米・ハーバード大学とジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(28)。現在はコンサートなどの音楽活動を行いながら、日本の大学でグローバル人材を育成するための授業も受け持っている。廣津留さんの頭の中を探るべく、どんなふうに音楽や勉強とかかわってきたのかを語ってもらうAERA dot.の連載。第5回は、気になるハーバードの授業について。
* * *
日本でも有名なマイケル・サンデル氏をはじめ、“超一流”の教授陣が揃うハーバード。カリキュラムは人文科学や社会科学、自然科学を横断的に学ぶ「リベラル・アーツ」のスタイルになっている。
「必修科目に縛りのある一般的な日本の大学とは違い、入学時に専攻を決めないハーバードではすべての学問分野に及ぶ何千もの科目の中から自由に履修科目を選ぶことができます。しかし、1つの学期にとれる授業は基本4科目しかありません。1科目あたりそれぞれ週3回ほど授業があるのでコマ数は多いのですが、基本的には卒業までに受けられる授業数が32科目しかありませんから、厳選する必要があります。
授業はディスカッションが中心です。例えばマイケル・サンデル氏やグレゴリー・マンキュー氏のような人気教授の場合、週に1度、本人による講義が大教室で行われて、ほかの曜日は大学院生がティーチング・アシスタントとなり、15人ほどの少人数クラスでディスカッションを重ねていきます」
■苦手だった科学が面白いと思えた
なかでも印象に残ったのは、“世界一予約が取れないレストラン“として知られたスペインの「エル・ブジ」のシェフ、フェラン・アドリア氏の授業。「分子ガストロノミー」という科学的な料理方法を確立した氏の授業で、苦手だった科学への見方が変わったという。
「フェラン・アドリアの『サイエンス&クッキング』を履修したのですが、これがものすごく面白くて。私の中で強烈に印象に残っているのはオリーブオイルやソースなどの液体をタピオカのような球状に固めて食べるというシェフの発想。学校の科学ラボで実際にいろいろな食用の液体を球状に固めてみる実験もしましたが、これがなかなか難しく、材料の配合に苦労しました。また、『エル・ブジ』を代表する『エスプーマ』という泡状の料理の研究もしました」