潮井:ご感想をいただくのってすごくうれしいですよね。読んでもらえるだけでも信じられないくらいありがたくてうれしいことなのに、感想までくれるんですか!って。せやまさんが『クリキャベ』の感想をリポストしているのを見て、私まで感動して。

せやま:はははは。

潮井:「みなさんいいこと言ってらっしゃる!」って。本当に、感想の力ってすごく大きいと思います。

 私は、文章のことで言うと、テンポのよさを褒めていただけたことはすごくうれしかったですね。難しい言葉を知らないので、身近なワードを使ってリズム良くいくしかない、と思っていて。

せやま:すごくリズムがいいですよね、潮井さんの文章は。「微分積分がブンブンと教室を飛び交う」(「教室に響く銃声」)も、めちゃくちゃ好きで。

潮井:ありがとうございます。意味として成立することよりも、頭のなかで再生した時の気持ちよさで、言葉を選んでいる節があります。「エムコさんらしい文章ですね」と言っていただけるのは、たぶんそこなんじゃないかな。というか、そこぐらいしかないんじゃないかと思うんですけども。

 それから、「ほかのエッセイは、この人はすごい人生を送ってきたんだなと思うが、この本は、作者のおもしろさで書かれている」というご感想をいただいたことがあって。

 私は、ほんとに平凡な人間で。かっこいい肩書とかないし、保育士とか幼稚園の先生として働いていた一般人が本を出したので、売り出す時に、すごく大変だったと思います。「こいつ、何もないな」って(笑)。

 そんな私の身の回りで起きたことしか書いていないわけですが、だからこそきっと私がエッセイに書いているような「ちょっとしたおもしろさ」はみなさんの生活の中にもあると思うんです。

 特別なことが起こるわけでもない毎日だけど、ちょっとおもしろさを見つける、そういう貪欲さみたいなものがあれば、もっと楽しくなるよという気持ちがあったので、そうした意味で自分の平凡さに着目していただけたことが、すごくうれしかったなと思います。

*  *  *

「癒やしたい」。「日常のちょっとしたおもしろさに気づいてほしい」。このふたりのこの気持ちが、読者の気持ちを捉え、離さないのかもしれない。

 自分を癒やすこと、人生を楽しむこと、その難しさと大切さを感じさせてくれるふたりの作品には、やさしくあたたかいエールが込められている。

>>対談中編「『誰にも奪えない』『自分にしか書けない』自分だけの言葉を大切にした新人作家ふたりの眼差し」につづく

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