セブン-イレブンシルヴァン大通り店
[住所] テキサス州ダラス
[特徴] エボリューション・ストアの第1号店として2019年3月オープン。
現在は市内5店、全米9店
広い敷地にガソリン給油機がずらりと並び、車がひっきりなしに出入りする。降車した人が向かう店舗の中は開放的で明るく、モダンでポップ。彩り豊かな商品に目を奪われ、お客様と従業員とのフランクなやり取りにお国柄を感じる。
ここは、アメリカ合衆国テキサス州ダラスにあるセブン-イレブンシルヴァン大通り店。エボリューション・ストアという店舗形態の1号店だ。
州の北部に位置するダラスは、近代的な大都市であると同時に、テキサスらしい素朴さと大らかさが根ざす地、そしてセブン-イレブン創業の地だ。
1927年、氷小売販売業としてサウスランド・アイス社が創業。地域住民の要望により氷だけでなく卵、パン、牛乳を仕入れて販売したところ、大好評を博した。翌年、社名をトーテム・ストアに変更。缶詰、ガソリン、日用品などを販売した。その後、1946年に営業時間にちなんで店名をセブン-イレブンに改めてからも地域のお客様のニーズに応え、進化を続けてきた。
セブン-イレブンの前身、サウスランド・アイス社。卵、パン、牛乳を主力商品とする世界初のコンビニエンスストアが誕生した
エボリューション・ストアはそんな創業の地ダラスでスタートした。お客様の新たなニーズを汲むための「進化=エボリューション」を実験する場である。
「新しい商品や設備、レイアウト、サービスなどをテストする実験店舗です。実証の成果を通常形態の店舗へと拡大しています」
7-Eleven, Inc.(以下SEI)の店舗事業部部長、セルマ・デルカドさんがそう話す。
「特にエボリューション・ストア1号店であるこの店は初めてのテストの場になることが多く、最近もコーヒー・オブ・ザ・フューチャー(COFU)という新しいマシンのテストを開始しました」
COFUはタッチパネルで豆、ミルクやフレーバーも細かく自分好みにできる最新機。一杯ずつ豆から挽く本格コーヒーのほか、チャイやホットチョコレートも楽しめる。
また、エボリューション・ストアの特徴であり大きな成功例が、タコスのファストフード店「ラレド・タコ・カンパニー」とのコラボレーションスタイルだ。食事を第一の目的に訪れた後、セブン-イレブンで買い物をして帰る人が多い。
(左)「ラレド・タコ・カンパニー」の店内仕込みのタコスはおいしくリーズナブルで、毎朝行列ができる人気。「朝タコス」が定着する地ならではでもある
(右)「ラレド・タコ・カンパニー」でテスト中のタッチパネルオーダー端末。随所にあるQRコードからも同じサービスが利用できる
エボリューション・ストアは、ダラスで5店、全米ではワシントンD.C.、サンディエゴ、ニューヨーク・マンハッタン、バージニア州マナサスを合わせて9店に拡大している。それらは地域の特性を鑑みた店舗となっており、扱う商品も違う。
「ほしいものを、ほしいときに、ほしい場所で提供する。コンビニのあるべき姿を、地域に合わせた品揃えで追求しています」。こう話すのはSEI事業統合部部長の加藤雄介さんだ。
アメリカの小売業は元々メーカー主導の仕入れが中心だが、それでは「お客様がほしいもの」ではなく「メーカー側が売りたいもの」が並ぶことになる。そんな中、日本のセブン-イレブンで生まれたシステムが定着。地域性や商品ごとの売れ行きを見て、各店舗が発注を行う仕組みにより、店舗主導でお客様目線の品揃えを実現するのがセブン-イレブンなのだ。
エボリューション・ストアにはこのセブン-イレブンが培ってきた考え方のもと、お客様のニーズを汲むための進化の取り組みが溢れている。
ローラー機で熱々をキープするタキートス。様々な具をトルティーヤで巻いて揚げたもので、ソースやトッピングの種類も多く、好きに盛れる
例えば、コーヒーマシンはCOFUに加えて6種類のドリップ式タンクサーバー、アイスコーヒー専用機もあり、とにかく選択肢が多い。ドリンクコーナーにはセブン-イレブン発のフローズンドリンク「スラーピー®ドリンク」などカラフルなマシンが勢揃いし、新しいフレーバーや、ミックスでオリジナルを作る楽しみも。ドーナッツやマフィン、フライドチキンやピザといったフードも充実し、米国セブン-イレブン名物のローラー機にはホットドッグ用のソーセージやタキートスが並んでいる。
「ザ・セラー」と呼ばれる一角は酒専門店さながらに世界のワインが揃い、ビールの棚には、地元のニーズをリサーチしたうえで近隣醸造所のクラフトビールも多数ラインアップしている。
(左)期間限定フレーバーも人気の「スラーピー®ドリンク︎」。今度の新フレーバーは?
(右)「ザ・セラー」にはテキサスビールも
地域に即した商品である地元スポーツチームのグッズや、さらに、セブン-イレブンの創業地でアート好きが集まるオーク・クリフに関連するグッズも販売しており、お土産として好評だという。
日本生まれの考え方が浸透する一方、アメリカが一歩先を行くのがデジタル技術で、アプリで多様なサービスを提供している。ポイントを貯めて買い物に使えるのはもちろん、一人ひとりに合わせた商品やプロモーションを提案する「セブンリワーズ」や、アプリ上で商品バーコードを読み取り、精算までできる「モバイルチェックアウト」。これを使えばレジに並ばず、混雑時もさっと買い物を済ませられる。
また、支払いなど給油時の利便性を高める「ガソリンロイヤリティプログラム」に加わった「燃料価格ロックプログラム」は、好きなタイミングの価格を4日間固定でき、それを下回ったときは自動で安価な方が適用される優れもの。給油から支払いまでをアプリで完結できるシステムだ。
COFUのエスプレッソを手に話を聞かせてくれた常連客のジェフさん
モバイルチェックアウトを「画期的!」と絶賛するのは、近くに住むジェフ・マルティーニさん。一日がここで始まる常連客で、「専門店にひけを取らないコーヒーをクッキーやドーナツと楽しんでいます。近頃はおにぎりもお気に入り」と笑顔を見せ、足繁く通う理由を語ってくれた。
「商品のおいしさと、フレンドリーな接客です。いつも賑わっていて忙しいはずなのに、気遣いが行き届いた接客をしてくれます。いつ来ても欲しい商品が新しく出てくるのも魅力ですね」
変化し続けること。それはつまりエボリューション、進化だ。アメリカ生まれの看板やテクノロジー、日本の店づくりの知見が融合し、進化し続けるセブン-イレブン。その考え方は日米で共有され、定着している。次の便利の扉を開くため、米国セブン-イレブンのさらなる進化は止まらない。