デジタル教科書の本格導入が始まり1年が経ちました。紙の教科書で育った親世代にとっては未知の世界。子どもたちはどのように使い、親はどう見守ればよいのでしょうか。国のデジタル教科書の導入に関わってきた放送大学教授、中川一史さんに伺いました。※前編<小中学校で本格導入進む「デジタル教科書」、現場の教師の“本音”は? 大転換に戸惑う声も>から続く

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子どもたちの端末でもデジタル教科書が使用できるように

――紙の教科書に代わるデジタル教科書が、個々の端末で使えるようになりました。これまでの背景や普及状況について教えてください。

 学校の授業でデジタル教科書が使えるようになったのは、さまざまな環境が整ったからです。まず2019年に学校教育法の一部が改正され、紙の教科書に代わってデジタル教科書が授業で使えるようになりました。ほぼ同時期にGIGAスクール構想がスタートし、1人1台端末の整備が進みました。さらに2021年にはデジタル教科書の使用は「授業数の2分の1未満」という制限を撤廃。こうして環境が少しずつ整い、教員だけでなく子どもたちもデジタル教科書が使えるようになりました。

 ここでいう「デジタル教科書」とは、子どもたちが個々の端末に配備されている「学習者用デジタル教科書」のことです。デジタル教科書には2つあって、1つは学習者用。もう1つは主に教員が提示用で使う教科書準拠の教材「指導者用デジタル教科書」です。以前から指導者用は授業で使われてきましたが、学習者用デジタル教科書(以下、デジタル教科書)は2024年に本格導入が段階的に始まりました。現在英語は100%、算数・数学は55%の学校にデジタル教科書が国から提供されています。

――学校での活用状況について教えてください。

 徐々にではありますが、教員の授業中の使用頻度も向上しています。現在はデジタル教科書と紙の教科書の併用が原則です。英語のデジタル教科書は100%配られていると言いましたが、紙の教科書がなくなったわけではなくて、紙の教科書にプラスしてデジタル教科書が使われているという状況です。

 どちらをどれだけ使うかについて強制力があるわけではありません。したがって、学校や教員によって使い方や使用頻度が異なるという状況は現実問題としてあります。

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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