくて、学校を諦めちゃったんですよ。そのガソリンスタンドの近くにあった喫茶店が「樹影」。昼休みにコーヒーを飲みながら、歌詞を書いたり、プロフィールを考えたり、自分で自分にインタビューしたり(笑)。中学生の頃から作曲家になりたくてデモテープをレコード会社に売り込みに行ったりしていたんですが、なかなか曲を使ってもらえなくて、「だったらシンガーソングライターになろうかな」と思い始めた頃ですね。 ■年下の言うことは聞いたほうがいい ――アーティストとしての原点と重なっているんですね。今回のアルバムもCKBらしさが全開だし、しっかりアップデートされていて。このバランスはどうやって取っているんですか? 音色の磨き方とかミックスの具合とか、いろいろあるんですけどね。大事なのは、自分たちが興奮できるかどうか。無意識のうちに最近のトレンドも入ってると思うんですけど、それは暑くなると夏野菜が食べたくなると同じというか、体が欲してるんですよ。まずは何も考えずにやってみて、トゥーマッチだったら調整すればいいんじゃないかなと。音響的にメーターの針を振り切っていても、聴いた音が良ければそれでいいので。あとgurasanparkさんの力も大きいですね。 ――gurasanparkさんは1989年生まれのクリエイター。ここ数年、CKBの作品にアレンジャー、作曲家として参加していますが、剣さんとは30才くらいの差がありますね。 親子ほど離れてますね。シルクソニック(ブルーノ・マーズ、アンダーソン・パークによるアメリカのR&Bデュオ)を聴いたときに、「アンダーソン・パークさんがブルーノ・マーズさんの個性を引き出している」と感じまして。gurasanparkくんは僕が好きなコード感やサウンドをよくわかってるし、CKBのいいところを引き出してくれるんです。若い頃から年上のアドバイスはぜんぜん聞かなかったんですけど(笑)、この年齢になって、年下の言うことなら聞いてもいいかもなと。老いては子に従え、ですね。 ――若い世代と交流することで、自分自身をアップデートさせる。どんな仕事においても大切なことですね……。 そうかもしれないですね。今の音楽に関しては、娘たちに教えてもらうことも多いですね。藤井風さん、WONK、Kroiもそうですけど、「パパ、絶対、好きだと思うよ」と教えてくれて、「ホントだ!」と。海外のアーティストも「いいな」と思う人はたくさんいます。たとえばボビー・オローザさん。20代の若さでビンテージ・ソウルの旗手としてローライダーたちから絶大なる支持を得ていますが、昔のソウルを今の感覚で捉えて表現しているところがカッコいいなと。このボビー・オローサさんがそうであるように、ラジオを聴いていてピンときた楽曲が最新であろうと、古典であろうと、聴いた瞬間にフレッシュな感動を得たのなら、それは僕にとって新曲と同じことなんです。 ――直感に従うことが好きなことをやり続ける秘訣なのかも。 そのときにやりたいこと、いちばん興奮できそうなことをやり続けてるだけですからね。「来年はこれをやりたいから、今はこうしよう」と予定を立てることができない(笑)。あとは、とにかく忙しくしてること。音楽以外にも車のレースとかいろんなことやってるんですけど、暇を作ると余計なことを考えて、落ち込んじゃいそうな気がするんですよ。間寛平さんの「わしゃ止まると死ぬんじゃ」というギャグと同じですね(笑)。 ――確かに先のことを考えて不安になるよりも、今やりたいことを探したほうが建設的ですよね。勉強になります。 どうも(笑)。いま大変な状態でも、どんなことにも例外はあるし、自分をひとつのカテゴリーに当てはめないで上手いことやってほしいですね。諦めないってことは大事だと思いますが、逆に諦めることで自由になれることも。 逃げ道を作るのも処世術なので。 (森 朋之) 横山剣(クレイジーケンバンド)/1960年生まれ、神奈川県横浜市出身。小学校低学年の頃より脳内にメロディーが鳴り出し独学でピアノを弾き作曲を始める。小学校5年生(1971年)の時、中古レコード屋の野外サウンド・システムにてマイク片手に実演販売を行う。こうしたことがキッカケとなって音楽の世界にのめり込んで行く。中学2年よりバンド活動を開始して以来、地元横浜を中心に数多くのバンドで活躍するが、1981年にクールスRCのコンポーザー兼ヴォーカルとして晴れてデビュー。以後、ダックテイルズ、ZAZOU、CK’S等のバンドを経て、1997年春クレイジーケンバンドを結成。以降、2002年発売の「タイガー&ドラゴン」などヒット曲多数。今年、結成25周年をむかえ、通算22枚目のアルバム『樹影』を8月3日に発売した。

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    甲子園で既に「完成」 プロでもエースになれるの評価も“期待外れ”となった投手たち

     甲子園の大舞台でスカウトの目を見張らせる快投を演じ、その完成度の高さから、プロでも活躍すると思われたのに、故障などから大成できずに終わった投手も少なくない。 「甲子園史上最も美しい」と絶賛されたしなやかなフォームと抜群の制球力で将来性を高く評価されながら、NPBでは通算1勝で終わったのが、東亜学園の川島堅だ。  1987年夏、2年連続で甲子園にやって来た川島は、準々決勝で北嵯峨を14奪三振完封するなど、伸びのある速球と切れのあるカーブを武器に4強入りの原動力になった。  同年の甲子園出場組には、伊良部秀輝(尽誠学園)、橋本清(PL学園)、盛田幸妃(函館有斗)、上原晃(沖縄水産)らプロ注目の好投手が目白押しだったが、川島はその中でも「即戦力ナンバーワン」と評され、「1年目から10勝も」の声も聞かれるほどだった。  広島にドラフト1位で入団した川島は、翌88年9月16日の阪神戦でリリーフとしてプロデビューをはたす。  2度目の先発となった10月18日のヤクルト戦では、8回まで3失点に抑え、9回2死から池山隆寛の二塁打でサヨナラ負けを喫したが、2年目の89年4月29日の阪神戦で、9回を5安打8奪三振1失点で完投し、うれしいプロ初勝利。「懐かしい甲子園でしょ。お客さんもたくさん入って。前半は楽しめたけど、(6回に失点)後半はきつかったですよ」と思い出の地での大きな1勝に感無量だった。  だが、3年目にコーチの指示でスリークォーターにモデルチェンジしたことが裏目となり、右肘を痛めてしまう。手術後、1年間リハビリに努めても球威は戻らず、94年オフに戦力外通告を受けた。翌95年に台湾・時報で1年間プレーしたあと、野球にけじめをつけて現役引退。NPB通算成績は18試合に登板し、1勝4敗だった。  台湾から帰国後、現役時代に故障で苦しんだ経験から、「ケガに悩む球児たちに思いきりプレーさせてあげたい」と柔道整復師の資格を取得。現在は整骨院の院長を務めている。  川島と同じ87年夏の甲子園で、「今まで見た(投手の)中で一番速い」と対戦校の監督を驚かせ、プロのスカウトから二重丸の評価を受けたのが、佐賀工の江口孝義だ。  甲子園の初戦、東海大甲府戦ではMAX143キロを計測し、センバツ4強で夏も優勝候補だった強打のチームを4安打9奪三振と力でねじ伏せた。冒頭のコメントは、敗れた東海大甲府・大八木治監督が口にしたものだ。  ネット裏のスカウトたちも、江口を同年の“ドラ1組”伊良部、橋本、川島と同等以上に評価した。  だが、習志野戦では別人のように球威を欠き、まさかの5失点KO。大会屈指の本格派の評価は変わらなかったものの、江口はプロ入りを拒否してNTT九州に入社した。  社会人2年目に野茂英雄、潮崎哲也とともに全日本代表メンバーに選ばれた江口は、キューバ戦で2回を無失点に抑え、「プロで三振を奪えるのは、野茂のフォーク、潮崎のシンカー、江口のストレート」と並び称された。  翌90年3月のスポニチ大会でも147キロをマークし、秋のドラフトの目玉になったが、4月に右肩を痛め、再びプロ拒否を表明した。そんななか、地元のダイエーが3位指名し、肩の治療を約束するなど熱心に勧誘すると、一転入団。「肩を治して平和台で1勝したい」と誓った。  リハビリを経て、91年9月11日のロッテ戦でプロデビュー。翌92年は、1軍昇格後、5試合で防御率1.08と安定した成績を残し、6月18日のオリックス戦でプロ初先発したが、高橋智、小川博文に連続被弾するなど、3回途中6失点で負け投手に。  その後も右肩の状態は思わしくなく、96年に「嵩芳」と改名し、心機一転を期したが、1軍登板のないまま同年限りで現役引退。「福岡ドームで投げる」夢をはたせずに終わった。  引退後、理学療法士の国家試験に合格し、オリックス、ソフトバンクのトレーナーを務めた。  04年夏の甲子園で、ダルビッシュ有(東北)、涌井秀章(横浜)とともに“高校生ビッグ3”と注目を集めたのが、秋田商の佐藤剛士だ。  同年のセンバツでは、2試合連続無失点で8強入り。夏の甲子園では済美打線に打ち込まれ、初戦敗退も、ダルビッシュ、涌井とともに大会最速タイの146キロをマーク。米球団のスカウトも「球は間違いなくいい」と高く評価した。  同年のドラフトで広島に1位指名された佐藤は、2年目の06年、1軍先発陣の駒不足からブラウン監督に抜擢され、4月20日の横浜戦でプロ初先発初登板のマウンドに上がった。  だが、初回に相川亮二に3ランを浴びるなど、いきなり5失点。その裏、前田智徳が1点差に迫る満塁アーチで援護してくれたのもつかの間、3回にも村田修一に3ランを浴び、9失点KO。「1軍は甘い球を見逃さない。収穫はあまりない」とプロの厳しさを味わった。  その後は肩、腰などを相次いで痛め、故障との闘いに明け暮れた。  09年オフ、右肘を手術してラストチャンスにかけたが、翌10年は2軍で1試合登板にとどまった。シーズン後に戦力外通告を受けると、「いつまでもダラダラやるより、区切りをつけたほうがいい」(同年12月11日付デイリースポーツ)と引退を決め、広島県内の建設会社に就職した。  1軍登板は前記の横浜戦1試合で終わったが、郷里から両親を呼んで晴れ姿を見てもらったことが「一番の思い出」になったという。(文・久保田龍雄) ●プロフィール久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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    夏の甲子園「ベスト8」進出チームを予想! 大阪桐蔭のブロックで“対抗馬”を挙げるなら

     8月6日に開幕する全国高校野球選手権。3日には組合せ抽選会が行われ、初戦の対戦カードが決まった。浜田(島根)、帝京五(愛媛)、有田工(佐賀)、九州学院(熊本)の4校に新型コロナウイルスの集団感染があったことで大会日程と抽選方法が変更され、例年とは異なる変則日程となったが、各ブロックを勝ち抜き、準々決勝にコマを進める高校はどこになるのか。地方大会での戦いぶりなどから予想してみたいと思う。 *  *  * 【第1ブロック】・明豊(大分)、樹徳(群馬)、京都国際(京都)、一関学院(岩手)、八戸学院光星(青森)、創志学園(岡山)、愛工大名電(愛知)、星稜(石川)  夏の優勝を経験した学校は不在ながら、近年安定した戦いを見せているチームが多く入る激戦のブロックとなった。中でも中心となりそうなのが昨年のセンバツ準優勝校である明豊と、昨年夏にベスト4に進出した京都国際の2校だ。明豊は大分大会5試合で52得点を叩き出した強打が持ち味。また、全試合3点以内に抑えており、守りも堅い。京都国際は森下瑠大、平野順大の二枚看板が出遅れながら、背番号10の森田大翔が成長。投手陣に厚みが加わった。森下、平野が完全復調すれば京都国際が勝ち抜く可能性もあるが、総合力では勝る明豊を1番手と予想したい。 【第2ブロック】・鶴岡東(山形)、盈進(広島)、近江(滋賀)、鳴門(徳島)、海星(長崎)、日本文理(新潟)、天理(奈良)、山梨学院(山梨)  センバツ準優勝の近江とセンバツで大阪桐蔭を苦しめた鳴門がいきなり対戦。山田陽翔と冨田遼弥のエース対決は1回戦でも最大の注目ポイントと言える。他にも150キロ右腕の田中晴也を擁する日本文理、春夏連続出場の天理、山梨学院など力のあるチームは多いが、わずかに天理が有利と予想する。春から夏にかけてエースの南沢佑音が大きく成長。奈良大会では無失点と圧巻の投球を見せた。上位から下位まで力のある打者が並び、奈良大会5試合で1失策と守備も安定している。初戦の山梨学院戦で勝ち切れば、ベスト8進出が見えてくるだろう。 【第3ブロック】・敦賀気比(福井)、高岡商(富山)、興南(沖縄)、市船橋(千葉)、三重(三重)、横浜(神奈川)、日大三(西東京)、聖光学院(福島)  優勝候補と言えるほどのチームは不在ながら、過去に甲子園を制覇した名門も多く、予想の難しいゾーンとなった。今年のチームの経験値で言えば4季連続出場となる敦賀気比、春夏連続出場の聖光学院が頭一つリードしており、横浜、日大三という強豪校も揃うが、その中でも興南を推したい。大きいのはエースの生盛亜勇太、安座間竜玖と2人の安定した投手が揃っていることだ。沖縄大会でも準決勝(未来沖縄戦)こそ苦戦したものの、それ以外は全て失点は1点以下。タイプは異なるがともに制球も安定している。打線もチーム打率こそ高くないが、中軸には力があり得点力は決して低くない。春夏連覇を達成した2010年以来の上位進出も十分に狙えるチームと言えそうだ。 【第4ブロック】・二松学舎大付(東東京)、札幌大谷(南北海道)、県岐阜商(岐阜)、社(兵庫)、大阪桐蔭(大阪)、旭川大高(北北海道)、聖望学園(埼玉)、能代松陽(秋田)  ここは順当に春夏連覇を狙う大阪桐蔭が勝ち進むことが予想される。川原嗣貴、前田悠伍に加えて別所孝亮が大きく成長。大阪大会ではチームトップの20イニングを投げ被安打わずかに3と圧倒的な投球を見せた。打線も上位から下位まで長打力のある選手が揃い、7試合で18盗塁と機動力が使えるのも強みだ。守備に若干の不安はあるものの、頭一つ以上リードしていることは間違いない。対抗するチームとしては県岐阜商、社の2校を挙げたい。県岐阜商は岐阜大会では苦戦が多かったが、4番の伊藤颯希を中心に力のある打者が揃う。投手陣が調子を上げてくれば面白い存在となりそうだ。社は芝本琳平、堀田柊の二枚看板に安定感があり、ロースコアの展開で強さが光る。初戦で対戦するこの2校のどちらかが3回戦に勝ち進めば、大阪桐蔭にとっても厄介な相手となりそうだ。 【第5ブロック】・鹿児島実(鹿児島)、明秀日立(茨城)、仙台育英(宮城)、鳥取商(鳥取)  春夏連続出場となる明秀日立と、選手層の暑い仙台育英が中心となる。明秀日立はチーム打率4割を超え、茨城大会では6人がホームランを放つなど切れ目のない打線が特長。エースの猪俣駿太が少し安定感を欠いたが、4番も務める石川ケニーが投手としても大きく成長した。一方の仙台育英は左の古川翼、右の高橋煌稀を中心に力のある投手が揃う。宮城大会で本塁打は0だったが、5試合で24盗塁と機動力は抜群だ。実力的には互角と見えるが、投手陣の安定感が上回る仙台育英が勝ち進むと予想したい。 【第6ブロック】・高松商(香川)、佐久長聖(長野)、明徳義塾(高知)、九州国際大付(福岡)  各地区を代表する実力校が揃ったが、春夏連続出場となる九州国際大付を推したい。福岡大会ではエースの香西一希が故障明けで本調子ではなく、さらに大会終盤には新型コロナウイルス感染で欠場したものの、それでも強豪を相手に安定した戦いを見せて勝ち抜いた。センバツでは不調だった捕手の野田海人が復調し、投手としても投げられる目途が立ったことは大きい。香西が順調に回復してくれば、頂点も狙える戦力を誇る。初戦でその九州国際大付と対戦する明徳義塾は伝統の堅守でロースコアの展開に持ち込めるかがポイントとなる。一方の高松商、佐久長聖は打線が好調だけに投手陣の踏ん張りがカギとなりそうだ。 【第7ブロック】・下関国際(山口)、富島(宮崎)、有田工(佐賀)、浜田(島根)  初戦で対決する下関国際と富島の勝者が勝ち進む可能性が高いだろう。下関国際は昨年のセンバツを経験した選手が多く揃い、古賀康誠、仲井慎と左右の力のある投手を揃える。仲井は打っても中軸を任されており攻守の中心だ。一方の富島はエースの日高暖己の存在が大きい。宮崎大会では5試合全てに登板。3回戦以降の4試合は全て一人で投げ抜き、決勝でも最後のボールが自己最速に並ぶ148キロとスタミナは申し分ない。両チームとも投手を中心に守り勝つ戦いが持ち味だが、初戦で対戦するということを考えると絶対的なエースである日高を擁する富島にわずかに分があると考えられる。勝ち上がった後の3回戦まで日程があることも有利で、富島が甲子園初勝利をあげてそのままベスト8進出と予想したい。 【第8ブロック】・九州学院(熊本)、帝京五(愛媛)、智弁和歌山(和歌山)、日大三島(静岡)、国学院栃木(栃木)  夏の甲子園連覇を目指す智弁和歌山が大本命。2回戦からの登場で1回戦を勝ち上がったチームとの対戦はやりにくさがあるかもしれないが、それでも戦力を考えると他のチームを大きく上回っているように見える。投手は昨年夏の甲子園も経験した塩路柊季、武元一輝がともに安定。特に武元は明らかに制球力がアップし、春の近畿大会でも大阪桐蔭打線を抑え込んでいる。野手も旧チームから不動の正捕手である渡部海を中心に力のある選手が揃い、得点力も高い。和歌山大会で少し不安定だった守備が整備されれば、夏連覇も十分に狙えるだろう。対抗として推したいのが九州学院だ。4番の村上慶太に注目が集まるが、その後ろを打つ松下翔、後藤大和が熊本大会で揃って打率5割以上をマーク。2年生エースの直江新も140キロ以上のスピードを誇り、この夏急成長を遂げた。智弁和歌山の有利は変わらないが、上手く勢いに乗れば面白い存在となりそうだ。 (文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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    【後編】元女性自衛官が「性暴力」を告発した理由 「セクハラを“なかったこと”にするのが許せなかった」

     元女性自衛官の五ノ井里奈さん(22)が、訓練中に受けた性暴力をYouTubeなどで告発して話題となっている。五ノ井さんは、「セクハラの被害から、残された女性隊員を守りたい」と、AERA dot.の単独インタビューに応じた。「前編」では具体的な性被害の実態を詳述したが、「後編」では五ノ井さんが自衛隊を志した理由、セクハラを受けてもすぐには辞職せず、今回の告発に踏み切った思いなどを聞いた。 ※「前編」より続く。 *  *  * 宮城県東松島市出身の五ノ井里奈さん(22)は、小学4年生の時に東日本大震災に見舞われた。小学校にいる時に被災し、学校の1階部分は津波で浸水した。五ノ井さんたち児童は2階に逃げて無事だったが、避難所生活の後、母親と再開できたのは1週間後。家に戻ると、1階部分は津波に流され、室内で飼っていた愛犬2頭が亡くなっていた。散り散りに避難していた父親と兄2人とも再会し、その後は公民館で避難生活を送った。  この時、災害支援に来てくれたのが女性自衛官だった。 「女性自衛官がお風呂を造ってくれたり、お風呂上がりには腕相撲をしたりして、遊んでくれました。私は小さい頃から柔道のオリンピック選手を目指していたので女性自衛官にそのことを伝えると、『柔道は続けたほうがいいよ。頑張ってね』と応援してくれました。私にとって憧れの存在でした。この時から、いつかは陸上自衛隊に入りたいと夢を抱くようになりました」(五ノ井さん)  11年たったいまでも、女性自衛官と連絡を取り合って、感謝の言葉を伝えているという。  公民館で3カ月過ごした後、五ノ井さん一家はアパートに移った。しかし、小学6年生の時に両親は離婚。がんの治療中だった母親が、3人の子どもを女手ひとつで育てることになった。  五ノ井さんは、中学・高校と柔道で全国大会ベスト16の成績を残し、山口県にある大学に進学する。だが自衛官への夢が捨てきれずに中退。自衛隊体育学校の柔道部に入って、オリンピックを目指すことにした。好きな柔道を続けながら、自衛官アスリートへの道を切り開こうとしたのだ。  2020年4月、晴れて陸上自衛隊に入隊する。だが、「前編」で記したように、配属された東北方面の中隊では日常的にセクハラをされ、ひどい性暴力を受けた。五ノ井さんは次第に追い詰められていく。 「常にセクハラはあったので、受けている方も感覚がまひしてしまうんです。外ではアウトなことも、自衛隊内ではセーフになってしまう雰囲気がありました。男性隊員は、コミュニケーションの一部だと解釈していたようです。その意識を改善させることはほぼ不可能です。結局は、被害を受けた女性隊員がいなくなるしか解決策はないんですよね。私も自分で自分の身を守るためには逃げるしかありませんでした」  五ノ井さんは、2021年8月に複数の男性隊員から受けた性暴力を機に、休職することになった(被害の詳細は「前編」参照)。精神科医からは、適応障害と診断され、3~4カ月分の薬が処方された。 「憧れていた自衛官になるという夢を失い、どん底でした。先の見えない生活に絶望して、好きな柔道もできなくなりました。震災の時に助けてもらった女性自衛官みたいになりたくて入隊したのに、内部ではあんなにひどい実態があるなんて思ってもいませんでした……」  精神的に追い詰められ、何度も自死を考えた。覚悟を決めた今年の3月16日深夜、思いがけないことが起こった。 「ベッドの上に正座して、よしっ、と決断した時に、震度6強のすごく大きな地震がきたんです。その時、思いました。ああ、ここで死んではいけない。地震のせいで、生きられなかった人がいるのに、自分は何をしているんだろうって」  東日本大震災の記憶がよみがえり、五ノ井さんは自死を踏みとどまった。「どうして被害者が泣き寝入りして苦しまなければならないのか。性暴力に負けてはいけない」と組織と闘うことにした。  昨年8月に受けた性暴力について、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。今年5月末に不起訴処分になったが、現在は検察審査会に不服申し立てをし、結果を待っている。  この不起訴処分に関して、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」副理事長の伊藤和子弁護士はこう疑問を呈する。 「圧倒的に男性が多い自衛隊のような閉ざされた空間で性暴力が起きると、『見ていない』と口裏を合わせる可能性があります。今回はどうだったのか。加害者が何人もいる場合、供述に矛盾が生じることがあります。一貫して細部まで同じことを言っているのか、そうでないのか。すべて同じであれば、口裏合わせをしている可能性もあるでしょう。丁寧に供述の評価が行われたのか疑問の余地が残ります」  不起訴後、五ノ井さんが検察官にその理由を尋ねると「複数の自衛官を取り調べたところ、五ノ井さんを『首ひねり』という技で倒すところは見たけれども、腰を振るようなわいせつ行為をしているところは見ていない(という供述だった)」と説明されたという。ただ、伊藤弁護士は、首に手をかけて押し倒している時点で暴行罪を問うことができるとも指摘する。 「少なくとも押し倒した所を見ている人がいたわけですから、立件すべきです。なぜ検察は暴行罪で起訴しなかったのかも非常に疑問です」  たとえ刑事事件で起訴されなかったとしても、民事裁判でハラスメントが認定されることもある。伊藤弁護士は「第三者委員会を立ち上げて、構造的な問題を調査する必要がある」と話す。 「男性隊員が女性隊員に対して、首に手をかける技をかけていること自体がハラスメントであるという認識があるのか否か。私的な生活の中で起きた出来事なのか、訓練中の行為なのか。訓練と称したハラスメントではないのかなど、さまざまな疑問が浮かびます。ハラスメント行為があれば処分に値する問題なので、組織としてきちんと調査をするべきです」  最後に、五ノ井さんは実名と顔出しで告発に踏み切った理由をこう話す。 「内部に残る自衛隊員から『なかったことにしようとしている』と聞きました。隠蔽(いんぺい)です。ここでなかったことにしたら、これから被害者がもっと増えてしまう。セクハラをしている人は、今でも普通に隊にいて、また新しい女性隊員が入ってきた時に同じことが起こります。それだけは阻止したい。あとは、謝罪がほしいです。その一心で声をあげようと決意しました」  五ノ井さんの悲痛な思いは、自衛隊員たちに響いているのだろうか。(AERA dot.編集部・岩下明日香)

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    「Bクラス」に格下げされたヘンリー王子とメーガン妃 エリザベス女王即位70年の祝祭で辛酸なめる

     エリザベス女王(96)の即位70年を記念する祝賀行事が6月2~5日の4日間、華やかに繰り広げられた。  英王室初の「プラチナ・ジュビリー(70年の祝祭)」とあって、「歴史的イベントに参加できてうれしい」「女王に感謝の気持ちを表したい」「一生で一度きりの経験だと思う」と興奮気味の人たちが多く参加した。コロナが落ち着いてきた実感もあるのだろう。明るい表情の人が圧倒的だ。ちなみに今回のイベント関連の経済効果は約1兆円とされている。  開幕初日は、女王の公式誕生日を祝う「トゥルーピング・ザ・カラー(軍旗分列行進式)」で始まった。1748年のジョージ2世時代から300年近く続くというパレードで、1200人ほどの兵士が200頭以上の馬と共に一糸乱れぬフォーメーションを見せたり、楽隊が見事な演奏を披露したりした。 ■参加の「お墨付き」もらった  女王はかつてのように軍服姿で騎乗して閲兵することはないが、バッキンガム宮殿のバルコニーから見守った。杖をついても背筋を伸ばし、いとこのケント公(86)と並んで立った。その時、ふと手袋のまま涙をぬぐう様子が見られている。  しかし翌3日には、「体調に違和感」を覚えたとして、セントポール大聖堂での感謝の礼拝を欠席した。4日のエプソム競馬場にも足を運ばなかった。  今回、注目された出来事のひとつに、ヘンリー王子(37)とメーガンさん(40)の渡英があった。  夫妻はオランダで4月後半にあった国際スポーツ大会「インビクタス・ゲーム」の前に英国で女王に会い、プラチナ・ジュビリーに参加する「お墨付き」をもらった。そして今回、長男のアーチー君(3)と、長女のリリベットちゃん(1)を連れてやってきた。  ヘンリー王子は祖父のフィリップ殿下の葬儀と、母ダイアナ妃の銅像除幕式には出席しているが、メーガンさんは夫妻が王室を離脱して以降、「公式イベント」の参加は約2年ぶりだ。  夫妻の姿が最初に見られたのは、ウィンザー城に向かう車中だった。メーガンさんはわざわざ車の窓をおろし、路上の人たちに笑顔で手を振った。夫妻はかつて、英国滞在中は警察が警備するよう求めて英政府と揉めたことがある。そのため「英国は危険だとして、警備に細心の注意を払っているのではなかったのか」といぶかしがられた。  次は、トゥルーピング・ザ・カラーの時だった。米国に暮らしながら英王室批判を繰り広げる夫妻に対し、女王はバルコニーに出ることを許さなかった。  そんな夫妻の姿が捉えられたのは、バッキンガム宮殿にある少将執務室の窓際だった。女王の長女アン王女(71)の長男ピーター・フィリップス氏(44)の子ども2人と、王女の長女ザラ・ティンダル氏(41)の2人の子どもに指を唇に当てて「シー」とする姿が見られた。  英メディアは「ヘンリー王子は、10年前のダイヤモンド・ジュビリーでは軍服に身を包み、父と兄と共に馬にまたがって凛々しい姿を見せていた。今回はバルコニーにも出られず、はるか年下の親戚の子と遊ぶしかないとは」と嘆いた。 ■歓声とブーイング  3日のセントポール大聖堂での礼拝には、ヘンリー王子夫妻も出席した。そこで注目が集まったのは座席の位置だ。チャールズ皇太子夫妻とウィリアム王子夫妻が座った席とは、通路をはさんではるか離れた反対側に案内された。しかも最前列ではなく、前から2番目だった。  ヘンリー王子の隣に座ったブルックスバンク氏(36)は、女王の次男アンドルー王子の次女ユージェニー王女(32)の夫だ。ヘンリー王子とは顔なじみだが、彼に王位継承権はない。メーガンさんの隣は女王の妹、故マーガレット王女の長女サラ・チャット夫人(58)で、人柄の良さから女王の大好きなめいと言われる。ただし、王位継承順位は28位だ。  国民には、記念すべき祝いの場であり、またとないチャンスとして家族の和解を期待する声もあったが、そうした兆候はほぼ見られず、ウィリアム王子との間に立ち話もなかった。  ヘンリー王子夫妻がセントポール大聖堂から帰る階段の途中では、歓声もあがったものの、ブーイングが起きた。メーガンさんは手も振らず、そそくさと車に乗り込むと、滞在先のフログモア・コテージに戻った。礼拝後のレセプションに夫妻は招待されていなかったのだ。  夫妻が祝賀イベントに参加したいのであれば、許可はする。しかし、英国に居住せず、公務も行わない元ロイヤルに対しての見事な一線の引き方に、多くの国民は納得した。  すでに王室は、夫妻不在のまま前に進もうとしている。女王が次第に重要公務をチャールズ皇太子(73)に任せるようになり、王室は大きな節目にさしかかっている。  ヘンリー王子はいつも以上にメーガンさんの手を強く握りしめ、自分がロイヤルの「Bクラス」に格下げされたことに耐えたのだった。(文/多賀幹子) ※AERAオンライン限定記事

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    【ゲッターズ飯田】8月8日の運勢は?「品格と美意識が幸運を引き寄せる日」銀の羅針盤座

     占いは人生の地図のようなもの。芸能界最強の占い師、ゲッターズ飯田さんの「五星三心占い」が、あなたが自分らしく日々を送るためのお手伝いをします。12タイプ別に、毎週月曜日にその日の運勢、毎月5のつく日(毎月5、15、25日)に開運のつぶやきをお届けします。 【タイプチェッカー】あなたはどのタイプ?自分のタイプを調べる 【金の羅針盤座】判断ミスやうっかりミスをしやすい日。ノリや勢いで決めないで、慎重な判断を心がけましょう。おだてられたりほめられたときに素直によろこぶのはいいですが、隙もできやすいので気をつけて。 【銀の羅針盤座】品格と美意識が幸運を引き寄せる日。荒い言葉や下品な発言は避けて、ていねいな振る舞いを心がけましょう。感情的にならずに、上品でいい言葉を選ぶようにすると運が味方してくれるでしょう。 【金のインディアン座】余計なものに出費しやすい日。ネットでの買い物や、アプリ内での課金には気をつけましょう。お金を払う価値が本当にあるのか、しっかり考えるように。 【銀のインディアン座】苦手だからとそのままにしないで、思い切って挑戦することが大切です。失敗や挫折をしたり、恥ずかしい思いをするからこそ、学んで成長できるもの。何より「飛び込む勇気」を得られるでしょう。 【金の鳳凰座】うまくいかない原因の多くは、あなたの頑固さや視野の狭さによるものかも。何が問題かをしっかり理解すれば、解決するのは簡単でしょう。決めつけはやめて、柔軟な発想で、ときには考え方を変えてみましょう。 【銀の鳳凰座】午前中は「絶好調」を実感できそう。頭もよく回転し、仕事もスムーズに進みそうです。ただし、夕方以降は雑になりやすいので、細部まで気を配るようにしましょう。夜は疲れやすくなるため、限界を感じる前に休むことが大切です。 【金の時計座】気持ちの切り替えが大切な日。イライラするときは、ほかのことを考えたり心のなかで5秒数えて、冷静になってから判断するように。短気でいると、信用をなくし、のちに面倒なことを引き寄せてしまいます。 【銀の時計座】苦手な人や考え方の違う人と一緒になる時間が増えそうな日。相手にも、親や家族、親友がいることを想像してみると、いい部分が見えてくるかも。好きにならなくてもいいので、いちいち嫌わないようにしましょう。 【金のカメレオン座】ふだんとは違うリズムで生活をすることになりそうな日。変化を楽しんでみたり、最新の情報を集めてみるといいでしょう。周りの人からオススメされたアプリを試してみるのもよさそうです。 【銀のカメレオン座】学生時代の勉強だけが大事なのではなく、社会に出てからも学ぶべきことはたくさんあるもの。学校は、勉強の仕方と、勉強する人としない人では大きな差がつくことを、教えてくれる場所なだけ。 【金のイルカ座】目覚めがスッキリしない感じだったり、寝違えて首が痛くなってしまいそう。今日は、肉体的な無理をすると体調を崩してしまうので気をつけて。暑さ対策やエアコンによる冷え予防もしっかりしておきましょう。 【銀のイルカ座】今日は、判断力を鍛える日だと思って、些細なことで悩まないようにしてみましょう。「ドリンクやランチのメニューは3秒以内に決める」などのレベルからはじめてみるといいでしょう ※毎週月曜日に占いが届きます!AERA dot.の公式LINEの友達申請はこちら↓↓↓https://lin.ee/trWiCvV

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    旧統一教会と安倍氏の闇 古賀茂明

    「自民党として組織的関係がないことを既にしっかりと確認をしております」7月26日、自民党 の茂木敏充幹事長が、自民党と旧統一教会(以下、教会と呼ぶ)との関係について、こう断言する映像がテレビやネットで流れた。  そのわずか2日後、これを全面否定するようなニュースが報じられた。 「安倍さんが、『統一教会に頼んでちょっと足りないんだウチが』と言ったら『わかりました、そしたらちょっと頼んでアレ(支援)しましょう』ということで」  これは、伊達忠一元参議院議長の言葉だ(HTBの放送)。安倍さんとはもちろん、安倍晋三元首相のこと。伊達氏が2016年の参議院選挙で支援していた宮島喜文候補の得票が当選ラインに届かない状況だったので、安倍首相(当時)に頼んだら、安倍氏が教会の票を上積みしてくれたということを意味する。その結果、宮島氏は当選した。少なくとも、このケースでは、時の総理が、教会の票を割り振る役割をしていたということになる。  伊達氏は当時、細田派(現安倍派)に所属し、当選した宮島氏も同派に入会した。少なくとも、当時の細田派と統一教会は、組織的に結びついていた。そして安倍氏がそのトップとして君臨していたわけだ。  実は、それから6年後の今年、参議院選挙で奇妙なことが起きた。統一教会のおかげで当選したという宮島議員が、一度自民党の公認を受けたのに、なぜか、これを選挙前に辞退したのだ。極めて異例である。前出の伊達氏によれば、安倍氏から、今回の選挙では、教会の票を井上義行候補に割り振るので、宮島氏には回せないと言われ、それでは当選は難しいということで宮島氏が(表向き)自ら公認を辞退。立候補も取りやめたという。井上氏は、第一次安倍政権で安倍氏の秘書官を務めた人物だが、党内の評判はすこぶる悪い。しかし、安倍氏は、身内を優先して現職の宮島氏を切った。なんとも自分勝手な振舞いではないか。  安倍派のある議員に電話で話を聞くと、統一教会は、安倍派に限らず幅広く国会議員の選挙のボランティアをしているという。ただで一生懸命やってくれるので、誰も断る人はいない。しかし、組織的な票の割り振りまでやってくれるわけではない。  自民党の支持団体は、概ね派閥ごとの縄張りがあり、参議院選挙の場合は、ある団体が、常に同じ派閥を応援するケースや、3年ごとに二つの派閥を交替で応援するケースなどがある。統一教会は、安倍派の団体という仕切りで、参議院選挙では常に安倍氏の差配で教会側が票を割り当てることになっているという話だった。  自民党と教会の癒着の歴史は古い。しかし、今日のように、大手を振ってイベントに参加するなどの行為が横行したのは、時の総理がこの団体との関係を隠さず大っぴらにそれを宣伝する行為をしたことの影響が大きいようだ。ある議員は、総理が表で親密にしていて、選挙の応援までしてくれる団体から案内が来れば、これを断る方が難しい、問題があると知っていても、総理がやってるから大丈夫だろうという安心感もあったと語った。  これでも、岸田文雄首相は、安倍氏の国葬を強行するというのだろうか。 ※週刊朝日  2022年8月19-26合併号から

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    なぜか「攻撃されやすい人」の特徴は?攻撃側の心理を知って自分を守る

     人間関係が一度深くこじれてしまうと、なかなか元の関係には戻れません。それならば、最初から関係を悪化させない方法を知り、こじれ始めたら早めに改善していきたいものです。ポーポー・ポロダクションの『ゼロからわかる オンライン&リアルのトラブルを回避 人間関係の心理学』(日本文芸社刊)より、なぜか攻撃されやすい人のパターンと防御策を紹介します。 なぜか「攻撃されやすい人」の特徴タイプ別、顕著なパターンとは?  他の人と同じようなことをしているつもりでも、なぜか攻撃されてしまう人がいます。  どうせなら人ともめたくありません。そこで攻撃されやすい人の傾向を調べていくと、顕著なパターンがあることが見えてきました。 Aタイプ期待に応えてくれない人  ひとつめのタイプは「期待に応えてくれない人」です。ただし期待に応えないすべての人が攻撃の対象になるわけではありません。ここには「期待に応えてくれそうでありながら」という枕詞がつきます。  最初から期待に応えてくれなさそうな人に、多くの人は期待しません。ところが応えてくれそうな人が応えてくれないと、そこに怒りの感情が生まれます。 「怒り」という感情は、主に自分の思い通りにならないときに発生します。「この人なら私の願望に応えてくれる」という期待感が高まっている状況で、実際には思い通りにいかなくなると、そこに強い怒りという感情が生まれます。  こうした攻撃をされる人は自尊感情も低く、弱そうに見え、攻撃しても反撃されにくそうに感じられます。  ジャイアンは「のび太のくせに生意気だ」とよく言うイメージですが、まさにこのように弱そうな人間は自分の思い通りになるという勝手な認識をされてしまうのです。  Bタイプ自信満々な人、偉そうな人  2つ目のタイプは、自信満々な人、自ら幸せをアピールしてくる人、偉そうな人です。強い口調で人を威圧する人も入ります。  このタイプは反撃が怖いため、リアルでは攻撃されにくい傾向があります。アンチに対して「徹底的に対処するぞ」と強い姿勢を見せている場合は、攻撃すると自分が特定される不安から、攻撃をがまんする傾向があります。  しかしネットの世界で自分が特定されないと感じると、強い人間を攻撃したい心理に襲われます。その原因の多くは「嫉妬心」です。 Cタイプその他(目立つ人など)  全体的に目立つ人は攻撃されやすい傾向にあります。「正義感の強すぎる人」も攻撃を受けることがあります。自分の中にある正義感に対してのコンプレックスを刺激するからです。  変わったところでは「自分の考えを言わない人」もこのタイプに入ります。人は未知なるものを恐れる心理があり、何も言わないのは自分にネガティブな感情があるからかもと考え、相手に負の感情をもつことがあります。  すべてのタイプに共通することは、「反撃されないように見える」こと。日頃は反撃が怖い芸能人でも、炎上して謝罪すると便乗して徹底的に攻撃されるのはそのためです。 攻撃してくる人の裏側にある心理攻撃してくる人には特徴がある  ではどのような人が攻撃してくるのか、攻撃をする人の心理を見てみましょう。  相手の行動の裏側にあるメカニズムを知ることはとても大事なことです。 1.自尊感情が低い 「自分には価値がない」と考える自尊感情が低い人は、相手と自分をすぐに比較する傾向があります。そして自分のコンプレックス、弱さを隠すために誰かを攻撃しようとする人もいます。相手を攻撃したり、ディスって下げることで、自分は優れていると相対的に感じたいのです。 2.自己愛が強い  自分が大好きな人は何しろ人よりも優れた評価をほしがります。特に自尊感情が低い上に成り立っている自己愛は他者の評価を強く求めます。  そして他人の才能にも敏感です。他人の中に自分が嫉妬するような才能を見つけたりすると、嫉妬心が燃え上がり、攻撃をしたい衝動に駆られます。相手を攻撃することで、自分のポジションを守りたいと考えるのです。SNSの世界ではリアルよりもそれが強く出てきます。「いいね」に反応してくれないとか、メールを送っても短い文しか戻ってこないと、自分はもっと大事にされるべきだと思うのです。 3.共感力、想像力が低い  自分の立場でしか物事を考えられない共感力が乏しい人は、すぐ人を気に入らないと感じてしまう傾向があります。  相手は、見えていないところで努力しているかもしれないのに、嫉妬心が膨れ上がり目に見える結果だけに反応します。これも自分中心にしかものが見えなくなる最近高まる心理効果のひとつです。 4.攻撃的発散行動  日頃のストレスを攻撃することで発散しようとし、ぶつける相手を探している人もいます。イライラを発散するために弱そうな誰かを攻撃することが前提なので、理由はなんでもいいのです。   そのため相手が謝ってきても余計に怒りをぶつけるだけ、怒っている原因は後づけで、まず怒って誰かを攻撃をしたいのです。 攻撃してくる人から「自分を守る」防衛術  私たちは攻撃をされるメカニズムを知り、それをヒントに攻撃されない人になりたいですし、人を攻撃するような人にならないよう注意したいところです。  どのようなことに気をつければ攻撃を防衛、回避できるのかを考えていきましょう。 (1)攻撃の理由を分析する  攻撃をしてくる人がいたら、まずその原因を探してみましょう。相手は何に怒っているのか、ただ怒りたいだけなのか、もし原因があるならそれを回避することで、攻撃の悪化や回避ができる可能性が増えます。自分が原因なら修正して自分の成長にも活かせます。 (2)反応の順番に気をつける  弱く自信がない様子は、相手の格好の攻撃対象になりかねません。そのためには、強い態度をとること、そう見せることが大切です。  そこで気をつけたいのは、最初に好意的に振る舞って(優しく思いやりがありそうな態度)からの拒絶です。すると相手は「思い通りにならない」とイラッとして攻撃することがあります。  これは「ゲインロス効果」によるものと考えられます。 「ほめる」「けなす」の順番によって、受ける印象が変わります。「けなしてからほめる」と印象が良く、ものすごいほめられた気分になります。一方で「ほめてからけなす」と不快感が残りやすくなります。いわゆる「ツンデレ」はゲインロス効果となります。  途中で強くなることを意識するなら、最初から強い意志を示すことが大切です。 (3)過度に自慢しない、煽らない  そもそもSNSは自分の思ったこと、やったこと、得たものなどをフォロワーや友達と共有して反応をもらう楽しみがあります。プチ自慢をしたいと感じることは、何も悪いことではありません。  ただし、そうした投稿の中で、他人を見下すようなニュアンスを含んだり、成功を自慢したりしすぎるのは、攻撃の対象になり得ます。 「嫉妬心」は人を動かす力の中でも強いものです。「自分は恵まれていない」と感じている人は、すぐに比較して相手に嫉妬心をもちます。  この嫉妬心は自分で「浅ましいもの」と感じているので、嫉妬とは別の正当化する理由を考えます。たとえば正義感だったり、相手が何か悪いという前提条件をつくったりするのです。  すると、相手がやること何もかもが悪いことと感じてきて、監視活動を行ったり特定の相手のアンチとなっていきます。  この嫉妬心をいかに刺激しないかが、攻撃を回避するポイントにもなります。「自分の才能」「やり方が正しかった」と自慢の延長で見せるのではなく、役に立ててほしいという思考から誰かのためになるようにという視点で書くことなどを意識するのがよいかもしれません。  SNSでの投稿は個人の自由であると同時に、世界の人が行き交う広場に広告を出すようなものであり、大勢に見られているという意識をもちたいところです。 (4)相手の感情を客観的に伝えない  攻撃してくる人への対処法として、相手に「落ち着いてください」と伝えるのはなかなか難しいと思います。  怒っている人に、「あなたは怒っている」という相手の感情状態を伝えても冷静に戻ることはほとんどなく「怒ってなんかない」と返されるケースが多いと思われます。押さえつけられている気がしてエスカレートする人もいます。   嫉妬心もそうですが、ネガティブな状態を指摘されると相手は余計に怒ることがあります。まれに、リアルでは人から見られていることを意識して冷静になる人もいますが、SNS上では逆上する人が増えるだけです。相手の感情の状態には触れないほうがよいと考えます。  もし落ち着かせたいなら、相手の感情を上回る感情(強い謝罪)などで対処するほうがいいでしょう。相手が怒るのはこちらの感情を揺さぶることが目的です。その場合には揺さぶられたように見せて、大きな声で謝罪することがよいのです。  これは対面の場合に使えます。冷静に「すみません」と伝えると相手は余計に怒ってくることがあります。 防衛術まとめ  このような防衛術を続けてもエスカレートしてくる人はいます。そんな人には毅然とした態度で向き合い、誰かに相談してください。  SNSで攻撃が続く場合は通報などの対応も考えてよいでしょう。トラブル回避の努力はしても、がまんすることはありません。   またアンチを減らすことはできても、なくすことはできません。SNSにおけるアンチは、目立つようになると必ず出てきます。有名でないのにアンチがいるということは、有名になるポテンシャルがあるということです。  逆にいえば自分がステップアップできるチャンスがあることでもあります。相手が嫉妬心をもつということは、あなたは人がうらやむ環境や才能をもっているということなのです。むしろ自分のその点を評価しましょう。  またアンチにどう向き合い、発言するかを他の人は見ています。感じの悪い人、攻撃してくる人は、あなたを輝かせる演出者でしかないのです。 ポーポー・ポロダクション遊び心を込めたコンテンツ企画や各種制作物を手がけている。色彩心理と認知心理を専門とし、心理学を活用した商品開発や企業のコンサルタントなどもおこなう。

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    安倍元首相の国葬をしている場合ではない 祖父・岸信介から継ぐ家業としての政治の膿を出し切るべき

    作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、旧統一教会と政治のつながりについて。 *   *  * 「あの統一教会系合同結婚式に祝電 安倍晋三とのただならぬ関係 次期首相にふさわしいのか!」週刊朝日2006年6月30日号の記事。この3カ月後に首相になる51歳のまだ若い安倍さんの顔写真が、統一教会の合同結婚式の写真(イメージ)と重なって写っている。記事の本文はこんなふうにはじまる。 「会場には8千人余りが詰めかけ、盛大な拍手が鳴り響いた。司会者らしき男性がステージに立ち、誇らしげに名前を読み上げた。『祝電がいっぱい届いておりますが、その中から数個ご紹介を申し上げます。岸信介元総理大臣のお孫さんでいらっしゃり……』と紹介されたのは、ポスト小泉の最有力候補で、いまをときめく安倍晋三内閣官房長官(51)である」  記事は、旧統一教会を母体とした天宙平和連合(UPF)の会合を取材したもので、自民党のなかには選挙で統一教会の支援を受けたり、秘書を派遣されたりしている議員がいることにも触れている。影響力のある政治家が、被害者の多い宗教団体の広告塔の役割を果たすことを疑問視する記事で、当然、統一教会と岸信介氏との関係についても言及されている。 「統一教会」と、新聞雑誌記事データベースを検索すれば、数千もの記事がヒットする。そのほとんどが信者や信者の家族の被害を訴えるものだが、なかには、この週刊朝日の記事のように、自民党議員とのつながりを指摘する記事もいくつも出てくる。1992年には金丸信氏が、文鮮明教主の入国のために法務省に圧力をかけた疑いが報じられ、元信者が自民党議員の選挙応援にかりだされたことを証言している。1986年には、岸信介氏ら、自民党議員が中心となった「国家秘密法」の制定運動に、統一教会が母体の国際勝共連合が莫大な資金援助をしていたことも、大きく報じられていた。  みんな、うすうす気が付いていた。本当はどこかでわかっていた。それでも決定的に追いつめ、膿(うみ)を出し切ることまでできなかった。今、大変な勢いで、旧統一教会と自民党議員らとの長い蜜月が明らかになりつつあるが、本来ならばもっと早く、強く、深く、メディアが追いつめるべきことだったのではないかと悔やまれる。膿を出し切っていれば日本の民主主義がこれほど危うくなることもなかったかもしれず、そもそも安倍さんも死ぬことなどなかっただろう。  安倍さんの死からちょうど1カ月が経った。2年前に静岡・御殿場の虎屋のカフェに行ったことを思い出す。もともとは1969年に岸信介氏の自邸として建築されたものだ。5700平米の敷地に、当時、岸家が暮らしていた屋敷がそのまま残されている。水面がきらめく池、様々な樹木が完璧に配置された美しい庭園の豊かさに圧倒されたものだ。私は友人たちと、「この庭で安倍さんは遊んでたんだね」と話しながら庭を散策していたのだが、一人がボソリと言ったことが忘れられない。 「なんで、あの人たち、こんなにお金を持ってるの?」  なんででしょうね……、なんてことを私たちは日本史をひもときながら勝手なことを言い合って話し合ったものだ。でも、本当になぜ、と今改めて思わずにはいられない。なぜ、安倍さんの家はあれほどの財産を持っているのだろう。政治家というのは、そこまで「もうかる」仕事なのだろうか。そして財産も、人脈も全て、「家業」のように親から子に継いでいくものなのか。  冒頭の週刊朝日の記事で、安倍さんはUPFの会合で「岸信介元総理大臣のお孫さん」と紹介されている。50代にもなって公の場で「誰かの孫」と紹介される人生があるのか、と庶民の私などは違和感しかないが、それでもそういう世界を、安倍さんは生きてこられたのだろう。岸信介の孫として、岸洋子の息子として、安倍晋太郎の息子として、戦前から脈々と継がれてきた家業を背負うことが宿命であるかのように、生きてこられた。岸信介氏らが切望した「国家秘密法」も、安倍さんが総理の時代に「特定秘密保護法」として成立させたが、これも安倍さんにとっては家業としての仕事だったのかもしれない。  安倍さんの死後、母親の洋子氏が後継者について語っていることが報道されている。私の書棚には1992年に洋子氏が書かれた『わたしの安倍晋太郎』という本がある。夫の名前がタイトルにはなっているが、割かれているのはほぼ父、岸信介氏のことであり、岸家、佐藤家、安倍家という長州派閥のファミリーストーリーである。安倍さんが総理になったときに古本屋で買ったものだが、一読した率直な感想は、「洋子さん、毒母?」であった。戦犯の父を持つ娘として戦前と戦後を体験し、総理大臣を目指す夫に“仕え”、その夫が道半ばで急死した無念さがつづられている本から伝わってくるのは、総理の娘が総理の妻になれなかった悔しさであった。男尊女卑の激しいこの国で女は総理大臣にはなれない。なれるのは総理の娘、総理の妻、総理の母である。安倍さんの幼いころの夢は「プロ野球選手」だったというが、はなから「総理大臣になる」道以外は閉ざされた人生だったということが、洋子氏の手記からは伝わってくるのだった。  安倍さんは国会で不誠実な答弁をくり返す横暴な政治家であったが、どこか“お坊ちゃま感”が抜けない人だった。また、一昔前の愛人がいて当たり前、みたいな黒い政治家のイメージはなく、むしろ性的なものに奥手で、セックススキャンダルからは程遠い人という感じでもあった。私の勝手なイメージだが、強い母親に組み敷かれた人の弱さを感じずにはいられなかった。“奔放で自由な妻”を選んだのは、もしかしたら安倍さんの母親への人生最大の反抗だったのではないかと思うほど、安倍さんの“女性観”がよくわからなかった。    安倍さんの人生に母親の影響がどれだけあったかは、わからない。それでも、祖父が日本での普及に力を添えた旧統一教会の被害者に殺された事実は、この国をリアルに生きる人々の声よりも、“ご先祖様”を仰ぎ見るようなファミリービジネスとしての政治に邁進した結果でもある。そういう意味で、安倍さんは、山上容疑者と同じように、“家族の被害者”であったのかもしれないと思う。  公衆の面前でマイクを握ったまま背後から撃たれた安倍さんは、最後、山上容疑者のほうを振り返っている。1発目の煙がまだ立ちこめる数秒の時間のなか、最後に見たものは山上容疑者の姿だっただろうか。財産を奪われ、未来を奪われ、家族を壊された40代の男と、使い切れないほどの財産を先祖から引き継ぎ、未来が約束されてきた60代の男はあの瞬間、個として対峙した。それは2人の人生が同時に終わる瞬間だった。個としての安倍さんを考える時、その人生の歪(いびつ)さと不幸を哀れに思わずにはいられない。だからこそ安倍さんの死を悼むというのならば、やはりその不幸の根源を洗い出し、膿を出し切るべきなのだろう。安倍さんの政治家としての人生と、この国の民主主義の歪(ゆが)みを徹底的に洗い出すべきだ。国葬をしている場合じゃない。

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