※写真はイメージです (Getty Images)
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 パートナーに求める理想と、問題が起きたときの対処法が矛盾しているケースがあるという。カップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載、今回は「カウンセラーのテクニック」について解説する。

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 少し前に、アメリカの大手映像配信サービス「Netflix」が再生速度を調整する機能を試験的に導入しているというニュースを見ました。そもそもYouTubeなどでは、すでに速度調整が可能で、私も最近、2倍速で世界史の動画を見て勉強していたわけですが、エンターテインメント業界ではクリエーターから批判の声が上がっているというのです。

 これには考えさせられました。例えば、除夜の鐘は1秒に3回連打すれば約40秒で全部聞くことができますが、それでは本来の意味が失われるのかもしれません。

 お気に入りの歌手やアイドルのライブも倍速にするでしょうか。2時間分のライブをパブリックビューイングでは倍速の1時間で提供しますと言っても、喜ぶ人はいないのではないかと思います。ライブは「時間を共にしている」体験こそが重要です。

 エンタメコンテンツの中でも、加速して見られやすいのは、おそらくドラマや映画です。好きな映画を見直すような場合以外は、ユーザーはクリエーターが望んでいる「時間を共にする体験」ではなく、話の筋という「情報」を「学習」するものとして扱っていると思われます。

 つまりコンテンツは(1)時間の共有と、(2)情報の学習に大きく分類できるでしょう。

 これは夫婦という「コンテンツ」にも当てはまるのです。

 10年ぐらい前は、結婚相手に求めるものを聞くと

「自分が知らなかった知識を教えてもらえる」
「自分がステップアップするためのアドバイスがもらえる」

など、(2)情報の学習に近いことを答える方が多くいらっしゃいました。

 最近は「一緒にいるとホッとする」「一緒にいて楽」という方が多いような気がします。つまり「倍速」とは無関係で、(1)時間を共にすることを大事にしているように聞こえます。しかし、そういうご夫婦でも、問題解決は倍速でと希望されることがあります。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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夫「妻の気持ちを変えるためのアドバイスを」