平安時代の官職。夕霧の「六位」は最下層だが、実際にはこの図は「上流・中流貴族」の抜粋。平安人の0.1%未満という上澄み中の上澄みの人々である。

 だが、「源氏物語」で光源氏は、息子の夕霧の官人生活を六位という低い身分からスタートさせ、「大学寮」で漢学を専門的に学ばせている。光源氏は飛びぬけて高貴な権力者、望めば夕霧を四位にもできたのだから、この時代の貴公子には珍しい苦学コースである。作者である紫式部の漢学者の娘としてのプライドや、名門の子弟の早すぎる出世への批判精神が感じられるエピソードだと言っていい。

光る君へ」でも、高杉真宙演じるまひろの弟・藤原惟規が大学寮に学んでいる。この「大学寮」とは、官吏の養成を行う学校のこと。中国の歴史や文学を学ぶ「紀伝道」、論語や孝経などから儒教の教えを学ぶ「明経道」、律令制を中心に法律にまつわる教育を行う「明法道」、中国古代の『九章算術』などを教科書に算術などを学ぶ「算道」の4教科(四道)があり、卒業して「寮試」と呼ばれる試験に合格すると、擬文章生(ぎもんじょうしょう)になり、さらに「省試」に合格すると、官吏として仕事に就ける文章生(もんじうしょう)になった。

 夕霧に苦学コースを歩ませた光源氏だが、娘の明石姫君や養女の紫上・玉鬘(たまかずら)には、琴(弦楽器の総称)や書道を教えている。この時代の上流階級の姫君は、「一に書、二に琴、三に和歌が御学問」といわれていたため、こちらはスタンダードな教育方針。女性キャラの中でも、雲居雁(くもいのかり)や浮舟は琴が不得手で、育ってきた環境がよくないことを示している。

(構成 生活・文化編集部 橋田真琴/イラスト 鈴木衣津子)

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