合格発表の掲示板の前で抱き合う佐藤ママと長女(撮影/写真部・加藤夏子)
合格発表の掲示板の前で抱き合う佐藤ママと長女(撮影/写真部・加藤夏子)

 3人の息子を東大理III(医学部)に合格させたことで知られる「佐藤ママ」こと佐藤亮子さんの長女が今年、東大理IIIに現役合格した。兄弟の受験で培ったスーパーメソッドで長女の受験はスムーズに進んだのかと思いきや、一筋縄ではいかないのが子育て。母と娘の受験には知られざるドラマがあった。

 3月10日、東京大学の理III(医学部)の合格者を知らせる掲示板に、受験番号を見つけると母娘はしっかりと抱き合った。長女は号泣。佐藤ママもこみあげてくるものがあって、思わず涙ぐんだ。

「3人の兄が理III合格というプレッシャーのなか、娘はよく頑張りました。合格してほっとしました」

 実は、長女は、周囲が受験勉強に本腰を入れ始める高校2年の2月から、3カ月ほど体調を崩した。一時期は「今年は受験できないかも……」と思ったほど。合格発表日の夕方に見せた安堵の表情には、理由があったのだ。

 佐藤さんは専業主婦として、4人の子どもたちが楽しく勉強できるように、生活面から定期テストの管理まで徹底的にサポート。「子どもが勉強している間は寝ない」など、とことん付き合うことが母親の責任と考えてきた。3兄弟を合格させたメソッドは『受験は母親が9割』(朝日新聞出版)にまとめている。

 そんな佐藤さんでも、長女の受験は、3人の息子の場合と勝手が違うことが多々あった。男の子と女の子の体力の差もその一つ。長男は高3の夏までサッカー、次男は中3まで軟式野球、三男は高2の夏まで卓球部の活動に打ち込み、東大に強い塾・鉄緑会に通い始めたのは中3か高1だった。それに対し、長女は中1から鉄緑会に通い始めた。

「男の子は直前の猛勉強で学力が伸びました。娘はそんなふうに無理はできないとわかっていたから、中1から早めに通わせました」

 長女は地道に努力するタイプ。中学時代は英数2科目の受講だったが、高1から化学、高2から物理も受講し、睡眠時間を削って勉強し始めた。そのせいで疲れがたまったのか、高2の2月ごろに発熱。なかなか熱は下がらず、長女はだるさを感じるようにもなった。3月の終わりには首にしこりができ、「急性リンパ節炎が疑われる。3センチほど切除して調べたい」と医師に言われたという。

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