勉強との両立はどのように図られているのだろうか。

「山岳部は平日、ほとんど拘束されず、勉強しやすい環境にあり、3年生はインターハイが終わる夏まで部活動を続けています。夏で部を引退して受験勉強に集中し、現役で東京大、京都大など難関校に合格する部員もいます」

 インターハイ2位は大学の学校推薦型選抜(推薦入試)の資格要件を十二分に満たす。また、総合型選抜(AO入試)でも高校時代の個人の活動成果として大きな武器となる。 だが、修猷館山岳部での活躍を推薦入試の武器として考える部員はいないようだ。

 2023年度の同校の主な大学合格実績は、九州大115人、東京大13人、京都大21人、大阪大11人、早稲田大25人、慶應義塾大12人、西南学院大101人となっている。

令和5年度全国高等学校総合体育大会 登山女子団体

 なお、登山女子団体も上位には公立進学校が多く顔を出している。

  •  優勝:富士高校(静岡 県立)
  •  準優勝:千葉東高校(千葉 県立)
  •  3位:長田高校(兵庫 県立)
  •  4位:長崎北陽台高校(長崎 県立)
  •  5位:盛岡第一高校(岩手 県立)

 都道府県代表校には八戸高校(青森)、秋田高校(秋田)、磐城高校(福島)、高崎女子高校(群馬)、水戸第一高校(茨城)、長岡高校(新潟)、金沢二水高校(石川)、富山高校(富山)、武生高校(福井)、岡崎高校(愛知)、嵯峨野高校(京都)、鳥取西高校(鳥取)、松江北高校(島根)、丸亀高校(香川)、高知追手前高校(高知)、防府高校(山口)、修猷館高校(福岡)、加治木高校(鹿児島)など。

 男女ともに代表に選ばれた学校は少なくない。山岳部が男女に分かれておらず、練習を一緒に行っており、大会で好成績を出すための情報が共有されているからだろう。

なぜ強豪校に公立校が多い?

 私立高校はあまり力を入れていないのだろうか。2022年の登山男子団体では優勝が広島学院、準優勝は土佐(高知)で、ともに私立だった。もっともこの年の同競技出場校は42校のうち私立は7校しかない。広島学院、土佐はいずれも県を代表する中高一貫の進学校である。ちなみに今年の全国高校野球選手権大会出場校は49校中私立が40校にのぼる。

 スポーツ強豪校はあまり登山と縁がないのだろうか、甲子園出場経験がある関西の私立高校関係者は次のように話す。

「天気図の作成と解析、読図技術などを習得しなければならず、ある程度の学力が求められ、スポーツに特化した学校では生徒を育てるのに時間がかかってしまう。もちろん、スポーツ高校生だって登山に必要な知識は身につけられる。でも、登山は高校スポーツのなかで注目度は低く広告塔にならず、スポーツ強豪校は力を入れようとしない。また、登山は高校から始める人がほとんどで、どの学校もスタートラインは一緒だ。創立100年以上で『文武両道』を掲げる公立進学校の多くは古くから山岳部があって、歴史と伝統を引き継いできた。インターハイに出場するのはうなずけます」

今年の高校野球、夏の甲子園大会決勝は、連覇か107年ぶりの優勝かで例年以上に盛り上がった。ぜひ、ほかの競技にも目を向けてほしい。登山団体のように、スポーツと縁遠いと思われる学校の熱い戦いは、OB・OGなど学校関係者、地域の人たちに勇気を与え、励ましてくれる。

教育ジャーナリスト・小林哲夫

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