
愛子さまは愛馬「豊歓」の墓に花とニンジンを手向けた…命のふれあいからにじむ天皇ご一家の優しさ
21歳の誕生日に際しての愛子さま。愛子さまは小さな頃から馬に親しんできた=2022年、宮内庁提供
一般に公開される映像などから垣間見える天皇ご一家の「日常」には、犬や馬などの姿がよく見られる。楽しいときも困難なときも寄り添う身近な生き物たちは、ご一家にとって大切な存在になっている。
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駅舎からトコトコと歩いてきた、7歳の愛子さま。その両腕からは、もこもこした子犬のお尻と尻尾がはみ出していた。
由莉は、生後2か月で保護犬としてご一家に引き取られた。大人しく愛子さまに抱っこされて初お披露目=2009年5月、栃木県のJR宇都宮駅、代表撮影
愛子さまが抱きかかえていたフワフワの子犬は、途中で雅子さまが交代。愛子さまの目線までかがんで受け取った雅子さまは、歩きながら、赤ちゃんをあやすように腕の中におさまる子犬を何度ものぞき込んでいた。
御料牧場に向かう皇太子(当時)ご一家。愛子さまから子犬の由莉をやさしく受け取る雅子さま=2009年5月、栃木県のJR宇都宮駅、代表撮影
愛子さまの愛犬「由莉」が、初めて一般の人の前に登場したのは2009年のゴールデンウィーク。栃木県の御料牧場での静養のため、ご一家はJR宇都宮駅に到着。その際に愛子さまが抱えていたのが、由莉だった。
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赤ちゃんをあやすように、何度も由莉の顔をのぞきこんだ雅子さま=2009年5月、栃木県のJR宇都宮駅、代表撮影
この年の2月、ご一家と長年暮らしていた愛犬の「まり」が、老衰でこの世を去った。そして同じ年の春、動物病院で保護されていた生後2カ月のメスの子犬が、ご一家のもとにやって来た。
「由莉」の名は、漢字を勉強した愛子さまが、「自由」の「由」と茉莉花(ジャスミン)の「莉」の字をあてたものだという。
由莉はその年の夏にも、成長した姿を見せた。
ぐっと体格がよくなった由莉は、7歳の愛子さまには重そう。愛子さまは、大切な「家族」を落とさないように何度もよいしょと抱え直しながら、出迎えた市民の前を歩いた。
由莉はご静養に何度も「同行」したほか、ご一家の誕生日の写真にもたびたび登場している。
46歳の誕生日をむかえる雅子さまと、当時皇太子だった陛下と愛子さま。由莉は甘えるように愛子さまに顔を向けていた=2009年、宮内庁提供
由莉が引き取られた09年の年末。雅子さまの誕生日に際しての写真には、ふた回りほど大きくなった由莉が、愛子さまに顔を向けて甘える様子が写っている。
皇太子だった陛下の11年の誕生日には、新しい家族となった猫を、ご一家と由莉が囲む場面もあった。ご一家の愛情を受けている様子がよく伝わってくる。
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アニマルセラピー犬として活躍する由莉
由莉は、ご一家を支える存在でもあった。愛子さまが学習院初等科で欠席が続いた時期には、東宮御所の門から学習院初等科の正門まで、愛子さまと一緒に登校する姿があった。
由莉は、ご一家と暮らし始めてから、アニマルセラピー犬としての訓練を受けている。
もともと雅子さまは、アニマルセラピーに関心を寄せていた。長期療養が続いていた雅子さまも、治療の一環として皇居で乗馬を続けてきた。ご静養中も御料牧場に皇居から馬を輸送して、ご一家で乗馬を楽しむこともあった。
同じ時期、雅子さまは東京・築地にある聖路加国際病院を何度か訪れている。小児病棟で行われるアニマルセラピーに関心を持ち、現場を見学するためだった。そうした経験が、活動へとつながっているとみられる。
51歳の誕生日を迎える天皇陛下(当時、皇太子)と雅子さま、愛子さま。新たに家族になった猫に、由莉も興味津々=2011年、宮内庁提供
19年に秋田県を訪問した両陛下は、動物愛護センター「ワンニャピアあきた」を訪れている。そこで、雅子さまと懇談した女性が、犬と福祉施設などを訪れる活動をしていると話した。すると雅子さまは、
「うちの犬も、そういう活動をしているのですよ」
と、打ち明けた。由莉も、老人福祉施設やホスピス病棟を訪問する活動をしているのだという。
秋篠宮家の長女、小室眞子さんが結婚の前、両陛下へあいさつをするために御所を訪ねた。私的なお別れということもあり、由莉を連れた愛子さまも部屋にいた。家族が「全員」そろって、お別れのあいさつをしたのだろう。
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愛馬の墓に手向けた花とニンジン
馬も、ご一家にとって大切な存在だ。
ご一家は皇居や御料牧場で乗馬に親しみ、療養中の雅子さまを支えたのも馬だった。昨年、21歳の誕生日を迎えて公表された愛子さまの映像は、厩舎で馬の咲姫(さきひめ)にニンジンを与える場面だった。
21歳の誕生日に際しての愛子さま。愛子さまは小さな頃から馬に親しんできた=2022年、宮内庁提供
天皇ご夫妻が1994年に中東を訪れた際、オマーン国王からアハージージュという名前のアラブ馬を贈られている。そのアハージージュが産んだのが、愛子さまの愛馬となった豊歓(とよよし)だ。
今年4月、天皇ご一家は栃木県の御料牧場に滞在したが、そこには昨年末に死んだ豊歓のお墓がある。
愛子さまがずっとかわいがっていた豊歓も高齢になり、余生を過ごしていたのが御料牧場だった。墓にはたてがみと尾が納められており、愛子さまは墓に花とニンジンを供えたという。
3年8カ月ぶりとなるご静養で御料牧場に滞在し、馬にニンジンをあげる愛子さま=2023年4月、宮内庁提供
その御料牧場の滞在中、愛子さまはメスの子牛の出産に立ち会った。産まれた直前に虹が出たことから、愛子さまは子牛に「レインボー」と名前をつけた。
愛子さまはレインボーが立ち上がるまで見守り、子牛に母牛の乳を与えるなど、ご一家と生き物たちとの触れ合いが話題になった。
これからも身近な「命」が、天皇ご一家たちの支えになることだろう。
(AERA dot.編集部・永井貴子)
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