私は毎回カウンセリングをはじめるときに最初に、
「(今)どんな感じですか?」
とお聞きするのですが、2回目においでになったとき、正尚さんは、
「カウンセリングの後、ちょっと妻の機嫌がよくなりましたが、数日で戻ってしまい、それ以降特に変わったことはありません」
とおっしゃいました。カウンセリングの場面ではカウンセラーはお医者さんと同じように見られがちで、今の気持ちや感覚をお聞きしても、この間の経緯を説明されることが多いのです。
このお返事はカウンセリングが役に立ってない、という雰囲気が醸し出されていますが、一歩引いてみれば、カウンセリングの後、機嫌がよかったのだとしたらそれはどういうことなのか、そっちの方が重要です。なので、
「カウンセリング後、妻の美弥子さんの機嫌がよかったのだとしたら、それはどういうメカニズムだと思いますか」
とお聞きしてみると、
「わからないんです。だからそれを教えて欲しいんです」
とおっしゃいます。つまり、正尚さんの理解によれば、私は正尚さんが知らない技を使っていて、それを自分が理解して使えるようになれば、妻の機嫌を維持できる。だからその技を教えて欲しい、と考えておられるようです。
実は、「目標」と「方法」の不一致というのは、目標を達成しにくくなることが多いのです。
例えば、「自分から勉強させるにはどうしたらいいか?」というのは、なかなか野心的な目標です。勉強「させる」ことはできるかもしれませんが、「させ」ている限り、自発的ではないからです。
そう指摘すると、言い方を変える人がいます。
「自分から勉強することが大事だと、習慣をつけるためには何が必要か」
しかし、根本的な考えが変わるわけではないでしょう。
話を戻すと、結局のところ、正尚さんは、「一緒にいるとほっとできる妻」という時間を一緒に使うコンテンツ(目標)を、時短で得たい(方法)わけで、これは矛盾していて実現が困難なのです。