親が思い描く「子育ての最終ゴール」は、かなりの狭き門であることがほとんど。良い教育の先にあるのは、何校かの大学と一握りの企業だったりする photo iStock.com/winhorse

 お子さんには選択肢を増やしてあげると言いながら、親が心の中で望んでいる、あるいは思い描いている「最終ゴール」はかなり数が少なくなっているんですね。選択肢は、増えるどころか少なくなっているのです。

 私がこの質問をするまでは、親御さんたちの頭の中には「ピラミッド」があって、その頂点にどうやって立つかを見ながら子育てをしていたんだと思います。ですから、ここで視点を変えて、ピラミッドではなく「ジョウゴ」を思い浮かべてほしいのです。その上で、「子どもの将来の選択肢を増やす」の意味を改めて考えてもらいます。

 どんな親も、子どもには幸せな人生を送ってほしいと願っていると思います。本当の意味で「選択肢を増やす」には、子どもが一つずつ自分で選び、自分で広げていくしかないんです。親の役割は、子どもが自ら選択した道を歩めるように背中を押したり、子どもが本来持っている「生きる力」を信じて見守ったりすること。その過程では失敗もたくさんしますが、試行錯誤した経験こそが糧となり、人生の道が広がっていくのだと思います。

 お子さんの目的意識がはっきりしていて、自分の意思で「医者になりたい」「弁護士になりたい」「学校の先生になりたい」という将来を思い描いているのなら、そこに向かって行けばいいでしょう。親は後方支援をすればいいのです。でも、親の期待が先行して無意識に誘導してしまうと、学校選びもそのレールから外れることができず、会社選びに至っても、「せっかくあの大学に入ったのになんでそんな会社を選ぶの?」「いい大学に入ったのになぜそんな職業を選ぶの?」などと子どもの選択を否定するようなアドバイスをしてしまうことになります。選択肢は、増えるどころか少なくなってしまうのです。

 こんな偉そうなことを言っている私自身も、以前はそういう親でした。

 長男が不登校になる前の私は、フルタイムで上場企業に勤務しており、周りは一流大学を卒業した人ばかり。とはいえ、私自身にいわゆる学歴があったわけではなく、当時大人気だったツアーコンダクターになる夢を追いかけて専門学校に入学し、たまたま時代が良かったので大手企業に入社できました。子どもにはしっかりと学歴をつけてあげなければいけないと思い込み、教育ママのスイッチが入って、塾や習い事に通わせ、先回りばかりして、いつの間にか、子どもが自分で考える時間を奪っていました。

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