肌だけでなく全身が乾燥する季節 「潤い体質」のための漢方ケアを専門家が紹介
漢方ケアで健やかな美を維持しましょう ※写真はイメージです (c)GettyImages
カサカサの乾燥肌(ドライスキン)、目の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥(ドライマウス)、鼻の乾燥(ドライノーズ)……。空気が乾燥していると、身体のさまざまパーツで、不快な乾燥症状が起こりやすくなり、風邪などの感染症にかかりやすくなる心配も考えられるといいます。そこで今回は、日本の漢方のルーツである中国の伝統医学「中医学」の専門家が【乾燥対策】をご紹介。身体の中から潤う体質づくりを心がけ、乾燥シーズンを乗り切りましょう!
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■「腎(じん)」の衰えが潤い不足の要因に
最近では、乾燥によって起こるさまざまな症状を症候群「ドライシンドローム」として捉えるようになっています。その要因は、エアコンの使用、パソコンやテレビ、高カロリーな食事、口呼吸、睡眠不足など、多岐にわたる生活環境の問題と考えられていて、秋や冬の乾燥する季節は特に症状が起こりやすくなります。
中医学では、乾燥の症状は、身体の潤い成分である「津液(しんえき)」や「血(けつ)」が不足することで起こると考えます。また、身体の潤いの源となる要素「腎陰(じんいん)」の不足も乾燥を招く要因に。「腎」は加齢とともに衰え、腎陰も不足しがちになるため、年齢を重ねると身体の潤いは減少していきます。高齢の人は特に意識して、腎をケアするよう心がけましょう。
身体の乾燥が続くと、喉や鼻の粘膜が乾いて免疫力が落ち、かぜを引きやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりする心配も。また、アトピー性皮膚炎の悪化や咳、便秘といったさまざまな不調にもつながるので、しっかりケアをして乾燥知らずの「潤い体質」をめざしましょう。
<チェック>カラダの中から乾燥対策!
身体の乾燥対策の基本は、五臓の「腎」の働きを整えて、潤いの源となる「腎陰」を充実させること。また、乾燥の症状に合わせて、「肺」、「脾胃(ひい)」(胃腸)、「肝(かん)」(肝臓)などをケアすることも大切です。
■基本のケア「腎」の養生
<気になる症状>乾燥症状、ほてり、めまい、耳鳴り、髪が抜けやすい、白髪、記憶力の低下、腰痛、冷え、頻尿、舌の色が淡い、舌苔が少ない
<改善ポイント> 五臓の「腎」にある「腎陰(じんいん)」(水や血などの身体を潤す要素)は、「全身の潤いの源」と考えられています。そのため、腎の働きが健やかで腎陰がしっかりあれば、身体の根本的な潤いを保つことができるのです。
腎は生殖、成長、発育などの働きを持つ臓器ですが、加齢とともにその機能が徐々に衰えがちに。同時に、腎陰も加齢に伴い減少し、年を取ると身体全体の潤いが不足してしまうのです。
「潤い体質」を保つためには、まず腎の働きを整えることが基本。高齢の人、慢性疾患のある人などは特に腎の機能が衰えがちなので、しっかり養生するよう心がけましょう。
<摂り入れたい食材>●腎を養い、潤いをアップする【豆類・種実類】くるみ、銀杏、松の実、クコの実、蓮の実、黒豆、黒ごま【野菜類】山芋、よもぎ、にら、黒きくらげ【魚介類】えび、牡蠣、なまこ、海藻類【肉類】牛肉、羊肉【香辛料】シナモン
腎を養い、潤いをアップする食材「黒豆」 イラスト:ねもとしょうが / PIXTA(ピクスタ)
【タイプ1】口の乾燥(ドライマウス)
<気になる症状>口や喉の乾燥、味覚障害、口内炎になりやすい、舌が乾く※糖尿病、シェーグレン症候群、過食、ストレスなどの症状にも注意
<改善ポイント> 唾液の分泌が減り、口の中が乾燥する症状。ストレスや暴飲暴食などで「脾胃(ひい)」(胃腸)に負担がかかると、脾胃の潤いが不足して唾液も少なくなってしまいます。口や喉の乾燥を感じる人は、脾胃の働きを健やかに整え、潤いを養うよう心がけましょう。
<摂り入れたい食材>●胃腸の潤いを養う大根、百合根、りんご、豆腐、れんこん など
胃腸の潤いを養う食材「大根」 イラスト:eri / PIXTA(ピクスタ)
【タイプ2】鼻の乾燥(ドライノーズ)
<気になる症状>鼻の乾燥感、鼻の中のかさぶた、鼻血、空咳、かぜを引きやすい、味覚の減退、舌の乾燥※慢性的な鼻炎、気管支炎、喘息などの症状にも注意
<改善ポイント> 鼻の状態は「肺」と関わりが深く、肺の潤いが不足すると、鼻の粘膜も乾燥しやすくなります。鼻や喉の粘膜が乾いていると、免疫力が落ちてかぜを引きやすくなる心配も。鼻の乾燥感やムズムズ感が気になる人は、肺の潤いをしっかり養うよう心がけましょう。
<摂り入れたい食材>●肺の潤いを養う梨、百合根、オレンジ、はちみつ、枇杷の葉、葛、白きくらげ、杏仁 など
肺の潤いを養う食材「百合根」 イラスト:Hanae / PIXTA(ピクスタ)
【タイプ3】目の乾燥(ドライアイ)
<気になる症状>目の乾燥・ゴロゴロ感、目薬の使用回数が多い、視力減退、目のかすみ・痛み、舌の色が淡く乾いている※目の疾患、シェーグレン症候群などの症状にも注意
<改善ポイント> 目は「血(けつ)」が運ぶ栄養や潤いによって健やかに保たれています。そのため、血を十分に養い、血を蓄える「肝(かん)」(肝臓)の働きを整えることがドライアイ対策の基本に。また、目の酷使は血の消耗につながるため、長時間のスマホ使用などにも注意しましょう。
<摂り入れたい食材>●血を養い目の働きを整える菊花、クコの実、ほうれん草、桑の実、ブルーベリー、ぶどう、桑の葉、にんじん など
血を養い目の働きを整える食材「クコの実」 イラスト:きだ / PIXTA(ピクスタ)
【タイプ4】肌の乾燥(ドライスキン)
<気になる症状>皮膚の乾燥(カサカサ感)、皮膚のかゆみ、化粧ノリが悪い、舌の乾燥※日焼け、エアコン、慢性疾患、乾皮症、アトピー性皮膚炎などが原因になることも
<改善ポイント> 肌の状態は「肺」と深く関係しています。ところが、肺は乾燥に弱いため、空気が乾燥する時期は肺の働きが低下しやすく、乾燥肌やかゆみなどを起こしやすくなるのです。潤い肌を保つためにも、体内の潤いをしっかり養い、肺の働きを健やかに保つよう心がけましょう。
<摂り入れたい食材>●肺の潤いを養い、皮膚の潤いを守る鶏の手羽先、玄米、豚足、はちみつ、オリーブオイル、鶏スープ など
肺の潤いを養い、皮膚の潤いを守る食材「はちみつ」 イラスト:ねもとしょうが / PIXTA(ピクスタ)
【タイプ5】腸の乾燥(便秘)
<気になる症状>便秘気味、排便時間が長い、便がコロコロしている、舌の乾燥※慢性疾患による潤いの消耗、痔、加齢などが原因になることも
<改善ポイント> 体内の潤いが不足して「腸」が乾燥すると、便も乾いて固くなり、便秘を起こしやすくなります。また、腸と肺は深く関係しているため、肺が乾燥のダメージを受けると、腸の潤いも不足しがちに。秋は特に乾燥の影響を受けやすいので、腸と肺の潤いを十分保つよう心がけましょう。
<摂り入れたい食材>●腸と肺の潤いを養い、通便を良くいちじく、キウイフルーツ、バナナ、パパイヤ、りんご、マンゴー、プルーン、白菜 など
腸と肺の潤いを養い、通便を良くする食材「いちじく」 イラスト:Keiko Takamatsu / PIXTA(ピクスタ)
■ポイント 暮らしの潤い対策
・睡眠は十分に!体内の潤いを守ります。・水分をたくさん取るよりも潤いの多い食材選びを。・ローションやクリームを塗って肌の乾燥対策を。・目の使い過ぎはNG!血を消耗し、ドライアイの原因になります。・辛いもの、塩分の取り過ぎに注意して。
監修:菅沼 栄先生(中医学講師)
監修:菅沼 栄先生(中医学講師) 1975年、中国北京中医薬大学卒業。同大学附属病院に勤務。1979年、来日。 1980年、神奈川県衛生部勤務。中医学に関する翻訳・通訳を担当。 1982年から、中医学講師として活動。各地の中医薬研究会などで薬局・薬店を対象とした講義を担当し、中医学の普及に務めている。 主な著書に『いかに弁証論治するか』『いかに弁証論治するか・続篇』『漢方方剤ハンドブック』(東洋学術出版)、『東洋医学がやさしく教える食養生』(PHP出版)、『入門・実践 温病学』(源草社)など。
本記事は、イスクラ産業株式会社監修の中医学情報サイト「COCOKARA中医学」より、一部改変して転載しました
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2022/12/11 07:00