三年ぶりに日本へ戻ったジョセフにとって、一番の問題は、学校に行けないことだった。日本の中学校にあたる教育課程はフィリピンで終えていたため、日本の中学に編入することはできない。一方で、日本語の読み書きからは長く離れていたため、高校に入るためにはかなりの準備が必要になる。

 ジョセフ母子は教室スタッフとの相談の末、同い年の子から一年遅れるかたちで、翌春の入試をめざすことを決めた。

 ジョセフのように、母国で中学相当の教育を修了してから来日した子が、中学校に入らずに高校入試を受けることを、支援者らは「ダイレクト受験」と呼ぶ。

 Minamiこども教室にもダイレクト受験の子が毎年やって来る。日本語学習や入試対策が必要になるだけでなく、親も日本語が十分には理解できないことが多いため、受験校選びや出願のサポートも欠かせない。移民ルーツの子どもにとって高校受験はそもそも高いハードルだが、中学校での受験指導がないダイレクト受験はさらに厳しい壁となる。

 Minamiこども教室ではジョセフたちの高校受験に対応するため、普段やっている火曜夜の学習支援に加え、木曜の夜にも受験生向けの勉強会を開くことにした。

 さらに、教室スタッフだったウカイさんらが大阪市内で開いている別の支援教室「こどもひろば」と連携をとり、月曜と水曜はそちらへ行くことになった。

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学校に行きたいって、ずっと思ってた