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    家を買うのが早すぎた?「子ども部屋を見ると悲しくなる」 戸建て購入37歳共働き夫婦の後悔

     晩婚化に伴い、マイホーム購入の平均年齢が上がっている。金融機関が貸してくれる時代とはいえ、ローンは早めに完済したほうがベターだ。それでも人生は予期せぬことが起こりうるもの。リアルな事例や最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は、20代で計画的に購入した夫婦の事例から、戸建てを検討する際にどんなことを考慮すべきなのか。専門家に聞いた。 *      *  *「家を買うのが早すぎたのかもしれない……」  神奈川県で夫と2人で住んでいるAさん(37)は、10年前に家を建てたことを悔やみ始めている。  Aさんは「若い頃から将来設計をしっかり立てておきたいタイプだった」というように、25歳での結婚を機に、ファイナルシャルプランナーに収入に応じたライフプランを相談。「住宅ローンのことを考えても、家を買うなら早いに越したことはない」というアドバイスのもと、27歳で新築一戸建てを購入した。  夫婦ともに地方出身で、広々とした戸建で育ってきたことから、マンションは選択肢になかったという。カフェ風のお洒落なインテリアを実現したいとの思いから、注文住宅でそのこだわりを実現した。 「これから子どもを産んで家族も増えるはず」  広めの子ども部屋も構え、期待で胸を膨らませながらマイホームでの暮らしを満喫していた。  ところが翌年、Aさんにがんが発覚。幸い大事には至らずに済んだが、手術を経て子どもができづらい体になってしまった。気づけば、高校や大学の同級生らは出産ラッシュ。 「今、子ども部屋を見ると、何とも言えず悲しい気持ちになります」(Aさん)  戸建てへのこだわりを優先した分、交通の便は犠牲にしていた。共働きで、満員電車に揺られ、片道約1時間半かけて都心へ通う日々。駅から家まで徒歩25分と距離が遠く、家から駅までは自転車が欠かせない。退院後に長時間通勤は正直、つらかった。  昨年からのコロナ禍で「戸建てでよかった」と思い直したかというと、そうでもない。確かに、残業が多く深夜帰宅が当たり前だった日常は、コロナの影響で一変した。夫婦ともにテレワークが基本となり、出社は月1~2回。感染状況が比較的落ち着いている今もテレワーク中心であることは変わらず、以前に比べて格段に自由な時間が増えた。  プライベートを充実させようと、海辺に引っ越した同僚もいるという。Aさん夫婦が家を建てたのは住宅街。特段、緑の多いエリアでもない。 「今の家は、都心への通勤を考えて、自分たちが無理ない範囲で戸建が持てるエリアということで決めた場所。都心へのアクセスも周辺の環境も、言ってみれば中途半端な郊外の住宅地です。こんな状況になるなら、もっと自然豊かな場所に住むか、仕事中心のライフスタイルに合わせて都心のマンションという選択肢でも良かった」(Aさん) ◆ 商業施設が撤退する地域は値段に響く  人生、いつ何が起きるか分からないのは万人に共通すること。専門家にも相談し、長い目で見て良かれと判断し、早めに行動したAさんのような人でも、予測できない事態に後悔することがある。どんなことに留意すべきなのか。Aさんのケースを検証しながら、ポイントを整理していこう。 「家を買う時には、『もし自分がそこで住めなくなったら』という仮定をして考えてみることが大事です」   不動産コンサルタントの午堂登紀雄さんは、Aさんの例についてこう指摘する。想定外のことが起こり、もし自分がそこで住めなくなった場合は、人に「売る」か「貸す」か、どちらかの選択肢しかない。 「だからこそ、何かあったら『売れる』、もしくは『貸せる』物件を選ぶ視点が必要です」(同)  ここで改めてAさんの家の立地について整理しよう。Aさんの家は、最寄り駅から徒歩25分。晴れた日は自転車で駅まで向かい、駅に隣接する駐輪場に駐車する。雨の日はバスを利用するか、急いでいる時はタクシーを呼んで駅まで向かうこともあった。最寄り駅から都心のターミナル駅までは、乗り換え1回を挟み、1時間超かかる。通勤時間帯には郊外から通勤する乗客がひしめき、特に朝のラッシュ時間の満員電車は過酷な状況だった。  午堂さんは言う。 「駅から徒歩15分を超えた立地や、バスを利用しなくてはいけない立地など、アクセスの悪さは想像以上に売る時の値段に響いてきます。また郊外のニュータウンなどの高齢化が進む地域や、周辺の商業施設が撤退するなど衰退が進む地域も要注意。いざという時に売りにくくなり、資産価値が低下しやすい」 ◆ 実は「建売住宅」のほうが次に売りやすい  主に都市部で売れる物件の条件については、前回の記事に詳述しているが、Aさんの場合はマンションでなく戸建であることもポイントだ。戸建には思わぬリスクもあるという。 「一般的に戸建は、建物が木造であることが多いため、鉄筋コンクリート造であるマンションに比べ、価格が下落するスピードが早い。また、木造住宅の価値は、築20~24年前後でほぼゼロと評価されることから、土地だけの価格になってしまうことが多いのです」(午堂さん)  その土地代も、手放したいと考えるときには価値が下がってしまうこともある。例えば郊外の新築一戸建を買って数十年が経過した後、売却したいと考え、土地部分の価格のみで売りに出す。しかしなかなか買い手が現れないために土地部分の価格も下げることを余儀なくされ、結果的に大幅に資産価値を下落させてしまうケースもよく見られるという。  さらに、こだわりを実現するための「注文住宅」という点にも、意外な落とし穴が潜んでいる。実は一戸建の場合、一見ぜいたくなほど細部にこだわった注文住宅より、建売業者が建てたよくある間取りの建売住宅の方が売りやすい場合も多いという。これまで6千件を超える不動産取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。 「なぜなら建売業者は、建物を建てる前に、そのエリアの需要の傾向や価格相場などのマーケット調査をし、それを基に万人に受けるであろう外観デザインや間取り、建具、設備、内装などにしていることが多いからです。自分仕様にこだわって建てた注文住宅が、リセール時の買い手に気に入ってもらえれば良いのですが、その個性が逆に買い手を狭めてしまい、結果的に売りにくくなってしまうことがあります。住宅においてはある意味、“個性のなさ”が買い手を限定させず、売りやすさを高めるとも言えます」 (松岡かすみ) >>【後編:マイホームは「子ども部屋なし」がトレンド?! 勉強部屋に風呂なしアパートを借りる賢い選択】に続く

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    マイホームは「子ども部屋なし」がトレンド?! 勉強部屋に風呂なしアパートを借りる賢い選択

     晩婚化に伴い、マイホーム購入の平均年齢が上がっている。金融機関が貸してくれる時代とはいえ、ローンは早めに完済したほうがベターだ。それでも人生は予期せぬことが起こりうるもの。リアルな事例や最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は、20代で計画的に戸建てを購入した夫婦の事例を検証する。 >>【前編:家を買うのが早すぎた?「子ども部屋を見ると悲しくなる」 戸建て購入37歳共働き夫婦の後悔 】を読む *  *  *<30代後半Aさん夫婦のケース>10年前に27歳で神奈川県の郊外の住宅地に戸建てを購入。広さを優先した分、利便性は犠牲にして通勤は片道1時間半かかる。ローンの返済は順調だが、予想外だったのが、がんを患ったこと。子どもが授かりにくくなってしまい、せっかく作った子ども部屋を使用する予定はないという。 ◆ 80歳までローン返済…早い段階で購入することは“正解”    Aさん夫婦の事例をライフプランという視点から考察してみよう。ローン完済までの余裕が生まれ、返済計画も安定しやすいことから、早い段階で家を購入すること自体は間違っていない選択だ。  今は晩婚化の影響もあり、家を買う年齢が上昇傾向にある。最新の住宅市場動向調査(令和元年度・国土交通省住宅局)によれば、初めてマイホームを購入する人(一時取得者)の平均年齢は、注文住宅が39.1歳、分譲戸建住宅が36.8歳、分譲マンションが39.4歳、中古戸建住宅が42.8歳、中古マンションが44.8歳と、40歳前後。これに伴い、住宅ローンの完済年齢も上がっており、以前は最長70歳までが一般的だったところが、現在は最長80歳まで延長して設定している金融機関が増えている。 仮に40歳で家を買うとなると、35年ローンを組めば完済が75歳と定年退職後の年齢になる。大手不動産会社出身で、住宅購入における資金計画に詳しいファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)は言う。 「家の購入年齢が上がるに伴い、一昔前までは住宅ローンを『遅くとも65歳には完済したい、できれば60歳までに返したい』という人が多かったのが、最近は『遅くとも70歳には完済したい、できれば65歳までに返したい』に変わってきています。借入額を増やすためにも、35年の最長期間でローンを組む人が多いですが、繰上げ返済を計画的にしていくことで、なるべく現役のうちに完済することを目指す人が多い」  また、Aさんのように病気になるのも、誰しもが抱えるリスクだ。銀行で住宅ローンを借りて家を買う場合には、債務者が死亡または高度障害に陥ったときに返済が不要になる団体信用生命保険(以下、団信)に加入する必要がある。通常の団信は、病気にかかったときの保証はないが、がん、脳卒中、急性心筋梗塞の三大疫病型特約付の団信や、三大疫病に重度慢性疾患を加えた八大疫病型特約付など、病気や怪我を保証する団信のバリエーションが広がっている。 なお、多くのがん団信の加入上限年齢は、46歳以下と設定されている。Aさんの場合、債務者が死亡または高度障害に陥ったときのみの通常型の団信加入であったために保険金の支払い対象とはならなかった。仮にがん団信に加入していたら、がんと診断された時点で、団信に加入している保険会社からローンを借りている銀行に保険金が支払われ、ローンの債務がゼロになっていただろう。 「まさか自分が病気にかかるなんて思いもしなかった。あの時、がん団信に加入していたら……と、どれだけ悔やんだか分かりません」(Aさん) ◆ 自宅は子ども部屋ナシ 勉強部屋を借りる世帯も  飯田さんは、早い段階で購入に踏み切ったAさんの選択自体は「良い選択だった」としながらも、“妊娠前から子どものための部屋を構える”という点については「少し早まったかもしれない」と指摘する。 「リスクの想定は線引きが難しいですが、想定外のことが起こるかもしれないという可能性を踏まえると、『必要が生じたときに、必要に応じて動く』という視点のほうが『こんなはずじゃなかった』ということになりにくい。病気にかからずとも、子どもを授かれないという例も珍しくありません。また結婚することを前提に新居を購入した人が、実際は結婚に至らなかったというケースもままあります」  この「必要が生じたときに、必要に応じて」という観点は、不動産の視点に置き換えても応用が効く。例えば「子ども部屋」について。「子どもに個室が必要な期間というのは、意外と短い」とは前出の後藤さんだ。小学校低学年のうちは、個室があっても、家族のいるリビングで宿題をするケースも多いことや、大学入学を機に一人暮らしをする例も少なくない。  仮に小学3年生から高校卒業までが個室が必要な期間とすると、合計10年だ。都心では50~60平米の空間で、家族3~4人が暮らす例も珍しくはない。この10年のために、限られた空間の中で子ども部屋を設けるかどうか悩む人も多いという。これまで6千件を超える不動産取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは次のように言う。 「今はその辺りを合理的に考えて、子どもの勉強部屋用に、自宅近くのアパートの一室を賃貸で借りるケースも見られます。勉強用に借りる部屋ですから、狭くて風呂なしでも十分。また子ども部屋が必要な期間だけ、自宅を定期借家として人に貸して、家賃を元手に家族全員で広めの賃貸住宅に移るというケースも少なくありません」  多くの人にとって、人生で一番高い買い物とも言える住宅購入。想定通りに事が進むことばかりではないのが人生だが、家の選び方や買い方には思わぬ落とし穴もある。後の人生を左右すると言っても過言ではない住宅選びだからこそ、後悔しないためのコツを身につけておきたい。(松岡かすみ) >>【前編:家を買うのが早すぎた?「子ども部屋を見ると悲しくなる」 戸建て購入37歳共働き夫婦の後悔 】を読む

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    「なぜ、サッカー界に大谷翔平級の選手がいないのか?」セルジオ越後が語る意外な理由

     もしも、サッカー界に大谷翔平級の選手がいたら……。米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平(27)が野球界で活躍すればするほど、こんな妄想をしてしまう。日本サッカー史においては、プロ化から約30年経ってもなお「世界を驚嘆させるようなスーパースター」は輩出されておらず、最優秀選手賞「バロンドール」の日本人受賞者も現れないままだ。  プロサッカー選手の間でも、大谷のようなスター選手のサッカー界での出現を熱望する声は挙がっていた。大谷は昨シーズン、投打の二刀流で大活躍し、コミッショナー特別表彰など数々の栄誉ある賞を獲得。“ファンタジスタ”でとして、敵チームのファンをも熱狂させた。その活躍ぶりは、サッカーでいう「メッシ級」であると言っても過言ではないだろう。  サッカー界ではなぜ、日本人選手から世界を魅了するようなスーパースターが現れないのか。両競技における世界競技人口の違いは大前提として、他に考えられる要因はあるはずだ。セルジオ越後氏やワールドサッカーマガジン元編集長に話を聞いた。  まず考えられるのは、ほかの競技への「人材の分散」だろう。数々のプロスポーツを擁し、特に野球と人気を二分する日本において、優秀な才能や身体能力を持つ選手がほかの競技に分散してしまうことは、想像に難くない。  「ワールドサッカーマガジン」元編集長で、現在はフリーのサッカーライターをしている北條聡氏も、「日本では野球という大きな競合相手がいるので、運動能力の高い子は野球にも流れてしまう。人材がなかなかそろわない」と話し、こう続ける。  「最近はサッカーでもようやく、イングランド・プレミアリーグのアーセナルで活躍する冨安健洋選手(DF)のような、サイズとスピードを併せ持った大型選手が台頭するようになりました。体格や身体能力に恵まれた人材がもっとサッカーに流れてくるようになれば、話が変わってくると思います」  サッカーは日本においても屈指の人気スポーツだが、ファンタジスタを多数輩出してきたブラジルやイタリアなどの「サッカー大国」と比べると、その地位は相対的に見劣りする。 「プロ化して以降、サッカーも競技人口が増えているものの、サッカー大国とは言えません。メッシやクリスチアーノ・ロナウドを輩出しているポルトガルやアルゼンチンでは、圧倒的にサッカーが人気ですから。もし、大谷選手がドイツやイタリアで生まれていたら、サッカーをやっていた可能性も十分ありますし、それこそクリロナみたいな選手になっていたかもしれない。逆に、メッシやクリロナが日本で生まれていたら、野球をやっていたかもしれないですよね」(北條氏) 北條氏によれば、スターの存在が、その競技のさらなる活性化を促してきたという。 「ブラジルやアルゼンチンでは昔から、ペレやマラドーナなどのスーパースターが輩出されてきて、彼らがアイコン役となって人材を呼び込んできた。その点、日本の子どもたちは大谷選手の活躍を見て、『俺も大谷みたいになりたい』と言って野球を始める人が増えそうですよね」  サッカー解説者のセルジオ越後氏にも話を聞いた。セルジオ氏は“プロ入り前”の段階である「高校スポーツ」に着目。高校スポーツを取りまとめる機関は文科省だ。セルジオ氏は「文科省の管轄のままでは、強くならない」と指摘する。 「日本の学校には、“選手”がいない。皆、“生徒”なのです。文部科学省が推進している以上、いかに勉強させるかが最優先ですし、スポーツは二の次。6・3・3制度の中で生徒としてスポーツをしている限り、いつまでたっても選手にはなれません」  ならば、クラブチームに入ればいい、という指摘もある。 「ですが、日本は学歴社会。中学まではクラブでも、高校からスポーツ推薦で私立高校に入学し、大学の推薦枠を狙う人も多い。日本ではプロになれなかった場合におびえて、学歴をキープする人も多いのです。中学卒業後にブラジルに渡った三浦知良さんのように、早くからレベルの高い海外に出ることも成長につながりますが、海外に出て成功するのは一握りなので、みな尻込みしてしまう。Jリーグができてどれだけ年数がたっても、学校に依存している現状ではダメ。特に国際競争力の激しいサッカーでは、文科省が仕切っている限り、100年経っても外国に追いつくことはないと思います」  セルジオ氏は高校サッカーをめぐる組織の在り方についても手厳しい。こう指摘する。 「野球には高野連(日本高等学校野球連盟)という独立した組織があるのに、サッカーは高体連(全国高等学校体育連盟)として、ほかのスポーツの中にひとくくりにされています。僕は海外から来たとき、なぜ野球だけが独立しているのか不思議だったのです。(レベル向上において)高野連の果たしてきた役割は大きいですし、サッカーと扱いが大きく違う。それなら、サッカーも野球にならって『高校サッカー連』を作るべきではないでしょうか」  その上で、セルジオ氏は世界的スターの不在について、日本人に不足しているある能力を指摘する。 「特にストライカーには、クリエイティビティーが求められます。これは、教えられて身につくものではありません。ペレやマラドーナ、ネイマールも幼いころはストリートサッカーで大人も子どもも一緒になって、自分の頭で考えながらプレーし、センスを養いました。でも日本ではクラブチームでも授業のような形で、教えられたことをこなすだけ。これでは自分で考えてプレーするのではなく、教えられたことを忠実にこなす選手ばかりが生まれてしまう」  サッカー界においても、グローバル化の波はすっかり浸透した。大陸を渡り、欧州のクラブチームに優秀な選手が一極集中している。前出の北條氏も、「現状では、欧州に早い段階で渡るのが、個人のレベルを上げる一番の近道」と話す。10歳でスペインに渡った久保建英が頭角を現したのは、その象徴だ。  だが、日本人にとっては「地理的な要因」が、欧州に渡る際の障壁になる。 「ヨーロッパでは隣の国の育成システムで育ち、その選手が代表チームで活躍するという流れがありますが、それは地理的に近いからこそできること。南米も、ヨーロッパが比較的近いので戻ってきやすい。ですが、日本の場合はヨーロッパと離れているので、久保みたいなことをするのはハードルが高い。なかなかできることではありません」(北條氏)  いくつかの要素が挙がったが、これらは一例にすぎず、実際は様々な要素が複雑に絡み合っているのだろう。北條氏は、最後にこう話す。 「大谷選手は何もない文脈から生まれたわけではなく、日本がWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で世界一になるような実力を持ち、戦前からの歴史があるような競技だったからこそ。そう考えれば、サッカーはプロができて、たかだか30年ほど。ブラジルのようなサッカー大国では、偉大な先達から脈々と資産が受け継がれていますが、日本では、後の世代が先輩たちをどんどん追い抜いているような状況で、まだまだ発展途上。世界的スターが出ないというのは、ないものねだりなのかもしれません」 (AERA dot.編集部・飯塚大和)

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    下町の名脇役「キンミヤ焼酎」が右肩上がりの売れ行き 小瓶に変えたら人気上昇の意外な理由

     首都圏で、特に赤ちょうちん系居酒屋に入るとよく見かけるのが、美しい青いラベルが印象的な「キンミヤ焼酎」だ。甲類焼酎でホッピーやサワーのベースとして好むファンが増え、売り上げは右肩上がりを続けている。派手な宣伝をした歴史もないのに、いつの間に、なぜ人気になったのか。背景には、社長が打って出た“奇策”があった。 *  *  * 「下町の名脇役」のキャッチフレーズで知られるキンミヤ焼酎。関東、特に東京都内の個人経営の居酒屋や小規模チェーンでよく見られる商品だ。  ガラス瓶にブルーの美しいラベルが特徴的。割り方は氷に炭酸とレモンだったり、ホッピーや他の割り材だったりと人それぞれ。牛乳割りを出している店もある。そのままのキンミヤに梅シロップを入れる「梅割り」も、キンミヤ好きにはおなじみの飲み方だ。  人気の中心地は東京だが、作っているのは遠く離れた三重県四日市市の酒造会社「宮崎本店」。1846年創業と歴史のある酒蔵で、キンミヤは1915年に製造を始めたという。  ちなみに「キンミヤ」の呼び名が定着しているが、正式な商品名ではなく、「亀甲宮(きっこうみや)焼酎」が正しい名前だ。ラベルには金色の亀甲に「宮」の字が刻まれていて、これが由来となり「キンミヤ」の呼称が定着した。 ■かつて都内の下町でコアな人気  さて、徐々に本題。いつごろから、なぜこんなに人気になったのか。  酒場で聞くと「若いころは見たことがなかった」という40代や50代。「地元にはなかったはず」という地方出身の中年男女もいる。  答えてくれたのは同社に勤めて43年。社内で勤続最年長の伊藤盛男・東京支店長(65)だ。営業畑ひと筋で、主にキンミヤの主戦場である関東で販路拡大に奮闘してきた。好きなキンミヤの飲み方は緑茶割りで、「歳ですから」と謙遜しつつも、店に行けば7~8杯は飲むという。様々な美味しい飲み方を試し、得意先などに紹介しているキンミヤの“伝道師”でもある。  伊藤さんが入社した1978年ごろ、キンミヤは都内東部の下町では数少ないながらも扱う店があり、安価な大衆酒としてコアな人気があった。だが、他の地域では知名度はほとんどなかった。当時の宮崎本店の主力商品は清酒と合成酒で、おひざ元の三重県内ですらキンミヤは全然知られていなかったそうだ。  伊藤さんは当時を懐かしむ。 「東京の下町の酒好きはキンミヤを知っていても三重の宮崎本店のことは知らない。逆に三重の酒好きは、宮崎本店のことは知っていてもキンミヤは知らない。そんな状況でした」  なぜ主な取引先が都内東部の下町だったかには、理由がある。この地域には戦前からウメ液などで焼酎を割る、独特の「酒を割って飲む文化」が根付いており、そのベースとなる甲類焼酎の需要がもともとある土地だったこと。  語り継がれている逸話もある。  1923年の関東大震災で東京が壊滅的被害を受けた際、メーカーによっては取引先の店から売上金の回収に走ったところもあった。だが、「弊社は三重から自社所有の船で食材や木材などを運び、大打撃を受けた得意先に無償で配ったと伝えられています」と伊藤さん。窮地に手を差し伸べてくれた恩を忘れなかった店主らが話を広め、その後継ぎたちも宮崎本店とのつながりを大切に守り、キンミヤが下町でさらに定着していったそうだ。 ■居酒屋でテーブルにおける小瓶に  とはいえ、今の人気ぶりにはまだまだ遠い状況。流れを変えたのは、思い切った販売戦略だった。  かつて同社の焼酎甲類の主力は、今おなじみのキンミヤではなく、4リットルサイズの大きな商品だった。白地のラベルに「好きやねん」とでかでかと書かれ、その片隅に「金宮」とある。キンミヤと中身は一緒なのだが、そうはまったく見えないものだった。  宮崎由至社長(当時)は、2006年ごろに、「キンミヤブランド」を構築すべく戦略を切り替えた。4リットルの「好きやねん」は残しつつも生産を縮小、居酒屋でテーブルに置くことができるサイズの小瓶(600ml・720ml)、つまり今、キンミヤとして親しまれている商品を強化したのだ。 「4リットルサイズは他社と競争するためとても安く提供していて、利益にならなかったんです。とは言え主力商品ですから、生産縮小によって会社全体の売り上げが5~6億円程度下がったと記憶しています」(伊藤さん)というが、この決断が思わぬプラス効果を生む。  4リットルサイズの商品は大きいため、店の棚やカウンターには置けず、客の目に届かない場所に置かれることが多かった。客はベースの焼酎が何かを知らずに飲んでいたということだ。  だが、投入したサイズが小さい商品は、店のカウンターや棚にズラリと並べることができる。これにより、客が実物を目にする機会が格段に増えた。飲んで美味しいと思った一杯の、ベースの焼酎が何なのか。さらにそれがキンミヤと呼ばれていると、認知度が徐々に上がっていったのだ。 「販売戦略」という踏み込んだ決断が功を奏したが、人気の理由はほかにもある。後編では、肝心の「味」や時代背景について迫る。 (AERAdot.編集部・國府田英之) ※記事の後編<「この見たことがない焼酎はなんだ」 無名だった「キンミヤ」人気に昔ながらの営業力>に続く

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    子育て世帯は東京・文京区の「住所」がほしい? 公立名門小「3S1K」狙いで家を買う

     首都圏の新築マンションの価格は上昇し、中古でもいい物件はめったに売りに出ない、出てもあっという間に買い手がつくーー。東京で家を買うのは、なんとも大変な時代になったが、共働き夫婦の購入意欲は高いという。特に子育て層に特に人気なのが文京区だ。一方で東京特有の学区意識に辟易している夫婦もいる。リアルな事例や最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。最終回は、「わが家」の価値について考えたい。 >>【前編:東京23区「家を買うなら港区」40代夫婦のブランド志向 狭小住宅も悪くない選択? 】より続く  *      *  *「文京区のアドレスが持てるのであれば、所有権でも借地権でも良い、というぐらいに場所にこだわる方も実際にいます。都内で家を買うときに、“住所を買う”という視点で、エリアにこだわって選ばれる方は結構多い」  首都圏を中心とした住宅購入における相談実績が多いファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)はこう話す。  東京大学、お茶の水女子大学、日本女子大学、日本医科歯科大学……文京区には、国立、私立を問わず19の大学・短期大学が存在。名前の通り、教育・文化関係の施設が集まり、雰囲気もいい。  もちろん、イメージだけではない。  令和2年度公立学校統計調査報告書(東京都教育委員会)によれば、文京区の教育レベルの高さは23区中トップで、国立・私立中学校への進学率がもっとも高いことが示されている。中でも名門校として知られているのが、誠之小学校、千駄木小学校、昭和小学校、窪町小学校の4校。この4校のイニシャルをまとめて通称「3S1K」とも呼ばれており、この「3S1K」に入学するために転居する“公立小移民”の子育て世帯も数多く見られるという。  さらに、お茶の水女子大学附属、筑波大学附属、東京学芸大学附属竹早という、国立大学の附属小学校、中学校、高校が3校もひしめき合う茗荷谷周辺も、子育て世代に人気の高いエリアだ。  文京区では中学校の「学校選択制度」を導入しており、文京区に在住していれば校区外の中学校でも希望することができるのも、子育て世帯にとって高い魅力だ。例えば都内名門中学校の“御三家”の一つとして知られ、東大キャンパスの目の前に位置する文京区立第六中学校。都立日比谷高校をはじめとした難関高校の多くの合格者が輩出していることでも知られる名門中学だ。  この第六中の学区は「3S1K」の一つ、誠之小学校だ。しかし、学校選択制度導入後は区内の数多くの小学校から入学希望者が殺到し、定員(受け入れ可能人数)約100人に対し希望者は毎年約300人前後と、およそ3倍の倍率で推移するのが通例となっている。誠之小学校→第六中学校→日比谷高校→東京大学といった“ゴールデンルート”にわが子を乗せたい、と考える親が多いことの表れだろう。不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。 「文京区には名門と言われる学校が多いことから、必然的に集まる層の教育意識も高く、受験などの情報交換も盛ん。また小石川植物園、教育の森公園、播磨坂さくら並木、六義園など、都内の中でも緑が多いエリアとしても知られる。落ち着いた環境の中で、高い教育を受けさせられる文京区の資産価値は、今後も高い水準を保てる可能性が高い」  都内屈指の文教エリアである文京区、それも人気学区ともなれば、賃貸マンションも含めて物件は争奪戦だ。競争率が高いこともあり、賃貸マンションであっても値段は決して安くはない。  昨年、「3S1K」の学区エリアの賃貸マンションに家族3人で引っ越したというAさんが決めた物件は、45平米、2LDKで家賃24万円。予算20万円内で半年ほど探していたが、条件に合う賃貸物件でヒットするのは家賃35万円超の物件ばかりだった。24万円でも予算オーバーではあるが、不動産屋からも「同エリアならば手頃な方だ」「決めるなら早く申し込まないと、すぐに決まってしまう」と後押しされ、内見もせずに即契約したという。  わが子を名門校に通わせるのも一筋縄ではいかず、多額の費用がついて回る。   こうした教育熱心な層が多いエリアから「むしろ距離を置きたい」と、あえて下町と呼ばれるエリアに引っ越した例もある。  三重県出身のBさん(36)。同郷の夫と5歳の子どもとの3人暮らしで、世田谷区の賃貸マンションで10年ほど暮らしていたが、2年前に足立区のマンションを購入。Bさんの少し前に友人が足立区の同エリアに引っ越したことも後押しになった。世田谷に住む周囲のママ友からは、「なぜ世田谷区から足立区に引っ越すのか」と驚かれたという。  地方都市で、当たり前のように公立小・中・高へと進学し、大学入学を機に上京したBさんは、「東京ならではの学区意識や私立信仰のような会話や雰囲気には、どうしても馴染めない」と首を振る。 「世田谷に住んでいた頃、ママ友の間で小学校受験のための塾選びの会話が始まったとき、『ああ、私はこの場所では子どもを育てたくない』とはっきり思いました。私や夫が育ってきたような、もっとのびのびとした環境で子育てがしたい。それで選んだ環境が今の場所でした」  古くから続く商店街に、昔ながらの個人商店や居酒屋が軒を連ねる景色。そんな中に再開発で新たな商業施設やマンションが建ち、新旧入り混じった独特の活気がある。Bさんの暮らすマンションは、最寄駅から徒歩7分。都心の職場がある駅までの乗車時間は片道15分だ。家のすぐ近くにスーパーや商店街があり、世田谷に比べて物価も安く、近所付き合いも残っている。Bさんは「自分たちにはこちらの方が合っていると思う」と微笑む。 「長い目で住むことを考えると、いわゆるブランドエリアを始めとした“見栄っ張りな街”より、“本音で暮らせる町”を選ぶことに共感できる人も多いのでは」  まちづくりの専門家で、『23区格差』などの著書で知られる池田利道さん(東京23区研究所所長)は、こう話す。足立区を含む東京東部の下町エリアは、世田谷区を含む東京西部の山の手エリアと比べると、近所付き合いもはるかに活発だという。 「以前はイメージに難点があった荒川区以東の足立区、葛飾区、江戸川区ですが、大規模な再開発を通じて街のイメージは大きく変化し、子育て世代など若い層も移り住む地域に変化しています。西部に比べて物価も安く、都心へのアクセスも良いことから、東部の下町エリアは今後さらに発展していくのでは」  ブランドエリアと呼ばれる場所など、すでに一定の評価を得ているエリアを選ぶ方法もあるが、今後の町の発展を考えて選ぶというのも一つの手だ。新路線の開通で都心までのアクセスが良くなる場所や、新駅ができる場所、大学誘致に積極的に取り組んでいる場所など、発展の見通しにはいろんな要素がある。再開発によって町のイメージが一新する例があちこちで見られているように、大手デベロッパーが力を入れようとしている地域も飛躍的な発展の可能性がある。マンショントレンド評論家の日下部理絵さんは言う。 「自分にとって快適である“居住価値”と、不動産としての“資産価値”は、必ずしもイコールじゃない。家を選ぶときに何にこだわりたいか、まずは3つに絞ってみる。その中で優先順位をつけた上で考えると良いでしょう」  「結局は同じ都内の話だろう」とタカをくくるなかれ。少しエリアが変わるだけで、いろんな要素が大きく変わってくるのが東京という大都市だ。「東京で家を買おう」——そう決めたなら、あなたは何を重視して選びますか?(松岡かすみ) 〉〉【連載を最初から読む】それでも夫婦は東京に家を買う#1

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    【ゲッターズ飯田】11月29日の運勢は?五星三心占い「焦っても空回りするだけ」銀の時計座

     占いは人生の地図のようなもの。芸能界最強の占い師、ゲッターズ飯田さんの「五星三心占い」が、あなたが自分らしく日々を送るためのお手伝いをします。12タイプ別に、毎週月曜日にその日の運勢、毎月5のつく日(毎月5、15、25日)に開運のつぶやきをお届けします。※年内は開運のつぶやきは12月15日、25日に配信。 【タイプチェッカー】あなたはどのタイプ?自分のタイプを調べる 【金の羅針盤座】「まぁいいか」と声に出して、何事も前向きにとらえることが大事な日。ウソでもいいのでプラスの言葉を発することで、自分も周囲も気持ちが楽になるでしょう。 【銀の羅針盤座】求められることが増える日。急に忙しくなり、これまでとは違う仕事を任されたり新しいメンバーと組むことになりそう。誰が何を求めているのかをよく考えて話をするように。 【金のインディアン座】買い替えをするにはいい日。家電や長年履いている靴、仕事道具などの購入を検討してみましょう。年末か来年に購入しようとしているアイテムをいまのうちからチェックし、貯金をはじめるのもオススメ。 【銀のインディアン座】あなたの個性を認めてくれている人に相談してみて。縁のつながりのおもしろさや楽しさを噛みしめられるでしょう。「恩返し」や「恩送り」の気持ちも忘れないでください。 【金の鳳凰座】遅刻や寝坊、忘れ物に注意。慌てて行動するとケガをしやすいです。落ち着いて行動できるよう、時間にはゆとりをもち、早め早めの行動を心がけましょう。 【銀の鳳凰座】日中は実力が評価されるので、気になることには積極的に取り組みましょう。笑顔で過ごせば幸運を引き寄せられます。夕方以降は誘惑に負けやすいので、サボっている姿を上司に見られないように気をつけて。 【金の時計座】難しいことを難しいままにするのではなく、わかりやすく簡単に説明できるように努めてみましょう。シンプルに見せる工夫を学んでみると、一歩成長できそうです。 【銀の時計座】週のはじめからネガティブなニュースに気持ちが動転しそう。焦っても空回りするだけなので、とりあえず落ち着いて深呼吸を。頼れる人に相談して指示を仰いでください。 ※毎週月曜日に占いが届きます!AERAdot.の公式LINEの友達申請はこちら↓↓↓https://lin.ee/trWiCvV 【金のカメレオン座】周囲から「無駄だ」と言われても、将来、少しでも役立つと思うならやっておきましょう。なんでもすぐに結果が出ればいいわけではありません。目の前の快楽や娯楽に流されないように。 【銀のカメレオン座】情報をしっかり集めて、無駄な失敗を避けること。自分の立場、相手の立場、世の中の流れなど、さまざまな角度から見てみることが大切です。詳しい人に話を聞いてみるのもいいでしょう。 【金のイルカ座】昨日からの疲れや寝不足を感じることがある日。油断していると体調を崩しかねないので気をつけて。10分だけでもいいので、昼寝をすると体も頭もスッキリするでしょう。 【銀のイルカ座】何事も計画を立てることが大切な日ですが、失敗したときは、自らの考えの甘さを認めて、立て直しを。その際に情報やデータも必要になるでしょう。信頼できる人のアドバイスにも素直に耳を傾けて。 (『ゲッターズ飯田の五星三心占い2022』より一部抜粋) ※毎週月曜日に占いが届きます!AERAdot.の公式LINEの友達申請はこちら↓↓↓https://lin.ee/trWiCvV

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    コレステロール、中性脂肪は「男女」「年齢」で基準値が違う! 参考にするべき数値をチェック

    「人の老化は血管から始まる」ともいわれるように血管ケアはアンチエイジングの要。年齢を重ねることで硬くなっていく血管をケアしていくには日々の食事や運動で脂質をコントロールすることが大切です。まずは、コレステロールや中性脂肪の値を知ることがセルフケアの第一歩。女性は年齢に応じた基準値があるのでチェックしてみましょう。今回は女性の血管ケアについて、日本の「性差医療」の草分け的存在である天野惠子先生にお聞きしました。今回は、前編・後編の前篇をお送りします。(自分で自分の健康を守るための健康情報を発信する「セルフドクターWeb」より転載) *  *  * 動脈硬化は他人事じゃない  女性ホルモンのエストロゲンには、血管が正常に機能するのを助ける働きと共に、LDLコレステロールを減らすなど、動脈硬化を抑制する作用があります。そのためエストロゲンが多く分泌されている20~30代までは、特別なケアをしなくても血管は比較的しなやか。これは30代から動脈硬化が見られる男性とは明らかな違いといえます。  ところが女性も閉経を迎え、エストロゲンの分泌が止まると共に、血管の硬化が急速に進みます。血液中を流れる脂質にはコレステロールや中性脂肪がありますが、これまでエストロゲンによって抑えられていたそれらの数値も自然と高くなり、血液の流れを妨げることに。動脈硬化の進行に大きく影響してしまいます。  さらにLDLコレステロールが血管の内壁にたまったものが、やがてドロドロの粥状のこぶのようになります。これがプラークです。プラークが破れると、そこに血栓ができて血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞の発症につながるのです。 「閉経前の女性が動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を発症する割合は低く、男性の約5分の1といわれています。ところが閉経後の55歳くらいから発症率はぐんとアップしてしまいます」と天野先生。女性は閉経後、意識的な血管ケアが必要不可欠となるわけです。  閉経前にはエストロゲンによって動脈硬化から守られている女性たちでも、「その効果を帳消しにしてしまう危険因子がある」と天野先生。それが「喫煙」です。タバコに含まれるニコチンの作用で血管が収縮して血流が低下。血管は硬くなり、動脈硬化が進行します。喫煙をしている女性は吸っていない人より、急性心筋梗塞のリスクが8.2倍も高まることが分かっています。 コレステロールや中性脂肪の数値をチェック  コレステロールや中性脂肪は増え過ぎると血液の流れを悪くし、血管にも悪影響となります。でも、これらの脂質は決して健康の敵ではありません。細胞膜やホルモンの原料となったり、体を動かすエネルギー源となったりする大事な要素なのです。  女性の場合は、閉経後に急に脂質の数値が高くなった方もいるでしょう。でも、慌てないで。女性の体の変化に対応した基準範囲があるのです。 「そもそも女性と男性ではコレステロールや中性脂肪の検査値が違って当然。それなのに、これまでは男性も女性も同じ値で見ていました。また、女性はエストロゲンの分泌量が年齢で変わるため、年齢によっても基準範囲は変わります」と天野先生。女性が参考にしたいのは、下記の男女・年齢別に分けた基準範囲です。なお、総コレステロールとは、LDLコレステロールやHDLコレステロールなどを合計した血液中のコレステロールの総量です。下記の基準ではHDLコレステロールの基準範囲は示されていません。 更年期を迎えたら、全身をくまなく検査したい  エストロゲンの分泌が減少すると循環器、消化器、呼吸器などの活動を調整している自律神経も乱れやすくなり、体のあちこちにトラブルが起こるようになります。よくないのは、不調があっても、「更年期だから仕方ない」と放っておいてしまうこと。実は脳血管障害の症状だったケースもあるそうです。そこで先生は、「女性の体がダイナミックに変わる節目の50歳あるいは閉経を機に、頭から足の先まで自分の体の状態をきちんと検査することが大事」と提案します。  栄養素や酸素を行き渡らせる血液の流れが滞ると、体のどこかに支障を来します。全身を検査することは、全身の血管に詰まりがないか、動脈硬化がないかの確認でもあるのです。健康診断だけでは十分とはいえないため、自費にはなりますが病院やクリニックで行っている個別検診で、詳細に調べることをおすすめします。 こんな検査を受けておこう  健康診断や特定健診で行う身体測定(身長・体重・BMI・腹囲を測る)や血液検査、血圧測定(血圧脈波検査)に加えて、より精密な検査が行える個別検診。それによって、健康診断では見落とされた疾患や異常が見つかることも。女性特有の病気を網羅した検診メニューを用意しているクリニックもあります。 <脳検査>MRI(脳実質撮影)、MRA(脳血管撮影)などで脳血管疾患を調べる。 <循環器検査>心臓や血管の状態をチェック。動脈硬化や心血管疾患の有無を調べる。 頸動脈エコー検査 胸部エコー検査 胸部X 線検査 冠動脈CT 検査 心電図 <血液検査>女性に多い甲状腺機能障害や膠原病、関節リウマチの素因の有無を調べる。 甲状腺機能 抗核抗体 リウマチ因子 炎症反応 ホルモンチェック 腫瘍マーカー <眼科検査>眼底検査で高血圧や動脈硬化の進行、糖尿病の発見、眼球の病気の有無をチェック。 <婦人科検査>子宮や卵巣のがん、乳がんなど、40代以降にリスクが高くなる病気を検査。 子宮頸がん検査 子宮体がん検査 経腟超音波検査 乳房視触診 マンモグラフィー 乳房超音波検査 <その他> 骨密度検査 PET-CT 検査 更年期の悩みはどこで相談できる?  更年期に起こる心身の不調は、診療科を特定できないことが多いもの。そんな時は女性の全身症状をトータルで診察してくれる「女性外来」への受診をおすすめします。女性外来の先生は呼吸器、内分泌、循環器などと専門分野は違いますが、性差医療について勉強しているため、メンタル面も含めいろいろと相談にのってくれるはずです。女性外来の受診をきっかけに、かかりつけ医をもつとよいでしょう。 全身を検査する費用はどのくらい?  健康診断や特定健診の費用は無料か、有料でも低額です。全身を診る個別検診の場合、基礎検査を中心とした日帰りの費用は平均3~8万円くらい、泊りがけでMRIやMRA、PET-CT(※)、エコー検査を行って、より詳しく検査する場合は10万円以上かかることも。個別検診は健康保険の適用外なので、費用は全額自己負担。ただし居住地の市町村や所属している健康保険協会、健康保険組合、あるいは契約している保険会社によっては、補助金や助成金、割引サービスが受けられる場合があるので、問い合わせてみましょう。 ※PET(陽電子放出断層撮影)検査とCT(コンピュータ断層撮影)検査を融合させた検査。がんの発見に役立つ。 <後編>「硬くなっていく血管をケアするには? 医師がすすめる日々の食事と運動の方法」に続く 監修/天野惠子(あまの・けいこ)先生 一般財団法人野中東晧会 静風荘病院特別顧問。日本の「性差医療」研究の草分けとして普及に努め、鹿児島大学及び千葉県にて、性差に基づく女性医療の実践の場として女性外来を立ち上げ、治療に当たる。2009年より現職。日本性差医学・医療学会理事。 セルフドクターHP

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    「いい相続対策、ダメな相続対策」 国税庁OB、敏腕税理士が教えます

     今後、税制の変更によって、生前贈与で得られる“節税効果”は小さくなっていくのが確実だとみられている。今からできる効果的な相続対策とは? やってはいけない相続対策とは? *  *  * 「生前贈与」ができなくなる──11月に入って、本誌も含めて多くのメディアが報じている。12月に発表される与党税制改正大綱で、生前贈与をめぐる税制が変更される可能性があるためだ。  だが、仮に2022年度に相続税法が改正されても、生前贈与そのものができなくなることはない。与党・政府税調や財務省いずれも、贈与を促したいからだ。 「高齢化の進展に伴い、相続人も年々高齢化しているが、定年退職した子が財産を相続したところで、消費に結びつきにくい。経済活動に直結する現役世代への資産移転を進めるためにも、贈与を促進する方向での改正論議が進むでしょう」(与党税調関係者)  ただし、“節税効果”が今後小さくなっていくのは確実だ。昨年の与党税制改正大綱には<資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて>の記載がある。早い時期から準備することで大きな節税効果を享受する「富裕層の節税対策への対策」(同)が、生前贈与をめぐる税制改正を検討している与党・政府税調の狙いだとみられる。  では、今からできる相続税対策にはどのようなものがあるのか。  30年以上も相続税申告に携わってきた南青山資産税研究所の田川嘉朗税理士は「正確な相続試算を基に、特定の業者の利害に縛られることなく、資金繰りに無理のない範囲でバランスよく講じられた対策」だと話す。つまり、その人の財産や家族構成によってまったく変わってくる。 「簡単に相続試算してくれる診断サービスもありますが、実際に相続が発生したら課税価格が2割も違っていた、というのはザラにある。税理士によっては金融機関や不動産会社と提携しており、利害を優先するあまり、将来性の見通しが甘い物件購入を対策として勧めてくるケースも。財産評価額を下げようと賃貸物件を多く建てすぎて、将来、相続税納税のために売却する更地がなくなってしまう人もいるので、財産評価から相続・争続対策、納税資金対策まで知り尽くした専門家に意見を仰ぐのが、対策の第一歩です」(田川氏)  とはいえ、まだ効果的な定番の相続対策もある。一つは、受贈者1人につき年間110万円まで非課税となる暦年贈与。孫子3人に10年間、110万円ずつ贈与し続ければ、原則、3千万円以上を無税で譲り渡すことが可能だ。今後の税制改正で非課税枠が縮小されたりする可能性もあるが、今のうちに始めたい対策の一つだ。  23年3月末をもって廃止される見込みの教育資金贈与の特例制度(受贈者1人あたり1500万円まで非課税)や結婚・子育て資金贈与の特例制度(同1千万円まで)も有効な対策だ。今から非課税枠いっぱいまで活用するのは難しいが、教育や結婚・子育て費用の需要があるのならば、同制度を利用して少しでも贈与しておきたい。  一方、今後の税制改正後も変わらずに活用できると思われるのは、生命保険。500万円×法定相続人が非課税となるため、まとまった現金があるのならば、準備しておきたい。同様に、不動産を利用した対策も一般的だ。現金を不動産に替えるだけで評価額が7割程度に引き下げられるうえに、賃貸物件であれば借地権・借家権が差し引かれ、さらに2~3割評価額を引き下げられる。  2千万円で購入し、賃貸していたワンルームマンションならば評価額は500万~600万円に下がり、贈与したところで贈与税は70万~90万円に抑えられる。  親子共有財産として自宅や賃貸マンションなどの不動産を保有している場合は、相続発生前に親に子の保有分を買い取ってもらったほうがいいというケースもある。 「現預金を不動産に替えれば相続財産全体の評価額を下げることができるうえに、親子が同居している自宅の場合には小規模宅地等の特例で土地の評価額を330平方メートルまで80%減額できます。そのため、子の保有分を親に買い取ってもらうという相続対策が有効になることも。子は現金を受け取ることができて、相続発生時にも大きな納税負担を負うことなく宅地を相続することができます」(税理士法人チェスター・河合厚税理士)  親が持つ宅地を子が相続する際には、近年「代償分割」という方法が注目を浴びているという。 「一般的には兄弟姉妹の共有財産として親の宅地を相続するケースが多いのですが、持ち分が明確で公平感があるというメリットがある半面、財産を自由に処分できなかったり、共有者に相続が発生すると権利関係が複雑になるといったデメリットがあります。代償分割は、長男が宅地を相続したら次男に相続分の現金を支払うことで、共有のデメリットを解消した方法になります」(同)  評価額1億円(時価1億2千万円)の宅地と2千万円の家屋、2千万円の預貯金を残して父母ともに亡くなったケースを考えてみよう。長男・次男はそれぞれ7千万円の相続権を有するが、親と同居していた長男と独立して自宅を構えていた次男が共有で宅地・家屋を相続すると770万円の相続税が発生する。長男相続分の土地(5千万円分)に小規模宅地等の特例が適用されて課税価格の合計が1億円(長男土地5千万円×0.2+次男土地5千万円+家屋2千万円+預貯金2千万円)となるためだ。  一方で、長男が土地・家屋を相続して、代償分割によって次男に7千万円(宅地<時価>+家屋の半分)を支払うとどうなるのか。親と同居していた長男には小規模宅地等の特例が適用されるため、土地の評価額は1億円から2千万円に引き下げられ、預貯金と代償金を加味した課税価格は計7千万円に圧縮される。その結果、相続税は320万円に抑えることができるのだ。共有で相続する場合と比較して、450万円も相続税を減らすことができる。  長男が7千万円もの現金を用意する必要があるが、「相続人同士の合意があれば、分割払いにすることも可能」(同)。生前贈与に代わる方法とは異なるが、知らずに相続を迎えたら後の祭りだ。マイホームを持つ親がいる場合には、代償分割という方法があることを覚えておこう。(ジャーナリスト・田茂井治) >>【後編/国税が目を光らせるタワマン相続税対策 「やってはいけないダメ対策」元調査官の教え】へ続く※週刊朝日  2021年12月3日号

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    8時間前

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    「授業準備は5分」に「小学校をなめているのか」 公立教員残業代訴訟の「仕分け」に教員ら困惑

     公立小学校教員が未払い残業代を求めた訴訟で、司法が勤務時間外の労働時間を仕分けた。現場の実態や価値観と合わないチグハグさが、大きな波紋を呼んでいる。AERA 2021年11月29日号の記事を紹介する。 *  *  * 「翌日の授業準備は1コマ5分」「保護者対応はしません」──。もしそんな小学校教員が子どもの担任だったらどうだろうか。一方でその教員は「扇風機の清掃とビニール掛け」「エアコンスイッチ入り切りの記録」には時間を割いている。冗談に思われるかもしれないが、こんな教員が全国で増えても不思議でない状況が生まれているのだ。  10月1日、全国の教員が固唾(かたず)をのんで見守った裁判の判決が出た。埼玉県の公立小学校教員の田中まさおさん(仮名・62)が、時間外労働に対して残業代が支払われないのは労働基準法違反だとして、県に未払い賃金の支払いと国家賠償を求めた裁判だ。教員の慢性的な長時間労働は残業代が発生しないことが元凶とし、歯止めをかける狙いだった。だが、さいたま地裁は訴えを退けた。  公立学校教員の給与は、1971年に制定された教職員給与特措法(給特法)で規定されている。教員の仕事は裁量が大きく特殊だとして、月給の4%分の教職調整額を支給する代わりに、残業代を支払わない。ただし、制定にあたり長時間労働を招く懸念の声があったため、残業させられるのは、校外実習、学校行事、職員会議、非常災害の「超勤4項目」に限った。 ■「自発的行為」なのか  ところが、田中さんは月平均約60時間の残業のうち、9割が4項目以外の業務だと主張。しかも、それらの業務は必要に迫られて行っているのに、教員が好きで勝手にやっている「自発的行為」と見なされ、賃金の対象外にされているのは「おかしい」と訴えているのだ。  これに対して地裁は、田中さんが提出した残業の内容を「労働時間」か否かに仕分けし、時間数も計算。その結果、時間外の労働時間を認めたものの、未払いの残業代の支払いについては給特法が適用されるとして棄却。国家賠償についても、賠償に値するほどの時間量でないとして認めなかった。  その仕分けの一部を抜粋した。これが公開されるや大きな波紋を呼んだ。とりわけ教員から困惑の声が多く上がったのが、「翌日の授業準備は1コマ5分」が相当とする判断だ。  50代の女性教員は言う。 「小学校をなめているのかと思いました。例えば理科の実験授業があるときは、予備実験をします。児童は毎年違うため、同じ実験でもやり方を変えるのです。こうした地道な準備を通して、私たちは授業の質を保ちます。司法にこんなことを言われて、文部科学省や教育委員会は抗議しないのでしょうか?」  労働時間か否かを分かつ大きなポイントとなったのが、校長の指示や命令があったかだ。  SNSには「『労働時間でない』と司法が線引きした残業についてはやらない。断ることだ」「これからはひとつひとつの業務について、校長に『それは命令ですか?』と確かめる必要がある」といったような教員の声が見られた。一方、「労働時間として認められないからといって『保護者対応も教材研究もやりません』なんて無責任なことを教員はできない。それを見越して、つけ込まれている」のようなジレンマの声も少なからずあった。 ■未来の教員にも影響  判決の影響は、教員だけでなく、教員志望の若者にも及んでいる。教育学部3年の女子学生(22)は、高校3年のとき勉強の悩みから学校に通えなくなった時期があった。どん底から救ったのは丹念に話を聞いてくれた教員の存在だった。それが、教職を目指す動機になっている。 「恩師が朝に夕に私にしてくれたことは、今回の判決の理屈でいくと『労働時間とみなされない、好きでやっているボランティア』と判断される可能性が高く、悲しくなりました。恩師に連絡すると『教師の本分だ。構わない』と言ってくれました。その代わり『本分でない仕事は減ってほしい』とも言っていました。恩師は過重労働でメンタルを病み、一時期休職をしていました。国は本気で、教員や教員志望者が安心して働ける労働環境を作ってほしい」(女子学生)  司法上の手続きとはいえ、教育現場の実態や価値観と合わない、この仕分けのチグハグさは何に起因するのか。田中さんの証人として、意見書を提出した埼玉大学の高橋哲准教授(教育法学)は、次のように説明する。 「『翌日の授業準備1コマ5分』というのは、裁判官が主観で決めたもので、教育の専門的見地からではありません。教員のモチベーションやモラルを低下させる可能性は否めません」 ■残業は「無賃強制労働」  一番の問題は、児童の提出物のペン入れや保護者対応など、教員の核心といえる業務が勤務時間内にできず、時間外に押しやられている点だ。 「例えばアメリカの学校では、保護者対応の時間を1週間に80分、勤務時間内に確保しなければいけないなどと決めています。教員のコアな業務については、標準時間を定め、勤務時間内に時間を確保できるよう労働環境を変えていかなければいけません」(高橋准教授)  裁判を起こした田中さんが、教員になったのは81年。このころは児童が下校したあと翌日の授業準備をし、定時で帰れた。状況が変わったのは、2000年ごろからだ。校長の権限が強化され、職員会議が校長の補助機関に変わった。それまでは、職員会議でさまざまな業務について話し合いで決めていたが、今は意見を言う教員はほとんどいない。業務量はどんどん膨らみ、勤務時間内に終えられなくなった。 「英語、プログラミング、コロナ対応……新しい仕事がどんどん降ってきます。校長は、残業の指示や命令はしていないと裁判で述べましたが、勤務時間内に終えられないほどの量があり、残業を余儀なくされているのです。残業は“自発的行為”という名のもとの『無賃強制労働』です」(田中さん)  16年の文科省の調査では、小学校教員の3割、中学校教員の6割が、過労死ラインとされる月80時間以上の残業をしている実態が明らかになった。 「若い女性教員が、今の働き方では『子どもを産み育てることはできない』というのを聞いて、ショックを受けました。今の労働環境を若い教員たちに引き継いではいけないと思い、訴訟を起こしました」(同)  田中さんは一審を不服として控訴した。二審は早ければ年内か年明けに、東京高等裁判所で開かれる見通しだ。今回の判決を受けて、田中さんの支援事務局が始めた署名は4万筆以上集まった。裁判費用のクラウドファンディングも目標の200万円に到達しそうな勢いだ。 ■部活も時間外に重負担  支援事務局を立ち上げたのは、東京学芸大学4年の石原悠太さん(24)。4人の学生で運営している。石原さんは言う。 「この裁判は僕たちにとって他人事ではありません。既に教壇に立っている仲間もいます。労働環境を改善し、より良き教育につなげていきたいです」  一審は敗訴となったが、画期的な前進もあった、と前出の高橋准教授は指摘する。 「これまでの裁判では、教員の残業は『自発的行為』として労働時間が一切認められませんでしたが、今回、初めて労働時間が認められました。これによって教員も1日8時間を超えて勤務させられた場合は、違法になる可能性が出てきました」  かねて中学や高校では部活動の時間外労働の負担の重さに、多くの教員が声をあげてきた。もし訴訟を起こした場合、どうなるのだろう。田中さんの代理人の若生直樹弁護士は言う。 「今回の判決を前提に見た場合、まず部活動は学校教育の一環として学習指導要領に位置付けられています。このため校長が部活動指導を当該教員に任せていた実態が認められれば、教員が自主的に行った活動とはいえず、労基法上の労働時間と判断される可能性があります。長時間の時間外労働が認定されれば、国家賠償の対象になる可能性も十分あると考えられます」  文科省は、取材に対して「学校における働き方改革を一層進めていく。給特法については、来年度実施する勤務実態調査の結果を踏まえ検討する」と答えた。全国の教員の残業代を仮に支払うとなると、年間約9千億円と試算されている。もはや細かな施策で解決できるレベルを超えている。新政権の本腰を入れた取り組みが問われている。(編集部・石田かおる)※AERA 2021年11月29日号

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    なぜ我妻善逸は猗窩座戦に参加しなかったのか――善逸が「ひとりで戦う」理由 植朗子

    【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。28日、アニメ「鬼滅の刃」無限列車編が最終回を迎えた。フィナーレでは上弦の鬼・猗窩座と炎柱・煉獄杏寿郎が文字通りの死闘を演じた。この“炎柱の最後の戦い”を炭治郎と伊之助がすぐそばで見届けたのに対して、善逸だけはその場にいなかった。なぜ善逸は“ひとり”別の場所にいたのか? そこには、善逸ならではの“戦い方”の流儀があった。<本連載が一冊にまとめられた「鬼滅夜話」が即増刷され、好評発売中です> *  *  * ■善逸は弱虫?  我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)は、騒がしく、訓練をサボりがちな、お調子者の「弱虫キャラ」である。鬼殺隊の入隊試験時には誰よりもおびえた様子を見せ、「鼓の鬼」がひそむ屋敷では、鬼の恐ろしさにふるえながら炭治郎(たんじろう)に助けを求めた。 <炭治郎 なぁ炭治郎 守ってくれるよな? 俺を守ってくれるよな?>(我妻善逸/3巻・第21話「鼓屋敷」)  やがて「鼓の鬼」の血鬼術(けっきじゅつ=鬼の特殊能力)によって、善逸は炭治郎と引き離されてしまった。善逸はたったひとりで、「正一くん」という名の一般の少年を守らねばならなくなった。 ■善逸の真の姿  自分の強さに自信がない善逸は、緊張が極限まで高まると昏倒(こんとう)してしまう。しかし、彼はこの「昏倒」によって、真の強さを発揮する。 <雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃(へきれきいっせん)>(我妻善逸/3巻・ 第23話「猪は牙を剥き 善逸は眠る」) 「本当の善逸」は強い。雷鳴を思わせる爆音をたてながら地面を踏み切り、稲光を思わせるようなスピードに乗って、強烈な威力の剣技を放つ。善逸は「雷の呼吸」の後継者のひとりで、すさまじい必殺技を持っていた。しかし、本当の意味での「善逸らしさ」は、実はこの必殺技の前のコマで描かれている。  緊張から眠りに落ちた善逸は、意識を失っているにもかかわらず、正一くんの悲鳴に反応し、彼を襲う鬼の前に立ちふさがった。「霹靂一閃」を放つための抜刀直前、正一くんをかばうように広げられた善逸の左手。“守る”という強い意志。このたった1コマから、善逸の優しさが伝わってくる。鬼におびえて泣いていた正一くんの涙が止まる。 ■善逸の戦いの動機  かつて善逸は何度も泣いて剣術訓練の邪魔をしたために、兄弟子である獪岳(かいがく)に厳しく叱責されていた過去があった。 <なぜお前はここにいるんだ!!なぜお前はここにしがみつく!!>(獪岳/4巻・第34話「強靭な刃」)  当時の善逸は獪岳の問いにうまく答えられなかった。しかし、善逸には夢があった。 <幸せな夢なんだ 俺は強くて 誰よりも強くて 弱い人や困っている人を 助けてあげられる いつでも>(我妻善逸/4巻・第34話「強靭な刃」)  表面上は鬼殺の任務を嫌がる善逸であったが、弱音を吐きながらも、彼は他者のために懸命に戦っていた。恐ろしい鬼と、弱い自分の心と向き合いながら。善逸は誰かを助けられる自分になりたかったのだ。 ■無限列車での善逸の戦い方  こんなふうにアンバランスな「優しさと強さ」を抱えた善逸は、無限列車編ではまだまだ“責任感”が足りていない。炎柱・煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)から、無限列車には鬼が出ると聞かされると、「降ります!!」と堂々と叫んだりしている。  しかし、下車する間など当然なく、すぐに「下弦の壱」の鬼・魘夢(えんむ)との戦闘へ突入することになった。高速で走る8両編成の列車内という細長い空間、守らなくてはならない一般市民200人という過酷な状況によって、炭治郎たちは戦力を分断されてしまった。  炭治郎は禰豆子の戦闘力を信じて、彼女をその場に残し、自分は離れた場所で戦い始めてしまう。列車内の乗客を守る奮闘の中で、禰豆子は四肢をもがれそうになった。そんな彼女の危機を救ったのは、兄ではなく善逸だった。 「禰豆子ちゃんは 俺が守る」(我妻善逸/7巻・第60話「二百人を守る」) ■禰豆子を「守る」善逸  禰豆子は以前も善逸に「守られた」ことがあった。まだ事情を知らない伊之助(いのすけ)から、「鬼だから」という理由で攻撃されたことがあったのだ。それを助けたのも善逸だったが、その時、禰豆子は「箱」に入ったままだったので、善逸の姿を見てはいない。  それに対して、無限列車内の救出シーンでは、禰豆子は戦闘中の善逸の姿をかなり間近で見ることができた。善逸の強さと、自分を「守る」という言葉に、禰豆子の心が動く。  禰豆子は鬼だ。ともすれば、炭治郎に匹敵するほどの強さを持ち、傷の修復力は鬼殺隊の隊士よりはるかに上だ。しかし、そんなふうに強い「鬼の禰豆子」を見ても、善逸は彼女のことをまるで「か弱い人間」のように扱った。善逸にとって禰豆子は、守らねばならない人のひとりなのだ。陽光という弱点、鬼を滅殺する集団の中での危険な戦闘、長時間の睡眠の必要性など、禰豆子のパワーの”不安定さ”を考えれば、善逸の判断は正しい。 ■なぜ善逸には“ひとり”で戦う場面が多いのか 「鼓屋敷」で正一くんを守った時、伊之助に攻撃されそうな禰豆子を守った時、「那田蜘蛛山編」で炭治郎と禰豆子が危険な鬼の住処に入山してしまった時など、自分が誰かを守らなくてはならない時、善逸は“強くなる”。そうした場面で善逸は単独で戦い、その「強さ」を発揮してきた。この特性のため、善逸の初期の戦闘シーンは“ひとり”なのだ。  無限列車編でもそうだった。煉獄と猗窩座の死闘の最中、その場から離れることができない炭治郎と伊之助の代わりに、車両のけが人たちをフォローし、日光が弱点である「鬼の禰豆子」を太陽から守った。炭治郎が戦いに集中し、禰豆子への注意が散漫になってしまった時、善逸は身を挺して彼女を守り続ける。善逸の集中力と戦闘力は、「誰かを守る時」に飛躍的に上昇する。無限列車の戦いで、善逸のフォローがなければ、禰豆子はかなり危険な状態にさらされていたはずだ。激しい列車の横転と、上弦の参ですら逃走する陽光から、善逸はたったひとりで禰豆子を守った。個人で柔軟に状況に対応できる善逸の機転が、この後の戦いでも生かされていく。「孤立」した状況と、「他者への愛」が善逸を強くする。 ■ひとりで戦う善逸  無限列車編後、善逸は任務に出かけることを嫌がらなくなる。煉獄の死が、そして“煉獄の死”に胸を焼かれる仲間たちの悲嘆が、善逸を大きく成長させた。この後の「遊郭編」では、善逸は仲間たちと「連携しながら戦う姿」を徐々に見せるようになる。  そうして皆と戦えるようになった善逸だったが、最終決戦では、再び“ひとり”で戦うことになる。今度は「眠る」ことさえ許されない。最大の悲しみが善逸を襲い、その苦悩に善逸はたった1人で向き合うのだ。勝利というにはあまりにもつらい「決戦」が、彼を待ちかまえる。 「無限列車編」は、善逸の大きな転換期のエピソードでもあった。「遊郭編」では、善逸の姿に新たな成長をさらに感じることができるだろう。 ◎植朗子(うえ・あきこ)1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。AERAdot.の連載をまとめた「鬼滅夜話」(扶桑社)が11月19日に発売されると即重版となり、絶賛発売中。

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    8時間前

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    「この見たことがない焼酎はなんだ」 無名だった「キンミヤ」人気の裏に昔ながらの営業力

     ガラス瓶に美しい青いラベルが印象的な「キンミヤ焼酎」が人気だ。甲類焼酎でホッピーやサワーのベースとして好むファンが増え、売り上げは右肩上がりを続けている。記事の前編<下町の名脇役「キンミヤ焼酎」が右肩上がりの売れ行き 小瓶に変えたら人気上昇の意外な理由>では、酒造会社の当時の社長による“奇策”について触れたが、会社が守り続けた矜持も、成長につながっている。 *  *  * 「下町の名脇役」のキャッチフレーズで知られるキンミヤ焼酎。作っているのは三重県四日市市の酒造会社「宮崎本店」だ。1846年創業と歴史のある酒蔵で、キンミヤは1915年に製造を始めた。  かれこれ100年以上の歴史をもつキンミヤ。現在では、一升瓶に換算し年間500万本を販売。06年と比較し、約6.5倍にまで成長した。貯蔵タンクの増設が必要になったほど好調だ。キンミヤを飲める居酒屋は47都道府県に拡大し、特に近畿地方で売り上げが伸びているという。海外では、台湾で取り扱う店が増加中だ。  現在の人気ぶりに至るには、世相も追い風となった。  2003年ごろからホッピーが流行りだし、そのベースにキンミヤが合うと飲食店関係者の間で、徐々に口コミが広がっていた。酎ハイの人気が出始めたこともプラスに作用した。インターネットで、「見慣れない青いラベルの焼酎」の情報が、どんどん拡散されていったという。 ■東京三大煮込みの名店に愛され  宮崎本店が大事にした、下町の店とのつながりもここで生きた。  同社の勤続最年長社員。営業畑でキンミヤとともに歩んできた伊藤盛男・東京支店長(65)はこう語る。 「例えば東京三大煮込みと呼ばれている北千住の『大はし』さん、森下の『山利喜』さん、月島の『岸田屋』さんは昔からキンミヤを扱ってくださっているのですが、こうした名店を訪れたお客様がネットでキンミヤの情報や写真を紹介してくれたり、地方から来店した飲食店関係者が『この見たことがない焼酎はなんだ』と地元で口コミを広めてくれました。キンミヤを大切にし続けてくださった老舗様のおかげで、反響につながったと思っています」  ただ、そうした要因があったとはいえ、肝心の味が悪ければ長くは流行らない。製造法や原料になにか秘訣があるのかと思いきや、そうではないようだ。  甲類焼酎は主にさとうきびの糖蜜が原料で、繰り返し蒸留して作られるが、その点はキンミヤも同じだという。 「大きな違いは、使っている水です。弊社では鈴鹿山系の伏流水を工場内の地下150メートルの井戸からくみ上げています、ミネラル分が非常に少ない軟水なんです。アルコール度25パーセントの焼酎なら75パーセントは水です。この水のおかげで、他社様の甲類焼酎とは違ったまろやかさと口当たりの良さが生み出せているんです」(伊藤さん)  水がキンミヤの命。大地震などで水脈が変わったら一大事になると、井戸は2カ所設置しているという。 ■「顔が見える」を大事に  好調な業績に浮かれても良さそうなものだが、伊藤さんにそうした雰囲気はない。  同社には、昔から培ってきた営業の矜持がある。老舗の得意先を大切にし、新規の取り引き先も、「顔が見える付き合いができる」ことをなにより大事にしている。利益が期待できたとしても、取り引きの要請に応じないこともある。販路拡大だけを目指すのではなく、培ってきたその矜持を守っているのだ。 「どんな人がやっているお店で、どんなお客さんたちがいて…。店主と顔を合わせて話をしながら、時にはお客様と一緒にワイワイ飲みながら営業をした方がやりがいがあるし、なにより楽しいんですよ。昔からキンミヤを大切にしてくださった個人店の店主さんたちや、好きになってくれたお客様たちが口コミで広めてくれたおかげでキンミヤの今がありますからね。これからもキンミヤらしさを大事にしていきたいと思っています」(伊藤さん)  取材中、伊藤さんの話にはキンミヤが飲める個人経営の居酒屋が何軒も登場し、店主らとの付き合いを語るその表情は実に楽しそうだった。  秋田市では、伊藤さんも交流のあるキンミヤ愛好家が、なじみの店にキンミヤを紹介し続け、約40店舗が扱ってくれるようになったという。  また、同社では2012年に、キンミヤ自体を凍らせてシャーベット状にし、ホッピーなどで割って楽しむパウチ入りの「シャリキン」を開発し人気商品になった。きっかけは、都内のある得意先がキンミヤを凍らせるメニューを独自に出していることを知ったこと。それをヒントに商品化に至ったという異例の形だ。 「顔の見えるお付き合いをする中で、こうしたいい商品を生み出すことができたと実感しています」(伊藤さん)  人がまさに財産なのである。 ■「キンミヤ・ブルー」のインパクト  ならば、キンミヤの象徴である、あのきれいなブルーのラベルは誰がデザインしたのか。愛好家には「キンミヤ・ブルー」と持ち上げる人がいるとかいないとか。4リットルサイズの生産を減らし、見慣れない瓶が店内に並んだ時、あのラベルにインパクトを感じた人もいるだろう。 「実は、誰がどんな経緯でデザインしたのか、記録がなくわからないんです。生産当初から、おそらくあのデザインだったのだろうとは思いますが。印刷会社に元の版があるので、ずっと使い続けています」  永遠に解けぬであろう謎。答えはさておき、キンミヤは今宵も、呑兵衛が集う酒場で「名脇役」のお務めを果たす。 (AERAdot.編集部・國府田英之)

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    都心タワマン新築1億円を共働き夫婦が「買える」理由 パワーカップルの意外な金銭感覚

     コロナ禍で田舎暮らしへの憧れはあるものの、都心で働く夫婦が家と買うとなればやはり首都圏の物件が現実ではないだろうか。共働き夫婦のリアルな事例事情や最近の不動産動向を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。一回目のテーマはパワーカップルとタワマン。首都圏の新築マンションの価格は高騰し、タワーマンションならば1億円超えの「億ション」も珍しくなくなった。資産家の投資用かと思いきや、普通の会社員夫婦が購入して住んでいるのだという。共働きで稼ぐ、いわゆるパワーカップルだ。 *   *  *東京都中央区、最寄り駅から徒歩5分、33階建ての新築タワーマンションの一部屋。窓からはいかにも東京らしい都心のビル群や湾岸エリアが一望できる。ここを約8千万円で昨年購入したのは会社員男性のAさん(41)だ。  「夫婦ともに定年まで辞めるつもりはないので、払えると踏んで購入しました」  都内の大手商社に務めるAさんは、広告代理店勤務の妻(40)と夫婦二人暮らし。共働きのAさん夫婦の世帯年収は、約1600万だ。頭金1千万円を夫婦の貯金で支払い、残りの7千万は35年の住宅ローンを組んだ。月々の返済額は、管理費と合わせて22万円程度。夫婦の手取り月収は合わせて78万円前後なので、毎月約28%の収入がローン返済に充てられることになる。かなり高額な買い物だが、会社の同僚には1億円超えの物件を購入した人もいるという。  Aさんの背中を押したのは、「駅近で都心までのアクセスも良く、活気あるエリアの物件で、今後も一定の資産価値を維持できるだろう」という不動産屋の言葉。購入時と同じ8千万円の価格か、それ以上に価値が上がる可能性もあると期待している。一生住むつもりで買った物件だが、「何かあれば買った金額で手放せるはず」ということが、安心感に繋がっているという。 「言ってみれば、貯蓄効果もある買い方。もちろん高い買い物ではあるけれど、値段が下がりづらい物件を買うことは、資産防衛術とも言えると思う」(Aさん)  コロナ禍で景気低迷ばかりが取り沙汰される現在だが、実は首都圏を中心に、高額の新築マンションを買う人が増えている。主な購入層は、「パワーカップル」とも呼ばれるAさん夫妻のような高収入の共働き世帯だ。首都圏のマンション価格は年々高騰しており、不動産経済研究所の2021年度上半期(4~9月)の新築マンションの一戸当たり平均価格は、首都圏(1都3県)で前年同期比10.1%増の6702万円。1973年の調査開始以来、上半期としてバブル期を超える最高値を記録し、高額の東京都心の物件を中心に人気が集まっている。  都心のタワーマンションといえば、不動産業界でも、以前は限られた富裕層のみが買う「特殊住戸」と呼ばれていた。一定の収入がないと買えない物件であることは今も変わりないが、その敷居は以前に比べると下がっており、積極的な購入層は世帯年収1千万~2千万円前後の会社員だという。Aさんはその典型例だろう。  なぜ、会社員夫婦がこうした物件の購入ができるようになったのだろうか。  まず、背景にあるのが、超低金利という今の時代だ。頭金をそれほど用意せずとも、長期のローンを組むことで、年収の高い会社員であれば6000~7000万円程度は容易に借り入れすることができる。夫婦ともに稼ぐ共働き世帯ともなれば、2人で1億円を超えるローンも組むことができる時代だ。大手銀行の借り入れ限度額は1億円が主流だが、ここ数年で高額物件用の借り入れ需要が増している背景から、新興金融機関では上限2億円超えまで対応しているところも多い。こうして夫婦両輪で多額のペアローンを組み、新築の億ションを共有名義で買っている世帯が増えているという。  「一昔前まで住宅ローンの返済額の目安とされていた『世帯収入の20~25%が上限』というセオリーが崩れ、過大なローンを組む人が増えている」  こう指摘するのは、大手デベロッパー出身の不動産コンサルタント、長谷川高さん(長谷川不動産経済社代表)。初めて家を購入する平均年齢は、40歳前後の現在。働き盛りで管理職などになり、それなりの収入を得られていると実感しやすい年齢だ。また、共働きが当たり前の時代になったことも大きい。 「少し前までは、夫婦共働きであっても、どちらか一方の収入を元にローンを組むことが一般的でした。ですが今は、夫婦両輪の“大車輪”のごとく、多額のペアローンを組む例が珍しくない」(長谷川さん)  ローン完済年齢も上がってきている。人生100年時代、60歳以降も働くのが当然という意識を持つ人は多い。「10年ほど前までは、60歳以降は働かない前提で考える人が多かったのが、ここ最近は70歳まで働くことを見据えてローンを考える人が増えている」とは、首都圏を中心とした住宅購入における相談実績も多いファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)。  Aさん夫妻も、仕事が生活の中心というライフスタイルを変えるつもりはなく、今後子どもを持つ計画もない。ともに働き盛りの40代。仕事は多忙を極め、帰宅は連日深夜がお決まりだ。終電を逃してタクシーで帰宅することも多く、会社のある都心に近いことは必須条件だった。40歳から35年のローンとなると、完済時の年齢は75歳。だが、繰り上げ返済を計画的に行うことで、60~65歳のローン完済を目指している。 「今の社会の流れを見ると、自分たちの頃には70歳まで働くことが当たり前の時代になっているのでは。年金には期待できないけれど、長く働くことで一定の収入は得られるはず」(Aさん)  こうした時代の流れに加えて、タワマンを購入するパワーカップルは「意外と生活は堅実」という点も特徴かもしれない。冒頭のAさん夫妻も高収入ではあるが、ブランド物を買ったり、頻繁に贅沢な食事をしたりするわけでもなく、夫婦一緒に毎月コツコツと貯金を続けている。頭金として1千万円を用意できたのも、浪費をせず、計画的に貯金してきたからこそだ。つまり、ぜいたくな暮らしをしたいからタワマンを購入したわけではないのだ。タワーマンションなどいわゆる高級マンションに住む理由は、ステイタスやブランド意識からではなく、Aさん夫妻のように「資産価値が優れていて、価格が下がりづらい」という背景から選ぶ人も多いという。  不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。 「確かに都心のタワーマンションはよく売れていて、積極的に買おうとする動きが活発です。ただ、こうした物件を購入する会社員夫婦は、資産を持て余しているから買うのとは少し違います。自分たちの収入の中で買える範囲で、なるべく資産価値を維持できる住宅を求めており、“稼いだお金を減らしたくない”と考える人が多い」  すなわち、現金という流動資産を一旦「タワーマンション」という固定資産に変え、十分に利用したら、またほぼ同じ金額の流動資産や他の固定資産、金融資産などに変えるという作業を計画的に行うという流れだ。 「つまり1億円で買ったマンションが、10年間住んだ後も1億円で売れる可能性が高い、という理由からタワーマンションを選ぶ人も少なくない。タワーマンションは、街の再開発とセットで建てられるケースも多く、一般的に駅近であればなお価値が下がりにくいと言えます」(後藤さん)  Aさんもこんなことを言っていた。 「いざとなれば、買った時と変わらない金額で手放せる物件。この新築タワーマンションは、その条件に当てはまると思いました」  なるほど、今、タワマンを買うのは意外と堅実な選択肢なのかもしれない。しかし、大きな買い物には、ときに意外な落とし穴が潜んでいるもの。次は、長い目で見たときの不動産リスクについて説明しよう。(松岡かすみ) >>【後編:新築マンション高騰の裏で設備がチープ化?ローンを返せない共働き夫婦も 超低金利時代の落とし穴】に続く

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    中古マンション争奪戦「10年間、タダで住めたようなもの」世帯年収800万円夫婦も狙う物件とは

     新築信仰は今は昔。都心部で家を買う場合、中古マンションが争奪戦となっている。超低金利時代、世帯年収がそれほど高くなくても手が届くようになったことも大きい。最近の不動産事情を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。子育て世代がいま、都心で家を買うならば、何が“正解”なのか。今回は、中古マンション購入のリアルな事例と最近の傾向を紹介する。 *     *  * 千代田区、2LDK、55平米、最寄り駅から徒歩10分以内。  都心の大手企業に勤めるAさんは、妻(33)と1歳の子どもと3人暮らし。そのAさんが3年前に購入したマンションの特徴だ。子どもが小さいとはいえ、子育て世代の“あこがれあのマイホーム”としては、55平米はちょっと手狭ではないだろうか。子どもはこれからどんどん大きくなる……。  すると、Aさんはあっけらかんと答えた。 「5年後にはだぶん売却していますよ」  いまAさんが住んでいるマンションは中古物件で購入時の価格は約6千万円。土地柄、文教施設も多い。「周囲に大学が多く、資産価値が下がりにくいだろう」という不動産屋のアドバイスを踏まえ、決めた。  このマンションを購入するまでは、渋谷区で月18万円の賃貸マンションに夫婦で住んでいたが、「高額の家賃を払い続ける生活はもったいない」と、購入に踏み切った。その時に大きな後押しとなったのが、10年前に買った渋谷区のマンションを、購入時とほぼ同じ価格で売却したという会社の先輩の話だ。  その先輩は妻と子ども2人の4人家族。子どもの成長とともに部屋が手狭になったことから、2人目の子どもが小学校に上がるタイミングで、「より広い部屋に移り住もう」と住んでいたマンションを売却。利便性が高い人気エリアだったこともあり、購入時とほぼ同じ金額でも、すぐに買い手がついたという。「10年間、タダで住めたようなもの」とホクホク顔の先輩を見て、Aさんは「自分も資産価値が保てる家を選ぼう」と心に決めた。  買うと決めてから、今の家に出会うまでの期間は約半年。子どもが小学校に上がる5年後のタイミングで資産価値が大きく下がらなければ、今の家を売却し、その資金を元手に、もう少し広い部屋に住み替えを検討しているという。 「売却時に実際いくらで売れるかはその時になってみないと分かりませんが、現状の周辺エリアの売却相場を見る限り、価値は維持できるだろうと踏んでいます」(Aさん)  今、Aさんのように、都市部を中心に、いずれ売却することを想定してマイホームを買う人が増えているという。たとえ「一生住み続けるつもり」で家を買ったとしても、人生100年時代と言われる中、自分を取り巻く状況がいつ変わり、何が起こるか分からない。先が見通しにくい時代だからこそ、リスクヘッジという意味でも、「いざとなれば家をお金に換えられる」買い方を望む人が増加している。 「今は家の選び方によって、その後の人生の明暗が変わってくる可能性があると言えるほど、物件選びが重要な時代です。選び方の知識がないと、後悔することになりかねません」  首都圏を中心に不動産の購入、売却など、これまで6千件を超える取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは、こう指摘する。  現在、首都圏の住宅購入において最も取引が活発なのは中古マンションだ。都心を中心に新築マンションの価格が高騰していることからも、中古マンションに目を向ける人が増えており、激しい争奪戦が繰り広げられているという。  マンショントレンド評論家の日下部理絵さんも、こう続ける。  「以前は新築信仰が強い傾向でしたが、今は中古に対する抵抗感を持つ人が少なく、ここ最近は築浅物件のみならず、都心にある築30~40年の古い物件もよく動いています。リノベーションの専門業者も増え、中古物件を自分好みにリノベーションして住みたいと考える人も増えています」  とはいえ都内、それも都心周辺に家を購入できるのは、高額所得者に限られるのではないか。 「そうとも言えません」というのは、前出の後藤さんだ。後藤さんによれば、資産価値を考えたマンション購入を検討している層は、30代~40代の共働き世帯も多く、購入予算は5千万~6千万前後。平均の世帯年収は800万~1千万前後で、自己資金として夫婦で400万~600万程度貯めている世帯が多いという。 「例えば年収500万円前後の夫と400万前後の妻で、二人合わせて世帯年収が800~900万前後という方も多く検討されています。今は住宅ローンが史上最低とも言える超低金利ということもあり、金利が上がらないうちに、ここ1年ぐらいで買おうと考えている方も少なくありません」(後藤さん)  いずれ売ることを視野に入れて家を買うとなると、選び方にもコツが必要だ。もちろん実際に自分が住む家となると、資産価値という尺度だけでは測れない“住み心地”や“快適さ”など、感覚的な部分も大事だが、それは人それぞれの価値観がある。ここではあくまで、「資産価値を保ちやすい家」という視点で解説しよう。専門家らの話を紐解くと、4つのポイントが浮かび上がってきた。(松岡かすみ)  >>【後編:マンション購入「妻の実家の近く」で選んで失敗 いい物件の見極めは? 駅徒歩7分、60平米…】に続く

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    出場停止処分の石川遼に「残念」 丸山茂樹「彼の家には練習施設があるのに…」

     丸山茂樹氏は、国内男子ツアーで優勝した谷原秀人選手、出場停止の石川遼選手などについて語る。 *  *  *  国内男子ツアーの「三井住友VISA太平洋マスターズ」(11月11~14日、静岡・太平洋C御殿場コース)で、谷原秀人(43)が5年ぶりとなるツアー15勝目を挙げました。  すばらしい勝ち方でしたよね。金谷拓実(23)の追い上げを1打差で振り切って。谷原が言ってるように「プレーオフになったら負ける」と、18番で6メートルのバーディーパットをねじ込みました。流れをしっかりと読みながら全力集中で決めたのは、さすがと言うしかないですね。  谷原は折に触れて、いろんな後輩にアドバイスや気づいたことを言ってるみたいですね。年を重ねてくればいろんなこともありますから、そうやって言葉をかける立場でもあるわけです。まあゴルファーとしては当然のことかなと思いますね。とはいえ当然のことが当然のようにできないのが世の常ですから、そうやってるのはすばらしいことですよね。  1打差の2位だった金谷は2020‐21年シーズンの賞金王争いでトップに立ちました。残りは3試合。こういうデッドヒートは見てて楽しいので、どんな展開になるのかワクワクしますね。  こうした盛り上がりの一方で残念なニュースも入ってきました。石川遼(30)が1カ月の出場停止となりました。残りの3試合には出られません。  遼は10月中旬から下旬にかけ、来シーズンの米下部ツアー出場権をかけた2次予選会に出て、最終予選会に進めずに帰国。日本ゴルフツアー機構によると、14日間の自主隔離期間中に一般客も利用するゴルフ場で2度ラウンド。コーチとゴルフ場関係者と3人で食事と飲酒をしたということです。  彼の家には練習の施設もありますし、何不自由なく隔離生活ができてるのかなと思ったんですけどね。まさかゴルフ場にいたとは。ちょっとこう、久しぶりに遼も気が抜けたんじゃないかと思いますね。  我々にできることはきちんと成績を残してファンのみなさんを魅了することしかないと思うんで、これを機に来年に向けてまた頑張ってほしいです。  最後に「第22回丸山茂樹ジュニアファンデーションゴルフ大会」(11月14日、千葉セントラルGC)が無事に終わりました。  中学・高校生男子の部で総合優勝したのは小林大河君(西武台千葉高3年)です。ほんとに小さいときから参加してくれてて、ジュニア界で名を残すような選手になってくれてますので、非常にうれしいなと。ポテンシャルも相当ありますし、すごく彼には期待をして見てます。  女子の部は鈴木姫琉(ひめる)さん(麗澤中3年)が優勝しました。彼女は「プロになって、丸山さんのように人に機会を与えたり、夢を与えるような人になりたい」とコメントしてくれました。泣けてきますね。いままで一生懸命できる限りのことをやってきてよかったと、改めて思わせてくれました。 丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。※週刊朝日  2021年12月3日号

    週刊朝日

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    マンション購入「妻の実家の近く」で選んで失敗 いい物件の見極めは? 徒歩7分、60平米…

     都心部で働く子育て世代の夫婦が家を買うとしたら、どんな物件が“正解”なのか。そこ一生住むつもりで物件を選ぶよりも、将来、住み替えることを前提にした購入がトレンドだという。つまり、売ることを前提にした購入だ。だが、購入してから資産価値が落ちたり、いざ売る際になかなか買い手がつかなかったりしたら、のちの人生設計も狂ってくる。最近の不動産事情を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は物件選びのポイントを不動産のプロに聞いた。 >>【前編:都心中古マンション争奪戦「10年間、タダで住めたようなもの」 世帯年収800万円夫婦が狙う物件とは】から続く *     *  * まずは「こんなはずじゃなかった」と頭を抱えてしまったBさんのケースを紹介しよう。  埼玉県内に、10年前にマンションを購入したBさん。妻の実家近くにある、最寄り駅から徒歩18分の4LDK(81平米)の新築物件を3500万円で購入した。うち3300万円は住宅ローンを組み、月々の返済額は約12万円。返済も順調だった。  しかし、ローンがあと20年ほど残っている時点で、仕事と子どもの学校の関係で、どうしても引っ越さないといけなくなり、売却したいと考えた。現在の売却想定額を査定したところ、金額は1800万程度だという。住宅ローンの残債はまだ2400万前後あり、売却想定価格をはるかに上回っている。「ならば貸せないか」と考え、今度は家賃を査定してもらったところ、相場から月10万5千円前後を算出された。Bさんの物件は駅から距離があり、購入時には営業していた近隣のスーパーマーケットなどが撤退し、買い物にも不便という環境要因が響いた。毎月12万の住宅ローンの支払いを考えると、貸しても赤字という計算になる。  Bさんは、購入時点では生涯住むつもりだった。子どもの成長などライフステージの変化に対応する間取りを考え、それが無理ない予算で買える場所という視点から物件選びを始め、「まったく知らない土地に行くよりは、子育ても考えて妻の実家近くにしよう」と決めた家だった。試算が狂い、Bさんは今、人生設計を見直している。  首都圏を中心に不動産の購入、売却、賃貸など、これまで6千件を超える取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは、こう指摘する。 「自分たちにとっては良い場所であっても、売る・貸すとなった時に価値が維持できるとは限りません。一般的に、郊外のマンションは都心のマンションに比べ、買うときの価格が安い一方で、売るときには価格が下がっている可能性が高い。資産価値という視点から見た場合、マンションにおいては立地の影響が想像以上に大きく、価格が落ちにくいマンションとは、都心に近く交通の便が良いマンションの場合が多いのです」  どこから光を当てるかによって、その家の価値は変わる。ここではあくまで、「資産価値を保ちやすい家」という視点で解説しよう。専門家らの話を紐解くと、4つのポイントが浮かび上がってきた。 (1)  山手線沿線の駅から電車で15分圏内  まっさきに押さえるべきポイントは、都心に近く、交通の便が良い場所という条件。具体的に挙げると、山手線の駅周辺の都心、または山手線の駅から電車で約15分圏内の準都心と呼ばれるエリアだ。例えば小田急小田原線の場合は経堂駅ぐらいまで、京王線の場合は千歳烏山駅ぐらいまで、東急田園都市線の場合は二子玉川駅ぐらいまでが準都心の目安となる。 「都心、準都心のエリア内であれば、築35年の60平米ぐらいのマンションでもそれなりの価格で取引されていることが多い。例えばここ10年ぐらいの間でも、港区、千代田区、渋谷区、目黒区などでは4千万~6千万台ぐらいで、新宿区、文京区、豊島区、杉並区、品川区などでも3千万前後から5千万台ぐらいで取引されています」(同) (2)  駅近の目安は徒歩7分以内  主な物件の探し方がインターネットである今、駅から遠い物件は検索段階で切り捨てられてしまうことも多い。通勤や通学ともなると毎日のことなので、「駅から徒歩何分以内か」という点は資産価値を維持する上で重要なポイントだ。 高齢化率の上昇や、全国的に市街地計画をコンパクトに形成していこうとする行政の動き(コンパクトシティ構想)を踏まえても、駅から近い物件は今後ますます有利に働く可能性が高いという。不動産コンサルタントの午堂登紀雄さんは言う。 「エリアにもよりますが、原則、駅から徒歩10分以内の立地で選ぶと比較的売りやすい。駅からの近さはどの世代にも共通して求められているポイントです。郊外の戸建に住んでいたシニア層が駅近のマンションに住み替えるケースも増えています。できれば5分以内、目標は7分以内と、少しでも駅に近い方が有利です」 (3)  ファミリータイプは需要減、60平米が売れ筋  国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」によれば、2015年時点でいわゆるファミリー世帯である「家族と一緒に住む世帯」は約1429万世帯なのに対し、「1人暮らし世帯」は約1842万世帯、「夫婦のみ世帯」は約1072万世帯。さらに2025年の予測では、「家族と一緒に住む世帯」は約1369世帯と減る一方で、「1人暮らし世帯」は約1996世帯、「夫婦のみ世帯」は約1120世帯と増えることが予想されている。 生涯未婚率や離婚率の上昇、シニアの増加により、1人暮らし世帯が急増し、ファミリー世帯が減っているのが現状だ。 「この状況を踏まえると、これまでファミリー用マンションとして考えられていた70~80平米前後と広めのマンションは、これからは長い目で見ると需要が見込みづらい。一方で狭すぎず、広すぎない60平米前後のマンションは、都心においては需要が多いのに供給が少なく、貸しやすい面積帯です。一人暮らし世帯、夫婦のみ世帯を中心に、夫婦と子ども1人、夫婦と小さな子ども2人、シニアと幅広い層が住みやすく、価格も手頃な60平米前後が最も売れやすく、貸しやすいでしょう」(後藤さん) (4)  中古でも2001年以降に完成  「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」(2000年)の施行により、デベロッパーの建物に対する責任性が強まったことから、2001年以降に完成した物件は一般的に住宅の基本性能が高まっている傾向にあるという。 「2001年頃からの完成物件は、耐震や省エネルギー、遮音性などを向上させた物件が比較的多く出ています。今は新築マンションでも設備をチープにする物件が増えているため、むしろ10年ほど前に完成した物件の設備の方が優れている場合も少なくありません。中古物件を選ぶ際は、2001年以降に完成した物件であれば、価格が手頃で良質な建物であることが多い」(後藤さん) ◇  資産価値が落ちない家を選ぶためには、価格が安い物件を買おうとするのではなく、少し価格が高かったとしても購入後に価格が落ちにくいであろう物件を購入する姿勢が必要だ。  大切なのは、今後住み替えなどの可能性があり、住まいに換金性を求める場合に、希望する額から大きく目減りすることがないかどうか。10年、20年先を想定した売却のみならず、「最終的に高齢者施設に入ることを考えたら、家を売って少しでも施設費の足しにできた方がいい」と考える人もいるという。 先行き不透明な時代だからこそ、それだけ後悔しない買い方を求める人が増えているのかもしれない。家を買うことにも、これまで以上に戦略が必要な時代だといえそうだ。(松岡かすみ) >>【11月28日10:00公開】それでも夫婦は東京に家を買う#5

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    志望校の過去問を解いたら算数「8点」…中学受験・全落ちのピンチを救った親の“戦略”とは

     秋以降、ほぼ毎月模試が行われ、いよいよ志望校や併願校をリアルに絞り込む時期になってきました。模試では、偏差値はもちろん、志望校の合格確率が逐一出るため、焦りや不安に苛まれている親は多いでしょう。しかし、「11月以降は模試の結果より過去問の答案内容を重要視するべき」と指摘するのは、プロ家庭教師「名門指導会」代表・塾ソムリエである西村則康先生です。過去問を解くこの時期に、親がやるべき合格への後押し法を聞きました。 <後編「中学受験で『あと10点』を伸ばし合格を引き寄せるには? 親にできる直前期のサポート法」に続く> *  *  * ■過去問で算数8点。自信を喪失したわが子に親がした提案とは  親子ともに憧れのW大学付属校を目指して、小学4年生から塾に通っていたA君。模試結果によるクラス替えでも、いつもトップクラスにいました。国語が得意で、記述問題で点数を稼げていた一方、算数の応用問題は苦手で、ぱっと見で「難しそうだ」と腰が引けてしまう面がありました。  初めて志望校の過去問に取り組んだのは6年生の9月。しかし、初回、算数の点数が8点で、大きな衝撃を受けました。2回目も算数が惨敗で、全く手も足も出ませんでした。模試ではここまで点数が取れないことはなかったので、親子共々、軽いパニック状態に陥ったそうです。  塾の先生に相談したところ、「この学校の算数は問題文が長く、A君は焦ってしまい、『これは◯○算だ』という解法に気づく前に数字をいじり始めてしまい、正解に至らないのかもしれない」とのこと。憧れの気持ちが強かっただけにプレッシャーも大きくなっていき、「算数はできないから、もう受験はやりたくない」とまで言い出しました。 「このままでは、メンタル的に参ってしまい、どこも合格がもらえなくなるかもしれない」と危機感を抱いたA君の母親は、W校以外に好印象を持っていたS校の過去問を取り寄せました。解答欄を見ると、国語は記述問題が多く、社会も必ず最後に記述問題があって、「ひょっとするとわが子にとっては、点数が取りやすい問題かもしれない」と感じたそうです。  子どものプライドを傷つけないように、「ママは、この学校もとてもいい学校だと思っているんだけど、練習のつもりで、S校の過去問を解いてみてくれる?」と試させたそうです。  すると、算数はあと3、4問できたらなんとかなるというレベルで、国語と社会はとてもやりやすい様子。明らかにW校より手応えを感じられたため、「S校でこれだけ取れたのは、すごいね!算数も取れてるじゃない!」と褒めて、自信を喪失していた子どもの気力回復に注力しました。  結局、W校の過去問の苦手意識は最後まで拭うことができず、12月の模試判定では合格確率が20%だったため、親子で納得して第一志望校をS校に決めました。そして2月1日、S校に晴れて合格。塾の先生には「長年の第一志望校を変更するのは勇気の要ることだったと思います。でも、子どもの得意教科がいきる学校をうまく選び直して、舵取りをしたお母さんの作戦勝ちです!」と労われたそうです。 ■過去問分析なんて無理!そんな親が頼りにするべきは…  この時期、A君のように、過去問を解いてみると模試のように点数が取れず、慌ててしまうケースも少なくないようです。  模試は、さまざまな偏差値帯の子が受けるので、基礎から応用問題まで、偏らないように作られています。しかし、実際の入試問題となると、学校によって傾向は大きく異なります。難問を数問だけ出して、解き方の過程を見る学校もあれば、さほど難易度の高くない問題を多く出題して、ケアレスミスが致命傷になるような学校もあります。偏差値帯が同じ学校でも、その子の特性に合うか合わないかで、合否が分かれることも多々あるというわけです。西村先生はこう言います。 「第一志望校の過去問が、最初からできる子なんてほとんどいませんから、できないからといって、すぐに志望校を変える必要はありません。しかし、過去問に合わせた対策をしなければ、点数を取れるようにはなりませんし、どうやっても点数が取れないと判断した場合には、時期を見て志望校を変更したり、過去問と相性のいい学校を併願校にしたりするべきです。それを決めるのが親の役割ですね」  それでは、親はどうやって過去問と向き合い、相性の良し悪しを見分ければいいのでしょう。A君のケースのように、親が試験問題をみて、出題傾向まで分析してわが子に合う学校を探すのは至難の業。そんなことできっこない、という家庭がほとんどではないでしょうか。  西村先生によると、そこはプロである塾の先生や家庭教師に頼るべきだ、と言います。しかし、「相談をしている余裕はもうこの時期ありません。先生に面談の申し込みをする時には、事前に『過去問で点数が取れていないから、ネックになっている教科・単元を知りたい』とか、『わが子に合う出題傾向の学校が知りたい』など具体的に面談内容を告知しておくべき」とアドバイスします。  そうすることで、先生側も面談前に準備をしておいてくれることが期待できます。授業中に改めて子どもの様子をチェックしてくれたり、経験の浅い先生であれば、学校の出題傾向などを熟知しているベテランの先生や塾の教務課などから、情報を集めたりすることも可能になるからです。  面談当日に持参するものとして、西村先生は、(1)過去問の答案用紙、(2)計算の跡などの書き込みがある問題用紙、(3)成績表などの資料、の三つを挙げます。これらをもとに、どういった対策がわが子に必要になるか、アドバイスを求めるとよいでしょう。  例えば、過去問で失点していた算数の「速さ」の問題が毎年出る学校であれば、その単元を見直さなければいけませんが、問題集にある「速さ」の問題を全て解き直すのは大変な労力です。けれども、先生に「志望校でよく出されている速さの問題の種類をいくつかピックアップしてください」というふうにお願いすれば、弱点を効率よく穴埋めしていくことができる、という具合です。  また、塾の先生に解答用紙を見てもらい、「失点はしているが、この問題ならあとひと押しで正解できたはず」という惜しい問題をピックアップしてもらい、そこを中心に解き直しさせるのも一つのやり方です。全くわからない問題をゼロから学び直すよりは、7~8割わかっていそうなものを洗い出すことができれば、子どものやる気を削ぐこともなく、効率よく点数アップに繋げていくことができるからです。 「『先生はお忙しいだろうから』『あまり何度も連絡したら迷惑がられるかもしれない』などという遠慮は、この際必要ないですよ。親の熱意は迷惑なものではありませんから」と西村先生は言います。  1回だけの面談と言わず、小まめに顔を出し、塾や家庭教師の先生に味方についてもらう――それが、直前期の親にできる最良の一手となるようです。(鶴島よしみ) ※<後編>では実践編として「あと10点伸ばすために親ができること」を紹介しています

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    5時間前

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    中学受験で「あと10点」を伸ばし合格を引き寄せるには? 親にできる直前期のサポート法

    「過去問を制するものは受験を制する」とも言われるほど、重要な過去問対策。しかし、ただ「闇雲にやればいいというわけではない」と、プロ家庭教師「名門指導会」代表・塾ソムリエである西村則康先生は言います。前編では「合格を手にするために、塾や家庭教師の先生を味方につけて出題傾向を一緒に探ってもらう」方法を紹介しましたが、後編では「受験目前、あと10点アップさせる」ために親ができる具体的なサポート法を紹介していきます。 <前編「志望校の過去問を解いたら算数『8点』…中学受験・全落ちのピンチを救った親の“戦略”とは」から続く> *  *  * ■塾に任せっきりにしたことを後悔 「第一志望校の過去問は、こちらの指示があるまで絶対にやらせないでください!」という塾の先生の言葉を信じ、12月半ばまで全く手をつけなかったというBさん。通常、過去問は小6の9~10月くらいから始めるのが一般的ですが、「第一志望校の問題はもっと実力がついてから」という先生の言葉に疑問も持たなかったといいます。 「でも、いざ第一志望校の最新の過去問を解いてみたら、全く点数が取れなかったんです。模試では合格率60%近くという結果だったので、もう少し手応えがあるかと思っていたのですが、過去問は惨敗。何回やっても合格者平均点に届かず、不安一色でした。もう直ぐ願書を出さなければいけない時期で、動揺することしかできず……。後から聞いた話ですが、同じ塾に通っていた友達のお父さんは、子どもが解く前に過去問を先に確認したらしく、毎年、理科と社会で時事問題が出ていることがわかり、今年のニュースからオリジナルの問題を作成してやらせていたそうです。結局、うちは対策する時間もなく不合格。友達は合格していました」(Bさんの母)  第一志望校の過去問は、実力がついてきてから解いたほうが自信を失くさずに済む、という考えから、戦略的に最後にとっておくことを勧める塾もあるようです。しかし、「これは賭けのようになってしまうこともあり危険だ」と西村先生は指摘します。 「なぜなら、過去問を解く目的は『なぜ点数が取れなかったのか』の原因を把握して、その対策をする事に尽きるからです。その対策時間がなければ、点数を伸ばしていくことは難しくなり、本番当日も賭けを行うことになってしまいます」(西村先生、以下同)  間際になって点数が取れないと、親はつい、あれもこれもやらせなければいけない、と焦るでしょう。でも、それを全てやらせようとすると失敗に終わることが多くなるといいます。では、何を優先させればいいのでしょうか。 「コツは、やらせてみて点数が上がりそうなものを最優先事項にすること。子どもが苦手なことを優先するのではなく、これをやれば点数が確実に上がる、というものを見極めることが大切です。受験はすべての教科の総得点で合格点を取ればいいのですから、間際であれば、苦手な科目の点数を上げようと苦戦するよりも、点数に直結しやすい理科や社会の暗記もので点数を稼ぐのが得策です」  これなら忙しい家庭でも、一問一答形式の参考書を見ながら、食後や就寝前の10分程度付き合ってあげることができそうです。社会は漢字の書き間違いで失点することもあるので、漢字のチェックも同時に行うとよいと西村先生は言います。 ■過去問対策に親の小さな「ひと手間」 「過去問をやる際には、問題集にそのまま書き込ませるのではなく、解答用紙は特に、原寸大になるようにコピーをしてあげてください。問題集によっては、実際は◯%に拡大、というような記載がありますから、その通りに拡大してプリントしましょう」(西村先生)  特に国語の記述問題は、解答欄の大きさが、答えのヒントになりますし、ちょうど良い分量を書く練習にもつながります。また算数では、最後の答えが間違えていても、途中まで合っていれば部分点をくれる学校も増えています。そのためにも、過程を書くスペースがどれだけあるのか、実寸サイズで確認しておく必要があるといいます。  また、採点をする場合に注意する点があるそうです。 「国語の記述問題は、模範解答を見ながら親や子どもが丸付けをしても、正確な点数をつけることができません。なぜなら、模範解答は大人に見せるために書かれているもので、模範のように書くことは小学生にはほとんど不可能だからです。添削をする際は、AとBの2つの内容が書けていれば正解、と言ったポイントがあります。いくらたどたどしい言葉使いであってもそれで減点にはなりませんから、できれば国語の採点は塾の先生にお願いし、正確な点数を把握するようにしましょう」(同) ■親が注力するべきは、受験校の選定と日程調整  そして親が行う最も大切な仕事に、志望校、併願校選びがあります。親が悩むのは、「過去問の出来、不出来をどこまで加味すればいいわからない」ということ。どのあたりをボーダーとして考えるべきなのでしょうか。 「まず、その年の過去問の受験者平均点と合格者平均点をみてみましょう。これは、過去問題集や学校のホームページに掲載されています。たまに、過去問を解いて合格者最低点を1、2点上回って安心してしまう家庭もあるのですが、これでは少々不安です。毎回、合格者平均点を超えていればベストですが、そこに届かなくても無駄に心配することはありません。目安は、合格者の倍率が3倍だった場合は、受験者平均点と合格者平均点の中間点がボーダーと考えるとわかりやすいでしょう。もし、倍率が3倍以上あった年では、中間点よりももう少し上が取れていないと厳しいと考えます」  これらの結果を踏まえて、確実に合格がもらえそうな併願校を用意して、受験日程を組んでいくと、親としての準備は万全になりそうです。  さらに西村先生は「子どもにとって最大の武器になるのは、親がいつでも味方でいてくれるという安心感です。点数が悪いと、つい『そんな勉強をしていると合格できないよ』というような発破をかけがちですが、この時期は子どものやる気を維持するためにも、否定語を使わずに『こういう計算ミスがなくなれば合格に近づくね』というふうに励ますようにしてあげてください」と付け加えます。  勉強内容を逐一見ることができなくても、親にできることはたくさんあります。準備の整った環境で実力を発揮できるようにしてあげることが、合格を勝ち取るカギになりそうです。(鶴島よしみ) ※<前編>では、合格を手にするために塾や家庭教師の先生を味方につける方法を紹介しています。

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    5時間前

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    加齢で性欲減退も異性への関心は変わらず 帯津医師「『性』を大事して」

     西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「性」。 *  *  * 【性養生】ポイント(1)生命を躍動させるのはなにより「食」と「性」の営み(2)性欲は減退しても異性に対する関心は変わらない(3)「性」を大事にする性養生の方法を是非見つけよう  私が敬愛する解剖学者の三木成夫先生の持論は「食」と「性」の営みこそが生命の中心であるというものでした。私もそう思います。生命を躍動させる「心のときめき」をもたらすのは、なにより「食」と「性」ではないでしょうか。  養生にも「食養生」と「性養生」があります。この二つのうち、食養生については語られるのですが、性養生については、あまり触れられません。ですから貝原益軒が『養生訓』のなかで、「接してもらさず」と語ったことが注目されました。  私の場合、青春時代には、空手と酒と麻雀に手一杯で、女性にはあまり、関心が向きませんでした。実は女性の色気を強く感じるようになったのは、還暦を過ぎてからなのです。そして、こちらが色気を感じるようになると、にわかに女性にモテるようになったのですから、面白いものです。  妙齢の女性だけでなく、もっと高齢の女性にも色気を感じるのです。そうなると、頬っぺたや襟首、はては和服の袖からこぼれる二の腕に触りたくなります。これはいけないと、その頃から電車には乗らないようにしました。つい隣の女性を触ってしまったりしたら、大変ですから(笑)。  この私の「性」の高まりは80歳になっても変わらなかったのですが、さすがに2、3年前から衰えを感じるようになりました。いわゆる朝立ちも、からきし無くなりました。しかし、この衰えは性欲の減退であって、異性に対する関心は変わることがありません。  男性の性的能力の減退は男性ホルモンの一種であるテストステロンの分泌量の減少によります。このテストステロンは精巣で作られ加齢により生産量が減ります。  ところが、脳の下垂体で作られるゴナドトロピンという性腺刺激ホルモンもあります。こちらは性行動の司令塔ともいえる存在で、性衝動や異性への関心を司っています。こちらは加齢しても大丈夫なのです。そこで、歳をとって性欲は減退しても、異性に対する関心が薄れないのです。  これはとても大事なことです。生命を躍動させる「心のときめき」をもたらすのは、なにより「食」と「性」なのです。その「性」を大事にする性養生がナイス・エイジングには必要です。  現在の私にとって、性養生の一番の方法は女性とのハグです。ハグによって生命のエネルギーが高まるといつも語っているので、講演が終わると、私とのハグを求める女性の列が生まれます。ありがたいことです。でも、ハグするときは自分からではなく、相手が動いてからです。自分からだとセクハラになってしまいますから(笑)。  みなさんも「性」を大事にする方法を是非、見つけてください。そして、いつまでも異性への関心を持ち続けましょう。 帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中※週刊朝日  2021年12月3日号

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    8時間前

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    手取り14万円「正社員なのに貧困」苦悩する20代女性 唯一の贅沢は月1度の銭湯

     低賃金で働く正社員が増えている。背景には経済のグローバル化と日本型雇用の崩壊がある。AERA 2021年11月29日号から。 *  *  *  手取り14万円──。毎月の給与明細を見るたびに、関東地方で暮らす会社員の女性(20代)は嘆息する。 「夢も希望も持てないです」  就活に失敗し、大学を卒業後は塾の講師やパン屋のアルバイトなどで生活費を稼いだ。当時の収入は手取りで25万円ほど。普通に暮らせたが、安定した仕事に就こうと2年前にインターネットで見つけたのが今の会社だった。社員20人程度の建築会社の事務職。給与が低いことはわかっていたが、賞与もあるというので決めた。  雇用形態は「正社員」。だが、賞与は「スズメの涙」程度だった。年収は300万円いくかいかないか。 「バイトしていたときのほうがお金はありました」 ■外食せず服も買わない  一人暮らしの部屋の家賃は6万円。生活を切りつめても赤字だ。学生時代に借りていた奨学金の一部を貯金していたので、それを取り崩しながら暮らす。外食はせず、服も買わない。唯一の贅沢(ぜいたく)は月に1度、近くの銭湯に行くことだという。 「正社員なのに貧困って、おかしいですね」  これまで「貧困」と言えば、非正規社員に多いとされていた。しかし、今や正社員にも貧困化が進んでいる。  厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」を元に、賃金に詳しい都留文科大学名誉教授の後藤道夫さんが、従業員10人以上の企業を対象に「最低賃金+α(プラスアルファ)」より下で働く正社員が2007年と20年でそれぞれ何%を占めるかを試算し、比較した。  最低賃金の1.1倍未満で働く人の割合は07年の1.5%から20年は3.8%、同様に1.2倍未満は2.4%から6.9%に上昇した。1.3倍未満まで広げると4.1%から11.7%に増えた。  また、中所得者層より上の収入の正社員も減っている。年収400万円以上の35~39歳の男性正社員の割合は、1997年の約8割から17年には6割にまで減ったという。  こうしたことの理由について、後藤さんは(1)グローバル化の進展(2)日本型雇用の崩壊──の2点が大きいと指摘する。 「日本の大企業は1980年代後半から本格的にグローバル化を進め、90年代後半にはそれとぶつかる場面が多い年功型賃金や長期雇用といった日本型雇用が見直され、賃金は長期に低下し始めました。グローバル競争に勝つためにコスト削減が強まり、勤続年数とともに給与が上がる正社員が減っていきます」 ■経営側に抵抗しにくい  後藤さんは労働組合の問題も指摘する。 「日本は企業別組合。社内の従業員だけでつくられているので、経営側にどうしても抵抗しにくい形態となっています。対して世界は産業別にまとまった産業別組合です。交渉は経営者団体と産業別の労働組合のリーダーで行うため、産業全体のことを考え賃金も上がりやすくなっています。日本にも産業別組合はありますが、企業別組合の連合体をそう呼んでいるだけで、実質は企業別組合と同じです」  実際、日本の賃金水準は他の先進国と比べると低い。経済協力開発機構(OECD)によれば、20年の日本の平均賃金は3万8514ドル(約437万円)と、加盟35カ国中22位。差が大きかった韓国にも15年に抜かれた。  賃金も上がっていない。OECDによると、20年までの30年間で日本の賃金上昇率はわずか6%。対照的に米国は50%、英国は48%、フランスは33%、ドイツは35%、韓国は88%も伸びている。(編集部・野村昌二)※AERA 2021年11月29日号より抜粋

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    硬くなっていく血管をケアするには? 医師がすすめる日々の食事と運動の方法

    「人の老化は血管から始まる」ともいわれるように血管ケアはアンチエイジングの要。年齢を重ねることで硬くなっていく血管をケアしていくには日々の食事や運動で脂質をコントロールすることが大切です。今回は女性の血管ケアについて、日本の「性差医療」の草分け的存在である天野惠子先生にお聞きしました。前編に続いて、後編では、どのような血管ケアを行ったらよいかを具体的にご紹介します。(自分で自分の健康を守るための健康情報を発信する「セルフドクターWeb」より転載) *  *  *食事の工夫で血液中の脂を増やさない  コレステロールが高いから卵はダメ、肉もダメというのではなく、コレステロールや中性脂肪を減らしたり吸収を抑えたりする食材を使って、賢く脂質コントロールしましょう。コレステロールの7~8割は体内でつくられ、食べ物から摂取されるのは2~3割しかありません。コレステロールの生成や貯蔵は全て肝臓で行われ、肝臓は体内のコレステロールが一定になるように需要と供給のバランスを上手に調整しています。そのため、コレステロールが多く含まれる食べ物を摂っても、すぐにコレステロール値が上がるということはありません。  とはいえ、動物性脂肪を摂り過ぎればLDLコレステロールが増え、炭水化物(糖質)や脂肪、アルコールを摂り過ぎれば中性脂肪が増えるのも事実。バランスを心がけましょう。脂質コントロールのお助け食材となるのが、意外なことにある種類の油。青背魚や亜麻仁油、オリーブ油などの油は、コレステロールや中性脂肪を減らしたり、血流をよくしたりするのに一役買ってくれます。  天野先生の心配は、実は更年期よりも20代、30代の女性たち。「見ていると、40代の半ばから50代には料理をする人がたくさんいますが、若い女性たちに聞くと、家に包丁もない、コンビニで買ってきた物を食べるという人も多い。栄養の偏りも多く、あまり摂りたくない油も日常的に摂っています」と先生。これではエストロゲンが出ていても、血管や血流に危険信号が灯ってしまいます。 食事で摂りたいのは「オメガ3脂肪酸」  血管ケアに特におすすめなのが、魚に含まれるEPAやDHA、亜麻仁油などに含まれるα-リノレン酸などの「オメガ3」ことn-3系脂肪酸。この種類の油には、血液中の中性脂肪を減らしたり、血栓ができるのを防いだりする働きがあります。「オメガ3には抗炎症作用があり、認知症の予防にもなるんですよ」と天野先生。また、オリーブ油、キャノーラ油(菜種油)もLDLコレステロールを減らす働きがあります。  ちなみに、脂肪酸の種類は、大きく分けて動物性脂肪などの「飽和脂肪酸」と植物性脂肪などの「不飽和脂肪酸」、化学的に生まれた「トランス脂肪酸」に分けられます。飽和脂肪酸はコレステロール値の高い人は控えたい油。この他、コレステロール値にかかわらず控えたい油に、マーガリン、ショートニング、食用精製加工油脂に多く含まれているトランス脂肪酸があります。血管に対する毒性が指摘されているため、加工食品を購入する時は原材料表示を確認するようにしましょう。  また、食物繊維には、コレステロールの吸収を抑える働きだけでなく、糖質の急激な吸収を抑え、腸内の有害物質を体の外に排出してくれるといった、うれしい働きがあります。水溶性食物繊維のほうがコレステロールを減らす効果は高いとされますが、不溶性食物繊維も腸の働きを整えて、コレステロールや中性脂肪の数値を下げる働きがあるため、どちらもしっかり摂ることが大切です。 運動でしなやかな血管を目指す 「年をとれば誰しもキレイな血管ではいられません。それでも硬くなることを防ぎたい。それには内皮細胞が、血管拡張作用をもつ一酸化窒素(NO)を出し続けてくれるような生活をしていればいいわけです」と天野先生。内皮細胞というのは、血管の最も内側にあり、血液と接しています。そこで重要になるのが、血流。血流がよいと内皮細胞がこすれて血管を拡張するNOを放出。これが動脈硬化の予防にもつながります。  血流をよくする一番の方法が、運動です。定期的に運動することによって中性脂肪が減り、HDLコレステロールが増えることが分かっており、逆に運動不足の人ほど、動脈硬化が進みやすいことも分かっています。だから厚生労働省も1に運動、2に運動、3に運動と言っているのです。運動で血流をよくし、しなやかな血管をキープしましょう。 有酸素運動で脂肪を燃焼  血管対策としてはまず、有酸素運動から始めるのがおすすめ。そこに筋トレを組み込めば相乗効果が期待できます。運動時間は30分以上を、週3回以上が望ましいですが、時間がなければ10分×週3回でもOK。寒い季節は心筋梗塞のリスクが高まる早朝などの時間帯は運動を避けましょう。  有酸素運動は、体内に取り込んだ酸素を使って糖質や脂肪を燃焼しながらエネルギーをつくり出す運動のことで、比較的負荷が軽く、運動習慣のない人でも気軽に始められるのが魅力。有酸素運動を30分以上続けると脂肪をよりよく燃焼できます。代表的なものが、ウォーキング、ジョギング、踏み台昇降、水中ウォーク、ゆっくりした水泳、エアロビクス、サイクリング、ゴルフなどです。 <前編>「コレステロール、中性脂肪は「男女」「年齢」で基準値が違う! 参考にするべき数値をチェック」から続く 監修/天野惠子(あまの・けいこ)先生 一般財団法人野中東晧会 静風荘病院特別顧問。日本の「性差医療」研究の草分けとして普及に努め、鹿児島大学及び千葉県にて、性差に基づく女性医療の実践の場として女性外来を立ち上げ、治療に当たる。2009年より現職。日本性差医学・医療学会理事。 セルフドクターHP

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    マイホームは「子ども部屋なし」がトレンド?! 勉強部屋に風呂なしアパートを借りる賢い選択

     晩婚化に伴い、マイホーム購入の平均年齢が上がっている。金融機関が貸してくれる時代とはいえ、ローンは早めに完済したほうがベターだ。それでも人生は予期せぬことが起こりうるもの。リアルな事例や最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は、20代で計画的に戸建てを購入した夫婦の事例を検証する。 >>【前編:家を買うのが早すぎた?「子ども部屋を見ると悲しくなる」 戸建て購入37歳共働き夫婦の後悔 】を読む *  *  *<30代後半Aさん夫婦のケース>10年前に27歳で神奈川県の郊外の住宅地に戸建てを購入。広さを優先した分、利便性は犠牲にして通勤は片道1時間半かかる。ローンの返済は順調だが、予想外だったのが、がんを患ったこと。子どもが授かりにくくなってしまい、せっかく作った子ども部屋を使用する予定はないという。 ◆ 80歳までローン返済…早い段階で購入することは“正解”    Aさん夫婦の事例をライフプランという視点から考察してみよう。ローン完済までの余裕が生まれ、返済計画も安定しやすいことから、早い段階で家を購入すること自体は間違っていない選択だ。  今は晩婚化の影響もあり、家を買う年齢が上昇傾向にある。最新の住宅市場動向調査(令和元年度・国土交通省住宅局)によれば、初めてマイホームを購入する人(一時取得者)の平均年齢は、注文住宅が39.1歳、分譲戸建住宅が36.8歳、分譲マンションが39.4歳、中古戸建住宅が42.8歳、中古マンションが44.8歳と、40歳前後。これに伴い、住宅ローンの完済年齢も上がっており、以前は最長70歳までが一般的だったところが、現在は最長80歳まで延長して設定している金融機関が増えている。 仮に40歳で家を買うとなると、35年ローンを組めば完済が75歳と定年退職後の年齢になる。大手不動産会社出身で、住宅購入における資金計画に詳しいファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)は言う。 「家の購入年齢が上がるに伴い、一昔前までは住宅ローンを『遅くとも65歳には完済したい、できれば60歳までに返したい』という人が多かったのが、最近は『遅くとも70歳には完済したい、できれば65歳までに返したい』に変わってきています。借入額を増やすためにも、35年の最長期間でローンを組む人が多いですが、繰上げ返済を計画的にしていくことで、なるべく現役のうちに完済することを目指す人が多い」  また、Aさんのように病気になるのも、誰しもが抱えるリスクだ。銀行で住宅ローンを借りて家を買う場合には、債務者が死亡または高度障害に陥ったときに返済が不要になる団体信用生命保険(以下、団信)に加入する必要がある。通常の団信は、病気にかかったときの保証はないが、がん、脳卒中、急性心筋梗塞の三大疫病型特約付の団信や、三大疫病に重度慢性疾患を加えた八大疫病型特約付など、病気や怪我を保証する団信のバリエーションが広がっている。 なお、多くのがん団信の加入上限年齢は、46歳以下と設定されている。Aさんの場合、債務者が死亡または高度障害に陥ったときのみの通常型の団信加入であったために保険金の支払い対象とはならなかった。仮にがん団信に加入していたら、がんと診断された時点で、団信に加入している保険会社からローンを借りている銀行に保険金が支払われ、ローンの債務がゼロになっていただろう。 「まさか自分が病気にかかるなんて思いもしなかった。あの時、がん団信に加入していたら……と、どれだけ悔やんだか分かりません」(Aさん) ◆ 自宅は子ども部屋ナシ 勉強部屋を借りる世帯も  飯田さんは、早い段階で購入に踏み切ったAさんの選択自体は「良い選択だった」としながらも、“妊娠前から子どものための部屋を構える”という点については「少し早まったかもしれない」と指摘する。 「リスクの想定は線引きが難しいですが、想定外のことが起こるかもしれないという可能性を踏まえると、『必要が生じたときに、必要に応じて動く』という視点のほうが『こんなはずじゃなかった』ということになりにくい。病気にかからずとも、子どもを授かれないという例も珍しくありません。また結婚することを前提に新居を購入した人が、実際は結婚に至らなかったというケースもままあります」  この「必要が生じたときに、必要に応じて」という観点は、不動産の視点に置き換えても応用が効く。例えば「子ども部屋」について。「子どもに個室が必要な期間というのは、意外と短い」とは前出の後藤さんだ。小学校低学年のうちは、個室があっても、家族のいるリビングで宿題をするケースも多いことや、大学入学を機に一人暮らしをする例も少なくない。  仮に小学3年生から高校卒業までが個室が必要な期間とすると、合計10年だ。都心では50~60平米の空間で、家族3~4人が暮らす例も珍しくはない。この10年のために、限られた空間の中で子ども部屋を設けるかどうか悩む人も多いという。これまで6千件を超える不動産取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは次のように言う。 「今はその辺りを合理的に考えて、子どもの勉強部屋用に、自宅近くのアパートの一室を賃貸で借りるケースも見られます。勉強用に借りる部屋ですから、狭くて風呂なしでも十分。また子ども部屋が必要な期間だけ、自宅を定期借家として人に貸して、家賃を元手に家族全員で広めの賃貸住宅に移るというケースも少なくありません」  多くの人にとって、人生で一番高い買い物とも言える住宅購入。想定通りに事が進むことばかりではないのが人生だが、家の選び方や買い方には思わぬ落とし穴もある。後の人生を左右すると言っても過言ではない住宅選びだからこそ、後悔しないためのコツを身につけておきたい。(松岡かすみ) >>【前編:家を買うのが早すぎた?「子ども部屋を見ると悲しくなる」 戸建て購入37歳共働き夫婦の後悔 】を読む

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    19時間前

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    家を買うのが早すぎた?「子ども部屋を見ると悲しくなる」 戸建て購入37歳共働き夫婦の後悔

     晩婚化に伴い、マイホーム購入の平均年齢が上がっている。金融機関が貸してくれる時代とはいえ、ローンは早めに完済したほうがベターだ。それでも人生は予期せぬことが起こりうるもの。リアルな事例や最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は、20代で計画的に購入した夫婦の事例から、戸建てを検討する際にどんなことを考慮すべきなのか。専門家に聞いた。 *      *  *「家を買うのが早すぎたのかもしれない……」  神奈川県で夫と2人で住んでいるAさん(37)は、10年前に家を建てたことを悔やみ始めている。  Aさんは「若い頃から将来設計をしっかり立てておきたいタイプだった」というように、25歳での結婚を機に、ファイナルシャルプランナーに収入に応じたライフプランを相談。「住宅ローンのことを考えても、家を買うなら早いに越したことはない」というアドバイスのもと、27歳で新築一戸建てを購入した。  夫婦ともに地方出身で、広々とした戸建で育ってきたことから、マンションは選択肢になかったという。カフェ風のお洒落なインテリアを実現したいとの思いから、注文住宅でそのこだわりを実現した。 「これから子どもを産んで家族も増えるはず」  広めの子ども部屋も構え、期待で胸を膨らませながらマイホームでの暮らしを満喫していた。  ところが翌年、Aさんにがんが発覚。幸い大事には至らずに済んだが、手術を経て子どもができづらい体になってしまった。気づけば、高校や大学の同級生らは出産ラッシュ。 「今、子ども部屋を見ると、何とも言えず悲しい気持ちになります」(Aさん)  戸建てへのこだわりを優先した分、交通の便は犠牲にしていた。共働きで、満員電車に揺られ、片道約1時間半かけて都心へ通う日々。駅から家まで徒歩25分と距離が遠く、家から駅までは自転車が欠かせない。退院後に長時間通勤は正直、つらかった。  昨年からのコロナ禍で「戸建てでよかった」と思い直したかというと、そうでもない。確かに、残業が多く深夜帰宅が当たり前だった日常は、コロナの影響で一変した。夫婦ともにテレワークが基本となり、出社は月1~2回。感染状況が比較的落ち着いている今もテレワーク中心であることは変わらず、以前に比べて格段に自由な時間が増えた。  プライベートを充実させようと、海辺に引っ越した同僚もいるという。Aさん夫婦が家を建てたのは住宅街。特段、緑の多いエリアでもない。 「今の家は、都心への通勤を考えて、自分たちが無理ない範囲で戸建が持てるエリアということで決めた場所。都心へのアクセスも周辺の環境も、言ってみれば中途半端な郊外の住宅地です。こんな状況になるなら、もっと自然豊かな場所に住むか、仕事中心のライフスタイルに合わせて都心のマンションという選択肢でも良かった」(Aさん) ◆ 商業施設が撤退する地域は値段に響く  人生、いつ何が起きるか分からないのは万人に共通すること。専門家にも相談し、長い目で見て良かれと判断し、早めに行動したAさんのような人でも、予測できない事態に後悔することがある。どんなことに留意すべきなのか。Aさんのケースを検証しながら、ポイントを整理していこう。 「家を買う時には、『もし自分がそこで住めなくなったら』という仮定をして考えてみることが大事です」   不動産コンサルタントの午堂登紀雄さんは、Aさんの例についてこう指摘する。想定外のことが起こり、もし自分がそこで住めなくなった場合は、人に「売る」か「貸す」か、どちらかの選択肢しかない。 「だからこそ、何かあったら『売れる』、もしくは『貸せる』物件を選ぶ視点が必要です」(同)  ここで改めてAさんの家の立地について整理しよう。Aさんの家は、最寄り駅から徒歩25分。晴れた日は自転車で駅まで向かい、駅に隣接する駐輪場に駐車する。雨の日はバスを利用するか、急いでいる時はタクシーを呼んで駅まで向かうこともあった。最寄り駅から都心のターミナル駅までは、乗り換え1回を挟み、1時間超かかる。通勤時間帯には郊外から通勤する乗客がひしめき、特に朝のラッシュ時間の満員電車は過酷な状況だった。  午堂さんは言う。 「駅から徒歩15分を超えた立地や、バスを利用しなくてはいけない立地など、アクセスの悪さは想像以上に売る時の値段に響いてきます。また郊外のニュータウンなどの高齢化が進む地域や、周辺の商業施設が撤退するなど衰退が進む地域も要注意。いざという時に売りにくくなり、資産価値が低下しやすい」 ◆ 実は「建売住宅」のほうが次に売りやすい  主に都市部で売れる物件の条件については、前回の記事に詳述しているが、Aさんの場合はマンションでなく戸建であることもポイントだ。戸建には思わぬリスクもあるという。 「一般的に戸建は、建物が木造であることが多いため、鉄筋コンクリート造であるマンションに比べ、価格が下落するスピードが早い。また、木造住宅の価値は、築20~24年前後でほぼゼロと評価されることから、土地だけの価格になってしまうことが多いのです」(午堂さん)  その土地代も、手放したいと考えるときには価値が下がってしまうこともある。例えば郊外の新築一戸建を買って数十年が経過した後、売却したいと考え、土地部分の価格のみで売りに出す。しかしなかなか買い手が現れないために土地部分の価格も下げることを余儀なくされ、結果的に大幅に資産価値を下落させてしまうケースもよく見られるという。  さらに、こだわりを実現するための「注文住宅」という点にも、意外な落とし穴が潜んでいる。実は一戸建の場合、一見ぜいたくなほど細部にこだわった注文住宅より、建売業者が建てたよくある間取りの建売住宅の方が売りやすい場合も多いという。これまで6千件を超える不動産取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。 「なぜなら建売業者は、建物を建てる前に、そのエリアの需要の傾向や価格相場などのマーケット調査をし、それを基に万人に受けるであろう外観デザインや間取り、建具、設備、内装などにしていることが多いからです。自分仕様にこだわって建てた注文住宅が、リセール時の買い手に気に入ってもらえれば良いのですが、その個性が逆に買い手を狭めてしまい、結果的に売りにくくなってしまうことがあります。住宅においてはある意味、“個性のなさ”が買い手を限定させず、売りやすさを高めるとも言えます」 (松岡かすみ) >>【後編:マイホームは「子ども部屋なし」がトレンド?! 勉強部屋に風呂なしアパートを借りる賢い選択】に続く

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    19時間前

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    手取り14万円「正社員なのに貧困」苦悩する20代女性 唯一の贅沢は月1度の銭湯

     低賃金で働く正社員が増えている。背景には経済のグローバル化と日本型雇用の崩壊がある。AERA 2021年11月29日号から。 *  *  *  手取り14万円──。毎月の給与明細を見るたびに、関東地方で暮らす会社員の女性(20代)は嘆息する。 「夢も希望も持てないです」  就活に失敗し、大学を卒業後は塾の講師やパン屋のアルバイトなどで生活費を稼いだ。当時の収入は手取りで25万円ほど。普通に暮らせたが、安定した仕事に就こうと2年前にインターネットで見つけたのが今の会社だった。社員20人程度の建築会社の事務職。給与が低いことはわかっていたが、賞与もあるというので決めた。  雇用形態は「正社員」。だが、賞与は「スズメの涙」程度だった。年収は300万円いくかいかないか。 「バイトしていたときのほうがお金はありました」 ■外食せず服も買わない  一人暮らしの部屋の家賃は6万円。生活を切りつめても赤字だ。学生時代に借りていた奨学金の一部を貯金していたので、それを取り崩しながら暮らす。外食はせず、服も買わない。唯一の贅沢(ぜいたく)は月に1度、近くの銭湯に行くことだという。 「正社員なのに貧困って、おかしいですね」  これまで「貧困」と言えば、非正規社員に多いとされていた。しかし、今や正社員にも貧困化が進んでいる。  厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」を元に、賃金に詳しい都留文科大学名誉教授の後藤道夫さんが、従業員10人以上の企業を対象に「最低賃金+α(プラスアルファ)」より下で働く正社員が2007年と20年でそれぞれ何%を占めるかを試算し、比較した。  最低賃金の1.1倍未満で働く人の割合は07年の1.5%から20年は3.8%、同様に1.2倍未満は2.4%から6.9%に上昇した。1.3倍未満まで広げると4.1%から11.7%に増えた。  また、中所得者層より上の収入の正社員も減っている。年収400万円以上の35~39歳の男性正社員の割合は、1997年の約8割から17年には6割にまで減ったという。  こうしたことの理由について、後藤さんは(1)グローバル化の進展(2)日本型雇用の崩壊──の2点が大きいと指摘する。 「日本の大企業は1980年代後半から本格的にグローバル化を進め、90年代後半にはそれとぶつかる場面が多い年功型賃金や長期雇用といった日本型雇用が見直され、賃金は長期に低下し始めました。グローバル競争に勝つためにコスト削減が強まり、勤続年数とともに給与が上がる正社員が減っていきます」 ■経営側に抵抗しにくい  後藤さんは労働組合の問題も指摘する。 「日本は企業別組合。社内の従業員だけでつくられているので、経営側にどうしても抵抗しにくい形態となっています。対して世界は産業別にまとまった産業別組合です。交渉は経営者団体と産業別の労働組合のリーダーで行うため、産業全体のことを考え賃金も上がりやすくなっています。日本にも産業別組合はありますが、企業別組合の連合体をそう呼んでいるだけで、実質は企業別組合と同じです」  実際、日本の賃金水準は他の先進国と比べると低い。経済協力開発機構(OECD)によれば、20年の日本の平均賃金は3万8514ドル(約437万円)と、加盟35カ国中22位。差が大きかった韓国にも15年に抜かれた。  賃金も上がっていない。OECDによると、20年までの30年間で日本の賃金上昇率はわずか6%。対照的に米国は50%、英国は48%、フランスは33%、ドイツは35%、韓国は88%も伸びている。(編集部・野村昌二)※AERA 2021年11月29日号より抜粋

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    21時間前

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    コレステロール、中性脂肪は「男女」「年齢」で基準値が違う! 参考にするべき数値をチェック

    「人の老化は血管から始まる」ともいわれるように血管ケアはアンチエイジングの要。年齢を重ねることで硬くなっていく血管をケアしていくには日々の食事や運動で脂質をコントロールすることが大切です。まずは、コレステロールや中性脂肪の値を知ることがセルフケアの第一歩。女性は年齢に応じた基準値があるのでチェックしてみましょう。今回は女性の血管ケアについて、日本の「性差医療」の草分け的存在である天野惠子先生にお聞きしました。今回は、前編・後編の前篇をお送りします。(自分で自分の健康を守るための健康情報を発信する「セルフドクターWeb」より転載) *  *  * 動脈硬化は他人事じゃない  女性ホルモンのエストロゲンには、血管が正常に機能するのを助ける働きと共に、LDLコレステロールを減らすなど、動脈硬化を抑制する作用があります。そのためエストロゲンが多く分泌されている20~30代までは、特別なケアをしなくても血管は比較的しなやか。これは30代から動脈硬化が見られる男性とは明らかな違いといえます。  ところが女性も閉経を迎え、エストロゲンの分泌が止まると共に、血管の硬化が急速に進みます。血液中を流れる脂質にはコレステロールや中性脂肪がありますが、これまでエストロゲンによって抑えられていたそれらの数値も自然と高くなり、血液の流れを妨げることに。動脈硬化の進行に大きく影響してしまいます。  さらにLDLコレステロールが血管の内壁にたまったものが、やがてドロドロの粥状のこぶのようになります。これがプラークです。プラークが破れると、そこに血栓ができて血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞の発症につながるのです。 「閉経前の女性が動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を発症する割合は低く、男性の約5分の1といわれています。ところが閉経後の55歳くらいから発症率はぐんとアップしてしまいます」と天野先生。女性は閉経後、意識的な血管ケアが必要不可欠となるわけです。  閉経前にはエストロゲンによって動脈硬化から守られている女性たちでも、「その効果を帳消しにしてしまう危険因子がある」と天野先生。それが「喫煙」です。タバコに含まれるニコチンの作用で血管が収縮して血流が低下。血管は硬くなり、動脈硬化が進行します。喫煙をしている女性は吸っていない人より、急性心筋梗塞のリスクが8.2倍も高まることが分かっています。 コレステロールや中性脂肪の数値をチェック  コレステロールや中性脂肪は増え過ぎると血液の流れを悪くし、血管にも悪影響となります。でも、これらの脂質は決して健康の敵ではありません。細胞膜やホルモンの原料となったり、体を動かすエネルギー源となったりする大事な要素なのです。  女性の場合は、閉経後に急に脂質の数値が高くなった方もいるでしょう。でも、慌てないで。女性の体の変化に対応した基準範囲があるのです。 「そもそも女性と男性ではコレステロールや中性脂肪の検査値が違って当然。それなのに、これまでは男性も女性も同じ値で見ていました。また、女性はエストロゲンの分泌量が年齢で変わるため、年齢によっても基準範囲は変わります」と天野先生。女性が参考にしたいのは、下記の男女・年齢別に分けた基準範囲です。なお、総コレステロールとは、LDLコレステロールやHDLコレステロールなどを合計した血液中のコレステロールの総量です。下記の基準ではHDLコレステロールの基準範囲は示されていません。 更年期を迎えたら、全身をくまなく検査したい  エストロゲンの分泌が減少すると循環器、消化器、呼吸器などの活動を調整している自律神経も乱れやすくなり、体のあちこちにトラブルが起こるようになります。よくないのは、不調があっても、「更年期だから仕方ない」と放っておいてしまうこと。実は脳血管障害の症状だったケースもあるそうです。そこで先生は、「女性の体がダイナミックに変わる節目の50歳あるいは閉経を機に、頭から足の先まで自分の体の状態をきちんと検査することが大事」と提案します。  栄養素や酸素を行き渡らせる血液の流れが滞ると、体のどこかに支障を来します。全身を検査することは、全身の血管に詰まりがないか、動脈硬化がないかの確認でもあるのです。健康診断だけでは十分とはいえないため、自費にはなりますが病院やクリニックで行っている個別検診で、詳細に調べることをおすすめします。 こんな検査を受けておこう  健康診断や特定健診で行う身体測定(身長・体重・BMI・腹囲を測る)や血液検査、血圧測定(血圧脈波検査)に加えて、より精密な検査が行える個別検診。それによって、健康診断では見落とされた疾患や異常が見つかることも。女性特有の病気を網羅した検診メニューを用意しているクリニックもあります。 <脳検査>MRI(脳実質撮影)、MRA(脳血管撮影)などで脳血管疾患を調べる。 <循環器検査>心臓や血管の状態をチェック。動脈硬化や心血管疾患の有無を調べる。 頸動脈エコー検査 胸部エコー検査 胸部X 線検査 冠動脈CT 検査 心電図 <血液検査>女性に多い甲状腺機能障害や膠原病、関節リウマチの素因の有無を調べる。 甲状腺機能 抗核抗体 リウマチ因子 炎症反応 ホルモンチェック 腫瘍マーカー <眼科検査>眼底検査で高血圧や動脈硬化の進行、糖尿病の発見、眼球の病気の有無をチェック。 <婦人科検査>子宮や卵巣のがん、乳がんなど、40代以降にリスクが高くなる病気を検査。 子宮頸がん検査 子宮体がん検査 経腟超音波検査 乳房視触診 マンモグラフィー 乳房超音波検査 <その他> 骨密度検査 PET-CT 検査 更年期の悩みはどこで相談できる?  更年期に起こる心身の不調は、診療科を特定できないことが多いもの。そんな時は女性の全身症状をトータルで診察してくれる「女性外来」への受診をおすすめします。女性外来の先生は呼吸器、内分泌、循環器などと専門分野は違いますが、性差医療について勉強しているため、メンタル面も含めいろいろと相談にのってくれるはずです。女性外来の受診をきっかけに、かかりつけ医をもつとよいでしょう。 全身を検査する費用はどのくらい?  健康診断や特定健診の費用は無料か、有料でも低額です。全身を診る個別検診の場合、基礎検査を中心とした日帰りの費用は平均3~8万円くらい、泊りがけでMRIやMRA、PET-CT(※)、エコー検査を行って、より詳しく検査する場合は10万円以上かかることも。個別検診は健康保険の適用外なので、費用は全額自己負担。ただし居住地の市町村や所属している健康保険協会、健康保険組合、あるいは契約している保険会社によっては、補助金や助成金、割引サービスが受けられる場合があるので、問い合わせてみましょう。 ※PET(陽電子放出断層撮影)検査とCT(コンピュータ断層撮影)検査を融合させた検査。がんの発見に役立つ。 <後編>「硬くなっていく血管をケアするには? 医師がすすめる日々の食事と運動の方法」に続く 監修/天野惠子(あまの・けいこ)先生 一般財団法人野中東晧会 静風荘病院特別顧問。日本の「性差医療」研究の草分けとして普及に努め、鹿児島大学及び千葉県にて、性差に基づく女性医療の実践の場として女性外来を立ち上げ、治療に当たる。2009年より現職。日本性差医学・医療学会理事。 セルフドクターHP

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    19時間前

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    2万円近く年金が増えた! 意外と知らない厚生年金「経過的加算」

     簡単に年金を増やせるのに、なぜかほとんど知られていない制度がある。厚生年金の「経過的加算」がそれ。一定の条件の60歳以上の人が会社で働けば、それだけで1年で約2万円も年金が増えるのだ。しかも、今の50歳代以上ならほぼ全員が使えるという。年金世代、準備世代必読! *  *  * 「よし、予定どおり順調に増えている」  10月初旬、今年度の「ねんきん定期便」が自宅に届いたとき、記者はこう感じた。定期便のある部分の金額が昨年より約1万9400円も増えていたのだ。 「それにしても、1年でこんなに増えるとは……。すごい威力だ」  記者は62歳。出向元の会社の定年が数年前、60歳から65歳に延びたため、今も勤務を続けている。  金額が増えた定期便の「ある部分」とは、65歳以上の老齢厚生年金の欄の「経過的加算部分」(以下、経過的加算)と書かれているところだ。ここ数年の推移をみると、60歳になった19年はわずか「337円」だったのが、昨年20年は一気に「約1万5300円」になり、今年はそれが「約3万4700円」になった。確かにこの1年で2万円近く増えている。  実はこの「経過的加算」こそ、現在の50歳代、60歳代が60歳以降に年金額を一番簡単に増やせる方策なのだ。しかし、この制度、残念ながら一般人の間での知名度はほぼ「ゼロ」。いったい、「経過的加算」とは何なのか。  それを知るには年金の歴史を振り返る必要がある。  厚生年金ができたのは第2次世界大戦中の1944年にまでさかのぼる。戦後の混乱期を経て54年に法律が全面改正され、今に至る厚生年金の基礎ができた。老齢年金は「定額部分」と「所得比例部分(現在の報酬比例部分)」の2階建てという形ができたのだ。  その後、高度経済成長を経て年金額はどんどん上がっていき、再び86年に大改正を迎える。この改正では全員共通の「老齢基礎年金」が新設された。支給開始年齢は高齢化に合わせて60歳から65歳に引き上げられた。  年金の世界では86年より前の法律を「旧法」、後を「新法」と呼んでいる。厚生年金は旧法では「定額部分+所得比例部分」だったのが、新法では「老齢基礎年金+報酬比例部分」に変わったわけだ。  しかし、この定額部分と老齢基礎年金、計算方式の違いなどで、少額だが微妙に定額部分のほうが高くなってしまうのである。となると、厄介な事態が生じる。  新法で支給開始は65歳からに変わったが、激変緩和措置で60歳代前半は「特別支給」という形で、これまでと同様、60歳から定額部分を含む厚生年金が支給されていた(現在、「特別支給」は廃止途上)。すると、65歳になって定額部分が老齢基礎年金に切り替わったときに年金額が下がってしまう。  そこで、その減額分を補填するために考え出されたのが「経過的加算」である。要するに、その差額を補填するのだ。  老齢基礎年金は20歳から60歳までの40年間の加入で、一方、厚生年金の定額部分は会社に勤めた全期間だ。従って、「経過的加算」の対象期間は二つの重なる部分、「20歳から60歳までで会社に勤めていた期間」になる。そして老齢基礎年金の加入期間40年に合わせて、「経過的加算」の計算では定額部分は「480カ月(40年)分」が上限になっている。  しかし、これだと、もともと二つの差は少額だから「経過的加算」は大きな金額にはならない。ところが、ここに「空白」ともとれる期間が存在する。「20歳前」と「60歳以降」の期間である。この期間に定額部分が480カ月に届いていない人が会社で働くと、定額部分のみがどんどん膨らんでいくのだ。それは、「経過的加算」が増えていくことにほかならない。  これが、記者のように60歳代で会社で働いている人に起きている現象だ。今受給を開始する人たちには60歳代前半の定額部分は支給されていないが、65歳のときに改めて計算されて「経過的加算」が支給され続けている。  それでは、なぜ、今の年金世代は定額部分が480カ月に届いていないのか。これこそ今の50歳代以上に共通した現象だ。この世代が若いころは、20歳以上の大学生は年金制度への加入が義務付けられていなかったのだ。  会社に入って厚生年金に加入して初めて公的年金制度に関わる、こんな人がほとんどだった。すると、ストレートに大学まで卒業しても約2年、浪人や留年をしたりすると3~4年、40年に足りなくなる。そんな人が60歳を過ぎて会社で働くと、それだけで480カ月に達するまで「経過的加算」が増えるのである。  大学生が強制加入になったのは91年4月から。従って、これ以前に20歳になった大学生、つまり「71年4月1日以前」に生まれた人(今の50歳以上)に特有の問題だ。  1カ月の定額単価は「1628円」(今年度の価格)。1年会社で働くと、それだけで約1万9500円(1628円×12カ月)年金が増える。例えば5年足りない人が60歳代で5年働けば、約9万7500円も増える計算だ。  成り立ちからわかるように、「経過的加算」の1年分は国民年金に1年加入して獲得できる老齢基礎年金(約78万円÷40年)とほぼ同じだ。だから、40年に足りない人が定額部分が480カ月になるまで働いたとすると、満額の老齢基礎年金をもらうのと同じ効果が得られる。足りない分を「経過的加算」で穴埋めしたことになる。  また、働いている間は厚生年金の保険料を納めているので、本来の老齢厚生年金(報酬比例部分)も増える。月給20万円の人が1年働くと約1万3100円、同30万円だと約1万9700円。「経過的加算」と合わせてダブルに増えるのだ。 「経過的加算」は「定額」ゆえに給料の低い人ほど恩恵が大きくなることも覚えておきたい。例えば、月給10万円の人が1年働くと、報酬比例部分は約6500円しか増えないのに、「経過的加算」は同じ1年で2万円近く増える。だから40年に足りない女性がパートで働いて厚生年金に加入する場合などに、一番効果が大きくなる。  いずれにせよ、年金制度への加入期間が40年に足りない人には、ぜひ知っておいてほしい制度である。きっと実践し始めると、記者のように定期便を見るのが楽しくなるはずだ。(本誌・首藤由之)※週刊朝日  2021年12月3日号

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    中古マンション争奪戦「10年間、タダで住めたようなもの」世帯年収800万円夫婦も狙う物件とは

     新築信仰は今は昔。都心部で家を買う場合、中古マンションが争奪戦となっている。超低金利時代、世帯年収がそれほど高くなくても手が届くようになったことも大きい。最近の不動産事情を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。子育て世代がいま、都心で家を買うならば、何が“正解”なのか。今回は、中古マンション購入のリアルな事例と最近の傾向を紹介する。 *     *  * 千代田区、2LDK、55平米、最寄り駅から徒歩10分以内。  都心の大手企業に勤めるAさんは、妻(33)と1歳の子どもと3人暮らし。そのAさんが3年前に購入したマンションの特徴だ。子どもが小さいとはいえ、子育て世代の“あこがれあのマイホーム”としては、55平米はちょっと手狭ではないだろうか。子どもはこれからどんどん大きくなる……。  すると、Aさんはあっけらかんと答えた。 「5年後にはだぶん売却していますよ」  いまAさんが住んでいるマンションは中古物件で購入時の価格は約6千万円。土地柄、文教施設も多い。「周囲に大学が多く、資産価値が下がりにくいだろう」という不動産屋のアドバイスを踏まえ、決めた。  このマンションを購入するまでは、渋谷区で月18万円の賃貸マンションに夫婦で住んでいたが、「高額の家賃を払い続ける生活はもったいない」と、購入に踏み切った。その時に大きな後押しとなったのが、10年前に買った渋谷区のマンションを、購入時とほぼ同じ価格で売却したという会社の先輩の話だ。  その先輩は妻と子ども2人の4人家族。子どもの成長とともに部屋が手狭になったことから、2人目の子どもが小学校に上がるタイミングで、「より広い部屋に移り住もう」と住んでいたマンションを売却。利便性が高い人気エリアだったこともあり、購入時とほぼ同じ金額でも、すぐに買い手がついたという。「10年間、タダで住めたようなもの」とホクホク顔の先輩を見て、Aさんは「自分も資産価値が保てる家を選ぼう」と心に決めた。  買うと決めてから、今の家に出会うまでの期間は約半年。子どもが小学校に上がる5年後のタイミングで資産価値が大きく下がらなければ、今の家を売却し、その資金を元手に、もう少し広い部屋に住み替えを検討しているという。 「売却時に実際いくらで売れるかはその時になってみないと分かりませんが、現状の周辺エリアの売却相場を見る限り、価値は維持できるだろうと踏んでいます」(Aさん)  今、Aさんのように、都市部を中心に、いずれ売却することを想定してマイホームを買う人が増えているという。たとえ「一生住み続けるつもり」で家を買ったとしても、人生100年時代と言われる中、自分を取り巻く状況がいつ変わり、何が起こるか分からない。先が見通しにくい時代だからこそ、リスクヘッジという意味でも、「いざとなれば家をお金に換えられる」買い方を望む人が増加している。 「今は家の選び方によって、その後の人生の明暗が変わってくる可能性があると言えるほど、物件選びが重要な時代です。選び方の知識がないと、後悔することになりかねません」  首都圏を中心に不動産の購入、売却など、これまで6千件を超える取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは、こう指摘する。  現在、首都圏の住宅購入において最も取引が活発なのは中古マンションだ。都心を中心に新築マンションの価格が高騰していることからも、中古マンションに目を向ける人が増えており、激しい争奪戦が繰り広げられているという。  マンショントレンド評論家の日下部理絵さんも、こう続ける。  「以前は新築信仰が強い傾向でしたが、今は中古に対する抵抗感を持つ人が少なく、ここ最近は築浅物件のみならず、都心にある築30~40年の古い物件もよく動いています。リノベーションの専門業者も増え、中古物件を自分好みにリノベーションして住みたいと考える人も増えています」  とはいえ都内、それも都心周辺に家を購入できるのは、高額所得者に限られるのではないか。 「そうとも言えません」というのは、前出の後藤さんだ。後藤さんによれば、資産価値を考えたマンション購入を検討している層は、30代~40代の共働き世帯も多く、購入予算は5千万~6千万前後。平均の世帯年収は800万~1千万前後で、自己資金として夫婦で400万~600万程度貯めている世帯が多いという。 「例えば年収500万円前後の夫と400万前後の妻で、二人合わせて世帯年収が800~900万前後という方も多く検討されています。今は住宅ローンが史上最低とも言える超低金利ということもあり、金利が上がらないうちに、ここ1年ぐらいで買おうと考えている方も少なくありません」(後藤さん)  いずれ売ることを視野に入れて家を買うとなると、選び方にもコツが必要だ。もちろん実際に自分が住む家となると、資産価値という尺度だけでは測れない“住み心地”や“快適さ”など、感覚的な部分も大事だが、それは人それぞれの価値観がある。ここではあくまで、「資産価値を保ちやすい家」という視点で解説しよう。専門家らの話を紐解くと、4つのポイントが浮かび上がってきた。(松岡かすみ)  >>【後編:マンション購入「妻の実家の近く」で選んで失敗 いい物件の見極めは? 駅徒歩7分、60平米…】に続く

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    マンション購入「妻の実家の近く」で選んで失敗 いい物件の見極めは? 徒歩7分、60平米…

     都心部で働く子育て世代の夫婦が家を買うとしたら、どんな物件が“正解”なのか。そこ一生住むつもりで物件を選ぶよりも、将来、住み替えることを前提にした購入がトレンドだという。つまり、売ることを前提にした購入だ。だが、購入してから資産価値が落ちたり、いざ売る際になかなか買い手がつかなかったりしたら、のちの人生設計も狂ってくる。最近の不動産事情を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は物件選びのポイントを不動産のプロに聞いた。 >>【前編:都心中古マンション争奪戦「10年間、タダで住めたようなもの」 世帯年収800万円夫婦が狙う物件とは】から続く *     *  * まずは「こんなはずじゃなかった」と頭を抱えてしまったBさんのケースを紹介しよう。  埼玉県内に、10年前にマンションを購入したBさん。妻の実家近くにある、最寄り駅から徒歩18分の4LDK(81平米)の新築物件を3500万円で購入した。うち3300万円は住宅ローンを組み、月々の返済額は約12万円。返済も順調だった。  しかし、ローンがあと20年ほど残っている時点で、仕事と子どもの学校の関係で、どうしても引っ越さないといけなくなり、売却したいと考えた。現在の売却想定額を査定したところ、金額は1800万程度だという。住宅ローンの残債はまだ2400万前後あり、売却想定価格をはるかに上回っている。「ならば貸せないか」と考え、今度は家賃を査定してもらったところ、相場から月10万5千円前後を算出された。Bさんの物件は駅から距離があり、購入時には営業していた近隣のスーパーマーケットなどが撤退し、買い物にも不便という環境要因が響いた。毎月12万の住宅ローンの支払いを考えると、貸しても赤字という計算になる。  Bさんは、購入時点では生涯住むつもりだった。子どもの成長などライフステージの変化に対応する間取りを考え、それが無理ない予算で買える場所という視点から物件選びを始め、「まったく知らない土地に行くよりは、子育ても考えて妻の実家近くにしよう」と決めた家だった。試算が狂い、Bさんは今、人生設計を見直している。  首都圏を中心に不動産の購入、売却、賃貸など、これまで6千件を超える取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは、こう指摘する。 「自分たちにとっては良い場所であっても、売る・貸すとなった時に価値が維持できるとは限りません。一般的に、郊外のマンションは都心のマンションに比べ、買うときの価格が安い一方で、売るときには価格が下がっている可能性が高い。資産価値という視点から見た場合、マンションにおいては立地の影響が想像以上に大きく、価格が落ちにくいマンションとは、都心に近く交通の便が良いマンションの場合が多いのです」  どこから光を当てるかによって、その家の価値は変わる。ここではあくまで、「資産価値を保ちやすい家」という視点で解説しよう。専門家らの話を紐解くと、4つのポイントが浮かび上がってきた。 (1)  山手線沿線の駅から電車で15分圏内  まっさきに押さえるべきポイントは、都心に近く、交通の便が良い場所という条件。具体的に挙げると、山手線の駅周辺の都心、または山手線の駅から電車で約15分圏内の準都心と呼ばれるエリアだ。例えば小田急小田原線の場合は経堂駅ぐらいまで、京王線の場合は千歳烏山駅ぐらいまで、東急田園都市線の場合は二子玉川駅ぐらいまでが準都心の目安となる。 「都心、準都心のエリア内であれば、築35年の60平米ぐらいのマンションでもそれなりの価格で取引されていることが多い。例えばここ10年ぐらいの間でも、港区、千代田区、渋谷区、目黒区などでは4千万~6千万台ぐらいで、新宿区、文京区、豊島区、杉並区、品川区などでも3千万前後から5千万台ぐらいで取引されています」(同) (2)  駅近の目安は徒歩7分以内  主な物件の探し方がインターネットである今、駅から遠い物件は検索段階で切り捨てられてしまうことも多い。通勤や通学ともなると毎日のことなので、「駅から徒歩何分以内か」という点は資産価値を維持する上で重要なポイントだ。 高齢化率の上昇や、全国的に市街地計画をコンパクトに形成していこうとする行政の動き(コンパクトシティ構想)を踏まえても、駅から近い物件は今後ますます有利に働く可能性が高いという。不動産コンサルタントの午堂登紀雄さんは言う。 「エリアにもよりますが、原則、駅から徒歩10分以内の立地で選ぶと比較的売りやすい。駅からの近さはどの世代にも共通して求められているポイントです。郊外の戸建に住んでいたシニア層が駅近のマンションに住み替えるケースも増えています。できれば5分以内、目標は7分以内と、少しでも駅に近い方が有利です」 (3)  ファミリータイプは需要減、60平米が売れ筋  国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」によれば、2015年時点でいわゆるファミリー世帯である「家族と一緒に住む世帯」は約1429万世帯なのに対し、「1人暮らし世帯」は約1842万世帯、「夫婦のみ世帯」は約1072万世帯。さらに2025年の予測では、「家族と一緒に住む世帯」は約1369世帯と減る一方で、「1人暮らし世帯」は約1996世帯、「夫婦のみ世帯」は約1120世帯と増えることが予想されている。 生涯未婚率や離婚率の上昇、シニアの増加により、1人暮らし世帯が急増し、ファミリー世帯が減っているのが現状だ。 「この状況を踏まえると、これまでファミリー用マンションとして考えられていた70~80平米前後と広めのマンションは、これからは長い目で見ると需要が見込みづらい。一方で狭すぎず、広すぎない60平米前後のマンションは、都心においては需要が多いのに供給が少なく、貸しやすい面積帯です。一人暮らし世帯、夫婦のみ世帯を中心に、夫婦と子ども1人、夫婦と小さな子ども2人、シニアと幅広い層が住みやすく、価格も手頃な60平米前後が最も売れやすく、貸しやすいでしょう」(後藤さん) (4)  中古でも2001年以降に完成  「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」(2000年)の施行により、デベロッパーの建物に対する責任性が強まったことから、2001年以降に完成した物件は一般的に住宅の基本性能が高まっている傾向にあるという。 「2001年頃からの完成物件は、耐震や省エネルギー、遮音性などを向上させた物件が比較的多く出ています。今は新築マンションでも設備をチープにする物件が増えているため、むしろ10年ほど前に完成した物件の設備の方が優れている場合も少なくありません。中古物件を選ぶ際は、2001年以降に完成した物件であれば、価格が手頃で良質な建物であることが多い」(後藤さん) ◇  資産価値が落ちない家を選ぶためには、価格が安い物件を買おうとするのではなく、少し価格が高かったとしても購入後に価格が落ちにくいであろう物件を購入する姿勢が必要だ。  大切なのは、今後住み替えなどの可能性があり、住まいに換金性を求める場合に、希望する額から大きく目減りすることがないかどうか。10年、20年先を想定した売却のみならず、「最終的に高齢者施設に入ることを考えたら、家を売って少しでも施設費の足しにできた方がいい」と考える人もいるという。 先行き不透明な時代だからこそ、それだけ後悔しない買い方を求める人が増えているのかもしれない。家を買うことにも、これまで以上に戦略が必要な時代だといえそうだ。(松岡かすみ) >>【11月28日10:00公開】それでも夫婦は東京に家を買う#5

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    硬くなっていく血管をケアするには? 医師がすすめる日々の食事と運動の方法

    「人の老化は血管から始まる」ともいわれるように血管ケアはアンチエイジングの要。年齢を重ねることで硬くなっていく血管をケアしていくには日々の食事や運動で脂質をコントロールすることが大切です。今回は女性の血管ケアについて、日本の「性差医療」の草分け的存在である天野惠子先生にお聞きしました。前編に続いて、後編では、どのような血管ケアを行ったらよいかを具体的にご紹介します。(自分で自分の健康を守るための健康情報を発信する「セルフドクターWeb」より転載) *  *  *食事の工夫で血液中の脂を増やさない  コレステロールが高いから卵はダメ、肉もダメというのではなく、コレステロールや中性脂肪を減らしたり吸収を抑えたりする食材を使って、賢く脂質コントロールしましょう。コレステロールの7~8割は体内でつくられ、食べ物から摂取されるのは2~3割しかありません。コレステロールの生成や貯蔵は全て肝臓で行われ、肝臓は体内のコレステロールが一定になるように需要と供給のバランスを上手に調整しています。そのため、コレステロールが多く含まれる食べ物を摂っても、すぐにコレステロール値が上がるということはありません。  とはいえ、動物性脂肪を摂り過ぎればLDLコレステロールが増え、炭水化物(糖質)や脂肪、アルコールを摂り過ぎれば中性脂肪が増えるのも事実。バランスを心がけましょう。脂質コントロールのお助け食材となるのが、意外なことにある種類の油。青背魚や亜麻仁油、オリーブ油などの油は、コレステロールや中性脂肪を減らしたり、血流をよくしたりするのに一役買ってくれます。  天野先生の心配は、実は更年期よりも20代、30代の女性たち。「見ていると、40代の半ばから50代には料理をする人がたくさんいますが、若い女性たちに聞くと、家に包丁もない、コンビニで買ってきた物を食べるという人も多い。栄養の偏りも多く、あまり摂りたくない油も日常的に摂っています」と先生。これではエストロゲンが出ていても、血管や血流に危険信号が灯ってしまいます。 食事で摂りたいのは「オメガ3脂肪酸」  血管ケアに特におすすめなのが、魚に含まれるEPAやDHA、亜麻仁油などに含まれるα-リノレン酸などの「オメガ3」ことn-3系脂肪酸。この種類の油には、血液中の中性脂肪を減らしたり、血栓ができるのを防いだりする働きがあります。「オメガ3には抗炎症作用があり、認知症の予防にもなるんですよ」と天野先生。また、オリーブ油、キャノーラ油(菜種油)もLDLコレステロールを減らす働きがあります。  ちなみに、脂肪酸の種類は、大きく分けて動物性脂肪などの「飽和脂肪酸」と植物性脂肪などの「不飽和脂肪酸」、化学的に生まれた「トランス脂肪酸」に分けられます。飽和脂肪酸はコレステロール値の高い人は控えたい油。この他、コレステロール値にかかわらず控えたい油に、マーガリン、ショートニング、食用精製加工油脂に多く含まれているトランス脂肪酸があります。血管に対する毒性が指摘されているため、加工食品を購入する時は原材料表示を確認するようにしましょう。  また、食物繊維には、コレステロールの吸収を抑える働きだけでなく、糖質の急激な吸収を抑え、腸内の有害物質を体の外に排出してくれるといった、うれしい働きがあります。水溶性食物繊維のほうがコレステロールを減らす効果は高いとされますが、不溶性食物繊維も腸の働きを整えて、コレステロールや中性脂肪の数値を下げる働きがあるため、どちらもしっかり摂ることが大切です。 運動でしなやかな血管を目指す 「年をとれば誰しもキレイな血管ではいられません。それでも硬くなることを防ぎたい。それには内皮細胞が、血管拡張作用をもつ一酸化窒素(NO)を出し続けてくれるような生活をしていればいいわけです」と天野先生。内皮細胞というのは、血管の最も内側にあり、血液と接しています。そこで重要になるのが、血流。血流がよいと内皮細胞がこすれて血管を拡張するNOを放出。これが動脈硬化の予防にもつながります。  血流をよくする一番の方法が、運動です。定期的に運動することによって中性脂肪が減り、HDLコレステロールが増えることが分かっており、逆に運動不足の人ほど、動脈硬化が進みやすいことも分かっています。だから厚生労働省も1に運動、2に運動、3に運動と言っているのです。運動で血流をよくし、しなやかな血管をキープしましょう。 有酸素運動で脂肪を燃焼  血管対策としてはまず、有酸素運動から始めるのがおすすめ。そこに筋トレを組み込めば相乗効果が期待できます。運動時間は30分以上を、週3回以上が望ましいですが、時間がなければ10分×週3回でもOK。寒い季節は心筋梗塞のリスクが高まる早朝などの時間帯は運動を避けましょう。  有酸素運動は、体内に取り込んだ酸素を使って糖質や脂肪を燃焼しながらエネルギーをつくり出す運動のことで、比較的負荷が軽く、運動習慣のない人でも気軽に始められるのが魅力。有酸素運動を30分以上続けると脂肪をよりよく燃焼できます。代表的なものが、ウォーキング、ジョギング、踏み台昇降、水中ウォーク、ゆっくりした水泳、エアロビクス、サイクリング、ゴルフなどです。 <前編>「コレステロール、中性脂肪は「男女」「年齢」で基準値が違う! 参考にするべき数値をチェック」から続く 監修/天野惠子(あまの・けいこ)先生 一般財団法人野中東晧会 静風荘病院特別顧問。日本の「性差医療」研究の草分けとして普及に努め、鹿児島大学及び千葉県にて、性差に基づく女性医療の実践の場として女性外来を立ち上げ、治療に当たる。2009年より現職。日本性差医学・医療学会理事。 セルフドクターHP

    セルフドクター

    19時間前

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    都心タワマン新築1億円を共働き夫婦が「買える」理由 パワーカップルの意外な金銭感覚

     コロナ禍で田舎暮らしへの憧れはあるものの、都心で働く夫婦が家と買うとなればやはり首都圏の物件が現実ではないだろうか。共働き夫婦のリアルな事例事情や最近の不動産動向を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。一回目のテーマはパワーカップルとタワマン。首都圏の新築マンションの価格は高騰し、タワーマンションならば1億円超えの「億ション」も珍しくなくなった。資産家の投資用かと思いきや、普通の会社員夫婦が購入して住んでいるのだという。共働きで稼ぐ、いわゆるパワーカップルだ。 *   *  *東京都中央区、最寄り駅から徒歩5分、33階建ての新築タワーマンションの一部屋。窓からはいかにも東京らしい都心のビル群や湾岸エリアが一望できる。ここを約8千万円で昨年購入したのは会社員男性のAさん(41)だ。  「夫婦ともに定年まで辞めるつもりはないので、払えると踏んで購入しました」  都内の大手商社に務めるAさんは、広告代理店勤務の妻(40)と夫婦二人暮らし。共働きのAさん夫婦の世帯年収は、約1600万だ。頭金1千万円を夫婦の貯金で支払い、残りの7千万は35年の住宅ローンを組んだ。月々の返済額は、管理費と合わせて22万円程度。夫婦の手取り月収は合わせて78万円前後なので、毎月約28%の収入がローン返済に充てられることになる。かなり高額な買い物だが、会社の同僚には1億円超えの物件を購入した人もいるという。  Aさんの背中を押したのは、「駅近で都心までのアクセスも良く、活気あるエリアの物件で、今後も一定の資産価値を維持できるだろう」という不動産屋の言葉。購入時と同じ8千万円の価格か、それ以上に価値が上がる可能性もあると期待している。一生住むつもりで買った物件だが、「何かあれば買った金額で手放せるはず」ということが、安心感に繋がっているという。 「言ってみれば、貯蓄効果もある買い方。もちろん高い買い物ではあるけれど、値段が下がりづらい物件を買うことは、資産防衛術とも言えると思う」(Aさん)  コロナ禍で景気低迷ばかりが取り沙汰される現在だが、実は首都圏を中心に、高額の新築マンションを買う人が増えている。主な購入層は、「パワーカップル」とも呼ばれるAさん夫妻のような高収入の共働き世帯だ。首都圏のマンション価格は年々高騰しており、不動産経済研究所の2021年度上半期(4~9月)の新築マンションの一戸当たり平均価格は、首都圏(1都3県)で前年同期比10.1%増の6702万円。1973年の調査開始以来、上半期としてバブル期を超える最高値を記録し、高額の東京都心の物件を中心に人気が集まっている。  都心のタワーマンションといえば、不動産業界でも、以前は限られた富裕層のみが買う「特殊住戸」と呼ばれていた。一定の収入がないと買えない物件であることは今も変わりないが、その敷居は以前に比べると下がっており、積極的な購入層は世帯年収1千万~2千万円前後の会社員だという。Aさんはその典型例だろう。  なぜ、会社員夫婦がこうした物件の購入ができるようになったのだろうか。  まず、背景にあるのが、超低金利という今の時代だ。頭金をそれほど用意せずとも、長期のローンを組むことで、年収の高い会社員であれば6000~7000万円程度は容易に借り入れすることができる。夫婦ともに稼ぐ共働き世帯ともなれば、2人で1億円を超えるローンも組むことができる時代だ。大手銀行の借り入れ限度額は1億円が主流だが、ここ数年で高額物件用の借り入れ需要が増している背景から、新興金融機関では上限2億円超えまで対応しているところも多い。こうして夫婦両輪で多額のペアローンを組み、新築の億ションを共有名義で買っている世帯が増えているという。  「一昔前まで住宅ローンの返済額の目安とされていた『世帯収入の20~25%が上限』というセオリーが崩れ、過大なローンを組む人が増えている」  こう指摘するのは、大手デベロッパー出身の不動産コンサルタント、長谷川高さん(長谷川不動産経済社代表)。初めて家を購入する平均年齢は、40歳前後の現在。働き盛りで管理職などになり、それなりの収入を得られていると実感しやすい年齢だ。また、共働きが当たり前の時代になったことも大きい。 「少し前までは、夫婦共働きであっても、どちらか一方の収入を元にローンを組むことが一般的でした。ですが今は、夫婦両輪の“大車輪”のごとく、多額のペアローンを組む例が珍しくない」(長谷川さん)  ローン完済年齢も上がってきている。人生100年時代、60歳以降も働くのが当然という意識を持つ人は多い。「10年ほど前までは、60歳以降は働かない前提で考える人が多かったのが、ここ最近は70歳まで働くことを見据えてローンを考える人が増えている」とは、首都圏を中心とした住宅購入における相談実績も多いファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)。  Aさん夫妻も、仕事が生活の中心というライフスタイルを変えるつもりはなく、今後子どもを持つ計画もない。ともに働き盛りの40代。仕事は多忙を極め、帰宅は連日深夜がお決まりだ。終電を逃してタクシーで帰宅することも多く、会社のある都心に近いことは必須条件だった。40歳から35年のローンとなると、完済時の年齢は75歳。だが、繰り上げ返済を計画的に行うことで、60~65歳のローン完済を目指している。 「今の社会の流れを見ると、自分たちの頃には70歳まで働くことが当たり前の時代になっているのでは。年金には期待できないけれど、長く働くことで一定の収入は得られるはず」(Aさん)  こうした時代の流れに加えて、タワマンを購入するパワーカップルは「意外と生活は堅実」という点も特徴かもしれない。冒頭のAさん夫妻も高収入ではあるが、ブランド物を買ったり、頻繁に贅沢な食事をしたりするわけでもなく、夫婦一緒に毎月コツコツと貯金を続けている。頭金として1千万円を用意できたのも、浪費をせず、計画的に貯金してきたからこそだ。つまり、ぜいたくな暮らしをしたいからタワマンを購入したわけではないのだ。タワーマンションなどいわゆる高級マンションに住む理由は、ステイタスやブランド意識からではなく、Aさん夫妻のように「資産価値が優れていて、価格が下がりづらい」という背景から選ぶ人も多いという。  不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。 「確かに都心のタワーマンションはよく売れていて、積極的に買おうとする動きが活発です。ただ、こうした物件を購入する会社員夫婦は、資産を持て余しているから買うのとは少し違います。自分たちの収入の中で買える範囲で、なるべく資産価値を維持できる住宅を求めており、“稼いだお金を減らしたくない”と考える人が多い」  すなわち、現金という流動資産を一旦「タワーマンション」という固定資産に変え、十分に利用したら、またほぼ同じ金額の流動資産や他の固定資産、金融資産などに変えるという作業を計画的に行うという流れだ。 「つまり1億円で買ったマンションが、10年間住んだ後も1億円で売れる可能性が高い、という理由からタワーマンションを選ぶ人も少なくない。タワーマンションは、街の再開発とセットで建てられるケースも多く、一般的に駅近であればなお価値が下がりにくいと言えます」(後藤さん)  Aさんもこんなことを言っていた。 「いざとなれば、買った時と変わらない金額で手放せる物件。この新築タワーマンションは、その条件に当てはまると思いました」  なるほど、今、タワマンを買うのは意外と堅実な選択肢なのかもしれない。しかし、大きな買い物には、ときに意外な落とし穴が潜んでいるもの。次は、長い目で見たときの不動産リスクについて説明しよう。(松岡かすみ) >>【後編:新築マンション高騰の裏で設備がチープ化?ローンを返せない共働き夫婦も 超低金利時代の落とし穴】に続く

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    「授業準備は5分」に「小学校をなめているのか」 公立教員残業代訴訟の「仕分け」に教員ら困惑

     公立小学校教員が未払い残業代を求めた訴訟で、司法が勤務時間外の労働時間を仕分けた。現場の実態や価値観と合わないチグハグさが、大きな波紋を呼んでいる。AERA 2021年11月29日号の記事を紹介する。 *  *  * 「翌日の授業準備は1コマ5分」「保護者対応はしません」──。もしそんな小学校教員が子どもの担任だったらどうだろうか。一方でその教員は「扇風機の清掃とビニール掛け」「エアコンスイッチ入り切りの記録」には時間を割いている。冗談に思われるかもしれないが、こんな教員が全国で増えても不思議でない状況が生まれているのだ。  10月1日、全国の教員が固唾(かたず)をのんで見守った裁判の判決が出た。埼玉県の公立小学校教員の田中まさおさん(仮名・62)が、時間外労働に対して残業代が支払われないのは労働基準法違反だとして、県に未払い賃金の支払いと国家賠償を求めた裁判だ。教員の慢性的な長時間労働は残業代が発生しないことが元凶とし、歯止めをかける狙いだった。だが、さいたま地裁は訴えを退けた。  公立学校教員の給与は、1971年に制定された教職員給与特措法(給特法)で規定されている。教員の仕事は裁量が大きく特殊だとして、月給の4%分の教職調整額を支給する代わりに、残業代を支払わない。ただし、制定にあたり長時間労働を招く懸念の声があったため、残業させられるのは、校外実習、学校行事、職員会議、非常災害の「超勤4項目」に限った。 ■「自発的行為」なのか  ところが、田中さんは月平均約60時間の残業のうち、9割が4項目以外の業務だと主張。しかも、それらの業務は必要に迫られて行っているのに、教員が好きで勝手にやっている「自発的行為」と見なされ、賃金の対象外にされているのは「おかしい」と訴えているのだ。  これに対して地裁は、田中さんが提出した残業の内容を「労働時間」か否かに仕分けし、時間数も計算。その結果、時間外の労働時間を認めたものの、未払いの残業代の支払いについては給特法が適用されるとして棄却。国家賠償についても、賠償に値するほどの時間量でないとして認めなかった。  その仕分けの一部を抜粋した。これが公開されるや大きな波紋を呼んだ。とりわけ教員から困惑の声が多く上がったのが、「翌日の授業準備は1コマ5分」が相当とする判断だ。  50代の女性教員は言う。 「小学校をなめているのかと思いました。例えば理科の実験授業があるときは、予備実験をします。児童は毎年違うため、同じ実験でもやり方を変えるのです。こうした地道な準備を通して、私たちは授業の質を保ちます。司法にこんなことを言われて、文部科学省や教育委員会は抗議しないのでしょうか?」  労働時間か否かを分かつ大きなポイントとなったのが、校長の指示や命令があったかだ。  SNSには「『労働時間でない』と司法が線引きした残業についてはやらない。断ることだ」「これからはひとつひとつの業務について、校長に『それは命令ですか?』と確かめる必要がある」といったような教員の声が見られた。一方、「労働時間として認められないからといって『保護者対応も教材研究もやりません』なんて無責任なことを教員はできない。それを見越して、つけ込まれている」のようなジレンマの声も少なからずあった。 ■未来の教員にも影響  判決の影響は、教員だけでなく、教員志望の若者にも及んでいる。教育学部3年の女子学生(22)は、高校3年のとき勉強の悩みから学校に通えなくなった時期があった。どん底から救ったのは丹念に話を聞いてくれた教員の存在だった。それが、教職を目指す動機になっている。 「恩師が朝に夕に私にしてくれたことは、今回の判決の理屈でいくと『労働時間とみなされない、好きでやっているボランティア』と判断される可能性が高く、悲しくなりました。恩師に連絡すると『教師の本分だ。構わない』と言ってくれました。その代わり『本分でない仕事は減ってほしい』とも言っていました。恩師は過重労働でメンタルを病み、一時期休職をしていました。国は本気で、教員や教員志望者が安心して働ける労働環境を作ってほしい」(女子学生)  司法上の手続きとはいえ、教育現場の実態や価値観と合わない、この仕分けのチグハグさは何に起因するのか。田中さんの証人として、意見書を提出した埼玉大学の高橋哲准教授(教育法学)は、次のように説明する。 「『翌日の授業準備1コマ5分』というのは、裁判官が主観で決めたもので、教育の専門的見地からではありません。教員のモチベーションやモラルを低下させる可能性は否めません」 ■残業は「無賃強制労働」  一番の問題は、児童の提出物のペン入れや保護者対応など、教員の核心といえる業務が勤務時間内にできず、時間外に押しやられている点だ。 「例えばアメリカの学校では、保護者対応の時間を1週間に80分、勤務時間内に確保しなければいけないなどと決めています。教員のコアな業務については、標準時間を定め、勤務時間内に時間を確保できるよう労働環境を変えていかなければいけません」(高橋准教授)  裁判を起こした田中さんが、教員になったのは81年。このころは児童が下校したあと翌日の授業準備をし、定時で帰れた。状況が変わったのは、2000年ごろからだ。校長の権限が強化され、職員会議が校長の補助機関に変わった。それまでは、職員会議でさまざまな業務について話し合いで決めていたが、今は意見を言う教員はほとんどいない。業務量はどんどん膨らみ、勤務時間内に終えられなくなった。 「英語、プログラミング、コロナ対応……新しい仕事がどんどん降ってきます。校長は、残業の指示や命令はしていないと裁判で述べましたが、勤務時間内に終えられないほどの量があり、残業を余儀なくされているのです。残業は“自発的行為”という名のもとの『無賃強制労働』です」(田中さん)  16年の文科省の調査では、小学校教員の3割、中学校教員の6割が、過労死ラインとされる月80時間以上の残業をしている実態が明らかになった。 「若い女性教員が、今の働き方では『子どもを産み育てることはできない』というのを聞いて、ショックを受けました。今の労働環境を若い教員たちに引き継いではいけないと思い、訴訟を起こしました」(同)  田中さんは一審を不服として控訴した。二審は早ければ年内か年明けに、東京高等裁判所で開かれる見通しだ。今回の判決を受けて、田中さんの支援事務局が始めた署名は4万筆以上集まった。裁判費用のクラウドファンディングも目標の200万円に到達しそうな勢いだ。 ■部活も時間外に重負担  支援事務局を立ち上げたのは、東京学芸大学4年の石原悠太さん(24)。4人の学生で運営している。石原さんは言う。 「この裁判は僕たちにとって他人事ではありません。既に教壇に立っている仲間もいます。労働環境を改善し、より良き教育につなげていきたいです」  一審は敗訴となったが、画期的な前進もあった、と前出の高橋准教授は指摘する。 「これまでの裁判では、教員の残業は『自発的行為』として労働時間が一切認められませんでしたが、今回、初めて労働時間が認められました。これによって教員も1日8時間を超えて勤務させられた場合は、違法になる可能性が出てきました」  かねて中学や高校では部活動の時間外労働の負担の重さに、多くの教員が声をあげてきた。もし訴訟を起こした場合、どうなるのだろう。田中さんの代理人の若生直樹弁護士は言う。 「今回の判決を前提に見た場合、まず部活動は学校教育の一環として学習指導要領に位置付けられています。このため校長が部活動指導を当該教員に任せていた実態が認められれば、教員が自主的に行った活動とはいえず、労基法上の労働時間と判断される可能性があります。長時間の時間外労働が認定されれば、国家賠償の対象になる可能性も十分あると考えられます」  文科省は、取材に対して「学校における働き方改革を一層進めていく。給特法については、来年度実施する勤務実態調査の結果を踏まえ検討する」と答えた。全国の教員の残業代を仮に支払うとなると、年間約9千億円と試算されている。もはや細かな施策で解決できるレベルを超えている。新政権の本腰を入れた取り組みが問われている。(編集部・石田かおる)※AERA 2021年11月29日号

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    マンション高騰の裏で設備がチープ化?ローン返せない共働き夫婦も 超低金利時代の落とし穴

     首都圏で家を買う夫婦のリアルな事例や最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回のテーマはパワーカップルとタワマン。首都圏の新築マンションの価格は高騰しているものの、会社員夫婦の購買意欲は旺盛だ。超低金利などの条件がそれを可能にしている。だが、リスクはないのか。専門家にきいた。 >>【前編:都心タワマン購入パワーカップルの意外な生活感 新築1億円を共働き夫婦が「買える」理由】から続く *     *  *バブル後の景気低迷から、「超低金利時代」と言われて久しい日本。だが、大手デベロッパー出身の不動産コンサルタント、長谷川高さん(長谷川不動産経済社代表)は「超低金利が当たり前という時代を生きてきた世代が、リスクをよく考えずに多額のローンを組んでいる」と警鐘を鳴らす。 「今は、夫婦両輪の“大車輪”のごとく、多額のペアローンを組む例が珍しくない。今は良くても、病気や事故、子育てや転職などで、どちらかの収入が減ったり途絶えたりするリスクは当然ある。借り入れ金額を増やしてしまうことで、教育費などの支出がかさみ、ローンの支払いに窮するケースもよく見られています。借りられる金額が、必ずしも返せる金額ではないということを考えるべき」  高額な借入金である住宅ローンは、組み方を失敗すると、自らの人生を不幸にしてしまうほどのものとも言える。超低金利時代とは言え、固定金利にするか変動金利にするかも、リスクの面から見ると大きな差がある。超長期固定金利の住宅ローン金利が低い今は、原則的には「全期間固定金利(超長期)」でローンを組むことを考えた方がいいそうだ。 「不動産会社の営業マンは、少しでも月々の支払額を安く見せたいので、『ほとんどの方は変動金利で借りています』などと、変動金利を奨めてくることも多い。ですが金利上昇リスクのある変動金利で借りることは、大きなリスクを背負うことになる。『金利が安いのは当たり前』だと思い込むと、こんなはずじゃなかったということになりかねません」(長谷川さん)  また人生100年時代といえども、定年後も長く働くことを前提にローンを組むこともリスクが高い。会社員で高収入である仕事は、一般的に多忙であることが多い。忙しく働き続けることで、体調を崩すことがないとは言い切れない。 「10年ほど前までは、60歳以降は働かない前提で考える人が多かったのが、ここ最近は70歳まで働くことを見据えてローンを考える人が増えている」とは、首都圏を中心に住宅購入における相談実績も多いファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)。40代半ば~後半の住宅購入も増加傾向にある中、「定年後もローンを払い続けるシナリオにしかなり得ないが、本当に大丈夫だろうか」といった相談も増えているという。 「危機管理という視点では、夫婦共働きであっても、『どちらかが働けなくなったら』という視点のもとでローンを組んだ方が良い。『70歳まで健康で働けるはず』と、自分が病気をしない前提で考えることにもリスクがあります。また総支払額だけを見て、『住宅ローンは短めに組んだ方が有利』と、最初から短期間のローンを組むことは危険。長期の住宅ローンを組み、繰り上げ返済をうまく利用して、結果的に短期間で完済することはできても、一旦短期で組んだ住宅ローンを長期にすることは原則としてできません」(飯田さん)  新築マンション価格が高騰し、高止まりが続く中、「今は新築マンションを買うことは避けた方が良い」という声もある。新築マンションの価格は、土地や建物などにデベロッパーの利益やプロモーション費用などを積み上げて価格を算出する原価法から導き出す「積算価格」によって決まる。一方、中古マンションは、主に物件周辺の取引事例から価格を算出するのが一般的だ。現在の新築マンション価格高騰の背景には、アベノミクスや日銀の金融緩和などの影響に加え、東日本大震災の復興や五輪開催に向けたインフラ整備のための人件費の上昇、資材の高騰による工事費や土地価格の上昇などの要因もある。不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。 「物件の条件にもよりますが、一般的には今のような価格高騰の時期に新築マンションを買うと、将来売却する際に、価格が下落する可能性が高いと言わざるを得ません。一方で、ITバブル崩壊後の2002~2004年や、リーマンショック後の2009年、東日本大震災後の2011~2012年などは新築マンション価格が低くなりました。本来であれば、新築マンションは、このように価格が下がるタイミングで買う方が購入額を維持しやすいですし、場合によってはリセール時の値上がり益(キャピタルゲイン)も狙える」  現に、1990年前後の不動産バブル期に高騰した価格で家を買い、30年ほど経った今、その物件を売ろうとしているケースでは、購入時の価格の3分の1~半額以下になることも多いと言う。前出の長谷川さんも、こう続ける。 「私のところに相談に来られる60代前後の方も、『あの時あんなに高い金額で買ったのに、これっぽっちの金額でしか売れないなんて……』と肩を落とす人は多い。資産価値を見込んで買ったとしても、この先絶対に価値が下がらないとは誰にも言えません」  さらに新築マンション価格の高騰の裏で、少しでも価格を抑えるための手段として、面積を狭くし、設備をチープ化している物件が数年前と比べて多く見られるのも、今の傾向だという。 「例えばスロップシンク(バルコニーなどに設置されている流し)やアルコープ(共用廊下から各住戸の玄関部分までの空間)など、数年前まではマンションの標準設備として比較的多く存在していたものが、今の新築マンションではなくなっているケースがよく見られます。“建物全体の顔”であるメインエントランスは、かなり豪華な仕様にしているものが多い一方で、専有部分はチープ化が進んでいる。この傾向から見ても、単に“新築であること”に惑わされず、しっかり物件を見極めることがより大事になってきています」(後藤さん)  もちろん、個々の条件によっては資産価値を維持できる可能性の高い新築マンションもある。大切なのは、「このまま超低金利時代が続くはず」「資産価値が絶対に下がらないはず」「70歳まで働けるはず」などと、先々を楽観的に考え過ぎて動かないことだ。先行き不透明で不安定な時代、「住宅ぐらいは確かな資産価値であってほしい」と願う声も理解できる。だが、人生100年時代、いつ何が起こるか分からない。  会社員でも億ション購入が夢じゃない時代。多額のローンを抱える前に、今一度リスクを想定したシミュレーションを練ってみてはどうだろう。(松岡かすみ) >>【11月27日10時公開】中古マンション争奪戦「10年間、タダで住めたようなもの」世帯年収800万円夫婦も狙う物件とは

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    出場停止処分の石川遼に「残念」 丸山茂樹「彼の家には練習施設があるのに…」

     丸山茂樹氏は、国内男子ツアーで優勝した谷原秀人選手、出場停止の石川遼選手などについて語る。 *  *  *  国内男子ツアーの「三井住友VISA太平洋マスターズ」(11月11~14日、静岡・太平洋C御殿場コース)で、谷原秀人(43)が5年ぶりとなるツアー15勝目を挙げました。  すばらしい勝ち方でしたよね。金谷拓実(23)の追い上げを1打差で振り切って。谷原が言ってるように「プレーオフになったら負ける」と、18番で6メートルのバーディーパットをねじ込みました。流れをしっかりと読みながら全力集中で決めたのは、さすがと言うしかないですね。  谷原は折に触れて、いろんな後輩にアドバイスや気づいたことを言ってるみたいですね。年を重ねてくればいろんなこともありますから、そうやって言葉をかける立場でもあるわけです。まあゴルファーとしては当然のことかなと思いますね。とはいえ当然のことが当然のようにできないのが世の常ですから、そうやってるのはすばらしいことですよね。  1打差の2位だった金谷は2020‐21年シーズンの賞金王争いでトップに立ちました。残りは3試合。こういうデッドヒートは見てて楽しいので、どんな展開になるのかワクワクしますね。  こうした盛り上がりの一方で残念なニュースも入ってきました。石川遼(30)が1カ月の出場停止となりました。残りの3試合には出られません。  遼は10月中旬から下旬にかけ、来シーズンの米下部ツアー出場権をかけた2次予選会に出て、最終予選会に進めずに帰国。日本ゴルフツアー機構によると、14日間の自主隔離期間中に一般客も利用するゴルフ場で2度ラウンド。コーチとゴルフ場関係者と3人で食事と飲酒をしたということです。  彼の家には練習の施設もありますし、何不自由なく隔離生活ができてるのかなと思ったんですけどね。まさかゴルフ場にいたとは。ちょっとこう、久しぶりに遼も気が抜けたんじゃないかと思いますね。  我々にできることはきちんと成績を残してファンのみなさんを魅了することしかないと思うんで、これを機に来年に向けてまた頑張ってほしいです。  最後に「第22回丸山茂樹ジュニアファンデーションゴルフ大会」(11月14日、千葉セントラルGC)が無事に終わりました。  中学・高校生男子の部で総合優勝したのは小林大河君(西武台千葉高3年)です。ほんとに小さいときから参加してくれてて、ジュニア界で名を残すような選手になってくれてますので、非常にうれしいなと。ポテンシャルも相当ありますし、すごく彼には期待をして見てます。  女子の部は鈴木姫琉(ひめる)さん(麗澤中3年)が優勝しました。彼女は「プロになって、丸山さんのように人に機会を与えたり、夢を与えるような人になりたい」とコメントしてくれました。泣けてきますね。いままで一生懸命できる限りのことをやってきてよかったと、改めて思わせてくれました。 丸山茂樹(まるやま・しげき)/1969年9月12日、千葉県市川市生まれ。日本ツアー通算10賞。2000年から米ツアーに本格参戦し、3勝。02年に伊澤利光プロとのコンビでEMCゴルフワールドカップを制した。リオ五輪に続き東京五輪でもゴルフ日本代表監督を務めた。セガサミーホールディングス所属。※週刊朝日  2021年12月3日号

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    【独自】小室圭さん、米大手事務所から断られていた 弁護士が語る“厳しい現実”

    「小室圭さんの実力では無理だと思います」 こう話すのは、全米で「トップ100」と呼ばれる大手弁護士事務所(ビッグロー)のパートナー弁護士のA氏。専門は、海外企業同士のM&Aなど。米国を拠点に世界を飛び回り、収入も桁違い。この姿こそ、小室さんが思い描く将来でもあるようだ。 昨年の秋ごろ、A氏の事務所に、働かせてほしい、と小室さんの「経歴書」のようなレジュメが別の弁護士を通じて届いたという。小室さんは、ニューヨークなど大都市での弁護士の仕事を探しており、ビッグローか、その下の規模のミッドローでM&Aなどをやりたいという。 A氏がそのレジュメを見て思ったのが、冒頭の言葉だ。なかでも、A氏が首をかしげたのがニューヨークのフォーダム大ロースクール(法科大学院)への留学の部分だ。「疑問なのは、彼がLLM(法学修士)のコースに入ったことです。しかも1年学んだ後に、JD(法務博士)コースに編入している。大きな事務所を目指してて、こんな動き方をするなんて聞いたことがない」 LLMとJDというのは、ロースクールでのコース名だ。米国の大学には法学部がなく、弁護士を目指す人は、大学卒業後にJDに入る。ここで3年間学び、事務所に入るのが一般的なパターンだという。 一方、LLMは、法律の資格を持つ外国人留学生が多いといい、「表現として正しいかわかりませんが、キャリアに“箔(はく)をつける”ようなイメージです」。 A氏によると、米国で弁護士となるのに重要なのはJDでの1年目だ。「米国での就職活動は、2年生の終わりの夏休みで終わります。事務所のサマープログラム(インターン)で働き、その後よほどのことがない限り、その事務所からオファーを受けて就職します。どの事務所のプログラムに入れるかは、1年時の成績で決まります。だから学生の競争も壮絶です。本を隠すなどの足の引っ張り合いもあります。小室さんはその1年をLLMに入っています」 ビッグローのインターンの募集は、ハーバードやエール、コロンビアといった有名大学で公募し、最初の書類選考で成績優秀者に絞り、次の面接で決まる。A氏が言う。「採用された学生には、1年目から19万数千ドル(2千万円以上)の給与が支払われます。それも5年くらいは半人前で、彼らから利益は出ません。それでも欲しい人材ということなんです。だから相当厳選します。原則でいえば、ビッグローはインターン以外の方法では採用しないです」 チャンスをつかめる学生は、ほんの一握りだ。小室さんは、そもそもLLMに入った時点で、希望するビッグローへの道は閉ざされたといっていい。なぜLLMに入ったのだろうか? A氏が話す。「こう言っては何ですが、彼の経歴に目を見張るモノはありません。あるとすれば眞子さまのフィアンセという一点。それでも奨学金を取得できたり、JDへ編入したり、弁護士が出てきて仕事を探したり。知恵をつけている人がいるんでしょう」 では、ビッグローは無理でも、M&Aは他でもできるのだろうか?「米国には約43万の事務所がありますが、M&Aの70%超は『トップ100』が扱っています。小室さんが弁護士として働くにはM&Aにこだわらないことですね。移民法の弁護士などは圧倒的に多い。日本人も多いです。もうからないので人気はないのですが」 そして、こう続けた。「詳しいことは申し上げられませんが、彼の『経歴書』を見る限り、とても“権威”が好きなんだと思います。M&Aも彼からすれば格好良く見えるんでしょうけど、実際は相当厳しい世界です。パートナー弁護士になるのは10年後くらい。それまで生き残っているのはわずかです。彼がそもそも弁護士という職業に向いているのか……。野心家だと思うので、ベンチャーのような起業家とかが向いているような気がします」(本誌・矢崎慶一)※週刊朝日  2021年9月17日号に加筆

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    小室圭さん帰国便同乗者が目撃した姿「彼はまるでエグゼクティブ」 自宅前では深々とお辞儀

    颯爽と歩きながら、小室圭さんがアメリカから帰国した。日本の地を踏むのは2018年8月に渡米して以来、3年2か月ぶりだ。  成田空港は多数の報道関係者が集まっており、ピリピリムード。報道陣に対して、カメラのフラッシュ禁止、声掛けも禁止といった規制が敷かれていた。報道関係者からは「どうして?」と不満の声も漏れていた。  午後3時20分過ぎ、成田空港に飛行機が到着。一般客が飛行機から降りたあと、小室さんが、報道陣の前に姿を現した。警護と思われる男性やキャビンアテンダント(CA)の女性などに囲まれていた。キャリーバックを転がしながら、白マスクに、濃紺のスーツ、ストライプの入ったシャツ、ノーネクタイといういで立ちで、髪の毛は後ろに縛っていた。  飛行機から出てきた小室さんは報道陣に一礼したあと、新型コロナウイルスの抗原検査、そして入国手続きに進んだと見られる。  小室さんは機内でどのような様子だったのか。偶然、同乗していた男性(51)に話を聞くことができた。 「私がファーストクラスで座っていると、ドアが閉まるギリギリになって小室さんが搭乗してきました。まるでエグゼクティブのようでした。後ろの髪を結っていたので、すぐに彼だとわかりましたね。彼一人に女性CAが2人くらいついて、会話しながら案内されて入ってきました」  当初はエコノミークラスのチケットを買ったと報じられていたが、この男性はこう語る。 「右の列のビジネスクラスの前方の席で、窓際に座っていましたね。私の席から右斜め後ろのほうの席でした。ただ、カーテンでファーストクラスとは仕切られていたので彼の表情などはわからなかったです」  男性は飛行機から降りた後、抗原検査のために、大きめの部屋に移ったという。40分ほどその部屋に滞在したが、そこに小室さんの姿はなかった。 「今か今かと待っていたのに、残念でした」(男性)  そのころ、到着ロビーには多数の報道陣のほか、「皇室系Youtuber」といったタスキをかけた人物や一般客も小室さんの姿を一目見ようと集まっていた。その数、50~60人ほど。  津田沼から来たという白髪交じりの一般男性は手にハンディカムを持ち、小室さんを待ち構えていた。妻に頼まれて自宅で見るために撮りに来たという。  しかし、小室さんは一般客が使う到着ロビーを通らず、地下駐車場から車に乗り込み、成田空港を後にした。「地下駐車場から空港を出たらしい」と男性に知らせると、「こんなに待っていたのに……」と不満げな様子だった。  小室さんを乗せた乗用車が向かった先は、母・佳代さんが住む横浜の自宅だった。自宅前は朝から報道陣が詰めかけ、警察は臨時の派出所を設置し、周辺警備に当たるなど、ものものしい雰囲気が漂っていた。夕方には100人を超える報道陣が押し寄せており、ベランダから様子を一目見ようとする住民の姿も見られた。  19時過ぎ、小室さんを乗せた車が到着。警察が後部座席のドアを開け、車から出てきた。小室さんは、報道陣から「どんなお気持ちですか」と声を掛けられたが、反応は示さず、自宅マンションの入り口で2回ほど深々とお辞儀をして、黒いスーツを着た男性らと中に消えていった。  近くに住む60代の男性はこう語る。 「ヘリコプターの音がすごくて『何事か』と思って見に来た。3年前の婚約会見後のときと同じような状況だと感じましたね。小室さんがニューヨークに行ってからは、静かになっていたんだけど……。またしばらく騒々しくなるのかなと思っています。どの家庭も問題を抱えていますし、小室さんと眞子さまも早くアメリカで幸せになってほしいですね」    小室さんは今後、自宅で2週間の隔離を終え、その後、記者会見に臨むと見られている。果たして何を語るか。注目が集まる。 (AERAdot.編集部/上田耕司、飯塚大和、吉崎洋夫)

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    きまぐれクックが「上海ガニ購入」を謝罪も、いまだにヤフオク!で「上海蟹」表記の商品が並ぶナゾ

     上海料理の秋冬の風物詩といえば上海ガニ。ところが、先月下旬、YouTubeチャンネル「きまぐれクック」のかねこが生きた上海ガニをネットオークションサービス「ヤフオク!」で購入して調理する様子を投稿したところ、「外来生物法」違反の疑いで環境省が調査に乗り出す事態となった。  事の発端となったのは、10月31日に投稿した「中国からまだ生きてる『アノ食材』が届いた。ヤバすぎる。」という動画。これに対して、一部の視聴者から、「外来生物法に違反するのではないか」という指摘の声が上がった。指摘を受けて、かねこは動画を削除。11月13日に謝罪の動画を投稿した。  謝罪のなかで、かねこは上海ガニを購入した経緯について、詳細に語った。普段から頻繁にヤフオク!で魚などを購入していると、マイページのお薦め欄にさまざまな魚介類が表示されるという。「ある日そこに、上海ガニが表示されて、特定外来生物だということをまったく知らずに購入しました」(謝罪動画でのコメント)。数日後、東京の輸入業者から生きた上海ガニがひもでぐるぐる巻きにされた状態で到着。その夜、カニを調理して、撮影を行い、YouTubeにアップしたところ、今回の事態となった。 「ぼくは魚介類の料理の知識は多少はある方なんですけれど、外来生物に関する知識が本当にゼロに等しかった。それで、こういうことが起こってしまった」(謝罪動画でのコメント) 何が違法行為に当たるのか?  今回のケースの何が違法行為に当たるのか? 「問題は購入許可を持っていないYouTuberの方に上海ガニを販売したこと。売った側、買った側の両方が違法行為になります」  環境省外来生物対策室の谷口晃基さんは、こう説明する。  上海ガニは中国南部が原産地だ。正式には「チュウゴクモクズガニ」と呼ばれる。 「国内にもモクズガニとオガサワラモクズガニという種が自然に分布していますが、この在来2種を除いたすべてのモクズガニ族が特定外来生物に指定されており、上海ガニもこれに該当します」(谷口さん)  特定外来生物に指定された種は「外来生物法(正式名:特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」に基づく取り扱い規制がかかり、飼育や販売、輸入などの行為が原則、禁止される。 「例えば、上海ガニを飼育する場合には、あらかじめ、許可をとっていただく必要があります。ただし、動物園や植物園といった公的な展示目的、または学術的な目的のみが許可対象で、ペット目的での飼育について許可は下りません」(谷口さん) 実際に摘発された事例も  罰則規定も設けられており、許可を得ずに飼育した場合、3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金が科せられる。  中華レストランなどで提供される上海ガニについてはどうなのか? 「許可を受けた業者が中国から上海ガニを輸入して、同様に許可を受けたレストランに売るという行為については違法行為にはあたりません」(谷口さん)  一方、上海ガニを違法に販売して摘発された事例もある。2015年、許可を得ていない業者に上海ガニを販売した東京・上野のアメ横商店街の中国食材店の経営者と、購入した水産物輸入業者の社員が特定外来生物被害防止法違反の疑いで書類送検された。18年、許可を得ずに販売目的で上海ガニを飼っていた横浜市の鮮魚販売業の社長と、魚介類販売店の店主が書類送検されたこともある。  では、今回のケースも摘発されるのか? 「YouTuberの方がどのような業者から上海ガニを購入したのか、現在、調査中です」(谷口さん) 筆者にも届いた「上海ガニ」のお薦め  ヤフオク!は今回の事態を受けて、16日に「モクズガニの出品について」というお知らせを出し、注意喚起を行った。そこには「『チュウゴクモクズガニ(通称:上海ガニ)』をはじめとするモクズガニ属の種(※在来の2種を除く)は、外来生物法において特定外来生物に指定されています」と書かれている(※は筆者による)。さらに、「ガイドラインに違反する商品については、発見次第削除等の措置を実施いたします。(規制の対象種であることが示唆されるものを含みます)」とある。  ところが、その5日後、記者の元にヤフオク!からお薦め商品のメールが届いた。それを開くと、「上海蟹」のタイトル文字が目に飛び込んできた。添えられた写真にはたくさんの暗緑色のカニが写っている。だが、環境省に話を聞くと、「上海ガニの国内での繁殖は把握しておりません」(谷口さん)という。「国内にいない」となれば、違法に輸入された上海ガニを売っているのだろうか。  ヤフオク!を運営するヤフージャパンに話を聞くと、「その商品の説明書きには鹿児島産のモクズガニとあります。当然、国産種で、違法ではなく、出品できる状態です」(ヤフージャパン広報担当者)との回答が返ってきた。  続けて、「商品が国産種のモクズガニなら、『上海蟹』と表記すると『産地偽装』になるのではないか」と聞くと、質問に対する明確な回答はなく、「国産種、外来種の判別が難しいものに関しては、適宜、環境省と連携のうえ、措置を実施させていただいています」(ヤフージャパン広報担当者)と繰り返すだけだった。 「どこに落とし穴があるか分からない」  日本在来のモクズガニと上海ガニは非常によく似ているが、環境省は「注意深く観察すれば識別可能である」としている。  ヤフージャパンは「ガイドラインに違反する出品に関しては、24時間、365日、人的パトロールおよび、AIの活用も行っている」そうだが、上海ガニの識別についてはかなり難しそうだ。さいわい、上海ガニの日本における繁殖は確認されていない。  かねこは謝罪動画のなかで、こう語った。 「特定外来生物とか、取り引きしてはダメなものって、魚介類だけじゃないと思っています。いま、インターネットで何でも買える時代。個人でも売買ができてしまう時代なので、ほんとうに気をつけないといけないなと思いました。どこに落とし穴があるか分からない」  ネット通販での買い物が当たり前になり、コロナ禍で利用する機会も増えた。自分の身は自分で守る意識が必要だろう。(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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    友野一希がGPロシア大会で「悔しい」3位 観客惹き込む「浪花のエンターテイナー」の魅力

     フィギュアスケートのグランプリシリーズ最終戦、ロシア大会。羽生結弦不在の大会で、友野一希が躍進した。11月27日に行われたフリーの演技を終え、自己ベストを大きく更新して総合3位で表彰台に上った。試合前のランキングでは、参加12選手中7番目という位置付けだったが、大健闘の銅メダル獲得だ。  ショートプログラムでは、4回転2本を含むすべてのジャンプを加点付きで着氷。スピン・ステップの要素全てでも最高のレベル4を獲得して、首位に立った。  迎えたフリーは、最終滑走。冒頭の4回転3回転コンビネーションジャンプは加点つきで着氷するものの、ジャンプで綻びが出て順位を下げる。しかし、スピン・ステップではショートと同様にすべての要素をレベル4で揃え、表彰台を死守した。  SPの後の記者会見では、「フリーは誰よりも練習した自信がある」と語った友野。その成果が如実に出たのが、スピンのスコアだ。数あるエレメンツ(実施要素)の中でも、スピンほど地道な練習量が目に見えるものはない。今大会では、GOE(出来栄え点)を含めて、合計23点以上を稼ぎ出した。  フリーの「ラ・ラ・ランド」では4回転ジャンプを2種類3本演技構成に入れているが、ジャンプが崩れた時にもスピンのレベルを保つことが出来るのが、本来の友野の強み。スピード感のある正確なスピンでプログラムの流れを取り戻し、全身をフルに使って舞うドラマチックなコレオシークエンスで締めくくる。  今大会でも、他国選手に手厳しい事で知られるロシアの観客が、熱狂的と言っていいほどの歓声を挙げて友野のコレオシークエンスを称賛した。加点1.86は、ショート4位からごぼう抜きでフリートップのミハル・コリャダの1.36を大きく上回って、全選手中トップ。  160センチと小柄な身体だが、観客との一体感を醸成する能力には定評がある。ただ楽曲の物語をなぞるだけではない。伸びやかなスケーティングと躍動感あふれるステップで、彼の世界の中に一気に観客を惹き込んでいく。ついたあだ名が、「浪花のエンターテイナー」。  今季GP1戦目のイタリア大会では、武器である筈のスピンの不調に苦しみ6位。しかし、海外にもファンが多い友野は、エキシビションに招待された。  この春、同志社大学を卒業したばかり。社会人になった同級生を思って自ら振り付けた今季のエキシビションは、スーツにネクタイという姿で踊る「Bills」。ブリーフケースを手に踊った“イタリア出張版”は、観客の戻った会場を大いに盛り上げた。タッグを組む振付師のミーシャ・ジー氏同様、エキシビションになくてはならない存在だが、今回のロシア大会で、競技者としての実力も世に大きく示したことになる。  28日には、招待ではなく堂々のメダリストとして、“ロシア出張版”を舞う予定だ。  朗らかなキャラクターで、チームジャパンのムードメーカーとしての存在感も大きい。明治大学と法政大学の学生が企画した手作りのアイスショーでは、同期生のために飛び入りでもぎり役を買って出た。コロナ禍でのオンライントークショーでも、人望とトークスキルを活かして大活躍。銅メダル獲得後には、鍵山優真や横井ゆは菜ら後輩選手が、SNSを通じてすぐさま健闘を称賛した。  ラーメンとサウナが大好きな23歳。試合後のインタビューでは、  「メダルを取れてうれしいけど、前回と違って表彰台に乗れて悔しい気持ちがあるのがビックリ」  と、銅メダルにも自己ベストにも甘んじない強さを見せた。表彰台で手に入れた自信と、フリープログラムで思い通りの演技が出来なかった悔しさと。双方を胸に向かう次戦は、北京五輪に繋がる全日本選手権だ。  一躍代表に名乗りを上げた友野一希の、全日本での活躍に注目したい。 (菱守葵)  ※週刊朝日オンライン限定記事

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    17時間前

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    沢田研二が「京都市文化功労者」に ファンが近影にざわつく!

     コロナ禍で中断していたライブ活動を再開させ、目下、全国ツアー中の沢田研二。そんな沢田が11月22日、令和3年度京都市文化功労者として表彰される。日本レコード大賞、ゴールデンアロー賞など音楽・芸能分野の賞を総なめしてきた沢田だが、今回のような行政からの表彰を受けるのは初めてのことだ。  京都市文化功労者は1968年創設。京都市の文化の向上に多大な功労のあった者を対象に、文化人、学者らからなる京都市文化功労者審査会が選定する。昨年までに片岡仁左衛門(十三代目)、千宗室、瀬戸内寂聴ら287人が受賞している。  京都市の担当者によると今回、沢田が選定されたのは京都出身の音楽家・俳優として多大な活躍が認められたため。67年、ザ・タイガースでのデビュー以来、50年以上にわたり間断なく活躍し続けていることが評価されたようだ。  近年、安倍晋三政権を痛烈に批判するなど、行政とは一定の距離を置いている印象のあった沢田。しかし、今回に関しては「代理人の方を通して受賞していただけるか打診したところ、ご快諾いただけました」(前出の担当者)という。やはり故郷・京都には格別の思い入れがあるのだろうか。  SNS上では、ファンたちが「おめでとう」「うれしすぎる」など大きく反応。また、京都市がホームページ上で公開した広報資料に掲載された沢田の写真もちょっとした話題になった。近年、公の場にめったに姿を見せず、メディアへの画像提供にもシビアな沢田だけに、ファンにとっては現在の様子がわかる写真一枚すら貴重な情報。だが、掲載されたのは正面を向いて無表情という免許証のようなお堅い一枚で、ファンからは「痩せた」「先生みたい」と、うれしいツッコミの声も上がった。 「写真は他の受賞者と同じく沢田さんサイドにお願いしてマネジャーさんに送っていただきました。こんなに話題になるとは、想像以上でした(笑)」(同)  ちなみに、11月15日に京都市のホームページ上で情報公開された時点では、沢田のプロフィル記載に若干の誤記があったのだが、何人かのファンが問い合わせて即座に訂正させるという珍事も起こっていたようだ。  11月22日の表彰式は、同日に福岡市でのライブが重なったこともあり欠席の沢田。表彰を喜ぶ姿が見られないのは残念だが、ライブのMCで何かしら感慨を語ってくれることを期待したい。(中将タカノリ)※週刊朝日  2021年12月3日号

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    生田斗真×関ジャニ∞「どの世界線にきたんだろう」修羅場を越えてきた友情とタフネス

     生田斗真が主演を務める映画「土竜の唄 FINAL」が全国公開中だ。2014年公開の1作目から本作まで3作品、主題歌を担当した関ジャニ∞のメンバーと語り合った。A ERA 2021年11月29日号から。 *  *  * ──人気漫画を原作にした映画「土竜の唄」シリーズが3作目でファイナルを迎えた。潜入捜査官・菊川玲二を演じる主演の生田斗真と、主題歌を歌う関ジャニ∞は、ジャニーズJr.時代からの旧知の仲だ。シリーズでのタッグは、1作目の制作がスタートした2013年から約8年に及んだ。 生田:関ジャニ∞のみんなとは10代の半ばからずっと一緒にいて、まさか映画の主演俳優とその映画を支えるアーティストという関係性になれるなんて想像もしてなかったので、感慨深いなあといつも思います。 横山:このメンバーはみんなジュニアの本流から外れた感じがあったから、それぞれ絶対売れると思ってなくて(笑)、「どうしよう」と話し合ったこともありました。その斗真が日本を代表する俳優のひとりとして、三池崇史監督と脚本の宮藤官九郎さんと豪華なキャストの真ん中にいて、僕らが映画の主題歌を歌わせてもらってるなんて、あの頃の自分に見せてやりたいです。でも、斗真は本当はそんな男じゃないんですよ。しょうもないことばっかやりますし(笑)。 生田:昔、関ジャニ∞が、「ANOTHER」っていう舞台を大阪でやってて、たまに東京からゲストでジュニアが呼ばれるんですよ。それで僕も何日間か出たことがあって、横(横山)が休憩時間に楽屋を案内してくれたんです。そうしたら曲のイントロが流れて、横が「俺、出番や!」って。 全員:(笑)。 生田:それで走っていって。「もう間に合わんやん」って。 横山:俺、あの時3階まで行くのめちゃくちゃ速かったで。 生田:きっと俺が来たから喜んでくれて、案内してたんだよね。 横山:僕らがお客さん呼べてないから、東京のジュニアに来てもらってたので、申し訳なさもあったんですよ。だから、もてなさなあかんって。 村上:本番終わってからでええねんけどな(笑)。 大倉:(笑)確かに。気遣ってたんやな。 ■大人のかっこよさ ──ファイナルの主題歌「稲妻ブルース」には、「成熟を感じる」と生田は話す。 生田:関ジャニ∞って20代の頃は前に前に出るエネルギッシュさがあったんだけど、この曲は「ド派手に行こうぜ」とか歌ってるのに、今までにはない大人のかっこよさを感じたんです。まいど!な時期を経て、グループとして成熟したんだなと思いました。 大倉:ファイナルで尻すぼみになるわけにはいかないので、これまでの勢いも汲みつつ、より男らしく派手な曲にしたいと思いました。歌詞で歌われている“絆”っていうのも、若い頃感じてたものとは違うし。 生田:「最高で最強のこのキズナ」って歌詞にグッとくるんです。玲二と兄貴分のパピヨンのことを歌っているようにも聞こえるし、関ジャニ∞と僕のことを歌っているようにも聞こえて。 村上:文字にするのは簡単ですけど、苦楽を共にした時間がないと、響き方って違いますからね。この曲はかなりディスカッションして作っていったので、映画サイドに随分待ってもらって、ようやく我々も納得できるデモが上がったんです。 生田:すごくこだわって作ってくれているのが伝わってうれしかった。僕らが映画にかけた思いと同じ、「前作に負けるわけにはいかない」っていう気合を感じました。 人との絆根底にある ──シリーズを通して仕事観、友情観、恋愛観などが描かれるが、一番共感するのはどんなことか。 安田:友情ですね。人間が生きる上で、友情は切っても切り離せないものだと思うけど、それがほどけてしまうこともある。でも、ちぎれかけたとしても、まだ友情が残っている可能性があって。そういう部分に打たれました。 丸山:3作全部“それぞれの正義”が描かれていますが、ファイナルはより強く感じました。自分が正しいと思ってやることが、ある人にとっては悪のこともある。それが思いもよらぬ展開になっていくのが刺さりました。 大倉:いろんな要素があるのに、それがごちゃごちゃせずにぐっとくるのは人との絆が根底に描かれているからだと思うし。僕らもライブを作っているけど、笑いあり涙ありで、全部を組み込むのはすごく難しい。でも、それが成立したエンタメになっているのが大好きなところで、それを熱く伝えられるのは斗真くんの説得力だと思います。 横山:斗真は義理人情に厚いし、お酒飲むとジャニーズのエンタメについて熱く語ったりする。そういう斗真の人柄が、玲二とリンクして人を引き付けるんやろうなって。毎回全裸になっているオープニングも斗真らしい。 生田:僕が一番共感したのは、パート1で玲二が童貞を捨てるシーンで果てそうになると、上司役の皆川猿時さんや遠藤憲一さんの顔を思い出してこらえようとするところですね。 全員:(笑)。 生田:あれは、男ならみんなわかるだろうっていう(笑)。 いまの「世界線」に感動 ──シリーズのスタートから約8年。お互いどう進化したのか。 生田:オリンピックの番組で関ジャニ∞が歌ってヒナ(村上)が司会やっているのを観て、「どの世界線に来たんだろう」という不思議な気持ちになりました。オリンピックに感動しつつ、その光景にも感動するっていう。 村上:1作目の時は斗真に対して、「すごいな。おめでとう」という気持ちがありましたけど、ファイナルまでの8年の間にいろいろな経験をして、今ではこの作品の主役であることにそんなに驚きがない、というのが進化を表していると思います。 生田:自分では8年でどう成長できたのかわからないですけど、例えば膨大なセリフを覚える時とか、もうすぐ舞台の初日なのに「これじゃ間に合わない」と思う時とか、そうやって追い込まれる場面は何度かあったんです。でも、それを乗り越えてきた経験によって、もう「何とかなる」ってわかるんですよね。自分を信じる力は養ってこれたのかなと思います。 村上:確かに何が起きても驚かなくなってきたな。ハプニングがあっても、「あ、このパターンね」って思って動じなくなったし、実際何とかなってしまう。 生田:またオリンピックの話になっちゃうけど、(櫻井)翔くんも司会をやってて。生放送で「誰かが間に合わない」みたいな時は、昔だったらドキドキしながら観てたけど、もうドキドキしないもん。「絶対何とかするんだろうな」って。関ジャニ∞のみんなも修羅場をくぐってきた人たちだから、そのタフさはなかなか他のグループが勝てない部分だと思いますね。 村上:経験したくない修羅場もありましたけど(笑)、結果として糧になっていますからね。 (構成/ライター・小松香里)※AERA 2021年11月29日号

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    小室さんと眞子さん夫婦共働きを考える 女性皇族の結婚相手の経済力頼みは「不幸」?

     小室眞子さんが、司法試験受験中の夫の圭さんを支える──。結婚相手の経済力に頼る内親王の結婚システムは転換点を迎えている。AERA 2021年11月29日号から。 *  *  *  11月14日朝(現地時間)、眞子さんは新しい人生の舞台、ニューヨークに到着した。圭さんは法律事務所に勤めながら、来年2月にニューヨーク州の司法試験を再受験する。眞子さんは「司法試験受験中の夫」を持つ一人の女性。なんの問題もない。  と思っているのは私だけではない。と言いたいので、1冊の本を紹介する。『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』だ。 ■女の人を不幸にする  政治学者の原武史さんと作家の三浦しをんさんの共著で、深くて楽しい対談で構成されている。三浦さんが熱く語ったのは、「内親王の就職」だった。2人の結婚についてはこう言う。 「あの騒動で一番思うのは、なぜ男性の職業や稼ぎだけが問題になるのか、ということです。結婚相手がまだ稼げない状況にあるのならば、女性が稼げばいいのではと思うんですが、内親王の結婚は『専業主婦になること』を基本的な前提としているのかなと。(略)それって時代遅れじゃありませんか?」  18年8月、小室さんが米国留学に旅立ってすぐの発言だが、今でも全く違和感がない。三浦さんは結婚相手の経済力に頼る内親王の結婚システムを、「これでは女の人を不幸にしますよ」と言った。女性皇族も「女の人」という立場で語っているのだ。そして、こんな提案をする。 「例えば会社で自分の仕事はしつつ、祭祀のスケジュールに合わせて有給休暇を取得することもできるんじゃないですか?」  働くことは、人生への対応力。それが三浦さんの考え方だ。 ■そんなの気にしないで  眞子さんは博物館で勤務をしていた。だが、三浦さんの提案した姿とはだいぶ違った。だからこそ、これからの眞子さんに期待したくなる。三浦さんのこんな言葉があったからだ。 「内親王だって自分のやりたい仕事をしたらいいのに。好きな人と自由に結婚するためにも。実力で一般企業に入社しても、きっとコネとか言われちゃうんだろうけど、そんなの気にしなきゃいいのです」  眞子さんの渡米を伝えるNHKのニュースは、出発時も到着時もこう言っていた。 「関係者によりますと、小室さんと眞子さんは小室さんの知人らの協力も得て見つけたニューヨーク州の賃貸マンションで暮らし、夫婦共働きでの生活も考えているということです」  共働きという方向性を報じていたのは、NHKだけではない。眞子さんが「ミュージアムやギャラリーで勤務する」と予測するメディアは複数あった。「最有力候補はメトロポリタン美術館」という報道も「メトロポリタンでなく、アメリカ自然史博物館」という報道もあった。  どちらなのかどころか、就職するのかどうかも本当のところは知るすべもない。だけど、眞子さんがパンツをはいてニューヨークで働く。その姿はカッコいいだろうな、と思う。インターメディアテクでのパンツ姿がよく似合っていたからだ。  メトロポリタン美術館でも、アメリカ自然史博物館でも、他のどこかでも、眞子さんが就職すれば「特別扱い」と言われることだろう。  だから最後にもう一度、三浦さんに登場いただく。 「そんなの気にしなきゃいいのです」 (コラムニスト・矢部万紀子)※AERA 2021年11月29日号より抜粋

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    来季ドラフトは高校生捕手が豊作? 明治神宮大会で“違い”見せた選手たち

     高校の部は大阪桐蔭、大学の部は中央学院大の優勝で幕を閉じた明治神宮野球大会。来年のドラフト候補にとっては最初の大きなアピールの場となったが、活躍の光った候補選手を中心に紹介したいと思う。今回は高校生編だ。なお取り上げるのは、2022年にドラフト対象となる選手に限定している。  投手は2018年の奥川恭伸(星稜→ヤクルト)や前回大会の高橋宏斗(中京大中京→中日)のような上位指名が確実視されるような選手は不在という印象だったが、一冬越えた時の成長ぶりに注目したいのが森山陽一郎(広陵)だ。中国大会では4試合すべてに登板して防御率0.65と見事なピッチングを見せてチームの優勝に大きく貢献。神宮大会では大阪桐蔭との決勝戦こそ4回途中5失点(自責点4)と打ち込まれて負け投手となったものの、3試合全てに先発し、エースとしての役割は果たした。  今大会で最大の武器となっていたのがカーブだ。一度浮いてから鋭くブレーキのかかるボールで、落差の大きさもかなりのものがある。対戦した打者は目線がどうしても上がり、なかなか自分のスイングをすることができていなかった。変化の大きいボールはコントロールすることが難しいが、ストレートと変わらない腕の振りで低めにしっかり投げられるのは得難い長所である。  もうひとつの武器であるフォークも少し制球はばらつくもののブレーキがあり、ストレートを見せ球にしてカーブとフォークで打ちとるというパターンが目立った。一方で課題となるのはストレートのスピードだ。今大会での最速は141キロと一定の速さはあるものの、ほとんどが130キロ台中盤から後半で、腕を振っている割にはボールの勢いがそれほど感じられなかった。冬の間に出力がアップして、コンスタントに140キロ台中盤をマークするようになれば、変化球がさらに生きてくるだろう。  ストレートの強さが目を引いたのが辻田旭輝(クラーク国際)と松林幸紀(広陵)の2人だ。辻田は初戦の九州国際大付戦で4回2/3を投げて4失点(自責点3)で負け投手となったが、ストレートの最速は143キロをマーク。ステップの幅が狭く、上半身の強さで投げるフォームのため抑え込み切れずに浮くボールも目立ったものの、指にかかった時のストレートは勢いがあった。中指を痛めた影響で北海道大会に続いて背番号3だったが、春は万全の状態で不動のエースとしての活躍を期待したい。松林は決勝戦で森山の後の2番手として登板し、最速146キロをマークしてスタンドを沸かせた。左肩の開きもリリースも早く、タイミングを合わされやすいのは課題だが、馬力は大きな魅力である。森山と切磋琢磨してさらなる成長を期待したい。  野手でまず目立ったのが田代旭(花巻東)、松尾汐恩(大阪桐蔭)、野田海人(九州国際大付)の捕手3人だ。田代は注目を集めた佐々木麟太郎(1年)の後ろを打っているが、ヘッドを中に入れるスタイルなど佐々木と重なる部分も多く、そのフルスイングは迫力十分。準々決勝の高知戦ではライトスタンド中段へ叩き込むホームランを放って見せた。地肩の強さもあるだけにスローイングの精度が上がれば楽しみな存在だ。  松尾も強打が魅力のキャッチャーで、決勝戦では2本のホームランを含む4安打4打点の大活躍。少しバットの引きが大きいのは気になるが、巧みなリストワークで内角をさばくのも上手い。守備面は少し不安定なところもあるが、フットワークの良さとコンパクトで鋭い腕の振りも目立つ。野田は投手としても最速145キロをマークした抜群の強肩が魅力。少しフットワークが雑になることがあるのは課題だが、低くて伸びるセカンド送球は圧倒的なものがある。打撃の確実性と守備の丁寧さが出てくれば高校からのプロ入りも狙えるだろう。  それ以外の野手では成田陸(国学院久我山・一塁手)、丸山一喜(大阪桐蔭・一塁手)、伊藤櫂人(大阪桐蔭・三塁手)、下川辺隼人(国学院久我山・遊撃手)、海老根優大(大阪桐蔭・外野手)、内海優太(広陵・外野手)、黒田義信(九州国際大付・外野手)などが目立ったが、スケールが感じられたのは海老根、内海、黒田の外野手3人だ。  海老根は強肩とフルスイングの迫力が魅力。少しコントロールは課題だが、センターから見せる返球の勢いは圧倒的なものがある。初戦の敦賀気比戦ではレフトスタンド中段に叩き込むスリーランを放ち、長打力も見せた。攻守にうまくまとまりが出てくるかが今後の注目ポイントとなりそうだ。内海は形の良さが目立つ左の大型打者。パワーも十分だが決して力任せではなく、無駄な動きがほとんどないのが長所。3試合連続で安打、打点をマークし、初戦の明秀日立戦ではライトポール際に一発も放っている。投手も務める肩の強さと大型ながら脚力があるのも魅力だ。  黒田は抜群のスピードとパンチ力が持ち味。脚力があるだけでなく、全力疾走を怠らず、常に次の塁を狙う意識の高さも光る。海老根、内海と比べると少し細身だが、全身のバネを感じるスイングで長打力も申し分なく、準決勝の大阪桐蔭戦では一時勝ち越しとなるホームランも放っている。総合力では全国でも屈指の外野手と言えるだろう。  投手、野手ともに1年生の目立つ大会だったが、それでも今後が楽しみな選手は決して少なくない。来春の選抜高校野球では、さらに一回り成長したプレーを見せてくれることを期待したい。(文・西尾典文) ●プロフィール西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

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    2万円近く年金が増えた! 意外と知らない厚生年金「経過的加算」

     簡単に年金を増やせるのに、なぜかほとんど知られていない制度がある。厚生年金の「経過的加算」がそれ。一定の条件の60歳以上の人が会社で働けば、それだけで1年で約2万円も年金が増えるのだ。しかも、今の50歳代以上ならほぼ全員が使えるという。年金世代、準備世代必読! *  *  * 「よし、予定どおり順調に増えている」  10月初旬、今年度の「ねんきん定期便」が自宅に届いたとき、記者はこう感じた。定期便のある部分の金額が昨年より約1万9400円も増えていたのだ。 「それにしても、1年でこんなに増えるとは……。すごい威力だ」  記者は62歳。出向元の会社の定年が数年前、60歳から65歳に延びたため、今も勤務を続けている。  金額が増えた定期便の「ある部分」とは、65歳以上の老齢厚生年金の欄の「経過的加算部分」(以下、経過的加算)と書かれているところだ。ここ数年の推移をみると、60歳になった19年はわずか「337円」だったのが、昨年20年は一気に「約1万5300円」になり、今年はそれが「約3万4700円」になった。確かにこの1年で2万円近く増えている。  実はこの「経過的加算」こそ、現在の50歳代、60歳代が60歳以降に年金額を一番簡単に増やせる方策なのだ。しかし、この制度、残念ながら一般人の間での知名度はほぼ「ゼロ」。いったい、「経過的加算」とは何なのか。  それを知るには年金の歴史を振り返る必要がある。  厚生年金ができたのは第2次世界大戦中の1944年にまでさかのぼる。戦後の混乱期を経て54年に法律が全面改正され、今に至る厚生年金の基礎ができた。老齢年金は「定額部分」と「所得比例部分(現在の報酬比例部分)」の2階建てという形ができたのだ。  その後、高度経済成長を経て年金額はどんどん上がっていき、再び86年に大改正を迎える。この改正では全員共通の「老齢基礎年金」が新設された。支給開始年齢は高齢化に合わせて60歳から65歳に引き上げられた。  年金の世界では86年より前の法律を「旧法」、後を「新法」と呼んでいる。厚生年金は旧法では「定額部分+所得比例部分」だったのが、新法では「老齢基礎年金+報酬比例部分」に変わったわけだ。  しかし、この定額部分と老齢基礎年金、計算方式の違いなどで、少額だが微妙に定額部分のほうが高くなってしまうのである。となると、厄介な事態が生じる。  新法で支給開始は65歳からに変わったが、激変緩和措置で60歳代前半は「特別支給」という形で、これまでと同様、60歳から定額部分を含む厚生年金が支給されていた(現在、「特別支給」は廃止途上)。すると、65歳になって定額部分が老齢基礎年金に切り替わったときに年金額が下がってしまう。  そこで、その減額分を補填するために考え出されたのが「経過的加算」である。要するに、その差額を補填するのだ。  老齢基礎年金は20歳から60歳までの40年間の加入で、一方、厚生年金の定額部分は会社に勤めた全期間だ。従って、「経過的加算」の対象期間は二つの重なる部分、「20歳から60歳までで会社に勤めていた期間」になる。そして老齢基礎年金の加入期間40年に合わせて、「経過的加算」の計算では定額部分は「480カ月(40年)分」が上限になっている。  しかし、これだと、もともと二つの差は少額だから「経過的加算」は大きな金額にはならない。ところが、ここに「空白」ともとれる期間が存在する。「20歳前」と「60歳以降」の期間である。この期間に定額部分が480カ月に届いていない人が会社で働くと、定額部分のみがどんどん膨らんでいくのだ。それは、「経過的加算」が増えていくことにほかならない。  これが、記者のように60歳代で会社で働いている人に起きている現象だ。今受給を開始する人たちには60歳代前半の定額部分は支給されていないが、65歳のときに改めて計算されて「経過的加算」が支給され続けている。  それでは、なぜ、今の年金世代は定額部分が480カ月に届いていないのか。これこそ今の50歳代以上に共通した現象だ。この世代が若いころは、20歳以上の大学生は年金制度への加入が義務付けられていなかったのだ。  会社に入って厚生年金に加入して初めて公的年金制度に関わる、こんな人がほとんどだった。すると、ストレートに大学まで卒業しても約2年、浪人や留年をしたりすると3~4年、40年に足りなくなる。そんな人が60歳を過ぎて会社で働くと、それだけで480カ月に達するまで「経過的加算」が増えるのである。  大学生が強制加入になったのは91年4月から。従って、これ以前に20歳になった大学生、つまり「71年4月1日以前」に生まれた人(今の50歳以上)に特有の問題だ。  1カ月の定額単価は「1628円」(今年度の価格)。1年会社で働くと、それだけで約1万9500円(1628円×12カ月)年金が増える。例えば5年足りない人が60歳代で5年働けば、約9万7500円も増える計算だ。  成り立ちからわかるように、「経過的加算」の1年分は国民年金に1年加入して獲得できる老齢基礎年金(約78万円÷40年)とほぼ同じだ。だから、40年に足りない人が定額部分が480カ月になるまで働いたとすると、満額の老齢基礎年金をもらうのと同じ効果が得られる。足りない分を「経過的加算」で穴埋めしたことになる。  また、働いている間は厚生年金の保険料を納めているので、本来の老齢厚生年金(報酬比例部分)も増える。月給20万円の人が1年働くと約1万3100円、同30万円だと約1万9700円。「経過的加算」と合わせてダブルに増えるのだ。 「経過的加算」は「定額」ゆえに給料の低い人ほど恩恵が大きくなることも覚えておきたい。例えば、月給10万円の人が1年働くと、報酬比例部分は約6500円しか増えないのに、「経過的加算」は同じ1年で2万円近く増える。だから40年に足りない女性がパートで働いて厚生年金に加入する場合などに、一番効果が大きくなる。  いずれにせよ、年金制度への加入期間が40年に足りない人には、ぜひ知っておいてほしい制度である。きっと実践し始めると、記者のように定期便を見るのが楽しくなるはずだ。(本誌・首藤由之)※週刊朝日  2021年12月3日号

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    マイホームは「子ども部屋なし」がトレンド?! 勉強部屋に風呂なしアパートを借りる賢い選択

     晩婚化に伴い、マイホーム購入の平均年齢が上がっている。金融機関が貸してくれる時代とはいえ、ローンは早めに完済したほうがベターだ。それでも人生は予期せぬことが起こりうるもの。リアルな事例や最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は、20代で計画的に戸建てを購入した夫婦の事例を検証する。 >>【前編:家を買うのが早すぎた?「子ども部屋を見ると悲しくなる」 戸建て購入37歳共働き夫婦の後悔 】を読む *  *  *<30代後半Aさん夫婦のケース>10年前に27歳で神奈川県の郊外の住宅地に戸建てを購入。広さを優先した分、利便性は犠牲にして通勤は片道1時間半かかる。ローンの返済は順調だが、予想外だったのが、がんを患ったこと。子どもが授かりにくくなってしまい、せっかく作った子ども部屋を使用する予定はないという。 ◆ 80歳までローン返済…早い段階で購入することは“正解”    Aさん夫婦の事例をライフプランという視点から考察してみよう。ローン完済までの余裕が生まれ、返済計画も安定しやすいことから、早い段階で家を購入すること自体は間違っていない選択だ。  今は晩婚化の影響もあり、家を買う年齢が上昇傾向にある。最新の住宅市場動向調査(令和元年度・国土交通省住宅局)によれば、初めてマイホームを購入する人(一時取得者)の平均年齢は、注文住宅が39.1歳、分譲戸建住宅が36.8歳、分譲マンションが39.4歳、中古戸建住宅が42.8歳、中古マンションが44.8歳と、40歳前後。これに伴い、住宅ローンの完済年齢も上がっており、以前は最長70歳までが一般的だったところが、現在は最長80歳まで延長して設定している金融機関が増えている。 仮に40歳で家を買うとなると、35年ローンを組めば完済が75歳と定年退職後の年齢になる。大手不動産会社出身で、住宅購入における資金計画に詳しいファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)は言う。 「家の購入年齢が上がるに伴い、一昔前までは住宅ローンを『遅くとも65歳には完済したい、できれば60歳までに返したい』という人が多かったのが、最近は『遅くとも70歳には完済したい、できれば65歳までに返したい』に変わってきています。借入額を増やすためにも、35年の最長期間でローンを組む人が多いですが、繰上げ返済を計画的にしていくことで、なるべく現役のうちに完済することを目指す人が多い」  また、Aさんのように病気になるのも、誰しもが抱えるリスクだ。銀行で住宅ローンを借りて家を買う場合には、債務者が死亡または高度障害に陥ったときに返済が不要になる団体信用生命保険(以下、団信)に加入する必要がある。通常の団信は、病気にかかったときの保証はないが、がん、脳卒中、急性心筋梗塞の三大疫病型特約付の団信や、三大疫病に重度慢性疾患を加えた八大疫病型特約付など、病気や怪我を保証する団信のバリエーションが広がっている。 なお、多くのがん団信の加入上限年齢は、46歳以下と設定されている。Aさんの場合、債務者が死亡または高度障害に陥ったときのみの通常型の団信加入であったために保険金の支払い対象とはならなかった。仮にがん団信に加入していたら、がんと診断された時点で、団信に加入している保険会社からローンを借りている銀行に保険金が支払われ、ローンの債務がゼロになっていただろう。 「まさか自分が病気にかかるなんて思いもしなかった。あの時、がん団信に加入していたら……と、どれだけ悔やんだか分かりません」(Aさん) ◆ 自宅は子ども部屋ナシ 勉強部屋を借りる世帯も  飯田さんは、早い段階で購入に踏み切ったAさんの選択自体は「良い選択だった」としながらも、“妊娠前から子どものための部屋を構える”という点については「少し早まったかもしれない」と指摘する。 「リスクの想定は線引きが難しいですが、想定外のことが起こるかもしれないという可能性を踏まえると、『必要が生じたときに、必要に応じて動く』という視点のほうが『こんなはずじゃなかった』ということになりにくい。病気にかからずとも、子どもを授かれないという例も珍しくありません。また結婚することを前提に新居を購入した人が、実際は結婚に至らなかったというケースもままあります」  この「必要が生じたときに、必要に応じて」という観点は、不動産の視点に置き換えても応用が効く。例えば「子ども部屋」について。「子どもに個室が必要な期間というのは、意外と短い」とは前出の後藤さんだ。小学校低学年のうちは、個室があっても、家族のいるリビングで宿題をするケースも多いことや、大学入学を機に一人暮らしをする例も少なくない。  仮に小学3年生から高校卒業までが個室が必要な期間とすると、合計10年だ。都心では50~60平米の空間で、家族3~4人が暮らす例も珍しくはない。この10年のために、限られた空間の中で子ども部屋を設けるかどうか悩む人も多いという。これまで6千件を超える不動産取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは次のように言う。 「今はその辺りを合理的に考えて、子どもの勉強部屋用に、自宅近くのアパートの一室を賃貸で借りるケースも見られます。勉強用に借りる部屋ですから、狭くて風呂なしでも十分。また子ども部屋が必要な期間だけ、自宅を定期借家として人に貸して、家賃を元手に家族全員で広めの賃貸住宅に移るというケースも少なくありません」  多くの人にとって、人生で一番高い買い物とも言える住宅購入。想定通りに事が進むことばかりではないのが人生だが、家の選び方や買い方には思わぬ落とし穴もある。後の人生を左右すると言っても過言ではない住宅選びだからこそ、後悔しないためのコツを身につけておきたい。(松岡かすみ) >>【前編:家を買うのが早すぎた?「子ども部屋を見ると悲しくなる」 戸建て購入37歳共働き夫婦の後悔 】を読む

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    家を買うのが早すぎた?「子ども部屋を見ると悲しくなる」 戸建て購入37歳共働き夫婦の後悔

     晩婚化に伴い、マイホーム購入の平均年齢が上がっている。金融機関が貸してくれる時代とはいえ、ローンは早めに完済したほうがベターだ。それでも人生は予期せぬことが起こりうるもの。リアルな事例や最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は、20代で計画的に購入した夫婦の事例から、戸建てを検討する際にどんなことを考慮すべきなのか。専門家に聞いた。 *      *  *「家を買うのが早すぎたのかもしれない……」  神奈川県で夫と2人で住んでいるAさん(37)は、10年前に家を建てたことを悔やみ始めている。  Aさんは「若い頃から将来設計をしっかり立てておきたいタイプだった」というように、25歳での結婚を機に、ファイナルシャルプランナーに収入に応じたライフプランを相談。「住宅ローンのことを考えても、家を買うなら早いに越したことはない」というアドバイスのもと、27歳で新築一戸建てを購入した。  夫婦ともに地方出身で、広々とした戸建で育ってきたことから、マンションは選択肢になかったという。カフェ風のお洒落なインテリアを実現したいとの思いから、注文住宅でそのこだわりを実現した。 「これから子どもを産んで家族も増えるはず」  広めの子ども部屋も構え、期待で胸を膨らませながらマイホームでの暮らしを満喫していた。  ところが翌年、Aさんにがんが発覚。幸い大事には至らずに済んだが、手術を経て子どもができづらい体になってしまった。気づけば、高校や大学の同級生らは出産ラッシュ。 「今、子ども部屋を見ると、何とも言えず悲しい気持ちになります」(Aさん)  戸建てへのこだわりを優先した分、交通の便は犠牲にしていた。共働きで、満員電車に揺られ、片道約1時間半かけて都心へ通う日々。駅から家まで徒歩25分と距離が遠く、家から駅までは自転車が欠かせない。退院後に長時間通勤は正直、つらかった。  昨年からのコロナ禍で「戸建てでよかった」と思い直したかというと、そうでもない。確かに、残業が多く深夜帰宅が当たり前だった日常は、コロナの影響で一変した。夫婦ともにテレワークが基本となり、出社は月1~2回。感染状況が比較的落ち着いている今もテレワーク中心であることは変わらず、以前に比べて格段に自由な時間が増えた。  プライベートを充実させようと、海辺に引っ越した同僚もいるという。Aさん夫婦が家を建てたのは住宅街。特段、緑の多いエリアでもない。 「今の家は、都心への通勤を考えて、自分たちが無理ない範囲で戸建が持てるエリアということで決めた場所。都心へのアクセスも周辺の環境も、言ってみれば中途半端な郊外の住宅地です。こんな状況になるなら、もっと自然豊かな場所に住むか、仕事中心のライフスタイルに合わせて都心のマンションという選択肢でも良かった」(Aさん) ◆ 商業施設が撤退する地域は値段に響く  人生、いつ何が起きるか分からないのは万人に共通すること。専門家にも相談し、長い目で見て良かれと判断し、早めに行動したAさんのような人でも、予測できない事態に後悔することがある。どんなことに留意すべきなのか。Aさんのケースを検証しながら、ポイントを整理していこう。 「家を買う時には、『もし自分がそこで住めなくなったら』という仮定をして考えてみることが大事です」   不動産コンサルタントの午堂登紀雄さんは、Aさんの例についてこう指摘する。想定外のことが起こり、もし自分がそこで住めなくなった場合は、人に「売る」か「貸す」か、どちらかの選択肢しかない。 「だからこそ、何かあったら『売れる』、もしくは『貸せる』物件を選ぶ視点が必要です」(同)  ここで改めてAさんの家の立地について整理しよう。Aさんの家は、最寄り駅から徒歩25分。晴れた日は自転車で駅まで向かい、駅に隣接する駐輪場に駐車する。雨の日はバスを利用するか、急いでいる時はタクシーを呼んで駅まで向かうこともあった。最寄り駅から都心のターミナル駅までは、乗り換え1回を挟み、1時間超かかる。通勤時間帯には郊外から通勤する乗客がひしめき、特に朝のラッシュ時間の満員電車は過酷な状況だった。  午堂さんは言う。 「駅から徒歩15分を超えた立地や、バスを利用しなくてはいけない立地など、アクセスの悪さは想像以上に売る時の値段に響いてきます。また郊外のニュータウンなどの高齢化が進む地域や、周辺の商業施設が撤退するなど衰退が進む地域も要注意。いざという時に売りにくくなり、資産価値が低下しやすい」 ◆ 実は「建売住宅」のほうが次に売りやすい  主に都市部で売れる物件の条件については、前回の記事に詳述しているが、Aさんの場合はマンションでなく戸建であることもポイントだ。戸建には思わぬリスクもあるという。 「一般的に戸建は、建物が木造であることが多いため、鉄筋コンクリート造であるマンションに比べ、価格が下落するスピードが早い。また、木造住宅の価値は、築20~24年前後でほぼゼロと評価されることから、土地だけの価格になってしまうことが多いのです」(午堂さん)  その土地代も、手放したいと考えるときには価値が下がってしまうこともある。例えば郊外の新築一戸建を買って数十年が経過した後、売却したいと考え、土地部分の価格のみで売りに出す。しかしなかなか買い手が現れないために土地部分の価格も下げることを余儀なくされ、結果的に大幅に資産価値を下落させてしまうケースもよく見られるという。  さらに、こだわりを実現するための「注文住宅」という点にも、意外な落とし穴が潜んでいる。実は一戸建の場合、一見ぜいたくなほど細部にこだわった注文住宅より、建売業者が建てたよくある間取りの建売住宅の方が売りやすい場合も多いという。これまで6千件を超える不動産取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。 「なぜなら建売業者は、建物を建てる前に、そのエリアの需要の傾向や価格相場などのマーケット調査をし、それを基に万人に受けるであろう外観デザインや間取り、建具、設備、内装などにしていることが多いからです。自分仕様にこだわって建てた注文住宅が、リセール時の買い手に気に入ってもらえれば良いのですが、その個性が逆に買い手を狭めてしまい、結果的に売りにくくなってしまうことがあります。住宅においてはある意味、“個性のなさ”が買い手を限定させず、売りやすさを高めるとも言えます」 (松岡かすみ) >>【後編:マイホームは「子ども部屋なし」がトレンド?! 勉強部屋に風呂なしアパートを借りる賢い選択】に続く

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    眞子さんの変わりようにドン小西、驚く 小室夫妻をファッションチェック

     11月14日、司法試験不合格や、離日直前の金銭問題解決など、多くの話題を振りまいたあと、米国の新居に向けて出発した小室圭さんと眞子さん。ファッションデザイナーのドン小西さんがチェックした。 *  *  *  2人の出発を見て、昭和の童話を思い出しちゃったよ。生活苦の家族が3人で一杯の蕎麦をすするっていう一杯のかけそばだよ。王室の肩書を利用する気満々の英国のハリー&メーガンとは正反対。すべてを捨てて、小さな幸せを見つけに行くぞっていう覚悟が、2人のファッションに見えるもんな。  なんたって驚くのは、眞子さんの変わりようだね。会見のザ・皇室ワンピースから一転、丸首のセーターにワイドパンツっていう紺と黒のコーデに、肩にはショルダーバッグ。よくあるOLの旅行スタイルだけど、おろした髪もツッヤツヤだし、前よりずっと輝いて見えるじゃん。  一方の圭さんは、丸ヨーク柄のニットブルゾン。ダース・ベイダーのTシャツがのぞいているが、普段ビシッとスーツを着ている人ほど、カジュアル服のセンスが悪いのはお約束だもの。年相応のファッションだよ。ま、普通が一番かっこいい時代の象徴のような2人。どうぞお幸せに。 ■評価は……? 4DON! 「特別感ゼロのイデタチが好感」 (構成/福光恵)※週刊朝日  2021年12月3日号

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    「ダウン症の娘を守りたい」と願う36歳母親に鴻上尚史が語る「障害のある子を人々の悪意から守るたった一つの方法」

     ダウン症の娘をもつ38歳母親が、人々の悪意が我が子に向けられたらと不安を吐露。「気持ちの持ち方についてアドバイスを」と問う相談者に、鴻上尚史が答えた「障害のある子を守るたった一つの方法」とは?【相談116】障害のある娘をどうしたら人々の悪意から守れるのか(36歳 女性 くじら) 鴻上さん、はじめまして。いつも楽しくそして何度も頷きながら拝読しております。 私は現在36歳で、共働きで保育園に通う2人の子供を育てています。 我が家の次女は、ダウン症があります。産後すぐは、長女になんて申し訳ないことをしてしまったんだろう、どうしたら妊娠前に時間が戻せるんだろう、などと今思うと最低のことを思ってしまったこともありました。しばらくは次女といても気持ちに靄がかかったような状態だったものの、次女の可愛さが少しずつそれを晴らしてくれ、今ではこの子じゃなければよかったという気持ちは1%もないと自信を持って言えます。 幸い周りの環境にも恵まれ、保育園の先生方や主治医など優しい方々に囲まれて、なにより子供たちの可愛さに救われて(大変さも同じくらいありますが……)楽しく毎日を過ごしています。 さて、ご相談したいのはこれから次女が成長し、学校、社会に出て行く中で、どうしたら悪意のある人から守れるのか、ということです。つい先日某ミュージシャンの過去の行為がニュースになり、同じように不安に思い動揺している方がたくさんいるのではないかと思います。大きくは次女に限らず、健常である長女を含め、全ての子供たちに関わる問題だと思います。 あのニュースを見てから(過去の記事を全て読んだわけではないのですが)心がえぐられたような感覚が消えません。被害に遭われた方を思うと涙が出ますし、次女にそんなことが起こったらと思うと、動悸がして胸が苦しくなります。 親ができることとしてはとにかく環境をよく考えて選んで、できる限りのことをするしかないのだとは思っています(被害者の方のご両親がよく考えていなかったということでは全くありません)。 ただ、次女の出産後これほどの悪意が世の中にあることを想像したことがなく(電車などでちらちら見られるくらいのことはありましたが)、次女にもいろんな経験をして好きなことを見つけてほしいと考えており、それが子育ての希望にもなっていたため、「そんなことよりも、とにかく安全に過ごせる場所にいさせてあげなくては」と自分が次女を狭い世界に閉じ込めてしまうようになるのでは、ということも不安です。 例えば小学校も、長女も通う予定の地域の小学校で(普通級ではなく支援学級になると思いますが)健常の子たちとも関わりながら生活をするのが次女の成長にとっても良いのではないかと思い(そしてダウン症児の親としては、ハンディキャップがある子が当然に身近にいる環境で育つことで、周りの子供たちが障害に対してフラットな「いろんな子がいて当然だよね」という意識を持って成長してくれたらいいな……という願いもあり)、入学を希望していましたが、それにも少し不安を感じてしまっています(通う予定の学校について悪い評判を聞いたことはないので、大丈夫だろうと頭では思っているのですが)。 大変長文になってしまい申し訳ありません。「子供たち、特に障害のある子をどうしたら悪意から守れるのか」ということについて完全な策はないのではと思うので、それを教えてほしいというわけではないのですが、このような問題について鴻上さんのお考えや、気持ちの持ち方についてアドバイスをいただけたら大変うれしいです。 もしこの相談を取り上げていただけたら、それを読んで同じように障害のある子を育てているパパ、ママたちの動揺する気持ちが少しでも穏やかになり、元気に子供たちに向き合えるようになったら、と願っています。【鴻上さんの答え】 くじらさん。暑い日が続いていますが、毎日の子育てはいかがですか? くじらさんが書かれているように、僕も「『子供たち、特に障害のある子をどうしたら悪意から守れるのか』ということについて完全な策はない」と思っています。 とても残念なことですが、問題を一気に解決するような万能な策はないでしょう。 ただ、「次善の策」はいくつかあると思っています。 そのひとつは、これもくじらさんが書かれている「周りの子供たちが障害に対してフラットな『いろんな子がいて当然だよね』という意識を持って成長して」くれる環境を用意することでしょう。 そのためには、「ハンディキャップがある子が当然に身近にいる環境」で、子供だけでなく大人も生活できることですよね。 僕は小学生の時、商店街が主催したツアーに一人で参加しました。祖父母は米穀商を営んでいて、商店街のまとめ役だったのですが、祖父母も両親も参加せずに、何故か僕一人だけが誘われました。たぶん、キャンセルが一人出て、「じゃあ、鴻上さんのところの孫を入れてあげよう」となったんじゃないかと、今となっては想像しています。 他の参加者は、みんな商店街の人達とその友達や関係者でした。 旅館に着いて、いきなり、一人の男性に話しかけられました。30歳前後に見えましたが、言葉がはっきりせず、何を言っているのか、よく分かりませんでした。 小学生だった僕は身構えて、身体が強張りました。 すると、ツアーに参加した人が、その男性に「どうしたの?」と声をかけました。 その男性は一生懸命、声をかけた人に話しました。「ははあ。君はお米屋さんの孫なの?と聞いているよ」 と、にっこり笑って、その人は僕に説明してくれました。 僕はあらためて、男性の顔を見ました。満面の笑みで、僕にむかってうなづいていました。僕もあわてて、うなづきました。「よしちゃんの言ってることは分かりにくいんだけど、よく聞けば分かるから」。説明してくれた男性は、あっさりとそう言いました。 部屋は、男達数人の相部屋でした。 食事の後、中学生や高校生、そして大人達とよしさんが一緒になってワイワイと話していました。 よしさんが必死になって何かを話し、高校生が「よしさん。何言ってるか分かんねーよ」と笑いながら突っ込み、よしさんがその言葉を聞いて大笑いし、大人が「いや、俺は分かる!」と解説し、でもよしさんが「ちがう」と訂正して、会話は続きました。 よしさんと一緒に笑っている人達は、みんな、よしさんの知り合いでした。よしさんと会話して、分かったり分からなかったりしながら、突っ込んだり、笑ったり、ムッとしたりするのが日常のようでした。 笑いの中には親しさしかありませんでした。バカにするとか、排除するという匂いはまったくありませんでした。 なによりも、よしさんと普通に接していることが、小学生の僕には驚きでした。言ってることが分からない時は分からないと言い、はっきりしゃべってない時はもっとはっきりしゃべってと言い、筋が通ってない時はこういうことなの?と確かめる。じつに、普通の会話でした。 今から思えば、よしさんは知的障害に分類されるのだと思います。でも、男部屋で一緒に寝た人達は、それが障害ではなく、よしさんの個性として当り前に接していたのです。 それは小学生だった僕には、本当に衝撃的な体験でした。ハンディキャップのある人達に対する接し方が、180度、完全に変わりました。 僕の通っていた小学校では、支援学級(昔はこの言葉ではありませんでしたが)がありましたが、どう接していいか分からず、ただ距離を取ったり、先生に言われた義務感から話しかけたりしていました。 ですが、僕はこのツアー以降、普通に接するようになりました。距離を取ったり、無理に話しかけるのではなく、目があったり、すれちがったり、空気を感じた時に自然に声をかけました。 あのツアーの体験がなかったら、決してそうはならなかっただろうと思います。 商店街のツアーは、今からもう50年も前の話で、まだ地域の共同体が健全に機能していたんだなと感じます。地域にはさまざまな人達がいて、さまざまな人達がいることが当り前で、さまざまな人達と共に生きることが当然なんだと、みんなが地域を大切にしていた時代だと思います(それは「世間」が機能していたということで、この強い「世間」から弾き飛ばされると、いきなり人々は牙をむくのですが、それはまた別の話です)。 さて、くじらさん。「障害のある子を悪意から守る」ためには、障害があることが特別なことではないと、多くの日本国民が思えることが重要なことだと思います。 それは、本当は健全な想像力があれば、分かることです。人間を「障害」や「生産性」で切り捨ててしまうことは、自分がそうなる可能性をまったく想像してないということです。 でも、人生は何が起こるか分かりません。病気や事故で、以前の「生産性」を失い、「障害」を持つようになる可能性は誰にもあります。自分は絶対にそんなことにならないと断定できる人がいるとしたら、僕には信じられないことですが、今、たまたま自分がそうでないというだけの理由で、「そういった社会的弱者」を切り捨て、悪意をぶつけることは、自分で自分の首を絞めることなのです。率先して自分自身が生き難い世の中を作っているということです。 と書きながら、私達は「当事者にならないと分からない」ことがよくあります。接客業に就いて初めて客の横柄な態度のインパクトに驚いたり、子供を持って初めて親の苦労が分かったり、リーダーにされて初めて人を指導することの難しさに苦しんだりするのです。 でも、「当事者にならない限り気持ちが分からない」のでは、いろんなことが手遅れになってしまいます。そのために想像力を使うのですが、それが不十分な時は、「当事者から話を聞く」という方法があります。 接客業に就く前に接客業の人から話を聞き、子供を持った人から子育ての苦労を聞き、リーダーになっている人から人を導く苦しさを聞くのです。 そうして、自分の不十分な想像力を補うことが、よりよく生きる方法だと僕は思っています。 だからこそ、くじらさんの相談を取り上げさせてもらいました。 くじらさんの相談は、まさに「当事者の話」です。くじらさんの苦労や苦しみを知っていくことが、「障害のある子を悪意から守る」ための一つの方法だと僕は思っているのです。 この相談を読んだ多くの人が、「いじめはそもそも許しがたいのに、障害のある子をいじめるなんてのは、言語道断、絶対に見過ごさない」と思ったり、「なるほど。なるべく障害のある子と一緒に過ごす時間を作ればいいんだ。そして自然に接してみればいいんだ」と思ってもらうことが、この国の多くの人の意識を変えていくことだと思っているのです。 名作映画『チョコレートドーナツ』を見る前と後で、ダウン症児に対する意識がまったく変わった知り合いがいます。人は、知ることで変わる可能性があるのです。 どうですか。くじらさん。 長い道ですが、少しずつ少しずつ、当事者の思いを伝え、本当の姿を知らせていくことが、ぶつけられる悪意を減らす一歩だと僕は考えているのです。 そのためにも、僕自身、作家・演出家として、できることはしようと思っています。 くじらさんの子育てを心から応援します。■本連載の書籍化第3弾!『鴻上尚史のますますほがらか人生相談』が発売中です!

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    小室圭さん帰国便同乗者が目撃した姿「彼はまるでエグゼクティブ」 自宅前では深々とお辞儀

    颯爽と歩きながら、小室圭さんがアメリカから帰国した。日本の地を踏むのは2018年8月に渡米して以来、3年2か月ぶりだ。  成田空港は多数の報道関係者が集まっており、ピリピリムード。報道陣に対して、カメラのフラッシュ禁止、声掛けも禁止といった規制が敷かれていた。報道関係者からは「どうして?」と不満の声も漏れていた。  午後3時20分過ぎ、成田空港に飛行機が到着。一般客が飛行機から降りたあと、小室さんが、報道陣の前に姿を現した。警護と思われる男性やキャビンアテンダント(CA)の女性などに囲まれていた。キャリーバックを転がしながら、白マスクに、濃紺のスーツ、ストライプの入ったシャツ、ノーネクタイといういで立ちで、髪の毛は後ろに縛っていた。  飛行機から出てきた小室さんは報道陣に一礼したあと、新型コロナウイルスの抗原検査、そして入国手続きに進んだと見られる。  小室さんは機内でどのような様子だったのか。偶然、同乗していた男性(51)に話を聞くことができた。 「私がファーストクラスで座っていると、ドアが閉まるギリギリになって小室さんが搭乗してきました。まるでエグゼクティブのようでした。後ろの髪を結っていたので、すぐに彼だとわかりましたね。彼一人に女性CAが2人くらいついて、会話しながら案内されて入ってきました」  当初はエコノミークラスのチケットを買ったと報じられていたが、この男性はこう語る。 「右の列のビジネスクラスの前方の席で、窓際に座っていましたね。私の席から右斜め後ろのほうの席でした。ただ、カーテンでファーストクラスとは仕切られていたので彼の表情などはわからなかったです」  男性は飛行機から降りた後、抗原検査のために、大きめの部屋に移ったという。40分ほどその部屋に滞在したが、そこに小室さんの姿はなかった。 「今か今かと待っていたのに、残念でした」(男性)  そのころ、到着ロビーには多数の報道陣のほか、「皇室系Youtuber」といったタスキをかけた人物や一般客も小室さんの姿を一目見ようと集まっていた。その数、50~60人ほど。  津田沼から来たという白髪交じりの一般男性は手にハンディカムを持ち、小室さんを待ち構えていた。妻に頼まれて自宅で見るために撮りに来たという。  しかし、小室さんは一般客が使う到着ロビーを通らず、地下駐車場から車に乗り込み、成田空港を後にした。「地下駐車場から空港を出たらしい」と男性に知らせると、「こんなに待っていたのに……」と不満げな様子だった。  小室さんを乗せた乗用車が向かった先は、母・佳代さんが住む横浜の自宅だった。自宅前は朝から報道陣が詰めかけ、警察は臨時の派出所を設置し、周辺警備に当たるなど、ものものしい雰囲気が漂っていた。夕方には100人を超える報道陣が押し寄せており、ベランダから様子を一目見ようとする住民の姿も見られた。  19時過ぎ、小室さんを乗せた車が到着。警察が後部座席のドアを開け、車から出てきた。小室さんは、報道陣から「どんなお気持ちですか」と声を掛けられたが、反応は示さず、自宅マンションの入り口で2回ほど深々とお辞儀をして、黒いスーツを着た男性らと中に消えていった。  近くに住む60代の男性はこう語る。 「ヘリコプターの音がすごくて『何事か』と思って見に来た。3年前の婚約会見後のときと同じような状況だと感じましたね。小室さんがニューヨークに行ってからは、静かになっていたんだけど……。またしばらく騒々しくなるのかなと思っています。どの家庭も問題を抱えていますし、小室さんと眞子さまも早くアメリカで幸せになってほしいですね」    小室さんは今後、自宅で2週間の隔離を終え、その後、記者会見に臨むと見られている。果たして何を語るか。注目が集まる。 (AERAdot.編集部/上田耕司、飯塚大和、吉崎洋夫)

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    マンション購入「妻の実家の近く」で選んで失敗 いい物件の見極めは? 徒歩7分、60平米…

     都心部で働く子育て世代の夫婦が家を買うとしたら、どんな物件が“正解”なのか。そこ一生住むつもりで物件を選ぶよりも、将来、住み替えることを前提にした購入がトレンドだという。つまり、売ることを前提にした購入だ。だが、購入してから資産価値が落ちたり、いざ売る際になかなか買い手がつかなかったりしたら、のちの人生設計も狂ってくる。最近の不動産事情を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は物件選びのポイントを不動産のプロに聞いた。 >>【前編:都心中古マンション争奪戦「10年間、タダで住めたようなもの」 世帯年収800万円夫婦が狙う物件とは】から続く *     *  * まずは「こんなはずじゃなかった」と頭を抱えてしまったBさんのケースを紹介しよう。  埼玉県内に、10年前にマンションを購入したBさん。妻の実家近くにある、最寄り駅から徒歩18分の4LDK(81平米)の新築物件を3500万円で購入した。うち3300万円は住宅ローンを組み、月々の返済額は約12万円。返済も順調だった。  しかし、ローンがあと20年ほど残っている時点で、仕事と子どもの学校の関係で、どうしても引っ越さないといけなくなり、売却したいと考えた。現在の売却想定額を査定したところ、金額は1800万程度だという。住宅ローンの残債はまだ2400万前後あり、売却想定価格をはるかに上回っている。「ならば貸せないか」と考え、今度は家賃を査定してもらったところ、相場から月10万5千円前後を算出された。Bさんの物件は駅から距離があり、購入時には営業していた近隣のスーパーマーケットなどが撤退し、買い物にも不便という環境要因が響いた。毎月12万の住宅ローンの支払いを考えると、貸しても赤字という計算になる。  Bさんは、購入時点では生涯住むつもりだった。子どもの成長などライフステージの変化に対応する間取りを考え、それが無理ない予算で買える場所という視点から物件選びを始め、「まったく知らない土地に行くよりは、子育ても考えて妻の実家近くにしよう」と決めた家だった。試算が狂い、Bさんは今、人生設計を見直している。  首都圏を中心に不動産の購入、売却、賃貸など、これまで6千件を超える取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは、こう指摘する。 「自分たちにとっては良い場所であっても、売る・貸すとなった時に価値が維持できるとは限りません。一般的に、郊外のマンションは都心のマンションに比べ、買うときの価格が安い一方で、売るときには価格が下がっている可能性が高い。資産価値という視点から見た場合、マンションにおいては立地の影響が想像以上に大きく、価格が落ちにくいマンションとは、都心に近く交通の便が良いマンションの場合が多いのです」  どこから光を当てるかによって、その家の価値は変わる。ここではあくまで、「資産価値を保ちやすい家」という視点で解説しよう。専門家らの話を紐解くと、4つのポイントが浮かび上がってきた。 (1)  山手線沿線の駅から電車で15分圏内  まっさきに押さえるべきポイントは、都心に近く、交通の便が良い場所という条件。具体的に挙げると、山手線の駅周辺の都心、または山手線の駅から電車で約15分圏内の準都心と呼ばれるエリアだ。例えば小田急小田原線の場合は経堂駅ぐらいまで、京王線の場合は千歳烏山駅ぐらいまで、東急田園都市線の場合は二子玉川駅ぐらいまでが準都心の目安となる。 「都心、準都心のエリア内であれば、築35年の60平米ぐらいのマンションでもそれなりの価格で取引されていることが多い。例えばここ10年ぐらいの間でも、港区、千代田区、渋谷区、目黒区などでは4千万~6千万台ぐらいで、新宿区、文京区、豊島区、杉並区、品川区などでも3千万前後から5千万台ぐらいで取引されています」(同) (2)  駅近の目安は徒歩7分以内  主な物件の探し方がインターネットである今、駅から遠い物件は検索段階で切り捨てられてしまうことも多い。通勤や通学ともなると毎日のことなので、「駅から徒歩何分以内か」という点は資産価値を維持する上で重要なポイントだ。 高齢化率の上昇や、全国的に市街地計画をコンパクトに形成していこうとする行政の動き(コンパクトシティ構想)を踏まえても、駅から近い物件は今後ますます有利に働く可能性が高いという。不動産コンサルタントの午堂登紀雄さんは言う。 「エリアにもよりますが、原則、駅から徒歩10分以内の立地で選ぶと比較的売りやすい。駅からの近さはどの世代にも共通して求められているポイントです。郊外の戸建に住んでいたシニア層が駅近のマンションに住み替えるケースも増えています。できれば5分以内、目標は7分以内と、少しでも駅に近い方が有利です」 (3)  ファミリータイプは需要減、60平米が売れ筋  国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」によれば、2015年時点でいわゆるファミリー世帯である「家族と一緒に住む世帯」は約1429万世帯なのに対し、「1人暮らし世帯」は約1842万世帯、「夫婦のみ世帯」は約1072万世帯。さらに2025年の予測では、「家族と一緒に住む世帯」は約1369世帯と減る一方で、「1人暮らし世帯」は約1996世帯、「夫婦のみ世帯」は約1120世帯と増えることが予想されている。 生涯未婚率や離婚率の上昇、シニアの増加により、1人暮らし世帯が急増し、ファミリー世帯が減っているのが現状だ。 「この状況を踏まえると、これまでファミリー用マンションとして考えられていた70~80平米前後と広めのマンションは、これからは長い目で見ると需要が見込みづらい。一方で狭すぎず、広すぎない60平米前後のマンションは、都心においては需要が多いのに供給が少なく、貸しやすい面積帯です。一人暮らし世帯、夫婦のみ世帯を中心に、夫婦と子ども1人、夫婦と小さな子ども2人、シニアと幅広い層が住みやすく、価格も手頃な60平米前後が最も売れやすく、貸しやすいでしょう」(後藤さん) (4)  中古でも2001年以降に完成  「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」(2000年)の施行により、デベロッパーの建物に対する責任性が強まったことから、2001年以降に完成した物件は一般的に住宅の基本性能が高まっている傾向にあるという。 「2001年頃からの完成物件は、耐震や省エネルギー、遮音性などを向上させた物件が比較的多く出ています。今は新築マンションでも設備をチープにする物件が増えているため、むしろ10年ほど前に完成した物件の設備の方が優れている場合も少なくありません。中古物件を選ぶ際は、2001年以降に完成した物件であれば、価格が手頃で良質な建物であることが多い」(後藤さん) ◇  資産価値が落ちない家を選ぶためには、価格が安い物件を買おうとするのではなく、少し価格が高かったとしても購入後に価格が落ちにくいであろう物件を購入する姿勢が必要だ。  大切なのは、今後住み替えなどの可能性があり、住まいに換金性を求める場合に、希望する額から大きく目減りすることがないかどうか。10年、20年先を想定した売却のみならず、「最終的に高齢者施設に入ることを考えたら、家を売って少しでも施設費の足しにできた方がいい」と考える人もいるという。 先行き不透明な時代だからこそ、それだけ後悔しない買い方を求める人が増えているのかもしれない。家を買うことにも、これまで以上に戦略が必要な時代だといえそうだ。(松岡かすみ) >>【11月28日10:00公開】それでも夫婦は東京に家を買う#5

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    眞子さまと小室さん 甘くないNY生活 「アジアの元プリンセス」警護で米国民が猛反発も

     眞子さまと小室圭さんが年内に結婚し、米国のニューヨーク(以下はNY)を拠点に生活する見通しであることが報じられた。  海の向こうで、ふたりはどのような生活を送るのか。治安がよいとはいえないNY生活で、関心を集めているのが警備の問題だ。NY現地の警備で高額の費用が拠出されるといった記事もあるが、大使経験者らに現地の事情を聞くと、手厚い庇護をうけた「甘い生活」とは行かないようだ。 眞子さまら皇室メンバーは、つねに皇宮警察や管轄の警察の警備に守られた生活を送ってきた。眞子さまも公務中はもちろん、学校や職場、私的なお出かけの間も護衛がついているわけだ。 結婚して民間人になれば、理屈のうえでは皇宮警察や警視庁の警護対象者から外れる。護衛や生活などを国費でまかなうことはなくなり、自分たちで生活するのが基本だ。 とはいえ、内親王ともなれば、そう単純でもない。たとえば上皇ご夫妻の長女、黒田清子さん(紀宮さま)は、民間人となって数年の間は、スーパーで買い物をしている最中も女性の警察官がそばにつきそっていた。 というのも皇室の外に出た元皇族女性が犯罪に巻き込まれる事件が、過去に起きているからだ。 昭和天皇の三女・鷹司和子さん(孝宮)は、摂政や関白を務めた五摂家のひとつ、鷹司家の平通さんと結婚した。戦後初めての女性皇族の結婚であり、華族制度の廃止によって「平民への初の嫁入り」と騒がれた。だが、1966年には平通さんが銀座のママの自宅でガス中毒死する。そして2年後、和子さんは強盗に遭う。自宅の台所に包丁を持った男が侵入。口をふさがれ、けがを負ったが、自力で玄関まで逃げた。娘の境遇をふびんに思った昭和天皇のはからいで、赤坂御用地内の古い木造平屋の乳人官舎に移り住み、伊勢神宮の祭主を務めながらひっそりと暮らした。  昭和天皇の五女の島津貴子さん(清宮)も、犯罪に巻き込まれかけている。1960年に結婚したのち、1カ月ほどで警護は解かれた。だが3年後に5000万円の身代金を計画した島津貴子さんの誘拐未遂事件が発覚して大騒ぎになった。 民間の生活になれない元皇族女性を狙った事件が続いたことから、清子さんのように、警視庁が目立たない形で護衛を続ける例もあるようだ。 では、外国で暮らす場合はどうなるのか。「日本の警察が外国で、武器を携帯して元プリンセスを守ることはできません。現地の大使館には、警察庁の人間も書記官などの身分で出向していますが、こちらも同様です。犯罪などから守ってくれるのは、現地の警察ですが、たいした護衛は期待できないでしょう」 そう話すのは外交官として大使などの要職を歴任した人物だ。「どの国の中央政府も、国内に滞在する政治要人や元ロイヤルを含むロイヤルメンバー、皇室メンバーのリストを把握している。眞子さまにNY市警などの警備をつけたければ日本政府が米国の連邦政府などを通じて眞子さまの警備をお願いし、さらに米国政府が応じることが前提になる。米国が応じなければ、眞子さまと小室さんの自宅周辺を、ときおり警察が巡回する程度でしょう」 世界中を見渡せば、王室の親族も含めるとロイヤルに連なる人間は、意外に多い。 一夫多妻制の国の王子や王女は、それこそ何千人もいるなどと言われる。ましてやNYは、留学やビジネスをふくめて、ロイヤルに連なる肩書を持つ人間が集まる場所でもある。 一方でNYは、新型コロナウイルスの影響で未曾有の不況下にあるうえに、治安も悪化している。「NY市警も、アジアの元プリンセスに手厚い警護を行い続けるだけの体力もないでしょう。ましてや欧米の国民は、税金の使い道にシビアです」(先の元外交官) 参考になるのは、へンリー王子とメーガン妃の例だろう。 ヘンリー王子夫妻は、離脱前の2019年冬からカナダのバンクーバー島にある海岸沿いの邸宅を生活拠点としていた。 カナダは英連邦の加盟国。カナダ騎馬警察(RCMP、連邦警察)は、ロンドン警視庁の要請を受けて国際条約に基づき夫妻の警護を提供してきた。 カナダ国民は夫妻を歓迎したが、滞在が長引くにつれ、世論調査では夫妻の警護費用に税金を投入すべきではないとの声が77%にまで高まり出した。  そうしたなかヘンリー王子夫妻が「王室離脱宣言」をする。さらに、王室の高位メンバーから外れることが明らかになると、カナダ政府の対応は早かった。カナダ政府は、2020年2月、「夫妻の地位の変化に伴い、今後数週間以内に」終了すると発表したのだ。 ちなみに、王立カナダ騎馬警察が公式文書で明らかにしたところでは、夫妻が滞在した11月から2か月間の警備で、最低でも約432万円のカナダの税金が投入されている。この警備費に騎馬警察の人件費は含まれていない。カナダでの滞在は5カ月に及んだ。警備費はさらにふくれあがったはずだ。 どの国でも政府は、国民の反応に敏感だ。 夫妻がカナダから米ロサンゼルスに拠点を移すと、当時のトランプ大統領も、すぐに反応した。 ふたりの警備費の負担を拒否する方針をツイッターで公表。すると、米国民から「最高の決断だ、大統領!」と称賛の嵐が巻き起こった。 一方で、元宮内庁職員は、むしろ眞子さまが警護などの待遇を望まない可能性を指摘する。世界経済の中心地のひとつであり、世界中から人が集まるのが NYだ。互いに必要以上に干渉しない、匿名性の高さもまた、この街の魅力だ。「眞子さまは日本にいる限り、元皇族としての視線から逃れられません。しがらみから逃れて、一市民として自由にお暮らしになりたいのではないでしょうか。一時金さえ受け取らない意向を示されているのですから、ご自身で警護をお断りになる可能性もあります。それに、そうした待遇を受ければ、『民間人になっても税金を使って』と日本で非難が高まるのは、目に見えていますからね」(元宮内庁職員) 前出の元外交官はこう話す。 「あとはNYの総領事などが、定期的に眞子さまや小室さんを招待して、困りごとはないか、などのフォローぐらいはできるでしょう」 皇室の庇護から離れたた元内親王を待ち受けるのは、甘い生活とは行かないようだ。(AERAdot.編集部 永井貴子)

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    【ゲッターズ飯田】11月開運のつぶやき「運がいいと信じる人が幸せをつかんでいる」銀の羅針盤座

     占いは人生の地図のようなもの。芸能界最強の占い師、ゲッターズ飯田さんの「五星三心占い」が、あなたが自分らしく日々を送るためのお手伝いをします。12タイプ別に、毎週月曜日にその日の運勢、毎月5のつく日(毎月5、15、25日)に開運のつぶやきをお届けします。12月は15日と25日に配信。 【タイプチェッカー】あなたはどのタイプ?自分のタイプを調べる 【AERAdot.公式LINE】お友達になると毎週月曜に占いが届きます 【金の羅針盤座】世の中もあなたも完璧ではないのに、他人にだけ完璧を求めるほうが愚か者 【銀の羅針盤座】「自分は運がいい」と信じる人が、幸運をつかんでいる 【金のインディアン座】「行けたら行く」と言う人には、運は味方しない 【銀のインディアン座】「失敗したら話のネタにする」くらいの気持ちで挑戦してみましょう 【金の鳳凰座】人の助けを素直に借りる勇気も大切 【銀の鳳凰座】時間が早く過ぎることが人にとって一番の幸せ 【金の時計座】「幸運」は偶然に起きるものではなく、日々の積み重ねと考え方次第 【銀の時計座】明るく元気に素直に生きて、他人を大事にしているだけで、人生はよくなる 【金のカメレオン座】知識や情報を仕入れるだけで、自ら体験しない人に真実は見えてこない 【銀のカメレオン座】幸せとは些細なことだと忘れないように 【金のイルカ座】他人に望むことを、あなたがやればいいだけ 【銀のイルカ座】自分を低く評価する必要はない (『ゲッターズ飯田の五星三心占い2022』より一部抜粋) ※毎週月曜日に占いが届きます!AERAdot.の公式LINEの友達申請はこちら↓↓↓https://lin.ee/trWiCvV

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    手取り14万円「正社員なのに貧困」苦悩する20代女性 唯一の贅沢は月1度の銭湯

     低賃金で働く正社員が増えている。背景には経済のグローバル化と日本型雇用の崩壊がある。AERA 2021年11月29日号から。 *  *  *  手取り14万円──。毎月の給与明細を見るたびに、関東地方で暮らす会社員の女性(20代)は嘆息する。 「夢も希望も持てないです」  就活に失敗し、大学を卒業後は塾の講師やパン屋のアルバイトなどで生活費を稼いだ。当時の収入は手取りで25万円ほど。普通に暮らせたが、安定した仕事に就こうと2年前にインターネットで見つけたのが今の会社だった。社員20人程度の建築会社の事務職。給与が低いことはわかっていたが、賞与もあるというので決めた。  雇用形態は「正社員」。だが、賞与は「スズメの涙」程度だった。年収は300万円いくかいかないか。 「バイトしていたときのほうがお金はありました」 ■外食せず服も買わない  一人暮らしの部屋の家賃は6万円。生活を切りつめても赤字だ。学生時代に借りていた奨学金の一部を貯金していたので、それを取り崩しながら暮らす。外食はせず、服も買わない。唯一の贅沢(ぜいたく)は月に1度、近くの銭湯に行くことだという。 「正社員なのに貧困って、おかしいですね」  これまで「貧困」と言えば、非正規社員に多いとされていた。しかし、今や正社員にも貧困化が進んでいる。  厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」を元に、賃金に詳しい都留文科大学名誉教授の後藤道夫さんが、従業員10人以上の企業を対象に「最低賃金+α(プラスアルファ)」より下で働く正社員が2007年と20年でそれぞれ何%を占めるかを試算し、比較した。  最低賃金の1.1倍未満で働く人の割合は07年の1.5%から20年は3.8%、同様に1.2倍未満は2.4%から6.9%に上昇した。1.3倍未満まで広げると4.1%から11.7%に増えた。  また、中所得者層より上の収入の正社員も減っている。年収400万円以上の35~39歳の男性正社員の割合は、1997年の約8割から17年には6割にまで減ったという。  こうしたことの理由について、後藤さんは(1)グローバル化の進展(2)日本型雇用の崩壊──の2点が大きいと指摘する。 「日本の大企業は1980年代後半から本格的にグローバル化を進め、90年代後半にはそれとぶつかる場面が多い年功型賃金や長期雇用といった日本型雇用が見直され、賃金は長期に低下し始めました。グローバル競争に勝つためにコスト削減が強まり、勤続年数とともに給与が上がる正社員が減っていきます」 ■経営側に抵抗しにくい  後藤さんは労働組合の問題も指摘する。 「日本は企業別組合。社内の従業員だけでつくられているので、経営側にどうしても抵抗しにくい形態となっています。対して世界は産業別にまとまった産業別組合です。交渉は経営者団体と産業別の労働組合のリーダーで行うため、産業全体のことを考え賃金も上がりやすくなっています。日本にも産業別組合はありますが、企業別組合の連合体をそう呼んでいるだけで、実質は企業別組合と同じです」  実際、日本の賃金水準は他の先進国と比べると低い。経済協力開発機構(OECD)によれば、20年の日本の平均賃金は3万8514ドル(約437万円)と、加盟35カ国中22位。差が大きかった韓国にも15年に抜かれた。  賃金も上がっていない。OECDによると、20年までの30年間で日本の賃金上昇率はわずか6%。対照的に米国は50%、英国は48%、フランスは33%、ドイツは35%、韓国は88%も伸びている。(編集部・野村昌二)※AERA 2021年11月29日号より抜粋

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    21時間前

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    【独自】小室圭さん、米大手事務所から断られていた 弁護士が語る“厳しい現実”

    「小室圭さんの実力では無理だと思います」 こう話すのは、全米で「トップ100」と呼ばれる大手弁護士事務所(ビッグロー)のパートナー弁護士のA氏。専門は、海外企業同士のM&Aなど。米国を拠点に世界を飛び回り、収入も桁違い。この姿こそ、小室さんが思い描く将来でもあるようだ。 昨年の秋ごろ、A氏の事務所に、働かせてほしい、と小室さんの「経歴書」のようなレジュメが別の弁護士を通じて届いたという。小室さんは、ニューヨークなど大都市での弁護士の仕事を探しており、ビッグローか、その下の規模のミッドローでM&Aなどをやりたいという。 A氏がそのレジュメを見て思ったのが、冒頭の言葉だ。なかでも、A氏が首をかしげたのがニューヨークのフォーダム大ロースクール(法科大学院)への留学の部分だ。「疑問なのは、彼がLLM(法学修士)のコースに入ったことです。しかも1年学んだ後に、JD(法務博士)コースに編入している。大きな事務所を目指してて、こんな動き方をするなんて聞いたことがない」 LLMとJDというのは、ロースクールでのコース名だ。米国の大学には法学部がなく、弁護士を目指す人は、大学卒業後にJDに入る。ここで3年間学び、事務所に入るのが一般的なパターンだという。 一方、LLMは、法律の資格を持つ外国人留学生が多いといい、「表現として正しいかわかりませんが、キャリアに“箔(はく)をつける”ようなイメージです」。 A氏によると、米国で弁護士となるのに重要なのはJDでの1年目だ。「米国での就職活動は、2年生の終わりの夏休みで終わります。事務所のサマープログラム(インターン)で働き、その後よほどのことがない限り、その事務所からオファーを受けて就職します。どの事務所のプログラムに入れるかは、1年時の成績で決まります。だから学生の競争も壮絶です。本を隠すなどの足の引っ張り合いもあります。小室さんはその1年をLLMに入っています」 ビッグローのインターンの募集は、ハーバードやエール、コロンビアといった有名大学で公募し、最初の書類選考で成績優秀者に絞り、次の面接で決まる。A氏が言う。「採用された学生には、1年目から19万数千ドル(2千万円以上)の給与が支払われます。それも5年くらいは半人前で、彼らから利益は出ません。それでも欲しい人材ということなんです。だから相当厳選します。原則でいえば、ビッグローはインターン以外の方法では採用しないです」 チャンスをつかめる学生は、ほんの一握りだ。小室さんは、そもそもLLMに入った時点で、希望するビッグローへの道は閉ざされたといっていい。なぜLLMに入ったのだろうか? A氏が話す。「こう言っては何ですが、彼の経歴に目を見張るモノはありません。あるとすれば眞子さまのフィアンセという一点。それでも奨学金を取得できたり、JDへ編入したり、弁護士が出てきて仕事を探したり。知恵をつけている人がいるんでしょう」 では、ビッグローは無理でも、M&Aは他でもできるのだろうか?「米国には約43万の事務所がありますが、M&Aの70%超は『トップ100』が扱っています。小室さんが弁護士として働くにはM&Aにこだわらないことですね。移民法の弁護士などは圧倒的に多い。日本人も多いです。もうからないので人気はないのですが」 そして、こう続けた。「詳しいことは申し上げられませんが、彼の『経歴書』を見る限り、とても“権威”が好きなんだと思います。M&Aも彼からすれば格好良く見えるんでしょうけど、実際は相当厳しい世界です。パートナー弁護士になるのは10年後くらい。それまで生き残っているのはわずかです。彼がそもそも弁護士という職業に向いているのか……。野心家だと思うので、ベンチャーのような起業家とかが向いているような気がします」(本誌・矢崎慶一)※週刊朝日  2021年9月17日号に加筆

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    愛子さまが借りるティアラ、清子さんからの理由は「格」の違い 秋篠宮家へは逆風やまず

     天皇・皇后両陛下の長女、愛子さまが12月1日に20歳の成年を迎える。  とくに話題を集めたのは、愛子さまがティアラを新調せず、叔母の黒田清子さんのティアラを借りて祝賀行事にのぞむ、異例の成年式となることだ。宮内庁は、「コロナ禍で国民生活に影響がでていることに配慮した愛子さまが、両陛下と相談した決めた」と説明している。 「どうも、何をとってもタイミングが悪く秋篠宮家への逆風になってしまう」  そうため息をつくのは、皇室に長く仕えた人物だ。秋篠宮家の長女、眞子さんが小室圭さんと結婚したのちに渡米したばかり。  渡米前に国内で滞在したのは、渋谷区の東京メトロ外苑前駅近くにある長中期滞在者向けの高級サービスアパートメントだった。結婚によって皇籍から離れたばかりの元内親王に、所轄する警察の警備がつくのは当然のことだ。とはいえ、外出の度に報じられた結果、特別な警備体制に注目が集まった。  そしてNYでの新居の豪華さも報じられている。英タブロイド紙のデイリー・メールなどの海外紙によれば、小室夫妻の住まいは、セントラルパークやタイムズスクエアに近いヘルズ・キッチン地区にあるタワーマンションだ。2017年に建てられたばかりで、24時間対応のロビーやフィットネスルームにヨガスタジオ。スパやゴルフシュミレーションセクションなどを備えた豪華な仕様だという。  小室さんのLawClerk(法務助手)の年収は600万円程度と見られている。一方で、海外紙によれば、ワン・ベッドルームとはいえ家賃は、月額約4800ドル(55万円)と安くはない。  宮内庁関係者の間でも、眞子さんの結婚と米国移住が無事にすんではればれしたという空気と同時に、小室夫妻の先行きを案じる声もわずかに漏れてくるようだ。  そんなタイミングで宮内庁が公表したのが、愛子さまが「借りたティアラ」で祝賀行事に臨むというニュースだった。  女性皇族にとって、成人を迎えた誕生日は宮殿行事デビューの日でもある。まず皇室の祖神・天照大神などが祭られる宮中三殿に参拝し、宮殿で天皇陛下から宝冠大綬章が授与される。 ローブデコルテの正装に新調したティアラとネックレス・ブレスレット・イヤリング・勲章どめの宝飾品5点を身に着け、両陛下にあいさつするのが恒例だ。  内親王だった眞子さんの場合、ティアラと宝飾品は「和光」で2856万円、佳子さまは「ミキモト」で2793万円をかけて制作された。大正天皇のひ孫にあたる三笠宮家や高円宮家の女王方の場合は、1500万円前後だ。  ティアラなどの宝飾品は、ぜいたくをするために制作するわけではない。成年皇族は公務を担うようになり、宮殿行事や外国からの国賓や賓客を接遇する晩さん会など国際親善の場では、勲章とともに正装を持って迎えるのが礼儀だからだ。  皇后や皇太子妃は代々受け継がれるティアラなどを所有している。そのなかには、平成の時代に皇后が故・秩父宮勢津子さまから譲り受けたティアラなどもある。つまり、他の宮妃や最近では眞子さまのティアラも宮内庁に預けられている。  女性皇族の所有していたティアラもあるなかで、なぜ愛子さまは清子さんより「借りる」形になったのか。  眞子さんをはじめ、最近の女性皇族が成年を迎えた際に新調したティアラは、いずれも宮内庁が管理する公金で制作されている。そのため、公金で作られた眞子さんのティアラは、離脱とともに宮内庁に預けられた。  一方で、黒田清子さんが成年を迎えた時に、新調されたティアラと宝飾品は、天皇家の私的なお金であるお手元金で制作された。  元宮内庁関係者は、ティアラを公金で支払うようになったのは、三笠宮家の彬子さまのときからではないか、と話す。 「明治以降の近代皇室においては、天皇家も宮家も相応の財産を持っていたこともあり、宝冠など装身具は私的な費用で賄っていました。黒田清子さんのティアラもその流れだったと記憶しています。日常費で制作したものは、扱いがあいまいなところもある。昔の皇族のように、『娘に持たせてあげたい』、と結婚先で大切に保管されているものもあると聞きます」  お手元金で制作した黒田清子さんのティアラは、ご本人のものだ。そのため、「借用」という形になった。  さらには、前述したように、内親王と女王というご身位の違いによって、ティアラの金額も異なる。 「眞子さんの結婚のタイミングは、ギリギリまで読めませんでした。加えて、同じ内親王でも、天皇家の娘である愛子さまと、皇嗣家の眞子さんと佳子さまでは立場も異なる。同じ皇女である清子さんのティアラが格という点でも、相応しかったのでしょう」(皇室の事情に詳しい人物)  異例続きとなったのは、ティアラだけではない。  女性皇族、特に内親王は、二十歳の成年を迎えた際と結婚して皇籍を離れる際に会見を開き、記者の質疑に答えるのが恒例だった。  いまのところ、愛子さまの記者会見は、日程が決まっていない。成年の会見は、その成長を国民が感じる大切な機会でもある。  眞子さんが皇室を離れたいま、愛子さまへの期待は、高まっている。 (AERAdot.編集部 永井貴子)

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    沢田研二が「京都市文化功労者」に ファンが近影にざわつく!

     コロナ禍で中断していたライブ活動を再開させ、目下、全国ツアー中の沢田研二。そんな沢田が11月22日、令和3年度京都市文化功労者として表彰される。日本レコード大賞、ゴールデンアロー賞など音楽・芸能分野の賞を総なめしてきた沢田だが、今回のような行政からの表彰を受けるのは初めてのことだ。  京都市文化功労者は1968年創設。京都市の文化の向上に多大な功労のあった者を対象に、文化人、学者らからなる京都市文化功労者審査会が選定する。昨年までに片岡仁左衛門(十三代目)、千宗室、瀬戸内寂聴ら287人が受賞している。  京都市の担当者によると今回、沢田が選定されたのは京都出身の音楽家・俳優として多大な活躍が認められたため。67年、ザ・タイガースでのデビュー以来、50年以上にわたり間断なく活躍し続けていることが評価されたようだ。  近年、安倍晋三政権を痛烈に批判するなど、行政とは一定の距離を置いている印象のあった沢田。しかし、今回に関しては「代理人の方を通して受賞していただけるか打診したところ、ご快諾いただけました」(前出の担当者)という。やはり故郷・京都には格別の思い入れがあるのだろうか。  SNS上では、ファンたちが「おめでとう」「うれしすぎる」など大きく反応。また、京都市がホームページ上で公開した広報資料に掲載された沢田の写真もちょっとした話題になった。近年、公の場にめったに姿を見せず、メディアへの画像提供にもシビアな沢田だけに、ファンにとっては現在の様子がわかる写真一枚すら貴重な情報。だが、掲載されたのは正面を向いて無表情という免許証のようなお堅い一枚で、ファンからは「痩せた」「先生みたい」と、うれしいツッコミの声も上がった。 「写真は他の受賞者と同じく沢田さんサイドにお願いしてマネジャーさんに送っていただきました。こんなに話題になるとは、想像以上でした(笑)」(同)  ちなみに、11月15日に京都市のホームページ上で情報公開された時点では、沢田のプロフィル記載に若干の誤記があったのだが、何人かのファンが問い合わせて即座に訂正させるという珍事も起こっていたようだ。  11月22日の表彰式は、同日に福岡市でのライブが重なったこともあり欠席の沢田。表彰を喜ぶ姿が見られないのは残念だが、ライブのMCで何かしら感慨を語ってくれることを期待したい。(中将タカノリ)※週刊朝日  2021年12月3日号

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    結婚5年半「一度も肉体関係がない」と告白した36歳女性 鴻上尚史がいくつもの質問で浮かび上がらせた“悩みの本質”

     結婚して5年半、「私は怖がり、痛がりで、一度も性交がない」と告白した36歳女性。「私のような者は存在するのか」と苦しむ相談者に、鴻上尚史がまず訊ねた「大切な質問」とは。 【相談124】結婚して5年半になります。交際以来、一度も肉体関係がありません(36歳 女性 こに)  鴻上さん、はじめまして。悩みに悩み、ご相談させて頂きます。私は、結婚して5年半になる女性です。25歳の頃、夫とお付き合いをはじめて、5年3カ月ほどで結婚に至りました。共働きですが、休日が重なることが多く、物理的にも常にすれ違いということはありません。また、夫婦仲は良く、お互いに仕事のグチをこぼしあったり、家事を協力して行ったりと、どこにでもいる夫婦だろうと思います。  ただひとつのことを除いては……。実は、交際が始まってからこれまでずっと、一度も肉体関係がないのです。もっといえば、生まれてから一度も、夫に限らず、私はそういった体験がありません。私は、とにかく怖がり、痛がりで、一番の原因はそこだろうと思うのです。あとは、分からないというのも正直なところです。どうして自分はこんななのだろう、情けない、辛い、悲しい、申し訳ない、悔しい、どこかおかしいのではないか……そういった思いが常にあり、毎日苦しいです。  子どもが欲しいという気持ちも強く、年齢のこともあるので焦りもかなりあり、夫と共に、少しずつそういったことにつながるようなスキンシップをとるようにしていますが、なぜ他の人が当たり前にできることが自分だけできないのかと辛いです。これまでに性的なことでトラウマになるような体験はありません(レイプや痴漢など)。  このことは、夫と信頼できる元同僚一人しか知らず、親や親戚は、そんなことは夢にも思っていないと思います。子どもができにくいのかなと思っていると思います。職場の上司にも子どもが欲しい旨は伝えており、気にせず休んだらいいんだからとあたたかい言葉を頂いています。まわりを騙しているようで心苦しいです。よく若いカップル(女性側)の話で、結婚までは性行為をしたくない、恐怖があるという話を聞きます。子どもが欲しくても、身体のことでできないという方がいらっしゃるのは、もちろん知っています。  しかし、結婚し、仲が悪いわけでもなく、トラウマがあるわけでもなく、物理的に時間がないわけでもなく……行為が何年も、1回も、できないという私は、異常だと思います。どうにかできるようになりたい、子どもも欲しい、その気持ちは確かであり非常に強いものなのです。世の中に、私のような者は存在するのでしょうか。できずに一生を終えることもありうるのでしょうか……。夫は、自分がうまくリードできてない、毎晩スキンシップを重ねていくなかで前進していると自分は思っている、大好きだということは言ってくれています。 【鴻上さんの答え】 こにさん。大変な相談ですが、じつは、この文章だけではまだよく分かりません。「私は、とにかく怖がり、痛がりで」と書かれていますが、具体的にどういう風にできないのかが分かりません。「分からないというのも正直なところです」と書かれていますが、自分の精神状態が分からないのか、身体的な理由が分からないのか、何がどう分からないのかが重要だと思います。  先に言えば、肉体関係を持たなくても子供を作ることは可能です。ネットで調べれば、すぐにいろんな方法が出てきます。ですから、子供を作るために肉体関係を持たなければ、と焦ることはないと思います。  それよりは、「どうしてできないのか?」をゆっくりと探っていくことが大切だと思います。  こにさん。僕はカウンセリングを受けることをお勧めします。恥ずかしいと思われるかもしれませんが、僕に相談しても、結局、一人で悶々としていては、解決の方法は見つからないと思います。  どのレベルで肉体関係が持てないのか、そもそも肉体関係に興味がないのか、肉体関係を持とうとするとどういう精神状態になるのか。身体的にはどんな拒否反応を見せるのか。 「LGBTQ+」の分類に、「アセクシュアル」があります。「恋愛感情の有無に関わらず、他者への性的欲求を経験しない人」です。恋愛感情も性的欲求も感じない人もいれば、恋愛感情はあるけれど、性的欲求をまったく感じない人もいます。統計的には、一定数、アセクシュアルの人はいて、別に珍しいことではないのです。  こにさんは、性的欲求はありますか? それとも、「肉体関係は必要だ」と頭で思っているけれど、具体的な欲求はあまり感じませんか? 「夫婦は肉体関係があるもの。ないことはとてもおかしい」と頭から決めつけて、自分の欲求とか感覚を無視していますか? それとも、はっきりとした性的欲求はありますか? 大切な質問ですが、マスターベーションはしますか? したことはありませんか?  ね、尋ねたいことは山ほどあるのです。ですから、この相談の文章だけだと何も分からないのです。  こにさんのような状態は、珍しくないと思います。みんな、性的なことは恥ずかしいから黙っているだけです。ぜひ、メンタルクリニックか心療内科、精神科のカウンセリングを受けることをお勧めします。  僕に相談のメールを送れたんです。カウンセリングを受けるのは、あとちょっとした勇気です。  ぜひ、一人で悩まず、相談して下さい。きっと、何かが見えてくると思いますよ。 ■本連載の書籍化第3弾!『鴻上尚史のますますほがらか人生相談』が発売中です!

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    都心タワマン新築1億円を共働き夫婦が「買える」理由 パワーカップルの意外な金銭感覚

     コロナ禍で田舎暮らしへの憧れはあるものの、都心で働く夫婦が家と買うとなればやはり首都圏の物件が現実ではないだろうか。共働き夫婦のリアルな事例事情や最近の不動産動向を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。一回目のテーマはパワーカップルとタワマン。首都圏の新築マンションの価格は高騰し、タワーマンションならば1億円超えの「億ション」も珍しくなくなった。資産家の投資用かと思いきや、普通の会社員夫婦が購入して住んでいるのだという。共働きで稼ぐ、いわゆるパワーカップルだ。 *   *  *東京都中央区、最寄り駅から徒歩5分、33階建ての新築タワーマンションの一部屋。窓からはいかにも東京らしい都心のビル群や湾岸エリアが一望できる。ここを約8千万円で昨年購入したのは会社員男性のAさん(41)だ。  「夫婦ともに定年まで辞めるつもりはないので、払えると踏んで購入しました」  都内の大手商社に務めるAさんは、広告代理店勤務の妻(40)と夫婦二人暮らし。共働きのAさん夫婦の世帯年収は、約1600万だ。頭金1千万円を夫婦の貯金で支払い、残りの7千万は35年の住宅ローンを組んだ。月々の返済額は、管理費と合わせて22万円程度。夫婦の手取り月収は合わせて78万円前後なので、毎月約28%の収入がローン返済に充てられることになる。かなり高額な買い物だが、会社の同僚には1億円超えの物件を購入した人もいるという。  Aさんの背中を押したのは、「駅近で都心までのアクセスも良く、活気あるエリアの物件で、今後も一定の資産価値を維持できるだろう」という不動産屋の言葉。購入時と同じ8千万円の価格か、それ以上に価値が上がる可能性もあると期待している。一生住むつもりで買った物件だが、「何かあれば買った金額で手放せるはず」ということが、安心感に繋がっているという。 「言ってみれば、貯蓄効果もある買い方。もちろん高い買い物ではあるけれど、値段が下がりづらい物件を買うことは、資産防衛術とも言えると思う」(Aさん)  コロナ禍で景気低迷ばかりが取り沙汰される現在だが、実は首都圏を中心に、高額の新築マンションを買う人が増えている。主な購入層は、「パワーカップル」とも呼ばれるAさん夫妻のような高収入の共働き世帯だ。首都圏のマンション価格は年々高騰しており、不動産経済研究所の2021年度上半期(4~9月)の新築マンションの一戸当たり平均価格は、首都圏(1都3県)で前年同期比10.1%増の6702万円。1973年の調査開始以来、上半期としてバブル期を超える最高値を記録し、高額の東京都心の物件を中心に人気が集まっている。  都心のタワーマンションといえば、不動産業界でも、以前は限られた富裕層のみが買う「特殊住戸」と呼ばれていた。一定の収入がないと買えない物件であることは今も変わりないが、その敷居は以前に比べると下がっており、積極的な購入層は世帯年収1千万~2千万円前後の会社員だという。Aさんはその典型例だろう。  なぜ、会社員夫婦がこうした物件の購入ができるようになったのだろうか。  まず、背景にあるのが、超低金利という今の時代だ。頭金をそれほど用意せずとも、長期のローンを組むことで、年収の高い会社員であれば6000~7000万円程度は容易に借り入れすることができる。夫婦ともに稼ぐ共働き世帯ともなれば、2人で1億円を超えるローンも組むことができる時代だ。大手銀行の借り入れ限度額は1億円が主流だが、ここ数年で高額物件用の借り入れ需要が増している背景から、新興金融機関では上限2億円超えまで対応しているところも多い。こうして夫婦両輪で多額のペアローンを組み、新築の億ションを共有名義で買っている世帯が増えているという。  「一昔前まで住宅ローンの返済額の目安とされていた『世帯収入の20~25%が上限』というセオリーが崩れ、過大なローンを組む人が増えている」  こう指摘するのは、大手デベロッパー出身の不動産コンサルタント、長谷川高さん(長谷川不動産経済社代表)。初めて家を購入する平均年齢は、40歳前後の現在。働き盛りで管理職などになり、それなりの収入を得られていると実感しやすい年齢だ。また、共働きが当たり前の時代になったことも大きい。 「少し前までは、夫婦共働きであっても、どちらか一方の収入を元にローンを組むことが一般的でした。ですが今は、夫婦両輪の“大車輪”のごとく、多額のペアローンを組む例が珍しくない」(長谷川さん)  ローン完済年齢も上がってきている。人生100年時代、60歳以降も働くのが当然という意識を持つ人は多い。「10年ほど前までは、60歳以降は働かない前提で考える人が多かったのが、ここ最近は70歳まで働くことを見据えてローンを考える人が増えている」とは、首都圏を中心とした住宅購入における相談実績も多いファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)。  Aさん夫妻も、仕事が生活の中心というライフスタイルを変えるつもりはなく、今後子どもを持つ計画もない。ともに働き盛りの40代。仕事は多忙を極め、帰宅は連日深夜がお決まりだ。終電を逃してタクシーで帰宅することも多く、会社のある都心に近いことは必須条件だった。40歳から35年のローンとなると、完済時の年齢は75歳。だが、繰り上げ返済を計画的に行うことで、60~65歳のローン完済を目指している。 「今の社会の流れを見ると、自分たちの頃には70歳まで働くことが当たり前の時代になっているのでは。年金には期待できないけれど、長く働くことで一定の収入は得られるはず」(Aさん)  こうした時代の流れに加えて、タワマンを購入するパワーカップルは「意外と生活は堅実」という点も特徴かもしれない。冒頭のAさん夫妻も高収入ではあるが、ブランド物を買ったり、頻繁に贅沢な食事をしたりするわけでもなく、夫婦一緒に毎月コツコツと貯金を続けている。頭金として1千万円を用意できたのも、浪費をせず、計画的に貯金してきたからこそだ。つまり、ぜいたくな暮らしをしたいからタワマンを購入したわけではないのだ。タワーマンションなどいわゆる高級マンションに住む理由は、ステイタスやブランド意識からではなく、Aさん夫妻のように「資産価値が優れていて、価格が下がりづらい」という背景から選ぶ人も多いという。  不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。 「確かに都心のタワーマンションはよく売れていて、積極的に買おうとする動きが活発です。ただ、こうした物件を購入する会社員夫婦は、資産を持て余しているから買うのとは少し違います。自分たちの収入の中で買える範囲で、なるべく資産価値を維持できる住宅を求めており、“稼いだお金を減らしたくない”と考える人が多い」  すなわち、現金という流動資産を一旦「タワーマンション」という固定資産に変え、十分に利用したら、またほぼ同じ金額の流動資産や他の固定資産、金融資産などに変えるという作業を計画的に行うという流れだ。 「つまり1億円で買ったマンションが、10年間住んだ後も1億円で売れる可能性が高い、という理由からタワーマンションを選ぶ人も少なくない。タワーマンションは、街の再開発とセットで建てられるケースも多く、一般的に駅近であればなお価値が下がりにくいと言えます」(後藤さん)  Aさんもこんなことを言っていた。 「いざとなれば、買った時と変わらない金額で手放せる物件。この新築タワーマンションは、その条件に当てはまると思いました」  なるほど、今、タワマンを買うのは意外と堅実な選択肢なのかもしれない。しかし、大きな買い物には、ときに意外な落とし穴が潜んでいるもの。次は、長い目で見たときの不動産リスクについて説明しよう。(松岡かすみ) >>【後編:新築マンション高騰の裏で設備がチープ化?ローンを返せない共働き夫婦も 超低金利時代の落とし穴】に続く

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    コレステロール、中性脂肪は「男女」「年齢」で基準値が違う! 参考にするべき数値をチェック

    「人の老化は血管から始まる」ともいわれるように血管ケアはアンチエイジングの要。年齢を重ねることで硬くなっていく血管をケアしていくには日々の食事や運動で脂質をコントロールすることが大切です。まずは、コレステロールや中性脂肪の値を知ることがセルフケアの第一歩。女性は年齢に応じた基準値があるのでチェックしてみましょう。今回は女性の血管ケアについて、日本の「性差医療」の草分け的存在である天野惠子先生にお聞きしました。今回は、前編・後編の前篇をお送りします。(自分で自分の健康を守るための健康情報を発信する「セルフドクターWeb」より転載) *  *  * 動脈硬化は他人事じゃない  女性ホルモンのエストロゲンには、血管が正常に機能するのを助ける働きと共に、LDLコレステロールを減らすなど、動脈硬化を抑制する作用があります。そのためエストロゲンが多く分泌されている20~30代までは、特別なケアをしなくても血管は比較的しなやか。これは30代から動脈硬化が見られる男性とは明らかな違いといえます。  ところが女性も閉経を迎え、エストロゲンの分泌が止まると共に、血管の硬化が急速に進みます。血液中を流れる脂質にはコレステロールや中性脂肪がありますが、これまでエストロゲンによって抑えられていたそれらの数値も自然と高くなり、血液の流れを妨げることに。動脈硬化の進行に大きく影響してしまいます。  さらにLDLコレステロールが血管の内壁にたまったものが、やがてドロドロの粥状のこぶのようになります。これがプラークです。プラークが破れると、そこに血栓ができて血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞の発症につながるのです。 「閉経前の女性が動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を発症する割合は低く、男性の約5分の1といわれています。ところが閉経後の55歳くらいから発症率はぐんとアップしてしまいます」と天野先生。女性は閉経後、意識的な血管ケアが必要不可欠となるわけです。  閉経前にはエストロゲンによって動脈硬化から守られている女性たちでも、「その効果を帳消しにしてしまう危険因子がある」と天野先生。それが「喫煙」です。タバコに含まれるニコチンの作用で血管が収縮して血流が低下。血管は硬くなり、動脈硬化が進行します。喫煙をしている女性は吸っていない人より、急性心筋梗塞のリスクが8.2倍も高まることが分かっています。 コレステロールや中性脂肪の数値をチェック  コレステロールや中性脂肪は増え過ぎると血液の流れを悪くし、血管にも悪影響となります。でも、これらの脂質は決して健康の敵ではありません。細胞膜やホルモンの原料となったり、体を動かすエネルギー源となったりする大事な要素なのです。  女性の場合は、閉経後に急に脂質の数値が高くなった方もいるでしょう。でも、慌てないで。女性の体の変化に対応した基準範囲があるのです。 「そもそも女性と男性ではコレステロールや中性脂肪の検査値が違って当然。それなのに、これまでは男性も女性も同じ値で見ていました。また、女性はエストロゲンの分泌量が年齢で変わるため、年齢によっても基準範囲は変わります」と天野先生。女性が参考にしたいのは、下記の男女・年齢別に分けた基準範囲です。なお、総コレステロールとは、LDLコレステロールやHDLコレステロールなどを合計した血液中のコレステロールの総量です。下記の基準ではHDLコレステロールの基準範囲は示されていません。 更年期を迎えたら、全身をくまなく検査したい  エストロゲンの分泌が減少すると循環器、消化器、呼吸器などの活動を調整している自律神経も乱れやすくなり、体のあちこちにトラブルが起こるようになります。よくないのは、不調があっても、「更年期だから仕方ない」と放っておいてしまうこと。実は脳血管障害の症状だったケースもあるそうです。そこで先生は、「女性の体がダイナミックに変わる節目の50歳あるいは閉経を機に、頭から足の先まで自分の体の状態をきちんと検査することが大事」と提案します。  栄養素や酸素を行き渡らせる血液の流れが滞ると、体のどこかに支障を来します。全身を検査することは、全身の血管に詰まりがないか、動脈硬化がないかの確認でもあるのです。健康診断だけでは十分とはいえないため、自費にはなりますが病院やクリニックで行っている個別検診で、詳細に調べることをおすすめします。 こんな検査を受けておこう  健康診断や特定健診で行う身体測定(身長・体重・BMI・腹囲を測る)や血液検査、血圧測定(血圧脈波検査)に加えて、より精密な検査が行える個別検診。それによって、健康診断では見落とされた疾患や異常が見つかることも。女性特有の病気を網羅した検診メニューを用意しているクリニックもあります。 <脳検査>MRI(脳実質撮影)、MRA(脳血管撮影)などで脳血管疾患を調べる。 <循環器検査>心臓や血管の状態をチェック。動脈硬化や心血管疾患の有無を調べる。 頸動脈エコー検査 胸部エコー検査 胸部X 線検査 冠動脈CT 検査 心電図 <血液検査>女性に多い甲状腺機能障害や膠原病、関節リウマチの素因の有無を調べる。 甲状腺機能 抗核抗体 リウマチ因子 炎症反応 ホルモンチェック 腫瘍マーカー <眼科検査>眼底検査で高血圧や動脈硬化の進行、糖尿病の発見、眼球の病気の有無をチェック。 <婦人科検査>子宮や卵巣のがん、乳がんなど、40代以降にリスクが高くなる病気を検査。 子宮頸がん検査 子宮体がん検査 経腟超音波検査 乳房視触診 マンモグラフィー 乳房超音波検査 <その他> 骨密度検査 PET-CT 検査 更年期の悩みはどこで相談できる?  更年期に起こる心身の不調は、診療科を特定できないことが多いもの。そんな時は女性の全身症状をトータルで診察してくれる「女性外来」への受診をおすすめします。女性外来の先生は呼吸器、内分泌、循環器などと専門分野は違いますが、性差医療について勉強しているため、メンタル面も含めいろいろと相談にのってくれるはずです。女性外来の受診をきっかけに、かかりつけ医をもつとよいでしょう。 全身を検査する費用はどのくらい?  健康診断や特定健診の費用は無料か、有料でも低額です。全身を診る個別検診の場合、基礎検査を中心とした日帰りの費用は平均3~8万円くらい、泊りがけでMRIやMRA、PET-CT(※)、エコー検査を行って、より詳しく検査する場合は10万円以上かかることも。個別検診は健康保険の適用外なので、費用は全額自己負担。ただし居住地の市町村や所属している健康保険協会、健康保険組合、あるいは契約している保険会社によっては、補助金や助成金、割引サービスが受けられる場合があるので、問い合わせてみましょう。 ※PET(陽電子放出断層撮影)検査とCT(コンピュータ断層撮影)検査を融合させた検査。がんの発見に役立つ。 <後編>「硬くなっていく血管をケアするには? 医師がすすめる日々の食事と運動の方法」に続く 監修/天野惠子(あまの・けいこ)先生 一般財団法人野中東晧会 静風荘病院特別顧問。日本の「性差医療」研究の草分けとして普及に努め、鹿児島大学及び千葉県にて、性差に基づく女性医療の実践の場として女性外来を立ち上げ、治療に当たる。2009年より現職。日本性差医学・医療学会理事。 セルフドクターHP

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    19時間前

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    マンション高騰の裏で設備がチープ化?ローン返せない共働き夫婦も 超低金利時代の落とし穴

     首都圏で家を買う夫婦のリアルな事例や最近の不動産事情を探った連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回のテーマはパワーカップルとタワマン。首都圏の新築マンションの価格は高騰しているものの、会社員夫婦の購買意欲は旺盛だ。超低金利などの条件がそれを可能にしている。だが、リスクはないのか。専門家にきいた。 >>【前編:都心タワマン購入パワーカップルの意外な生活感 新築1億円を共働き夫婦が「買える」理由】から続く *     *  *バブル後の景気低迷から、「超低金利時代」と言われて久しい日本。だが、大手デベロッパー出身の不動産コンサルタント、長谷川高さん(長谷川不動産経済社代表)は「超低金利が当たり前という時代を生きてきた世代が、リスクをよく考えずに多額のローンを組んでいる」と警鐘を鳴らす。 「今は、夫婦両輪の“大車輪”のごとく、多額のペアローンを組む例が珍しくない。今は良くても、病気や事故、子育てや転職などで、どちらかの収入が減ったり途絶えたりするリスクは当然ある。借り入れ金額を増やしてしまうことで、教育費などの支出がかさみ、ローンの支払いに窮するケースもよく見られています。借りられる金額が、必ずしも返せる金額ではないということを考えるべき」  高額な借入金である住宅ローンは、組み方を失敗すると、自らの人生を不幸にしてしまうほどのものとも言える。超低金利時代とは言え、固定金利にするか変動金利にするかも、リスクの面から見ると大きな差がある。超長期固定金利の住宅ローン金利が低い今は、原則的には「全期間固定金利(超長期)」でローンを組むことを考えた方がいいそうだ。 「不動産会社の営業マンは、少しでも月々の支払額を安く見せたいので、『ほとんどの方は変動金利で借りています』などと、変動金利を奨めてくることも多い。ですが金利上昇リスクのある変動金利で借りることは、大きなリスクを背負うことになる。『金利が安いのは当たり前』だと思い込むと、こんなはずじゃなかったということになりかねません」(長谷川さん)  また人生100年時代といえども、定年後も長く働くことを前提にローンを組むこともリスクが高い。会社員で高収入である仕事は、一般的に多忙であることが多い。忙しく働き続けることで、体調を崩すことがないとは言い切れない。 「10年ほど前までは、60歳以降は働かない前提で考える人が多かったのが、ここ最近は70歳まで働くことを見据えてローンを考える人が増えている」とは、首都圏を中心に住宅購入における相談実績も多いファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)。40代半ば~後半の住宅購入も増加傾向にある中、「定年後もローンを払い続けるシナリオにしかなり得ないが、本当に大丈夫だろうか」といった相談も増えているという。 「危機管理という視点では、夫婦共働きであっても、『どちらかが働けなくなったら』という視点のもとでローンを組んだ方が良い。『70歳まで健康で働けるはず』と、自分が病気をしない前提で考えることにもリスクがあります。また総支払額だけを見て、『住宅ローンは短めに組んだ方が有利』と、最初から短期間のローンを組むことは危険。長期の住宅ローンを組み、繰り上げ返済をうまく利用して、結果的に短期間で完済することはできても、一旦短期で組んだ住宅ローンを長期にすることは原則としてできません」(飯田さん)  新築マンション価格が高騰し、高止まりが続く中、「今は新築マンションを買うことは避けた方が良い」という声もある。新築マンションの価格は、土地や建物などにデベロッパーの利益やプロモーション費用などを積み上げて価格を算出する原価法から導き出す「積算価格」によって決まる。一方、中古マンションは、主に物件周辺の取引事例から価格を算出するのが一般的だ。現在の新築マンション価格高騰の背景には、アベノミクスや日銀の金融緩和などの影響に加え、東日本大震災の復興や五輪開催に向けたインフラ整備のための人件費の上昇、資材の高騰による工事費や土地価格の上昇などの要因もある。不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。 「物件の条件にもよりますが、一般的には今のような価格高騰の時期に新築マンションを買うと、将来売却する際に、価格が下落する可能性が高いと言わざるを得ません。一方で、ITバブル崩壊後の2002~2004年や、リーマンショック後の2009年、東日本大震災後の2011~2012年などは新築マンション価格が低くなりました。本来であれば、新築マンションは、このように価格が下がるタイミングで買う方が購入額を維持しやすいですし、場合によってはリセール時の値上がり益(キャピタルゲイン)も狙える」  現に、1990年前後の不動産バブル期に高騰した価格で家を買い、30年ほど経った今、その物件を売ろうとしているケースでは、購入時の価格の3分の1~半額以下になることも多いと言う。前出の長谷川さんも、こう続ける。 「私のところに相談に来られる60代前後の方も、『あの時あんなに高い金額で買ったのに、これっぽっちの金額でしか売れないなんて……』と肩を落とす人は多い。資産価値を見込んで買ったとしても、この先絶対に価値が下がらないとは誰にも言えません」  さらに新築マンション価格の高騰の裏で、少しでも価格を抑えるための手段として、面積を狭くし、設備をチープ化している物件が数年前と比べて多く見られるのも、今の傾向だという。 「例えばスロップシンク(バルコニーなどに設置されている流し)やアルコープ(共用廊下から各住戸の玄関部分までの空間)など、数年前まではマンションの標準設備として比較的多く存在していたものが、今の新築マンションではなくなっているケースがよく見られます。“建物全体の顔”であるメインエントランスは、かなり豪華な仕様にしているものが多い一方で、専有部分はチープ化が進んでいる。この傾向から見ても、単に“新築であること”に惑わされず、しっかり物件を見極めることがより大事になってきています」(後藤さん)  もちろん、個々の条件によっては資産価値を維持できる可能性の高い新築マンションもある。大切なのは、「このまま超低金利時代が続くはず」「資産価値が絶対に下がらないはず」「70歳まで働けるはず」などと、先々を楽観的に考え過ぎて動かないことだ。先行き不透明で不安定な時代、「住宅ぐらいは確かな資産価値であってほしい」と願う声も理解できる。だが、人生100年時代、いつ何が起こるか分からない。  会社員でも億ション購入が夢じゃない時代。多額のローンを抱える前に、今一度リスクを想定したシミュレーションを練ってみてはどうだろう。(松岡かすみ) >>【11月27日10時公開】中古マンション争奪戦「10年間、タダで住めたようなもの」世帯年収800万円夫婦も狙う物件とは

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    眞子さまの結婚どう思う? 瀬戸内寂聴が27歳スタッフに質問した結果

     半世紀ほど前に出会った99歳と85歳。人生の妙味を知る老親友の瀬戸内寂聴さんと横尾忠則さんが、往復書簡でとっておきのナイショ話を披露しあう。*  *  *■横尾忠則「スジ金入りの肉体的朦朧体、大観より本格派です」 セトウチさん 耳が聴こえなくなったと言うと、「きっと作品が変るわよ」と、ベートーベンじゃあるまいし、変なことおっしゃると、その時はそう思いましたが、本当に変ったんです。その変り方が理に適(かな)っているといえば適っている。つまり聴こえないことは、音の輪郭が失くなることです。そうなると音が朦朧(もうろう)となって、横山大観の朦朧体の絵のように音がボケて聴こえるんです。耳がボケると、日常生活もボケて、曖昧模糊(あいまいもこ)となって、したことと、してないことの区別もわからなくなるんです。つまり虚実の区別ができなくなって、夢で見た仕事の依頼を、本当に依頼されたと思って、やっちゃったりするんです。ボケの症状に似てるけれど、ボケ老人になったんではなく耳のせいだと理解しているので、そこはまだ理性がコントロールしています。 ハイ、絵の話だったです。大観は思想で朦朧体を描きましたが、僕はスジ金入りの肉体的朦朧体なので、思想のようなチョロコイ考えではなく、肉体的ハンデキャップによる堂々たる自然体派です。大観よりこっちの方が本格派です。そんなわけでセトウチさんの大予言は的中しました。 先っきも言いましたが境界線が失くなるということは自由のキャパシティも拡張したことになります。近代人は何でもかんでも境界線を引いて、全てを分業化します。縄文時代はひとりの人間が、多面的に物事をこなしていました。狩猟(しゅりょう)も農業も、漁業も工芸も、子育ても、教育もひとりでするという、境界線をはずした労働生活です。現代のような役割分担などしません。正に多義的です。越境した狩猟社会です。 難聴が与えてくれた神の恩寵です。だから病気の高徳です。僕が度重なる病気によって救われてきたということはこういうことです。神は人間に色々な苦難を与えますが、病気は罪ほろぼしでもカルマ落としでもなんでもないのです。人間の進化向上のためのカリキュラムだと思えばどうでしょう。難聴のほかに、腱鞘炎(けんしょうえん)にもなりました。もう、セトウチさんの「幻花」のような繊細(せんさい)な描写の絵など描けません。今は太い筆やハケを握りしめて、キャンバスにバンバン叩きつけるように描いています。それも痛いので、左手で描きます。左手は思うような形が取れません。幼児の絵より下手くそになります。でも、デュビュッフェは幼児の絵のマネをして、幼児風に描きますが、そんな意図的なことをしなくても、僕の左手はそのまま幼児以上に下手に描けます。これもハンデキャップから来た自然体です。 今書いている手紙では、前にも同じことを書きましたかね。境界を越えると時間差もなくなって、やったことと、やらないことの区別がわからなくなるのです。いよいよ本格派老人です。100歳老人のセトウチさんにも負けていません。ただ僕はセトウチさんのように年齢には拘っていません。拘っているのは他人の方で、今行っている展覧会では「85歳、85歳」と年齢を売り物にされています。歳のことは言うな! アーティストには年齢はないのです。昨日の続きが今日、今日の続きが明日です。原始社会では年齢など無関係です。アーティストは原始人です。■瀬戸内寂聴「私もヨコオさんに負けないように!」 ヨコオさん 何だか、ずいぶん久しぶりにこの往復手紙を書いているような気がします。 それにしても相変わらずコロナは豪勢を極め日本はおろか、世界的にその力を奮っています。 コロナのせいで、人に会えず、寂庵はずっと門を閉めっぱなしです。コロナになる前はもちろん、一も二もなく門内に入ってもらっていました。 大抵遠く九州や東北から来られた人で、まだ生きている私に逢えたと言って、抱きついて泣き出します。もちろん、私は丁寧にお迎えして、写経などしてもらい、お茶菓子を一緒に食べて、しばらくその人のお話を聞きます。つきあいの人もあれば、寂庵の信者を自称する人もあり、初めて門内に入ったという人もいます。「まさか、門内に入れてもらえると思わなかった」と泣き出す人もあれば、「生きている寂聴さんに逢えた!」と、子供のように足を踏み鳴らす人もいる。「とても百歳には見えない!」と誰もが感嘆してくれるが、終日ベッドに横になり、本ばかり読んで、一日を過ごしている私の毎日の状態など話せない。私は、人に逢っている間だけは、必死になって元気らしさを演じ、声を張り上げる。客の帰る時は、長い廊下の途中で、へばってしまい、さっさと歩く客の跡がおえない。 ──だって百だもの……──と、私は廊下の途中で、ペシャンコに座り込み、つくづく、自分に向かって言う。 食事だけは時間が来ると、しゃきっと体がのび、食卓の自分の位置に早々と座り込んでいる。「あら、お昼はもう召し上がりましたよ!」 スタッフの一人が、わざと大きな声を張り上げる。「私のスパゲティは、どうしてこんなに美味しいのだろうなんて、お世辞までいただいて」「そうよ、ほんとに! でも今ここに座ったのは、食べるためでなくて、眞子さんの結婚をどう思うかって、寂庵で一番若い二十七歳のP子の意見を聞きたいのよ」「ああ、眞子さん、ほんとに、よかったですね。大体、みんなあんまりこの結婚に意地悪すぎましたよ。でも、どうして一時金を眞子さんは辞退なさるのかしら? 貰う権利のあるお金でしょう? あんまり弱気にならない方がいいと思うけど……」 ヨコオさん、今、寂庵の中は、こんなにのんびりしています。耳が聞こえないのは、私も同然です。テレビの時なんか、びっくりするほど大きな声にしてくれるので、何とか会話が出来ています。鶯も、秋の夜の虫の音も、私の耳にはさっぱり聞こえません。ヨコオさんとTELしてるのを横で聞いてる人があれば、どんなにおかしいでしょうね。耳だけでなく体のあちこちがどしどし衰えてきます。 そのうち、きっと、自分の死んだこともわからなくなって、──ヨコオさんにTELして!──など叫んでる日が来るのでしょうね。でも目がよく見えているので、一日に二冊は厚い本を読み切っています。ヨコオさんの展覧会、ますます人気上昇でおめでとうございます。私もヨコオさんに負けないよう、あっとこれまでと変わった小説を二つくらい書き残して死にたいものですね。 では、また。※週刊朝日  2021年9月17日号

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    「授業準備は5分」に「小学校をなめているのか」 公立教員残業代訴訟の「仕分け」に教員ら困惑

     公立小学校教員が未払い残業代を求めた訴訟で、司法が勤務時間外の労働時間を仕分けた。現場の実態や価値観と合わないチグハグさが、大きな波紋を呼んでいる。AERA 2021年11月29日号の記事を紹介する。 *  *  * 「翌日の授業準備は1コマ5分」「保護者対応はしません」──。もしそんな小学校教員が子どもの担任だったらどうだろうか。一方でその教員は「扇風機の清掃とビニール掛け」「エアコンスイッチ入り切りの記録」には時間を割いている。冗談に思われるかもしれないが、こんな教員が全国で増えても不思議でない状況が生まれているのだ。  10月1日、全国の教員が固唾(かたず)をのんで見守った裁判の判決が出た。埼玉県の公立小学校教員の田中まさおさん(仮名・62)が、時間外労働に対して残業代が支払われないのは労働基準法違反だとして、県に未払い賃金の支払いと国家賠償を求めた裁判だ。教員の慢性的な長時間労働は残業代が発生しないことが元凶とし、歯止めをかける狙いだった。だが、さいたま地裁は訴えを退けた。  公立学校教員の給与は、1971年に制定された教職員給与特措法(給特法)で規定されている。教員の仕事は裁量が大きく特殊だとして、月給の4%分の教職調整額を支給する代わりに、残業代を支払わない。ただし、制定にあたり長時間労働を招く懸念の声があったため、残業させられるのは、校外実習、学校行事、職員会議、非常災害の「超勤4項目」に限った。 ■「自発的行為」なのか  ところが、田中さんは月平均約60時間の残業のうち、9割が4項目以外の業務だと主張。しかも、それらの業務は必要に迫られて行っているのに、教員が好きで勝手にやっている「自発的行為」と見なされ、賃金の対象外にされているのは「おかしい」と訴えているのだ。  これに対して地裁は、田中さんが提出した残業の内容を「労働時間」か否かに仕分けし、時間数も計算。その結果、時間外の労働時間を認めたものの、未払いの残業代の支払いについては給特法が適用されるとして棄却。国家賠償についても、賠償に値するほどの時間量でないとして認めなかった。  その仕分けの一部を抜粋した。これが公開されるや大きな波紋を呼んだ。とりわけ教員から困惑の声が多く上がったのが、「翌日の授業準備は1コマ5分」が相当とする判断だ。  50代の女性教員は言う。 「小学校をなめているのかと思いました。例えば理科の実験授業があるときは、予備実験をします。児童は毎年違うため、同じ実験でもやり方を変えるのです。こうした地道な準備を通して、私たちは授業の質を保ちます。司法にこんなことを言われて、文部科学省や教育委員会は抗議しないのでしょうか?」  労働時間か否かを分かつ大きなポイントとなったのが、校長の指示や命令があったかだ。  SNSには「『労働時間でない』と司法が線引きした残業についてはやらない。断ることだ」「これからはひとつひとつの業務について、校長に『それは命令ですか?』と確かめる必要がある」といったような教員の声が見られた。一方、「労働時間として認められないからといって『保護者対応も教材研究もやりません』なんて無責任なことを教員はできない。それを見越して、つけ込まれている」のようなジレンマの声も少なからずあった。 ■未来の教員にも影響  判決の影響は、教員だけでなく、教員志望の若者にも及んでいる。教育学部3年の女子学生(22)は、高校3年のとき勉強の悩みから学校に通えなくなった時期があった。どん底から救ったのは丹念に話を聞いてくれた教員の存在だった。それが、教職を目指す動機になっている。 「恩師が朝に夕に私にしてくれたことは、今回の判決の理屈でいくと『労働時間とみなされない、好きでやっているボランティア』と判断される可能性が高く、悲しくなりました。恩師に連絡すると『教師の本分だ。構わない』と言ってくれました。その代わり『本分でない仕事は減ってほしい』とも言っていました。恩師は過重労働でメンタルを病み、一時期休職をしていました。国は本気で、教員や教員志望者が安心して働ける労働環境を作ってほしい」(女子学生)  司法上の手続きとはいえ、教育現場の実態や価値観と合わない、この仕分けのチグハグさは何に起因するのか。田中さんの証人として、意見書を提出した埼玉大学の高橋哲准教授(教育法学)は、次のように説明する。 「『翌日の授業準備1コマ5分』というのは、裁判官が主観で決めたもので、教育の専門的見地からではありません。教員のモチベーションやモラルを低下させる可能性は否めません」 ■残業は「無賃強制労働」  一番の問題は、児童の提出物のペン入れや保護者対応など、教員の核心といえる業務が勤務時間内にできず、時間外に押しやられている点だ。 「例えばアメリカの学校では、保護者対応の時間を1週間に80分、勤務時間内に確保しなければいけないなどと決めています。教員のコアな業務については、標準時間を定め、勤務時間内に時間を確保できるよう労働環境を変えていかなければいけません」(高橋准教授)  裁判を起こした田中さんが、教員になったのは81年。このころは児童が下校したあと翌日の授業準備をし、定時で帰れた。状況が変わったのは、2000年ごろからだ。校長の権限が強化され、職員会議が校長の補助機関に変わった。それまでは、職員会議でさまざまな業務について話し合いで決めていたが、今は意見を言う教員はほとんどいない。業務量はどんどん膨らみ、勤務時間内に終えられなくなった。 「英語、プログラミング、コロナ対応……新しい仕事がどんどん降ってきます。校長は、残業の指示や命令はしていないと裁判で述べましたが、勤務時間内に終えられないほどの量があり、残業を余儀なくされているのです。残業は“自発的行為”という名のもとの『無賃強制労働』です」(田中さん)  16年の文科省の調査では、小学校教員の3割、中学校教員の6割が、過労死ラインとされる月80時間以上の残業をしている実態が明らかになった。 「若い女性教員が、今の働き方では『子どもを産み育てることはできない』というのを聞いて、ショックを受けました。今の労働環境を若い教員たちに引き継いではいけないと思い、訴訟を起こしました」(同)  田中さんは一審を不服として控訴した。二審は早ければ年内か年明けに、東京高等裁判所で開かれる見通しだ。今回の判決を受けて、田中さんの支援事務局が始めた署名は4万筆以上集まった。裁判費用のクラウドファンディングも目標の200万円に到達しそうな勢いだ。 ■部活も時間外に重負担  支援事務局を立ち上げたのは、東京学芸大学4年の石原悠太さん(24)。4人の学生で運営している。石原さんは言う。 「この裁判は僕たちにとって他人事ではありません。既に教壇に立っている仲間もいます。労働環境を改善し、より良き教育につなげていきたいです」  一審は敗訴となったが、画期的な前進もあった、と前出の高橋准教授は指摘する。 「これまでの裁判では、教員の残業は『自発的行為』として労働時間が一切認められませんでしたが、今回、初めて労働時間が認められました。これによって教員も1日8時間を超えて勤務させられた場合は、違法になる可能性が出てきました」  かねて中学や高校では部活動の時間外労働の負担の重さに、多くの教員が声をあげてきた。もし訴訟を起こした場合、どうなるのだろう。田中さんの代理人の若生直樹弁護士は言う。 「今回の判決を前提に見た場合、まず部活動は学校教育の一環として学習指導要領に位置付けられています。このため校長が部活動指導を当該教員に任せていた実態が認められれば、教員が自主的に行った活動とはいえず、労基法上の労働時間と判断される可能性があります。長時間の時間外労働が認定されれば、国家賠償の対象になる可能性も十分あると考えられます」  文科省は、取材に対して「学校における働き方改革を一層進めていく。給特法については、来年度実施する勤務実態調査の結果を踏まえ検討する」と答えた。全国の教員の残業代を仮に支払うとなると、年間約9千億円と試算されている。もはや細かな施策で解決できるレベルを超えている。新政権の本腰を入れた取り組みが問われている。(編集部・石田かおる)※AERA 2021年11月29日号

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    中古マンション争奪戦「10年間、タダで住めたようなもの」世帯年収800万円夫婦も狙う物件とは

     新築信仰は今は昔。都心部で家を買う場合、中古マンションが争奪戦となっている。超低金利時代、世帯年収がそれほど高くなくても手が届くようになったことも大きい。最近の不動産事情を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。子育て世代がいま、都心で家を買うならば、何が“正解”なのか。今回は、中古マンション購入のリアルな事例と最近の傾向を紹介する。 *     *  * 千代田区、2LDK、55平米、最寄り駅から徒歩10分以内。  都心の大手企業に勤めるAさんは、妻(33)と1歳の子どもと3人暮らし。そのAさんが3年前に購入したマンションの特徴だ。子どもが小さいとはいえ、子育て世代の“あこがれあのマイホーム”としては、55平米はちょっと手狭ではないだろうか。子どもはこれからどんどん大きくなる……。  すると、Aさんはあっけらかんと答えた。 「5年後にはだぶん売却していますよ」  いまAさんが住んでいるマンションは中古物件で購入時の価格は約6千万円。土地柄、文教施設も多い。「周囲に大学が多く、資産価値が下がりにくいだろう」という不動産屋のアドバイスを踏まえ、決めた。  このマンションを購入するまでは、渋谷区で月18万円の賃貸マンションに夫婦で住んでいたが、「高額の家賃を払い続ける生活はもったいない」と、購入に踏み切った。その時に大きな後押しとなったのが、10年前に買った渋谷区のマンションを、購入時とほぼ同じ価格で売却したという会社の先輩の話だ。  その先輩は妻と子ども2人の4人家族。子どもの成長とともに部屋が手狭になったことから、2人目の子どもが小学校に上がるタイミングで、「より広い部屋に移り住もう」と住んでいたマンションを売却。利便性が高い人気エリアだったこともあり、購入時とほぼ同じ金額でも、すぐに買い手がついたという。「10年間、タダで住めたようなもの」とホクホク顔の先輩を見て、Aさんは「自分も資産価値が保てる家を選ぼう」と心に決めた。  買うと決めてから、今の家に出会うまでの期間は約半年。子どもが小学校に上がる5年後のタイミングで資産価値が大きく下がらなければ、今の家を売却し、その資金を元手に、もう少し広い部屋に住み替えを検討しているという。 「売却時に実際いくらで売れるかはその時になってみないと分かりませんが、現状の周辺エリアの売却相場を見る限り、価値は維持できるだろうと踏んでいます」(Aさん)  今、Aさんのように、都市部を中心に、いずれ売却することを想定してマイホームを買う人が増えているという。たとえ「一生住み続けるつもり」で家を買ったとしても、人生100年時代と言われる中、自分を取り巻く状況がいつ変わり、何が起こるか分からない。先が見通しにくい時代だからこそ、リスクヘッジという意味でも、「いざとなれば家をお金に換えられる」買い方を望む人が増加している。 「今は家の選び方によって、その後の人生の明暗が変わってくる可能性があると言えるほど、物件選びが重要な時代です。選び方の知識がないと、後悔することになりかねません」  首都圏を中心に不動産の購入、売却など、これまで6千件を超える取引を行ってきた不動産コンサルタントの後藤一仁さんは、こう指摘する。  現在、首都圏の住宅購入において最も取引が活発なのは中古マンションだ。都心を中心に新築マンションの価格が高騰していることからも、中古マンションに目を向ける人が増えており、激しい争奪戦が繰り広げられているという。  マンショントレンド評論家の日下部理絵さんも、こう続ける。  「以前は新築信仰が強い傾向でしたが、今は中古に対する抵抗感を持つ人が少なく、ここ最近は築浅物件のみならず、都心にある築30~40年の古い物件もよく動いています。リノベーションの専門業者も増え、中古物件を自分好みにリノベーションして住みたいと考える人も増えています」  とはいえ都内、それも都心周辺に家を購入できるのは、高額所得者に限られるのではないか。 「そうとも言えません」というのは、前出の後藤さんだ。後藤さんによれば、資産価値を考えたマンション購入を検討している層は、30代~40代の共働き世帯も多く、購入予算は5千万~6千万前後。平均の世帯年収は800万~1千万前後で、自己資金として夫婦で400万~600万程度貯めている世帯が多いという。 「例えば年収500万円前後の夫と400万前後の妻で、二人合わせて世帯年収が800~900万前後という方も多く検討されています。今は住宅ローンが史上最低とも言える超低金利ということもあり、金利が上がらないうちに、ここ1年ぐらいで買おうと考えている方も少なくありません」(後藤さん)  いずれ売ることを視野に入れて家を買うとなると、選び方にもコツが必要だ。もちろん実際に自分が住む家となると、資産価値という尺度だけでは測れない“住み心地”や“快適さ”など、感覚的な部分も大事だが、それは人それぞれの価値観がある。ここではあくまで、「資産価値を保ちやすい家」という視点で解説しよう。専門家らの話を紐解くと、4つのポイントが浮かび上がってきた。(松岡かすみ)  >>【後編:マンション購入「妻の実家の近く」で選んで失敗 いい物件の見極めは? 駅徒歩7分、60平米…】に続く

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