食事の支援が必要な人のために開発された「とろみ食」の試食会兼クリスマスパーティー。多くの親子連れが参加し、摂食・嚥下障害などの学びを深めた。サンタ姿の伊藤史人や吉藤オリィも参加(撮影/篠塚ようこ)

 14年、バリアフリー情報のYouTubeチャンネル「車椅子ウォーカー」を立ち上げる。だが自分の体験だけの情報発信は、課題解決のインパクトに欠けた。双方向で情報を共有できるようなプラットフォームはないか。考え付いたのが「ウィーログ」の構想だった。

 15年、この着想を米グーグル主催の社会貢献アイデアコンテストに応募するとグランプリを受賞、賞金5千万円を手にした。賞金をアプリ開発資金に投入。島根大学助教の伊藤史人(48)やロボット研究者の吉藤オリィ(36)らの手を借り、17年にウィーログをリリース。今や車いすユーザーの必携アプリになっている。

 ウィーログは織田の人生も広げた。15年にケニアで開催された米国大統領(当時)のバラク・オバマが主宰する国際会議に招待されプレゼン。19年には国連が後援する世界最大のICTイベント「ワールドサミットアワード」でグローバルチャンピオンを受賞。21年のドバイ万博にはグローバルイノベーターとして招聘(しょうへい)された。

 また、神経筋疾患分野の国際的組織「TREAT-NMD」(本部・イギリス)のアジア代表委員を務めたこともあり、マサチューセッツ工科大学からは社会課題を解決するメンバーに選ばれるなど、活動分野は世界にも広がった。訪問した国は20カ国以上。バリアフリーの大切さやSDGsの推進を訴えている。

社会の弱者のために 命がけでも社会を変えたい

 織田は頭で考えたものを次々に実行し、自分の体験を通し社会に見過ごされていることを発信、国や企業、あるいは研究者らを動かし課題をクリアしてきた。

「人間が作った制度は、人間が変えられる。さまざまな制度はその時代の最適解として作られますが、社会や環境が変化すると必ずずれが起きる。そのずれを感知し、是正していくことは人間の叡智(えいち)だし、社会の進化だと思います」

 とはいえ、社会の制度や仕組みを変えることは一筋縄ではいかない。おかしいと考えても、制度となれば引き下がってしまうのが人情だ。だが織田は、にこやかに、軽やかに、一歩前に出る。

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