写真家・山口梓沙さんの作品展「I KNOW IT’S REAL, I CAN FEEL IT.」が11月12日から東京・丸の内のエプサイトギャラリーで開催される。山口さんに聞いた。
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「私の写真のモチーフは、すごく簡単というか、どこにでもあるもの。それを展示する。でも、モチーフが簡単だからこそ、『何を見ているか』、ではなく、『どう見ているか』ということですよね。写真家として」
今回の写真展は、山口さんが受賞した第1回「エプサイトギャラリーアワード」を記念するもの。国内初の個展でもある。
「大学のときから一貫して撮り続けてきたものを、ドンと、かたまりで見せるというか、凝縮して見せたいと思っています。なので、これがテーマ、みたいなことは言えない。あえて言えば、自分が撮ってきたものへの視線を見せる展示ですね」
山口さんはそんな力強い言葉を口にする一方、意外なことを漏らした。
「けっこう、展示するのが怖いな、恥ずかしいな、みたいな気持ちが強くて。自分の写真を不特定多数の人に見られる、というのが……」
ちなみに、「大学時代は性格がすごく暗かった」そう。
「学生時代、『キヤノン写真新世紀』の審査のとき、プレゼンテーションをしたんですけれど、そのとき、ほぼ10代の陰鬱(いんうつ)とした内面を滔々(とうとう)と述べたら、『そういうのはいらないから』みたいに言われた」
■作品は「自分の粘膜、内臓みたい」
山口さんが写真を撮り始めたのは2016年春。多摩美術大学3年のときだった。
「『広告写真』という授業で、ポートレートとか、ランドスケープ(風景や景色)の基礎を学んだんです。それで初めて一眼レフを触ったら、けっこう面白いな、と思ったのがきっかけ。で、写真をちゃんとやろうと思ったのは、2017年」
16年秋、先生の勧めで17年度「キヤノン写真新世紀」に応募したところ、優秀賞を受賞した。
「正直、写真家になるとか、作家として写真を撮りたい、みたいなことはあまり考えたことがなかったので、えーっと思ったんです。でも、写真を撮ること好きなので、いまも続けている、という感じです」。山口さんは淡々と話す。