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「ハンオシ」倉科カナは田中みな実、松本まりかに並ぶ“あざとさ職人”?
「ハンオシ」倉科カナは田中みな実、松本まりかに並ぶ“あざとさ職人”? カトリーヌあやこ・漫画家&TVウォッチャー  漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「婚姻届に判を捺(お)しただけですが」(TBS系 火曜22:00~)をウォッチした。 *  *  *  祖母の店のため500万円を借りた代わりに、百瀬柊(ももせしゅう=坂口健太郎)との偽装結婚を承諾した大加戸明葉(おおかどあきは=清野菜名)。  契約結婚モノといえば、ガッキー(新垣結衣)と星野源がリアルに結婚しちゃった「逃げ恥」こと「逃げるは恥だが役に立つ」という偉大なる先がけがあるんだが。自ら柳の下にドジョウを狩りに行くTBSなんである。  さて「逃げ恥」が「ムズキュン」ならば、本作は公式アカウントによれば「ふいキュン」。不意をつかれてキュンするんだって。もはや人類は、「キュン」のために無理しすぎじゃないだろうか。  なんせ柊が偽装結婚を申し込んだ理由が謎。それは自分の兄・旭(前野朋哉)の妻・美晴(倉科カナ)のことを好きだから。「不毛な恋の隠れみの」としての結婚、それは一生彼女を想(おも)い続けるため。  いや、意味わからん。別に独身でもいいじゃん、勝手に想い続けてろや。などと、口からだだ漏れた暴言を再び押し戻す要素、それが倉科カナだ。  いやどうですか、兄嫁が倉科カナ。もう厄介。なんたってあざとさがナチュラル、天然、気づいたらあざとい。  倉科と共に「あざと三羽ガラス」(今適当に名づけました)である田中みな実のあざとさはプロフェッショナル。職人。TPOわきまえるし、たぶん男より自分が好き。  残る一人は、松本まりか。闇が深そうなのでとりあえず塩を撒(ま)け。だが倉科カナのあざとさは防ぎようがない。「ふいキュン」ならぬ「ふいカナ」。  兄嫁(幼なじみでもある)なのにやたら距離が近い。柊の結婚のお祝い会では、嫁の前で彼をよしよし。真っ先に酔っぱらってグッタリ。  そりゃ偽装嫁・明葉は「おんぶしてあげなよ」と、柊に勧めずにはいられない。そして美晴は手作りスコーンを携え、嫁の居ぬ間に家に上がり込む。 イラスト/カトリーヌあやこ  ジャムの瓶のフタを柊が開けてみせると「おお~柊くんすご~い! 旦那さんがいるとこういう時助かるよね」。お前の旦那じゃねーわ。「あれ? そう言うと柊くんが私の旦那さんみたいかぁ」  もうやめて、ナチュラルボーンあざとい。次から次へと押し寄せる倉科カナの兄嫁トラップ。  わかった柊、こんなのがそばにいたら偽装でもなんでもしておかないと精神が崩壊しそう。偽装結婚・その理由、兄嫁が倉科カナだから。 カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など※週刊朝日  2021年11月26日号
愛子さまが借りるティアラ、清子さんからの理由は「格」の違い 秋篠宮家へは逆風やまず
愛子さまが借りるティアラ、清子さんからの理由は「格」の違い 秋篠宮家へは逆風やまず 皇居に入る天皇、皇后両陛下の長女愛子さま  天皇・皇后両陛下の長女、愛子さまが12月1日に20歳の成年を迎える。  とくに話題を集めたのは、愛子さまがティアラを新調せず、叔母の黒田清子さんのティアラを借りて祝賀行事にのぞむ、異例の成年式となることだ。宮内庁は、「コロナ禍で国民生活に影響がでていることに配慮した愛子さまが、両陛下と相談した決めた」と説明している。 「どうも、何をとってもタイミングが悪く秋篠宮家への逆風になってしまう」  そうため息をつくのは、皇室に長く仕えた人物だ。秋篠宮家の長女、眞子さんが小室圭さんと結婚したのちに渡米したばかり。  渡米前に国内で滞在したのは、渋谷区の東京メトロ外苑前駅近くにある長中期滞在者向けの高級サービスアパートメントだった。結婚によって皇籍から離れたばかりの元内親王に、所轄する警察の警備がつくのは当然のことだ。とはいえ、外出の度に報じられた結果、特別な警備体制に注目が集まった。  そしてNYでの新居の豪華さも報じられている。英タブロイド紙のデイリー・メールなどの海外紙によれば、小室夫妻の住まいは、セントラルパークやタイムズスクエアに近いヘルズ・キッチン地区にあるタワーマンションだ。2017年に建てられたばかりで、24時間対応のロビーやフィットネスルームにヨガスタジオ。スパやゴルフシュミレーションセクションなどを備えた豪華な仕様だという。  小室さんのLawClerk(法務助手)の年収は600万円程度と見られている。一方で、海外紙によれば、ワン・ベッドルームとはいえ家賃は、月額約4800ドル(55万円)と安くはない。  宮内庁関係者の間でも、眞子さんの結婚と米国移住が無事にすんではればれしたという空気と同時に、小室夫妻の先行きを案じる声もわずかに漏れてくるようだ。  そんなタイミングで宮内庁が公表したのが、愛子さまが「借りたティアラ」で祝賀行事に臨むというニュースだった。  女性皇族にとって、成人を迎えた誕生日は宮殿行事デビューの日でもある。まず皇室の祖神・天照大神などが祭られる宮中三殿に参拝し、宮殿で天皇陛下から宝冠大綬章が授与される。 ローブデコルテの正装に新調したティアラとネックレス・ブレスレット・イヤリング・勲章どめの宝飾品5点を身に着け、両陛下にあいさつするのが恒例だ。  内親王だった眞子さんの場合、ティアラと宝飾品は「和光」で2856万円、佳子さまは「ミキモト」で2793万円をかけて制作された。大正天皇のひ孫にあたる三笠宮家や高円宮家の女王方の場合は、1500万円前後だ。  ティアラなどの宝飾品は、ぜいたくをするために制作するわけではない。成年皇族は公務を担うようになり、宮殿行事や外国からの国賓や賓客を接遇する晩さん会など国際親善の場では、勲章とともに正装を持って迎えるのが礼儀だからだ。  皇后や皇太子妃は代々受け継がれるティアラなどを所有している。そのなかには、平成の時代に皇后が故・秩父宮勢津子さまから譲り受けたティアラなどもある。つまり、他の宮妃や最近では眞子さまのティアラも宮内庁に預けられている。  女性皇族の所有していたティアラもあるなかで、なぜ愛子さまは清子さんより「借りる」形になったのか。 2004年デンマークのマルグレーテ女王夫妻をお迎えした宮中晩餐会に出席した紀宮さま(当時)  眞子さんをはじめ、最近の女性皇族が成年を迎えた際に新調したティアラは、いずれも宮内庁が管理する公金で制作されている。そのため、公金で作られた眞子さんのティアラは、離脱とともに宮内庁に預けられた。  一方で、黒田清子さんが成年を迎えた時に、新調されたティアラと宝飾品は、天皇家の私的なお金であるお手元金で制作された。  元宮内庁関係者は、ティアラを公金で支払うようになったのは、三笠宮家の彬子さまのときからではないか、と話す。 「明治以降の近代皇室においては、天皇家も宮家も相応の財産を持っていたこともあり、宝冠など装身具は私的な費用で賄っていました。黒田清子さんのティアラもその流れだったと記憶しています。日常費で制作したものは、扱いがあいまいなところもある。昔の皇族のように、『娘に持たせてあげたい』、と結婚先で大切に保管されているものもあると聞きます」  お手元金で制作した黒田清子さんのティアラは、ご本人のものだ。そのため、「借用」という形になった。  さらには、前述したように、内親王と女王というご身位の違いによって、ティアラの金額も異なる。 「眞子さんの結婚のタイミングは、ギリギリまで読めませんでした。加えて、同じ内親王でも、天皇家の娘である愛子さまと、皇嗣家の眞子さんと佳子さまでは立場も異なる。同じ皇女である清子さんのティアラが格という点でも、相応しかったのでしょう」(皇室の事情に詳しい人物) 2004年デンマークのマルグレーテ女王夫妻をお迎えした宮中晩餐会に出席した紀宮さま(当時)。頭上に輝くティアラにはダイヤモンドがちりばめられている  異例続きとなったのは、ティアラだけではない。  女性皇族、特に内親王は、二十歳の成年を迎えた際と結婚して皇籍を離れる際に会見を開き、記者の質疑に答えるのが恒例だった。  いまのところ、愛子さまの記者会見は、日程が決まっていない。成年の会見は、その成長を国民が感じる大切な機会でもある。  眞子さんが皇室を離れたいま、愛子さまへの期待は、高まっている。 (AERAdot.編集部 永井貴子)
空前の劇場型事件「ロス疑惑」から40年  ロス郡検がひそかに準備した終章
空前の劇場型事件「ロス疑惑」から40年  ロス郡検がひそかに準備した終章 1985年帰国した三浦和義氏  50代以上の人はほとんどが「ロス疑惑」を覚えているだろう。米ロサンゼルスを舞台に夫が妻に保険金をかけて殺したのではないかという疑惑について、テレビのワイドショー、週刊誌、スポーツ紙などが毎日のように情報を流し、それが土石流のように日本列島を覆った時期があった。  空前の劇場型事件である。その発端は、ちょうど40年前の1981年11月18日、東京の雑貨輸入会社の社長と妻が出張先のロサンゼルス市内で銃撃されたことだった。この事件が、どのようにして終幕を迎えたか、「劇場」側はどんなツケを払うことになったか、振り返ってみたい。 ◆「悲劇の被害者」から「疑惑の主人公」へ  初めは美談仕立ての記事が中心だった。  夫の三浦和義社長(当時34歳)は左の太ももに1発、妻の一美さん(当時28歳)は頭に1発を撃ち込まれた。一美さんは救急病院に運ばれたが、意識不明の重体が続いた。夫は米国政府に直訴し、2カ月後に米軍の医療用輸送機で一美さんを日本へ運び、大学病院に入院させた。当時の「FOCUS」誌は「ロスの強盗に妻を植物人間にされた夫の闘い」と報じ、女性誌は「限りなき愛に生きる 眠り続ける妻よ!」という夫の手記を載せた。手記によると、夫は米大統領、カリフォルニア州知事などに対して、日本人旅行者の安全対策などを求める声明文を送ったという。  一美さんは事件の1年後、死去した。夫の三浦社長は、妻を凶弾で奪われ、1歳の愛娘と残された悲劇の人として報道された。  しかし、1984年1月、週刊文春が「疑惑の銃弾」の連載を始めるや、三浦社長は一転して保険金殺人という重大な疑惑の主人公になる。  この連載によると、三浦社長は一美さんに8000万円の死亡保険金をかけ、その数か月後にロスのホテルで一美さんが女性に鈍器で殴られる事件が起きた。三浦社長は保険金をさらに7500万円上乗せし、直後に銃撃事件が起きた。つまり、ロスで「強盗」に撃たれたとき、夫は自分の妻に計1億5500万円の保険金をかけていたことになる。  また、三浦社長の交際相手であり、雑貨輸入会社の役員でもあった白石千鶴子さん(当時34歳)が銃撃事件の2年前にロスへ行き、まもなく行方不明になっていた。三浦社長は千鶴子さんがロス入りする2日前にロスに着き、10日間滞在していた。その後、彼は千鶴子さんのキャッシュカードで426万円を引き出した。千鶴子さん失踪の2カ月後、ロス郊外で女性の身元不明遺体88号が発見されている。  時系列で言うと、2年半余の間に、千鶴子さんに対する殺人、一美さんに対する保険金殺人未遂、一美さんに対する保険金殺人の3件が起きたという疑惑だ。  ◆警察の捜査が進まないのに名指しで大合唱 「疑惑の銃弾」の連載が始まったとき、私は警視庁クラブの捜査1課担当で、3人のチームの最古参だった。連載を読んでショックを受けた。日本で起きる殺人事件の大半は恨みや怒りなどによる「激情型」で、カネ目的の計画的な殺人はまれだった。ましてや家族に保険金をかけて殺す事件は、乗用車の海中転落を偽装して妻娘3人を殺害したとされる別府港の3億円保険金殺人事件(1974年)があるだけだ。疑惑が本当なら犯罪史に残る大事件になる。  捜査1課も同じように考えたのだろう。ただちに10人余で構成されるひとつの班が内偵捜査に出動した。各社の1課担当記者も張り付いた。とはいえ、犯罪報道のルールでは、事件が発生したことと、逮捕後の捜査内容しか報道することはできない。私たちも、ロスの不明遺体88号が歯型鑑定で白石千鶴子さんと判明したことくらいしか書けなかった。多くの新聞やテレビの定時ニュースは後追い報道を自制した。  しかし、ワイドショー、週刊誌、スポーツ紙などはルールを無視して大量の番組や記事を流し始めた。まだ警察の捜査も本格化していないのに、「疑惑の主」の実名を挙げ、知人、隣人、取引先、さらには少年時代の非行の審判にかかわった裁判官までつかまえて話をさせた。疑惑を肯定したり補強したりする発言をする人は引っ張りだこになり、取材協力費という名目のギャラが跳ね上がった。彼の自宅は常に数十人の記者やカメラを持ったスタッフらに囲まれ、買い物にも行けず、食糧難に陥った。     判決後の2002年1月、弁護士とともに記者会見する三浦和義氏  しかし、「疑惑の主」もしたたかである。週刊文春の連載から3カ月後、再婚した女性、子供たち、義母の5人でパリへ行き、さらにロンドンへ移って、アパートを借りた。ほどなく女性セブン誌が新居の様子を報道した。家賃9万円の3LDK、10坪の庭と車庫付きだという。同誌は「三浦和義さん、英国の夏の中から」と題する手記も連載した。 ◆三浦容疑者は逮捕されたが……  一方、警察の捜査はなかなか進まなかった。ロス疑惑の現場は米国であり、発生地の警察が捜査するという原則によって、1次捜査権はロス市警が持つ。日本は2次捜査権であり、両者の調整が常に必要だった。  しかし、三浦社長の交際相手だった元女優(当時24歳)が「一美さんをハンマーで殴ったのは私です」とサンケイ新聞(当時)に告白したことを機に、事態が大きく動いた。警視庁が殴打事件を立件することになり、週刊文集の連載から1年8か月後、三浦容疑者と元女優を殺人未遂の疑いで逮捕した。この時から彼の拘置所暮らしが始まった。  1988年10月、警視庁は一美さん銃撃事件で、三浦容疑者と、知人でロス在住のガンマニアの男性(当時56歳)を殺人容疑で逮捕した。犯行に使われたレンタカーの書類が廃棄される寸前に入手して走行距離を確認するなど、細かなデータをガラス細工のように積み重ねて立証する難しい捜査だった。  私はすでに警視庁クラブを離れ、別の部署に異動していたが、現地での捜査を指揮したロス郡検察庁のルイス・イトウ主任検事に会いたくて、米国へ出張した折に、ロサンゼルスへ足を延ばした。イトウ検事は学究肌の穏やかな人で、六法全書を辞書なしで読むほど日本語に堪能だった。別れ際に、米国の今後の捜査方針を尋ねたところ、イトウ検事は「米国にはコンスピラシーがある」と答えた。「共謀罪」のことだ。日本の刑法にはないが、米国では共謀したこと自体を刑法上の罪として問うことができる。「白石千鶴子さんの事件も捜査しなければならない」とも言った。  ただし、どちらも容疑者が米国の国内か施政権下にいることが条件になる。三浦容疑者が米国に来ることがあるのか、当時の私には想像もできなかった。だが、20年近くたってから、私はイトウ検事の言葉を思い返すことになる。1985年 ロス疑惑事件 カメラの放列の中、厳しい表情で東京地裁に入る三浦和義氏 ◆刑務所からメディアに浴びせた訴訟の嵐  日本では起訴された刑事事件のうち99.9%が有罪判決になる。無罪判決は千分の一しかない。ロス疑惑は、どちらも最高裁まで争われたが、殴打事件は有罪が確定したものの、銃撃事件は東京地裁で有罪判決、東京高裁では一転して無罪となり、最高裁は検察側の控訴を棄却して無罪が確定した。三浦被告は殴打事件の刑期を終えて、2001年に出所した。拘置所と刑務所にいたのは合わせて15年に及んだ。  この間、彼は「噂の真相」誌に「東京拘置所日誌」を、月刊誌「創」に「検証“三浦報道”」を連載した。同時にテレビのワイドショー、雑誌、スポーツ紙など「ロス疑惑」を煽り立てたメディアを相手取って、名誉毀損訴訟を立て続けに起こした。一部の訴訟は弁護士を代理人に立てたが、多くは自分で訴状を書いた本人訴訟である。  代理人の関係者から聞いたところでは、訴訟は400件を超えるらしい。判決の前に和解を求めたメディアが多いので勝訴の件数を正確につかむことは難しいが、本人は「勝訴率は80%以上」と語っていたという。  これほどたくさんの訴訟を起こすには、どのメディアが、いつ、どんな報道をしたか、資料を集めなければならない。拘束されていては困難なはずだが、三浦被告は和解を望んだ各社に対して、ロス疑惑の報道スクラップを提供することを条件にして、和解のたびに訴訟の資料を増やしたのだという。  判決の場合、損害賠償額は1件あたり数十万円、和解の場合は高めになる。勝訴率が80%だとすれば、単純計算で1億円前後の賠償金を得たことになる。一美さんに掛けていた保険金は保険会社に返還を余儀なくされたが、それに近い額だ。  ◆20年後に暗転した「疑惑」の終章  無罪判決と経済的な余裕を得て、出所後の生活は安定していたことだろう。だから海外へ旅行したいという気持ちを抑えられなかったのかもしれない。三浦元社長は2008年2月、米国自治領のサイパンへ旅立った。空港ではロス市警の捜査員が待ち構えており、飛行機を降りたところで逮捕された。 2008年3月5日サイパン地裁を出る三浦和義氏  逮捕状は1988年に出されたものだった。容疑は一美さん銃撃事件で、罪名は殺人と共謀。ロス市警は20年間も執行の機会を待ち続けていたわけだ。  三浦元社長の弁護団は、同じ事件で二度裁くことはできない「一事不再理」の原則に反する逮捕だとして、ロス郡地裁に逮捕状の取り消しを請求した。逮捕から7カ月後、地裁は殺人罪については一事不再理を認めたものの、共謀罪については一事不再理ではなく、逮捕状は有効だとする決定を下した。  三浦元社長は移送され、10月10日朝、ロス市警本部に到着した。そのまま留置場に入ったが、その夜、ワイシャツで首を吊った姿で見つかり、死亡が確認された。検視の結果、自殺とされた。  61歳だった。……………………。  彼が死んで、もう13年になる。ふと思い立って三浦和義著の本が今も売られているかどうか、Amazonで調べてみた。中古本を含めて6冊あった。その一つは『弁護士いらず――本人訴訟必勝マニュアル』(太田出版)である。メディアを相手に法廷で争い続けた自分の体験をまとめた本だ。その判決や和解の記録は、被告となった各社の法務部門に今も保管され、取材や報道の在り方を見直すきっかけになっただろう。  プライバシーや肖像権など、報道される側の権利が侵されることについて、司法の判断はますます厳しくなっている。メディアはこれからも自戒を求められる。 「ロス疑惑」が残したものは、まだ終わっていない。 (清水建宇 朝日新聞元警視庁キャップ)
60歳定年で年収減…積み立て投資に回す余裕がないときの「裏技」
60歳定年で年収減…積み立て投資に回す余裕がないときの「裏技」 ※写真はイメージです (GettyImages)  個人型確定拠出年金(iDeCo)や「つみたてNISA」に加入するも、60歳定年で再雇用となり、年収が下がった場合はどうか。積み立てに回すお金の余裕がなくなった場合である。『はじめてのNISA&iDeCo』の著者で積み立て投資に詳しいファイナンシャルプランナーの頼藤太希氏は積み立てをやめるのだけは避けたほうがいいという。 【前編/50代、60代からでも2000万以上たまる!? 積み立て投資で「自分年金」】より続く 「生活費は急には下げられないので、そうなる人はいそうですね。でも積み立てをやめてしまうのはもったいないので、減額して継続することを勧めます」  老後資金についての著書も多いファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんは、次のような「裏技」もあるとする。 「企業年金のある会社の人なら、退職金を一時金で受け取らずに年金で受け取ることにして、その年金をつみたてNISAに回せばいい。一時金で受け取るほうが税金面では有利ですが、一時金を銀行に預けてあれこれ商品を薦められることなどを考えると、つみたてNISAのほうがリスクは少ないと思います」  長尾さんは「上級者向け」としながらも、全資産での分散投資にもこれらは使えるともする。 「例えば夫婦で投資する場合、夫が国内株式を選ぶのなら妻は海外の不動産(リート)といった具合に、違う投資対象を選べば世帯全体での分散投資ができます。夫だけの場合も、自分の資産全体を見渡して少ない投資対象のところを買い増ししていけば、同じ効果が得られます」  なるほど、資産の多い人などが、よりリスクを少なくするのに適した手法かもしれない。上級者といえば、先のファンドアナリストの篠田氏は、積み立て投資を入り口に投資の「腕」を上げていってほしいとする。 「iDeCoやつみたてNISAだけで老後資金が準備できると思うと危ない。豊かな老後を送るためにはお金がかかります。50代以降で『もっと増やさないと……』と思っている人は、積み立て投資を入門編ととらえて投資に回すお金を増やすことも考えていい」 (本誌・首藤由之)※週刊朝日  2021年11月19日号より抜粋
50代、60代からでも2000万以上たまる!? 積み立て投資で「自分年金」
50代、60代からでも2000万以上たまる!? 積み立て投資で「自分年金」 ※写真はイメージです  積み立て投資が大人気だ。老後資金に不安を感じる20代、30代の若者が中心だが、専門家によると50代、60代からでも十分始められるという。国が用意した制度の「iDeCo」や「つみたてNISA」なら税メリットもある。積み立て投資を使った「じぶん年金」づくりに挑戦してみてはどうだろう。 *  *  *  老後資金についての著書も多いファイナンシャルプランナーの長尾義弘さん(63)は、自身の老後資金についても万全の態勢を敷いている。  長尾さんはブックデザイナーの妻ともども個人事業主。だから2人とも国民年金の第1号被保険者で、公的年金は老齢基礎年金が中心だ。 「老齢基礎年金は2人分でも10万円ちょっとにしかなりません。ですから、自分であれこれ準備しなければいけませんでした」  個人事業主らの「退職金」制度ともいわれる「小規模企業共済」に、もう20年近く加入している。国民年金の第1号被保険者が上乗せ年金をつくれるようにと設けられている「国民年金基金」にも、同じく20年ほど加入している。 「老齢基礎年金が満額もらえる40年に数年足りないので、今、国民年金に任意加入しています。そのおかげで60歳以降も国民年金基金を続けられています」(長尾さん)  そのほか、予定利率が3%台の時代の民間の個人年金も保有しているし、妻も同様に小規模企業共済と国民年金基金に加入している。 「そして夫婦ともに年金を70歳まで遅らせる『繰り下げ』をするつもりです。どうやら、そこから先、貯金を取り崩さなくても済む生活ができそうです」(同)  長尾さんは長期間かけて幾重にもお金が生まれる仕組みをつくり上げた。理想的ともいえるが、何より特徴的なのは「公的な制度」を最大限、利用していることだろう。  例えば小規模企業共済と国民年金基金の掛け金は、その全額を「小規模企業共済等掛金控除」「社会保険料控除」として所得から差し引くことができる。つまり、入っていれば毎年の所得税・住民税が減らせる。老後のお金を準備できる上に、今のお金も増やすことができるのだ。 ※写真はイメージです 「資産運用といっても、増やせる絶対の自信は誰も持つことができません。一方、『控除』の利用はリスクゼロでできます。よっぽど合理的だと思ったんです」(同)  長尾さんのように公的な制度を使って長期間かけてお金を増やすやり方は、実は会社員でもマネすることができる。小規模企業共済や国民年金基金は使えないが、超高齢化による財政難などで近年、国が国民に「自助努力」を求める動きが強まり、資産形成をしやすくする仕組みが整備されているからだ。  その代表格が、2017年に制度が大幅に拡充された「個人型確定拠出年金(iDeCo)」と、18年に制度が新たにつくられた「つみたてNISA」だ。  iDeCoは公的年金への上乗せ分を作るための制度として、つみたてNISAは金融初心者でも安心して資産形成に取り組めることをめざしてつくられた。ともに毎月お金をコツコツ積み立てていく長期投資で、投資信託を使えば個人でもリスクを分散させた投資ができる。つまり、この二つなら、金融庁もお墨付きを与えている投資の王道、「長期・分散・積み立て」投資が簡単に実践できるのだ。  19年の「老後資金2千万円問題」以来、積み立て投資は将来に不安を持つ若者を中心に注目を集め、特につみたてNISAは加入者が急増している。このため二つとも20代、30代の資産形成手段として紹介されることが多いが、『はじめてのNISA&iDeCo』の著者で積み立て投資に詳しいファイナンシャルプランナーの頼藤太希氏は、年齢はあまり関係がないと言う。 「つみたてNISAはそもそも年齢上限がありません。iDeCoは現在60歳までの加入ですが、来年5月からは65歳まで加入できるように延長されます。50代はもちろん60歳から始めても遅くありません」  なるほど、それなら二つの制度を利用して「じぶん年金」づくりができそうだ。どんな利用法が考えられ、50歳や60歳から始めた場合、どれくらいのお金がたまることが期待できるのか。 (週刊朝日2021年11月19日号より)  さまざまな税優遇がある「税メリット」と、積み立て投資の特徴はしっかり理解してから始めたい。  まず税メリットだが、iDeCoの三つの税優遇は有名だ。一つは掛け金が全額所得控除されること。先の長尾さんのように所得税・住民税を安くできる。普通なら運用益が発生すると約20%を税金でもっていかれるが、それも非課税。さらに、リタイア後などに年金としてもらう場合も公的年金等控除が使える。  一方のつみたてNISAは運用益が非課税だ。 「こうした税メリットはフル活用したほうがいい。つみたてNISAは月約3.3万円、iDeCoは会社員だと最高で月2.3万円ですから、合わせると約5.6万円です。二つの制度を併用して、余裕がある人は枠を使い切ることをお勧めします」(頼藤氏)  もう一つ、積み立て投資の特徴は、投資対象の価格が高い場合も低い場合も、毎月、同じ金額で買い付けを進めることにある。これだと高いときは少ない量、低いときは多い量を買うことになるが、毎月同じ量を買う方式と比べると平均購入価格を下げる効果があることが広く知られている(「ドルコスト平均法」という)。つまり、長期で見れば安く買えるのだ。 「だから、途中でやめるのはNGです。たとえ今後、相場が暴落しても、ドルコスト平均法のメリットを思い出して継続することが大切です」(同)  さて、頼藤氏が言うように、二つの制度をフル活用した場合の投資シミュレーションである。iDeCoとつみたてNISAに上限額を毎月積み立てた場合、5年後~20年後(iDeCoは15年後まで)に運用結果がどうなるかを試算してみた。運用利回りは3%、5%、7%の3通りとした。 「利息が利息を呼ぶ」とされる複利効果が、運用益の非課税も手伝って、加速されている。 (週刊朝日2021年11月19日号より)  iDeCoを15年間続けた場合、積立総額(2.3万円×12カ月×15年=414万円)に対して、利回り3%の場合だと522万円、同5%で614万円、同7%だと729万円にもなる。  同じくつみたてNISAに20年なら、どうか。積立総額約800万円(約40万円×20年)が、同3%でも1千万円を超し、同5%で1370万円、同7%だと1736万円にもなる。  こうした運用結果を夫婦で実践した場合にどのくらい資産形成ができるのか。夫が50歳から始める場合と、60歳から始める場合の2通りを想定し、夫はiDeCoに65歳まで加入し、つみたてNISAは夫・妻ともに70歳まできっちり続けるとした。  50歳からの20年間だと長期投資の効果を十二分に得ることができる。夫単独でも1600万円から2400万円になり、これに妻のつみたてNISAが加われば2700万円から4200万円までが視野に入る。60歳からの10年でも、夫婦2人だと1千万円から1300万円になる。いずれも立派な「じぶん年金」である。 「この低金利時代に、こんなに高い運用利回りが見込めるのか」とする疑問の声が聞こえてきそうだが、積み立て投資で想定されているのは、株式や債券、不動産など市場全体の値動きに連動する投資信託を買う「インデックス投資」といわれるものだ。これは「長期・分散・積み立て」に適した投資法とされ、お金の専門家で勧める人が多い。  とはいえ、投資対象となるインデックスはさまざまだ。専門家はこぞって「株式型のインデックス投信」を薦める。先の頼藤氏が、 「積み立て投資なので、先進国や全世界の株式の値動きに連動する株式のインデックス投信1本に絞っていいと思います。リスクが怖いのなら、国内外の株や債券に分散投資しているバランス型を選べばいい」  と言えば、楽天証券経済研究所のファンドアナリスト、篠田尚子氏も、 「地域が分散されている株式型インデックスでいいと思います。全世界や先進国を対象としたものになります」  と頼藤氏と同じ投資対象を示す。  その根拠は「過去」にある。ニッセイ基礎研究所の熊紫云研究員によると、実は、この30年間を振り返っただけでも、長期投資においては株式インデックス投資が有効な資産形成の方法であることがわかるという。 「この間、世界には4回の金融・経済危機がありました。日本のバブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、昨年のコロナ・ショックです。日経平均株価やニューヨークダウなど国内外の代表的な株式インデックスを選んで、四つの危機の直前に100万円をそれらに一括投資した場合、今(今年9月末)の価格がどうなっているのかを計算してみました」  結果は、米国株や先進国株式、全世界株式への投資は、四つの期間ですべて利回りは6%を超えた。例えば、先進国株式の場合、日本のバブル崩壊直前に投資した100万円は今、13倍の1365万円になっていて、利回りは8.6%だ。ITバブル崩壊前では409万円で同6.8%、リーマン・ショック前だと256万円で同7%だった。 「下落直前の株価が高いときに買った一括投資でさえこの結果ですから、一括でなく定期的に、しかも株価が下落したときにも買う積み立て投資なら、なおさら有利になります」(熊研究員)  預金金利がほぼゼロで、債券投資も魅力的ではない状況を考えると、長期の資産形成では株式インデックス投資がメインで良いと熊研究員は言う。  もちろん、過去は将来を約束するものではないことは確認しておきたい。日本の株式市場のように、1990年のバブル崩壊から20年以上、低迷し続けたマーケットもある。  とはいえ世界経済は着実に成長を続けている。積み立て投資はいつ始めてもいいので、自分で納得できたらチャレンジしてみるのも手だ。  50代で高年収の人は、税メリットだけでもお得かもしれない。先に説明したiDeCo掛け金の全額所得控除である。例えばiDeCoに月2.3万円掛けられる人だと、所得税率10%でも2万7600円、同20%なら倍の5万5200円が年末調整で戻ってくる。そして、その翌年の住民税が、これも税率10%だから2万7600円低くなる。所得税率20%の人だと税メリットは年間8万円を超す。(本誌・首藤由之)※週刊朝日  2021年11月19日号より抜粋
相続の準備、最低限は「財産リスト作り」 揉めそうなら遺言書の作成も
相続の準備、最低限は「財産リスト作り」 揉めそうなら遺言書の作成も ※写真はイメージです (GettyImages)  相続が発生したとき、残された家族がやらなければいけない手続きや届け出は予想以上に多い。もしもに備えて、元気なうちに自分ができる相続の準備には、どんなことがあるか。あらためておさらいしておこう。 *  *  * 「親の死後、失意の中で財産探しに明け暮れるのは、想像以上に過酷な作業でした」  神奈川県在住のAさん(51)は、一昨年に他界した母(享年74)の死後、相続の手続きに追われる日々を過ごした。脳梗塞を発症してから1カ月あまりで亡くなったAさんの母は、それまで元気だったこともあり、相続準備の一切に着手しないまま旅立ってしまった。父は先立っており、法定相続人は、Aさんと弟の2人。相続税の申告は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内」と法律で定められており、期限内に申告しないと脱税で立件される可能性がある。  Aさんも弟も、一家の大黒柱としてフルタイムで管理職をこなす働き盛り。ただでさえ多忙を極める日々の中で突如、相続手続きが始まった。  幸いにもAさん、弟ともに収入面は安定しており、遺産分割は「折半に」とスムーズに話がまとまった。大変だったのが、金融資産がどこにどれだけあるのかという財産探しだ。物が多く、片付け下手だった母が住んでいた実家をどれだけ探しても通帳の類いが出てこず、家中に散らばった郵便物の中から、一つずつ手がかりを探った。やっとの思いで見つけたのが、銀行の口座が六つ、証券会社の口座が四つ。そこで銀行に「母の口座があるはずだから確認してほしい」と頼んだところ、「お母さんが生まれてから亡くなるまでの全ての居住地で、戸籍謄本を取り寄せてください」と言われた。  母は転勤が多かった父について、あちこちを転々としてきた生活だったこともあり、各自治体への問い合わせにも手間がかかった。仕事の合間を縫って戸籍謄本をそろえ、平日の日中に各銀行の窓口に出向き、長時間待たされてやっと残高の確認までこぎつけたら、わずか100円だったということも。しばらくしてから、屋根裏にあるタンスの引き出しから貸金庫の契約があることもわかり、全体の財産の把握には8カ月もの歳月を要した。実家と駐車場の評価額の算定や書類作成を税理士に依頼し、何とか無事に相続税の申告期限に間に合ったが、Aさんは「もうあんな思いは二度としたくない」とため息をつく。  相続が発生したとき、残された家族がやらなければいけない手続きや届け出は多く、遺産の分割や処分、税金のことまで済ませなければならない。それらを滞りなく円滑に進めるために、家族のことを考えて自分ができる相続準備には、どんなことがあるか。相続の基本をおさらいしながら説明しよう。  まずは、相続の仕組みについて。相続とは、死亡した人(被相続人)の全ての権利や義務、法的地位が相続人に受け継がれること。現金や預貯金、不動産などの財産はもちろん、借金のようなマイナスの財産も相続することになる。例えば、持ち家と土地、現金5千万円、500万円の貸金債権(貸した相手に500万円を返してもらう権利)を残して死亡し、息子1人だけが相続したとする。この場合、息子は持ち家だけ、現金だけ、などと一部に限定して受け継ぐことはできず、全ての財産、債権を一括して受け継がなくてはならない。  プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合には、財産を全て相続しないという相続放棄や、故人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する(プラスの財産がマイナスの財産を上回れば相続する)限定承認という方法もある。相続放棄も限定承認も、自分が相続人になったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、期限内に申し立てをしていないと、相続を承認したことになる。またこのとき、相続財産を一部でもすでに処分してしまっていると、相続放棄や限定承認をしたくてもできないため、要注意だ。  財産については、何がどれだけ、どこにあるのかというリストやメモを生前から準備しておきたい。『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』などの本の監修で知られる司法書士の児島充さんは言う。 「相続において、まず必要になるのが、何がどれだけあるのかという全体の財産の把握。これがすぐにわかる状態になっているかそうでないかで、残された家族の相続手続きにかかる時間や手間は、大きく変わってきます」  被相続人が亡くなったときに、もっとも困る問題が、冒頭のAさんの例のように、相続する財産にはどういうものがあって、それがどこにあるのかがわからない状態だ。 「こうなると、残された家族が財産を探す作業に追われることになり、場合によっては相当の時間を要することになります。そうならないために生前にできる準備として最低限やっておくべきなのが、何がどこにどれだけあるのかという財産リストを、メモでも良いから残しておくこと。『自分が亡くなったら、これを見たら何がどこにあるのかがわかる』というものを残しておくことが、とても重要なのです」(児島さん)  このとき、なるべく財産を整理して、わかりやすい状態にしておきたい。残される家族のためでもあるが、自分自身が財産を把握しやすくするためでもある。ファイナンシャルプランナーの柳澤美由紀さんは言う。 「70代になったら、財産をできるだけ整理して、わかりやすい状態にしておきましょう。人は年を重ねるごとに、いろいろなことが面倒になり、財産の管理も煩雑になってしまう例が少なくない。自分で把握しやすくするためにも、分散している口座を一つにまとめるなど、老いじたくとして資産の整理を心がけて」  次に、相続人について。被相続人の遺産を相続できる人は法律で定められており、それを「法定相続人」という。被相続人の配偶者、つまり夫や妻は、必ず相続人になる。ただし、あくまでも法律上の婚姻関係にある配偶者に限られ、内縁関係の夫や妻は相続人になれない。配偶者以外に相続人になれる人には順位があり、第1順位は、被相続人の子ども。被相続人に配偶者と子どもがいれば、配偶者と子どもが相続人になる。子どもは実子か養子かを問わず相続人になれるほか、生前または遺言書で認知された子ども(非嫡出子)も含まれる。 (週刊朝日2021年11月19日号より)  第2順位は、被相続人の父母。被相続人に子どもがいなければ、配偶者と父母が相続人になる。父母ともに亡くなっていて、祖父母の両方あるいはどちらかが存命なら、配偶者と祖父母が相続人になる。第3順位は、被相続人の兄弟姉妹。子どもがおらず、父母・祖父母も亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人となり、すでに亡くなっている兄弟姉妹がいたら、その子ども、つまり被相続人の甥・姪が相続人となる。 (週刊朝日2021年11月19日号より)  相続人が複数いる場合には、相続した財産を各相続人がどのような形で相続するのかを決めて、分配しなければならない。これを遺産分割という。遺産分割では、各自に分配される財産の内容や、金額などを決めることができる。例えば、妻と子1人が相続人の場合には、法定相続分はそれぞれ2分の1だが、遺産分割によって、妻に3分の1、子に3分の2を分配することもできる。遺産分割には主に現物分割、換価分割、代償分割の三つの方法がある。 (週刊朝日2021年11月19日号より)  この遺産分割を巡り、争いが起こることは世の常。そうならないために生前から準備しておきたいのが遺言書だ。「うちは財産が少ないから遺言書なんて必要ない」と思っていても、遺言がないがために、相続を巡って揉め事が起こることは少なくない。  特に遺言書の作成を検討したい人の条件の中でも、父母が亡くなっている場合の子がいない夫婦は、遺言書がないと、被相続人の兄弟姉妹が4分の1を法定相続してしまう。「自分の配偶者に全財産を残したい」と考える人は、遺言書にその旨を記載していないと不本意な結果を生む可能性がある。前出の柳澤さんは言う。 「親が子に遺産を残す場合、遺産分割で揉めるかどうかは、子どもの経済的な状況によって左右されやすい。例えば複数の子どもがいる場合、子どもによって経済状況に大きな偏りがあったり、子ども全員の家計が苦しい場合などは揉めやすい。さらに財産が家や土地など、金銭で分けられない場合にも、『誰が家をもらうのか』といったことで揉めることになる。子どもたちの状況を見て、揉めそうな可能性があれば、親として遺言書を作っておくほうがよい」 (週刊朝日2021年11月19日号より)  では、遺言書はどう準備するのか。遺言書を作成するときに一般的に使われる様式が、(1)自筆証書遺言と(2)公正証書遺言の2種類だ。遺言を有効にするためには、それぞれの方式に従って作成する必要がある。まず、(1)の自筆証書遺言は全文を自分で書く遺言書のこと。簡単で費用もかからないが、財産目録以外は全て自筆にすることと、日付・署名・押印が必要となる。パソコンで打ったものや代筆によるもの、日付の記入がないものなどは無効になってしまうので要注意だ。また、遺言書原本の保管場所にも気をつけたい。紛失や偽造などの恐れもあれば、誰にもわからない場所にしまいこんで、肝心なときに発見されなければ意味がないからだ。 「自分の遺志を確実に残せる手段として、私は自筆証書遺言書保管制度をお勧めしています。現在は、法務局に設置されている遺言書保管所に、遺言書1件につき手数料3900円で預けることもできる。保管場所は信頼できる人に伝えておくとよいでしょう」(柳澤さん)  (2)の公正証書遺言は、公証役場で公証人に遺言の趣旨を口頭で述べ、それに基づいて公証人が作成する遺言書のこと。病気などで字が書けない人でも作成でき、遺言書の原本は公証役場で保管されるため、偽造や紛失の心配がない。ただし、公正証書遺言の作成には証人が2人以上必要で、公証人に支払う手数料も発生する。また公証人に遺言書を作成してもらうには、対面であることが必須で、基本的には公証役場に出向いて遺言を作ってもらうことになる。病気や入院などの事情で外出が難しい場合には、自宅や入院先などへ公証人に出張してもらうことも可能だ。(フリーランス記者・松岡かすみ)※週刊朝日  2021年11月19日号より抜粋
小室夫妻は100人以上の報道陣と目もあわさず、無言で出発「ニューヨーカーは誰も気にしていない」と現地
小室夫妻は100人以上の報道陣と目もあわさず、無言で出発「ニューヨーカーは誰も気にしていない」と現地 羽田空港に現れた小室夫妻(写真部・松永卓也)  10月に結婚した秋篠宮家の長女、小室眞子さん(30)と夫の小室圭さん(30)は11月14日午前、羽田空港から米ニューヨーク州に旅立った。  羽田空港の国際線の出発ゲート付近には早朝から100人以上の報道陣が集まり、夫妻の門出を見送った。夫妻が姿を現したのは出発ギリギリの午前10時8分で、マスクをした眞子さんは赤いパスポートを手に紺色のニット姿、圭さんはセーターとコーデュロイのパンツとカジュアルな格好だった。報道陣が「眞子さま」と声をかけると、眞子さまは軽く会釈。圭さんは目もほとんどあわせず、無言で足早に通路を通り過ぎた。 機内へチェックする際、マスクを下した小室眞子さんと圭さん(写真部・松永卓也)  一般人となった眞子さんは機内へのチェックインの際、マスクをさげてパスポートを職員に見せていた。圭さんも顎の下へマスクを下げるしぐさをみせ、機内へと移動した。アチコチでテレビ中継が行われるなど空港は騒然とした雰囲気だった。   当初は圭さんだけがひと足先にニューヨークに戻るとも見られたが、夫婦そろって晴れて渡米することになった。ニューヨークでの新生活はどんなものになるのか。最新情報をニューヨークで旅行会社を営む経営者や皇室ジャーナリストに聞いた。  ニューヨーク在住の旅行会社を経営するA氏は、マンハッタン暮らしをこう話した。  「マンハッタンはお金がないと住めないし、遊べないところ。世界的に見て、物価は断トツに高いですから、それなりの高収入が必要です」  ニューヨークはハドソン川下流の島であり、中心街であるマンハッタンの法律事務所で、圭さんは「Law Clerk」(弁護士の助手)として働く。事務所が入居している高層ビルには日系企業も入っている。  そんなところで暮らすには、年収は一体どのくらい必要なのか。 「マンハッタンのミッドタウンに住んでいる人の平均所得は2000万円ぐらいだと思います。警察官とか郵便局員の初任給が800万円くらい。3年務めたら1000万円を超えます」(A氏) ◆小室さんの年収600万円は低所得者層  世界経済の中心と言われるだけあって、給与水準は高いという。ただし、小室さんの年収は600万円前後とされる。 「600万円以下は低所得者層に入ると思います。おそらく、法律事務員なので、ライセンスなしでもでき、書類を裁判所に持って行ったり、事務所に持ち帰ったりという仕事、弁護士の資料集めの手伝いなどと思います」(同前) 空港内の通路を無言で通り過ぎる小室夫妻(写真部・松永卓也)  小室夫妻のニューヨークでの住居は既に決まっていると伝えられる。A氏は家賃についてこう解説する。 「小室さんの勤務先のあるマンハッタンの中心部だと、月の家賃は1 LDK で大体40万から70万円。たぶん、2人で住むんだから2 LDK だと、50万円から90万円くらいにはなるでしょう。高級な住まいは100万円を超えます」  高いといわれる物価はどうなのか。 「日本より物価は相当高いですね。ニューヨークにはラーメン屋さんが結構あるんです。私の知っているところはチャーシューラーメン1杯を注文すると、約35ドル(約4000円)くらいになりますね」(同前)  ニューヨークでも日本のようにSPがつくのかどうか……。眞子さんは一人で買い物に出かけても大丈夫なのか……。気になる治安はどうか。 「この間、ニューヨーク州にある刑務所を6つ閉鎖すると報じられていました。理由は犯罪の件数が悪かった頃に比べて半減しているからです。マンハッタンはニューヨークの中でも非常に安全なエリア。ニューヨーク州では銃を所持することは法律で禁じられています。銃規制は州ごとの法律ですから」(同前)  現地のコロナの状況についてA氏はこう話す。 「マスクしている人はほぼいないですね。ミュージカルも毎晩満席ですし、ホテルも埋まってます。ヨーロッパからも観光客が入って来るようになりました。カナダとの往来も復活し、アメリカに入ってくる人が殺到し、国境付近では車が渋滞したりしています」 ◆どうなる就労ビザ申請  小室夫妻はこれからアメリカで働くための就労ビザを申請するのではないかとではと見られている。 「小室さんのビザは、OPTという大学に就学している学生が専攻している学問と関連のある職種で企業研修を行うものではないかと聞きます。小室さんがフォーダム大を卒業したのが今年5月。1年たつと切れるものなので、来年5月にビザが切れるのでは? それまでに就労ビザを申請しないといけないんですが、弁護士事務所がスポンサーになってくれないと取得は大変難しい。来年2月の弁護士試験に合格しなければいけない。ビザなしになる可能性もありますね」 空港に殺到した報道陣(撮影・上田耕司)  一方、眞子さんはICU(国際キリスト教大学)在学中に学芸員の資格を取得。東京・丸の内の博物館に5年半勤めた。資格を活かして、マンハッタンにある世界最大級のメトロポリタン美術館に就職する可能性がある、と報じられた。 「メトロポリタン美術館には、バスで乗り継ぎになると思いますが、30分もあれば着くと思いますよ。眞子さんは配偶者ビザを取ったとも報じられていますが、バックパワーがあるから、これから別のビザも取れるんじゃないですか。日本とアメリカの関係ですから。圭さんは自分のビザが切れても、眞子さんの配偶者ビザでやっていくということは、この先ありうることだと思います」(同前)  ニューヨークにはお笑いコンビ「ピース」の綾部祐二やタレントの渡辺直美らが活動の拠点としている。ニューヨークでも2人はメディア、パパラッチに追いかけられるのだろうか。 「こっちは眞子さまの結婚は誰も気にしていないし、ほとんどテレビのニュースにもなっていない。日本ではなぜ、そんなに気にしているのか、2人の好きにさせてあげればいいのにと思います。今はコロナの時代ですから、日本から一般観光客が来るのは先なので、しばらくは自由を満喫できるのでは。おそらく、来年になって日本からの観光客が増えたら、街中を歩いていても、見つかるかもしれません」 ◆スピード渡米の理由は「日本嫌い?」  結婚したのは10月26日。仮住まい先のマンションには19日間滞在しただけの”スピード渡米”となった。11月4日には、秋篠宮妃紀子さまの父で、眞子さんの祖父・川嶋辰彦さんが81歳で亡くなった。小室夫妻が急いでニューヨークに行く理由について、皇室ジャーナリストの神田秀一氏はこう見る。 「まだ祖父の川嶋さんの喪もあけていないうちに、こんなに急いだのは、仮住まいのマンションにいても、外も出歩けませんし、SPに監視されていますからね。それに、圭さんが司法試験に落ちただけで騒がれる。もう、日本にいるのが嫌になってしまっているんでしょう」 機内へ乗り込む小室夫妻(写真部・松永卓也)  圭さんは来年2月には再度、司法試験を受けるのではないかとみられている。 「合格率63%、初めて受験した人の合格率は78%というのはあくまでネイティブの人たちを入れての合格率ですからね。日本人が合格するためには、相当の英語力を習得することが必要。圭さんは仕事にも復帰しないといけないし、アメリカにいた方が英語力が磨かれるというメリットもある。1日も無駄にできない。眞子さんも、2人がバラバラに生活するよりも、一緒に向こうへ行きたいと思ったのではないでしょうか」(神田さん)  圭さんは12日夜、母親の元婚約者と面会し、懸案の小室家の金銭トラブルに双方が解決することで合意した。眞子さんも渡米前日の13日、赤坂御用地を訪れた。 「出国前に家族に別れのあいさつをしたんでしょうね。2人とも、まだ就職先も不安定な状態で飛び出していくんだから、茨の道だと思う。だけど、努力していけばそれが平坦になるかもしれない。圭さんは会見で『愛しています』と言ったんだから、眞子さんを本当に大事にして欲しいね」(同前) (AERAdot.編集部 上田耕司)
暴排条例から10年 社会から断絶された「ヤクザの子どもたち」の知られざる現実
暴排条例から10年 社会から断絶された「ヤクザの子どもたち」の知られざる現実 暴力団の家庭は外側から実態が見えくにい(写真提供=大洋図書)  社会と暴力団との関係を断つことを目的とした暴力団排除(暴排)条例が47都道府県で施行されてから、今年で10年になる。暴力団の数は大幅に減少し、彼らを取り巻く環境は一層厳しくなった。一方で、暴力団が社会から断絶されることにより、その背後にいる妻や子どもたちなど“家族”の姿もまた見えづらくなっている。暴力団の家庭に生まれた子どもたちに焦点を当てた「ヤクザ・チルドレン」(太洋図書)を出版したノンフィクション作家の石井光太氏に、「ヤクザの子ども」の知られざる実態を聞いた。 *  *  * ――今年は『ヤクザと家族』や『すばらしき世界』など、暴力団の生きづらさをテーマにした映画が話題を呼びました。これまでの任侠映画とは違い、暴力団の“負”の側面もクローズアップされました。新著「ヤクザ・チルドレン」で多くの暴力団の家庭を取材した石井さんはどう受け止めましたか。  ヤクザの現実に注目が集まったのはいいことですが、描かれ方はまだ甘いと思います。実際はもっと悲惨です。ヤクザ本人の「生きづらさ」よりも、問題は家庭にはびこる薬物です。ヤクザの家庭は、必ずと言っていいほど薬物が絡んでボロボロになっている。映画では薬物を使用しているシーンなども少しは出てきますが、実際はあんなものではありません。ヤクザ本人のみならず、家族までもが薬物にむしばまれている状況に目を向けなければ、実相は描けないと思います。  ヤクザが女性と子どもにはやさしいとか、薬はやらないといったパブリックイメージは幻想で、実際にはかっこよさなど一切ありません。今や、妻や子どもにDVをしないヤクザの親なんて、ほとんど聞いたことがない。例外的にそうじゃなかったのは、大幹部の裕福な家庭か、いろんなシノギができた80年代以前の話です。 ――石井さんが見た暴力団の子どもを取り巻く実態はどのようなものだったのでしょうか。  美談で語られるような仁義の世界はゼロに等しく、実際は薬物まみれです。子どもの母親(ヤクザの妻)も、ほとんどが薬物中毒者です。 親と同じ反社の道に進んでしまう子どもも多い(写真提供=大洋図書)  私が取材した子どもたちは、大半が家庭内暴力を受けていますし、両親が薬物中毒者で、シャブで狂いながらひたすらセックスを続けているといった状況も当たり前です。薬による幻覚で、親が娘に殴りかかってくるようなこともありますし、ものを使って流血するまで痛めつけるような事例もありました。中には実の母親に覚せい剤を打たれて、13歳で母親からヤクザが経営するソープに売り飛ばされたり、育児放棄で餓死寸前に追いやられたりした子どももいます。母親が覚せい剤を大量に服用し、家で失禁して気絶していたといった話もありました。  子どもが日常的にこうした状況に置かれているわけですから、虐待以外の何物でもありません。取材していても、悲惨すぎてある時期の記憶が飛んでしまっているという子が一定数いました。 ――暴力団の家庭に薬物が入り込んでしまっている背景には何があるのでしょうか。  暴力団対策法(暴対法)や暴排条例などでヤクザに対する締め付けが厳しくなるにつれて、彼らは不動産や金融などの仕事ができなくなり、薬物を売買することでしか金を手に入れられなくなりました。売買はするけど自分では使わないなんていうヤクザはまずいません。特に末端のヤクザはほとんどが自分でも使っています。シャブはセックスと相性がいい。だから当然、妻も薬物中毒になります。両親が常用者になれば、家庭は崩壊します。  幼い頃から薬漬けになっている両親の姿を見続けているので、ヤクザの子どもたちの多くは、親やヤクザを嫌悪しています。ヤクザは金や薬のために平気で自分の子どもを売り飛ばしたり、働かせたりするわけですから当然ですよね。ヤクザにとっては子どもも搾取の対象になる。だから、子どもは親やヤクザを全然かっこいいと思っていない。ある意味では、ここだけは希望と言えるのかもしれません。 ――一方で、本の中に登場する子どもたちは親を恨みながらも、反社の世界に足を突っ込んでしまうケースも多くあります。親を憎みながらも同じ道を歩んでしまうのは、どうしてでしょうか。  ヤクザの家庭は、ごく限られた場所でしか生きていけず、そこにしかアイデンティティーがないからです。地域はヤクザ家庭との付き合いを避けます。子どもは小学校に上がる前から、同級生の親に「あの子とは付き合うな」と言われ続けることになるので、早々に社会から排除されてしまうのです。 暴力団の家庭はごく限られた場所でしか生きていけない(写真提供=大洋図書)  でも、国家がヤクザを「差別してもいい」とお墨付きを与えているのだから、地域が差別するのは当たり前ともいえます。だから、ヤクザの家庭には公助も共助もない。彼らの中にある唯一の共助は、同じ穴のむじなである、ヤクザや不良仲間だけになってしまう。ヤクザの子どもであることを認めてくれる存在は、不良やヤクザしかいないわけです。居場所がごく限られた狭い世界にしかない以上、結局は悪人たちの搾取のピラミッドの中に入ってしまう。その構図が、ヤクザの再生産を生んでいきます。  そして、ひとたびピラミッドに入ると、皆が似たようなルートをたどることになります。特に女の子は恐ろしいほど似通っている。基本的には薬を打って売春して、妊娠して子どもを産んだ後に、男に逃げられて生活に行き詰まるというパターン。その先にあるのは虐待の連鎖か、別のヤクザとの再婚か、生活保護です。男の子の選択肢も、ヤクザ社会の中で勝者として生き残るか、あるいは敗者となって転げ落ちるかの2つしかない。昔はそこで勝ち続ければ搾取する側になれたのですが、今は暴排条例で締め付けられているので、どんなに勝ち続けても搾取する側にはなれないというパラドックスがあります。 ――一般的には、こうした機能不全家庭で育った子どもたちは、NPOや児童支援家庭センターなど福祉とつながることが大切です。暴力団の家庭が福祉の網にかからず、孤立してしまう背景には何があるのでしょうか。  ヤクザ家庭では、「行政・警察・児相といった公的機関は敵だ」というマインドを共有しています。子どもは「社会とつながるな」という教えを受けていますし、つながってしまったら自分の両親や兄弟はバラバラになってしまうリスクがある。子どもは家族の「裏切り者」になることを恐れて、助けを求めることができないのです。世の中にはさまざまな支援がありますが、公的機関に頼れない存在がいるということを、社会全体が認識しておく必要があると思います。 「ヤクザ・チルドレン」を出版したノンフィクション作家の石井光太氏  また、家族としての“カタチ”が希薄という特殊な事情もあります。そもそも籍を入れていない家庭が多い上に、「夫がころころ変わる」「引っ越しを頻繁に繰り返す」といった傾向があるので行政が追いきれません。ヤクザは警察の目から逃れるプロでもあるので、その家族も身を隠したり、捜査員をまいたりする方法を心得ている。つまり、ヤクザの家庭自体が存在を隠しながら生きているのです。それゆえ、一般家庭を対象とする従来型のセーフティーネットが機能しない。だからこそ、ヤクザの家庭に特化した介入の仕方を考えていくべきです。 ――具体的に暴力団の家庭に特化した介入とは、どのような方法が考えられますか。  暴力団の取り締まりにあたるマル暴(組織犯罪対策部など)が、ヤクザの家庭にも介入する必要があると思います。現状、マル暴の仕事はヤクザを捕まえることに終始して、妻や子どもはほったらかしです。ヤクザに介入できるのはマル暴しかいないわけですから、ヤクザを取り締まるのと同時に、マル暴から積極的に児相につなげるなど、子どもの保護に向けて家庭に介入していくべきです。  マル暴はヤクザの交友関係など細かく情報を把握しており、もちろんその家庭状況も詳しく知っています。これらの情報を児相など他の機関に共有するべきです。現状、児相ではヤクザ関係者が子どもを引き取りに来ても、その人物がヤクザであることを証明できないために引き渡してしまうこともあります。児童養護施設から帰ったら、家に母親の愛人のヤクザが住んでいたなんてこともザラ。もしマル暴からの情報提供があれば、児相だってこの家庭には戻さないとか、重点的に見守りをしなければならないと考えられるはずです。 ――暴力団の家庭なんて自分たちとは関係ない、という社会の意識も変える必要がありそうです。  今は「親ガチャ」という言葉がはやっていますが、ヤクザ家庭を含め、そんな言葉でくくれるほど単純な問題ではありません。日本には暴力団の構成員、準構成員は合わせて2万5900人いるとされていますが、1人平均3人の子どもがいるとしても7万人以上になるのです。ガチャで外れだったから残念という話ではないでしょう。ヤクザを美談にするのではなく、その家庭で育ち、社会からも排除されている子どもたちに目を向け、手を差し伸べる術を考える必要があります。(構成/AERA dot.編集部・飯塚大和)
アラフィフで“魔性”に磨き「顔も変わった」宮沢りえ…セカンド女優人生
アラフィフで“魔性”に磨き「顔も変わった」宮沢りえ…セカンド女優人生 宮沢りえ  日本テレビで放送中のドラマ「真犯人フラグ」は、回を追うごとに謎が深まり、SNSでの反響も大きくなっている。ドラマの公式サイトで真犯人を推理する企画が進行していることもあり、視聴者による真犯人予想も盛り上がっている。  本作は、2019年放送のドラマ「あなたの番です」(日本テレビ)の原案を手掛けた秋元康ら同作スタッフが制作を手がけるミステリードラマ。愛する妻子が失踪してしまった悲劇の主人公・相良凌介(西島秀俊)が、日本中から疑惑の目を向けられながらも、真実を探る闘いを描く。本作で注目を浴びているのが、主人公の妻で、ある日突然子どもとともに姿を消してしまう真帆を演じる宮沢りえ(48)だ。民放連続ドラマへの出演は2004年の「一番大切な人は誰ですか?」(日本テレビ系)以来、なんと17年ぶりとなる。 「宮沢さん演じる真帆は、第3話の後の真犯人予想ランキングで1位となるほど、物語のキーパーソンとなっています。彼女の変わらない透明感と美貌にも驚きの声が多く出ていますが、一方で『宮沢りえ、顔変わった!』『誰だかわからなかった』などの声も上がっていました。久しぶりの連ドラ出演だったことや、3年ほど前にトレードマークであったホクロを除去したことで、印象が変わったことも関係しているのでしょう。最近の出演CMでも、肌つやが劇的に良くなったことを指摘する声があがっています」(テレビ情報誌の編集者)  宮沢の存在感はアラフィフになっても衰えておらず、今年に入ってからCMにも引っ張りだこだ。6月には「三井のリハウス」のテレビCMに34年ぶりに、母親となった白鳥麗子として出演し、話題を呼んだ。しかし、娘役で出演した新人タレントよりも目立ってしまったため「不憫」「娘の人がんばれ!」という声もSNSで聞かれたほど。またシリーズ化したポッキーのCMも同様で、宮沢の圧倒的なオーラを前に若手女優の存在感がかすんでしまう事態になっている。 「2021年は宮沢さんにとって再ブレークへの出発点と言っていいでしょう。ドラマやCMを始め、12月には18年ぶりの上演で注目されている唐十郎氏の舞台『泥人形』への主演も決まっています。さらに年末には、2夜連続放送の山崎豊子氏原作のスペシャルドラマ『女系家族』で寺島しのぶさんとのW主演も控えています。来年も、窪田正孝さんとのW主演映画『決戦は日曜日』の公開もあり、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも出演予定。正直、50歳を前に宮沢さんの露出がここまで増えるとは予想できませんでした。プライベートでも夫の森田剛さんとの関係が良く、子育ても落ち着いて仕事に集中できるようになったのかもしれません」(同) ■森田剛のプロデューサーに!?  宮沢と森田は2018年に結婚。写真週刊誌では、2人が仲むつまじく旅行や買い物をしている姿がたびたび紹介され、芸能界の「ラブラブ夫婦」として有名だ。女性週刊誌の芸能担当記者は言う。 「ともに若い頃は俳優や女優、アスリートと浮名を流しましたが、今は歳を重ねて最良の伴侶を得たことから、2人ともすごくリラックスした表情を浮かべています。公私ともに、まさに充実期を迎えているのではないでしょうか。2016年の舞台共演をキッカケに交際に発展したそうですが、森田さんがジャニーズ事務所を離れて一緒に新事務所を設立したことで、今後はCMやドラマ、映画でも夫婦共演が期待されます。知名度、好感度とも高い夫婦だけにCMオファーは間違いなく来るでしょう」  11月1日にV6が解散し、森田はジャニーズ事務所を退所。その翌日に宮沢と森田は新事務所「MOSS」を設立した。「女性自身」電子版(11月2日配信)によれば、宮沢と森田は仕事のオファーがあれば、企画書や台本を互いにチェックし、オファーを受けるかどうかを相談しているという。同じ事務所になったことで、ふたりの密度と、仕事選びの自由度はさらに高まったのだろう。  芸能評論家の三杉武氏は宮沢りえについてこう評価する。 「90年代に美少女アイドルとして活躍した宮沢さんは、2000年代に入ると本格女優として素質を開花させます。日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞した映画『たそがれ清兵衛』『湯を沸かすほどの熱い愛』をはじめ、数多くの映画やドラマ、舞台でその演技力が高く評価されてきました。浮き沈みの激しい芸能界でこれだけ長い間最前線で活躍し続けるのは並大抵のことではありません。加えて、昨今のタレントのように好感度や親近感をアピールすることもないので、芸能界でも少なくなったスター性やオーラを感じさせる稀有な存在になっています。今後は女優としてはもちろん、夫の俳優活動をサポートするプロデューサーとしての手腕にも注目が集まっています」  最愛のパートナーと新たな道を歩みはじめた宮沢りえ。第2章ともいえる彼女の女優人生の幕開けに期待が高まる。(高梨歩)
小室夫妻NY新生活の現実 「複雑性PTSDの眞子さんを支える圭さんら身近な人が大変」精神科医
小室夫妻NY新生活の現実 「複雑性PTSDの眞子さんを支える圭さんら身近な人が大変」精神科医 結婚の会見時の小室さん夫婦  小室眞子さんと圭さんは米国に14日、出発する。その2日前、圭さんは母親の元婚約者と面会し、金銭トラブルの解決への道筋をつけたと思われる。けじめをつけたうえで米国での新生活が始まる。ふたりの住まいは、ニューヨーク州にあるという。眞子さんは複雑性PTSDを患い、圭さんは働きながら来年2月のNY州の司法試験の勉強に励まなければならない。いったいどのような新生活になるのだろうか。精神科医で複雑性PTSDの患者を多く診察してきた井上智介医師がふたりの生活を分析する。 *  *  *「まず、小室さんは複雑性PTSDを抱える眞子さんを支えてゆかなければならないという現実があります。その意味で小室さんの責任は重大であり、大変だとは思います」  そう話すのは井上智介医師だ。  眞子さんの複雑性PTSDの治療を考えた場合、疾患への理解や研究が進んでいる米国に住むのはいい選択肢である、と井上医師は考えている。  事情に詳しい人物によれば、宮内庁サイドは、眞子さまの疾患についてさほど危機意識は持っていないという。 「米国での医師を紹介するといった話は、聞こえてこなかった。公務も結婚の準備もできたのだから、さほど重くはないと考えているのでしょう」  井上医師は、こうした反応は日本人、特に年齢が上の世代に特有の受け止め方であると話す。 「PTSDは、ひどい災害や事件に巻き込まれるほどのショックを受けて初めてなるもの、といった意識が強い。本人の様子についても、元気そうであれば深刻だとは考えない。誰もがひと目で分かるほど、衰弱したり大声で叫んだりといった分かりやすい症状がなければ、『軽いから問題はない』と考えがちです。しかし、この病を患っている人はたいてい、精神疾患の症状が出ないよう隠そうと努めます。他人が見てわかるように『丸出し』にすることはほとんどありません」  複雑性PTSDとなれば、症状はより深刻だ。人と上手くつき合うことに困難を感じて疎遠になったり、感情の起伏が激しくなることもある。  10月26日の結婚会見での眞子さんの様子を振り返ってみよう。記者の質問に答えた眞子さんに、ただならぬ雰囲気を感じた人も少なくないだろう。皇族特有の穏やかな話し方とは異なる印象を持った人も多いはずだ。 「眞子さんが見せた、力のこもった話しぶりや目線が印象的でしたね。世間の批判的な声があそこまで大きくなっているのだから、平生の感覚ではうまく収めたでしょう。しかし、眞子さんの表情からは、いら立ちや攻撃的な部分が見え隠れしていた。これは、複雑性PTSDの症状が表れてしまったと見るのが妥当です。騒ぎにならないようにご本人も心がけたけれど、コントロールできなかったということでしょう」(井上医師) 2人で会見臨んだ小室眞子さんと圭さん(JMPA)  複雑性PTSDは、素因となる環境から離れることが第一だ。治療もそこからスタートする。  とはいえ、米国で治療にあたる医師やカウンセラーの他に、周囲の人間の支えが不可欠だと井上医師は話す。 「周囲の人間が一番、大変です。海外でふたりで暮らすとなると、最も身近な人間は小室さんになる。眞子さんが小室さんに対して信頼感を持っていても、複雑性PTSDの治療においては、ささいなことをきっかけに、身近な人に対して、怒りやいら立ちをぶつける傾向があります」  井上医師も信頼関係を築いたと思った複雑性PTSDの患者から、感情をぶつけられることは珍しくない、と話す。たとえば、相手が時計をチラリと見れば、「自分との話を終わらせようとしているのだ」と思い込む。そうなると、疾患を抱える患者は、相手に疑いを抱き始め、「相手が自分の敵である証拠」を探そうとする。 「いつもより待たせる時間が長かったのは、やっぱりそうだ。自分を嫌がっているのだ」と、いったロジックが展開され、もう診察に来なくなるパターンは少なくない。 「怒ってわめいたり、怒鳴り散らすというよりは、フツフツとした怒りを溜め込み、黙って連絡を絶ってしまうという行動が多い」(井上医師)  眞子さんが頼りにする圭さん。ニューヨークに戻ってから、どんな生活が待ち受けているのだろうか。  圭さんは留学前、日本で奥野法律事務所にパラリーガルとして勤務して、留学中の生活費を貸与してもらっていた。NHKの報道によれば、ニューヨーク州の司法試験に落ちたと判明したあと、小室さんは、奥野法律事務所の所長の奥野義彦さんに、「来年2月の試験に再びチャレンジします。努力を積み重ねていきます」と話したという。  働きながら試験への準備をするわけだが、ニューヨーク・マンハッタンで活躍する日本人弁護士によると、Law Clerk(法律事務職員)の仕事も過酷なようだ。 「Law Clerkでも、下積みの弁護士であるアソシエイト(associate)でも、家に帰る暇もなくこき使われます」  眞子さまを精神的に支え、多忙な仕事をこなし、2月の司法試験に再挑戦することになる。 「本当は、カウンセラーや医師だけでなく、信頼できる友人が支えることも、治療には有効です」(井上医師) 妹の佳子さまもそばにいない  眞子さんは、英国での留学経験もあるとはいえ、民間人として海外で生活するのは、精神的なストレスも少なくないだろう。ましてや、姉を支えてきた妹の佳子さまも、そばにいることはできない。  小室夫妻のニューヨークでの新生活が、どうか安らぎの場になることを願っている。(AERAdot.編集部 永井貴子)
高校サッカー“最強校”青森山田、消えた天才も プロ多く輩出も成功例は少ない?
高校サッカー“最強校”青森山田、消えた天才も プロ多く輩出も成功例は少ない? 青森山田からJリーグ鹿島でプレーした柴崎岳 (c)朝日新聞社  第100回目を迎える全国高校サッカー選手権大会の地区大会が各地で開催。続々と代表校が決定する中、青森県では前回大会で全国準優勝の青森山田が「四半世紀」に及ぶ25年連続(27回目)での出場権を獲得した。  県準決勝で記録した22対0のスコアでも話題を集めた“最強チーム”は、全国の舞台でも過去5大会で優勝2度、準優勝2度という好成績で圧倒的な強さを誇示。Jユースも加えたプレミアリーグでも、2016年、2019年と2度の優勝(2020年は開催中止)を果たすなど、高校年代の日本サッカー界を席巻している。そして、これまでに大学経由も含めて実に43人のJリーガーを輩出しているが、意外と「大成した」と言える選手の数は、まだ多くない。  現時点で最も高い名声を得たと言えるのは、現役日本代表の柴崎岳である。高校1年時から背番号10を背負い、2年時に主力として選手権準優勝を経験したゲームメーカー。2009年のU-17W杯にも出場し、鳴り物入りで鹿島に入団すると、すぐさまチームの顔に成長した。日本代表デビューは2014年9月。2016年クラブW杯での活躍を経て海外移籍を果たした後、26歳で出場した2018年のロシアW杯で日本の新司令塔としてベスト16進出に貢献した。  その柴崎に次ぐ存在は、2学年下の室屋成だ。高校卒業後に明治大を経てFC東京へ入団して日本有数の右サイドバックへと成長し、2020年からはドイツで奮闘中。森保ジャパンのW杯最終予選メンバーにも柴崎とともに選出されている。しかし、「最強」と呼ばれる現在の青森山田からすれば、A代表入りした選手が2人というのは「少ない」と言える。  候補者はいた。最初に大きな期待を抱かせたのは、小柄なストライカー、小澤竜己だった。高校1年時から背番号10のエースFWとして名を馳せ、3年時の2005年のインターハイで全国優勝。世代別代表でもU-16代表時代はエースとして活躍し、U-20代表まで常に選出されていた。しかし、プロ入り後は故障に苦しみ、FC東京での2年間でJ1出場は3試合のみ。その後、JFLを経て、タイやラトビア、ポーランドといった国々を渡り歩いている。 柴崎岳(写真右)と妻の真野恵里菜(C)GettyImages  柴崎と同学年のGK櫛引政敏も、期待の逸材として注目された存在だった。U-18代表から世代別代表に選ばれ続け、2016年のリオ五輪に出場したまでは良かったが、J1クラブでのレギュラー定着には至らず、2017年からJ2に舞台を移している。  その櫛引以上にGKとして強烈なインパクトを残したのが、ビッグセーブ連発で第95回大会での青森山田の選手権初優勝に大きく貢献した廣末陸だった。U-18、U-19代表にも選ばれていたが、FC東京では出番を得られず、さらにレンタル移籍したJ2(山口、町田)でも出場機会なしに終わり、今季はJFLの青森でプレー。まだ23歳で選手寿命は多く残されているが、現在のところは高校時代の全国制覇から年々、下り坂のキャリアだと言える。  その反対に、高校時代は脇役で、ほぼ無名の存在だった藤本憲明は、卒業後にFWとして得点感覚に磨きをかけ、JFLからJ3、J2、J1と叩き上げで駆け上がってきた。しかし、そのサクセスストーリーも20代でストップ。ブレイクした大分時代には一部で日本代表入りを推挙する声もあったが、神戸移籍後に出番を失い、今夏の大型補強に弾き出される形で清水へレンタル移籍することになった。  ただ、「今後」を見据えた場合、日本代表入りの可能性を持っている選手は多くいることは確かだ。DF陣では、神戸で頭角を現した“雄叫びファイター”菊池流帆が現在24歳。類稀な統率力で高校ナンバーワンCBと謳われた藤原優大は19歳で、浦和から育成型期限付き移籍でJ2の相模原で奮闘中だ。MF陣では、2年生時に2冠獲得に貢献した郷家友太が現在22歳で、神戸でイニエスタの薫陶を受けながら絶賛成長中。  さらに3年時に10番を背負って選手権優勝に貢献した檀崎竜孔は21歳。札幌からオーストラリアリーグに挑戦した後、今季途中からJ2・千葉でプレーしている。そして、郷家、檀崎と同じく2年生時から主力として活躍したレフティー・武田英寿もまだ20歳で、浦和でJデビューを果たした後、今季途中からJ2・琉球への育成型期限付き移籍で鍛錬を続けている。この中では郷家が「順調な歩み」で、菊池が「這い上がって来た」が、その他の面々は現状、プロの壁にぶち当たっていると言える。  かつての日本代表選手は、ほぼすべてが高校サッカーから輩出されていた。だが、Jリーグ発足後にユース出身者が徐々に増え、その中でも国見や帝京に清水商、清水東などの静岡勢、さらに鹿児島実、東福岡などの卒業生が存在感を示していたが、森保ジャパンとなってついにJユース出身者の数が高体連出身者を上回った。今後も「Jユース>高体連」の流れは止まらないだろうが、多様性が求められる中で日本の高校サッカーの存在価値は必ずある。  今年の青森山田の目玉選手は、MF松木玖生。彼の活躍、成長とともに、多くの青森山田出身者が日本代表のユニフォームを着てW杯で戦う日が来るのだろうか。青森から世界へ。それが、現在「最強」と呼ばれるチームの勝利に加えられるべき、もう一つの使命である。
やはりスーパーマリオはすごかった! USJで感じたエンタメの復活 鈴木おさむ
やはりスーパーマリオはすごかった! USJで感じたエンタメの復活 鈴木おさむ 放送作家の鈴木おさむさん  放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、USJについて。 *    *  * コロナ禍も落ち着き始めたと信じ、週末は家族で旅行に行くようになりました。  USJは毎年、家族で行っております。ハロウィン時期に毎年行くのですが、今年も行かせていただきました。  一番の目的は、今年オープンした「スーパー・ニンテンドー・ワールド」です。  USJ内に突如出てくる緑色の巨大な土管。トンネルのようになっているこの土管を通っていくと、自分たちの目に飛び込んできたのはあのゲームの中のマリオの世界。  小学6年生の時にファミコンを買ってプレイした元祖「マリオブラザーズ」。そのあと中学の時に「スーパーマリオブラザーズ」が発売になり、あの面白さに驚愕し、そこからマリオシリーズだけは新作が出るたびにプレイし続けてきました。  そんなマリオの世界が目に飛び込んできます。ゲームの中に飛び込んだかのような体験。  このエリアでより楽しく遊ぶために「ウォッチ」を購入します。色んなキャラのウォッチがあります。USJのアプリをスマホにおとして、ウォッチのバーコードを読み込む。  僕と妻と息子、3人分。するとスマホに自分が選んだキャラが出てきます。  このエリア内には、マリオでおなじみのコインを取る時の黄色い「?」のボックスが置いてあります。それを下からマリオのようにパンチすると、「チャリ~ン」とおなじみの音がします。すると、それがスマホのアプリの中と連動していて、自分が獲得したコインがアプリ内に加算されていくのです。まさに自分がゲームの主人公になった気持ちになれる。  アトラクションは二つ。ヨッシーの乗り物に乗り、ニンテンドーワールド内を探索できるものと、もう一つが「マリオカート」です。  あのゲームに出てくるカートに乗ります。事前に配られた自分が被る帽子のようなものに、  ARのゴーグルを装着してスタート。ハンドルで運転しながら進んで行く。最新鋭の技術ARやプロジェクションマッピングなどを使ってマリオカートのお馴染みのコースが目の前に現れる。ハンドルについているボタンを押すと、ARのゴーグルに自分が投げた甲羅が飛んでいく。アイテムをゲットしたり、敵をやっつけたりする。運転に失敗すると自分の車がぐるぐる回ったりして。  あのマリオカートの中に自分がいる。これはすごい。もう説明するのが無理なおもしろさ。  妻は目の前に起きていることがすごすぎて、一秒たりとも見逃すまいとまばたきせずに楽しんでいたら、最後に涙が止まらなくなってしまいました。そのくらいおもしろい。  アトラクションだけでなく、このスーパー・ニンテンドー・ワールドをゲームをやっていくように隅々まで楽しむことができる。  このスーパー・ニンテンドー・ワールドができ、USJはとんでもないアップデート。はっきり言いますが、ディズニーランドよりおもしろい。そういい切りたくなるおもしろさ。 このニンテンドー・ワールド以外にも、冬まで限定ですが、鬼滅の刃のVRコースターも痺れましたし、ハリーポッターやミニオンズ、レギュラーアトラクションのラインナップもすごすぎる。  僕が日本で一番おもしろいと思っているアトラクション、スパイダーマンのアトラクションも、スパイダーマンの映画が年明けに決まったことにより、勝手に自分なりの物語を乗せて楽しんでしまう。  そして、ハロウィンのゾンビ。18時にあると園内にゾンビがさまよい始めるあの企画です。コロナ禍で去年は夜の園内にゾンビが徘徊することできなかったが、今年は復活。  とは言え、コロナの前のようには自由にはできませんが、いろいろルールを作りながらも、なんとかエンタメを復活させて、「突破」していこうという気合がすごい。  やらないのは簡単。どうやってやるか!を考えて実行する。それが一番難しく、それが大事なのだ。  そんなことを心底教わったUSJ。かっこいいなー。 ■鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中。毎週金曜更新のバブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画「ティラノ部長」と毎週水曜更新のラブホラー漫画「お化けと風鈴」の原作を担当し、自身のインスタグラムで公開中。コミック「ティラノ部長」(マガジンマウス)は10/4に発売になった。「お化けと風鈴」はLINE漫画でも連載スタート。YOASOBI「ハルカ」の原作「月王子」を書籍化したイラスト小説「ハルカと月の王子様」が好評発売中。長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)が発売中。
立憲民主党の命運にぎる新しい“顔” 小川淳也、馬淵澄夫、泉健太…誰に?
立憲民主党の命運にぎる新しい“顔” 小川淳也、馬淵澄夫、泉健太…誰に? 小川淳也氏 (c)朝日新聞社  野党第1党の立憲民主党も、新しい“顔”選びに向けて動きが加速している。衆院選で大きく議席を減らした責任を取って、枝野幸男代表が辞任を表明。年内にも代表選を実施する予定だ。現在、立候補に意欲を示しているのは、元総務政務官の小川淳也氏と党役員室長の大串博志氏だ。  小川氏はドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で知名度が上がり、小選挙区で自民党の平井卓也前デジタル相を破った。大串氏は旧民進党で政調会長を務め、旧希望の党では共同代表選に立候補している。このほか、昨年9月の党代表選で枝野氏に敗れ、政調会長を務める泉健太氏や、元厚生労働相の長妻昭氏、元国土交通相の馬淵澄夫氏を推す声も上がっている。 馬淵澄夫氏 (c)朝日新聞社  はたして立憲で“顔”になり得る存在は誰なのか。旧民主党事務局長で、政治アナリストの伊藤惇夫氏が語る。 「2017年の希望の党騒動で民進党が崩壊状態に陥った時に、枝野さんは立憲を立ち上げて野党第1党にまで育てた功労者です。けれども今回の衆院選では、選挙の“顔”としては残念ながらあまり機能できませんでした」  なぜか。やはり、09年9月から約3年にわたった民主党政権に対し、多くの有権者が失敗のイメージを抱いているからだ。枝野氏は民主党政権で党幹事長や官房長官など要職を務めた中心人物。それが今もマイナス要素として働いた可能性があると、伊藤氏は指摘する。 「民主党政権のトラウマを払拭するには、当時、それほど中心的な存在ではなかった人に思い切って世代交代する。そしてベテランの人たちが、それぞれ出身母体のちがいを乗り越えて新しい代表を支える体制をつくっていくことが重要です」  伊藤氏が強調するのは、“カミソリ”と呼ばれた後藤田正晴元副総理(故人)の回顧録のタイトルにもなった「情と理」だ。 「後藤田さんは『政治家に必要な資質は義理人情だけじゃダメだ。理屈・理論だけでもダメで、両方のバランスが取れないといけない』と言っていました。いま候補に挙がっている中でこれらの条件に一番当てはまるのは、小川淳也氏でしょう。彼の語り口は、熱量が有権者に十分伝わります。ただ、経験も浅いし、党内でそれほど要職に就いたこともないから、ベテランが足を引っ張ったら持ちません」 泉健太氏 (c)朝日新聞社 ◆中道支持層の票 維新に流れる  一方、政治ジャーナリストの野上忠興氏はこう見る。 「自民と同様、立憲も人材不足ですが、最も無難と思えるのは長妻氏ではないでしょうか。弁舌、物腰がソフトで、野党の党首らしくない味を出せるかもしれません。立憲の硬直したイメージともダブらない。だからこそ、長妻氏は激戦の東京でも安定した戦いができていると思います」  代表選で争点になるのは「世代交代」とともに、共産党との野党共闘のあり方だろう。小川氏や大串氏は基本的に継続する立場とされる一方、泉氏は「衆院選の結果を踏まえ、再検討するのは当然だ」としている。麻生太郎氏が「立憲共産党」などと揶揄したことについて、野上氏が指摘する。 「与党は時代錯誤的な共産党攻撃をしていましたが、それに有権者が乗せられてしまった側面もあります。立憲がイメージチェンジに成功すれば、来年の参院選で揺り戻しが起きるでしょう」  野上氏によれば、自民は単独過半数割れも予想されたことから、全国自治体の首長や、企業・団体を総動員し、かつてないほどのテコ入れをしたという。その状況下で、立憲は全体で14議席減らしているが、選挙区に限れば9議席増やし、僅差で敗れたところも少なくなかった。しかし、比例区では23議席も減少した。  一方で、日本維新の会が躍進したのは、中道支持層の票が流れたとの見方がある。伊藤氏が言う。 「自民と立憲の間に広大な空白地ができて、行き場のない無党派層の票が維新に投じられたのだと思います。立憲が左に寄ったという印象を持たれすぎたのが要因で、維新が固定的な支持層を獲得したわけではない」  野党共闘を支援する「市民連合」の運営委員を務める山口二郎・法政大学教授はこう話す。 「自民の牙城は堅固ですから、よくここまで戦ったというべきです。野党が選挙協力していなかったら、もっと議席を減らしていたはずです。自民は今回、野党共闘に恐れをなしたから、ことさら野党共闘の失敗を喧伝しているのです。野党もメディアもそれに乗せられてはいけない」 (本誌・西岡千史、亀井洋志/AERA dot.編集部・今西憲之)※週刊朝日  2021年11月19日号
「認知症=絶望の病」は勘違い 薬より大事なことと身近なチェック
「認知症=絶望の病」は勘違い 薬より大事なことと身近なチェック ※写真はイメージです (GettyImages)  30年にわたって1万人近くの患者を診てきたという「松本診療所(ものわすれクリニック)」院長の松本一生さんは、「認知症は診断を受けた途端に絶望する病ではない」と話す。 「日頃からもし自分が認知症と長期に向き合うことになったらどんなふうに生きたいのかを考え、ご家族にも話しておくといいと思います。多くの人が認知症はなったら終わりだと勘違いしていますが、認知症はなってからが『勝負』です」  診療所には、家族に相談できず「認知症かも」という不安から訪れる人もいる。そのうち、およそ3人に1人が軽度も含めた認知症と診断されるという。 「認知症に効果があるのは、薬よりも日ごろからしっかりと水分をとって(心臓や腎臓に問題がある人は別)、1日15分以上は歩いて運動をする。そして人との交流を欠かさないこと。そうすることが認知症対策として望ましいと思います。なっていない人にとっては、なる可能性をかなり低くできると思っています」  認知症かもしれない、と気になる人は、身近な人に「何かおかしなところ、感じる?」と聞いてみてもいい。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)「もの忘れセンター」の櫻井孝さんは、身近な人がチェックをするのが有効という。 「同じものばかり買い込んでいるのは危険。買っていたことを忘れて同じものをまた買っていたとしたらそれは黄色信号だからです。2口コンロを同時に使えなかったりして、料理手順が悪くなり、3日連続同じレパートリーが出たりというのも心配ですね」  これはよく言われることだが、食べたものを忘れるのはOKだが、食べたこと自体を忘れるのはNGという。 「お薬の飲み忘れも認知症の早期からよくみられる症状です。これは生活機能が落ちている症状です。たまに忘れる程度なら問題ありませんが、何回も続くようでしたら物忘れ外来の受診をお勧めします」  複雑に絡み合う脳の機能のどこにどうダメージを受けているのかを調べるのが、物忘れ外来だ。外来患者の平均年齢は75歳前後という。受診する場合は、生活にどのような支障が出ているのかを具体的に伝えたほうがいい。認知機能の低下を感じたり、周囲から指摘されたりしたらすぐに診察が必要なのは理由がある。 (週刊朝日2021年11月12日号より) 「大事なのは、治る認知症を見逃さない、ということです。うつ病からくる『仮性認知症』なら治ります」(認知症予防のクリニック「アルツクリニック東京」院長の新井平伊さん)  うつ病による認知機能の低下は認知症と間違えられやすい。薬の副作用や意識障害などで起きるせん妄も同様だ。せん妄は一過性のもので、認知障害は治る。頭部外傷などで発症する慢性硬膜下血腫も認知症の症状が出ることがあるが、これも治療すれば治る。 「もの忘れ外来」のある「おくむらメモリークリニック」理事長で脳神経外科医の奥村歩さんは「薬剤性認知症」を問題視する。薬によって認知機能が低下することで、「ありとあらゆる薬が原因になり得る」という。 「睡眠薬や風邪薬とかはよく知られていますが、盲点なのが生活習慣病の薬です。降圧剤やスタチンのような脂質異常症の治療薬を75歳を過ぎても飲んでいる人は要注意。中高年の高血圧は諸悪の根源ですが、高齢者が血圧を下げるために降圧剤を飲むのは勧められません。高齢になり血圧が上がるのは生体反応。それを人工的に下げれば脳への血流も減り、認知機能も下がってしまいます」  もし薬を飲み始めて、ちょっとおかしいと感じたら自分で判断せずにかかりつけ医に相談したい。  奥村さんも認知症は絶望の病ではないという。 「認知症になったら何もわからなくなるのではない。人間らしさや、その人の心は変わりません。認知症の人が一番不幸に感じるのは周囲の人との絆が失われるということ。社会がその人らしさを取り戻せるようにする。これこそが大事なのです」  認知症の人と家族の会東京都支部代表の大野教子さんは、今は亡き若年性認知症だった男性の一言を思い出す。 「10年ほど前のことです。新宿の街頭で認知症に関するリーフレットを配っていたときのことです。多くの人は一瞥(いちべつ)するだけ。中には、嫌なものを見るかのような態度で足早に通り過ぎていく人もいました。それを見た当事者の彼が言ったんです。『みんな、ひとごとだと思っているんだね。自分はならないと思っているんだね』と」  その男性は60代で若年性認知症を発症した。華々しいキャリアの持ち主だったが、妻とともに病を受け入れ、人と積極的につながっていたという。家族会の集いに参加することも多かった。 「当事者にしかわからないつらさというのがあると思います。今は当事者同士が集う場がいろいろあります。そういうところで同じ境遇の人の声を聞いたり、自分の悩みを相談したりすることで、気持ちも整理されると思います。頑張ろうという気持ちにもなるはずです。認知症であることをさらけだす勇気をもって、地域や多くの人とつながることで気づきが得られ、前に一歩進めます。泥沼の状態から救い出してくれるのはやっぱり人なんです」  前出の新井さんは4月に「アルツクリニックPETラボ」内に「健脳カフェ」を開設した。体操ができる場所や、映画鑑賞できたり、むくみを改善する施術を受けられたりする個室もある。専門医が常駐しているため医療相談もできるという。こうした場所に足を運ぶことで、居場所づくりにもなり、いろいろな情報も入る。 「たとえ認知症になっても命に別条があるわけではなく、進行もゆっくりなので、まずは通常の生活が送れます。人とつながり、生きがいや好きなことを日々の中で見つけ、会話を通して刺激を受け、楽しく暮らしていくことでその後の悪化防止につながります。悲観的にならないでほしいと伝えたいです」(新井さん) (本誌・大崎百紀)※週刊朝日  2021年11月12日号より抜粋
暴走事故の受刑者への誹謗中傷「僕自身、望んでいません」 妻子亡くした被害者遺族が語る
暴走事故の受刑者への誹謗中傷「僕自身、望んでいません」 妻子亡くした被害者遺族が語る 松永拓也さんは9月17日、亡くなった妻の真菜さんと長女の莉子ちゃんの遺影を前に会見に臨んだ。過熱した加害者バッシングに悩んでいたことも明かした(c)朝日新聞社  東京・池袋で起こった乗用車暴走事故で、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた飯塚幸三受刑者(90)に下されたのは、禁錮7年の求刑に対して禁錮5年の実刑判決だった。ネット上での非難が社会的制裁として考慮され、量刑軽減の理由の一つとなったのだ。この事故で妻と長女を亡くした松永拓也さんに、オンラインインタビューで思いを聞いた。AERA 2021年11月8日号から。 *  *  *  飯塚幸三受刑者への社会的制裁が減刑理由になったことは非常に残念でした。遺族は、減刑されることを望まないからです。僕の全然知らないところで飯塚受刑者への誹謗中傷による社会的制裁が続くことに、僕自身が戸惑っていました。  誹謗中傷に至る理由は、その人が自分のなかに持っている「正義」だと思います。あと一つ、「優しさ」もあると感じます。会見などで僕が悲しんでいる姿をテレビなどで見て、こういう思いをさせた受刑者に僕に代わって言ってあげようという思いです。実際、「松永さんは人がいいから言いたいことも言わないと思うので、私が代わって言っておいてあげました」という内容のネットへの書き込みがありました。  寄り添ってくださるのは本当にありがたいと思います。ただ、受刑者へのネットでの誹謗中傷や自宅への街宣活動を動画で見ると、むしろ悲しくなります。なぜなら、僕自身、そういうことを望んでいないからです。 写真を手にする松永拓也さん。「2人の命を無駄にせず、二度と交通事故が起きない社会を作りたい」と「あいの会」に参加し、交通事故撲滅活動を続けている(写真/横関一浩)  僕が一番望むのは交通事故を一つでもなくすこと。そうすることが亡くなった妻と子どもの命を無駄にしなかったと言える気がするからです。顔と名前を出して会見を行い、今も交通事件の被害者遺族らでつくる「あいの会」で活動を続けるのはそのためです。  人間は感情を持った生き物ですから、怒りを持って感情を表に出すのは当然だと思いますし、その感情を否定するものでもありません。ただ、個人に対する過度な中傷は、本質的に何が大事なのかをわからなくしている気がします。誹謗中傷による個人攻撃だけに終わり、健全な議論ができなくなってしまったと感じるからです。  例えば今回、司法の場で受刑者のブレーキとアクセルの「踏み間違い」が認定されました。だとしたら、踏み間違いが起きないためにはどうすればいいのか、踏み間違えない技術があるのならそこに公費を投じてもいいのではないか──。こうした議論が社会全体で起きてほしいのです。  いま年間30万件以上の交通事故が起こり、年間3千人近い方が亡くなっています。誰もがその被害者にも遺族にも、そして加害者にもなり得るのが交通事故です。その現実を知ってもらった上で、交通事故を社会問題として考えていってほしいと思います。 (編集部・野村昌二)※AERA 2021年11月8日号
息子を殴った恋人に礼…母子の虐待の連鎖描いた桐野夏生の新作 「救いを見いだせず、やや絶望的な気持ちで書き進めた」
息子を殴った恋人に礼…母子の虐待の連鎖描いた桐野夏生の新作 「救いを見いだせず、やや絶望的な気持ちで書き進めた」 主人公の小森優真は空腹を抱えて町をさまよい、「理想の家族」が住む家に潜り込む。そこで小さなピンクのソックスを盗み出す……(撮影/写真部・東川哲也)  桐野夏生さんが新作『砂に埋もれる犬』で親から虐待を受けた少年を描いた。なぜ、このテーマに挑んだのか。AERA 2021年11月8日号で10代の子どもたちの深い闇について語った。 *  *  *  主人公の小森優真(ゆうま)は小学6年の少年だ。母親の亜紀が転がり込んだ男の家で、4歳の弟・篤人(あつと)とともに暮らす。食事を満足に与えられず、小学4年の途中から学校にも行っていない。ゴミだらけの部屋で弟と食べ物を奪い合う、荒廃した生活だ。空腹に耐えかね、コンビニ店長の目加田(めかた)浩一に賞味期限切れの弁当を分けてもらう場面から、桐野夏生さんの新作『砂に埋もれる犬』は始まる。  桐野さんは、3年ほど前に女子高生が主人公の『路上のX』(朝日文庫)を書きあげたころから、「次は男の子を書きたい」と思っていたという。 「『路上のX』は、女の子が大人の男たちに性的にも経済的にも恋愛対象としても搾取される物語です。書き終えてから、これだけでは足りない、少年たちは何によって損なわれるのかを知りたい、と考えるようになりました」  2014年に埼玉県川口市で17歳の少年が祖父母を殺害する事件が、15年には川崎市で中学1年の男子生徒が10代の少年たちに殺害される事件がそれぞれ起きた。こうした陰惨な出来事も「少年」という存在について考えを深める契機となったという。これらの事件を調べるなどして行きついたのが、虐待の連鎖だった。 ■亜紀の物語でもある  亜紀は、男を優先して子どもを虐げる母親に育てられ、同じことを優真と篤人に繰り返す。自分の恋人が優真を殴れば、男におもねり礼すら言う。 「優真の心を損なったのは、ネグレクト(育児放棄)、虐待という家庭環境ですが、亜紀も虐待による犠牲者の一人です。とすれば、これは優真・篤人の物語であると同時に、亜紀の物語でもあると考えたのです」  優真は、ある事件をきっかけに不登校になる。だが、勉強は嫌いではなく理解力も高い。貧困と飢え、暴力のなかで必死に生き抜くため、大人の喜びそうな表情を作るといった処世術も身につけている。  児童相談所(児相)に保護され、里親となった目加田の家から中学に通い始めたときも、最初は「良い息子」を演じた。しかし、次第に女性を性的に支配したいという欲望を募らせ、同級生の花梨(かりん)らに攻撃的な行動を取るようになる。  桐野さんは「被害者であるはずの少年が加害に至るメカニズムを、自分なりに解き明かそうと試みました」と話す。 「子育てを通じて、10代の子どもたちの、どす黒くてもやもやとした感情や、一歩間違えば死をも選びかねない危うさを感じていました。特に男の子の場合は性的な抑圧が爆発の引き金になるのでは、と想像したのです」 きりの・なつお/1951年生まれ。『柔らかな頬』で直木賞、『東京島』で谷崎潤一郎賞。2015年に紫綬褒章を受章。21年5月、女性初の日本ペンクラブ会長に就任した(撮影/写真部・東川哲也) ■母から愛されていない  優真は母親から愛されていないのではないか、という不安のなかで育つ。「ひどい母親を捨てた父親は偉い人だ」という歪(ゆが)んだ父親信仰と、女性嫌悪(ミソジニー)を抱くようになる。 「虐待がもたらす傷が性的な欲求を歪ませ、本人も爆発を止められなくなる。私の想像ではありますが、実際にこうしたベクトルが働くとすれば、虐待は本当に残酷なことだと思います」  優真や同級生にとって、スマートフォンは友だちづきあいに不可欠のツールだ。内閣府の20年度の調査によると、中学生の約7割がスマホを利用している。優真も、スマホがあればクラスに溶け込める、「真の仲間」を探せると信じていた。しかし、実際はスマホを通じて同級生から残酷な仕打ちを受けてしまう。  昨年11月に東京都町田市で小学6年の少女が自殺した事件でも、遺族は少女への悪口がチャットに書きこまれていたと訴えている。 「スマホさえあれば友だちができるというのは幻想にすぎず、むしろ世界中でいじめに利用されています。狭い世界で生きる子どもたちが、リアルだけでなくバーチャルでも居場所を奪われたら、死を思うようになっても不思議ではありません」  虐待されてきた優真は他人との適切な距離感がわからず、不満や鬱屈(うっくつ)を暴力でしか表現できない。このため、同級生たちの不信を買うばかりだ。両者の間には、絶望的な隔絶が横たわっている。 「同質的な人間関係のなかだけで生きる花梨たちにとって、優真のような子は『気持ち悪い』存在としか映らないでしょう」  自分が関心を持つ分野、自分にとって都合の良い情報ばかりが集まりがちなネット社会の特性も、異質な人々への「想像力の欠如」に拍車をかけていると、桐野さんは考える。 「想像力のなさは、他人が起こした結果のすべてを個人の能力や努力に帰する『自己責任論』にも通じます。価値観の違う人を『上から目線』でしか見られない人が増えれば、優真のような辺縁に置かれた人は、ますます社会から排除されてしまう。そこに恐怖すら覚えます」  里親の目加田夫妻や児相の職員らは、それぞれのやり方で優真を思いやり、理解しようと努める。しかし、その思いは届かず、優真は心を閉ざすようになる。 AERA 2021年11月8日号より ■口やかましく「しつけ」  特に目加田は「しつけなければ、本人が恥ずかしい思いをする」と、食事のマナーやあいさつなどについて口やかましく優真に干渉する。子どもを虐待死させた親からよく聞かれるのも「しつけのためにやった」という弁明だ。 「優真は食事や入浴などの基礎的な生活習慣も教えられず、半ば野生動物のように育ちました。いわゆる『しつけ』は、そんな彼の心には響かないでしょう」  優真に最も必要なのは、彼が何をしても受け入れるという愛情なのだろうか。 「反抗的で、感情を素直に表に出さなくなった優真はもう、大人たちが無条件に『救ってあげよう』と思える相手ではなくなっています。たとえ彼に深い愛情を注ぐ人が現れても、すぐに心の傷が癒やされ、歪んだ認識が改められるほど、人間は簡単な生き物ではありません。人を信頼し愛する心というのは、鍛え上げないと育ちません。たとえ花梨が、優真に優しく接していたとしても、状況は変わらなかったと思います」 ■全く救いを見いだせず  桐野さんは「全く救いを見いだせず、やや絶望的な気持ちで書き進めました」と明かす。 「どうすれば彼を救えるのかも、私には分かりません。主人公が愛情を受けて立ち直る、といったきれいごとで終わることはできませんでした」  本作のタイトルは、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤ(1746~1828)の絵画から取った。絵の一部は装丁にも使われている。 「あがいてもあがいても、虐待のくびきから逃れられない優真のイメージ」が、ゴヤの絵に重なったという。  18歳未満の子どもに対する児童虐待で、全国の児相が相談対応した件数(厚生労働省調べ)は20年度、20万5029件と過去最多を更新した。国立社会保障・人口問題研究所の17年の調査によると、過去1年間のうちに、ひとり親家庭の15%が電気料金を、14%弱が水道料金を滞納したことがある。優真や亜紀のような親子は、フィクションのなかだけに存在するのでは決してない。  桐野さんは最後、次のように言った。 「優真のような子どもや、優真がそのまま成人したかのような壊れた男たち、そして亜紀のような母親たちは、現実社会のあちこちにいるはずです」 (フリーライター・有馬知子)※AERA 2021年11月8日号
望月衣塑子記者「枝野氏の辞任は当然」とキッパリ 次は蓮舫氏に期待も「辻元清美氏の不在が痛い」
望月衣塑子記者「枝野氏の辞任は当然」とキッパリ 次は蓮舫氏に期待も「辻元清美氏の不在が痛い」 東京新聞の望月衣塑子記者(撮影/小山幸佑)  立憲民主党の枝野幸男代表が2日、代表を辞任する意向を示した。衆院選で96議席と公示前を13議席も下回った結果に責任を取った形だ。共産と組んだ野党共闘は続けるべきなのか。維新との違いは何だったのか。そして、代表選の有力候補者は誰と見ているか。東京新聞記者の望月衣塑子氏に聞いた。 *  *  * 野党共闘で候補者を一本化した結果、小選挙区ではそれなりの結果をだしたものの、トータルとして、立憲や共産が議席を伸ばせなかったという点では、野党共闘には、課題が残ったと思います。  例えば、ある選挙区では野党統一候補で一本化されたものの、立憲の支持者が共産党の候補者に投票をしたかというと、半分程度しか入れてなかったと聞きました。やはり共産党に対する“アレルギー”があったのだろうと思います。反共産の姿勢を明らかにしている連合の票が動かなかったのも今回の選挙に大きく影響したと思います。  立憲は支持を広げ切れていない現状がありました。「政権選択選挙」と銘打っていましたが、取材をしていると「自民党にお灸を据えたい」という有権者の意向は感じましたが、それが「政権交代」までにはつながっていない。「立憲も共産もどうかな」と悩む人もいました。  また、今回、立憲が掲げた夫婦別姓やジェンダーや多様性といったテーマは、多くの有権者にとってまだ重要な争点になっていなかったようでした。やはり、一番の関心はコロナ対策や経済対策だったと思います。共産党との「閣外協力」にも理解をしてくれた人が多かった一方、距離を感じた人もいたそうです。その結果、第3極である日本維新の会や国民民主党の議席が増えたのではないでしょうか。  選挙結果からすれば、代表の枝野幸男氏の辞任は当然でしょう。自民が大負けした場合、それは同じです。福山幹事長も辞めると言っています。  今回の選挙では与野党問わず、国民は世代交代を望んでいましたね。自民は甘利明氏や石原伸晃氏など負けた人の多くが、ベテラン勢でした。立憲でも小沢一郎氏や中村喜四郎氏が落選しました。世代交代という点も重く受けとめるべきでしょう。  枝野氏の辞任表明で次の代表や執行部のメンバーに関心が移っていますが、中堅、若手も含めた幅広い人材で代表選が行われることを望みます。新たな人材が広く国民に理解されるようになると思います。泉健太氏、小川淳也氏、長妻昭氏、女性だと代表代行の蓮舫氏、西村ちなみ氏などがいます。逢坂誠二氏も理論派でバランス感覚が良く、ニセコ町長時代の統率力やアイディアで評価が高い。旧民主党以外の人も出てきて、新しい立憲を見せるべきですね。ただ、ジェンダー問題にも取り組んできた辻元清美氏が、ここにいないのは痛いですね……。  前回の立憲の代表選では、泉健太氏と枝野氏が出馬しましたが、選挙前から『枝野氏で決まり』という雰囲気がありました。これではガチンコ感がなく、盛り上がらない。   立憲は民主党政権のイメージが強いですよね。「民主党の悪夢」などと揶揄されるように政権運営でつまずいた悪い印象をずっと引きずっている。枝野氏はバランス感覚に優れて能力の高い政治家だと思いますが、選挙取材をしていても、「執行部の顔ぶれが、民主党時代と変わらない」という声がありました。 高市早苗氏と野田聖子氏  対する自民党は、総裁選では、高市早苗氏と野田聖子氏、河野太郎氏、岸田文雄氏の党内右派からリベラルまで様々なタイプの4人が出てきて、最後は岸田氏と高市氏が組むという荒業まで繰り出して、河野氏を破った。権力の頂点を目指し、本気で4人が戦った結果、注目も集まったし、その余波として今回の選挙結果と、60%超える岸田政権の支持率が出たのだと思います。  さらに、維新が今回の選挙で議席を伸ばしているのは、党の新陳代謝がうまくいったことも要因だった思います。橋下徹氏が15年に引退して、現代表の松井一郎氏も来年1月に代表を辞任することを表明している。そんな中、大阪府知事の吉村洋文氏が頭角を現して、新しいリーダーとして前面に出てきている。その陰で全国最多のコロナ感染の死者を出したことや医療崩壊となり、自衛隊の支援を要請したことなどは、もう大阪府民には、忘れ去られているのでしょうか。   市民連合と政策合意し、記念写真に納まる(左から)社民党の福島瑞穂党首、共産党の志位和夫委員長、立憲民主党の枝野幸男代表、れいわ新選組の山本太郎代表(c)朝日新聞社  立憲は世代交代が進まなかったことのほかに、今回議席を減らした原因として、野党共闘が失敗したからという見方があります。共産党と組まなかった維新や国民民主党が議席を伸ばしたので、「共産とは組まないほうがいいのでは」という指摘です。  トータルの議席は伸ばせませんでしたが、一定の効果があったのは間違いありません。野党が共闘した213選挙区を見ると、1万票差以内で敗れたのは31選挙区もありました。立憲は小選挙区では、前回よりも9議席増やしました。立憲の吉田はるみ氏が自民の石原伸晃氏を破り、立憲の太栄志氏が自民の甘利明氏を破ったのは、野党共闘があったからこそでしょう。ただし吉田氏も太氏もベテラン自民候補者との対決として注目され、投票率も高かった。組織票がないだけに、共闘してさらに投票率が上がらないと、競り勝つことが難しいことを示しています。  小選挙区という制度を前提とする限り、与野党の一対一のわかりやすい構図をつくり、投票率を上げていくのが良いのではないかと思います。  野党共闘の中で、一部有権者の共産党アレルギーもありました。それについて言えるのは、立憲も共産も「合意した政策のみ協力する」と限定的であることを有権者に伝えきれていなかったのは課題ということでしょう。  取材をしていると、今の国民は「穏健保守」を求めているように感じます。立憲が政権を担いたいのならば、ジェンダー問題や多様性の尊重などリベラル的な課題だけではなく、保守層にも響くような政策も掲げ、積極的に支持層を広げていく必要があるでしょう。  自民党は過半数を確保したものの、岸田首相が掲げた政策をどこまで実行できるのか、これから国会が開かれれば、課題がたくさん出てきます。そんな中、決められない政治や腰砕けの経済政策が続けば、支持率は下がり、来夏の参院選は、厳しいものになってくると思います。 (まとめ/AERAdot.編集部 吉崎洋夫)
マット・デイモン製作の新作公開「絶対に彼女の映画が作りたい、と感じた」
マット・デイモン製作の新作公開「絶対に彼女の映画が作りたい、と感じた」 マット・デイモン (GettyImages)  ハリウッドを代表する俳優として、圧倒的な人気を誇るマット・デイモン。最新作「最後の決闘裁判」は、24年ぶりに親友ベン・アフレックとともに製作と脚本を手掛ける意欲作だ。同作へかける思いを聞いた。 *  *  *  原作はエリック・ジェイガーの『最後の決闘裁判』(ハヤカワ文庫NF、栗木さつき訳)。フランスで長い間語り継がれてきた、最後の決闘裁判という同国14世紀の歴史の一ページを描いた作品だ。  マットはジャン・ド・カルージュを演じた。友人であったジャック・ル・グリが妻のマルグリットを強姦したとして、裁判を起こし決闘裁判で決着した。仏国民が息をのんだ大事件だったという。  映画は3人の異なる視点から、事件を追う。英国の巨匠、リドリー・スコット監督が、美しいフランスの古城を背景に、中世騎士の地位と名誉をかけた戦いをスクリーンに焼き付けた。 ──なぜ14世紀フランスの事件についての映画を製作しようと? 「原作を読んで、非常に興味をそそられた。現在の社会状況を考えても、面白い課題に思えたんだよ。興味を掻き立てられたのは、マルグリット・ド・カルージュという女性だった。信じがたいほど勇敢だと思った。女性にほとんど人権が与えられていない時代に、彼女は自分の命を、人生すべてをかけ、真実を語ったんだ。絶対に彼女についての映画が作りたい、と感じた」 ──現代でさえ女性の人権問題にはまだまだ改善の余地があるのに、14世紀の人々が彼女の声に耳をかたむけ、裁判が行われた事実は驚くべきことです。 「彼女を黙らせようとした圧力は、かなりあったにもかかわらず彼女は口をつぐまなかった。勇敢に、事実を主張したんだよ。裁判が実現したことは驚きだった。王やフランス国民の前で、彼女は真実を語る機会を獲得した。口をつぐんでいたほうが彼女の人生はずっと楽だったはずだ。だが、彼女は困難で危険な道を選んだ。全仏を相手に、名誉をかけ、人生をかけ、命をかけることになった。その点にひかれたんだ」 (c) 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved. ──あなたはマルグリットの夫ジャンを演じるにあたって、史実など多くの資料を読んだのですか? 役づくりについて教えてください。 「ジャンは暴力的で嫉妬心の強い危険な男として名高かった。この映画は三つの視点から語る形式になっている。最初はジャン、次はジャック(アダム・ドライバー)の視点で、観客にゆがんだ認知による偽りの現実を提示するんだ。カギはその後の、マルグリットの視点から語られるところだ。彼女の物語を知ることで、観客はこれこそが真実だったんだと気づく。二人の男の視点はゆがんでいて、女性の視点を考慮せず、全く無視されていたということに」 ──3人の視点から物語を三度語るというのは、あなたとベンの案ですか? それとも原作を反映させているのですか? 「僕らの発想だよ。近年はソーシャル・ネットワークが発達して、だれもが自分の見方を表現するのが簡単になった。一方で自分が見逃している点があることや、死角があったことに気が付くようになった。人は主観による自分だけの現実の世界に閉じ込められがちだ。他人の視点から物事を見ることが大切であり、それをふまえつつ結論を下すことが重要だと思う。オープンな視点というのが。3部作構成にしたのは、そういった僕らの思いが込められているんだ」 ──24年ぶり、久々にベンと脚本を書きました。感想は。 「今回は、ずっと簡単だったよ。僕ら二人とも多くの映画を製作し経験を得たから。前回は製作の経験もなく、何をやっているのかもあまり理解しておらず、すごく長い時間がかかった。今回は二人とも二十数年の映画製作の経験を積み、脚本をどう構成していったらいいか理解していた。だから無駄もなく効率よく書き上げられたんだ」 ◆既存の価値観 疑問を投げる ──心理ドラマの要素もあり、スリル満載な非常に面白い作品に仕上がっています。基盤にある中世ヨーロッパの騎士道や価値観について、かなり深く考察したのですか? (c) 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved. 「騎士道という課題に、かなり興味をそそられた。幼いころから騎士道の価値観を信頼すべきだと教えられ育った。他人を尊敬し、威厳を持ちお互いを助け合い……。幼いころから見て育った映画も、そんな価値観が貫かれていた。その事実を念頭に入れた。14世紀当時、貴族の男性や騎士の存在は絶対であり、女性はほとんど人間として認められていなかった。この価値観を、映画のあちこちにちりばめようと思った。過去において多くの映画は騎士道を抵抗なく受け入れてきたが、本当にそれでいいのか、と。これはアンチ騎士道の姿勢のある騎士道映画とでもいえるのかな。僕らが常識と思っている価値観に疑問を投げかけているんだ。一つめの物語、ジャンの物語は、典型的な騎士道的視点で描かれており、自分は騎士だから正しい、妻のためにやったんだ、という見解だ。真実はそうではないわけだが」 ──マルグリット役のジョディ・カマーの抜擢について教えてください。 「この役にはジョディしか考えられなかった。映画会社のスタッフにも断言されてね。まずリドリーが、彼女に会い話をして、彼も彼女しかいないと同意してくれて『決まり!』だった。最高の選択だったよ。彼女の演技は素晴らしい、大満足だよ。驚くべき俳優だね」 ──スコット監督といえば、才能ある女優さんを発掘する名監督ですが、最初から彼に監督を依頼する予定だったのですか? 「脚本を書く前から、リドリーに頼むと決めていた。実は、僕はリドリーと一緒に脚本家を探していたんだ。彼からは下書きの段階から、製作面についてのアドバイスをもらった。脚本を執筆しながら製作の準備もできたんだ。ベンに本作について話すと、三つの視点という構成を気に入ってくれて、二人で一緒に書こうということになった。そのあと女性の視点を加えるために女性の脚本家が加わったんだ。僕とベンは男性の視点から書くということで。そんな方法で書いたので、脚本は独創的に仕上がったと思う」 (高野裕子[在ロンドン])※週刊朝日  2021年11月5日号
善意装い本当は性交渉目的の男性も “精子売買”SNSで広がる実態と闇取引の背景
善意装い本当は性交渉目的の男性も “精子売買”SNSで広がる実態と闇取引の背景 ※写真はイメージです (GettyImages)  今、日本のSNSでは精子を売買するやり取りがあふれている。高学歴をうたい、提供の際には性行為をする場合もある。背景には、独身女性や同性カップルで子供を産みたい人が増えているという実情があった。精子ビジネスの現在を追った。 *  *  * <東京工業大学に現役合格し、東京大学の大学院に進学しました。いくつかの会社勤務を経て、欧州と米国の企業で勤務しました>  妊娠を望む女性に精子の提供を呼びかけるホームページ「精子提供.jp」には、ドナーの個人情報が公開されている。身長や血液型はもちろん、旅行などの趣味についての記載もある。 西園寺さんが運営する「精子提供.jp」のホームページ、ツイッターには高学歴をうたう精子提供の呼びかけも  ホームページを運営するのは西園寺優さん(仮名、30代前半)で、経歴は自らのもの。2009年に、知人から頼まれたのをきっかけに、これまで100人以上の女性に精子を提供してきたという。西園寺さんは言う。 「3、4日に一人ぐらいの割合で相談が来ますが、実際に精子を提供するのは全体の2割程度。すべての女性が子供を産んだ後に報告してくれるわけではないので正確には把握していないですが、40~60人ぐらいの子供が生まれたと思います」  提供の仕方は宅配、シリンジ法、タイミング法の三つ。宅配は24時間以内に依頼者に精子を届ける。シリンジ法では、針のない注射器のようなものに精子を入れて、女性が自ら膣内に精子を注入する。タイミング法は排卵日に合わせて実際に性行為をする。費用の多くは交通費などの実費のみで、数万円程度だという。 「経験的には、20代の女性はシリンジ法でも妊娠する可能性が高いので、そのことは伝えます。ただ、30代後半から40代の方は確率を上げるためにタイミング法を取る方が多い。全体の約半数の方がタイミング法を選択します」(西園寺さん)  外国では、精子のドナーが、子供ができた後に養育費を請求されたり、相続権を求められたりすることがある。西園寺さんは既婚者で、妻と2人の子供がいる。将来的な心配はないのか。 ※写真はイメージです (GettyImages) 「今までに精子を提供した女性とトラブルになったことはありません。精子を提供する時には、事前に依頼者の経済状況や周囲に家族の助けがあるかなどの話も聞き、子供を育てられる環境にある人に限って提供しています。妻も私が精子の提供をしているのは理解してくれています」(同)  現在、インターネットで「精子提供」といったキーワードで検索すると、提供する「ドナー」が数多くヒットする。また、精子の提供を求める女性の声もあふれている。  こうした動きの背景には、日本社会での家族形態が多様化していることがある。結婚せずに子供を産むシングルマザーは、00年の約6万3千人から15年には約17万7千人に増えた。15年間で約3倍の増加だ。同性カップルの権利を求める声も高まり、今後、レズビアンカップルで子供を産みたいと考える人も増えていくと思われる。  生殖医療に携わる慶応義塾大学医学部の田中守教授(周産期学・生殖医学)は言う。 「シングルマザーや同性カップルでも、お子さんを望む女性の妊娠は医学的、技術的に可能です。しかし、法制度が確立していないため、公的に実施できない状態が続いています。本来、精子の提供は臓器提供と同じで厳格なルールが必要ですが、日本では現実に法制度が追いついていません」  20年12月には民法の特例法(生殖補助医療法)が成立し、不妊治療のために夫婦以外の第三者の精子や卵子を使って生まれた子供でも、親子関係が認められることになった。だが、対象は法律上の夫婦のみ。独身女性や同性カップルによる非配偶者間人工授精(AID)に関する法整備は先送りされた。  日本産科婦人科学会によると、国内でAIDの実施登録をしている医療施設は12カ所。それもドナー不足で5、6施設しかAIDを実施できていないのが実情だ。法律上の夫婦以外は対象外のため、人工授精を望む独身女性や同性カップルは、精子の“闇取引”に手を出さざるを得ない。  独協医科大学の岡田弘特任教授の調査によると、日本語で精子の提供を呼びかけるホームページやブログは少なくとも140あるという。そのうちの92%が性感染症の検査や同意を求める契約書などに不備があり、提供を受ける人への情報開示が不十分だと指摘している。  前出の田中教授は言う。 「通常、医療機関で人工授精する場合は、精子を半年間凍結し、その後に感染症の有無について調べます。一般の方は、そこまでできません。また、1人の男性が何十人も子供を持つと、同じ父親を持つ子供同士が恋愛関係になるリスクも高まる。異母きょうだいの結婚と出産は、子供の遺伝性疾患の原因になります」  前出の西園寺さんは、ホームページ上に感染症検査の結果や学歴を証明する書類を掲載している。だが、精子ドナーでここまで情報開示をしている男性はまれだ。実際は、性交渉目的や「自分の優秀な遺伝子を多く残したい」という優生思想を持つ人など、いかがわしいケースも多い。  そんな中、精子提供では世界的に実績のある民間会社が、19年に日本に事業窓口を開設した。世界最大の精子バンク「クリオス・インターナショナル」(本社はデンマークとアメリカ)の日本事業担当ディレクターを務める伊藤ひろみさんは、こう話す。 「開設してから問い合わせが相次ぎ、こんなに反応があるのかと驚きました。相談開始から1年半で、150人の方に精子を提供しました」  クリオスでは、精子の質の管理を徹底している。ドナー希望者に対し、感染症や重篤な遺伝性疾患の有無を検査し、妊娠しやすい精子を厳選する。現在、登録されているドナーの数は1千人を超える。ただ、ドナーになることを希望した応募者のうち、厳しい審査を通過して採用されるのは5~10%しかいない。  女性が精子の提供を受ける際の費用は、1回につき平均9万円程度(送料別)だ。  レズビアンカップルの鈴木愛さんと鈴木洋子さん(いずれも仮名、30代)は、クリオスから精子の提供を受けた。愛さんは20年1月に出産、洋子さんも同じ男性の精子で21年3月に出産した。2人とも子供は女の子で、異母姉妹ということになる。愛さんは言う。 }「最初は知人の男性から精子を提供してもらおうと思ったのですが、後でトラブルに発展するケースがあると知って、あきらめていました。その時に、海外では精子バンクというものがあることを知って、精子の提供を受けることを決めました」  クリオスでは、人種や民族、髪の色などの基本的な情報以外にも、ドナーが了承すればさらに詳細なプロフィルが公開される。愛さんと洋子さんは、トルコ人の男性を選んだ。伊藤さんが言う。 「現在、日本人のドナー登録者はおらず、アジア系も多くありません。そのため、精子提供を希望する女性は、髪の毛と瞳の色が黒かダークブラウンの男性を選ぶ方が多くなっています。見た目が他の日本人と異なると、子供が生きにくくなってしまうと考える方が多いのだと思います」  ただ、先述した12の医療施設では非婚姻者のカップルにAIDを実施していない。そこで、人工授精や体外受精を行う病院は、クリオスや患者個人が医師に依頼して、信頼関係を築いた個人クリニックを利用している。愛さんはこう話す。 「最初は不安もありましたが、今は自分たちの選択は間違っていなかったと考えています。精子バンクについて賛否があることは理解していますが、子供には小さいうちから事実を伝えていくつもりで、18歳になった時に子供が望めば連絡に応じてくれる男性を選びました。私たちは、私たちの家族の形を子供たちと話し合っていくつもりです」  欧州では、法律上の夫婦ではなくても不妊治療が受けられ、AIDによって生まれた子供が精子や卵子の提供者情報を得る「出自を知る権利」を保障する法整備が進んでいる。日本でも法改正の議論はされているが、対象は法律上の夫婦のみに限られる見込みだ。田中教授は言う。 (週刊朝日2021年11月5日号より) 「日本でも家族や親子の形は多様化しているのに、政治家はこの問題を真正面から議論せず、放置してきました。すでに民間病院の努力も限界に来ています。日本でも公的な精子・卵子バンクをつくり、データの保存も国が責任を持って担うような体制づくりを急ぐべきです」  実は、西園寺さんも個人間の精子取引はやめるべきだという考え方だ。 「すべての女性が安価で利用できる公的な精子バンクが設立されたら、私は精子の提供をやめるつもりです。医療機関が介在しない精子の提供は本来は望ましくありません。しかし、独身女性や同性カップルのAIDが認められない今の状況では、精子の提供はまだ続けることになると思います」  法律の整備が遅れると、精子売買はますますインターネットの闇に潜ることになる。(本誌・西岡千史)※週刊朝日  2021年11月5日号
“リアルアナ雪” 眞子さんが突きつけた女性皇族の「存在の曖昧さ」と「公と私」
“リアルアナ雪” 眞子さんが突きつけた女性皇族の「存在の曖昧さ」と「公と私」 10月26日、小室眞子さんと圭さんは都内ホテルで結婚の記者会見を行った。会見は約12分で終了した(c)朝日新聞社  10月26日、小室眞子さんが結婚、皇籍を離脱した。妹の佳子さまは26歳、愛子さまは今年12月、20歳になる。女性皇族という存在の曖昧さと、その「公」と「私」という問題が突きつけられている。AERA 2021年11月8日号から。 *  *  *  リアルアナ雪──SNSの世界では、そう命名されたそうだ。10月26日、秋篠宮家を出発する眞子さまと妹の佳子さまとのハグのことだ。映画「アナと雪の女王」に重ね、ネットでは「尊すぎる」などと感想が飛び交ったという。儀式なし、一時金辞退、そして「複雑性PTSD」と引き換えのように実現した結婚だった。旅立ちの最後のハグ、眞子さまは一生忘れないだろう。  さて「眞子さま」はここまで、ここからは「眞子さん」とする。26日、眞子さんは小室圭さんと結婚、2人で記者会見に臨んだ。眞子さんはその席で、「婚約に関する報道が出て以降、圭さんが独断で動いたことはありませんでした」と述べた。「お母様の元婚約者の方への対応」「留学」を例に、「私がお願いした」と言い切った。  これまで私は、眞子さんを「優等生」だと思っていた。「天皇陛下(現在の上皇陛下)の初孫」として生まれたのだから当然、と。が、この日は全く違った。 「結婚を主導してきたのは私」と表明すると同時に、小室さんへの批判を「一方的な憶測」「誤った情報」「謂(いわ)れのない物語」とし、それらに抱いた感情を「恐怖心」「つらく、悲しい思い」と強い言葉で表した。 ■人生は自分が決める  眞子さんは吹き荒れる逆風に、心の傷を負った。それでも結婚を貫く強さがあり、最後に「主導」を表明した。「自分で決めてきた」という説明であると同時に、「これからも自分の人生は自分が決める」という宣言のようにも感じられた。  眞子さんの結婚を通し、「皇室の『公』と『私』」が注目されるようになった。公の存在ではあるが、天皇も皇族も一人の人間。そのことに国民がどう向き合うかという問題だ。  眞子さんの結婚について、秋篠宮ご夫妻と共に佳子さまもコメントを発表した。中に「結婚に関して、誤った情報が事実であるかのように取り上げられたこと、多くの誹謗中傷があったことを、私もとても悲しく感じていました。そのような中でも、姉と小室圭さんがお互いに支え合う姿を近くで見てまいりました。本日、2人が結婚できたことを嬉しく思っております」という一節があった。  佳子さまは、「本音」を明かすのが上手だ。批判するというより、前向きに伝える。姉の結婚を応援する気持ちもはっきり表明していた。そこから、佳子さまの「皇室を出たい」という気持ちを勝手に読み取っていた。眞子さんと共有する気持ちだろう、と。姉の結婚を通し、佳子さまは「公と私」の問題を考えに考えたはずだ。これから佳子さまは、どうするのだろう。 26日朝、秋篠宮邸を出発するにあたって、妹の佳子さまと抱き合う小室眞子さん(c)朝日新聞社 ■女性宮家と佳子さま  皇室には「人手不足」問題もある。眞子さんの結婚で、皇室の構成員は17人になった。30歳未満は、佳子さまと愛子さまと悠仁さまの3人だけ。だから、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」が議論されている。  実現すれば、佳子さまが第1号となるのが自然な流れだろう。それを佳子さまが望むのか、気がかりでならない。「女性宮家」が実現しても、女性皇族という存在の曖昧(あいまい)さは解消されそうにないから、余計にそう思う。そもそも女性皇族は、「天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」(皇室典範12条)としか定められていない。男系男子が継承する皇室で何をする存在なのか。  眞子さんは会見で、「皇族としての仕事を、自分なりにできる限り大切に果たそうと努めてまいりました」と語った。そう、眞子さんは公務に勤しむ女性皇族だった。初の単独公務は学習院女子高等科2年生の2008年。15年、英国のレスター大学大学院を修了すると、すぐに日本テニス協会名誉総裁に就任。同年12月にエルサルバドルとホンジュラスを訪問、以後中南米を6カ国、ブータンと合わせ計7カ国を公式訪問している。 ■公務邁進型の皇族像  この「成人前から開始」「学業終了後に本格化」という公務邁進(まいしん)型女性皇族像は、天皇陛下の妹、黒田清子さんが築いた。清子さんは学習院女子高等科の3年間、両親(上皇陛下と美智子さま)と全国高校総体に臨席、学習院大学1年で初の単独公務、卒業3年後のブラジルを皮切りに、36歳で結婚するまで14カ国を公式訪問した。  04年、35歳の誕生日にあたって清子さんは、「公務は常に私事に先んじるという陛下のご姿勢は、私が幼い頃から決して崩れることのないものでした」と文書で述べている。「私より公」が清子さんの規律だ。ただ、こうも述べている。「内親王という立場は、先行きを考えるとき、将来的にその立場を離れる可能性がどうしても念頭にあるため、(略)継続的な責任ある立場に就いたりすることは控えてきたということはあるかもしれません」(02年、33歳の誕生日の文書回答) 愛子さまは12月1日、20歳の誕生日を迎える。会見で何を語るかが注目される(宮内庁提供)  清子さんが控えた「責任ある立場」に就く女性がまだ少ないから、日本のジェンダーギャップ指数は21年も120位。それを「とても残念なことです」と語ったのは佳子さまだ。10月10日、「国際ガールズメッセ」でのビデオによる挨拶だった。「今後、ジェンダー平等が達成され、誰もがより幅広い人生の選択肢を持てるようになることを、自らの可能性を最大限いかす道を選べるようになることを、それが当たり前の社会になることを切に願います」と述べた。それが佳子さまの時代感覚だ。  そして天皇陛下の長女愛子さまが今年12月1日、20歳になる。成人にあたっては、記者会見が恒例になっている。愛子さまはそこで、何を語るだろうか。 ■困難は国民全体のもの 「成人前からの公務開始」という清子さん、眞子さんの路線を愛子さまは取っていない。母の雅子さまが「適応障害」という病を得て、長く苦しんでいることが影響しているかもしれないと想像する。令和になってすぐに「コロナ禍」が広がったという事情も大きいだろう。そもそも皇室全体で、国民と直接触れ合う機会が激減している。 「愛子天皇待望論」がメディアから消えることがないのは、悠仁さまは「次男の長男」で愛子さまは「長男の長女」という“ねじれ”があるからだ。それなのに政府は、「女性、女系天皇」問題の議論を避けている。  怠慢ではないだろうか、と書いたところで眞子さんに戻る。  会見の最後、眞子さんはこう言った。「今、心を守りながら生きることに困難を感じ傷ついている方が、たくさんいらっしゃると思います。周囲の人のあたたかい助けや支えによって、より多くの人が、心を大切に守りながら生きていける社会となることを、心から願っております」  昨年11月、眞子さんは「お気持ち」を発表、「結婚は、私たちにとって自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択です」と訴えた。この時に感じた「心を大切に守りながら生きることの困難さ」を眞子さんは国民全体のものと捉えていた。そして、「心を大切に守りながら生きていける社会」となることを望んでいた。  眞子さんはこれまでも今も、「公」と共にある。そう思うと、とても切ない。(コラムニスト・矢部万紀子)※AERA 2021年11月8日号

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