Aさん:子どもに事実を知らせるべきでしょうか?
沖山さん:自分が苦手なことを知らなければ、対処ができませんから、当然本人は知る権利があります。ディスレクシアの多くは、脳の視覚情報処理に不具合が生じているケースが多く、その場合は治ることはありません。ですから、どのように苦手なことに対処していくかの問題となります。
例えば書き写しが苦手な息子さんの場合は、「書き写す文章の下に黒い下敷きを置く」「見本の位置を『上』『左』など変えてみる」などの方法があります。実際に、見本の位置を変えただで、うまく写せるようになる子もいます。どんな方法が一番子どもにとっていいのかを、親子で探していく必要があるのです。
Aさん:他の子と同じように中学受験ができるでしょうか?
沖山さん:周りの子と「同じように」というのは、難しいでしょう。なぜなら、現在の学校教育というのは、ディスレクシアの子が能力を伸ばせる場ではないからです。先ほど、息子さんのWISC-IV(ウェクスラー児童用知能検査第4版)の結果を見せていただきましたが、耳から情報を取る能力が平均より高く出ています。この部分を伸ばせるのはどんな分野かを考えて、進路を選ぶのが良いと思います。
Aさん:そういえば、息子は「聞く力」はあるように思います。
沖山さん:実は人間の能力というのは平等にできていて、ある部分が凹んでいると、それを補うように他の部分が伸びていくのです。目の見えない人の触覚が、非常に鋭いのと同じです。そう考えると、何もかも平均的な能力を持った子よりも、ディスレクシアの子の方が何かで突出する可能性が高いこといえます。
実際に、私の周りにもそういう子がたくさんいますし、東京大学の「異才発掘プロジェクトROCKET」の生徒として選ばれた子の中には、ディスレクシアの子も多いのです。AIに仕事が奪われると心配するような話も多いですが、私は「平均的な子」こそ危ない、と思っているくらいです。