京都大学大学院教授の塩出浩之さん(1993年卒)は『越境者の政治史』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞、毎日出版文化賞、角川源義賞のトリプル受賞となった。同書では19世紀半ばから20世紀に北海道や旧満州、朝鮮半島や南北アメリカに渡った日本人が、市民権や参政権を求める活動を描き、「日本人」というルーツを持ちながら生きるために必要な権利について論じている。塩出さんは、移民や難民の問題について、こう警告する。

「今起こっていることは、特殊なことではない。日本人の移民も多くいたし、移民になるということは誰にでも起こりえることだと知っておいたほうがいい」(朝日新聞 2016年12月7日)

 筑駒の1998年卒には、著名な人文社会科学系の学者がそろっている。東京大教授で経済学者の小島武仁さん、大阪大教授で経済学者の安田洋祐さん、歴史学者の與那覇潤さんである。もっともこの期で有名なのは、AV男優の森林原人さんであり、同窓会を盛り上げてくれるそうだ。

 2000年以降の卒業生にも、学者として活躍する者は少なくない。

 国際大准教授の山口真一さん(2005年卒)は計量経済学が専門で、最近では新聞、テレビ、ネットニュースなどで、SNS上のフェイクニュースやネットの誹謗中傷といった諸課題について、解説を行っている。近著に『ソーシャルメディア解体全書 フェイクニュース・ネット炎上・情報の偏り』(勁草書房)がある。

 山口さんが学者になったのは、筑駒経験が大きいという。次のように話してくれた。

「筑駒では自ら設計し仕切ることを学びました。学者は関心がある問題を自分で設定して研究してアウトプットすることが求められるので、筑駒の教育とよく合っています。学者にとってこわいのはテーマが尽きることですが、新しい問いを立ててそれを追究することが枯渇しないのは、筑駒での経験が生きています」

 なるほど、教駒、筑駒が多くの学者を生んだのは、「新しい問いを立ててそれを追究する」教育環境があったからこそ、といえそうだ。

 若手学者の登竜門とされる賞として、サントリー学芸賞が有名である。

 日銀新総裁候補の植田和男さんは、1983年、大阪大教授時代の『国際マクロ経済学と日本経済 ―― 開放経済体系の理論と実証』で受賞した。

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サントリー学芸賞の受賞者は