年末から新型コロナウイルスの感染拡大傾向が顕著になり、1月13日時点で11都府県で2度目の緊急事態宣言が発出されている。収束やワクチンについて、医師たちはどう考えているのか。AERA 2021年1月25日号から。
【医師1726人アンケート】ワクチン接種を「する」31%、「種類による」27%
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感染爆発を止める可能性のある緊急事態宣言の発令を、医師たちは今や遅しと待っていた。
年末年始、関西にある大学病院の救急外来では、救急車からの受け入れ要請を片っ端から断っていた。ある日、受け入れたのは、急変の恐れがない「しもやけ」患者の1人だけ。同病院に勤務する30代の医師は、逼迫(ひっぱく)した医療現場をこう説明する。
「12月下旬からICU(集中治療室)が空かなくなって、急変リスクのある手術や交通事故の患者を受け入れていません。輸血用血液が不足して亡くなる人も出ていて、助かる命が助からなくなっています」
■骨抜きの緊急事態宣言
秋ごろから、GoToイートやトラベルを利用する人が増え、東京から来た人と一緒に過ごした人や、東京に行って帰ってきた人が感染するケースが増えている実感があった。クリスマス前後から重症者が急増した。
「感染者が爆発的に増えて、最前線にいる私たちはもう限界です」(同医師)
関西では1月13日、大阪、兵庫、京都に緊急事態宣言が出された。今度こそ感染が収まってほしいと願っている。
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、医療現場の逼迫が深刻化する中、2度目の緊急事態宣言はまず7日、首都圏の1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)に出されている。発出時期について、「あまりに遅すぎる」と考える医師も少なくない。
「ようやく出されたのに、内容が骨抜きで、これでは医療現場は持たない」
と危機感をあらわにするのは、都内の病院に勤務する内科医(41)だ。昨年春の緊急事態宣言後は、目に見えて感染者が減り、発熱患者への対応など常に緊張が強いられる医療現場も「もう少し頑張れば乗り切れる」と思えた。だが、今回の制限は飲食店の営業時間の短縮ぐらいで、映画館もデパートもジムも営業は自粛せず、イベントも開催されている。大相撲1月場所が上限5千人の観客を入れ開幕したとニュースで見たときは、体の力が抜け、ソファにへたり込んだ。