
メーガンさんにくすぶる盗作疑惑、「家族を壊してばかり」の声も… キャサリン妃は写真集と動画で“攻め”に転換
2018年7月、テニス・ウィンブルドン選手権を観戦するメーガンさん(右)とキャサリン妃 (c)朝日新聞社
(左から)メーガンさんが6月に出す児童書『ザ・ベンチ』/5月7日にキャサリン妃が出版した『HOLD STILL:A Portrait of Our Nation in 2020』
英王室のキャサリン妃とメーガンさんが同時期に本を出版する。何かと比較される2人だが、さっそく英国でさまざまな反応が出ている。AERA 2021年5月24日号の記事を紹介する。
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4月17日、99歳で逝去したエディンバラ公フィリップ殿下の葬儀が営まれた。葬儀後のキャサリン妃(39)の振る舞いに注目が集まった。礼拝堂から出て歩き始めると、妃はふとヘンリー王子(36)に言葉をかけた。2人の会話にウィリアム王子(38)が加わると、妃は歩みを遅らせて、後ろのソフィー妃に合流した。おかげで確執のさなかにある兄と弟は、顔を合わせて話す機会を得たのだ。キャサリン妃のさりげない心遣いは、「ピースメーカー(平和をもたらそうとする人。仲裁人)」と絶賛された。夫は弟と口も利かない状態がこのまま続くことを本当は望んでいないと推測、場を作ったのだ。「家族をつなぐキャサリン妃。それに比べメーガンさんは家族を壊してばかり」と英国の人びとはメディアにコメントを寄せた。
メーガンさん(39)は妊娠中で葬儀を欠席したが、フィリップ殿下に花輪を贈った。それには花の説明が添えられていた。殿下の母国ギリシャの国花アカンサスを加えたなど、詳細にわたった。葬儀には親戚などから合計九つの花輪が手向けられたが、公表したのはメーガンさんだけだった。しかも、フローリストをウィロー・クロスリーさんと明かし、結婚式後の披露宴もアーチー君(2)の洗礼式も彼女に依頼したと書き添えた。「メーガンさんは、注目を奪いたくないと言っていたはず。それなら静かにしていて」と批判された。
■父の日に綴った詩
父の日に向け6月8日に、メーガンさんは児童書『ザ・ベンチ』を出すと5月4日に発表。表紙にはベンチが描かれ、一部公開されたページには、帰還した赤毛の兵士が、男の子を抱き上げる姿が描かれている。家の窓辺に立つ女性はその光景に涙を流している。メーガンさんは、アーチー君が生まれた年の父の日にヘンリー王子に向けて綴った自作の詩がもとになると話した。「父と子の絆を描いた心温まる一冊で、世代を超えて読まれるに違いない」と発売元は力を込める。
しかし、すぐに「盗作ではないか」との声が上がった。英国の児童作家コーリン・アーヴェリスさんが2018年に出した『The Boy on the Bench(原題)』とそっくりだという。表紙には、父親と男の子がベンチに座る姿が見られる。ベンチを舞台に父親と子どもの絆を描いていて、類似点は多い。メーガンさんは、王室にまだいた19年に雑誌「ヴォーグ」(英国版)のゲストエディターとして表紙のデザインを任された。発売されると、オーストラリアで16年に出版された書籍の表紙とうり二つと指摘された。ともに、何人もの女性の顔が並ぶ図柄だった。
■表紙に公爵夫人の称号
さらに、20年10月に行われた経済誌「フォーチュン」主催のバーチャルサミットで、メーガンさんは、「“ユーザー”という言葉で利用者を意味するのは、SNSと薬物中毒です」と話した。これは、ネットフリックスで配信されているドキュメンタリー映画「監視資本主義:デジタル社会がもたらす光と影」で引用された専門家の言葉と同じと言われた。このように過去に盗作疑惑が何回か浮上しているため、今回も「またか」という視線を投げられたのだった。
しかし、出版発表の翌日にアーヴェリスさんが「説明と公開された抜粋を読みましたが、同じ物語ではなくテーマも違う。類似点は見当たらない」と全面否定。彼女の素早いきっぱりとした反応に、「よほどトラブルに巻き込まれたくなかったに違いない」と言われている。とはいえ、父親と息子の絆やベンチと似た題材がそろっていることから、盗作を疑う声はくすぶっているようだ。
さらに、メーガンさんは表紙に著者として、「メーガン、サセックス公爵夫人」と明記した。王室の評判を落とす発言を連発して離脱の正当性を訴えたメーガンさんが、結婚の際にエリザベス女王(95)から授与された称号を誇らしげに著書に記す。メディアは、女王が弁護士を通して、出版社に称号を削除するように申し入れたと報じた。
■コロナ禍で撮影の写真
これを受けて英国のデイリーエクスプレス紙が緊急アンケートを実施。約2万8千人の回答者の98%が「称号を使用するべきではない」とした。「使っても構わない」は2%に満たず、残りは「わからない」だった。
さらに、絵本のテーマは父と子の絆であるが、メーガンさんは実生活では父親トーマスさんとの交流を断っている。自宅から車で1時間余りの距離とされているが、アーチー君もヘンリー王子もトーマスさんに会っていない。さらにチャールズ皇太子とヘンリー王子の仲は改善していない。王子はオプラ・ウィンフリーさんのインタビュー番組で、「父と兄は王室にとらわれている」と言い放ち、「電話に出てくれない」「経済的援助を打ち切った」と父をなじった。父子はフィリップ殿下の葬儀で言葉は交わしたものの、和解のニュースはない。実生活では父との絆が築けていない王子夫妻。絵本について「説得力に欠ける」との声が英国では多い。
一方、キャサリン妃も5月7日に、本を出版した。英国の最初のロックダウンから1年が経ったところで、妃はナショナル・ポートレート・ギャラリー(国立肖像画美術館)と共同で、写真集『HOLD STILL(ホールド スティル):A Portrait of Our Nation in 2020』を発売した。コロナ禍で撮影された写真を一般募集したところ、全国から3万点以上の作品が寄せられた。妃などが審査して100点を選びだした。パンデミックのもと、厳しい暮らしを余儀なくされた人びとの喜怒哀楽を生々しくとらえた力作ぞろい。本の売り上げは、メンタルヘルスの慈善団体と国立肖像画美術館に寄付される。
■生の姿をもっと見せる
5月6日のアマゾンのベストセラーチャートによると、予約数で『HOLD STILL』は5位で、『ザ・ベンチ』は24位だった。『ザ・ベンチ』は発売の1カ月ほど前だが、12.99ポンド(約2千円)から価格が下がり、すでに9.99ポンド(約1550円)に落ちた。
ウィリアム王子とキャサリン妃は5月5日、ユーチューバーデビューをした。「遅れたけれど、やらないよりはまし」とユーモアを込めてチャンネルを開設。ただ、王子は始めに「発言には気を付けないとね」と妃に話しかけた。これはヘンリー王子夫妻を意識したものと受け取られている。ウィンフリーさんのインタビューでは、何げなく発した言葉がヘンリー王子夫妻に曲解されたり誤解されてリークされたりした例が見られた。王子の言葉に、妃が「わかっているわ」と間髪を入れず返すなど、息はぴったり。第1弾は、これまでの公務の様子などをダイジェストにして25秒でまとめた。
キャサリン妃とメーガンさんの出版合戦に加えて、ウィリアム王子夫妻がユーチューブチャンネルをこのタイミングで開設した意味は大きい。このところヘンリー王子夫妻に押され気味だった夫妻は、自分たちの生の姿をもっと見せていこうとしている。「守り」から「攻め」への姿勢とも言える転換である。ヘンリー王子は、自由を求めて王室から離脱。ウィリアム王子夫妻にとっては、一家の幸せな様子を打ち出していくことが最も強力な反撃のはずだ。もとよりロイヤルとしての制約はあるが、積極的に王室のイメージ回復に努めたい。それは、国民との親しみを願う夫妻の気持ちに沿っているし王室の近代化にも通じる。エリザベス女王は大幅に公務を減らし、チャールズ皇太子夫妻は不人気のままだ。今後の英王室は自然にウィリアム王子夫妻の肩にかかってくる。今春、結婚10周年を迎えた2人に、覚悟はすでにできているのだろう。(ジャーナリスト・多賀幹子)
※AERA 2021年5月24日号