藤原三星
「だが、情熱はある」オードリー・若林の“暗黒の20代”がエグい 本人は「思い出したくもない」
オードリーの若林正恭
King & Princeの高橋海人とSixTONESの森本慎太郎のダブル主演ドラマ「だが、情熱はある」(日本テレビ系)の公式YouTube総再生数が1億回を突破した。同ドラマは、お笑いコンビ「オードリー」と「南海キャンディーズ」がもがき苦しみながらブレークしていく過程を圧倒的な再現度で描いた作品。若林正恭(44)を演じる高橋や、山里亮太(46)を演じる森本の、モノマネを超えた憑依っぷりも見どころとなっている。
「現在では単独で番組MCが張れるほど大活躍中の若林さんですが、コンビでブレークした直後は相方の春日俊彰さんが日本中の注目を集めたため、若林さんがいわゆる“じゃないほう芸人”だったことに驚いた人も多いでしょう。ドラマを見ていると、コンビ結成後、9年間もテレビに出られなかった“暗黒すぎる20代”の日々が想像以上にどん底で、オードリーが“ズレ漫才”を発明してブレークしたのが奇跡と思えるほどリアリティーがあります」(お笑いに詳しい放送作家)
もうひとりの主人公・山里もブレーク直後はしずちゃんのほうがクローズアップされたため、自他ともに認める“じゃないほう芸人”だった。しかし、南海キャンディーズはコンビ結成1年目でブレークしたので、ドラマでは若林のほうにより悲壮感が漂っていた。
「どん底の日々の中でズレ漫才というスタイルを確立させ、それを武器に2008年の『M-1グランプリ』で敗者復活から決勝に初進出。1位通過で最終決戦に残るも、同期のNON STYLEにまくられて惜しくも準優勝で終わりました。M-1で初めて結果を残すと、賞レースからは潔く撤退し、テレビタレントに専念するというシフトチェンジもお見事でした。しかし、当時のオードリーは春日さんのキャラが強すぎて完全にイロモノ扱いだったため、『1年で消える』と言われていました。そこで若林さんはバラエティーの現場を研究し尽くし、大喜利やトーク力にも磨きをかけつつ、春日さんという武器をうまくコントロールしてここまで成功を収めたのです」(同)
オードリーは10年の「タレント番組出演本数ランキング」(ニホンモニター)で、コンビで507本の番組に出演し1位を獲得。12年以降は各個人の出演本数で毎年のように上位にランクインしている。
「『タレント番組出演本数ランキング』は本来なら帯番組をやっている人が上位になるのですが、オードリーは帯番組をやっていないのに毎年上位にランクインしている。これは本当に売れている証拠ですし、特に10年代は彼らが最も稼いだといわれています。また、非吉本芸人としては珍しく、コンビの名前を冠した“冠番組”を持てるのもすごいこと。それだけテレビ制作者の中に『オードリーと仕事をしたい』と思っている人が多いという表れでしょうし、視聴率も安定している。加えて、M-1でブレークした翌年に始まった『オードリーのオールナイトニッポン』で培った固定ファンの存在も大きい。やはりオールナイトニッポンを10年以上やっているという時点で芸人としてのランクは上がりますし、実際にラジオ聴取率調査でもオードリーは土曜深夜の1~3時で首位を41回連続もとっています」(民放バラエティー制作スタッフ)
■春日の浮気報道にブチギレ
今やニッポン放送の看板番組にまでなった「オードリーのオールナイトニッポン」は、来年2月に東京ドームでライブを行うことも決定。4万5000人の会場を満席にすべく、YouTubeでの活動もスタートさせた。ラジオ番組のディレクターはこう明かす。
「山里さんとのユニット『たりないふたり』の解散漫才を披露した配信ライブは5万5000枚が売れたといわれているので、おそらく今のオードリーなら、東京ドームの満席は容易だと思います。それほど“リトルトゥース”と呼ばれるリスナーは定着しています。若林さんはラジオで『20代のころは一日も思い出したくない』と発言していましたが、そんな暗黒の20代に戻りたくないからこそ、30歳でブレークしたときに徹底的に戦略を練り、人見知りもキャラに昇華した。それにより、春日さんを上回るテレビスターになれたのだと思います。思い出したくないと言いつつも、ラジオで頻繁に暗黒の時代の話を披露して爆笑を取るのも戦略家たるゆえんでしょう」
「週刊SPA!」元副編集長・芸能デスクの田辺健二氏は、若林のすごさをこう分析する。
「オードリーといえば、『奇人の春日』と『人見知りの若林』というイメージが根強くあり、飲み会とか女性遊びには縁のないイメージ。だから、春日さんがプロポーズ成功直後に別の女性との密会を週刊誌にスクープされたときはファンも落胆しましたが、オールナイトニッポンの生放送中に『イカれてんぞお前』『わかりやすく芸能界に染まりやがって』などと若林さんがブチギレたことが強く印象に残っています。奥さんやファンの気持ちを代弁しつつも、一般人の目線で春日さんに説教を食らわすことで笑いに変え、事態を悪化させなかったのは見事なコンビ芸だと思いました。若林さんはブレーク直後から芸人色をあまり押し出さないイメージでしたが、ここ数年は『あちこちオードリー』で芸人と真っ向勝負でお笑い論を戦わせたり、芸人としての哀愁を吐露したりもしています。彼らは売れっ子芸人が多い豊作の年にデビューしましたが、気づけば同じ世代の中で代表的なコンビになりました。本当の黄金期を迎えるのはこれからかもしれません」
売れなかった暗黒の時代を「思い出したくもない」と否定しつつも、ドラマではそれを克明なまでに世間にさらす。これも若林の緻密な“戦略”のひとつなのかもしれない。
(藤原三星)
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2023/06/25 11:00