中国における土地制度の研究者でもある筆者の目には、土地制度の不自由さに関しては日本は中国に比べても硬直的に映る。中国は社会主義を標榜している以上仕方がない面もあるが、それ以上に社会主義的なのが日本なのではないか。

 最近、農地法の一部改正が行なわれ「農業生産法人」という団体の農業色が少しだけ薄まって、農地の所有権取得の規制をいくらか緩和、「農業生産法人」とこれ以外の法人をひっくるめて「農地所有適格法人」に名称変更するなどの変更を行なった(2015年)。

 しかし実態となると、農地を所有できる法人は金縛りのような厳しい条件でしか設立できない「農業生産法人」のみ、非農家そして一般が組織する法人の農地所有は依然として不可、農地を借りるだけでも「農地法」が定める厳しい規制を通り抜ける必要がある。

 現在、日本にはなんらかの農業経営を始めた法人企業が数千はあるとみられるが、最も苦労した点はまとまった農地を借りることだという点で共通している。こうした意欲ある企業の本格的な農業経営を支援するには、現在の農地法は障害以外のなにものでもなく、今回、新たに設けられた「農地所有適格法人」は無意味の上塗りにすぎない。

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日本農業の荒廃を生み続ける制度