難病が進行し首より下は動かせなくなったが、今も全国各地を飛び回り海外渡航もこなす(撮影/篠塚ようこ)

 一般社団法人「WheeLog」代表理事、織田友理子。難病の遠位型ミオパチーを患う織田友理子。22歳で診断され、現在は首から下が自分の意思では動かせない。その織田は、バリアフリーマップアプリ「ウィーログ」を立ち上げ、講演も、海外での活動もこなす。驚くほど行動的だ。それは、自分と同じような障害者が少しでも幸せに暮らせる世界にしたいから。常に行動に移し、制度に風穴を開ける。

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 リビングのテーブルには化粧用パレットがズラリと並べられている。夫は陶器のような肌をした妻の顔にファンデーションをのせると、慣れた手つきでアイシャドーを塗り、眉を描いた。夫に手鏡を見せられた妻は満足げな笑みを浮かべるも「やっぱりマスカラも塗ってほしい」とリクエスト。だが夫は「いやだよ、塗るのが怖い」と嫌がった。

 遠位型ミオパチー患者の織田友理子(おだゆりこ・43)が仕事に向かう前、夫・洋一(43)と毎日こんなやりとりを繰り返している。洋一は妻の化粧が終わると、髪をブラッシングし、へアスタイルを整えた。そして何げなく顔に付いた一本の髪の毛を払う。

 難病の遠位型ミオパチーは、体幹から遠い部位の手足から全身の筋肉が低下していく進行性の筋疾患。22歳で診断された織田は病状が進み、現在は首から下が自分の意思では動かせない。そのため、化粧や着替えは洋一がこなすが、化粧の仕方は動画を見ながら覚えたという。

 織田の車いすの正面にあるテーブルには重装備されたパソコンが設置されている。画面のキーボードに目をやりながら織田が言う。

「視線入力ができるようになってから、また社会と強くつながれた気がします。以前は夫に打ってもらっていましたが、自分の意思でインターネットを利用しメールをやりとりできるのは、やはり行動範囲が広がると思います」

 視線入力が必要な身になったとはいえ、驚くほど行動的だ。バリアフリーマップアプリ「WheeLog!」(ウィーログ)や遠位型ミオパチー患者会(PADM)の代表を務めるだけでなく、国内外のイベントや講演も数多くこなす。また新たな活動計画を次々に発案し、それを実践しようとする。

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