最初から真実を伝えて途方に暮れるのと、隠し続けて最後にばれて途方に暮れるのと、どっちがいいのか。人間の心理的には後者を選びやすいという(※写真はイメージ)
最初から真実を伝えて途方に暮れるのと、隠し続けて最後にばれて途方に暮れるのと、どっちがいいのか。人間の心理的には後者を選びやすいという(※写真はイメージ)

 中谷美紀主演のW不倫ドラマ『あなたには帰る家がある』(TBS系)が「ドロドロすぎる」、「ホラーだ」と話題だ。浮気を問い詰められたとき、つい口から出てしまったウソが地獄をもたらすこともある。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載、今回は「ウソの代償」をテーマに解説する。

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 政界でも、このところ、自身の言動が「ウソか本当か」をめぐって説明に追われるケースが増えていますが、私にはこれがよく見る風景に重なって見えます。浮気がばれた、風俗に行ったのがばれた、借金がばれた……いろいろ都合の悪いことがばれたときと、その対応方法が似ているな、と思うのです。どんな問題であれ、人間が取る対応パターンというのはそんなに多くないということでもあります。

 最初の分かれ道は、認めるか、認めないかです。認めればその場で修羅場になりかねません。一方、認めなければ、その場はおさまるかもしれませんが代償を負うこともあります。

 佳子さん(仮名、当時39歳)は笑顔を絶やさない優しそうな雰囲気の女性でした。夫(当時42歳)の行動があまりにおかしいので、浮気を疑い、しかしそんな恐ろしいこときっとないはずだと否定し、と頭の中で何度も何度も行ったり来たりして何年も過ごしたそうです。ある日、どうしても抑えきれなくなって、意を決して問い詰めました。夫の返答は

「絶対してない!」

と佳子さんの目を見て断言されました。それでも食い下がって怪しい点を問いただすと

「そんなに俺のことが信用できないのか!」

と逆切れされてしまいました。なんかおかしいという、いわゆる「女の勘」程度の根拠しか持たない佳子さんは、「これだけ自信を持っていっているのだから本当に夫はやましいことがないのかもしれないな」「自分がおかしいのかも」と思いつつ、でもやっぱり完全に納得したわけでもない状態でしたが、それ以上の追及する術もなく、諦めるしかありませんでした。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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