展示作品は約20点。
そこに現れるのは、「誰もが一度は目にしたことがあるような風景とか、状態。それを撮って、まとめた、という感じです」と、説明する。
しかし、そんな断片のイメージのなかに、極めて個人的な山口さんの祖父の姿が繰り返し現れる。
「写真新世紀の受賞作品も祖父が主題というか、メインだった。いちばん最初に、ほんとうに何も考えずに撮り始めたころの写真がいまにつながっている、というのはありますね」
先に書いた大学のランドスケープを撮る授業で、山口さんは祖父母の姿を撮影した。
「授業ではランドスケープについて、特に定義づけはされなくて、私はそれをスナップ写真みたいにとらえたんです。それで、祖父母の家を訪れて、室内にいるところとか、散歩している姿を撮影して、『祖父母がいる風景』みたいな感じで写真を提出した。それを、いまも撮り続けています」
■つながる個とマスの世界
今回の作品からは、そんな「個人的な世界」を強く感じる一方、山口さんはもともとグラフィックデザイン学科で広告を学んだこともあり、「マスメディアの世界」にもとても興味があるという。
「こういう、どこにでもあるモチーフを撮影して、作品集にまとめて出版したい、という気持ちと、広告の写真を撮ったり、商業的なものをつくってみたい、ということは私のなかではすごくきれいにつながっているんです」
さらに作品をフィルムで撮影していることについても、「けっこう私のなかではつながっている。自分と合うというか、しっくりくる」と言う。
「何か、『物への執着』があるですね。それで印刷物や写真集が好き、ということもあります。印刷物もフィルムも次第に減っていくなかで、それをずっとやっていく、というのが面白いな、と思って。どんどん移り変わっていくなかで、ひとつのことをやり続けていると、何か分かることがありそうだな、と感じています」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】山口梓沙写真展「I KNOW IT’S REAL, I CAN FEEL IT.」
エプサイトギャラリー 11月12日~11月24日