派遣も経験、春香クリスティーンが明かした4年半の休業理由「現場でも常識がわからなかった」
春香クリスティーンさん(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
マルチリンガルな政治マニアとして人気を集めてきたタレント・春香クリスティーン(30)が、4年7カ月の活動休止を経て、昨年11月に芸能界復帰した。カナダ留学や工房でのアルバイト、派遣社員などを経験し、プライベートでは結婚し、夫婦共働きで子育て真っただ中だ。大学生の時からコメンテーターとして活躍しながら「社会から取り残されている」と思い悩んでいたと、休業直前を振り返った。
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――そもそも休業した理由は何だったのでしょうか。
このままじゃまずいなと思ったんですよね。当時、ありがたいことにコメンテーターのお仕事をたくさんいただいて、自分が現場を見てきたニュースだけじゃなく、突発的なものや連日取り上げられるニュースが飛び交っていて、日々アウトプットし続けていました。例えば、2015年~16年に注目されていたシリア難民の問題は現場を見に行ったり、選挙があれば全国各地の演説を聞きに行ったりしていたので、ある程度話せても、同じニュースに100通りの意見を持っているわけじゃないし、今日はこう言ったから明日は違う角度で……ってわけにもいかない。専門家でもない自分が何を求められているのか、何を言ったらいいか、正解がわからなくなっていました。
一方で、大学の同級生は卒業して社会人になっていって、自分がどんどん社会から取り残されている感じがしていました。いざ現場に行っても”普通“の会社員の気持ちがわからないし、常識がわからない。そもそもの欠点として、部屋も片付けられないし(笑)、それが仕事に生きてすごく救われた面もありつつ、この仕事を失ったら私はもう生きていくことができないのかもしれないと自分を追い詰めていた部分もあった気がします。自分が人間として欠落しているという感覚がずっとありました。
■「自分に自信がなかった」
生活も特殊で、日によって朝起きる時間が違い、地方のレギュラー番組もあったので生活の半分ぐらいは新幹線に乗って、ただただ日々の目の前の仕事に没頭して全力に取り組んでいました。休みがあれば自分のやりたいことをやれるけど、自分が来週どんな仕事をしているのかわからない。自分で自分を管理してない感覚だったんですよね。一面的というか、片足でつま先立ちしているようで、自分に自信がなかったんです。
春香クリスティーンさん(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
――周囲からは、うらやましがられるような存在だと思いますが……。
思い悩んでいましたね。コメンテーターをやればやるほど、隣にいる解説員の方や長年取材している方の偉大さがわかって、もちろん私だから言えることもあったと思いますが、メディアを通して、みなさんの大事な時間を使って軽はずみなことを言っちゃいけないと。自分の欠落を埋めたくて、どういう方法がいいかを模索していきました。
――そこで活動休止を決めたわけですね。最初に向かったカナダ留学では政治学ではなく、会社経営の勉強をされています。
はい、ビジネスに関する知識が私に欠けていると思ったからです。一度も就職していないし、会社に勤めたことも起業したこともありません。芸能人は個人事業主ですが、お金のことは税理士さんに任せているし、事務所に所属していてマネージャーさんは会社員だけど、自分はそうではありません。
初歩的な内容ですが、人事や簿記、ファイナンス、マーケティングなど週ごとに違うテーマを勉強して、思う存分吸収できました。ホテルに住んで、朝から晩まで勉強できて。自分へのご褒美ですね。
■会社員の経験は「人生の財産」
今の旦那さんが仕事の転勤で16年から沖縄に住んでいたので、留学から戻ると沖縄に住んでアルバイトを探しました。せっかくだから沖縄らしいことができたらと思い、ネットで求人を探して、やちむん工房で働かせてもらって。19年に旦那さんの転勤で東京に戻り、自分の武器というか、即戦力として少しでも社会に貢献できるものって何だろうと考えて、通訳学校に通い、多言語コールセンターで派遣社員として働きました。通訳や翻訳をする英文事務は芸能界復帰後も少し続けていました(22年12月末まで)。
――憧れていた会社員生活をやってみていかがでしたか。
全然違うジャンルの仕事を、ただのぞいただけじゃなく、きちんと向き合って働けたのは、私の人生を振り返ったときにすごく財産だなと思います。キャリアとしては経歴書を見た人に「何がやりたいんだ」と思われるかもしれないですが(笑)。
春香クリスティーンさん(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
――もう一つ大きな変化として、結婚してお子さん(現在1歳)が生まれたことだと思います。芸能活動再開後はどんな生活ですか。
もー、バタバタです。産後は時間の融通が利く職場の事務職に復帰できたので、保育園の迎えは私がほとんどやれていたのですが、芸能の仕事に復帰してからは、夫婦で協力し合って、その時にできる人ができることをやるしかないです。そういう意味ではパートナーですよね。
保育園から帰ってお風呂に入れて、ご飯食べてちょっと遊んで、9時ぐらいに子どもを寝かせます。その後は私の時間。仕事したり哺乳瓶を洗ったり、テレビを見たり。最近は夜更かししすぎて、失敗すると寝るのが2時とかになっちゃう日も……。朝は7時に子どもに起こされ、二度寝しようものならギャーって大泣きされます。
■器用にできなくても… 子の笑顔が救い
決して効率がいいわけじゃないし、あっという間に1日が終わってしまいます。夫は遅く帰っても、家事や作り置きの料理をしてくれて、会社で散々働いた後に家でも働いてもらってかわいそう……(笑)。でもありがたいです、本当に。もうちょっとバランス良く器用にできたらいいなと常に思いますけど、今も模索中です。
私が目の前のことに集中しちゃうタイプで、交友関係が広いわけでもないから、ずっと子どもと1対1だと自分も思いつめちゃって良くないだろうから、保育園に通わせながら仕事をして社会と関わっている方が合っていると思っていました。子どももいろんな人や考え方に触れてほしいですね。
――毎日の生活を回すのは大変だと思いますが、子育てしていて良かったと思う瞬間は。
家で子どもが笑ってくれる瞬間が一番幸せですね。よく笑ってくれる子なので、それが救いです。バタバタしていても、器用にできなくても、笑ってくれればそれで救われる。笑顔は大事にしたいですね。それだけじゃダメなんですけど!(笑)。必要なことだと思います。
(聞き手/AERA dot.編集部・金城珠代)
【※後編「政治マニアの春香クリスティーン、岸田首相の『少子化対策』に『実感がどこまで届いているんだろう』へ続く】
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2023/01/06 11:30