長女は首に傷ができるのを嫌がったため、医師と相談して薬で症状を抑えた。結局、高3の4月はほとんど学校に通えなかった。

「娘は『今から頑張る!』と思っていた時期に体調がなかなか戻らなかったので、先のことを考えると不安だったと思います」

 そんなとき、病院で偶然会ったママ友から「うちの子も同じ症状だったが、休んでいるうちに治ったよ」という話を聞いた。

「やはり命がいちばん大事。『今年、受験できなくても仕方ない。焦らずに治そう』と覚悟を決めました」

 しっかり休ませるようにすると、長女の体調は次第に回復。5月中旬にはしこりも消えた。

「夏休み中、息子たちは7~8時間の睡眠で大丈夫でしたが、長女が疲れているときには早く休ませて、9~10時間睡眠をとることもありました」

 男の子と女の子では、生活スタイルも違う。例えば、3人の息子は入浴後5分ぐらいで髪を乾かしていたが、長女は入浴に40分、髪を乾かすのにも40分。

「もともとのんびりした子なんです。でも、そばで見ていて『もっと早く!』とイライラしました」

 しかし、長女が「髪の毛がきれいだと今日も一日頑張ろうって気になるわ」と髪の毛を手で触るのを見て、その気持ちは大事にしてあげたいと思うようになった。

「洗髪には文句を言わないことにしました。髪は私が乾かし、その間に娘は問題を解くことにしました」

 入浴も「早く、早く」と急かさず、佐藤さんが長女と一緒に入ることで解決。

「背中や髪の毛を洗ってあげながら、今後の計画を相談しました。今、思い出しても楽しかったですね」

 このように子どもに寄り添い、「家事は手を抜いても、子どもの教育に100%注ぐ」のが佐藤ママ流。母子二人三脚で仲よく勉強して合格を勝ち取るというのが必勝パターンだった。

 しかし、母娘の距離感というのは難しいもの。佐藤さんと長女も、世間並みに反発し合うこともあった。高3の夏休みには大喧嘩。2日間口をきかない冷戦状態になった。きっかけは「塾の夏期講習」で、受講するかどうかをめぐって意見が対立したという。

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