志ある農家を邪魔してはならない

 農家生まれの青年K氏は有名大学を卒業後、大企業に就職、社会人経験を積んでからその後、海外で農業を体験、帰国後、大都市郊外で農業経営をはじめた。全国農協青年部の幹部にもなり、全国にその名を知られた活動力ゆたかな青年である。

 農業で自立するため多角経営をめざし、イチゴ栽培や稲作経営、香港でケーキ販売を手掛けたり海外農業現地コンサルティング業を営むなど、人生の肥やしとして夢多きひとときを送り、農業経営の拡大を実現。いまではKいちご研究所(法人)の代表にも納まり、家庭を持ち、二世もできた。

 彼の経営面積は17ヘクタール、加入する農協管内に住む約100戸の農家からの借地、筆数(農地区画数)はなんと240筆にも達する。平均すると1区画7アールという狭さである。また、17ヘクタールの農地とはいっても一か所にまとまっているわけではなく、地域のあちらこちらに散らばっている。農繁期ともなるとトラクターや軽トラに乗って、あちこちへと何キロもの距離を移動しなければならない。

 日本の農家1戸当たりの統計上の経営農地面積は3ヘクタールに増えたが、1農家当たり平均の筆数が統計で公開されることはない。政府は、1戸当たり農業経営の規模拡大が進み生産効率が高まったかのように思わせるが、実態はその逆のことが起きている恐れも捨てきれない。

せk

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都市近郊の地主農家は農地を売りたがらない