ジョセフは合わせて週四日、二つの教室に休まず通った。

「学校に行きたいって、ずっと思ってた。一人でずっと家におるのって、やっぱさみしいから」

 家では毎日、勉強をするか、スマホでゲームをするか。学校に行けないジョセフにとって、地域の支援教室は家の外での唯一の居場所になっていた。

 ある日、Minamiこども教室で午後八時に学習が終わった後、ジョセフが何をするでもなく居残っていた。「最近、調子どう?」と話しかけると、「まあまあかな」といつも通り素っ気ない。けれども、私が「せっかく残ってるんやから、ちょっと手伝ってや」と教室の片付けを頼むと、「うん、いいよ」と二つ返事で引き受けてくれる。そして掃除機を手に、「おれ、これやるの初めてや」と笑っていた。

 小学生のころに同級生だった子たちは一足先に高校生になっていて、「おれ、みんなから一年遅れてもうたんやなあ」と気にするような言葉も口にする。その一方、教室で再会した旧友たちと昔の思い出話をする時は、心底うれしそうな様子だった。

 教室ではこの年、ジョセフらダイレクト受験生二人と、中学三年生七人の計九人が高校受験に臨んだ。受験生向けの教材は、元中学教師のスタッフであるイノウエさんが準備をした。

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「なんでそんなに褒めるんですか」