■「緊急」優先に不信感
西さんが懸念するのが、菅義偉首相が1月4日の会見で、ワクチンを開発するファイザーに国内治験データの提出時期を2月から1月に前倒しするよう要請したと明らかにしたことだ。
「どんなワクチンもゼロリスクではないからこそ、各自が接種するメリットとデメリットを比較し納得して打つことが肝心。慎重に安全性を確認することが求められるのに、緊急性だけが優先されることは不信感につながってしまう」(西さん)
集団免疫を獲得するために必要な接種率は、疾患によって異なる。例えば感染力の強い麻疹(はしか)は95%だ。新型コロナウイルスの接種率は正確にはわかっていないが、西さんによると感染収束のためには「少なくても6~7割以上の接種が必要」といい、感染を抑えるためには多くの国民の納得が必要だ。
日本、いや全世界が切望する収束の見通しについては、「21年夏までに」との回答はわずか7.1%。今年7月に開幕する東京五輪までに収束すると考えている医師は1割にも満たない。
最も多かったのが「2年後(22年)」で35.8%。一方で、「3年後」14.1%と「4年後以降」12.5%を合わせ、4分の1を超える医師が、収束には3年以上かかると答えた。「その他」を選んだ6.5%の人たちの多くが、「収束する日は来ない」「インフルエンザのように毎年繰り返す」と考えている。
前出の和田さんは、収束の見通しを踏まえ、こう呼びかける。
「みなさんには、少なくとも1年から2年は続く可能性があると思って、誰もが感染対策をしっかり続けていただきたい」
(編集部・深澤友紀、ライター・井上有紀子)
※AERA 2021年1月25日号より抜粋