3人の子どもの不登校を経験し、不登校の子どもやその親の支援、講演活動などを続ける村上好(よし)さんの連載「不登校の『出口』戦略」。今回のテーマは「不登校で選択肢が広がる」です。
***
前回の記事では、不登校は子育てのあり方や親子関係などを振り返る絶好のチャンス!ということについてお話をしました。
今回は「不登校で選択肢が広がる」ということについて、お話ししたいと思います。逆説的に聞こえるかもしれませんが、私は本当にそうだと思っています。
不登校の相談を受ける中で親御さんからよく聞くのは、「子どもに良い教育を受けさせたい」という言葉です。「良い教育を受けさせたい」は多くの場合、「偏差値の高い中学や高校」「一流大学」に入ってほしい、ということで、ゴールは「一流企業」です。
最近は、「良い教育=偏差値の高い学校」ではないという考え方も広がってはいますが、「良い教育」のために勉強を頑張らせて、中学受験が終わったところで子どもの気持ちがポキッと折れてしまう、あるいは、希望の学校に入れず、大学受験でのリベンジを期して入学と同時に塾にも通わせ、子どもは疲弊していく、ということは少なくありません。私は、良い学校に入れてあげたいと必死に頑張る親御さんと、その意思とは裏腹に、子どものほうは頑張れば頑張るほど体力も気力も限界に近づき、次第に勉強が嫌いになって、付いていけなくなって、不登校になる、というパラドックスをたくさん見てきました。
ここまで読んで、「不登校はやはり選択肢が狭くなるのでは?」と思われる方もいるかもしれません。でも、ちょっと待って。
親御さんに「なぜお子さんに良い教育を受けさせてあげたいのか」と聞くと、圧倒的に多い答えは「子どもの将来の選択肢を広げてあげたい」です。これに対して、私はいつも「本当にそうでしょうか」と答えてから次のように話します。
「良い中学校とはどの学校なのか、頭の中で候補をあげてみてください」
「次に、一流大学とはどの大学なのか、頭の中で候補をあげてみてください」
「最後に、一流企業とはどの企業なのか、頭の中で候補をあげてみてください」
最後に、「頭の中ではだんだんと、選択肢が狭まっていませんか?本当に広がっていますか?」と尋ねると、みなさんハッした表情になります。