本格的な夏山シーズンを前にして7月15日、北アルプスでは多くの山小屋がオープンする。
例年であれば、ゴールデンウイーク明けに小屋開きをするところが多いのだが、今年は新型コロナウイルス感染症の拡大によって4月7日に緊急事態宣言が発令。山小屋も休業を余儀なくされた。
毎年20万人以上の登山者で賑わう富士山は、静岡県と山梨県がすべての登山道の閉鎖を決定。「新型コロナウイルスによる登山者および関係者の安全確保が困難」なことから山小屋や救護施設、公衆トイレもすべて閉鎖となった。
一方、北アルプスの山小屋は大量のマスクやアルコール消毒液をヘリコプターで運ぶなど、登山者を迎える準備が急ピッチで進められている。新型コロナウイルス感染症へのできるかぎりの対策をとったうえでの再開だ。
北アルプス山小屋友交会会長を務め、人気の高い槍ケ岳、燕岳などで4軒の山小屋を経営する燕山荘グループの赤沼健至社長に聞いた。
宿泊人数を1/3以下に減らし「3密」を防ぐ
――夏山のピーク時の小屋泊まりというと、たいへんな混雑で、すし詰め状態のイメージがあります。いわゆる「3密」の状態をどう避けるのでしょうか?
これまで日本の山小屋は予約なしでも泊まれるのがふつうだったのですが、宿泊人数を制限して完全予約制とするところが増えました。燕山荘グループでは従来から予約制をとっていたのですが、今回の事態を受けて、それが一気に波及したわけです。山小屋だけでなくテント場も完全予約制となります。
例えば、燕岳の山頂付近にある燕山荘の最大宿泊人数は650人ですが、これを1/3以下の200人前後まで減らし、一人あたり1.5~2畳のスペースを確保します。さらにそれを仕切り板で区切ります。定期的に換気も行いますから、暖かい服をお持ちください。
食堂の利用も人数を制限して間隔を開けて座ってもらいます。テーブルの上には透明なプラスチックボードを設置して、対面するお客様との間を仕切るようにします。