夫からすれば、一件落着です。

 一方、事実を認めた場合ですが、目鼻立ちがはっきりした雪江さん(仮名、35歳)とどちらかというと婦唱夫随と言えるような穏やかそうな夫(33歳)の話です。

 雪江さんは、夫は今までは帰宅時間はせいぜい8時、遅くも9時には帰ってテレビやスマホのゲームをするというのが日常で、それが崩れることは会社の飲み会など年に数回だったのに、このところ、10時過ぎに帰ってゲームもせずに早々に寝てしまうことが月に何回もあることに気づきました。そういえば、今までどうせスマホゲームしかしていないと思っていたので気にしてなかったのですが、どうもスマホを隠そうとしているようにも思えてきました。なんかおかしいと悶々としていましたが、ある日、自分の中で「何か」がはじけて、

「あなた、携帯見せて」

と迫りました。最初は抵抗していた夫ですが、今まで雪江さんがいうことに抵抗することなどなかったので、雪江さんはなおさらおかしいという思いを強め、何時間にもわたる攻防の末、結局夫が折れてスマホを見せました。

 夫は顔面蒼白になり泣きながら浮気を認めました。それでも「正直に言ったから許してあげる」となるはずもなく、妻の阿鼻叫喚は昼夜問わず1週間以上続き、最後には2人とも仕事にも行けなくなり憔悴しきってしまいました。

 両方の親も巻き込み、近所の人にDVを疑われて警察に通報されたり、雪江さんが「もう死ぬ」と言いだしたり、夫としては確かに自分に非があるにしても、この状況をいったいどうしたら抜け出せるのか皆目見当がつかず途方に暮れていました。

 そうなってしまうから、隠し続けた方がいい、と考えるのも人情としてはわからないわけではありません。その言い訳は「知らない方が幸せなことだってある」です。

 事実を知った瞬間に、「あり得ない」と問答無用で離婚に突き進む人もいます。あくまで「浮気」であって配偶者と別れたいわけではないのなら、それも隠し続けた方がよいと思う理由でしょう。

 しかし、(夫から見て)一件落着したはずの佳子さんには後日談があります。実は、私がお聞きしたのは後日談からです。

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夫のカバンから怪しい錠剤が