
「就活」に関する記事一覧






わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か
就職活動をひかえた大学生たちと話をしていると、いつしか「コミュニケーションが苦手で」といった相談を受けることが多い。よく聞けば、自分は企業が求めるコミュニケーション能力を満たしていないのでは、という不安が語られる。 では、企業が求めるコミュニケーション能力とは何なのか。平田オリザの分析によれば、それは、異なる文化や価値観を持った人に対してもきちんと自分の主張を伝えられる能力とともに、従来どおり集団の輪を乱さない能力を併せもつことらしい。しかし、この二つはあきらかに矛盾している。前者は対話を重ねて互いの妥協点を見いだし、後者は言葉を要さずに察しあう能力だ。こんなダブルバインド(二重拘束)状態を求められたら、学生でなくともたまったものではない。 産業構造が大きく変化し、少子化や核家族化、そして経済のグローバル化がこれでもかと進む時代背景もあって、日本社会のコミュニケーション不全は大きな問題となってきた。企業だけでなく学校、家庭にも巣くうこの難題に対して平田は、タイトルにあるように「わかりあえないことから」アプローチしようとする。もう日本人はバラバラなのだと認め、バラバラな人間が、価値観はバラバラなままでどうにかしてうまく関係していくために、まず対話の重要性を説く。その上で、協調性よりも社交性を身につけ、一人の人間がいくつもの役割を演じることで他者とつながっていく可能性について言及する。優れた演劇人である平田がコミュニケーション能力にこだわる理由がここにある。 〈人間は、演じる生き物なのだ〉 ダブルバインドを解きほぐして新たな役割を得るために、平田は「わかりあえないことから」はじまる授業をすでにいくつもの小中学校で実践している。演劇を活用したその内容は、「察しあう」文化に育った者からすれば新しい日本人を育てるプログラムのようで、かなり羨ましい。




何者
就活生にとって大学3年の2月・3月は繁忙期らしい。しかも今般の就活の煩雑なこと。大学生の親にいわせると「この程度の事務処理もこなせない学生はわが社にいりませんってことなのよ」というのだが。 今期の直木賞を受賞した朝井リョウ『何者』はそんな「いまどきの就活」を追った長編小説だ。 ES(エントリーシート)を出しまくり、WEBテスト(自宅パソコンで受験するテスト)を受け、その後もグルディス(グループディスカッション)あり、クリエイティブ試験(想像力をみる試験)あり。 作中人物も疲れてつぶやく。〈もうパワーゼロって感じ〉 朝井リョウは集団を描くのが得意な作家で、『何者』にも5人の就活生が登場する。TOEIC、海外留学、インターンシップ等、有利なカードを何枚も揃えて自己PRに余念のない女子学生。プチ文化人気取りで〈俺は流されたくないんだよね〉などとうそぶく男子学生。お互いの前では本心を明かさず、ツイッターやフェイスブックで互いの腹をこっそり探り合う若者たち。 〈俺さ、就活って内定出たら終わりって思ってたけど、ちげえわ〉とは、いち早く内定の出た男子がふともらす台詞である。〈俺、今日会った同期と、今日行った会社で、ずっとずっと働くんだよな〉 日本中の会社員から「あたりめぇだろー!」というツッコミが入りそうな台詞だが、でもこういう学生があなたの会社に入社してくるわけですよ。っていうか、彼らにこういう就活を課しているのが、あなたの会社だったりするわけだね。 もっとも、ここで描かれるのは一流大学の学生たちの生態である。家族も大学の教員も会社の人事担当者も、それどころか他大学の学生も非正規労働にあえぐ同世代も出てこない、蛸壺の中のバトル。家庭の事情で堅実な選択をしたとされる学生も客観的には羨ましい結果。私が現役の学生だったら(学生の家族だったとしても)、ひがむね、絶対。


大卒だって無職になる
ニート、引きこもりと聞くと、中学や高校で不登校、退学したまま自宅にいる人々を想起する。けれども、きちんと大学まで出たのに、働けなくなる人が少なからずいる。若者の社会参加、自立支援事業を10年近く続けてきた著者が、彼ら“高学歴ニート”に特有の苦しみと、支援を受けて立ち直っていく軌跡を描いている。 実際にあった事例をもとに、6編の物語に仕立ててあるのは、世にはびこる精神論に抗してのことだ。働けない若者たちに対しては「甘え」「仕事を選んでいるだけ」と決めてかかる風潮が大勢を占め、若者たちの親もまた「私たちのせい」とうつむく。しかし著者は、一時ドロップアウトした彼らはみな「働きたいのに働けない」こと、そして「誰もがつまずく可能性がある」ことを、やわらかく訴える。引きこもる理由を探って予防策を講じるよりも、つまずいたらいつでもやり直せる仕組みを作る方が、現実的なのだ。 社会に出て働くということの本質に裏側から迫る一冊。就活準備中、あるいは就活に悩む大学生とその親にもぜひ。
特集special feature





女子と就活
副題は「20代からの『就・妊・婚』講座」。「結婚・出産は働き方とリンクする」という認識のもと「婚活」という言葉の提唱者である白河桃子と、就職活動関連の著作で知られる常見陽平のコンビが主に20代女子に向け、人生における仕事・結婚・妊娠を講義形式でまとめたものだ。 ハウツー本にも見えるが、狙うところはその対極にある。キーワードは「脱憧れ」。先が不透明な現代、女子の専業主婦・一般職願望が急増する状況を著者らは喝破する。代わりに推奨するのが自分の食いぶちを自分で稼ぐ「自活女子」の道だ。人生を切り開き、仕事と結婚・出産の両立というジレンマにも立ち向かうべく、女子学生をめぐる就活の構造と結婚・妊娠の基礎知識を徹底解説。「三大活動」の現状を俯瞰し、かつ具体的に考えるための情報材料が詰められている。 とかく目先の内定に目が向きがちな就職活動。しかし出産のタイムリミットなど「その先」も視野に入れることで、現在を見る目はより深まるだろう。特に就活前/中の女子学生には一読の価値がある。
