「中高一貫校の成績優秀者など、ある程度力がついている子どもは、夏期講習を受けるインプットよりも、予備校の東大模試の過去問題を解くアウトプットのほうがいい」というのが、佐藤さんの持論だった。

 3人の息子は素直に佐藤さんの言うことを聞いて、講習には行かず、ネットで模試の過去問題を取り寄せ、自宅で勉強した。長女は体力がない上に、病み上がりだったので、佐藤さんは兄たちと同じ方法を勧めた。だが、長女は「夏期講習に行きたい」と主張した。

「それどころか、『ママは、3人には自分のやり方でたまたま成功したかもしれないけど、私は灘(高校)ではないから、同じようにはいかないのよ』と言われたんです。さすがに私も頭にきちゃったんです」

 良いときも悪いときも、母親はテンションを一定に保つというのが佐藤さんのモットー。だが、このときばかりは口論になってしまったという。

 困った佐藤さんは、東京の息子たちに電話をかけた。3人の兄弟は順番に妹と話し、「僕たちはお母さんの言うとおりにやって、うまくいった。今は腹が立つかもしれないけど、言うことを聞いたほうがいいよ」と妹にアドバイス。一方で、妹の気持ちも考えて、佐藤さんには「妹は2日だけ夏期講習に行かせたら」という折衷案を提案。佐藤さんもそれを受け入れた。

「上3人の受験のときは、自宅にほかの妹弟もいたけど、末っ子の娘は私と常に2人きり。息抜きに外出したかったのかもしれませんね(苦笑)」

 とはいえ佐藤さんが、模試の過去問にこだわったのは理由があった。駿台、河合、代ゼミの東大模試が夏に3回、秋に3回あり、そこでA判定をとることに大きな意味があるからだ。

「模試で点数とれないのに本番でとれるわけがない。A判定をとると自信を持って受験できるんです」

 模試の結果は、ほとんどでA判定。成績優秀者に名前が載り、長女は「死ぬほど模試の過去問やってよかった~」とポロリ。

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