
「秋の園遊会」雅子さまは“皇后の自覚”にじむ女郎花色 紀子さまはロイヤルブルーに“意志の強さ”
秋の園遊会にお出ましになった、天皇皇后両陛下と秋篠宮ご夫妻
季節外れの暑さとなった11月2日。天皇皇后両陛下が主催する秋の園遊会が、5年ぶりに、東京・元赤坂の赤坂御苑で開催された。今回の女性皇族のドレスコードは、洋装。和装のように、着物の文様にメッセージを込めることはできないが、色づかいや細やかな意匠にも、お一人おひとりのキャラクターはのぞくもの。スタイリストの角佑宇子(すみ・ゆうこ)さんが、雅子さまと紀子さまの「対照的な」ファッションを読み解いてくれた。
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抜けるような青空の下、約1400人の招待客の前に現れた雅子さまは、うっすらと緑がかった黄色のツーピースを身にまとっていた。角さんによると、これは秋の七草の一つ、「女郎花(おみなえし)」の色。2015年秋の園遊会で着用されたツーピースは、深みのあるワインレッドだったが、例年より気温の高い今年は、秋を感じさせつつも重くならない色味を選ばれたのではないかと、角さんは推察する。
「雅子さまは、愛子さまとの親子コーデも緻密に計算される方。お召し物が持つメッセージ性をよく考え、大切にされている印象があります」
その姿勢は、皇室に入られてからの雅子さまのファッションの変遷からも見て取れる。ご成婚当初は、“ロイヤルブルー”に代表される、はっきりとした色を着用されることが多かった。しかし、お立場が皇太子妃から皇后になると、生成り色だったり、同じブルーでもより控えめな色味だったりを選ばれることが多くなったという。
招待客の前に現れた天皇皇后両陛下。雅子さまのツーピースの女郎花色が、秋の木の葉の色とマッチしている
本来は主張のある色がお似合いになるけれど…
「派手な色で自分を表現するのではなく、人々のことを思って、やわらかく落ち着いた印象を出していこうというお気持ちが、色に乗っているのかなと思います」と、角さん。
雅子さまはパーソナルカラーのパターンはおそらく“ブルベ冬”に当てはまり、本来は、以前好まれていたような主張のある色がお似合いだという。しかし、少なくともご公務で着用する服については、「自分の姿が周りにどのような印象を与えるか」を何よりも優先されていると思われる。女郎花色のツーピースには、皇后としての自負と覚悟がにじんでいるのかもしれない。
一方、紀子さまのファッションからは、雅子さまとは対照的な、「私は私の道を歩む」という意志の強さが感じられると、角さんは言う。
今回の園遊会で紀子さまがお召しになっていたのは、かつての雅子さまをほうふつとさせる、ロイヤルブルーのツーピースだ。
「この鮮やかな青は秋特有の色ではありませんし、結果的に皇后である雅子さまよりも目立っていらっしゃったので、何かご意図があって選んだというよりは、シンプルに紀子さまがお好きな色だったのかなと思います。どんな場面でも上品に見せてくれる、汎用性の高い色です」
シンガー・ソングライターの松任谷由実さんと歓談される天皇皇后両陛下。手前には将棋棋士の加藤一二三さんの姿も
紀子さまは“アナウンサー風”ファッション
紀子さまは当初から一貫して、うすいピンクや丸襟、花柄など、アナウンサー風の可憐なファッションを好まれてきたという。近年は、ロイヤルブルーのような落ち着きのある色を選ばれることも増えたが、今回の園遊会で着用された帽子やツーピースに、華やかな菊模様のレースがあしらわれていたように、今も「かわいらしさ=自分らしさ」を大切にされているご様子だ。
かたや、雅子さまは、襟元にほどこされた生地と同色の刺繍や、一見無地に見えるような繊細な柄など、上品でさりげないおしゃれを好まれる傾向があり、“色”だけでなく“意匠”の点でも、お二人の美意識や価値観の違いが表れているという。
エンプレス、プリンセスのお召し物に注目すると、その胸の内がチラリと垣間見えるかもしれない。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)