まるで対談しているような2冊(撮影/佐藤創紀)

せやま:ありがとうございます。

潮井:主人公の津麦が育った永井家の親子関係と、津麦が家事代行としてかかわる織野家の親子関係が、津麦の存在によってちょっと交差して、それぞれの家庭が抱えている問題が浮き彫りになっていく。

 それを解決していくお話だったと思うんですけど、私自身が出産して、親になったタイミングで拝読したので、作品のなかで描かれているさまざまな人間関係に、余計に感情移入したかもしれません。

 本当におもしろくて、印象に残ったところに付箋を貼っていったら、付箋だらけになりました(笑)。

せやま:(笑)。私もコロナ禍前の2020年くらいまで、働きながら子育てをしていたのですが、その頃は本当にいっぱいいっぱいで。特に、子どもが0歳と2歳で、どっちもおむつをはいていて、片方は赤ちゃん返りするし、みたいな時は本当に、記憶がないぐらい忙しかった。

 あの頃の自分を癒やしたいなという気持ちで、この話を書き始めました。

 今から思い返すと、忙しさのピークは2、3年だったから、その短期間であれば割り切って、まわりに頼ることができていたらって思うこともあります。

潮井:小説のなかでご自身の性格が反映されることってあるのでしょうか?

せやま:性格は津麦かもしれませんが、家事がまわらない苦しさは織野朔也(編注 :5人の子どもを育てているシングルファーザー)に投影しています。

 彼のポジションを女性にしたほうが、境遇が重なる人が多いのかもしれませんが、今は家事・育児をする男性もたくさんいるから、ここは男性にしたいと思って、織野朔也というキャラクターになりました。

潮井:なるほど。

せやま:仕事を辞めてから、家事と向き合う時間は増えたんですけど、今度は「家事って終わりがないな」と思うようになったんですね。その部分は津麦のお母さんに投影しています。終わりのない家事にとらわれている人物として。

潮井:私は(家事代行会社の相談員の)安富さんがすごく好きなんですよ。

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