長男(左)は、石垣島食文化を全国に届ける農事組合法人で就労を体験。法人の代表(右)にはとてもお世話になりました。久々の再会に、この笑顔 photo 村上さん提供

 働く意義と自分の存在価値を少しずつ確立していった長男は、徐々に元気を取り戻していきました。

 さらにその頃に出会った若者支援団体「耕せにっぽん」で長男は劇的な変化を遂げて戻ってきました。耕せにっぽんでは若者たちが寮生活をし、就労体験をしながら自立の道を見つけていきます。月曜日はガソリンスタンド、火曜日はカフェ、水曜日はお菓子工場、木曜日はディスカウントストアの品出しなど、さまざまな職業を通して、自分の得意なところを自分で見つけて、仲間からもフィードバックをもらいます。苦手だと思い込んでいたことが、実は人の役に立っていたことに気づき、苦手意識がなくなるなど、若者同士が互いに成長していくという上昇のスパイラルができあがっている自立支援施設です。

 長男は「自分は人が苦手だから接客業は絶対無理」と思い込んでいましたが、こうした体験のおかげで、ガソリンスタンドやお土産屋さんの接客で大きな喜びを感じた様子。家に戻ってきてからはしばらくの間、飲食店などでの接客業に従事しました。

 不登校を経験したことで、親が良かれと思って敷いていたレールから外れ、世の中にある全ての仕事は素晴らしいことということを貴重な就労体験をから学ぶことができて、親の私たちも、「仕事とは人を喜ばせること。どんな仕事も尊い」と、心の底から子どもたちに言えるようになりました。

 私はいま、3人の子どもに、「世の中にはいろんな仕事があるから、何でもやってみたらいいと思う。体験してみないと自分の得意なことも苦手なこともわからないよ。いろいろやってみるうちに、自分はこれで人の役に立てそうだ、ということが必ずわかってくるから、それがわかるまでは何回でも仕事を変えていいと思うよ。不安なこともあるかもしれないけど、これだ、ということが必ず見つかるから絶対に大丈夫」と話して、背中を押しています。

 変化の大きい現代は、一流の会社に入ったから一生安泰ということはありません。同じ会社で一生働き続けるという時代でもなくなりました。だからこそ、偏差値の高い中学校、高校から一流大学に入学することを子育ての一番の目的にすることは、リスクにもなるのではないかと私は考えています。

 不登校になると将来が閉ざされる、と感じるかもしれません。ですが、自分たちが「こうあらねばならない」「こうあるべきだ」という固定観念を取り払うことで、不登校はチャンスに変わります。そのきっかけとしては、不登校はとても良い機会です。ぜひ、明るい見通しを立ててくださいね。

 次回は7月16日配信。「不登校のわが子に向ける視線を変えたら、世界が180度変わり、親子を取り巻く状況も変わっていく」というテーマでお話しさせていただきます。

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